(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006333
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240110BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20240110BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240110BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240110BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
H02J3/14 130
H02J3/00 130
H02J3/32
H02J3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107122
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】三澤 和広
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB21
5G066AA02
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5G066KA11
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で需要調整を的確に行う出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法を提供する。
【解決手段】スマートメータデータ取得部101は、複数の需要家の電力使用量を収集する。分類部102は、電力使用量のうちの充放電装置を有さない非保有需要家の電力使用量を用いて需要家を分類するグループを生成する。グループ判定部105は、充放電装置を保有する推定対象需要家が属するグループをグループの中から選択する。推定部106は、グループ判定部105により選択されたグループに含まれる非保有需要家の電力使用量と推定対象需要家の電力使用量とを基に、推定対象需要家の充放電装置の充放電量を推定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家の電力使用量を収集するデータ取得部と、
前記電力使用量のうちの充放電装置を有さない非保有需要家の電力使用量を用いて前記需要家を分類するグループを生成する分類部と、
前記充放電装置を保有する推定対象需要家が属するグループを前記グループの中から選択するグループ判定部と、
前記グループ判定部により選択されたグループに含まれる前記非保有需要家の電力使用量と前記推定対象需要家の電力使用量とを基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定する推定部と
を備えたことを特徴とする出力推定装置。
【請求項2】
前記グループ判定部は、選択したグループに含まれる前記非保有需要家の電力使用量の代表値を取得し、
前記推定部は、前記グループ判定部により算出された前記代表値と前記推定対象需要家の前記電力使用量の差分を基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定することを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記代表値と前記推定対象需要家の前記電力使用量の差分が前記充放電装置の定格出力の半分の値以上の場合に前記充放電装置が充放電を行っていると判定することを特徴とする請求項2に記載の出力推定装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記代表値と前記推定対象需要家の前記電力使用量の差分を基に前記充放電装置の電池容量を算出し、前記代表値と前記推定対象需要家の前記電力使用量の差分が算出した前記電池容量の半分の値以上の場合に前記充放電装置が充放電を行っていると判定することを特徴とする請求項2に記載の出力推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記推定対象需要家の前記電力使用量から前記充放電装置の充放電量を除いて前記推定対象需要家の実負荷を求めることを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項6】
前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を基に、前記推定対象需要家に対するデマンドリクエスト指令を生成して前記推定対象需要家に通知するデマンドリクエスト通知部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項7】
前記推定部は、前記推定対象需要家の一定期間における電力使用量の平均を前記推定対象需要家の電力使用量として用いることを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項8】
前記推定部は、前記推定対象需要家を含む前記充放電装置を有する複数の保有需要家の電力使用量の平均を前記推定対象需要家の電力使用量として用いることを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項9】
複数の需要家の電力使用量を収集し、
前記電力使用量のうちの充放電装置を有さない非保有需要家の電力使用量を用いて前記需要家を分類するグループを生成し、
前記充放電装置を保有する推定対象需要家が属するグループを前記グループの中から選択し、選択したグループに含まれる前記非保有需要家の電力使用量と前記推定対象需要家の電力使用量とを基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする出力推定プログラム。
