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特開2024-63315エッチング液組成物およびエッチング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063315
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】エッチング液組成物およびエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
H01L21/308 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171139
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】591045677
【氏名又は名称】関東化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168572
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 仁志
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】吉永 誠
(72)【発明者】
【氏名】清水 寿和
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA37
5F043BB25
5F043DD07
5F043DD30
5F043FF03
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】
酸化アルミニウム層をエッチングする際にサイドエッチングが抑制され、高精度での酸化アルミニウム層の加工が可能なエッチング液組成物およびエッチング方法を提供する。
【解決手段】
リン酸、ホスホン酸およびホスフィン酸からなる群から選択される1種または2種以上のリンのオキシ酸と、アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩と、を含む、非晶質の酸化アルミニウム含有層をエッチングするためのエッチング液組成物。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸、ホスホン酸およびホスフィン酸からなる群から選択される1種または2種以上のリンのオキシ酸と、
アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩と、を含む、
非晶質の酸化アルミニウム含有層をエッチングするためのエッチング液組成物。
【請求項2】
前記リンのオキシ酸が、リン酸を含む、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項3】
前記アミノ基含有化合物および/または前記アンモニウム塩は、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアミン、トリアミン、アンモニウム塩およびアミノ酸からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項4】
前記アミノ基含有化合物および/または前記アンモニウム塩は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、2-メチルアミノエタノール、2-エチルアミノエタノール、ジ-n-ブチルアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、アミノ酢酸、アントラニル酸からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項5】
前記リンのオキシ酸の含有量が5.0質量%以上60質量%以下である、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項6】
アミノ基含有化合物およびアンモニウム塩の合計の含有量が5.0質量%以上60質量%以下である、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項7】
非晶質の酸化アルミニウムを含む酸化アルミニウム含有層を、エッチング液組成物を用いてエッチングする工程を含み、
前記エッチング液組成物は、リン酸、ホスホン酸およびホスフィン酸からなる群から選択される1種または2種以上のリンのオキシ酸と、アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩と、を含む、酸化アルミニウム含有層のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング液組成物およびエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、窒化ガリウム(GaN)や酸化ガリウム(Ga)等の高いバンドキャップエネルギーを有する基板材の研究が進み、次世代の半導体材料として各メーカーが開発に注力している。酸化アルミニウム(Al)は、高い絶縁破壊強度を有し、熱的・化学的安定性に優れ、異種材料基板に対して優れた密着性を有している。したがって、酸化アルミニウム膜は、次世代半導体における絶縁膜の用途として注目を集めている。
【0003】
