(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006334
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240110BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240110BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240110BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20240110BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H02J3/00 130
H02J3/32
H02J3/46
H02J13/00 311T
H02J3/14 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107123
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 勝弘
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB21
5G064DA05
5G066AA02
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5G066KA11
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で需要調整を的確に行う出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法を提供する。
【解決手段】スマートメータデータ取得部101は、複数の需要家の有効電力量及び無効電力量を収集する。負荷特性算出部102は、複数の需要家のうちの充放電装置を有さない非保有需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量を用いて負荷特性を算出する。推定部105は、充放電装置を保有する推定対象需要家の有効電力量及び無効電力量、並びに、負荷特性を基に、推定対象需要家の充放電装置の充放電量を推定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家の有効電力量及び無効電力量を収集するデータ取得部と、
前記複数の需要家のうちの充放電装置を有さない非保有需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量を用いて負荷特性を算出する負荷特性算出部と、
前記充放電装置を保有する推定対象需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量、並びに、前記負荷特性を基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定する推定部と
を備えたことを特徴とする出力推定装置。
【請求項2】
前記負荷特性算出部は、前記非保有需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量を基に前記非保有需要家のP-Q相関図を生成して、生成した選択した前記非保有需要家のP-Q相関図を基に前記負荷特性を算出し、
前記推定部は、前記推定対象需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量を基に前記推定対象需要家のP-Q相関図を生成して、前記負荷特性、前記非保有需要家のP-Q相関図及び前記推定対象需要家のP-Q相関図を基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定することを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、
前記充放電装置の定格出力を基に前記充放電装置が充放電を行っていない前記有効電力量及び前記無効電力量の範囲を規定する充電閾値及び放電閾値を算出し、
前記推定対象需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量を基に前記推定対象需要家のP-Q相関図を生成して、生成した前記推定対象需要家のP-Q相関図、並びに、前記充電閾値及び前記放電閾値を基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定することを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項4】
前記負荷特性算出部は、前記非保有需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量を基に前記非保有需要家のP-Q相関図を生成して、生成した選択した前記非保有需要家のP-Q相関図を基に前記負荷特性を算出し、
前記推定部は、前記非保有需要家のP-Q相関図を基に前記充放電装置が充放電を行っていない前記有効電力量及び前記無効電力量の範囲を規定する充電閾値及び放電閾値を算出し、
