(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063330
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 67/00 20060101AFI20240502BHJP
A01D 57/22 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A01D67/00 D
A01D57/22 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171174
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷上 智洋
(72)【発明者】
【氏名】三宅 達也
(72)【発明者】
【氏名】上田 光瑠
(72)【発明者】
【氏名】杉田 泰行
(72)【発明者】
【氏名】坂本 憲之
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 宏真
(72)【発明者】
【氏名】渡部 寛樹
【テーマコード(参考)】
2B076
2B081
【Fターム(参考)】
2B076AA03
2B076BA08
2B076CA20
2B076CF02
2B081AA01
2B081BB05
2B081CC25
(57)【要約】
【課題】刈取装置の上部と保護カバーの干渉を防止して、刈取装置のメンテナンスを容易に行うことができるコンバインを提供する。
【解決手段】刈取装置(3)を、圃場の穀稈を引起こす引起装置(21)と、穀稈の株元を刈取る刈刃装置(22)と、刈取られた穀稈を脱穀装置(4)に向けて搬送する搬送装置(23)で形成し、引起装置(21)の上方に左右方向に、エンジンの出力回転を伝動する回転軸を内装した延在する第1伝動筒(14)を設け、引起装置(21)の上部を覆う保護カバー(16)を、第1伝動筒(14)の前側に設け、保護カバー(16)の下部が、引起装置(21)の上部を覆う作業姿勢と、保護カバー(16)の下部が、引起装置(21)の上部から離間する待避姿勢を移動可能な構成に形成した。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方左側に脱穀装置(4)を設けたコンバインにおいて、
前記刈取装置(3)を、圃場の穀稈を引起こす引起装置(21)と、穀稈の株元を刈取る刈刃装置(22)と、刈取られた穀稈を脱穀装置(4)に向けて搬送する搬送装置(23)で形成し、
前記引起装置(21)の上方に左右方向に、前記エンジンの出力回転を伝動する回転軸を内装した延在する第1伝動筒(14)を設け、
前記引起装置(21)の上部を覆う保護カバー(16)を、前記第1伝動筒(14)の前側に設け、
前記保護カバー(16)の下部が、前記引起装置(21)の上部を覆う作業姿勢と、前記保護カバー(16)の下部が、前記引起装置(21)の上部から離間する待避姿勢を移動可能な構成に形成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記保護カバー(16)を、前記第1伝動筒(14)に設けられた左右方向に延在する支軸(30)に回転自在に支持し、
前記支軸(30)の右部に、前記支軸(30)から所定の半径を隔てた位置に円弧状のガイド溝(32)が形成されたガイドプレート(31)を設け、
前記保護カバー(16)の右部に右側に向かって延在する操作レバー(36)を設け、
前記ガイド溝(32)に操作レバー(36)を挿通させ、
前記操作レバー(36)をガイド溝(32)の後部から前部に操作して、前記保護カバー(16)を作業姿勢から待避姿勢に移動させ、前記操作レバー(36)をガイド溝(32)の前部から後部に操作して、前記保護カバー(16)を待避姿勢から作業姿勢に移動させる請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1伝動筒(14)と操作レバー(36)を付勢手段で連結し、前記操作レバー(36)の右端部に、前記ガイドプレート(31)に係止する係止部材(37)を設けた請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記保護カバー(16)を、前記第1伝動筒(14)の左部に設けられた上下方向に延在する左支軸(40L)に左部が回転自在に支持された左保護カバー(16L)と、前記第1伝動筒(14)の右部に設けられた上下方向に延在する右支軸(40R)に右部が回転自在に支持された右保護カバー(16R)に分割し、
