(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063333
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/89 20060101AFI20240502BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240502BHJP
A61K 8/87 20060101ALI20240502BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20240502BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240502BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240502BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240502BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A61K8/89
A61Q17/04
A61K8/87
A61K8/365
A61K8/41
A61K8/49
A61K8/34
A61K8/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171178
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】伊達 正剛
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC512
4C083AC551
4C083AC552
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD171
4C083AD172
4C083BB13
4C083BB14
4C083BB24
4C083BB26
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD08
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】のびの重さやべたつきのない良好な使用感と、水流下でも塗布膜を保つことのできる耐水性を兼ね備えながら、製剤の混合均一性の維持および高温条件下での金属酸化物や疎水性球状粉体のケーキングを改善した日焼け止め化粧料を提供することを課題とする。なお、副次的には、引火点が21℃以上である日焼け止め化粧料の提供を課題とする。
【解決手段】次の成分
(A):油溶性紫外線吸収剤
(B):ポリウレタン-79ゲル組成物
(C):非水系揮発性成分
(D):疎水性球状有機粉体
を含有し、
成分(B)が
(B-1)ポリウレタン-79及び(B-2)液状油剤からなることを特徴とする日焼け止め化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分、
(A):油溶性紫外線吸収剤
(B):ポリウレタン-79ゲル組成物
(C):非水系揮発性成分
(D):疎水性球状有機粉体
を含有し、
成分(B)が
(B-1)ポリウレタン-79及び(B-2)液状油剤からなることを特徴とする
日焼け止め化粧料。
【請求項2】
成分(C)のうち組成物全量に対するエタノールの含有量が、10質量%未満である請求項1に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
エアゾールスプレー型又はノンエアゾールスプレー型である、請求項1又は請求項2に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
引火点が21℃以上である、請求項1又は請求項2に記載の日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な使用感、耐水性を兼ね備え、分散性および高温での保管安定性が良好である日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線から防御するための組成物の重要性が高まっている。紫外線から皮膚を守ることは重要な課題であり種々の日焼け止め効果を持つ化粧料が開発されている。日焼け止め化粧料とは、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を配合することにより紫外線の皮膚への到達を遮ることで、紫外線から皮膚を保護する働きを持つものである。
【0003】
また、日焼け止めに求められる機能としては、日焼け止め効果の持続力であるが、日常生活においては、水や汗といった水分の接触に対する日焼け止め化粧料の落ちにくさ、いわゆる耐水性が求められ、耐水性が高いほど日焼け止め効果の持続力は高い。そのため、水になじみやすい水性成分を含む乳化化粧料ではなく、非水溶性である油性基剤を主成分とした油性化粧料にする方法が用いられている。
【0004】