前記推定対象需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量を基に前記推定対象需要家のP-Q相関図を生成して、生成した前記推定対象需要家のP-Q相関図、並びに、前記充電閾値及び前記放電閾値を基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定することを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記推定対象需要家の前記有効電力量から前記充放電装置の充放電量を除いて前記推定対象需要家の実負荷を求めることを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項6】
前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を基に、前記推定対象需要家に対するデマンドリクエスト指令を生成して前記推定対象需要家に通知するデマンドリクエスト通知部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項7】
前記推定部は、前記推定対象需要家の一定期間における前記有効電力量及び前記無効電力量の平均を前記推定対象需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量として用いることを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項8】
前記データ取得部は、前記複数の需要家が有するスマートメータにより計量された前記有効電力量及び前記無効電力量を、送配電事業者を経由する通信経路を介して収集することを特徴とする請求項1に記載の出力推定装置。
【請求項9】
複数の需要家の有効電力量及び無効電力量を収集し、
前記複数の需要家のうちの充放電装置を有さない非保有需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量を用いて負荷特性を算出し、
前記充放電装置を保有する推定対象需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量、並びに、前記負荷特性を基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする出力推定プログラム。
【請求項10】
出力推定装置に、
複数の需要家の有効電力量及び無効電力量を収集させ、
前記複数の需要家のうちの充放電装置を有さない非保有需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量を用いて負荷特性を算出させ、
前記充放電装置を保有する推定対象需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量、並びに、前記負荷特性を基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定させる
ことを特徴とする出力推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低炭素社会の実現やエネルギーの効率的な利用に向け、今後太陽光発電(PV:Photovoltaics)や蓄電池などのエネルギー機器を活用する需要家が増加していくことが想定される。各需要家の蓄電池による充放電が特定の時間帯に集中すると、その時間帯の電力需要が増大し、電力系統の負荷率が低下するおそれがある。電力系統の負荷率が低下した場合、電力系統の運用効率が低下してしまう。
【0003】
このように、蓄電池充放電により、電力系統の需要変動が複雑化することが考えられる。このような電力系統の需要変動の複雑化により、これまで以上に需要変化率が高まることも想定される。需要変化率が拡大した場合、最低需要と最大需要との差が大きくなり、短時間で急速にその差を埋めなければならなくなり、電力系統の必要調整量が増大してしまう。さらに、電力系統の調整が追い付かなかった場合には、電力を供給できない事態に発展する可能性がある。
【0004】
このような事態を回避するため、ヒートポンプ式給湯機や蓄電池などの需要家機器を用いて需要変化率を低減させるといった対策の検討が望まれている。需要家機器を用いた対策を考えた場合、需要家側資源を活用するアグリゲータと呼ばれる仲介業者や小売電気事業者が、系統運用者の需要調整に寄与することで対価を得るビジネスが成立すると期待される。
【0005】
需要家機器を用いた需要調整の1つの方法として、デマンドレスポンス(DR:Demand Response)を活用することが考えられる。デマンドレスポンスとは、経済メリットを提供することにより需要を調整する技術である。例えば、デマンドレスポンスの活用としては、需要家における蓄電池の充放電にインセンティブやペナルティを与えることで、需要家の蓄電池を制御するといった需要調整が考えられる。
【0006】
需要調整を適切に行うためには、蓄電池などの需要家機器の充放電を把握することが求められる。そこで、小売電気事業者やアグリゲータは、スマートメータと蓄電池との間にセンサを設置して蓄電池の充放電情報を取得し、センサから取得した蓄電池の充放電情報を用いてデマンドレスポンス指令を発して需要調整を行っている。