【請求項10】
出力推定装置に、
複数の需要家の電力使用量を収集させ、
前記電力使用量のうちの充放電装置を有さない非保有需要家の電力使用量を用いて前記需要家を分類するグループを生成させ、
前記充放電装置を保有する推定対象需要家が属するグループを前記グループの中から選択させ、選択したグループに含まれる前記非保有需要家の電力使用量と前記推定対象需要家の電力使用量とを基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定させる
ことを特徴とする出力推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低炭素社会の実現やエネルギーの効率的な利用に向け、今後太陽光発電(PV:Photovoltaics)や蓄電池などのエネルギー機器を活用する需要家が増加していくことが想定される。各需要家の蓄電池による充放電が特定の時間帯に集中すると、その時間帯の電力需要が増大し、電力系統の負荷率が低下するおそれがある。電力系統の負荷率が低下した場合、電力系統の運用効率が低下してしまう。
【0003】
このように、蓄電池充放電により、電力系統の需要変動が複雑化することが考えられる。このような電力系統の需要変動の複雑化により、これまで以上に需要変化率が高まることも想定される。需要変化率が拡大した場合、最低需要と最大需要との差が大きくなり、短時間で急速にその差を埋めなければならなくなり、電力系統の必要調整量が増大してしまう。さらに、電力系統の調整が追い付かなかった場合には、電力を供給できない事態に発展する可能性がある。
【0004】
このような事態を回避するため、ヒートポンプ式給湯機や蓄電池などの需要家機器を用いて需要変化率を低減させるといった対策の検討が望まれている。需要家機器を用いた対策を考えた場合、需要家側資源を活用するアグリゲータと呼ばれる仲介業者や小売電気事業者が、系統運用者の需要調整に寄与することで対価を得るビジネスが成立すると期待される。
【0005】
需要家機器を用いた需要調整の1つの方法として、デマンドレスポンス(DR:Demand Response)を活用することが考えられる。デマンドレスポンスとは、経済メリットを提供することにより需要を調整する技術である。例えば、デマンドレスポンスの活用としては、需要家における蓄電池の充放電にインセンティブやペナルティを与えることで、需要家の蓄電池を制御するといった需要調整が考えられる。
【0006】
需要調整を適切に行うためには、蓄電池などの需要家機器の充放電を把握することが求められる。そこで、小売電気事業者やアグリゲータは、スマートメータと蓄電池との間にセンサを設置して蓄電池の充放電情報を取得し、センサから取得した蓄電池の充放電情報を用いてデマンドレスポンス指令を発して需要調整を行っている。
【0007】
デマンドレスポンスを用いた需要調整の技術として、例えば、一日の充電量及び放電量を事前に得られる条件下で、各蓄電池に充電するための時間帯毎の総充電電力曲線を決定し、その曲線と鏡像関係にある曲線にしたがって電気料金を決定する従来技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の需要調整技術では、蓄電池の充放電量の情報を得るために新たなセンサの設置及びセンサから情報を得るための新たな通信設備の設置が必要であった。新たな通信設備を用いた情報収集ルートとは、送配電事業者とスマートメータとを結ぶAルート及び送配電事業者とアグリゲータなどとを結ぶCルート以外のルートである。このように新たな設備を設ける場合、個々の需要家における蓄電池の充放電量を得るためには、多くの作業が必要となり且つコストも高くなり、的確な需要調整の実現は困難であった。
【0010】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で需要調整を的確に行う出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の開示する出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法の一つの態様において、データ取得部は、複数の需要家の電力使用量を収集する。分類部は、前記電力使用量のうちの充放電装置を有さない非保有需要家の電力使用量を用いて前記需要家を分類するグループを生成する。グループ判定部は、前記充放電装置を保有する推定対象需要家が属するグループを前記グループの中から選択する。推定部は、前記グループ判定部により選択されたグループに含まれる前記非保有需要家の電力使用量と前記推定対象需要家の電力使用量とを基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定する。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面では、本発明は、簡易な構成で需要調整を的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、需要家に対する電力管理システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、出力推定装置及びデマンドレスポンス生成装置のブロック図である。
【
図3】
図3は、正規化に用いるパラメータとして用いる値の組合せの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、推定対象需要家の負荷カーブと平均負荷カーブとの関係を説明するための図である。
【
図5】
図5は、推定対象需要家の出力推定処理の概要を表す図である。
【
図6】
図6は、アグリテータシステムによるデマンドレスポンス指令の生成処理のフローチャートである。
【
図7】
図7は、出力推定装置による推定対象需要家の蓄電池の充放電量及び実負荷の推定処理のフローチャートである。
【
図8】