汎用されている紫外線防御剤の多くは、油溶性紫外線吸収剤であるため、油性化粧料への配合は比較的容易であるが、一方で油性化粧料は塗布後に肌上に残る油性成分によって、油性のぬるつきやべたつきを感じてしまう。そのため、非水系揮発性成分の配合により油性成分の肌上への残存量を減らすことや、滑り性の高い疎水性球状有機粉体の配合により油性成分の感触をマスキングし、さらっとした使用感にするといった方法を用いることができる。しかし、非水系揮発性成分の配合は紫外線吸収剤との相溶性が悪いため、使用時において、例え一旦分散したとしても不均一になるまでの速度が早く、分散後の製剤均一性を維持することが難しい。また疎水性球状粉体の配合は容器下部に沈降して固化するケーキング現象を起こすため、再分散が困難になるといった問題が生じてしまう。
【0005】
特許文献1には、紫外線吸収剤と有機変性粘土鉱物、油相増粘剤、HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤、球状樹脂粉末、及び揮発性シリコーン油を含有させることで、水や汗等に接触しても紫外線防御効果が低下しない油中水型の日焼け止め化粧料が開示されている。油中水型で外相が水相でない分耐水性は比較的良好であるが、油系に比べると劣る。また、乾燥後の塗布膜が水に接触すると膨潤してかさ高くなるため、物理的な紫外線遮蔽効果が高まると考えられるが、膨潤した塗布膜は水流によって流れ落ちやすくなるため、実使用を想定した耐水性を考慮すると、塗布膜の状態が変化しない事が望ましい。また、有機変性粘土鉱物や一般的な油性増粘剤を配合しており、チキソトロピー性が低いことから、肌に塗布した際に油性成分の粘性によるひっかかりを感じてしまう。さらに、油中水型乳化物を原液として噴射剤と混合しエアゾール製品とする場合、エアゾール容器中で多量の噴射剤と混合した時には乳化を保つことができず、粉体が沈降してケーキングしてしまうという製品の保管上の課題が残されている。
【0006】
他にも、ケーキングを課題とした日焼け止めエアゾール化粧料として、特許文献2に、紫外線防御剤、ポリエーテル変性シリコーン、エタノール、疎水性球状有機粉体及び油溶性被膜形成剤を含有する日焼け止めエアゾール化粧料が開示されているが、耐水性の面でさらに改善の余地がある。
【0007】
特許文献3には、油溶性紫外線吸収剤、油ゲル化剤及び非水系揮発性成分を含有させることで、油性感や閉塞感が少ない使用感の皮膚外用剤が開示されている。油ゲル化剤の配合に加え、非水系揮発性成分を高配合しているため、塗布時は粘度が低いためのびが良く、塗布後はすぐに揮発して粘度が高く密着するため耐水性が期待できる。しかし、疎水性球状有機粉体や顔料を配合すると、製剤の粘度が低く界面活性剤も配合していないため、撹拌しても粉体がすぐに沈降し、混合状態を維持することが難しい。さらに、非水系揮発成分を高配合しているため引火点が低く、危険物等級が高いため、生産場所や保管数量が制限されてしまう。
【0008】
特許文献4には、油性の増粘剤であるポリウレタンゲル組成物を含有した化粧料が開示されている。当該ポリウレタン組成物で増粘させた化粧料は、弾力感がありながらも伸びが軽く、塗布膜にツヤ感を与えるという特徴を有しているため、使用感に優れたメーキャップ化粧料である。しかし、日焼け止め化粧料においては、塗布後の肌の見た目や色味、質感は、むしろ肌になじむような自然なものが好まれる傾向にあり、油性成分特有のテカりやギラツキは極力抑えたほうが良い。特に、油性の日焼け止め化粧料への当該ポリウレタン組成物の配合は、ツヤ感の付与という点が欠点となることが考えられる。また、使用前に上下に振り混ぜるタイプの日焼け止め化粧料である場合、製剤の弾力性は混合性の低下につながり、再分散が困難になることも想定される。また、エアゾール製品とする場合は、組成物が均一で細かい噴射状態になるよう、できるだけ低粘度に処方化する。つまり、粘度が高いと噴射状態が荒く不均一な噴射パターンになるため使用性が悪化する。
【0009】
特許文献5には、溶解性が良好なポリウレタン-79とビスエチルヘキシルビスオレイルピロメリタミドと油性成分を配合することで、安定性が良好でべたつかず、肌なじみが良好な使用感を有する油性化粧料が開示されている。一般的に、ゲル化剤の溶解性が低い溶剤ほどゲル化剤同士での水素結合が促進され、強固なゲル構造をとることが知られている。例えば、代表的な油性ゲル化剤であるパルミチン酸デキストリンは、炭化水素油よりも相溶性の良いエステル油と組み合わせたほうが、ゲル強度が柔らかくなる傾向にある。したがって、末端に高級アルコールを付加することで、全般的に油性溶剤への溶解性が向上したポリウレタン-79は、広範囲の油剤で高いゲル化性能は望めないことが想定される。そのため、ポリウレタン-79単独では、ゲル化による経時安定性向上や使用感の改善といった効果が十分発揮されないため、さらに別の油性ゲル化剤であるビスエチルヘキシルビスオレイルピロメリタミドを併用している。つまり、油ゲル化剤としての機能を期待してポリウレタン-79を単独で使用することはほとんどなかった。
【0010】
このように、良好な使用感、耐水性を兼ね備えながら、製剤の混合均一性の維持、粉体の分散性および高温での保管安定性が良好である日焼け止め化粧料は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2017-071602号公報