【0007】
デマンドレスポンスを用いた需要調整の技術として、例えば、一日の充電量及び放電量を事前に得られる条件下で、各蓄電池に充電するための時間帯毎の総充電電力曲線を決定し、その曲線と鏡像関係にある曲線にしたがって電気料金を決定する従来技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の需要調整技術では、蓄電池の充放電量の情報を得るために新たなセンサの設置及びセンサから情報を得るための新たな通信設備の設置が必要であった。新たな通信設備を用いた情報収集ルートとは、送配電事業者とスマートメータとを結ぶAルート及び送配電事業者とアグリゲータなどとを結ぶCルート以外のルートである。このように新たな設備を設ける場合、個々の需要家における蓄電池の充放電量を得るためには、多くの作業が必要となり且つコストも高くなり、的確な需要調整の実現は困難であった。
【0010】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で需要調整を的確に行う出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の開示する出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法の一つの態様において、データ取得部は、複数の需要家の有効電力量及び無効電力量を収集する。負荷特性算出部は、前記複数の需要家のうちの充放電装置を有さない非保有需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量を用いて負荷特性を算出する。推定部は、前記充放電装置を保有する推定対象需要家の前記有効電力量及び前記無効電力量、並びに、前記負荷特性を基に、前記推定対象需要家の前記充放電装置の充放電量を推定する。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面では、本発明は、簡易な構成で需要調整を的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、需要家に対する電力管理システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、出力推定装置及びデマンドレスポンス生成装置のブロック図である。
【
図3】
図3は、負荷特性の算出を説明するための図である。
【
図4】
図4は、蓄電池の定格出力が既知の場合の推定処理を説明するための図である。
【
図5】
図5は、蓄電池の定格出力が分かっていない場合の推定処理を説明するための図である。
【
図6】
図6は、推定対象需要家の出力推定処理の概要を表す図である。
【
図7】
図7は、アグリゲータシステムによるデマンドレスポンス指令の生成処理のフローチャートである。
【
図8】
図8は、出力推定装置による推定対象需要家の蓄電池の充放電量及び実負荷の推定処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、出力推定装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示する出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する出力推定装置、出力推定プログラム及び出力推定方法が限定されるものではない。
【実施例0015】
図1は、需要家に対する電力管理システムの概略構成図である。電力管理システムは、需要家2の電力管理を行うアグリゲータシステム1及び送配電事業者システム3を有する。
【0016】
送配電事業者システム3は、発電所で発生した電気を需要家2が電気を使用する地点まで、送電線や配電線などにより送り届ける事業者が管理するシステムである。送配電事業者システム3は、各需要家2に設置されたスマートメータ22とネットワークで接続される。送配電事業者システム3は、スマートメータ22により計量された情報を受信する。この、スマートメータ22が計量した情報を送配電事業者システム3へ送るルートは、Aルートと呼ばれる。送配電事業者システム3は、各需要家2のスマートメータ22により計量された情報をアグリゲータシステム1へ送信する。
【0017】
アグリゲータシステム1は、アグリゲータや小売電気事業者などが管理するシステムである。アグリゲータシステム1は、各需要家2のスマートメータ22により計量された情報を含むスマートメータデータを送配電事業者システム3から受信する。この、スマートメータ22が計量した情報をアグリゲータシステム1へ送配電事業者システム3を介して送るルートは、Cルートと呼ばれる。すなわち、Cルートは、需要家2のスマートメータ22により計量されたデータの、送配電事業者3(電力会社)を経由した小売事業者が有するアグリゲータシステム1への送信経路における、送配電事業者3とアグリゲータシステム1との間を結ぶ通信経路である。
【0018】