図8は、出力推定装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示する出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法が限定されるものではない。
【実施例0015】
図1は、需要家に対する電力管理システムの概略構成図である。電力管理システムは、需要家2の電力管理を行うアグリゲータシステム1及び送配電事業者システム3を有する。
【0016】
送配電事業者システム3は、発電所で発生した電気を需要家2が電気を使用する地点まで、送電線や配電線などにより送り届ける事業者が管理するシステムである。送配電事業者システム3は、各需要家2に設置されたスマートメータ22とネットワークで接続される。送配電事象者システム3は、スマートメータ22により計量された情報を受信する。この、スマートメータ22が計量した情報を送配電事象者システム3へ送るルートは、Aルートと呼ばれる。送配電事象者システム3は、各需要家2のスマートメータ22により計量された情報をアグリゲータシステム1へ送信する。
【0017】
アグリゲータシステム1は、アグリゲータや小売電気事業者などが管理するシステムである。アグリゲータシステム1は、各需要家2のスマートメータ22により計量された情報を含むスマートメータデータを送配電事象者システム3から受信する。この、スマートメータ22が計量した情報をアグリゲータシステム1へ送配電事象者システム3を介して送るルートは、Cルートと呼ばれる。アグリゲータシステム1は、スマートメータ22にから送信されたスマートメータデータを用いて各需要家2に対して充電又は放電を指示する。例えば、アグリゲータシステム1は、需要家2が有する蓄電池23に対するデマンドレスポンス指令を発して、需要家2に蓄電池23の充放電を行わせる。本実施例では、アグリゲータシステム1は、蓄電池23などの充放電装置を有さない需要家2に設置されたスマートメータ22からの情報も収集する。
【0018】
需要家2は、送配電事業者システム3から供給された電気を使用する企業や家庭である。需要家2は、例えば、需要家端末装置21及びスマートメータ22を有する。また、需要家2は、エアコン24やエコキュート(登録商標)といった電気給湯器25などの送配電事業者システム3から供給された電気を使用する負荷機器を有する。さらに、需要家2は、蓄電池23などの充放電装置を有してもよい。ここで、充放電装置は、太陽光発電システムなどの発電装置も含まれる。
【0019】
以下では、充放電装置として蓄電池23を例に説明する。ここで、
図1では、蓄電池23を保有する需要家2を例に図示したが、需要家2は、蓄電池23を保有しなくてもよい。ただし、以下に説明するアグリゲータシステム1による電力管理は、蓄電池23を保有する需要家2が対象となる。ここでは、蓄電池23を保有する需要家2を蓄電池保有需要家と呼び、蓄電池23を保有しない需要家2を蓄電池非保有需要家と呼ぶ。
【0020】
スマートメータ22は、需要家2における所定期間毎の電力使用量を計量する。スマートメータ22は、エアコン24や電気給湯器25などの負荷機器により使用された電力量及び蓄電池23に充電された電力量を加算して、且つ、蓄電池23から放電された電力量を減算することで電力使用量を算出する。ただし、スマートメータ22は、需要家2における全体の電力使用量を計量するが、蓄電池23やエアコン24といった個々の機器を区別した電力使用量の計量は行わなくてよい。そして、スマートメータ22は、計量した電力使用量をスマートメータデータとして送配電事業者システム3へ送出する。
【0021】
需要家端末装置21は、需要家2が使用するパーソナルコンピュータなどの情報端末装置である。蓄電池保有需要家が有する需要家端末装置21は、アグリゲータシステム1から発せられたデマンドレスポンス指令を受信する。そして、需要家端末装置21は、デマンドレスポンス指令をモニタなどに表示させて、需要家2に提供する。需要家2は、デマンドレスポンス指令を基に蓄電池23の充放電を実行する。
【0022】
図2は、出力推定装置及びデマンドレスポンス生成装置のブロック図である。アグリゲータシステム1は、出力推定装置10及びデマンドレスポンス生成装置11を有する。
【0023】
出力推定装置10は、蓄電池保有需要家が保有する蓄電池23の出力、すなわち蓄電池23の充放電量を推定する。また、出力推定装置10は、蓄電池保有需要家の実負荷を推定する。以下に、出力推定装置10の詳細について説明する。出力推定装置10は、
図2に示すように、スマートメータデータ取得部101、分類部102、データ格納部103、需要家情報記憶部104、グループ判定部105及び推定部106を有する。
【0024】
需要家情報記憶部104は、蓄電池保有需要家及び蓄電池非保有需要家のいずれも含む各需要家2のそれぞれの属性情報を記憶する。属性情報は、例えば、需要家2の家族人数や延床面積などの各需要家2の電力使用傾向を表すことが可能な情報である。また、需要家情報記憶部104は、需要家2が保有する蓄電池23のうち定格出力が分かっている蓄電池23についてはその定格出力も記憶する。需要家情報記憶部104は、アグリゲータシステム1の管理者から入力された情報を記憶しても良いし、送配電事業者システム3から送られてくる各需要家2の情報を記憶してもよい。
【0025】
スマートメータデータ取得部101は、各需要家2に配置されたスマートメータ22から出力されたスマートメータデータを、送配電事業者システム3を介してCルートで取得する。そして、スマートメータデータ取得部101は、各需要家2のスマートメータデータを蓄積して保持する。この際、スマートメータデータには、それぞれの需要家2が蓄電池保有需要家又は蓄電池非保有需要家のいずれであるかを示す情報が付加される。
【0026】
分類部102は、スマートメータデータ取得部101が保持するスマートメータデータのうち蓄電池非保有需要家のスマートメータデータをスマートメータデータ取得部101から取得する。そして、分類部102は、スマートメータデータを時間毎に並べて1日の電力使用量の変化を表す負荷カーブを蓄電池非保有需要家毎に生成する。すなわち、負荷カーブは、1日の時間毎のスマートメータデータの集合である。