前記左支軸(40L)を支点に左保護カバー(16L)の右部を前方に引出し、前記右支軸(40R)を支点に右保護カバー(16R)の左部を前方に引出して、前記左保護カバー(16L)と右保護カバー(16R)を作業姿勢から待避姿勢に移動させ、前記左支軸(40L)を支点に左保護カバー(16L)の右部を後方に戻し、前記右支軸(40R)を支点に右保護カバー(16R)の左部を後方に戻して、前記左保護カバー(16L)と右保護カバー(16R)を待避姿勢から作業姿勢に移動させる請求項1記載のコンバイン。
【請求項5】
前記左保護カバー(16L)の左右方向の長さと、前記右保護カバー(16R)の左右方向の長さを同一長さに形成した請求項4記載のコンバイン。
【請求項6】
前記第1伝動筒(14)と左保護カバー(16L)を左規制部材(42L)で連結し、該左規制部材(42L)の左部を第1伝動筒(14)の左部に回転自在に支持し、前記左規制部材(42L)の右部を左保護カバー(16L)の後部に回転自在に支持し、
前記第1伝動筒(14)と右保護カバー(16R)を右規制部材(42R)で連結し、該右規制部材(42R)の右部を第1伝動筒(14)の右部に回転自在に支持し、前記右規制部材(42R)の左部を右保護カバー(16R)の後部に回転自在に支持した請求項5記載のコンバイン。
【請求項7】
前記刈刃装置(22)にエンジンの出力回転を伝動する回転軸を内装した延在する第2伝動筒(12)に前方に延在する前後フレーム(50)を設け、
前記前後フレーム(50)の前部に上方に向かって矩形状の固定プレート(51)を設け、
前記引起装置(21)における左右方向の中間に設けられた隣接する引起装置(21)の下部を揺動部品(52)で連結し、
前記固定プレート(51)に揺動部品(52)の矩形状の回転プレート(52A)を左右方向に延在するピン(53)を介して回転自在に支持し、
前記固定プレート(51)と回転プレート(52A)を着脱可能な締結部材(54)で連結した請求項1記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取装置の引起装置の上部に保護カバーを装着したコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
刈取装置の引起装置や搬送装置のメンテナンスを行うために、エンジンの出力回転を引起装置に伝動する回転軸を内装した伝動筒を支点として引起装置の下部を上方に引起す技術が知られていた。(特許文献1参照)
【0003】
また、刈取装置の引起装置や搬送装置のメンテナンスを行うために、エンジンの出力回転を引起装置に伝動する回転軸を内装した伝動筒から引起装置の上部を前方に引出す技術が知られていた。(特許文献2参照)
【0004】
さらに、刈取装置の引起装置や搬送装置のメンテナンスを行うために、エンジンの出力回転を引起装置に伝動する回転軸を内装した伝動筒に沿って引起装置を左右方向に移動させる技術が知られていた。(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-37441号公報
【特許文献2】特開2012-29568号公報
【特許文献3】特開2013-9611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、引起装置の下部を上方に引起す場合に、引起装置の上部と引起装置の上部を覆う保護カバーが干渉する恐れがあった。
【0007】
また、特許文献2の技術では、引起装置の上部を前方に引出す場合に、引起装置の上部と引起装置の上部を覆う保護カバーが干渉する恐れがあった。
【0008】
さらに、特許文献3の技術でも、引起装置を左右方向に移動する場合に、引起装置の上部と引起装置の上部を覆う保護カバーが擦れ合い干渉する恐れがあった。
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、刈取装置の上部と保護カバーの干渉を防止して、刈取装置のメンテナンスを容易に行うことができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジンを搭載した機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方左側に脱穀装置(4)を設けたコンバインにおいて、