酸化アルミニウムを含む半導体素子の製造工程において、酸化アルミニウム膜のエッチングにはドライエッチング、ウェットエッチングの双方のプロセスが用いられている。この内ドライエッチングは加工精度に優れるという長所がある。一方で、ドライエッチングには、高価な真空装置や高周波発生装置が必要になるため、コスト面で不利であることに加えて、プラズマ状態のイオンが基板等にダメージを与える可能性がある。このため、酸化アルミニウム膜のエッチング方法として、ウェットエッチングの需要が高まっている。
【0004】
特許文献1には、リン酸30重量%以上80重量%以下と、硝酸10重量%以下と、界面活性剤0.0005重量%以上0.0050重量%以下と、を含有するよう調製され、膜密度が2.80g/cm以上3.25g/cm以下である酸化アルミニウム膜のエッチングに特化されているエッチング液が提案されている。また、特許文献2には、多層積層体の酸化アルミニウムを含有する支持層の1以上の表面にエッチング剤を接触させるか、或いは多層積層体の支持層の1以上の表面にクライオライト(NaAlF)および/またはテトラフルオロホウ酸カリウム(KBF)を含有するエッチング剤を接触させ、支持層の少なくとも一部をエッチングすることを含むウェットエッチング法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/171054号
【特許文献2】特開2007-5752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本発明者らが酸化アルミニウム層のウェットエッチングを検討する中で、特許文献1に記載されるようなリン酸系エッチング液および特許文献2に記載されるようなフッ素系エッチング液のいずれを用いる場合であっても、サイドエッチングが非常に大きくなる問題に直面した。このような場合、酸化アルミニウム層の高精度での加工が困難になる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、酸化アルミニウム層をエッチングする際にサイドエッチングが抑制され、高精度での酸化アルミニウム層の加工が可能なエッチング液組成物およびエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、エッチング液組成物が、リンのオキシ酸に加え、アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩を含むことにより、サイドエッチングを抑制することができることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] リン酸、ホスホン酸およびホスフィン酸からなる群から選択される1種または2種以上のリンのオキシ酸と、
アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩と、を含む、
非晶質の酸化アルミニウム含有層をエッチングするためのエッチング液組成物。
[2] 前記リンのオキシ酸が、リン酸を含む、[1]に記載のエッチング液組成物。
[3] 前記アミノ基含有化合物および/または前記アンモニウム塩は、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアミン、トリアミン、アンモニウム塩およびアミノ酸からなる群から選択される1種または2種以上を含む、[1]または[2]に記載のエッチング液組成物。
[4] 前記アミノ基含有化合物および/または前記アンモニウム塩は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、2-メチルアミノエタノール、2-エチルアミノエタノール、ジ-n-ブチルアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、アミノ酢酸、アントラニル酸からなる群から選択される1種または2種以上を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載のエッチング液組成物。
[5] 前記リンのオキシ酸の含有量が5.0質量%以上60質量%以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載のエッチング液組成物。
[6] アミノ基含有化合物およびアンモニウム塩の合計の含有量が5.0質量%以上60質量%以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載のエッチング液組成物。
[7] 非晶質の酸化アルミニウムを含む酸化アルミニウム含有層を、エッチング液組成物を用いてエッチングする工程を含み、
前記エッチング液組成物は、リン酸、ホスホン酸およびホスフィン酸からなる群から選択される1種または2種以上のリンのオキシ酸と、アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩と、を含む、酸化アルミニウム含有層のエッチング方法。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によれば、酸化アルミニウム層をエッチングする際にサイドエッチングが抑制され、高精度での酸化アルミニウム層の加工が可能なエッチング液組成物およびエッチング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るエッチング液組成物によるエッチング機構を説明するための概要図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るエッチング液組成物によるエッチング機構を説明するための概要図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るエッチング液組成物によるエッチング機構を説明するための概要図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るエッチング液組成物によるエッチング機構を説明するための概要図である。
