(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063314
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】境界ブロック及び植栽システム
(51)【国際特許分類】
E01C 11/22 20060101AFI20240502BHJP
E03F 5/046 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
E01C11/22 B
E03F5/046
E01C11/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171138
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】392027900
【氏名又は名称】株式会社イトーヨーギョー
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 了介
(72)【発明者】
【氏名】片井 寛
【テーマコード(参考)】
2D051
2D063
【Fターム(参考)】
2D051AA03
2D051AC05
2D051AC11
2D063CA22
(57)【要約】
【課題】植栽エリアと境界ブロックで区画された道路における雨水の処理を可能にする。
【解決手段】道路12と、道路12よりも低位に配置され雨水浸透機能を有する植栽エリア11と、の境界に設置される境界ブロック13であって、地中において道路12の縦断方向に延びる排水路23と、道路12と植栽エリア11とを連通し、道路12から植栽エリア11へ雨水を流入させる導水口25と、植栽エリア11と排水路23とを連通し、植栽エリア11の雨水を排水路23へ流入させる排水口27と、を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路と、前記道路よりも低位に配置され雨水浸透機能を有する植栽エリアと、の境界に設置される境界ブロックであって、
地中において前記道路の縦断方向に延びる排水路と、
前記道路と前記植栽エリアとを連通し、前記道路から前記植栽エリアへ雨水を流入させる導水口と、
前記植栽エリアと前記排水路とを連通し、前記植栽エリアの雨水を排水路へ流入させる排水口と、を有している境界ブロック。
【請求項2】
前記排水路及び前記排水口が形成された排水ブロックと、
前記排水ブロックの上方に配置され、前記導水口が形成された縁石ブロックと、を有している、請求項1に記載の境界ブロック。
【請求項3】
前記導水口と前記排水口とが、道路の縦断方向において互いにずれた位置に配置されている、請求項1又は2に記載の境界ブロック。
【請求項4】
前記導水口の下面は、前記道路側が高く前記植栽エリア側が低くなるように傾斜している、請求項1又は2に記載の境界ブロック。
【請求項5】
前記排水口に設けられ、当該排水口への異物の侵入を抑制するフィルター部材をさらに備えている、請求項1又は2に記載の境界ブロック。
【請求項6】
前記道路と排水路とを連通し、道路の雨水を排水路へ排出する第2排水口をさらに有する、請求項1又は2に記載の境界ブロック。
【請求項7】
雨水浸透機能を有し植物が植えられる植栽エリアと、
前記植栽エリアと道路との境界に配置される、請求項1又は2に記載の境界ブロックと、を備えている、植栽システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に隣接して設けられる植栽システム、及び、植栽システムに適用可能な境界ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、台風による大雨やゲリラ豪雨等に起因する自然災害が増加しており、急激に発生する雨水の処理能力向上が重要な課題となっている。その対策の一つとして、道路脇等にレインガーデンと呼ばれる植栽エリアを設け、道路の雨水を植栽エリアに流入させて一時的に貯留し、地中に浸透させることによって、下水道設備の負荷を軽減するとともに道路の冠水等を抑制することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車道と歩道との境界に縁石を設け、この縁石と前記歩道との間に緑化領域(植栽エリア)を設けた道路構造が開示されている。この技術は、緑化領域で植物を成育させるとともに、雨天時等に歩道からの雨水を緑化領域に流入させて地中に浸透させ、歩道への浸水を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、豪雨等によって多量の雨水が緑化領域に流入すると、当該雨水が溢れて歩道に戻ってしまうおそれがある。また、特許文献1の技術では、縁石で仕切られた車道側の雨水を、縁石を超えて緑化領域に流入させることができないので、車道における雨水処理には活用することができない。