前記刈取装置(3)を、圃場の穀稈を引起こす引起装置(21)と、穀稈の株元を刈取る刈刃装置(22)と、刈取られた穀稈を脱穀装置(4)に向けて搬送する搬送装置(23)で形成し、前記引起装置(21)の上方に左右方向に、前記エンジンの出力回転を伝動する回転軸を内装した延在する第1伝動筒(14)を設け、前記引起装置(21)の上部を覆う保護カバー(16)を、前記第1伝動筒(14)の前側に設け、前記保護カバー(16)の下部が、前記引起装置(21)の上部を覆う作業姿勢と、前記保護カバー(16)の下部が、前記引起装置(21)の上部から離間する待避姿勢を移動可能な構成に形成したことを特徴とするコンバインである。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記保護カバー(16)を、前記第1伝動筒(14)に設けられた左右方向に延在する支軸(30)に回転自在に支持し、前記支軸(30)の右部に、前記支軸(30)から所定の半径を隔てた位置に円弧状のガイド溝(32)が形成されたガイドプレート(31)を設け、前記保護カバー(16)の右部に右側に向かって延在する操作レバー(36)を設け、前記ガイド溝(32)に操作レバー(36)を挿通させ、前記操作レバー(36)をガイド溝(32)の後部から前部に操作して、前記保護カバー(16)を作業姿勢から待避姿勢に移動させ、前記操作レバー(36)をガイド溝(32)の前部から後部に操作して、前記保護カバー(16)を待避姿勢から作業姿勢に移動させる請求項1記載のコンバインである。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記第1伝動筒(14)と操作レバー(36)を付勢手段で連結し、前記操作レバー(36)の右端部に、前記ガイドプレート(31)に係止する係止部材(37)を設けた請求項2記載のコンバインである。
【0013】
請求項4記載の発明は、前記保護カバー(16)を、前記第1伝動筒(14)の左部に設けられた上下方向に延在する左支軸(40L)に左部が回転自在に支持された左保護カバー(16L)と、前記第1伝動筒(14)の右部に設けられた上下方向に延在する右支軸(40R)に右部が回転自在に支持された右保護カバー(16R)に分割し、前記左支軸(40L)を支点に左保護カバー(16L)の右部を前方に引出し、前記右支軸(40R)を支点に右保護カバー(16R)の左部を前方に引出して、前記左保護カバー(16L)と右保護カバー(16R)を作業姿勢から待避姿勢に移動させ、前記左支軸(40L)を支点に左保護カバー(16L)の右部を後方に戻し、前記右支軸(40R)を支点に右保護カバー(16R)の左部を後方に戻して、前記左保護カバー(16L)と右保護カバー(16R)を待避姿勢から作業姿勢に移動させる請求項1記載のコンバインである。
【0014】
請求項5記載の発明は、前記左保護カバー(16L)の左右方向の長さと、前記右保護カバー(16R)の左右方向の長さを同一長さに形成した請求項4記載のコンバインである。
【0015】
請求項6記載の発明は、前記第1伝動筒(14)と左保護カバー(16L)を左規制部材(42L)で連結し、該左規制部材(42L)の左部を第1伝動筒(14)の左部に回転自在に支持し、前記左規制部材(42L)の右部を左保護カバー(16L)の後部に回転自在に支持し、前記第1伝動筒(14)と右保護カバー(16R)を右規制部材(42R)で連結し、該右規制部材(42R)の右部を第1伝動筒(14)の右部に回転自在に支持し、前記右規制部材(42R)の左部を右保護カバー(16R)の後部に回転自在に支持した請求項5記載のコンバインである。
【0016】
請求項7記載の発明は、前記刈刃装置(22)にエンジンの出力回転を伝動する回転軸を内装した延在する第2伝動筒(12)に前方に延在する前後フレーム(50)を設け、 前記前後フレーム(50)の前部に上方に向かって矩形状の固定プレート(51)を設け、前記引起装置(21)における左右方向の中間に設けられた隣接する引起装置(21)の下部を揺動部品(52)で連結し、前記固定プレート(51)に揺動部品(52)の矩形状の転プレート(52A)を左右方向に延在するピン(53)を介して回転自在に支持し、前記固定プレート(51)と回転プレート(52A)を着脱可能な締結部材(54)で連結した請求項1記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、刈取装置(3)を、圃場の穀稈を引起こす引起装置(21)と、穀稈の株元を刈取る刈刃装置(22)と、刈取られた穀稈を脱穀装置(4)に向けて搬送する搬送装置(23)で形成し、引起装置(21)の上方に左右方向に、エンジンの出力回転を伝動する回転軸を内装した延在する第1伝動筒(14)を設け、引起装置(21)の上部を覆う保護カバー(16)を、第1伝動筒(14)の前側に設け、保護カバー(16)の下部が、引起装置(21)の上部を覆う作業姿勢と、保護カバー(16)の下部が、引起装置(21)の上部から離間する待避姿勢を移動可能な構成に形成したので、引起装置(21)の上部と保護カバー(16)の干渉を防止して、刈取装置(3)のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、保護カバー(16)を、第1伝動筒(14)に設けられた左右方向に延在する支軸(30)に回転自在に支持し、支軸(30)の右部に、支軸(30)から所定の半径を隔てた位置に円弧状のガイド溝(32)が形成されたガイドプレート(31)を設け、保護カバー(16)の右部に右側に向かって延在する操作レバー(36)を設け、ガイド溝(32)に操作レバー(36)を挿通させ、操作レバー(36)をガイド溝(32)の後部から前部に操作して、保護カバー(16)を作業姿勢から待避姿勢に移動させ、操作レバー(36)をガイド溝(32)の前部から後部に操作して、保護カバー(16)を待避姿勢から作業姿勢に移動させるので、支軸(30)を支点として保護カバー(16)を作業姿勢から待避姿勢に移動させて刈取装置(3)のメンテナンスをより容易に行うことができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明による効果に加えて、第1伝動筒(14)と操作レバー(36)を付勢手段で連結し、操作レバー(36)の右端部に、ガイドプレート(31)に係止する係止部材(37)を設けたので、保護カバー(16)の待避姿勢から作業姿勢への戻し忘れを抑制することができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、保護カバー(16)を、第1伝動筒(14)の左部に設けられた上下方向に延在する左支軸(40L)に左部が回転自在に支持された左保護カバー(16L)と、第1伝動筒(14)の右部に設けられた上下方向に延在する右支軸(40R)に右部が回転自在に支持された右保護カバー(16R)に分割し、左支軸(40L)を支点に左保護カバー(16L)の右部を前方に引出し、右支軸(40R)を支点に右保護カバー(16R)の左部を前方に引出して、左保護カバー(16L)と右保護カバー(16R)を作業姿勢から待避姿勢に移動させ、左支軸(40L)を支点に左保護カバー(16L)の右部を後方に戻し、右支軸(40R)を支点に右保護カバー(16R)の左部を後方に戻して、左保護カバー(16L)と右保護カバー(16R)を待避姿勢から作業姿勢に移動させるので、左支軸(40L)を支点として左保護カバー(16L)を作業姿勢から待避姿勢に移動させ、右支軸(40R)を支点として右保護カバー(16R)を作業姿勢から待避姿勢に移動させて刈取装置(3)のメンテナンスをより容易に行うことができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明による効果に加えて、左保護カバー(16L)の左右方向の長さと、右保護カバー(16R)の左右方向の長さを同一長さに形成したので、左保護カバー(16L)と右保護カバー(16R)を作業姿勢から待避姿勢に移動させるのに必要なコンバインの前方の空間を小さくすることができる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明による効果に加えて、第1伝動筒(14)と左保護カバー(16L)を左規制部材(42L)で連結し、左規制部材(42L)の左部を第1伝動筒(14)の左部に回転自在に支持し、左規制部材(42L)の右部を左保護カバー(16L)の後部に回転自在に支持し、第1伝動筒(14)と右保護カバー(16R)を右規制部材(42R)で連結し、右規制部材(42R)の右部を第1伝動筒(14)の右部に回転自在に支持し、右規制部材(42R)の左部を右保護カバー(16R)の後部に回転自在に支持したので、左保護カバー(16L)と右保護カバー(16R)がコンバインの前方に過度に引出されるのを抑制することができる。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、刈刃装置(22)にエンジンの出力回転を伝動する回転軸を内装した延在する第2伝動筒(12)に前方に延在する前後フレーム(50)を設け、前後フレーム(50)の前部に上方に向かって矩形状の固定プレート(51)を設け、引起装置(21)における左右方向の中間に設けられた隣接する引起装置(21)の下部を揺動部品(52)で連結し、固定プレート(51)に揺動部品(52)の矩形状の回転プレート(52A)を左右方向に延在するピン(53)を介して回転自在に支持し、固定プレート(51)と回転プレート(52A)を着脱可能な締結部材(54)で連結したので、左右方向の中間に設けられた隣接する引起装置(21)の上部を前方に容易に引出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図4】作業姿勢に移動した保護カバーの右側面図である。
【
図5】待避姿勢に移動した保護カバーの右側面図である。
【
図7】第2実施形態の刈取装置の正面図であり、左右の保護カバーは待避姿勢に移動している。
【