【特許文献2】特開2021―80203号公報
【特許文献3】特開2021-123591号公報
【特許文献4】特開2019-182835号公報
【特許文献5】特開2021-155386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
すなわち、塗布時のひっかかりやべたつきのない良好な使用感と、水流下でも塗布膜を保つことのできる耐水性を兼ね備えながら、製剤の混合均一性の維持および高温条件下での疎水性球状粉体や顔料のケーキングを改善した日焼け止め化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、成分(A)から(D)
(A):油溶性紫外線吸収剤
(B):ポリウレタン-79ゲル組成物
(C):非水系揮発性成分
(D):疎水性球状有機粉体
を含有し、
成分(B)が
(B-1)ポリウレタン-79及び(B-2)液状油剤からなることを特徴とする
日焼け止め化粧料とすることで上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0014】
上記手段を取ることにより、塗布時の油性成分によるひっかかりやべたつき、閉塞感のない良好な使用感でありながら、耐水性が高い日焼け止め化粧料を提供できる。さらには、油性成分と相溶性の低い揮発性成分や疎水性球状有機粉体、顔料が配合されていると起こる層分離と粉体の沈降を改善することで、分散性と保管安定性の良好な日焼け止め化粧料を提供できる。副次的には、引火点が21℃以上である日焼け止め化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の日焼け止め化粧料は、特定の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を配合することにより得る事ができる。
【0016】
<成分(A):油溶性紫外線吸収剤>
本発明に配合される成分(A)は、日焼け止め化粧料に通常配合される紫外線吸収剤であれば特に限定されないが、具体例としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、t - ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、オキシベンゾン- 3 、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ホモサレート等を挙げることができる。
【0017】
本発明に配合される成分(A)は、例えば、UVAからUVBに渡る広い波長領域で優れた紫外線防御効果を発揮させたい場合には、UVA領域に吸収ピークを持つ紫外線吸収剤(UVA吸収剤)とUVB領域に吸収ピークを持つ紫外線吸収剤(UVB吸収剤)とを各々少なくとも一種ずつ組み合わせて配合するか、UVAからUVB領域に渡る広域吸収帯を持つ紫外線吸収剤を少なくとも一種配合することが好ましい。
【0018】
成分(A)の配合量は求める紫外線防御効果によって異なるが、例えば、組成物全量に対して3質量%以上、さらに好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~30質量%である。この範囲であれば一定の紫外線防御効果が期待できる。尚、得られた組成物を原液としてエアゾールにする時、前記配合量は原液中の比率であると考えればよい。以下の成分についても同様である。
【0019】
<成分(B):ポリウレタン-79ゲル組成物>
本発明の成分(B)ポリウレタン-79ゲル組成物は、(B-1)ポリウレタン-79と(B-2)液状油剤からなるオイルゲル化組成物である。
【0020】
(B-1)ポリウレタン-79は、直鎖の脂肪族ジイソシアネートである1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)と直鎖の増量性ジオールである1,4-ブタンジオールがウレタン結合によりポリウレタンとなったハードセグメントのブロックと、水添ジリノレイルアルコールと水素添加したポリブタンジオールのソフトセグメントのブロックを持つ共重合体の、両末端をステアリルアルコールでブロックしたポリウレタンである。ポリウレタンブロックの極性によりポリマー・ポリマーとポリマー・オイルの間の水素結合を介した会合によりオイル中で物理的なネットワークを形成し、この3次元ネットワーク構造に油剤を取り込むことでゲル化を起こすと考えられる。
好適には前記本発明に用いる(B-1)ポリウレタン-79は、(B-2)液状油剤に溶解したゲル状の組成物とすることで、均一に溶解することが容易になる。
【0021】
本発明の(B)のポリウレタン-79ゲル組成物は、市販品であるOILKEMIA 5S CC(LUBRIZOL社製)を用いることができる。その組成は、(B-1)ポリウレタン-79を30%含有し、(B-2)液状油剤としてトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを70%含有する(B)ポリウレタン-79ゲル組成物である。なお、日本国内の化粧品に配合した場合、配合成分として表示する場合は、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを70%、水添ポリオレフィン(C6-20)を25%、(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマーを5%として表示することが一般的である。