図5図5は、実施例1に係るエッチング液組成物によってエッチングした評価基板断面の走査型電子顕微鏡による観察画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るエッチング液組成物およびエッチング方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
1. エッチング液組成物
まず、本発明の一実施形態に係るエッチング液組成物について説明する。本実施形態に係るエッチング液組成物は、リン酸、ホスホン酸およびホスフィン酸からなる群から選択される1種または2種以上のリンのオキシ酸と、アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩と、を含む。本実施形態に係るエッチング液組成物の各成分について、以下、詳細に説明する。
【0014】
上述したように、本実施形態に係るエッチング液組成物は、リン酸、ホスホン酸およびホスフィン酸からなる群から選択される1種または2種以上のリンのオキシ酸を含む。このようなリンのオキシ酸は、酸化アルミニウム含有層中の非結晶の酸化アルミニウムの溶解に寄与し、これにより酸化アルミニウム含有層のエッチングが進行する。例えば、リンのオキシ酸がリン酸を含む場合、酸化アルミニウムは以下の化学反応式に従い反応して、エッチング液組成物中に溶解する。

Al + 2HPO → 2AlPO + 3H
【0015】
また、リンのオキシ酸を含むエッチング液組成物は、フッ素化合物を含むエッチング液と比較して、エッチング速度が小さく、後述するサイドエッチングの抑制に適している。具体的には、例えば、リン酸を含むエッチング液組成物は、一般には、酸化アルミニウムのエッチングレートが数十nm/min程度の場合が多く、このような場合絶縁膜用途として用いられる酸化アルミニウム(膜厚:50nm程度)のエッチングに適している。
さらに、従来の塩酸や硝酸、フッ素化合物等の酸を含むエッチング液は、レジストと酸化アルミニウム界面に薬液が浸透し、サイドエッチが進行しやすいという問題があった。これに対しリンのオキシ酸を含むエッチング液組成物は横方向へのエッチングの進行が比較的少ないという性質を本発明者らは確認した。本実施形態に係るエッチング液組成物は、後述するアミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩を含むことにより、さらなるサイドエッチングの抑制を達成している。
【0016】
さらに、リンのオキシ酸を含むエッチング液組成物は、フッ素化合物を含むエッチング液と比較して、GaN、Ga等の次世代半導体材料を基板とする部材をエッチングする際に、基板へのダメージを小さくすることができる。
【0017】
リンのオキシ酸は、上述した中でも、好ましくはリン酸を含む。これにより、エッチング時に酸化アルミニウム含有層に形成されるテーパーの角度(テーパー角)を比較的大きくすることができる。この場合において、上述した効果をより確実に得る観点から、リンのオキシ酸中におけるリン酸の含有量は、例えば、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。特に、リンのオキシ酸は、好ましくは本質的にリン酸からなり、より好ましくはリン酸からなる。
【0018】
エッチング液組成物中のリンのオキシ酸の含有量は、特には限定されないが、適度なエッチング速度を得るために、例えば1.0質量%以上、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上である。また、他の成分を十分に含める観点から、エッチング液組成物中のリンのオキシ酸の含有量は、例えば90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0019】
また、エッチング液組成物は、アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩を含む。これにより、酸化アルミニウム含有層のエッチング時におけるエッチング速度を抑制し、サイドエッチングを抑制することができる。
【0020】
詳しく説明すると、まず、酸化アルミニウム含有層は、一般にレジストとの密着性が低い。このため、酸化アルミニウム含有層上にレジストを配置し、この酸化アルミニウム含有層に対してエッチング液が接触すると、酸化アルミニウム層とレジストとの間に液が浸透するため、横方向へのエッチングが進行しやすい傾向があった。このため、酸化アルミニウム含有層をエッチングする際には、サイドエッチング量が大きくなりやすい問題があった。
【0021】
本発明者らはこのような問題を知覚するとともに着目し、サイドエッチング量を小さくするためにエッチング液組成物の組成を検討した。この結果、アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩をエッチング液組成物に添加することにより、酸化アルミニウム含有層のエッチング時におけるエッチング速度を抑制し、サイドエッチングを抑制することができることを、本発明者らは見出した。サイドエッチングを抑制する機構は明らかではないが、本発明者らは以下のようなものを推測している。
【0022】