図8】左保護カバーを待避姿勢に移動した左側面図であり、左保護カバーは待避姿勢に移動している。
【
図9】右保護カバーを待避姿勢に移動した右側面図であり、右保護カバーは待避姿勢に移動している。
【
図10】右保護カバーの右揺動部材の正面図である。
【
図11】右保護カバーの右揺動部材の右側面図である。
【
図12】引起装置の上部を前後方向に揺動させる揺動部品の左側面図である。
【
図13】前方に上部を引出した引起装置の正面図である。
【
図14】前方に上部を引出した引起装置の左側面図である。
【
図15】(a)、(b)は固定プレート、(c)、(d)は回転プレート、(e)、(f)はピンの断面図と左側面図である。
【
図16】脱穀装置のフィードチェンの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取装置3が設けられている。また、刈取装置3の後方左側に刈取装置3で収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0026】
操縦部5の下側には、エンジン搭載するエンジンルームが設けられ、操縦部5の後側には、脱穀装置4で脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7に貯留された穀粒は、グレンタンク7に連結された排出オーガ8によって外部に排出される。
【0027】
<第1実施形態の刈取装置>
図1~3に示すように、第1実施形態の刈取装置3は、主枠となる刈取フレーム10に取付けられている。刈取フレーム10は、前後方向に延在する伝動筒11と、伝動筒11の前部に設けられた左右方向に延在する伝動筒(請求項の「第2伝動筒」)12と、伝動筒12の左部に設けられた上下方向に延在する伝動筒13と、伝動筒13の上部に設けられた左右方向に延在する伝動筒(請求項の「第1伝動筒」)14から形成されている。また、伝動筒11の後部は、エンジンの出力回転が伝動される脱穀装置4の前側に設けられた左右方向に延在する伝動筒15に揺動可能に支持され、伝動筒14の前側には、前後方向の縦断面が円弧状に形成された保護カバー16が設けられている。これにより、伝動筒11に連結された昇降シリンダ(図示省略)を駆動して伝動筒11の前部、すなわち、昇降シリンダを駆動して刈取装置3を上下方向に昇降させることができる。なお、伝動筒11~15の内部には、エンジン等の出力回転が伝動される回転軸が設けられている。
【0028】
刈取装置3は、圃場に植立する穀稈を分草する分草体20と、分草された穀稈を引起こす引起装置21と、引起こされた穀稈を刈取る刈刃装置22と、刈取られた穀稈を挟持して脱穀装置4に搬送する搬送装置23から形成されている。
【0029】
引起装置21は、5個の引起装置21A~21Eから形成され、引起装置21Bの引起こし反対側の右部と引起装置21Cの引起こし反対側の左部は連結部材(図示省略)で連結されている。これにより、引起装置21A,21Bの間で2条、引起装置21C,21Dの間で2条、引起装置21D,21Eの間で1条の計5条の穀稈を同時に引起こすことができる。
【0030】
図4~6に示すように、伝動筒14の右端部には、右方に延在する支軸30が設けられている。支軸30の右部には、ガイドプレート31が支持され、ガイドプレート31には、支軸30から所定の半径を隔てた位置に円弧状のガイド溝32が形成されている。なお、ガイド溝32の前部には、ガイド溝32の幅よりも径が大きい大径穴33が形成されている。なお、支軸は、伝動筒14の右端部から右方に延在する支軸30と、伝動筒14の左端部から左方に延在する支軸(図示省略)から形成されている。
【0031】
保護カバー16の内周部の右端部には、下方に延在するアームプレート35が設けられている。アームプレート35の上部は、支軸30に回転自在に支持され、アームプレート35の下部には、作業姿勢から待避姿勢や待避姿勢から作業姿勢に保護カバー16を移動させる右方に延在する操作レバー36が設けられている。また、操作レバー36の右部には、ノブボルト等の係止部材37を着脱可能なネジが形成されている。なお、アームプレートは、保護カバー16の内周部の右端部から下方に延在するアームプレート35と、保護カバー16の内周部の左端部から下方に延在するアームプレート(図示省略)から形成され、アームプレートの上部は、伝動筒14の左端部から左方に延在する支軸に回転自在に支持されている。
【0032】
伝動筒14の右端部とアームプレート35の上部は、バネ等の付勢手段(図示省略)で接続されている。これにより、保護カバー16を待避姿勢から作業姿勢に移動させて、待避姿勢の場合に、保護カバー16の下部の後面を引起装置21A~21Eの上部の前面に当接させて、保護カバー16の下部の後面を引起装置21A~21Eの上部の前面の間の隙間を抑制することができる。