【0027】
そして、分類部102は、負荷カーブを用いてクラスタリングを行い、予め決められた数のグループに蓄電池非保有需要家を分類する。例えば、分類部102は、負荷カーブの間の距離を用いてクラスタリングを行うことができる。これにより、負荷カーブの距離を基準として蓄電池非保有需要家を、例えば3つのグループといった予め決められた数のグループに分けることができる。すなわち、グループ毎に、負荷カーブが類似する蓄電値非保有需要家がまとまる。また、分類部102は、分類結果をフィードバックしてクラスタリングを繰り返して分類を行ってもよい。ここで、負荷カーブは、時刻毎の電力使用量の集合であり、属性が近似する各需要家2の電力使用量の変化は似ていると想定できる。すなわち、負荷カーブを用いて蓄電池非保有需要家を分類することで、属性が近似することを基準として、需要家2を決められた数のグループに分類することができるといえる。ここで、属性が近似するとは、例えば、以下のように表すことができる。各需要家2の家族人数の類似閾値を1人とする。また、各需要家の延床面積の類似閾値を10m2とする。この場合に、ある需要家2の家族人数をm(人)であり延床面積がn(m2)の場合、家族人数がm±1(人)且つ延床面積がn±10(m2)である需要家は、属性が近似する需要家2といえる。すなわち、家族人数及び延床面積について、各グループの平均からそのグループの中で最も外れた蓄電池非保有需要家との差を類似閾値とした場合に、平均からのそれぞれの類似閾値内に含まれる需要家2がそのグループに属性が近似するということができる。そして、分類部102は、分類した蓄電池非保有需要家の負荷カーブをグループ毎に分けて、蓄電池非保有需要家の識別情報と共にデータ格納部103に格納する。
【0028】
グループ判定部105は、出力推定の対象とする蓄電池保有需要家の情報を取得する。例えば、グループ判定部105は、入力装置を用いてアグリゲータシステム1の管理者から出力推定の対象とする蓄電池保有需要家の情報の入力を受けてもよい。他にも、グループ判定部105は、出力推定の対象とする複数の蓄電池保有需要家の情報を予め格納した外部のデータベースから出力推定の対象とする蓄電池保有需要家の情報を取得してもよい。以下では、出力推定の対象とする蓄電池保有需要家を「推定対象需要家」と呼ぶ。
【0029】
次に、グループ判定部105は、推定対象需要家の属性情報を需要家情報記憶部104から取得する。さらに、グループ判定部105は、データ格納部103に格納されたグループ毎に各グループに属する全ての蓄電池非保有需要家の属性情報を取得する。そして、グループ判定部105は、推定対象需要家の属性情報と各グループに属する蓄電池非保有需要家の属性情報とを比較して、推定対象需要家に属性情報が近似するグループを特定する。以下では、グループ判定部105により特定されたグループを「近似グループ」と呼ぶ。
【0030】
例えば、グループ判定部105は、負荷カーブを用いたクラスタリングにより生成されたグループのそれぞれについて、それぞれのグループに含まれる蓄電池非保有需要家の家族人数の平均及び延床面積の平均を算出する。そして、グループ判定部105は、推定対象需要家の家族人数と延床面積とに最も近い家族人数の平均及び延床面積の平均を有するグループを近似グループとして特定する。これにより、例えば、ある需要家2について、家族人数及び延床面積のそれぞれが平均からの類似閾値内に存在するグループを、その需要家2の近似グループとすることができる。
【0031】
グループ判定部105は、近似グループの全ての蓄電池非保有需要家の負荷カーブをデータ格納部103から取得する。そして、グループ判定部105は、近似グループの蓄電池非保有需要家の時刻毎のスマートメータデータの平均値を近似グループの代表値として求めて、平均負荷カーブを生成する。
【0032】
ここで、本実施例では、グループ判定部105は、近似グループの代表値を蓄電池非保有需要家のスマートメータデータの平均値としたが、近似グループにおける全体的なスマートメータデータの変化傾向を表す値であれば他の値を代表値として用いてもよい。例えば、グループ判定部105は、近似グループの蓄電池非保有需要家の中で、スマートメータデータが中央値に最も近い蓄電池非保有需要家のスマートメータデータを代表値としてもよい。
【0033】
次に、グループ判定部105は、推定対象需要家のスマートメータデータをスマートメータデータ取得部101から取得する。そして、グループ判定部105は、推定対象需要家の負荷カーブを生成する。その後、グループ判定部105は、推定対象需要家の負荷カーブ及び近似グループの平均負荷カーブを推定部106へ出力する。
【0034】
推定部106は、推定対象需要家の負荷カーブ及び近似グループの平均負荷カーブの入力をグループ判定部105から受ける。次に、推定部106は、推定対象需要家の1日の総負荷量が、平均負荷カーブの総負荷量と等しくなるように、平均負荷カーブに含まれるスマートメータデータを正規化する。
【0035】
ここで、平均負荷カーブと推定対象需要家の負荷カーブにおけるベース負荷の割合が大きく異なる場合の正規化方法の一例について説明する。ここで、正規化前の平均負荷カーブに含まれるスマートメータデータをPc(t)とし、正規化後の平均負荷カーブに含まれるスマートメータデータをPc’(t)とする。また、推定対象需要家の負荷カーブに含まれるスマートメータデータをPx(t)とする。
【0036】
推定部106は、正規化後の平均負荷カーブに含まれるスマートメータデータであるPc’(t)を、正規化前の平均負荷カーブに含まれるスマートメータデータであるPc(t)、並びに、パラメータa及びbを用いて、Pc’(t)=aPc(t)+bとする。この場合、Pc’(t)は、a及びbが定数であれば、Pc(t)を拡大縮小及び移動させたものであり、このようにおくことでPc(t)が正規化されているといえる。