【0022】
(B)のポリウレタン-79ゲル組成物中の(B-1)ポリウレタン-79の含有量は、好ましくは10~50質量%であり、さらに好ましくは20~40質量%である。
(B)のポリウレタン-79ゲル組成物中の(B-2)液状油剤の含有量は、好ましくは50~90質量%であり、さらに好ましくは60~80質量%である。
当該範囲にすることにより、製造時に均一に溶解するのが容易になり、配合濃度が調整しやすく、発明の効果が顕著に得られる点から好ましい。
【0023】
(B)のポリウレタン-79ゲル組成物に用いられる(B-2)液状油剤は、通常化粧料に用いられるものであれば、特に限定されずに用いることができる。性状としては、特に限定されないが、25℃で液状の油剤であることが好ましい。(B)のポリウレタン-79ゲル組成物に用いられる(B-2)液状油剤としては、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、例えば、炭化水素油、エステル油、脂肪酸類、シリコーン油等が挙げられる。これらから1種又は2種以上を、(B-2)液状油剤中に用いることが好ましい。
【0024】
成分(B)の好ましい配合量は特に限定されないが、例えば、組成物全量に対して0.1~5質量%、さらに好ましい配合量は0.3~3質量%、より好ましい配合量は0.5~2質量%である。
【0025】
<成分(C):非水系揮発性成分>
本発明に用いる非水系揮発性成分は、通常化粧料に用いられるもので、常温(25℃)常圧(1気圧)で揮発性を示す水以外の成分であれば特に制限されない。具体的には、(C-1)揮発性炭化水素油や(C-2)揮発性シリコーン油、(C-3)エタノール等が挙げられる。揮発性炭化水素油としては、例えば、イソドデカン、水添ポリイソブテン等を挙げることができる。揮発性シリコーン油としては、揮発性の直鎖状や分枝シリコーン油(揮発性ジメチコン)及び環状シリコーン油が挙げられる。具体的には、直鎖状シリコーン油としてはデカメチルテトラシロキサン等の低粘度ジメチルポリシロキサンや、分枝シリコーン油としてはメチルトリメチコン、カプリリルメチコン、環状シリコーン油としてはオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等を用いることができる。なお、本発明における「揮発性成分」とは、1気圧下25℃で揮発性を示す成分を意味し、1気圧下25℃において揮発性を示さないものを「不揮発性」といい、水以外の揮発性成分を「非水系揮発性成分」という。
【0026】
上記のような非水系揮発性成分の中でも、成分(C-1)揮発性炭化水素を配合すると肌なじみが向上し、成分(C-2)揮発性シリコーン油を配合するとべたつきが低減する傾向がある。また、成分(C-3)エタノールを配合すると油性感が顕著に低減する。
成分(C)は単独で配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。例えは、成分(C)が成分(C-1)の1種のみであり、成分(C-2)成分および(C-3)を配合しないような場合も含む。
【0027】
成分(C)の配合量は特に限定されないが、組成物全体に対して、好ましい配合量は5~60質量%、さらに好ましい配合量は15~55質量%であり、より好ましい配合量は30~50質量%であり、この範囲では軽い延びで油っぽい被膜感が軽減され、さらに速乾性が高く使用性の良い日焼け止め化粧料を得る事ができる。
また、成分(C-3)の配合量が組成物全体に対して10質量%未満であれば引火点が21℃未満にならないため、危険物の製造場所としての制限が軽くなり、保管数量が増えるといった観点から好適である。これは成分(C-3)を配合しない場合も含む。
【0028】
<成分(D):疎水性球状有機粉体>
本発明に配合される成分(D)は、通常化粧料に用いられるものであれば特に制限されない。具体的には、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等のようなシリコーン系球状粉体、メタクリル酸メチルクロスポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)クロスポリマーのようなアクリル酸系架橋ポリマー、ナイロン-12、ナイロン-6のようなポリアミド系粉体等が挙げられる。好ましい市販品としてKSP-100、105、300(信越化学工業株式会社製)、DOWSIL TREFIL E-506S(東レ・ダウコーニング社製)、テクポリマー MBP-8HP、テクポリマー ACX-1502C(積水化成品社製)、ORGASOL 2002 EXD NAT COS、ORGASOL 1002 D NAT COS(アルケマ社製)等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いても、又はこれらを混合して用いても差支えない。