図1図4、本実施形態に係るエッチング液組成物による非晶質の酸化アルミニウム含有層のエッチングを説明するための模式図である。基板100上には非晶質の酸化アルミニウム含有層10が配置され、非晶質の酸化アルミニウム含有層10の表面の一部にはレジスト20が配置されている。そして、図1図4の説明においては、この基板100をエッチング液組成物30に浸漬することにより非晶質の酸化アルミニウム含有層10のエッチングを行う。
【0023】
図1に示すように、まず、非晶質の酸化アルミニウム含有層10を有する基板100を本実施形態に係るエッチング液組成物30に浸漬した場合に、アミノ基含有化合物およびアンモニウム塩31は、酸化アルミニウム表面11に吸着されて、アミノ基含有化合物およびアンモニウム塩31の皮膜状の層33が酸化アルミニウム表面11の最表面に形成される。
【0024】
図2に示すように、次に、エッチング液組成物30中のリンのオキシ酸32が非晶質の酸化アルミニウム含有層10のレジスト20が配されていない酸化アルミニウム表面11と反応し、非晶質の酸化アルミニウム含有層10の被エッチング部12がエッチングされる。この場合において、酸化アルミニウム表面11にはすでにアミノ基含有化合物およびアンモニウム塩31の皮膜状の層32が形成されている。したがって、被エッチング部12のリンのオキシ酸32による被エッチング部12のエッチング速度は、アミノ基含有化合物およびアンモニウム塩31により抑制されている。そして、被エッチング部12は、酸化アルミニウム表面11からエッチング液組成物30により等方にエッチングされる。
【0025】
そして、図3に示すように、被エッチング部12がエッチングされた後に新たな酸化アルミニウム表面11Aが露出し、これにアミノ基含有化合物およびアンモニウム塩31が吸着される。このアミノ基含有化合物およびアンモニウム塩31の酸化アルミニウム表面11、11Aへの吸着とリンのオキシ酸32による等方のエッチングが繰り返されて、図4に示すように非晶質の酸化アルミニウム含有層10がエッチングされる。
【0026】
この際において、リンのオキシ酸32を含むエッチング液組成物30は、酸化アルミニウム含有層10とレジスト20との間に比較的浸透しにくいことから、エッチング液組成物30によるエッチングは等方に行われる。さらに、エッチング液組成物30によるエッチングの速度は比較的抑制されていることから、過度にエッチングが進行して、サイドエッチング量が大きくなることが抑制されている。さらには、エッチング速度が抑制されていることから、サイドエッチングによって生じるテーパー部13のテーパー角を比較的大きくすることができ、テーパー部13の形状を適切に形成することができる。
【0027】
以上説明したエッチング液組成物30による非晶質の酸化アルミニウム含有層10のエッチングの過程は、あくまでも本発明者らによる推察にすぎない。しかしながら、本発明者らは、本実施形態に係るエッチング液組成物を用いて非晶質の酸化アルミニウム含有層を実際にエッチングした際に、酸化アルミニウム表面にアミノ基含有化合物およびアンモニウム塩が付着していることを実験的に確認している。
【0028】
アミノ基含有化合物は、第1級、第2級および/または第3級アミノ基を有する化合物である。アミノ基含有化合物としては、特に限定されないが、例えば、アミンおよびアミノ酸等が挙げられる。アミンとしては、アルカノールアミン、アルキルアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミン等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
アルカノールアミンとしては、特に限定されないが、例えば、メタノールアミン、モノエタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、モノイソプロパノールアミン(1-アミノ-2-プロパノール)、ヘプタミノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン(2-メチルアミノエタノール)、N-メチルジエタノールアミン(2-エチルアミノエタノール)、N-エチルエタノールアミン(2-(エチルアミノ)エタノール)、N-ブチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、トリ2-(メチルアミノ)エタノール、2-(アミノエチルアミノ)エタノール等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
上述した中でも、アミノ基含有化合物は、アルカノールアミンを含む場合、好ましくは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-メチルアミノエタノールおよび2-エチルアミノエタノールから選択される1種または2種以上を含み、より好ましくは、モノエタノールアミンを含む。これにより、サイドエッチング量(シフト)をより確実に抑制し、テーパー角を比較的大きくしてテーパー部の形状を良好なものとすることができる。
【0031】