【0037】
図3は、正規化に用いるパラメータとして用いる値の組合せの一例を示す図である。例えば、a及びbは、
図3における座標平面上の格子の交点の値とすることができる。
図3の格子は、例えば、0.1刻み値のa及びbを表すとすることができる。さらに、この交点のいずれかが、a及びbの初期値として予め決められる。初期値は、例えば、(a,b)=(0,0)などとすることができる。
【0038】
推定部106は、Pc’(t)にa及びbの初期値を代入して、Px(t)との差分の1日の積分値であるΣ(Px(t)-Pc’(t))を算出する。次に、推定部106は、a及びbの組合せの値を変えて、Σ(Px(t)-Pc’(t))を算出する。推定部106は、a及びbの組合せの値を変化させて、a及びbの組合せ毎のΣ(Px(t)-Pc’(t))を算出する。
【0039】
そして、推定部106は、Σ(Px(t)-Pc’(t))が最小となるa及びbの組合せを特定する。例えば、推定部106は、
図3の点200におけるa及びbを、Σ(Px(t)-Pc’(t))が最小となるa及びbの組合せとして特定する。そして、推定部106は、Σ(Px(t)-Pc’(t))が最小となるa及びbの組合せで表されるPc’(t)=aPc(t)+bを正規化後の平均負荷カーブに含まれるスマートメータデータとする。
【0040】
ここでは、推定部106は、総当たり方式を用いて正規化を行ったが、これに限らず、二次計画問題などを解くなど他の手法を用いて正規化を行うことも可能である。
【0041】
次に、推定部106は、需要家情報記憶部104に記憶された情報を確認して、推定対象需要家の蓄電池23の定格出力が既知か否かを判定する。
【0042】
推定対象需要家の蓄電池23の定格出力が既知である場合、推定部106は、推定対象需要家の蓄電池23の定格出力を需要家情報記憶部104から取得する。蓄電池23の定格出力には、充電量と放電量とが含まれる。ここで、蓄電池23の充電量の定格出力をP(充電)と表し、蓄電池23の放電量の定格出力をP(放電)と表す。
【0043】
家族人数や延べ床面積が類似する需要家2同士は電気の使用方法は似ていると考えられる。そのため、推定対象需要家と近似グループに属する蓄電池非保有需要家との電気の使用方法は似ていると考えられる。このことから、推定対象需要家の電力使用量から蓄電池23の充放電量を除いた実負荷は、近似グループに属する蓄電池非保有需要家の電力使用量の平均に近似すると考えられる。そこで、推定対象需要家の実負荷が正規化後の平均負荷カーブに近似するという前提に立つことができ、この前提では、推定対象需要家のスマートメータデータから平均負荷カーブに含まれるスマートメータデータを減算した値であるPx(t)-Pc’(t)は、蓄電池23による充放電の値である。すなわち、この前提においては、蓄電池23の充電時には、Px(t)-Pc’(t)-P(充電)の値は0に近似し、蓄電池23の放電時にはPx(t)-Pc’(t)+P(放電)の値は0に近似する。
【0044】
図4は、推定対象需要家の負荷カーブと平均負荷カーブとの関係を説明するための図である。
図4のグラフ201は、推定対象需要家の負荷カーブから平均負荷カーブを減算したカーブを表す。また、グラフ202は、グラフ201のカーブの充電時間帯にP(充電)を減算し、放電時間帯にP(放電)を加算したカーブを表す。上述した前提では、グラフ201に示すようにPx(t)-Pc’(t)が蓄電池23の充電量の定格出力の2分の1より大きい場合を充電時間帯としてP(充電)を減算することで、グラフ202に示すようにPx(t)-Pc’(t)-P(充電)の値を0に近似させることができる。また、グラフ201に示すようにPx(t)-Pc’(t)が蓄電池23の放電量の定格出力の2分の1の符号を負にした値より小さい場合を放電時間帯としてP(放電)を加算することで、グラフ202に示すようにPx(t)-Pc’(t)+P(放電)の値を0に近似させることができる。すなわち、推定対象需要家の負荷カーブから平均負荷カーブを減算したカーブを、充放電を判定する閾値を基準として折り返えした場合に、元の部分と折り返した部分との幅が丁度重なるように閾値を決定することが好ましい。
【0045】
そこで、推定部106は、時刻t毎にPx(t)-Pc’(t)を算出して、算出した値が蓄電池23の充電量の定格出力の2分の1より大きければ、その時刻tには蓄電池23が充電されていると仮定する。これは、上述したように、定格出力の2分の1で折り返すことで蓄電池23の充電量を除いた実負荷と平均負荷カーブの電力使用量との差が0に近付くことから、定格出力の2分の1を基準として充電を判定することが好ましいと考えられるためである。すなわち、推定部106は、Px(t)-Pc’(t)>P(充電)/2の場合、その時刻tには蓄電池23が充電されていると仮定する。そして、推定部106は、蓄電池23が充電されている時間帯における推定対象需要家の実負荷をPx(t)-P(充電)として算出する。
【0046】
また、推定部106は、時刻t毎にPx(t)-Pc’(t)を算出して、算出した値が蓄電池23の放電量の定格出力の2分の1の符号を負にした値より小さければ、その時刻tには蓄電池23が放電していると仮定する。これも、上述したように、定格出力の2分の1で折り返すことで蓄電池23の放電量を除いた実負荷と平均負荷カーブの電力使用量との差が0に近付くことから、定格出力の2分の1を基準として放電を判定することが好ましいと考えられるためである。すなわち、推定部106は、Px(t)-Pc’(t)<-P(放電)/2の場合、その時刻tには蓄電池23が放電していると仮定する。そして、推定部106は、蓄電池23が放電している時間帯における推定対象需要家の実負荷をPx(t)+P(放電)として算出する。
【0047】
一方、推定対象需要家の蓄電池23の定格出力が分かっていない場合、推定部106は、以下のような処理により、蓄電池23の定格出力、充放電時間帯及び推定対象需要家の実負荷の推定を行う。