【0006】
本開示は、植栽エリアと境界ブロックで区画された道路における雨水の処理を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、道路と、前記道路よりも低位に配置され雨水浸透機能を有する植栽エリアと、の境界に設置される境界ブロックであって、
地中において前記道路の縦断方向に延びる排水路と、
前記道路と前記植栽エリアとを連通し、前記道路から前記植栽エリアへ雨水を流入させる導水口と、
前記植栽エリアと前記排水路とを連通し、前記植栽エリアの雨水を排水路へ流入させる排水口と、を有している。
【0008】
上記構成を有する境界ブロックは、導水口を介して道路上の雨水を植栽エリアに流入させることができ、この植栽エリアで雨水を一時的に貯留するとともに地中に浸透させることができる。したがって、道路の冠水を抑制するとともに下水道設備の負担を軽減することができる。豪雨等によって植栽エリアに貯留・浸透しきれず、植栽エリアから溢れた雨水は、排水口を介して排水路から排出することができ、当該雨水が道路側に戻るのを抑制し、道路の冠水を抑制することができる。
【0009】
(2)上記(1)の境界ブロックは、好ましくは、前記排水路及び前記排水口が形成された排水ブロックと、
前記排水ブロックの上方に配置され、前記導水口が形成された縁石ブロックと、を有している。
【0010】
上記構成によれば、排水路、排水口、導水口を、それぞれ2つのブロックに分けて形成することで、排水ブロック及び縁石ブロックのそれぞれ構造を簡素化することができる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)の境界ブロックにおいて、好ましくは、前記導水口と前記排水口とが、道路の縦断方向において互いにずれた位置に配置されている。
【0012】
この構成によれば、導水口を介して道路から植栽エリアへ流入した雨水が、直接、排水口から排水路へ排出されるのを防ぐことができる。
【0013】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の境界ブロックにおいて、好ましくは、前記導水口の下面は、前記道路側が高く前記植栽エリア側が低くなるように傾斜している。
【0014】
この構成によれば、道路側の雨水を植栽エリア側へスムーズに流入させることができるとともに、植栽エリア側の雨水が道路側へ逆流するのを抑制することができる。
【0015】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の境界ブロックは、好ましくは、前記排水口に設けられ、当該排水口への異物の侵入を抑制するフィルター部材をさらに備えている。
【0016】
このような構成によって、植栽エリア内の落葉や木の実等が排水口に詰まってしまうのを抑制することができる。
【0017】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の境界ブロックは、好ましくは、前記道路と排水路とを連通し、道路の雨水を排水路へ排出する第2排水口をさらに有する。
【0018】
このような構成によって、道路側の雨水を植栽エリアだけでなく排水路へも流入させることができる。豪雨等、植栽エリアの雨水が溢れる可能性が高い場合に、道路側の雨水を迅速に排水路に流入させることができる。
【0019】
(7)本開示の植栽システムは、雨水浸透機能を有し植物が植えられる植栽エリアと、
前記植栽エリアと道路との境界に配置される上記の境界ブロックとを備える。
【0020】
上記構成を有する植栽システムは、境界ブロックの導水口を介して道路上の雨水を植栽エリアに流入させることができ、この植栽エリアで雨水を一時的に貯留するとともに地中に浸透させることができる。したがって、道路の冠水を抑制するとともに下水道設備の負担を軽減することができる。豪雨等によって植栽エリアで貯留・浸透しきれず、植栽エリアから溢れる雨水は、排水口を介して排水路から排水することができ、当該雨水が道路側に戻るのを抑制し、道路の冠水を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、植栽エリアと境界ブロックで仕切られた道路における雨水の処理を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の実施形態に係る植栽システムの平面図である。
