(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063317
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】細胞遊走促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/644 20150101AFI20240502BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240502BHJP
A61K 36/22 20060101ALI20240502BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240502BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240502BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240502BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240502BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240502BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240502BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A61K35/644
A23L33/10
A61K36/22
A61K36/185
A61P43/00 107
A61P17/02
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/70 401
A61K9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171148
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 央子
(72)【発明者】
【氏名】八巻 礼訓
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD77
4B018ME14
4C076AA06
4C076AA11
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4C076FF11
4C076FF68
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4C087MA16
4C087MA28
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4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB22
4C088AB12
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4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB22
(57)【要約】
【課題】既に創傷治癒効果が報告されている蜂蜜よりも高い活性を有する細胞遊走促進剤を提供する。さらに、該細胞遊走促進剤を含む創傷治癒剤及び創傷被覆剤を提供する。
【解決手段】はぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜からなる群から選択される少なくとも1種を含む細胞遊走促進剤、並びに該細胞遊走促進剤を含む創傷治癒剤及び創傷被覆剤。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜からなる群から選択される少なくとも1種を含む細胞遊走促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞遊走促進剤を含む創傷治癒剤。
【請求項3】
請求項1に記載の細胞遊走促進剤を含む創傷被覆剤。
【請求項4】
飲食品、化粧品、医薬品又は医薬部外品である、請求項2に記載の剤。
【請求項5】
化粧品、医薬品又は医薬部外品である、請求項3に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞遊走促進剤に関し、より具体的には、蜂蜜を含む細胞遊走促進剤に関する。さらに、本発明は、該細胞遊走促進剤を含む創傷治癒剤及び創傷被覆剤に関する。
【背景技術】
【0002】
蜂蜜(ハチミツ)は、ミツバチが集めた甘味物であり、ブドウ糖、果糖、ショ糖などの糖分を主成分としているが、ビタミン類、必須アミノ酸類、ミネラル類等の人間に不可欠の栄養成分も豊富に含まれており、体力回復の食品、また栄養価の高い健康食品として広く親しまれている。蜂蜜は食用のみならず、様々な健康効果や美容効果を有することが知られている。例えば、蜂蜜を抗菌剤、創傷治療用組成物、化粧品用組成物などとして様々な用途に利用することができる。
【0003】
このように、蜂蜜には創傷治癒効果があることが古くから知られている。ヨーロッパでは、イギリスの国民保健サービス(NHS)に医療器具として認可されており、アメリカでは、アメリカ食品医薬品局(FDA)で医療器具として認可されている。また、ニュージーランドではマヌカ蜂蜜の入った、ゲル状製剤(抗菌傷口用ジェル:メディハニー)が製品化されている。