【0029】
成分(D)の配合量は特に限定されないが、例えば、組成物全量に対して、好ましい配合量は0.1~20質量%、さらに好ましい配合量は2~15質量%であり、より好ましい配合量は3~10質量%であり、この範囲とすることで、塗布後に白くなりにくく長時間良好な使用感を保つことができる。
【0030】
本発明では、本発明に不都合が生じない程度であれば、水そのもの、水を含有する植物エキス類、水を含有する原材料等の配合が許容される。言い換えると、本発明は、本来は水分を含有する必要はないが、例えば植物エキス等の保湿剤等を配合する都合で水分を配合することは問題ない。したがって、いわゆる非水系にすることが必須条件ではない。
【0031】
一方、水分量が多すぎると、均一性が低下し層分離しやすくなってしまう。また、紫外線散乱剤など粉体を配合した場合には、ケーキングが発生して再分散できなくなる等の問題が生じることもある。均一性および再分散性が維持される水分量は、処方によっても異なるが、例えば水分量を3.0質量%以下の範囲にすることで良好な状態を保つことができる。
【0032】
本発明では、必須成分に加え本発明の効果を損なわない範囲であれば、成分(A)と成分(B-2)以外の油剤を配合してもよい。例えば、植物油等の油脂、エステル油、炭化水素油、シリコーン油等の油が剤含まれる。具体例としては、アボガド油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ミツロウ、キャンデリラロウ等の動植物油;イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソステアリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリステアリン酸グリセリン等のエステル化合物;スクワラン、流動パラフィン、イソドデカン、水添ポリイソブテン、パラフィン、白色ワセリン、セレシン等の炭化水素油:ジメチコン、シクロペンタシロキサン、カプリリルメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンといったシリコーン化合物の油剤等が挙げられる。
【0033】
本発明の日焼け止め化粧料には、必要に応じて本発明の効果を妨げない質的、量的範囲内で、化粧料に通常用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、増粘剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、界面活性剤、多価アルコール類、紫外線散乱剤、粉体、パール、色剤、香料などを適宜配合することも可能である。
【0034】
本発明の日焼け止め化粧料の形態は特に限定されず、例えば、ジェル剤、ローション剤、スプレー剤(エアゾール型、ノンエアゾール型)等であってもよい。
上記の中でも、本発明の日焼け止め化粧料の形態としては、紫外線防御効果、使用性の観点から、スプレー剤が好ましく、エアゾールスプレー型日焼け止め化粧料がより好ましい。エアゾール容器には、本発明の化粧料を原液とし、当該原液と噴射剤をともに充填する。また、原液と噴射剤との質量比(原液/噴射剤)は、好ましくは、40/60~10/90、より好ましくは、25/75~15/85である。この範囲であれば十分な噴射力が得られ、スプレーした時に均一に噴射できる。
【0035】
本発明に用いる噴射剤は、エアゾール製品全般に用い得る噴射剤であれば、特に限定されない。例えば、各種の液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、液化石油ガスとジメチルエーテルの混合物のような液化ガスや、窒素ガスや炭酸ガスのような圧縮ガス等が用いられ得る。LPGはプロパン、ブタン、イソブタンを主成分とする液化石油ガスである。
なお、本発明の化粧料は、日焼け止め化粧料のみならず、日焼け止め効果を付与したファンデーション等のメーキャップ化粧料や化粧下地にも適用可能である。
【実施例0036】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。尚、配合量は特記しない限り質量%で示す。
【0037】
下記の表1、2に掲げた非水系揮発性成分と粉体を除く各成分を加温して溶解したものに粉体を添加し、ディスパーやホモミキサーでの一般的な攪拌処理後冷却し、冷却後に非水系揮発性成分を添加し原液とした。得られた各原液について、評価項目1および評価項目5を評価した。評価項目2~4については、100mLのエアゾール試験瓶(東京高分子社製:軟質PVC皮膜の透明ガラス試験瓶)に原液を6gと、噴射剤としてLPG(ガス圧:0.15MPa)を24g充填し(バルク:噴射剤=1:4)試験サンプルとした。
【0038】
評価項目1<耐水性の評価>