アルキルアミンとしては、特に限定されないが、例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、t-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、2-エチルヘキシルオキシプロピルアミン、2-エトキシプロピルアミン、アリルアミン、3-メトキシプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、ジアリルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-t-ブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリアリルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、イミノプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上述した中でも、アミノ基含有化合物は、アルキルアミンを含む場合、好ましくはジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-ブチルアミンおよびジイソプロピルアミンから選択される1種または2種以上を含み、より好ましくはトリエチルアミンを含む。これにより、サイドエッチング量(シフト)をより確実に抑制し、テーパー角を比較的大きくしてテーパー部の形状を良好なものとすることができる。
【0033】
ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、プトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、3-アミノベンジルアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上述した中でも、アミノ基含有化合物は、ジアミンを含む場合、好ましくは1,2-プロパンジアミンおよび/または1,3-プロパンジアミンを含み、より好ましくは1,3-プロパンジアミンを含む。これにより、サイドエッチング量(シフト)をより確実に抑制し、テーパー角を比較的大きくしてテーパー部の形状を良好なものとすることができる。
【0035】
トリアミンとしては、特に限定されないが、例えば、メタントリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、プロパントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、シクロヘキサントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
上述した中でも、アミノ基含有化合物は、トリアミンを含む場合、好ましくはジエチレントリアミンおよび/またはトリエチレントリアミンを含み、より好ましくはジエチレントリアミンを含む。これにより、サイドエッチング量(シフト)をより確実に抑制し、テーパー角を比較的大きくしてテーパー部の形状を良好なものとすることができる。
【0037】
ポリアミンは、本明細書においては、1分子中に4個以上のアミノ基を有する化合物をいう。ポリアミンとしては、特に限定されないが、例えばポリアルキレンポリアミン等が挙げられる。ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリス(2-アミノエチル)アミン等を挙げることができる。
【0038】
アミノ酸としては、特に限定されないが、アミノ酢酸、アントラニル酸、アミノ吉草酸、アルギニン、β-アラニン、グリシン、セリン、システイン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、メチオニン等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
上述した中でも、アミノ基含有化合物は、アミノ酸を含む場合、好ましくはアミノ酢酸および/またはアントラニル酸を含み、より好ましくはアミノ酢酸を含む。これにより、サイドエッチング量(シフト)をより確実に抑制し、テーパー角を比較的大きくしてテーパー部の形状を良好なものとすることができる。
【0040】
アンモニウム塩としては、特に限定されないが、塩化アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、スルホン酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
上述した中でも、アンモニウム塩は、好ましくは硝酸アンモニウムおよび/または硫酸アンモニウムを含み、より好ましくは硝酸アンモニウムを含む。これにより、サイドエッチング量(シフト)をより確実に抑制し、テーパー角を比較的大きくしてテーパー部の形状を良好なものとすることができる。
【0042】
上述した中でも、アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩は、好ましくはアルカノールアミン、アルキルアミン、ジアミン、トリアミン、アンモニウム塩およびアミノ酸からなる群から選択される1種または2種以上を、より好ましくはアルカノールアミン、アルキルアミン、ジアミンおよびトリアミンからなる群から選択される1種または2種以上を、さらに好ましくはアルカノールアミンを、含む。これにより、サイドエッチング量(シフト)をより確実に抑制し、テーパー角を比較的大きくしてテーパー部の形状を良好なものとすることができる。
【0043】
上述した中でも、アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩は、好ましくはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、2-メチルアミノエタノール、2-エチルアミノエタノール、ジ-n-ブチルアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、アミノ酢酸、アントラニル酸からなる群から選択される1種または2種以上を、より好ましくはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、2-メチルアミノエタノール、2-エチルアミノエタノール、ジ-n-ブチルアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレントリアミンからなる群から選択される1種または2種以上を、さらに好ましくはモノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンからなる群から選択される1種または2種以上を、含む。これにより、サイドエッチング量(シフト)をより確実に抑制し、テーパー角を比較的大きくしてテーパー部の形状を良好なものとすることができる。