【
図3】道路側からみた境界ブロックの斜視図である。
【
図4】植栽エリア側からみた境界ブロックの斜視図である。
【
図7】雨量が少ない場合の雨水の流れを示す説明図である。
【
図8】雨量が多い場合の雨水の流れを示す説明図である。
【
図9】第2の実施形態に係る植栽システムにおいて、雨量が少ない場合の雨水の流れを示す説明図である。
【
図10】第2の実施形態に係る植栽システムにおいて、雨量が多い場合の雨水の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る植栽システムの平面図である。
図2は、植栽システムの断面図である。
図3は、道路側からみた境界ブロックの斜視図である。
図4は、植栽エリア側からみた境界ブロックの斜視図である。
本実施形態の植栽システム10は、車道(道路)12の横断方向Yの端部に設置された植栽エリア11と、当該植栽エリア11と車道12との境界に設置された境界ブロック13とを含む。なお、図面には、車道12の縦断方向(延長方向)を矢印Xで示し、車道12の横断方向を矢印Yで示し、上下方向を矢印Zで示している。
【0024】
植栽エリア11は、その周囲が、石材、レンガ、コンクリートブロック等からなる仕切材14と、境界ブロック13とによって囲まれている。仕切材14は、植栽エリア11と歩道15とを仕切っている。植栽エリア11には、樹木や花などの植物が植えられる。植栽エリア11は、上下方向Zにおいて1層又は多層に構成されている。例えば、
図2に示すように、植栽エリア11は、植生層11Aと、浸透層11Bとを含むことができる。植生層11Aは、植物を生育するのに適した黒土、腐葉土、培養土等を含む層により構成される。浸透層11Bは、雨水を浸透させるのに適した層であり、例えば砕石を充填してなる多孔質層により構成される。植栽エリア11は、植物を生育でき、雨水浸透機能を有していれば特に限定されるものではなく、従来公知の構成を採用することができる。
【0025】
境界ブロック13は、車道12と、植栽エリア11との境界に配置される。境界ブロック13は、全体又は一部が地中に埋設される排水ブロック21と、排水ブロック21の上方に配置され地上に突出する縁石ブロック22とを備えている。
【0026】
排水ブロック21は、プレキャストされたコンクリート製の部材であり、
図1、
図3、及び
図4に示すように、車道12の縦断方向Xに沿って長尺に形成されている。排水ブロック21は、複数のブロック単体21Aを車道12の縦断方向Xに並べることによって構成される。排水ブロック21の内部には、車道12の縦断方向Xに貫通する排水路23が形成されている。排水路23は、車道12の横断方向Yに沿った断面が円形状に形成されている。
【0027】
縁石ブロック22は、プレキャストされたコンクリート製の部材であり、車道12の縦断方向Xに沿って長尺に形成されている。縁石ブロック22は、複数のブロック単体22Aを車道12の縦断方向Xに並べることによって構成されている。縁石ブロック22は、排水ブロック21の上方に配置されている。
【0028】
なお、
図1に示すように、車道12と歩道15との境界には他の境界ブロック16が設けられる。この境界ブロック16は、本発明の境界ブロック13と車道12の縦断方向Xに連続して設置され、本発明の境界ブロック13の排水路23に連通する排水路17を有する。この排水路17は、下水道設備に繋がる図示しない集水桝等に接続される。境界ブロック16には、車道12側の雨水を排水路17に流入させる排水口18が形成されている。
【0029】
図5は、
図1のA-A線断面図である。
図6は、
図1のB-B線断面図である。
排水ブロック21の上面には、上方に突出する凸部21bが形成されている。凸部21bは、車道12の横断方向Yにおいて、植栽エリア11側の端部に配置されている。凸部21bよりも車道12側の排水ブロック21の上面は、縁石ブロック22の設置面21aとされる。凸部21bの設置面21a側の側壁面21b2は、縁石ブロック22に対向している。凸部21bは、この側壁面21b2によって排水ブロック21に対して縁石ブロック22を位置決めする。
【0030】
植栽エリア11の上面11aは、車道12の上面12aよりも低位置に配置されている。植栽エリア11の上面11aは、排水ブロック21の凸部21bの上面21b1よりも低位置に配置されている。
【0031】
縁石ブロック22は、排水ブロック21の設置面21a上に設置されている。縁石ブロック22と設置面21aとの間には、モルタル等の据付調整材20が施工されている。縁石ブロック22には、車道12側と植栽エリア11側とを連通する導水口25が形成されている。導水口25は、