アグリゲータシステム1は、スマートメータ22にから送信されたスマートメータデータを用いて各需要家2に対して充電又は放電を指示する。例えば、アグリゲータシステム1は、需要家2が有する蓄電池23に対するデマンドレスポンス指令を発して、需要家2に蓄電池23の充放電を行わせる。本実施例では、アグリゲータシステム1は、蓄電池23などの充放電装置を有さない需要家2に設置されたスマートメータ22からの情報も収集する。
【0019】
需要家2は、送配電事業者システム3から供給された電気を使用する企業や家庭である。需要家2は、例えば、需要家端末装置21及びスマートメータ22を有する。また、需要家2は、エアコン24やエコキュート(登録商標)といった電気給湯器25などの送配電事業者システム3から供給された電気を使用する負荷機器を有する。さらに、需要家2は、蓄電池23などの充放電装置を有してもよい。ここで、充放電装置は、太陽光発電システムなどの発電装置も含まれる。
【0020】
以下では、充放電装置として蓄電池23を例に説明する。ここで、
図1では、蓄電池23を保有する需要家2を例に図示したが、需要家2は、蓄電池23を保有しなくてもよい。ただし、以下に説明するアグリゲータシステム1による電力管理は、蓄電池23を保有する需要家2が対象となる。ここでは、蓄電池23を保有する需要家2を蓄電池保有需要家と呼び、蓄電池23を保有しない需要家2を蓄電池非保有需要家と呼ぶ。
【0021】
スマートメータ22は、需要家2における所定期間毎の有効電力量及び無効電力量を計量する。スマートメータ22は、有効電力量として、エアコン24や電気給湯器25などの負荷機器により実際に使用された電力量及び蓄電池23に充電された電力量を加算して、且つ、蓄電池23から放電された電力量を減算することで有効電力量を取得する。ただし、スマートメータ22は、需要家2における全体の電力使用量を計量するが、蓄電池23やエアコン24といった個々の機器を区別した有効電力量及び無効電力量の計量は行わない。そして、スマートメータ22は、計量した有効電力量及び無効電力量をスマートメータデータとして送配電事業者システム3へ送出する。
【0022】
需要家端末装置21は、需要家2が使用するパーソナルコンピュータなどの情報端末装置である。蓄電池保有需要家が有する需要家端末装置21は、アグリゲータシステム1から発せられたデマンドレスポンス指令を受信する。そして、需要家端末装置21は、デマンドレスポンス指令をモニタなどに表示させて、需要家2に提供する。需要家2は、デマンドレスポンス指令を基に蓄電池23の充放電を実行する。
【0023】
図2は、出力推定装置及びデマンドレスポンス生成装置のブロック図である。アグリゲータシステム1は、出力推定装置10及びデマンドレスポンス生成装置11を有する。
【0024】
出力推定装置10は、蓄電池保有需要家が保有する蓄電池23の出力、すなわち蓄電池23の充放電量を推定する。また、出力推定装置10は、蓄電池保有需要家の実負荷を推定する。以下に、出力推定装置10の詳細について説明する。出力推定装置10は、
図2に示すように、スマートメータデータ取得部101、負荷特性算出部102、データ格納部103、需要家情報記憶部104及び推定部105を有する。
【0025】
需要家情報記憶部104は、需要家2が保有する蓄電池23のうち定格出力が分かっている蓄電池23についてはその定格出力も記憶する。需要家情報記憶部104は、アグリゲータシステム1の管理者から入力された情報を記憶しても良いし、送配電事業者システム3から送られてくる各需要家2の情報を記憶してもよい。
【0026】
スマートメータデータ取得部101は、各需要家2に配置されたスマートメータ22から出力された有効電力量及び無効電力量を含むスマートメータデータを、送配電事業者システム3を介してCルートで取得する。そして、スマートメータデータ取得部101は、各需要家2のスマートメータデータを蓄積して保持する。この際、スマートメータデータには、それぞれの需要家2が蓄電池保有需要家又は蓄電池非保有需要家のいずれであるかを示す情報が付加される。
【0027】
負荷特性算出部102は、スマートメータデータ取得部101が保持するスマートメータデータのうち蓄電池非保有需要家のスマートメータデータをスマートメータデータ取得部101から取得する。そして、負荷特性算出部102は、スマートメータデータに含まれる有効電力量及び無効電力量を用いて蓄電池非保有需要家のP-Q相関図を作成する。
【0028】
図3は、負荷特性の算出を説明するための図である。
図3の横軸は有効電力量を表し、縦軸は無効電力量を表す。例えば、負荷特性算出部102は、
図3に示すように各蓄電池非保有需要家のスマートでメータデータに含まれる時刻毎の有効電力量及び無効電力量を示す点201のそれぞれを、有効電力量と無効電力量とのそれぞれを座標軸とする二次元座標平面にプロットする。これにより、負荷特性算出部102は、蓄電池非保有需要家のP-Q相関図を作成する。
【0029】
次に、負荷特性算出部102は、プロットした各点201の近似曲線を算出して負荷特性202とする。ここでは、負荷特性算出部102は、負荷特性202を線型近似で求めたが、これに限らず非線形近似などの他の近似方法を用いて負荷特性202を算出してもよい。その後、負荷特性算出部102は、算出した負荷特性202の情報及び蓄電池非保有需要家のP-Q相関図をデータ格納部103に格納する。
【0030】