【0048】
まず、推定部106は、蓄電池23の充電量の定格出力をP(充電α)として、P(充電α)を初期値に設定する。例えば、推定部106は、一般的な蓄電池の最も低い充電量の定格出力をP(充電α)の初期値とする。具体的には、推定部106は、P(充電α)の初期値を2kWなどとすることができる。
【0049】
そして、推定部106は、時刻t毎にPx(t)-Pc’(t)を算出して、算出した値がP(充電α)の2分の1より大きければ、その時刻tには蓄電池23が充電されていると仮定する。すなわち、推定部106は、Px(t)-Pc’(t)>P(充電α)/2の場合、その時刻tには蓄電池23が充電されていると仮定する。そして、推定部106は、蓄電池23が充電されている時間帯における推定対象需要家の実負荷をPx(t)-P(充電α)として算出する。
【0050】
次に、推定部106は、Px(t)-Pc’(t)>0となる時刻tを抽出し、抽出したtの集合をTとする。そして、推定部106は、Σt∈T(Px(t)-Pc(t)-P(充電α))を算出する。ここで、推定部106は、例えば、Px(t)-Pc’(t)>P(充電α)/3となる時刻tを抽出してΣt∈T(Px(t)-Pc(t)-P(充電α))を算出してもよい。
【0051】
次に、推定部106は、P(充電α)を予め決められた1ステップ分変化させて、同様にPx(t)-P(充電α)を算出し、さらにΣt∈T(Px(t)-Pc’(t)-P(充電α))を算出する。例えば、推定部106は、0.1W刻みでP(充電α)を変化させる。そして、推定部106は、特定の上限値まで、P(充電α)を変化させていきながら、Px(t)-P(充電α)及びΣt∈T(Px(t)-Pc’(t)-P(充電α))の算出を繰り返す。例えば、推定部106は、一般的な蓄電池の最も高い充電量の定格出力をP(充電α)の上限値とする。具体的には、推定部106は、P(充電α)の上限値を5kWとすることができる。
【0052】
次に、推定部106は、Σt∈T(Px(t)-Pc(t)-P(充電α))が最小となるP(充電α)の値を特定する。そして、推定部106は、特定したP(充電α)の値の場合のPx(t)-P(充電α)を充電時間帯における推定対象需要家の実負荷の推定値とする。これは、Σt∈T(Px(t)-Pc(t)-P(充電α))が最小となる場合に、蓄電池23の充電量を除いた実負荷と平均負荷カーブの電力使用量との差が最も0に近付くことから、このP(充電α)を基準として充電を判定することが好ましいと考えられるためである。
【0053】
ここで、本実施例では、推定部106は、総当たり方式を用いてP(充電α)を決定したが、これに限らず、二次計画問題などを解くなど他の手法を用いてP(充電α)を決定することも可能である。
【0054】
次に、推定部106は、蓄電池23の放電量の定格出力をP(放電β)として初期値に設定する。例えば、推定部106は、一般的な蓄電池の最も低い放電量の定格出力をP(放電β)の初期値とする。
【0055】
そして、推定部106は、時刻t毎にPx(t)-Pc’(t)を算出して、算出した値がP(放電β)の2分の1の符号を負にした値より小さければ、その時刻tには蓄電池23が放電していると仮定する。すなわち、推定部106は、Px(t)-Pc’(t)<-P(放電β)/2の場合、その時刻tには蓄電池23が放電していると仮定する。そして、推定部106は、蓄電池23が放電している時間帯における推定対象需要家の実負荷をPx(t)+P(放電β)として算出する。
【0056】
次に、推定部106は、Px(t)-Pc’(t)<0となる時刻tを抽出し、抽出したtの集合をTとする。そして、推定部106は、Σt∈T(Px(t)-Pc(t)+P(放電β))を算出する。ここで、推定部106は、例えば、Px(t)-Pc’(t)<-P(放電β)/3となる時刻tを抽出してΣt∈T(Px(t)-Pc(t)+P(放電β))を算出してもよい。
【0057】
次に、推定部106は、P(放電β)を変化させて、同様にPx(t)+P(放電β)を算出し、さらにΣt∈T(Px(t)-Pc(t)+P(放電β))を算出する。例えば、推定部106は、0.1W刻みでP(放電β)を変化させる。そして、推定部106は、特定の上限値まで、P(放電β)を変化させていきながら、Px(t)+P(放電β)及びΣt∈T(Px(t)-Pc(t)+P(放電β))の算出を繰り返す。例えば、推定部106は、一般的な蓄電池の最も高い放電量の定格出力をP(放電β)の上限値とする。
【0058】
次に、推定部106は、Σt∈T(Px(t)-Pc’(t)+P(放電β))が最小となるP(放電β)の値を特定する。そして、推定部106は、特定したP(放電β)の値の場合のPx(t)+P(放電β)を放電時間帯における推定対象需要家の実負荷の推定値とする。これは、Σt∈T(Px(t)-Pc’(t)+P(放電β))が最小となる場合に、蓄電池23の放電量を除いた実負荷と平均負荷カーブの電力使用量との差が最も0に近付くことから、このP(放電β)を基準として放電を判定することが好ましいと考えられるためである。
【0059】
ここで、本実施例では、推定部106は、総当たり方式を用いてP(放電β)を決定したが、これに限らず、二次計画問題などを解くなど他の手法を用いてP(放電β)を決定することも可能である。
【0060】
その後、推定部106は、推定対象需要家の実負荷の推定値をデマンドレスポンス生成装置11へ送信する。また、推定部106は、推定した推定対象需要家の蓄電池23の充放電の時間帯の情報や蓄電池23の定格出力の推定値などもデマンドレスポンス生成装置11へ送信してもよい。
【0061】
デマンドレスポンス生成装置11は、送信部111及びデマンドレスポンス生成部112を有する。
【0062】