図1、
図3、
図4に示すように、縁石ブロック22の長手方向に間隔をあけて複数箇所に形成されている。導水口25は、複数のブロック単体22Aのうちのいずれかに形成されている。車道12の縦断方向Xにおける導水口25の断面は、長方形状である。具体的に、導水口25は、上下方向Zの長さよりも車道12の縦断方向Xの長さの方が大きい。
【0032】
図5に示すように、導水口25の上面25aは、略水平に形成されている。導水口25の上面25aの高さは、車道12の上面12aの高さよりも高い。導水口25の下面25bは、車道12側が高く植栽エリア11側が低くなるように傾斜している。導水口25の下面25bにおける車道12側の端部は、車道12の上面12aと略同じ高さであり、植栽エリア11側の端部は、凸部21bの上面21b1と略同じ高さである。
【0033】
導水口25は、縁石ブロック22の下面に下方に開口した凹部を予め形成しておき、排水ブロック21上に縁石ブロック22を設置した後に、車道12の上面12aと凸部21bの上面21b1との間をコンクート等の充填材26で埋めることによって孔状に形成されている。
【0034】
図1及び
図4に示すように、排水ブロック21には、複数の排水口27が形成されている。複数の排水口27は、車道12の縦断方向Xに間隔をあけて設けられている。排水口27の数は、導水口25の数よりも多い。車道12の縦断方向Xにおける複数の排水口27の間隔は、複数の導水口25の間隔よりも狭い。
【0035】
図6に示すように、排水口27は、排水ブロック21の上面と排水路23との間で上下方向Zに直線状に形成されている。排水口27は、断面が矩形状の水路である。車道12の横断方向Yにおいて、排水口27は、排水路23の中心よりも植栽エリア11側にオフセットした位置に形成されている。
【0036】
排水口27の上端は、凸部21bの上面21b1と設置面21aとに跨って開口している。凸部21bの上面21b1で開口する排水口27の上端は、植栽エリア11の上面11aよりも高い位置に存在している。設置面21aで開口する排水口27の上端は、設置面21a上の縁石ブロック22によって閉鎖される。排水口27の下端は、排水路23に連通している。したがって、排水口27を通過する雨水は排水路23に流入する。
【0037】
排水口27の上端には、異物の侵入を抑制するためのフィルター部材29が設けられている。このフィルター部材29は、雨水を通過させることができる複数のスリットを備えたものや、金網等によって構成される。植栽エリア11には、枯葉や木の実等が落ちていることがあり、これらが排水口27内に侵入し詰まってしまうと、円滑な排水が妨げられる。本実施形態では、排水口27にフィルター部材29を設けているので、排水口27の詰まりを抑制し、排水機能の維持を図ることができる。フィルター部材29は、排水口27の上端に固定されていてもよいし、着脱自在に取り付けられていてもよい。
【0038】
図4に示すように、複数の排水口27と複数の導水口25とは、車道12の縦断方向Xにおいて異なる間隔で形成されているため、排水口27と導水口25とが重複した位置に配置される場合もある。この場合、
図5に示すように、導水口25から排水口27への雨水の直接的な流入を防止するため、当該排水口27は、モルタル等の充填材28によって埋められる。
【0039】
図7は、雨量が少ない場合の雨水の流れを示す説明図である。
図7(a)に示すように、雨が降ると、車道12に溜まった雨水wは、車道12自身の傾斜によって横断方向Yの端部に向かって流れ、境界ブロック13に到達する。境界ブロック13に到達した雨水wは、導水口25を通過して植栽エリア11に流入する。植栽エリア11の上面11aは車道12の上面12aよりも低いので、車道12上の雨水wは植栽エリア11に向けて一方向に流入する。また、導水口25の下面25bが車道12側から植栽エリア11側へ向けて低くなるように傾斜しているので、車道12上の雨水wはスムーズに植栽エリア11に流入する。
【0040】
図7(b)に示すように、植栽エリア11に流入した雨水wは、植栽エリア11において一時的に貯留されるとともに地中に浸透する。雨量が少ない場合、植栽エリア11に流入する雨水wの量も少なくなり、植栽エリア11で十分に雨水wを貯留・浸透させることができる。植栽エリア11内の雨水wの高さが、排水口27の上端(凸部21bの上面21b1)にまで到らなければ、当該雨水wが排水口27に流入することもなく、排水路23を経て下水道設備に排出されることもない。そのため、下水道設備に流れる雨水wの量を減らし、下水道設備の負荷を軽減することができる。また、植栽エリア11に積極的に雨水wを流入させることで、植物の生育を促進させることができる。