所定のPMMAプレート(ポリメタクリル酸メチル) HELIOPLATE HD6 (5×5cm 表面粗さ6μm HELIOSCREEN社製)に各例の化粧料を2mg/cm2の量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥した後、SPFアナライザー(LABSPHERE社製 UV TRANSMITTANCE ANALYZER/UV-1000S)にて測定した。次いで、上記PMMAプレート(各組成物を塗布したもの)を流水に40分さらし、十分に乾燥させた後、SPF値を再度測定した。耐水性試験後のSPF値が耐水性試験前のSPF値に対して何パーセントに該当するかを算出し、その値を残存率(%)とした(下記数式1)
なお、本発明においては、前記SPF値変化抑制率が95%を超えた場合に、紫外線防御効果が十分維持されているものと判断した。
【0039】
【0040】
評価項目2<分離速度の評価>
それぞれの試験サンプルが入ったエアゾール試験瓶を上下に勢いよく降り混ぜ、内容物が均一になったことを確認してから、サンプルの上部に透明層が現れるまでの時間を測定した。
◎:1分以上、上部に透明層が現れない。
〇:30秒~1分で分離しはじめ、上部に透明層が現れる。
△:10秒~30秒で分離しはじめ、上部に透明層が現れる。
×:10秒以内に分離しはじめ、上部に透明層が現れる。
【0041】
評価項目3<ケーキングの評価(高温保管による再分散性の評価)>
(ケーキング:沈降した下層の分散性が悪く、底に固着して均一に分散しない状態。)
分離速度の評価で作製した試験サンプルが入ったエアゾール試験瓶を40℃で1ヶ月間静置し、上下に転倒混和した時の分散性を評価した。
◎:10回以内に底部の粉体が無くなる。
○:10回~20回で底部の粉体が無くなる。
△:20回~50回底部の粉体が無くなる。
×:50回ひっくり返しても底部で凝集した粉体が無くならなかった。
【0042】
評価項目4<官能評価(べたつきのなさ)>
10名の専門パネルが使用して下記の評価基準で判断した。
◎:9名以上が、べたつかないと回答した。
○:6~8名が、べたつかないと回答した。
△:3~5名が、べたつかないと回答した。
×:2名以下が、べたつかないと回答した。
【0043】
評価項目5<引火点の評価>
引火点は、25℃から80℃までをタグ密閉式引火点測定器にて測定した。さらに、密閉式で引火しなかった原液については、原液が沸騰するまでをクリーブランド開放式引火点測定装置にて測定した。
【0044】
評価項目5<総合評価>
上記評価項目1から5の評価を総合的に評価し、判断した。
+++:◎が3個以上、評価項目1~4にて△以下の評価なし
++ :◎が2個、評価項目1~4にて△以下の評価なし
+ :◎が1個、評価項目1~4にて△以下の評価なし
- :◎が0個もしくは評価項目1~4にて△以下の評価あり
【0045】
【0046】
【0047】
表1、2に実施例1~7及び比較例1~6の処方を示し、各評価項目の結果をまとめた。
成分(A)として油溶性紫外線吸収剤を含み、なおかつ成分(B)ポリウレタン-79ゲル組成物を含まない比較例1は、滑り性の高い疎水性球状有機粉体である成分(D)を配合しているため、さらっとしてべたつきはない使用感であるものの、粉末の分散性が悪いため撹拌後にすぐ分離し、製剤均一性を維持することが難しい。また、高温保管ではケーキングが見られたため、日焼け止めを使用される夏場の保管を想定すると、設計した品質を維持することは難しい。
そこで、成分(B)ポリウレタン-79ゲル組成物を配合した実施例1~3においては、撹拌後の分離速度が遅くなるため、使用中の製剤均一性が維持されるという特性が見られ、粉体の分散性が良好になるためケーキングも防ぐことができ、更には乾燥後の塗布膜が強固になることで、耐水性が向上していた。
一方、成分(B)ポリウレタン-79ゲル組成物とは増粘機構が異なるが、油剤の増粘目的で汎用されている油ゲル化剤として成分(B’)を配合した比較例2~4においては、撹拌後の分離速度の改善には十分な効果が見られず、ケーキングも起きていた。なお、比較例4は成分(B’)であるジブチルラウロイルグルタミドが凝集しており、製品品質上好ましくないものであった。
実施例4、5においては、非水系揮発性成分である成分(C)を高配合しており、引火点が低く危険物等級が高いため、生産場所や保管数量が制限されるという問題がある。また、非水系揮発性成分は、高配合すると刺激にもなりうるという点も考慮する必要がある。しかし、使用感や安定性は優れているため、製品の使用上においては問題ない。
比較例5は、疎水性球状粉体である成分(D)を配合していないため、ケーキングは起きないものの油性成分由来のべたつきを感じ、耐水性も悪くなってしまった。また、比較例6は、比較例5から成分(B)ポリウレタン-79ゲル組成物を、パルミチン酸デキストリンで置き換えたものであるが、油性成分由来のべたつきは変わらず、むしろパルミチン酸デキストリンのべたつきも感じるようになってしまい、更に分離速度も速くなってしまった。
実施例6は、疎水性球状粉体である成分(D)の配合量は少ないが、油性成分由来のべたつきをマスキングすることができている。また、成分(D)の配合量が多い実施例7でも、ケーキングを防ぐことができており、使用感と安定性を両立することが可能となっている。
【0048】
表1の評価結果には示していないが、これらの実施例については、原液でも粉体のケーキングは見られず、高温保管しても安定性は良好であった。
【0049】