デマンドレスポンス生成部112は、推定対象需要家の実負荷の推定値を出力推定装置10の推定部106から受信する。次に、デマンドレスポンス生成部112は、需要家2の全体の電力使用量の推移及び推定対象需要家の実負荷の推定値を基に、推定対象需要家に対するデマンドレスポンス指令を生成する。そして、デマンドレスポンス生成部112は、生成したデマンドレスポンス指令を送信部111へ出力する。
【0063】
送信部111は、推定対象需要家に対するデマンドレスポンス指令の入力をデマンドレスポンス生成部112から受ける。そして、送信部111は、取得した推定対象需要家に対するデマンドレスポンス指令を推定対象需要家の需要家端末装置21へ送信して、推定対象需要家に対してデマンドレスポンス指令を通知する。
【0064】
図5は、推定対象需要家の出力推定処理の概要を表す図である。次に、
図5を参照して、出力推定装置10による推定対象需要家の出力推定処理をまとめて説明する。
【0065】
分類部102は、蓄電池非保有需要家のスマートメータデータを、スマートメータデータ取得部101が収集したスマートメータデータの中から取得する(ステップS1)。
【0066】
次に、分類部102は、蓄電池非保有需要家のスマートメータデータを用いてクラスタリングを行い、負荷カーブが類似する蓄電値非保有需要家をそれぞれ集めて3つのA~Cグループを生成する。これにより、分類部102は、需要家2を属性別に3グループに分類した場合に相当するA~Cグループを生成する(ステップS2)。
【0067】
次に、分類部102は、分類結果であるA~Cグループ毎にスマートメータデータをデータ格納部103に格納する(ステップS3)。
【0068】
次に、グループ判定部105は、推定対象需要家のスマートメータデータをスマートメータデータ取得部101が収集したスマートメータデータの中から取得して、負荷カーブを生成する(ステップS4)。
【0069】
また、グループ判定部105は、推定対象需要家の属性情報及びデータ格納部103に格納されるA~Cグループのそれぞれに属する蓄電池非保有需要家の属性情報を需要家情報記憶部104から取得する。そして、グループ判定部105は、推定対象需要家の属性情報と属性情報が近似する近似グループをCグループと判定する。グループ判定部105は、Cグループの全ての蓄電池非保有需要家の負荷カーブをデータ格納部103から取得する。そして、グループ判定部105は、Cグループの蓄電池非保有需要家の負荷カーブの平均負荷カーブを算出する(ステップS5)。
【0070】
推定部106は、推定対象需要家の負荷カーブとCグループの平均負荷カーブとの差異から推定対象需要家における蓄電池23の充電時間帯及び放電時間帯を推定する。そして、推定部106は、推定対象需要家における蓄電池23の充放電量及び実負荷を推定する(ステップS6)。
【0071】
その後、推定部106は、推定結果である推定対象需要家における蓄電池23の充放電量及び実負荷をデマンドレスポンス生成装置11に送信する(ステップS7)。
【0072】
図6は、アグリテータシステムによるデマンドレスポンス指令の生成処理のフローチャートである。次に、
図6を参照して、アグリテータシステム1によるデマンドレスポンス指令の生成処理の流れを説明する。
【0073】
スマートメータデータ取得部101は、蓄電池保有需要家及び蓄電池非保有需要家の双方のスマートメータデータを収集する。分類部102は、蓄電池非保有需要家のスマートメータデータを、スマートメータデータ取得部101が収集したスマートメータデータの中から取得する(ステップS101)。
【0074】
次に、分類部102は、蓄電池非保有需要家のスマートメータデータを用いてクラスタリングを行いグループ化することで、需要家2を分類する(ステップS102)。分類部102は、分類結果であるグループ毎にスマートメータデータをデータ格納部103に格納する。
【0075】
グループ判定部105は、推定対象需要家のスマートメータデータをスマートメータデータ取得部101が収集したスマートメータデータの中から取得して負荷カーブを生成する(ステップS103)。
【0076】
また、グループ判定部105は、推定対象需要家の属性情報及びデータ格納部103に格納されるグループのそれぞれに属する蓄電池非保有需要家の属性情報を需要家情報記憶部104から取得する。そして、グループ判定部105は、推定対象需要家の属性情報と属性情報が近似する近似グループを特定する。次に、グループ判定部105は、近似グループの全ての蓄電池非保有需要家の負荷カーブをデータ格納部103から取得する。そして、グループ判定部105は、近似グループの蓄電池非保有需要家の負荷カーブの平均負荷カーブを算出する(ステップS104)。
【0077】
推定部106は、推定対象需要家の負荷カーブと近似グループの平均負荷カーブとを用いて推定対象需要家における蓄電池23の充放電量及び実負荷を推定する(ステップS105)。
【0078】
その後、推定部106は、推定結果である推定対象需要家における蓄電池23の充放電量及び実負荷をデマンドレスポンス生成装置11に送信して通知する(ステップS106)。
【0079】
デマンドレスポンス生成部112は、推定対象需要家の蓄電池23の充放電量及び実負荷の推定値を出力推定装置10の推定部106から受信する。次に、デマンドレスポンス生成部112は、需要家全体の電力使用量の推移、並びに、推定対象需要家の蓄電池23の充放電量及び実負荷の推定値を基に、推定対象需要家に対するデマンドレスポンスの内容を決定してデマンドレスポンス指令を生成する。そして、デマンドレスポンス生成部112は、生成したデマンドレスポンス指令を送信部111へ出力する。送信部111は、推定対象需要家に対するデマンドレスポンス指令の入力をデマンドレスポンス生成部112から受ける。そして、送信部111は、取得した推定対象需要家に対するデマンドレスポンス指令を推定対象需要家の需要家端末装置21へ送信して、推定対象需要家に対してデマンドレスポンスの内容を通知する(ステップS107)。
【0080】
図7は、出力推定装置による推定対象需要家の蓄電池の充放電量及び実負荷の推定処理のフローチャートである。次に、