【0041】
図8は、雨量が多い場合の雨水の流れを示す説明図である。
図8(a)に示すように、台風等によって大雨が降った場合、車道12には大量の雨水wが溜まり、導水口25を介して植栽エリア11にも大量の雨水wが流入する。また、植栽エリア11自体にも多くの雨が降り注ぐため、植栽エリア11における雨水wは多量となる。
【0042】
図8(b)に示すように、植栽エリア11において雨水wを貯留・浸透しきれず、植栽エリア11における雨水wの高さが排水口27の上端に到る(植栽エリア11から雨水wが溢れる)と、雨水wは排水口27を通過して排水路23に流入する。これにより、植栽エリア11で貯留・浸透しきれない余剰の雨水wを下水道設備に排出することができる。
【0043】
本実施形態の植栽システム10では、雨量が多く、植栽エリア11で雨水を貯留・浸透しきれない場合、境界ブロック13に形成した排水口27から下水道設備に繋がる排水路23に雨水を排出することができる。そのため、植栽エリア11内には、雨水を集めるための集水桝を設ける必要がない。
【0044】
植栽エリア11内に集水桝を設けると、集水桝の上面が植栽エリア11に露出して見栄えが悪化するととともに、雨水を貯留・浸透させる領域や植物を植える領域が集水桝で侵食されるという欠点がある。また、集水桝で集めた雨水を下水道設備に排出するために、集水桝には下水道設備に繋がる排水管を設ける必要がある。そのため、植栽エリア11外部へ工事範囲を拡大しなければならない。また、このような広範な工事ために、道路や下水道設備等の各種管理機関に対する行政手続も必要となり、全体として施工コストが増大する。
【0045】
本実施形態では、植栽エリア11と車道12との境界に配置される境界ブロック13の排水路23を、予め道路に設置されている排水設備(例えば、
図1における境界ブロック16の排水路17等)に接続するだけでよいので、広範な工事や煩雑な行政手続を減らし、コストダウンを図ることができる。また、植栽エリア11において、雨水を貯留・浸透させる領域や植物を植える領域を最大限に確保することができる。
【0046】
また、勾配の小さい車道12に沿って植栽エリア11が設けられている場合、集水桝を設けると雨水が集水桝に集まるため、植栽エリア11全体に雨水が行き渡り難くなり、雨水の浸透に偏りが生じやすくなるという欠点がある。本実施形態の境界ブロック13には、車道12の縦断方向Xに間隔をあけて複数の排水口27が設けられているので、車道12の勾配の有無にかかわらず、各排水口27から雨水を排出することができ、植栽エリア11全体に対して均一に雨水を浸透させることができる。
【0047】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態に係る植栽システムにおいて、雨量が少ない場合の雨水の流れを示す説明図である。
図10は、第2の実施形態に係る植栽システムにおいて、雨量が多い場合の雨水の流れを示す説明図である。
本実施形態の境界ブロック13は、第1の実施形態と同様に、排水ブロック31と、縁石ブロック22とを有する。縁石ブロック22は、第1の実施形態と略同一の構成を有する。
【0048】
本実施形態の排水ブロック31の上面には、第1の実施形態の排水ブロック21と同様に、凸部31bと設置面31aとが形成されている。しかし、排水ブロック31は、凸部31bが車道12側に配置され、設置面31aが植栽エリア11側に配置されるように設置される。
【0049】
排水ブロック31は、排水路33と、第1排水口37と、第2排水口38とを有する。第1排水口37は、第1の実施形態の排水口27と同様に、植栽エリア11と排水路33とを連通する。第2排水口38は、車道12と排水路33とを連通する。第1排水口37は、上端が排水ブロック21の設置面21aで開口し、下端が排水路33に連通している。第1排水口37は、排水路33から植栽エリア11に向けて斜め上方へ傾斜している。
【0050】
第2排水口38は、植栽エリア11における雨水を排水路33に流す第1の実施形態の排水口27とは機能は異なるが、実質的に当該排水口27と同一の形状に形成されている。また、第2排水口38と凸部31b及び設置面31aとの関係は、第1の実施形態における排水口27と凸部21b及び設置面21aとの関係と同一である。したがって、第1の実施形態における排水ブロック21と第2の実施形態における排水ブロック31とは、第1排水口37の有無を除いて同一の構造を有している。そのため、これらの製造工程の共通化(使用する型枠の共通化等)を図ることができる。また、第2の実施形態の排水ブロック31の第1排水口37をモルタルや金具等で塞ぐことによって、当該排水ブロック31を第1の実施形態の排水ブロックとしても利用することが可能となる。