【0004】
蜂蜜の成分はその材料となる基原植物の種類や配合率に影響されるため、基原植物によって、蜂蜜に含まれる有効成分の種類や含有量とその生理活性が全く異なることが知られている。このような様々な蜂蜜の創傷治癒効果について非特許文献1及び2で報告されている。
【0005】
非特許文献1では、マヌカ蜂蜜、甘露蜂蜜、アカシア蜂蜜について、マウスの切除創に対して治癒効果を示すことが報告されている。
【0006】
また、非特許文献2では、マヌカ蜂蜜、アカシア蜂蜜、そば蜂蜜を用いたHaCaTケラチノサイトの再上皮化のインビトロ試験を行い、メカニズムについて調べたことが報告されている。
【0007】
マヌカ(Leptospermum scoparium)は主にニュージーランドに生育するフトモモ科の木本植物である。蜂蜜の中でも、マヌカ由来の蜂蜜は、特に高い抗菌性を有することが知られている。
【0008】
甘露蜂蜜は、ヨーロッパでは「森の蜜」と呼ばれ、さまざまな木(カシやマツ、モミ、トウヒなど)からでる樹液を昆虫が一旦体に取り入れたのち、その糖分だけを再び樹木の葉や幹に水滴の形で残したものをミツバチが集め、蜂蜜に仕上げたものである。マヌカ蜂蜜と同様に、高い抗菌性を有することが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Wounds a Compendium of Clinical Research and Practice,30(7),197-204
【非特許文献2】Wound Repair Regen.2012 Sep-Oct_20(5)778-85.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、既に創傷治癒効果が報告されている蜂蜜よりも高い活性を有する細胞遊走促進剤を提供することを目的とする。さらに、本発明は、該細胞遊走促進剤を含む創傷治癒剤及び創傷被覆剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の非特許文献1及び2によってマヌカ蜂蜜、甘露蜂蜜、アカシア蜂蜜、そば蜂蜜に創傷治癒作用があることが報告されている。蜂蜜はミツバチが採取する植物を原料とするため、基原植物によって成分の違いが見られることから、基原植物により効果は異なることが予想される。そこで、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、はぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜が、マヌカ蜂蜜、甘露蜂蜜、アカシア蜂蜜及びそば蜂蜜より高い細胞遊走性を有していることを見出した。
【0012】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の細胞遊走促進剤、創傷治癒剤及び創傷被覆剤を提供するものである。
【0013】
[1]はぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜からなる群から選択される少なくとも1種を含む細胞遊走促進剤。
[2][1]に記載の細胞遊走促進剤を含む創傷治癒剤。
[3][1]に記載の細胞遊走促進剤を含む創傷被覆剤。
[4]飲食品、化粧品、医薬品又は医薬部外品である、[2]に記載の剤。
[5]化粧品、医薬品又は医薬部外品である、[3]に記載の剤。
【発明の効果】
【0014】
はぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜は、優れた細胞遊走作用を有しているので、細胞遊走促進剤の有効成分として有用である。さらに、これらの蜂蜜は優れた細胞遊走作用を有していることから、創傷被覆剤及び創傷被覆剤の有効成分としても有用である。
【0015】
また、蜂蜜は、従来から食品素材として用いられてきたものであるから、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】試験例における各種の蜂蜜の細胞遊走性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の細胞遊走促進剤は、はぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜からなる群から選択される少なくとも1種(以下、「本発明の蜂蜜」と称することもある)を有効成分として含み、はぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜からなる群から選択される少なくとも1種のみからなってもよい。また、本発明の創傷治癒剤及び創傷被覆剤は、はぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜からなる群から選択される少なくとも1種を細胞遊走促進のための成分とする上記細胞遊走促進剤を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明において「創傷治癒剤」とは、創傷を治療するための「内服剤」、「外用剤(被覆剤)」などを意味する。また、本発明において「創傷被覆剤」とは、創傷部位を被覆するためのジェル、泡及び液体状製剤、これらを塗布した被覆用シートなどを意味する。
【0020】