図7を参照して、出力推定装置10による推定対象需要家の蓄電池23の充放電量及び実負荷の推定処理の流れを説明する。
図7のフローにおける各処理は、
図6のフローにおけるステップS105で実行される処理の一例にあたる。
【0081】
推定部106は、推定対象需要家の負荷カーブ及び近似グループの平均負荷カーブをグループ判定部105から取得する。次に、推定部106は、推定対象需要家の1日の総負荷量が、平均負荷カーブの総負荷量と等しくなるように、平均負荷カーブに含まれるスマートメータデータを正規化する(ステップS201)。
【0082】
次に、推定部106は、需要家情報記憶部104に記憶された情報を確認して、推定対象需要家の蓄電池23の定格出力の情報が存在するか否かを判定する(ステップS202)。
【0083】
推定対象需要家の蓄電池23の定格出力の情報が存在する場合(ステップS202:肯定)、推定部106は、推定対象需要家の蓄電池23の定格出力を需要家情報記憶部104から取得する。次に、推定部106は、Px(t)-Pc’(t)>P(充電)/2となる時間帯を蓄電池23の充電時間帯と仮定する。そして、推定部106は、蓄電池23の充電時間帯における推定対象需要家の実負荷をPx(t)-P(充電)として算出する(ステップS203)。
【0084】
また、推定部106は、Px(t)-Pc’(t)<-P(放電)/2となる時間帯を蓄電池23の放電時間帯と仮定する。そして、推定部106は、蓄電池23の放電時間帯における推定対象需要家の実負荷をPx(t)+P(放電)として算出する(ステップS204)。
【0085】
一方、推定対象需要家の蓄電池23の定格出力の情報が存在しない場合(ステップS202:否定)、推定部106は、蓄電池23の充電量P(充電α)を初期値に設定する(ステップS205)。
【0086】
次に、推定部106は、時刻t毎にPx(t)-Pc’(t)を算出して、Px(t)-Pc’(t)>0となる時刻tの範囲Tにおいて、Σt∈T(Px(t)-Pc’(t)-P(充電α))を算出する(ステップS206)。
【0087】
次に、推定部106は、P(充電α)が上限値か否かを判定する(ステップS207)。P(充電α)が上限値でない場合(ステップS207:否定)、推定部106は、P(充電α)を1ステップ上昇させる(ステップS208)。その後、推定部106は、ステップS206へ戻る。
【0088】
これに対して、P(充電α)が上限値の場合(ステップS207:肯定)、推定部106は、Σt∈T(Px(t)-Pc’(t)-P(充電α))が最小となるP(充電α)の値を選択する(ステップS209)。
【0089】
そして、推定部106は、選択したP(充電α)の値について、Px(t)-Pc’(t)>P(充電α)/2の場合、その時刻tには蓄電池23が充電されていると仮定する。そして、推定部106は、蓄電池23の充電時間帯における推定対象需要家の実負荷をPx(t)-P(充電α)として算出する(ステップS210)。
【0090】
次に、推定部106は、蓄電池23の放電量P(放電β)を初期値に設定する(ステップS211)。
【0091】
次に、推定部106は、Px(t)-Pc’(t)<0となる時刻tの範囲Tにおいて、Σt∈T(Px(t)-Pc’(t)+P(放電β))を算出する(ステップS212)。
【0092】
次に、推定部106は、P(放電β)が上限値か否かを判定する(ステップS213)。P(放電β)が上限値でない場合(ステップS213:否定)、推定部106は、P(放電β)を1ステップ上昇させる(ステップS214)。その後、推定部106は、ステップS212へ戻る。
【0093】
これに対して、P(放電β)が上限値の場合(ステップS213:肯定)、推定部106は、Σt∈T(Px(t)-Pc’(t)+P(放電β))が最小となるP(放電β)の値を選択する(ステップS215)。
【0094】
そして、推定部106は、選択したP(放電β)の値について、Px(t)-Pc’(t)<-P(放電β)/2の場合、その時刻tには蓄電池23が放電されていると仮定する。そして、推定部106は、蓄電池23の放電時間帯における推定対象需要家の実負荷をPx(t)+P(放電β)として算出する(ステップS216)。
【0095】
以上に説明したように、本実施例に係る出力推定装置は、Cルートを介して得られる蓄電池非保有需要家のスマートメータデータを用いてクラスタリングを行い、需要家を属性に応じたグループに分類する。そして、出力推定装置は、推定対象需要家の属性に近似する属性を有する近似グループを特定し、その近似グループの平均負荷カーブと推定対象需要家の負荷カーブとの差分から推定対象需要家の蓄電池の充放電量及び実負荷を推定する。
【0096】
これにより、蓄電池などの電気供給機器の充放電量を計測するセンサや新たな通信経路を増やすことなく、推定対象需要家の蓄電池の充放電量及び実負荷を推定することができる。また、各需要家から収集可能なスマートメータデータを用いて推定を行うため、個々の需要家の蓄電池の充放電量及び実負荷を推定することが容易にできる。したがって、簡易な構成でコストを抑えつつ、的確な需要調整を行うことが可能となる。
グループ判定部105は、推定対象需要家についての例えば1週間といった一定期間のスマートメータデータをスマートメータデータ取得部101から取得する。そして、グループ判定部105は、一定期間の各日の各時刻のスマートメータデータの平均を求めて、推定対象需要家の一定期間における平均の負荷カーブを生成する。
推定部106は、推定対象需要家の一定期間における平均の負荷カーブと近似グループの平均負荷カーブとを用いて、推定対象需要家の蓄電池23の充電時間帯及び充電量、並びに、放電時間帯及び放電量を推定する。
以上に説明したように、本実施例に係る出力推定装置は、一定期間のスマートメータデータの平均値を用いて推定対象需要家の負荷カーブを生成して充放電量や実負荷の推定処理を実行する。これにより、負荷カーブの日々の変化を吸収することができ、推定精度が向上し、より的確な需要調整を行うことが可能となる。