【0051】
図9(a)に示すように、雨が降ると、車道12に溜まった雨水wは、車道12自身の傾斜によって横断方向Yの端部に向かって流れ、境界ブロック13に到達する。境界ブロック13に到達した雨水wは、導水口25を通過して植栽エリア11に流入する。植栽エリア11の上面11aは車道12の上面12aよりも低いので、車道12上の雨水wは植栽エリア11に向けて一方向に流入する。また、導水口25の下面25bが車道12側から植栽エリア11側へ向けて徐々に低くなるように傾斜しているので、車道12上の雨水wがスムーズに植栽エリア11に流入する。
【0052】
さらに、
図9(b)に示すように、境界ブロック13に到達した雨水wは、第2排水口38を経て排水路33にも流入する。排水路33を流れる雨水wは、下水道設備に排出される。
【0053】
植栽エリア11に流入した雨水wは、植栽エリア11において一時的に貯留されるとともに地中に浸透する。雨量が少ない場合、植栽エリア11に流入する雨水wの量も少なくなり、植栽エリア11において雨水wを十分に貯留・浸透させることができる。植栽エリア11内の雨水wの高さが、第1排水口37の上端にまで到らなければ、当該雨水wが第1排水口37に流入することもなく、排水路33を経て下水道設備に流入することもない。そのため、下水道設備に流れる雨水wの量を減らし、下水道設備の負荷を軽減することができる。また、植栽エリア11に雨水wを流入させることで、植物の生育を促進することができる。
【0054】
図10(a)に示すように、台風等によって大雨が降った場合、車道12には大量の雨水wが溜まり、導水口25を介して植栽エリア11にも大量の雨水wが流入する。また、植栽エリア11自体にも多くの雨が降り注ぐため、植栽エリア11における雨水wは多量となる。
【0055】
さらに、
図10(b)に示すように、境界ブロック13に到達した雨水wは、第2排水口38を経て排水路33に流入する。排水路33を流れる雨水wは、下水道設備に排出される。
【0056】
植栽エリア11において雨水wを貯留・浸透しきれず、植栽エリア11における雨水wの高さが第1排水口37の上端に到る(植栽エリア11から雨水wが溢れる)と、雨水wは第1排水口37を通過して排水路33に流入する。これにより、植栽エリア11で貯留・浸透しきれない余剰の雨水wを下水道設備に排出することができる。
【0057】
[その他の実施形態]
以上の実施形態における植栽システム10は、車道12に隣接して配置された植栽エリア11と、当該車道12と植栽エリア11との間に設置される境界ブロック13とを備えたものであったが、例えば、車道12以外の道路(歩道15など)に隣接する植栽エリア11と、当該道路と植栽エリア11との間に設置される境界ブロック13とを備えたものであってもよい。
【0058】
上記実施形態では、植栽システム10の植栽エリア11内に集水桝を設ける必要が無いことについて説明した。しかしながら、本発明の植栽システム10は、植栽エリア11内に集水桝を設置することを妨げるものではない。この場合、植栽エリア11内の雨水を、排水口27に加えて集水桝からも排出するように構成することもできる。
【0059】
上記実施形態の境界ブロック13は、別体の排水ブロック21,31と縁石ブロック22とを有している。しかしながら、本発明の境界ブロック13は、排水路23,33と排水口27,37と導水口25とを有する1つのブロックで構成されていてもよい。
【0060】
[実施形態の作用効果]
上記実施形態の境界ブロック13は、道路(車道)12と、道路12よりも低位に配置され雨水浸透機能を有する植栽エリア11と、の境界に設置される。境界ブロック13は、地中において道路12の縦断方向Xに延びる排水路23,33と、道路12と植栽エリア11とを連通し、道路12から植栽エリア11へ雨水を流入させる導水口25と、植栽エリア11と排水路23,33とを連通し、植栽エリア11の雨水を排水路23,33へ流入させる排水口27,37と、を有している。そのため、導水口25を介して道路12上の雨水を植栽エリア11に流入させることができ、この植栽エリア11で雨水を一時的に貯留し、地中に浸透させることができる。豪雨等によって、植栽エリア11で貯留・浸透しきれず植栽エリア11から溢れる雨水(オーバーフロー水)は、排水口27,37を介して排水路23,33に流入させることができ、当該雨水が道路12側に逆流するのを抑制することができる。