【0044】
上述したようなアミノ基含有化合物およびアンモニウム塩の合計の含有量は、特に限定されないが、例えば0.50質量%以上、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、さらに好ましくは5.0質量%以上である。これにより、アミノ基含有化合物およびアンモニウム塩を含めることによる、上述した効果をより確実に得ることができる。
【0045】
また、アミノ基含有化合物およびアンモニウム塩の合計の含有量は、特に限定されないが、例えば70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。これにより、リンのオキシ酸をエッチング液組成物中に十分に含ませることができるとともに、エッチング速度の過度の低下を抑制することができる。
【0046】
また、エッチング液組成物は、通常溶媒を含む。溶媒としては、特に限定されないが、一般には水が用いられる。しかしながら、エッチング液組成物は、溶媒として有機溶媒を含んでもよい。
【0047】
このような有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒等の各種水と混合可能な有機溶媒が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール系溶媒、エチレングリコール等のグリコール系溶媒等や、グリセリン等のその他多価アルコールが挙げられる。
【0049】
また、エッチング液組成物の溶媒中における水の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。特に、エッチング液組成物の溶媒は、好ましくは本質的に水からなり、より好ましくは水からなる。
【0050】
エッチング液組成物における溶媒の含有量は、特に限定されず、他の成分の残部とすることができる。より具体的には、エッチング液組成物における溶媒の含有量は、例えば、10質量%以上95質量%以下、好ましくは20質量%以上90質量%以下である。
【0051】
また、エッチング液組成物は、必要に応じて上述した成分以外の成分を含んでもよい。このような成分としては、例えば界面活性剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0052】
以上説明した本実施形態に係るエッチング液組成物は、上述したように、非晶質の酸化アルミニウム(Al)含有層をエッチングするために用いられる。このような非結晶の酸化アルミニウム含有層は、半導体デバイス等の電子デバイスの絶縁膜として用いることができる。電子デバイス等の部品に用いられる酸化アルミニウム膜は、主に非晶質(アモルファス)構造を有するものと結晶質構造を有するものに分類される。
【0053】
結晶質の酸化アルミニウム膜は、非晶質の酸化アルミニウム膜にアニール処理等の加熱処理を実施することで得られる。結晶質の酸化アルミニウム膜はエッチング液組成物により溶出しづらく、エッチングには熱リン酸等を用いた過酷な条件が必要である。したがって、本実施形態に係るエッチング液組成物は、非晶質の酸化アルミニウム含有層を被エッチング対象とする。
【0054】
上述したように酸化アルミニウム含有層は、非晶質の酸化アルミニウムを含む。ここで、非晶質の酸化アルミニウムは、例えば、X線回折法によって酸化アルミニウム結晶由来のピークが確認されない、もしくは非晶質由来のハローピークが確認される酸化アルミニウムをいう。このような非晶質の酸化アルミニウムは、堆積法や蒸着法等で形成することができる。
【0055】
また、酸化アルミニウム含有層中における非晶質の酸化アルミニウムの含有量は、特に限定されないが、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。特に、酸化アルミニウム含有層は、好ましくは本質的に非晶質の酸化アルミニウムからなり、より好ましくは非晶質の酸化アルミニウムからなる。このように、非晶質の酸化アルミニウムが比較的多く酸化アルミニウム含有層中に含まれることにより、本実施形態に係るエッチング液組成物による効果が十分に発揮される。
【0056】
また、酸化アルミニウム含有層中における酸化アルミニウムの含有量は、特に限定されないが、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。特に、酸化アルミニウム含有層は、好ましくは本質的に酸化アルミニウムからなり、より好ましくは酸化アルミニウムからなる。このように、酸化アルミニウムが比較的多く酸化アルミニウム含有層中に含まれることにより、本実施形態に係るエッチング液組成物による効果が十分に発揮される。
【0057】
また、酸化アルミニウム含有層中には、酸化アルミニウム以外の成分が含まれていてもよい。
【0058】
以上説明した本実施形態に係るエッチング液組成物によれば、非晶質の酸化アルミニウム含有層のエッチングにおいて、アミノ基含有化合物およびアンモニウム塩は、酸化アルミニウム表面に吸着されて、アミノ基含有化合物およびアンモニウム塩の皮膜状の層が酸化アルミニウム表面の最表面に形成される。