蜂蜜は、ミツバチが、植物の花蜜、樹液、植物に寄生する虫の分泌液等から集めた蜜を主原料として作り出したものである。蜂蜜を採取するために利用されるミツバチの種類、及び蜂蜜の産地は特に限定されない。本発明においては蜂蜜として精製蜂蜜や加糖蜂蜜も使用することができる。また、2種以上の蜂蜜を混合して用いることもできる。精製蜂蜜とは、蜂蜜から臭い、色等を取り除いたものであり、加糖蜂蜜とは、蜂蜜に異性化液糖その他の糖類を加えたものであって、蜂蜜の含有量が重量百分比で60%以上のものである。
【0021】
はぜ蜂蜜は、ウルシ科ウルシ属のはぜ(Toxicodendron succedaneum)の花から採取できる蜜を由来とする蜂蜜である。
【0022】
そよご蜂蜜は、モチノキ科モチノキ属のそよご(Ilex pedunculosa)の花から採取できる蜜を由来とする蜂蜜である。
【0023】
くろがねもち蜂蜜は、モチノキ科モチノキ属のくろがねもち(Ilex rotunda)の花から採取できる蜜を由来とする蜂蜜である。
【0024】
本発明の細胞遊走促進剤は、好ましくは、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜からなる群から選択される少なくとも1種を有効成分として含む。
【0025】
本発明の細胞遊走促進剤には、はぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜に加えて他の蜂蜜も含まれていてもよい。そのような蜂蜜としては、例えば、マヌカ蜂蜜、甘露蜂蜜、百花蜂蜜、アカシア蜂蜜、クローバー蜂蜜、オレンジ蜂蜜、レンゲ蜂蜜、ローズマリー蜂蜜、ヒマワリ蜂蜜、菜の花蜂蜜、コーヒー蜂蜜、ボダイジュ蜂蜜、パクチー(コリアンダー)蜂蜜、とち蜂蜜、そば蜂蜜、からすさんしょう蜂蜜等が挙げられる。
【0026】
蜂蜜は、蜂の巣箱中に保管されている間は一般に、ミツバチの体温等により35℃前後に保たれている。蜂の巣箱から採取された蜂蜜は一般に、粘度を低下させて輸送、充填等の作業を容易にすること、及び結晶を融解することを目的として、必要に応じて加熱される。
【0027】
蜂蜜の加温温度は、59℃以下、58℃以下、57℃以下、56℃以下、55℃以下、54℃以下、53℃以下、52℃以下、51℃以下、50℃以下、49℃以下、48℃以下、47℃以下、46℃以下、45℃以下、44℃以下、43℃以下、42℃以下、41℃以下、40℃以下、39℃以下、38℃以下、37℃以下、又は36℃以下であってもよい。蜂蜜の加温温度は、例えば35℃以上、36℃以上、又は37℃以上であってよい。蜂蜜の加温温度が35℃以上であると、蜂蜜の粘度を低下させ、蜂蜜中の結晶を低減しやすいなど、蜂蜜の取り扱い性の点で好ましい。
【0028】
採取後の蜂蜜は、採取されたそのままであってもよく、加温前又は後に、タンパク質、ワックス、ゴミ、蜂や巣のカス等の除去、ろ過、有機溶媒による抽出、分画などの精製処理、殺菌、濃縮等の処理が行われてもよい。
【0029】
蜂蜜の組成としては、約80%が糖質であり、そのほか、ビタミン、ミネラル、フラボノイド、有機酸、脂肪酸などの健康成分が含まれており、残りは水分である。蜂蜜の糖質の多くは、ブドウ糖及び果糖であり、他にオリゴ糖や麦芽糖も少量に含まれている。蜂蜜による細胞遊走作用のメカニズムはまだ分かっていないが、糖、ビタミン、ミネラル、フラボノイド、有機酸、脂肪酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク、糖タンパク質などが有効成分である可能性がある。また、複数の成分の相乗効果による効果である可能性もある。
【0030】
本実施形態において、細胞遊走促進剤、創傷治癒剤及び創傷被覆剤における本発明の蜂蜜の含有量は、細胞遊走作用及び創傷治癒作用を発揮できる量であればよく、例えば0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、又は100質量%であってよい。創傷治癒剤及び創傷被覆剤におけるはぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜の含有量は、例えば99.5質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下又は1質量%以下であってよい。
【0031】
本実施形態において、細胞遊走促進剤及び創傷治癒剤に含まれる本発明の蜂蜜の一日の摂取量は、細胞遊走促進作用や創傷治癒作用が得られれば特に限定されず、例えば0.01~70g/日であってよく、4~70g/日がより好ましい。本実施形態に係る細胞遊走促進剤及び創傷治癒剤は一日一回摂取されてもよく、一日二回、一日三回等、複数回に分けて摂取されてもよい。また、摂取のタイミングも特に限定されず、食前、食後、食間、就寝前のいずれのタイミングであってもよい。摂取量は、投与される人の健康状態、投与方法及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、上記範囲内で適宜設定することができる。
【0032】
また、本実施形態において、外用剤として使用される場合の細胞遊走促進剤、創傷治癒剤及び創傷被覆剤に含まれる本発明の蜂蜜の一日の投与量は、細胞遊走促進作用や創傷治癒作用が得られれば特に限定されず、例えば0.01~1000mg/cm2であってよく、10~100mg/cm2がより好ましい。本実施形態に係る細胞遊走促進剤、創傷治癒剤及び創傷被覆剤は一日一回投与されてもよく、一日二回、一日三回等、複数回に分けて投与されてもよい。投与量は、投与される人の健康状態、投与方法及び他の剤との組み合わせ等の因子に応じて、上記範囲内で適宜設定することができる。