推定部105は、出力推定の対象とする蓄電池保有需要家の情報を取得する。例えば、推定部105は、入力装置を用いてアグリゲータシステム1の管理者から出力推定の対象とする蓄電池保有需要家の情報の入力を受けてもよい。他にも、推定部105は、出力推定の対象とする複数の蓄電池保有需要家の情報を予め格納した外部のデータベースから出力推定の対象とする蓄電池保有需要家の情報を取得してもよい。以下では、出力推定の対象とする蓄電池保有需要家を「推定対象需要家」と呼ぶ。
【0031】
次に、推定部105は、推定対象需要家のスマートメータデータをスマートメータデータ取得部101から取得する。そして、推定部105は、推定対象需要家のP-Q相関図を作成する。次に、推定部105は、需要家情報記憶部104に格納された推定対象需要家の情報を確認して、推定対象需要家の蓄電池23の定格出力が既知であるか否かを判定する。
【0032】
図4は、蓄電池の定格出力が既知の場合の推定処理を説明するための図である。
図4の横軸は有効電力量を表し、縦軸は無効電力量を表す。
図4に示す各点210が有効電力量と無効電力量とを表す二次元座標平面にプロットされた図が、推定部105により生成された推定対象需要家のP-Q相関図である。
【0033】
推定対象需要家の蓄電池23の定格出力が既知である場合、推定部105は、推定対象需要家の蓄電池23の定格出力を需要家情報記憶部104から取得する。蓄電池23の定格出力には、充電量と放電量とが含まれる。ここで、蓄電池23の充電量の定格出力をP(充電)と表し、蓄電池23の放電量の定格出力をP(放電)と表す。
【0034】
また、推定部105は、負荷特性202をデータ格納部103から取得して、
図4に示すように、推定対象需要家のP-Q相関図に負荷特性202を配置する。
【0035】
ここで、一般的に各需要家2の電気の使用状態は類似する。すなわち、推定対象需要家の電力使用量から蓄電池23の充放電量を除いた実負荷は、一般的な各需要家の電力使用量におよそ一致する。このことから、推定対象需要家の実負荷は、負荷特性202に近似すると考えられる。すなわち、推定対象需要家の有効電力量の値から蓄電池の充放電量を除いた値が負荷特性202に最も近似する場合の充放電量が、蓄電池23の充放電力を最も精度良く表す。そして、充放電の定格出力の2分の1より差が大きい場合にスマートメータデータの有効電力量から定格出力を除くことで、推定対象需要家の使用電力量全体を負荷特性202に最も近似させることができる。このことから、推定部105は、蓄電池23の充放電の定格電力の2分の1であるP(充電)/2及びP(放電)/2を閾値として用いる。
【0036】
推定部105は、推定対象需要家のP-Q相関図において、負荷特性202に対してP(充電)/2の有効電力量を加算して充電閾値203を生成する。すなわち、充電閾値203は、負荷特性202をP(充電)/2だけ右に平行移動したラインである。また、推定部105は、推定対象需要家のP-Q相関図において、負荷特性202からP(放電)/2の有効電力量を減算して放電閾値204を生成する。すなわち、放電閾値204は、負荷特性202をP(放電)/2だけ左に平行移動したラインである。
【0037】
負荷特性202から有効電力量が多い又は無効電力量が少ない方向に大きく離れる場合が、蓄電池23に充電が行われている場合である。そこで、推定部105は、有効電力量及び無効電力量を表す座標平面上で充電閾値203の下側にプロットされた点210で蓄電池23に充電が行われたと判定する。そして、推定部105は、充電閾値203の下側にプロットされた各点210に対応する時刻の実負荷を、その時刻のスマートメータデータの有効電力量からP(充電)を減算して算出する。また、推定部105は、各時刻の蓄電池23の充電量を積算して1日当たりの蓄電池23の充電量を算出する。
【0038】
また、負荷特性202から有効電力量が少ない又は無効電力量が多い方向に大きく離れる場合が、蓄電池23から放電が行われている場合である。そこで、推定部105は、有効電力量及び無効電力量を表す座標平面上で放電閾値204の上側にプロットされた点210で蓄電池23から放電が行われたと判定する。そして、推定部105は、放電閾値204の上側にプロットされた各点210に対応する時刻の実負荷を、その時刻のスマートメータデータの有効電力量からP(放電)を加算して算出する。また、推定部105は、各時刻の蓄電池23の放電量を積算して1日当たりの蓄電池23の放電量を算出する。
【0039】
一方、推定対象需要家の蓄電池23の定格出力が分かっていない場合、推定部105は、以下の処理を行う。
図5は、蓄電池の定格出力が分かっていない場合の推定処理を説明するための図である。
図5のグラフ221及び222の横軸は有効電力量を表し、縦軸は無効電力量を表す。
【0040】
推定部105は、蓄電池非保有需要家のP-Q相関図及び負荷特性202の情報をデータ格納部103から取得する。そして、推定部105は、蓄電池非保有需要家のP-Q相関図のスマートメータデータを表す点210を個数閾値以上その間に含む充電閾値205及び放電閾値206を算出する。
【0041】