【0059】
そして、この状態の酸化アルミニウム表面に対し、リンのオキシ酸によるエッチングが行われる。ここで、リンのオキシ酸によるエッチング速度は、酸化アルミニウム表面に付着したアミノ基含有化合物およびアンモニウム塩により抑制されている。このアミノ基含有化合物およびアンモニウム塩による酸化アルミニウム表面への吸着とリンのオキシ酸によるエッチングが繰り返されることによりエッチングが抑制された速度で進行し、かつエッチングは等方に行われる。このため、過度にエッチングが進行して、サイドエッチング量が大きくなることが抑制されている。さらには、エッチング速度が抑制されていることから、サイドエッチングによって生じるテーパー部のテーパー角を比較的大きくすることができ、テーパー部の形状を適切に形成することができる。
【0060】
以上より、本実施形態に係るエッチング液組成物を用いた場合、従来のエッチング液を用いた場合と比較して、サイドエッチングが抑制され、高精度のエッチングが可能となる。したがって、本実施形態に係るエッチング液組成物により、より微細なパターン構造を有する半導体デバイスのウェットエッチング加工が可能となり、このような半導体デバイスの量産化に貢献することができる。
【0061】
本実施形態に係るエッチング液組成物は、いかなる方法で製造するものであってもよい。本実施形態に係るエッチング液組成物は、各成分を溶媒と混合することにより調製してもよい。また、本実施形態に係るエッチング液組成物は、予め調製されている必要はなく、例えば、エッチングを行う直前に調製してもよい。
【0062】
2. エッチング方法
次に、本発明の一実施形態に係るエッチング方法について説明する。本実施形態に係るエッチング方法は、酸化アルミニウム含有層のエッチング方法であって、非晶質の酸化アルミニウムを含む酸化アルミニウム含有層を、エッチング液組成物を用いてエッチングする工程を含み、前記エッチング液組成物は、リン酸、ホスホン酸およびホスフィン酸からなる群から選択される1種または2種以上のリンのオキシ酸と、アミノ基含有化合物および/またはアンモニウム塩と、を含む。なお、本実施形態においては、エッチング液組成物として、上述した本実施形態に係るエッチング液組成物を使用するものとして説明する。
【0063】
本実施形態においてエッチングの対象となる酸化アルミニウム含有層としては、例えば、上述した酸化アルミニウム含有層が挙げられる。通常、図1に示すように酸化アルミニウム含有層10は基板100上に配置され、酸化アルミニウム含有層10の酸化アルミニウム表面11の一部にはレジスト20が配されている。なお、基板100は、例えば、半導体基板であることができる。
【0064】
エッチングは、酸化アルミニウム含有層をエッチング液組成物に接触させることにより行うことができる。具体的には、酸化アルミニウム含有層を有する基板を基板ごとエッチング液組成物中に浸漬する、または基板に対しシャワー等によりエッチング液組成物を噴霧することにより行うことができる。
【0065】
前者の方法についてはバッチ式エッチング装置等を用いて行うことができ、また、後者の方法については枚葉式シャワーエッチング装置等を用いて行うことができる。このように、本実施形態においては、エッチング液組成物の成分、処理条件(温度、時間)、処理方法(浸漬時のエッチング液の流動、基板の揺動、シャワーの圧力/流量等)を容易に調節することができ、最適化することができる。このため、エッチングにより容易に酸化アルミニウム含有層のパターンを形成することができる。
【0066】
エッチングする際の温度、時間、浸漬時のエッチング液の流動条件および基板の搖動条件(エッチング液組成物をシャワーにして基板に噴霧する条件も含む)の最適化は当業者であれば適宜行うことができるが、特に温度は、30℃以上80℃以下であることが好ましい。温度が上記範囲内であると、適正なエッチングレートが得られる。
【0067】
エッチングレート(エッチング速度)は、特に限定されないが、酸化アルミニウム含有層(または膜)をその表面に有する基板に対し、該層(または該膜)の厚み方向に、例えば、1.0nm/min以上200nm/min.以下、好ましくは1.0nm/min以上150nm/min以下、より好ましくは2.0nm/min以上100nm/min以下、さらに好ましくは2.5nm/min以上50nm/min以下である。エッチングレートが前記範囲内であると、エッチングが完了するまでの時間(例えば1~60分間)を比較的短くしつつ、サイドエッチング量を十分に小さくすることができるため好適である。このようなエッチングレートは、エッチング液組成物中の成分を適宜調節するあるいは、エッチング液組成物の温度を調節することにより、調節することができる。
【0068】
エッチングによるサイドエッチング量は、100nm以下であることが好ましい。サイドエッチング量は、酸化アルミニウム含有層およびレジストの断面を観察した際に、酸化アルミニウム含有層上に配置されたレジストの端部からレジスト下にある酸化アルミニウム含有層までの距離のうち、酸化アルミニウム含有層に平行かつ最長の距離として定義することができる。例えば、図4の場合、サイドエッチング量は、dで表わされる。
【0069】
以上説明した本実施形態に係るエッチング方法によれば、特定のエッチング液組成物を用いることにより、エッチング速度が抑制されていることから、サイドエッチングによって生じるテーパー部のテーパー角を比較的大きくすることができ、テーパー部の形状を適切に形成することができる。そして、従来のエッチング液を用いたエッチング方法と比較して、サイドエッチングが抑制され、高精度のエッチングが可能となる。したがって、本実施形態に係るエッチング方法により、より微細なパターン構造を有する半導体デバイスのウェットエッチング加工が可能となり、このような半導体デバイスの量産化に貢献することができる。