以下に常法にて、各処方の組成物を作製した。いずれの処方においても本発明の効果を奏することが確認された。
【0050】
<ケミカルタイプ日焼け止め化粧料>
1.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 9.0質量%
2.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1.5質量%
3.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1.0質量%
4.オクトクリレン 1.0質量%
5.エチルヘキシルトリアゾン 0.5質量%
6.ポリウレタン-79ゲル組成物*1 1.0質量%
7.(VP/エイコセン)コポリマー 1.0質量%
8.イソドデカン 35質量%
9.エタノール 5.0質量%
10.シクロペンタシロキサン 5.0質量%
11.(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー 9.0質量%
12.ジメチルシリル化シリカ*3 1.0質量%
13.ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 残余
14.PEG/PPG-19/19ジメチコン /シクロペンタシロキサン混合物*2 1.0質量%
15.シリコン処理微粒子酸化亜鉛分散体 5.0質量%
16.SA/NAI処理顔料級酸化チタン分散体*3 2.5質量%
17.グンジョウ 0.5質量%
18.トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2 1.0質量%
19.香料 微量
合計 100.0質量%
*1:OILKEMIA 5S CC Polymer(LUBRIZOL社製)
*2:DOWSIL BY 11-030(東レ・ダウコーニング社製)
*3:SA/NAI-TR-10/D5(80%)MiBrid Color Dispersion(三好化成社製)
【0051】
得られたケミカルタイプ日焼け止め化粧料は、良好な使用感と耐水性を兼ね備えながら、製剤の混合均一性の維持および粉体や顔料のケーキングが起こらないという点で安定性に優れ、すべての点で満足のいくものであった。
【0052】
<紫外線吸収剤、紫外線散乱剤併用タイプ日焼け止め化粧料>
1.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 6.0質量%
2.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1.0質量%
3.ジメチコジエチルベンザルマロネート 2.0質量%
4.ポリウレタン-79ゲル組成物*1 1.5質量%
5.イソドデカン 15.0質量%
6.シクロペンタシロキサン 15.0質量%
7.メチルトリメチコン 5.0質量%
8.エタノール 10.0質量%
9.ナイロン12球状粉体(平均粒子径10μm) 8.0質量%
10.ポリメチルシルセスキオキサン 1.0質量%
11.イソノナン酸イソノニル 残余
12.PEG/PPG-19/19ジメチコン /シクロペンタシロキサン混合物*2 3.0質量%
13.イソステアリン酸処理微粒子酸化亜鉛分散体*3 5.0質量%
合計 100.0質量%
*1:OILKEMIA 5S CC POLYMER(LUBRIZOL社製)
*2:DOWSIL BY 11-030(東レ・ダウコーニング社製)
*3:FLZ-10(テイカ社製)
【0053】
得られた紫外線吸収剤・紫外線散乱剤併用タイプ日焼け止め化粧料は、良好な使用感と耐水性を兼ね備えながら、製剤の混合均一性の維持および粉体のケーキングが起こらないという点で安定性に優れ、すべての点で満足のいくものであった。
【0054】
<環状シリコーン無配合タイプ日焼け止め化粧料>
1.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 10.0質量%
2.オクトクリレン 3.0質量%
3.t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 1.0質量%
4.エチルヘキシルトリアゾン 1.0質量%
5.ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 30.0質量%
6.ポリウレタン-79ゲル組成物*1 2.0質量%
7.イソドデカン 残余
8.エタノール 15.0質量%
9.ポリメタクリル酸メチルクロスポリマー球状多孔質粉体(平均粒子径6μm) 15.0質量%
10.PEG/PPG-19/19ジメチコン /水添ポリイソブテン混合物*2 4.0質量%
11.ローマカミツレ花油 微量
12.ラベンダー花油 微量
合計 100.0質量%
*1:OILKEMIA 5S CC Polymer(LUBRIZOL社製)
*2:DOWSIL BY 25-337(東レ・ダウコーニング社製)
【0055】
得られた環状シリコーン無配合タイプ日焼け止め化粧料は、良好な使用感と耐水性を兼ね備えながら、製剤の混合均一性の維持および粉体のケーキングが起こらないという点で安定性に優れ、すべての点で満足のいくものであった。