【0033】
ガイド溝32の後部から前部に操作レバー36を操作した後に、ガイドプレート31に係止部材37を係合させて、保護カバー16を作業姿勢から待避姿勢に移動させ、保護カバー16の下部と引起装置21A~21Eの上部を離間させて所定の隙間を形成することができる。これにより、引起装置21A~21Eの上部を前方に引出して、引起装置21A~21Eのラグ等に絡み付いた穀稈の除去等を容易に行うことができる。
【0034】
また、ガイドプレート31と係止部材37の係合を解除して後に、ガイド溝32の前部から後部に操作レバー36を操作して、保護カバー16を待避姿勢から作業姿勢に移動させ、保護カバー16の下部と引起装置21A~21Eの上部を密着させることができる。これにより、刈取作業時に、引起装置21A~21Eの上部と保護カバー16の隙間から藁屑等が後部に侵入して伝動筒14等に堆積するのを抑制することができる。
【0035】
<第2実施形態の刈取装置>
図7には、第2実施形態の刈取装置3が図示されている。第1実施形態の刈取装置3と同一部材には同一番号を付して説明を省略する。
【0036】
引起装置21は、6個の引起装置21A~21Fから形成され、引起装置21Bの引起こし反対側の右部と引起装置21Cの引起こし反対側の左部は連結部材(図示省略)で連結され、引起装置21Dの引起こし反対側の右部と引起装置21Eの引起こし反対側の左部は連結部材(図示省略)で連結されている。これにより、引起装置21A,21Bの間で2条、引起装置21C,21Dの間で2条、引起装置21E,21Fの間で2条の計6条の穀稈を同時に引起こすことができる。
【0037】
図8~11に示すように、伝動筒14の前側には、保護カバー16が設けられている。保護カバー16は、左保護カバー16Lと右保護カバー16Rに左右方向で2分割されている。左保護カバー16Lの左部は、伝動筒14の左端部の前面に設けられた上下方向に延在する左支軸40Lに回転自在に支持された左揺動部材41Lの前面に固定されている。また、右保護カバー16Rの右部は、伝動筒14の右端部の前面に設けられた上下方向に延在する右支軸40Rに回転自在に支持された右揺動部材41Rの前面に固定されている。
【0038】
左揺動部材41Lを介して左支軸40Lを中心として左保護カバー16Lの右部を前方に、右揺動部材41Rを介して右支軸40Rを中心として右保護カバー16Rの左部を前方に引き出して、左保護カバー16Lと右保護カバー16Rの下部と引起装置21A~21Fの上部を離間させることができる。これにより、引起装置21A~21Fの上部を前方に引出して、引起装置21A~21Fのラグ等に絡み付いた穀稈の除去等を容易に行うことができる。
【0039】
左揺動部材41Lを介して左支軸40Lを中心として左保護カバー16Lの右部を後方に、右揺動部材41Rを介して右支軸40Rを中心として右保護カバー16Rの左部を後方に戻して、左保護カバー16Lと右保護カバー16Rの下部と引起装置21A~21Fの上部を密着させることができる。これにより、刈取作業時に、引起装置21A~21Fの上部と左保護カバー16Lと右保護カバー16Rの隙間から藁屑等が後部に侵入して伝動筒14等に堆積するのを抑制することができる。
【0040】
伝動筒14の左部と左保護カバー16Lの内周部は、前方への引き出し範囲を所定の範囲に規制する左規制部材42Lで連結されている。また、伝動筒14の右部と右保護カバー16Rの内周部は、前方への引き出し範囲を所定の範囲に規制する右規制部材42Rで連結されている。これにより、左揺動部材41Lを介して左支軸40Lを中心として左保護カバー16Lの右部を前方に、右揺動部材41Rを介して右支軸40Rを中心として右保護カバー16Rの左部を前方に引き出す範囲を規制することができ外部の木等との衝突を防止することができる。なお、左規制部材42Lの両端部は、それぞれ伝動筒14の左部と左保護カバー16Lの内周部に回転自在に支持され、右規制部材42Rの両端部は、それぞれ伝動筒14の右部と右保護カバー16Rの内周部に回転自在に支持されている。
【0041】
図7に図示した左保護カバー16Lと右保護カバー16Rの左右方向の長さは同一長さに形成しているが、左保護カバー16Lの左右方向の長さを右保護カバー16Rの左右方向の長さよりも長く形成したり、左保護カバー16Lの左右方向の長さを右保護カバー16Rの左右方向の長さよりも短く形成することもできる。
【0042】
また、保護カバー16を左右方向に3分割して形成することもできる。この場合、左保護カバー16Lと右保護カバー16Rの間に位置する中間保護カバー(図示省略)は、伝動筒14にボルト等の締結手段により着脱自在に装着される。