【0070】
また、本発明は、一態様において、前述した本実施形態に係るエッチング液組成物を用いて、非晶質の酸化アルミニウム層または非晶質の酸化アルミニウム含有層をその表面に有する基版をエッチングする工程を含む、絶縁膜の製造方法にも関する。
したがって、さらに本発明は、一態様において、前記のエッチングする方法により、非晶質の酸化アルミニウム層または非晶質の酸化アルミニウム含有層をその表面に有する基版がエッチングされて得られる、絶縁膜にも関する。
得られる絶縁膜は、化合物半導体デバイス、電子部品デバイス等の用途に合ったパターニング、寸法、構造を有することが好ましい。
【0071】
以上、本発明について好適な実施形態に基づき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
【実施例0072】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0073】
1.エッチング液組成物の調製
まず、実施例1~19および比較例1~7に係るエッチング液組成物を調製した。具体的には、表1または表2に記載されるように、酸および添加物を水に添加し、混合することにより実施例1~19および比較例1~7に係るエッチング液組成物を調製した。表1、2における酸および添加物以外の残部は水である。
【0074】
2.評価
2.1. エッチングレート測定
シリコン基板の表面に、原子層堆積法により酸化アルミニウムを50nm成膜した評価基板を作成した。この評価基板を1.0cm×1.0cmに割断し、50℃かつ100mLの実施例1~19および比較例1~7に係るエッチング液組成物が入ったガラス製またはポリエチレン製容器中に、浸漬した。基板を浸漬したまま1~3分間撹拌してエッチング処理を行い、その後、超純水にてリンスを1分間行い、窒素ブローにより乾燥させた。
【0075】
エッチング前後の各評価基板について、蛍光X線分析装置を用いて基板上の酸化アルミニウムの膜厚を測定し、膜厚変化量と浸漬時間とからエッチングレート(E.R.)を算出した。処理温度50℃でのエッチングレートが2.5nm/min以上かつ50nm/min以下の場合、エッチングレートが実用的な範囲であると評価し(A)、それ以外の場合には実用的な範囲にないと評価した(B)。結果を表1および表2に示す。
【0076】
2.2. サイドエッチおよびテーパー角の測定
評価基板の表面の一部にレジストパターニングをした図1に示す基板100に準じた評価基板を作製した。この評価基板を1.0cm×1.0cmに割断し、50℃かつ100mLの実施例1~19および比較例1~7に係るエッチング液組成物が入ったガラス容器中に、浸漬した。基板を浸漬したまま1~3分間撹拌してエッチング処理を行い、その後、超純水にてリンスを1分間行い、窒素ブローにより乾燥させた。浸漬時間(処理時間)については各エッチング液組成物のエッチングレートからエッチング完了時間(Just Etching Time:J.E.T.)を算出し、J.E.T.の1.5倍に統一した。エッチング後の評価基板を割断した後、基板断面を走査型電子顕微鏡にて観察し、サイドエッチ量とテーパー角を測定した。
【0077】
サイドエッチング量が100nmの場合、サイドエッチング量について実用的な範囲であると評価し(A)、それ以外の場合には実用的な範囲にないと評価した(B)。また、テーパー角が40°以上90°以下の場合、テーパー角について実用的な範囲であると評価し(A)、それ以外の場合には実用的な範囲にないと評価した(B)。結果を表1および表2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
表1に示すように、実施例1~19に係るエッチング液組成物は、エッチングレートが適切な範囲にあり、かつサイドエッチング量が小さく、テーパー角が45°前後の好ましい範囲にあった。図5に実施例1に係るエッチング液組成物によってエッチングした評価基板断面の走査型電子顕微鏡による観察画像を示す。図5からも明らかなように、実施例1に係るエッチング液組成物によってエッチングされた評価基板は、比較例1~7の他のエッチング液組成物を用いた場合と比較して、サイドエッチが少なくかつ平滑なテーパー面を形成していた。
【0081】
これに対し、比較例1~7に係るエッチング液組成物は、いずれもサイドエッチング量が大きかった。例えば、比較例6、7に係るエッチング液組成物は、酸としてフッ酸を用いたが、エッチングレートが300nm/min程度と非常に大きくエッチングの制御が困難であり、15秒程度の処理で180nm、260nm程度のサイドエッチングが進行していた。比較例1、2においては、エッチングレートを比較的小さくすることが可能であったものの、サイドエッチング量が大きくなり、かつテーパー角も小さくなった。例えば、比較例1のエッチングレートは、25nm/min程度であったものの、サイドエッチング量は195nm程度と依然として高い値であった。また、比較例3~5ではリンのオキシ酸以外の酸を用い、モノエタノールアミンを添加したが、エッチングレートも極めて小さい上、サイドエッチング量も大きく、さらにテーパー角も非常に小さくなった。
【符号の説明】
【0082】
10 酸化アルミニウム含有層
20 レジスト
30 エッチング液組成物
100 基板
図1
図2
図3
図4
図5