【0061】
上記実施形態の境界ブロック13は、排水路23,33及び排水口27,37が形成された排水ブロック21,31と、排水ブロック21,31の上方に配置され、導水口25が形成された縁石ブロック22とを有している。このように、排水路23,33、排水口27,37、及び導水口25を、それぞれ2つのブロック21,31、22に分けて形成することで、排水ブロック21,31及び縁石ブロック22のそれぞれの構造を簡素化することができる。つまり、排水ブロック21,31には、排水路23,33及び排水口27,37のみを形成すればよく、縁石ブロック22には、導水口25のみを形成すればよい。
【0062】
特に、本実施形態では、排水ブロック21,31を構成する全てのブロック単体21Aに排水口27,37が形成されるが、縁石ブロック22を構成する全てのブロック単体22Aに導水口25が形成されるわけではなく、一部のブロック単体22Aのみに導水口25が形成される。そのため、仮に排水ブロック21のブロック単体21Aと縁石ブロック22のブロック単体22Aとを一体に形成すると、一体とされたブロック単体の構造が複雑化するだけでなく、複雑な構造のブロック単体が、導水口25のあるものとないものとの2種類必要となる。上記実施形態の場合、導水口25のない縁石ブロック22のブロック単体22Aには、導水口25を構成する孔や凹部を形成しなくてもよいので、構造が極めて簡単となり、製造も容易となる。そのため、縁石ブロック22として2種類のブロック単体22Aが必要であったとしても、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0063】
上記実施形態の境界ブロック13では、導水口25と排水口27,37とが、道路12の縦断方向Xにおいて互いにずれた位置に配置されている。そのため、導水口25を介して道路12から植栽エリア11へ流入した雨水が、直接、排水口27,37から排水路23,33へ排出されるのを防ぐことができる。
【0064】
また、上記実施形態では、導水口25と排水口27,37とが重なる位置に配置された場合は、排水口27,37をモルタル等の充填材28で塞いでいる。これにより、排水ブロック21,31及び縁石ブロック22を設置する際に、導水口25と排水口27,37とをずらすような位置調整が不要となり、施工作業性を向上させることができる。また、開口面積が大きく数の少ない導水口25を塞ぐのではなく、開口面積が小さく数の多い排水口27,37を塞ぐことで、道路12側から植栽エリア11へ雨水を流入させる能力を損なうことなく、排水口27,37からの排水能力の低下も抑制することができる。
【0065】
上記実施形態の境界ブロック13では、導水口25の下面25bが、道路12側が高く植栽エリア11側が低くなるように傾斜している。そのため、道路12側の雨水を植栽エリア11側へスムーズに流入させることができるとともに、植栽エリア11側の雨水が道路12側へ逆流するのを抑制することができる。
【0066】
上記実施形態の境界ブロック13は、排水口27,37に設けられ当該排水口27,37への異物の侵入を抑制するフィルター部材29をさらに備えている。植栽エリア11内には、落葉や木の実等の異物が多いため、これらが排水口27,37に侵入する可能性が高い。上記実施形態では、排水口27,37にフィルター部材29が設けられるので、排水口27,37に異物が浸入し詰まってしまうことを防止することができる。また、フィルター部材29を排水口27,37から着脱自在とした場合は、排水口27,37やフィルター部材29の清掃等を容易に行うことができる。
【0067】
上記第2の実施形態の境界ブロック13は、道路12と排水路33とを連通し、道路12の雨水を排水路33へ排出する第2排水口38をさらに備える。そのため、道路12側の雨水を植栽エリア11だけでなく排水路33へも流入させることができる。豪雨等、植栽エリア11の雨水が溢れる可能性が高い場合に、道路12側の雨水を迅速に排水路33に流入させることができる。
【0068】
なお、今回開示した実施形態は例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0069】
10 :植栽システム
11 :植栽エリア
12 :車道(道路)
13 :境界ブロック
21 :排水ブロック
22 :縁石ブロック
23 :排水路
25 :導水口
27 :排水口
29 :フィルター部材
31 :排水ブロック
37 :第1排水口
38 :第2排水口
X :縦断方向