【0033】
一実施形態に係る細胞遊走促進剤、創傷治癒剤及び創傷被覆剤は、蜂蜜に加えて、その他の公知の成分、例えば、細胞遊走作用や創傷治癒作用を有する成分を更に含んでいてもよい。公知の細胞遊走作用や創傷治癒作用を有する成分としては、例えばラクトフェリン、コラーゲン、塩化アルミニウム、タンニン、シクロデキストリン等を挙げることができる。
【0034】
細胞遊走作用及び創傷治癒作用は、中央に無細胞ゾーンをもつヒト表皮角化細胞膜を用いて、試験物質添加後の無細胞ゾーンの減少率を測定すること、すなわち細胞遊走性で評価することができる。
【0035】
本発明の細胞遊走促進剤及び創傷治癒剤は、食品組成物(飲食品)、医薬組成物(医薬品)、医薬部外品、化粧品、化粧品原料などとして使用することができる。また、本発明の細胞遊走促進剤及び創傷治癒剤は、それぞれ細胞遊走促進作用、創傷治癒作用を付与する添加剤についての意味も包含するものである。本発明の創傷被覆剤は、医薬組成物(医薬品)、医薬部外品、化粧品などの外用剤として使用することができる。
【0036】
食品組成物(飲食品)としては、食品の3次機能(体調調節機能)が強調されたものであることが好ましい。食品の3次機能が強調された食品としては、例えば、健康食品、機能性食品、栄養組成物(nutritional composition)、栄養補助食品、サプリメント、保健用食品、特定保健用食品、栄養機能食品、又は機能性表示食品等が挙げられる。
【0037】
本発明の蜂蜜を食品組成物に添加して用いる場合、食品組成物は食品として許容される成分を含んでいてもよい。食品組成物として許容される成分としては、例えば、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等が挙げられる。
【0038】
食品組成物は栄養補助食品、サプリメントなどである場合は、固体、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよく、錠剤(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤等を含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、ドリンク、グミ等の剤形であってもよい。これらは、例えば、はぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、及びくろがねもち蜂蜜と、必要に応じて他の成分とを混合して製剤することによって調製することができる。
【0039】
食品組成物は、本発明の蜂蜜を食品に添加して得られたものであってよく、食品としては以下のようなものが挙げられ、これらの製造工程中の中間製品、又は最終製品に、有効量の蜂蜜を混合して、上記の目的に用いられる食品組成物を得ることができる:コーヒー、ジュース及び茶飲料等の清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、並びに、日本酒、洋酒、果実酒及び蜂蜜酒等の酒などの飲料;カスタードクリーム等のスプレッド;フルーツペースト等のペースト;チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ及びプリン等の洋菓子;大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ及び羊羹等の和菓子;アイスクリーム、アイスキャンデー及びシャーベット等の氷菓;カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等の調理済みの食品;ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料及びスープの素等の調味料。
【0040】
食品組成物における本発明の蜂蜜の含有量は、特に限定されず、例えば細胞遊走促進剤及び創傷治癒剤における本発明の蜂蜜の含有量と同じであってよい。上記食品組成物の製法は特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。例えば、食品組成物の製造工程における中間製品又は最終製品に、本発明の蜂蜜を混合等して、上記の目的に用いられる食品組成物を得ることができる。
【0041】
医薬組成物は、本発明の蜂蜜の他に、薬学的に許容される成分、例えば、賦形剤、結合材、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤などを含んでいてもよい。また、ビタミン、生薬など日本薬局方に記載の他の医薬成分と混合してもよい。医薬組成物は、固体、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよく、錠剤(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤等を含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液若しくは電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)、塗布剤若しくは貼付剤等の局所用剤形等の剤形であってもよい。