例えば、推定部105は、グラフ221に示すように、負荷特性202に対して±2σの範囲が充電閾値205及び放電閾値206の間となるようにσの値を決定する。すなわち、推定部105は、推定対象需要家のP-Q相関図において、負荷特性202に対して2σの有効電力量を加算した充電閾値205と負荷特性202から2σの有効電力量を減算した放電閾値206との間に点210の予め決められた点210の総数もしくはそれに近似する個数閾値以上の点210が含まれるようにσを算出する。個数閾値は、例えば、点210の総数の95%以上などとすることができる。ただし、負荷特性算出部102は、線形近似に限らず非線形近似などの他の近似方法を用いて充電閾値205及び放電閾値206を算出してもよい。
【0042】
ここで、推定対象需要家の実負荷は、負荷特性202に近似すると考えられる。そのため、推定対象需要家の有効電力量の値から蓄電池の充放電量を除いた値が、負荷特性202に最も近似する場合が正確な充放電量と考えられる。
【0043】
負荷特性202から有効電力量が多い又は無効電力量が少ない方向に大きく離れる場合に、蓄電池23に充電が行われていると考えられる。そこで、推定部105は、有効電力量及び無効電力量を表す座標平面上で充電閾値205の下側にプロットされた点210で蓄電池23に充電が行われたと判定する。
【0044】
次に、推定部105は、蓄電池23の充電の定格出力である充電量をP(充電α)とする。次に、推定部105は、P(充電α)を初期値に設定する。例えば、推定部105は、一般的な蓄電池の最も低い充電量の定格出力をP(充電α)の初期値とする。具体的には、推定部105は、P(充電α)の初期値を2kWなどとすることができる。
【0045】
そして、推定部105は、有効電力量及び無効電力量を表す座標平面上で充電閾値205の下側にプロットされた点210の有効電力量からP(充電α)を減算した点を求める。すなわち、推定部105は、有効電力量及び無効電力量を表す座標平面上で充電閾値205の下側にプロットされた点210を左方向にP(充電α)だけ水平移動させる。そして、推定部105は、移動後の点210の有効電力量から、無効電力量が同じ場合の負荷特性202での有効電力量を減算する。すなわち、推定部105は、移動後の点210から負荷特性202までの水平距離を求め、移動後の点210が負荷特性202の左側であれば符号を負とし、負荷特性202の右側であれば符号を正とする。次に、推定部105は、移動後の点210の有効電力量から、無効電力量が同じ場合の負荷特性202での有効電力量を減算した値をLとして、充電時刻tの集合である充電時間帯Tにおける積算値Σt∈TL(t)を算出する。すなわち、積算値Σt∈TL(t)は、充電時間帯Tに計量された有効電力量から設定した充電量を減算しさらに負荷特性202での有効電力量を減算した値の積算値である。
【0046】
次に、推定部105は、P(充電α)を予め決められた1ステップ分変化させて、同様にΣt∈TL(t)を算出する。例えば、推定部105は、0.1W刻みでP(充電α)を変化させる。そして、推定部105は、特定の上限値まで、P(充電α)を変化させていきながら、Σt∈TL(t)の算出を繰り返す。例えば、推定部105は、一般的な蓄電池の最も高い充電量の定格出力をP(充電α)の上限値とする。具体的には、推定部105は、P(充電α)の上限値を5kWとすることができる。
【0047】
次に、推定部105は、Σt∈TL(t)が最小となるP(充電α)の値を特定する。そして、推定部105は、充電時刻tにおける推定対象需要家のスマートメータデータの有効電力量から特定したP(充電α)の値を減算して、充電時間帯Tにおける推定対象需要家の実負荷の推定値を算出する。すなわち、充電時刻tにおける推定対象需要家のスマートメータデータの有効電力量をPx(t)とした場合、特定したP(充電α)を用いて、推定部105は、Px(t)-P(充電α)を充電時間帯Tにおける推定対象需要家の実負荷の推定値とする。また、推定部105は、各時刻の蓄電池23の充電量を積算して1日当たりの蓄電池23の充電量を算出する。
【0048】
また、負荷特性202から有効電力量が少ない又は無効電力量が多い方向に大きく離れる場合に、蓄電池23から放電が行われていると考えられる。そこで、推定部105は、有効電力量及び無効電力量を表す座標平面上で放電閾値206の上側にプロットされた点210で蓄電池23に放電が行われたと判定する。
【0049】
次に、推定部105は、蓄電池23の放電の定格出力である放電量をP(放電β)とする。次に、推定部105は、P(放電β)を初期値に設定する。例えば、推定部105は、一般的な蓄電池の最も低い放電量の定格出力をP(放電β)の初期値とする。
【0050】
そして、推定部105は、有効電力量及び無効電力量を表す座標平面上で放電閾値206の上側にプロットされた点210の有効電力量からP(放電β)を加算した点を求める。すなわち、推定部105は、有効電力量及び無効電力量を表す座標平面上で放電閾値206の上側にプロットされた点210を右方向にP(放電β)だけ水平移動させる。そして、推定部105は、移動後の点210の有効電力量から、無効電力量が同じ場合の負荷特性202での有効電力量を減算する。すなわち、推定部105は、移動後の点210から負荷特性202までの水平距離を求め、移動後の点210が負荷特性202の左側であれば符号を負とし、負荷特性202の右側であれば符号を正とする。次に、推定部105は、移動後の点210の有効電力量から、無効電力が同じ場合の負荷特性202での有効電力量を減算した値をL’として、放電時刻t’の集合である放電時間帯T’における積算値Σt’∈T’L’(t)を算出する。すなわち、積算値Σt’∈T’L’(t’)は、放電時間帯T’に計量された有効電力量に設定した放電量を加算し、そこから負荷特性202での有効電力量を減算した値の積算値である。