【0043】
<揺動部品>
図12に示すように、第1実施形態の刈取装置3の場合には、伝動筒12における引起装置21B,21Cの左右方向の中間の後部に位置する部位に、前方に延在する前後フレーム50が設けられている。前後フレーム50における前側部には上側に向けて左右一対の略矩形状の固定プレート51が立設されている。なお、第2実施形態の刈取装置3の場合には、伝動筒12における引起装置21B,21Cの左右方向の中間の後部と引起装置21D,21Eの左右方向の中間の後部に位置する部位に、それぞれ前方に延在する前後フレーム50が設けられる。
【0044】
固定プレート51の前部には、揺動部品52が回転自在に支持されている。揺動部品52は、左右一対の固定プレート51の間に設けられた矩形状の回転プレート52Aと、回転プレート52Aの上部から後側上方に向かって延在する延在部52Bと、延在部52Bの後部から左右方向に延在する連結部52Cから形成されている。また、連結部52Cの左部は引起装置21Bの後面の下部に連結され、連結部52Cの右部は引起装置21Cの後面の下部に連結されている。
【0045】
固定プレート51における前側下部に形成された開口部51aと回転プレート52Aにおける前側下部に形成された開口部52aには、ピン53が挿通され、固定プレート51の後部に形成されたネジ部51bと回転プレート52Aの後部に形成された開口部52bにはボルト等の締結部材54が挿通されている。これにより、
図13,14に示すように、前方に引起装置21B,21Cの上部を前方に引き出す場合には、締結部材54を取外し、揺動部品52をピン53を中心として反時計方向に回転させて、引起装置21B,21Cの上部を前方に引き出して搬送装置23の前側に大きな作業空間を形成して、搬送装置23に詰まった穀稈の除去作業を効率良く行うことができる。
【0046】
ピン53には、ストレートピン、段付きピン、ストレートピンの一側に折曲げ部を形成したL字ピン等を使用することができる。ストレートピンを使用する場合には、ストレートピンの両端部に貫通孔を形成してスナップピンや割りピンを挿通するのが好ましい。また、段付きピンを使用する場合には、固定プレート51の側面に段付きピンの段差部が侵入するザグリを形成し、段付きピンの段差部が形成されていない他側に貫通孔を形成してスナップピンや割りピンを挿通するのが好ましい。さらに、L字ピンを使用する場合には、固定プレート51の側面にL字ピンの折曲げ部が係合する係合部(図示省略)を設け、L字ピンの折曲げ部が形成されていない他側に貫通孔を形成してスナップピンや割りピンを挿通するのが好ましい。これにより、ピン53が、固定プレート51と回転プレート52Aの開口部51a,52aから脱落するのを防止することができる。
【0047】
また、
図15(a),(b)に示すように、ピン53の両端部に径方向に突出する突起部53aを形成することができる。このピン53を使用する場合には、
図15(c),(d)に示すように、回転プレート52Aの開口部52aに突起部53aを挿通する径方向に延在する溝部52cを形成し、
図15(e),(f)に示すように、固定プレート51の開口部51aに突起部53aを挿通する径方向に延在する溝部51cを形成する。これにより、ピン53を固定プレート51の開口部51aと回転プレート52Aの開口部52aに挿通させた後に、ピン53を軸心回りに回転させてピン53を容易に固定することができる。
【0048】
<フィードチェンの駆動スプロケット>
図16に示すように、脱穀装置4の前部から後部に穀稈を搬送するフィードチェン60にエンジンの出力回転を伝動する駆動用スプロケット61は、脱穀装置4の前壁の前側に設けられたエンジンの出力回転を脱穀装置4に伝動する左右方向に延在するカウンタ軸62の上側に設けられている。また、上下方向における駆動用スプロケット61とカウンタ軸62の間には、フィードチェン60等に油を給油する給油ガード63が設けられている。これにより、脱穀装置4の前部に形成された空間を有効に活用することができる。なお、駆動用スプロケット61の前側には、フィードチェン60の張力を調整するテンションローラ64が設けられている。
【符号の説明】
【0049】
1 機体フレーム
3 刈取装置
4 脱穀装置
12 伝動筒(第2伝動筒)
14 伝動筒(第1伝動筒)
16 保護カバー
16L 左保護カバー
16R 右保護カバー
21 引起装置
22 刈刃装置
23 搬送装置
30 支軸
31 ガイドプレート
32 ガイド溝
36 操作レバー
37 係止部材
40L 左支軸
40R 右支軸
42L 左規制部材
42R 右規制部材
50 前後フレーム
51 固定プレート
52 揺動部品
52A 回転プレート
53 ピン
54 締結部材