【0042】
医薬組成物の投与は、局所的であってもよく、全身的であってもよい。投与方法には特に制限はなく、経口的又は非経口的に投与される。非経口的投与経路としては、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内若しくは動脈内への投与、経皮的投与等が挙げられる。
【0043】
医薬組成物における本発明の蜂蜜の含有量は、特に限定されず、例えば細胞遊走促進剤、創傷治癒剤及び創傷被覆剤における本発明の蜂蜜の含有量と同じであってよい。
【0044】
化粧品原料としては、固体、液体、ペースト等のいずれの形状であってもよい。化粧品は薬用化粧品(すなわち、医薬部外品)であってよい。化粧品には、動物(特にヒト)の皮膚、粘膜、体毛、頭髪、頭皮、爪、歯、顔皮、口唇等の部位に適用され得る、あらゆる化粧品が含まれる。
【0045】
化粧品は、本発明の蜂蜜の他、化粧品として許容される成分を含んでいてもよい。化粧品として許容される成分としては、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤を挙げることができる。
【0046】
化粧品の剤形は、例えば、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油2層系、水-油-粉末3層系等であってよい。化粧品としては、例えば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス、美容液、パック、マスク、ミスト、UV予防化粧品等の基礎化粧品、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、イライナー、マスカラ等のメークアップ化粧品、洗顔料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、シェービングクリーム、ボディソープ、石けん、シャンプー、リンス、へアートリートメント、整髪料、へアートニック剤、ヘアミスト、ヘアフォーム、ヘアリキッド、ヘアジェル、ヘアスプレー、育毛剤、制汗剤、入浴剤、マウスリンス、口腔化粧品、歯磨剤、ハンドクリーム、ハンドソープ等であってよい。
【0047】
化粧品における本発明の蜂蜜の含有量は、特に限定されず、例えば細胞遊走促進剤、創傷治癒剤及び創傷被覆剤における本発明の蜂蜜の含有量と同じであってよい。上記化粧品の製法は特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。例えば、化粧品の製造工程における中間製品又は最終製品に、本発明の蜂蜜を混合等して、上記の目的に用いられる化粧品を得ることができる。
【0048】
なお、本発明の化粧品及び医薬組成物には、医薬部外品も包含される。
【0049】
以上説明した細胞遊走促進剤、創傷治癒剤及び創傷被覆剤は、ヒトを含む哺乳動物(好ましくはヒト)に対して適用されるものである。
【0050】
本実施形態において、細胞遊走促進剤及び創傷治癒剤の投与方法は特に限定されず、経口、及び経皮等の非経口のいずれの投与方法であってもよいが、細胞遊走促進作用や創傷治癒作用の観点から、経皮投与が好ましい。すなわち、細胞遊走促進剤及び創傷治癒剤は、直接皮膚創傷患部に適用可能な、皮膚外用剤とするのが好ましい。
【0051】
本実施形態において、創傷被覆剤の投与方法は経皮投与であり、創傷被覆剤は、直接皮膚創傷患部に適用可能な、塗布剤若しくは貼付剤等の皮膚外用剤とするのが好ましい。
【0052】
本発明の蜂蜜は、後述する実施例で示すように皮膚角化細胞の遊走を促進することから皮膚の創傷の治癒作用を発揮することができる。そのため、本発明の蜂蜜は、優れた細胞遊走作用を有しているので、細胞遊走促進剤の有効成分として有用であり、更にやけど、傷、床ずれ、にきび、あせも、しもやけ等の創傷の治療薬(創傷治癒剤)の有効成分として有用である。本発明の蜂蜜は、創傷被覆剤の有効成分としても有用である。
【0053】
また、蜂蜜は、従来から食品素材として用いられてきたものであるから、安全性が高い。
【0054】
なお、本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【実施例0055】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
試験例(細胞遊走性試験)
(1)96穴プレートにDMEM培地を加え、インサートを入れた状態でヒト表皮角化細胞(HaCaT)を培養し、中央に無細胞ゾーンをもつヒト表皮角化細胞膜を形成した。
(2)(1)で作製したプレートに10ng/ml EGF(Epidermal Growth Factor:上皮成長因子)又は0.1%蜂蜜溶液を添加して、37℃で44時間培養し、confocalハイコンテントイメージングシステムにより結果をイメージング化し、無細胞ゾーンの減少率(遊走性)を確認した。無細胞ゾーンの減少率(遊走性)(%)は以下の式により計算した。結果を表1及び
図1に示す。
遊走性(%)=蜂蜜添加時の無細胞ゾーンの遊走細胞の面積÷EGF添加時の無細胞ゾーンの遊走細胞の面積×100
【0057】
【0058】
表1及び
図1から、既に創傷治癒効果が報告されているそば蜂蜜、マヌカ蜂蜜、アカシア蜂蜜及び甘露蜂蜜との活性比較を行い、はぜ蜂蜜、そよご蜂蜜、くろがねもち蜂蜜の遊走性が、そば蜂蜜、マヌカ蜂蜜、アカシア蜂蜜及び甘露蜂蜜の遊走性より高値であることを確認した。