【0051】
次に、推定部105は、P(放電β)を予め決められた1ステップ分変化させて、同様にΣt’∈T’L’(t’)を算出する。例えば、推定部105は、0.1W刻みでP(放電β)を変化させる。そして、推定部105は、特定の上限値まで、P(放電β)を変化させていきながら、Σt’∈T’L’(t’)の算出を繰り返す。例えば、推定部105は、一般的な蓄電池の最も高い放電量の定格出力をP(放電β)の上限値とする。
【0052】
次に、推定部105は、Σt’∈T’L’(t’)が最小となるP(放電β)の値を特定する。そして、推定部105は、放電時刻t’における推定対象需要家のスマートメータデータの有効電力量から特定したP(放電β)の値を加算して、放電時間帯T’における推定対象需要家の実負荷の推定値を算出する。すなわち、放電時刻t’における推定対象需要家のスマートメータデータの有効電力量をPx’(t’)とした場合、特定したP(放電β)を用いて、推定部105は、Px’(t’)+P(放電β)を放電時間帯T’における推定対象需要家の実負荷の推定値とする。また、推定部105は、各時刻の蓄電池23の放電量を積算して1日当たりの蓄電池23の放電量を算出する。
【0053】
ここで、本実施例では、推定部105は、総当たり方式を用いてP(充電α)及びP(放電β)を決定したが、これに限らず、二次計画問題などを解くなど他の手法を用いてP(充電α)及びP(放電β)を決定することも可能である。
【0054】
その後、推定部105は、推定対象需要家の実負荷の推定値をデマンドレスポンス生成装置11へ送信する。また、推定部105は、推定した推定対象需要家の蓄電池23の充放電の時間帯の情報や蓄電池23の定格出力の推定値などもデマンドレスポンス生成装置11へ送信してもよい。
【0055】
デマンドレスポンス生成装置11は、送信部111及びデマンドレスポンス生成部112を有する。
【0056】
デマンドレスポンス生成部112は、推定対象需要家の実負荷の推定値を出力推定装置10の推定部105から受信する。次に、デマンドレスポンス生成部112は、需要家2の全体の電力使用量の推移及び推定対象需要家の実負荷の推定値を基に、推定対象需要家に対するデマンドレスポンス指令を生成する。そして、デマンドレスポンス生成部112は、生成したデマンドレスポンス指令を送信部111へ出力する。
【0057】
送信部111は、推定対象需要家に対するデマンドレスポンス指令の入力をデマンドレスポンス生成部112から受ける。そして、送信部111は、取得した推定対象需要家に対するデマンドレスポンス指令を推定対象需要家の需要家端末装置21へ送信して、推定対象需要家に対してデマンドレスポンス指令を通知する。
【0058】
図6は、推定対象需要家の出力推定処理の概要を表す図である。次に、
図6を参照して、出力推定装置10による推定対象需要家の出力推定処理をまとめて説明する。
【0059】
負荷特性算出部102は、蓄電池非保有需要家のスマートメータデータを、スマートメータデータ取得部101が収集したスマートメータデータの中から取得する(ステップS1)。
【0060】
次に、負荷特性算出部102は、蓄電池非保有需要家のスマートメータデータを用いて蓄電池非保有需要家のP-Q相関図を作成する(ステップS2)。
【0061】
次に、負荷特性算出部102は、作成した蓄電池非保有需要家のP-Q相関図から負荷特性202を求める(ステップS3)。負荷特性算出部102は、蓄電池非保有需要家のP-Q相関図及び負荷特性202をデータ格納部103に格納する。
【0062】
次に、推定部105は、推定対象需要家のスマートメータデータをスマートメータデータ取得部101が収集したスマートメータデータの中から取得する(ステップS4)。
【0063】
また、負荷特性算出部102は、推定対象需要家のスマートメータデータを用いて推定対象需要家のP-Q相関図を作成する(ステップS5)。
【0064】
次に、負荷特性算出部102は、負荷特性202を基に、推定対象需要家のP-Q相関図と蓄電池非保有需要家のP-Q相関図とを比較して、蓄電池23の充放電の時間帯を推定する(ステップS6)。
【0065】
そして、推定部105は、推定した充電時間帯及び放電時間帯にしたがって、推定対象需要家における蓄電池23の充放電量及び実負荷を推定する(ステップS7)。
【0066】
その後、推定部105は、推定結果である推定対象需要家における蓄電池23の充放電量及び実負荷をデマンドレスポンス生成装置11に送信する(ステップS8)。
【0067】
図7は、アグリゲータシステムによるデマンドレスポンス指令の生成処理のフローチャートである。次に、
図7を参照して、アグリゲータシステム1によるデマンドレスポンス指令の生成処理の流れを説明する。
【0068】
スマートメータデータ取得部101は、蓄電池保有需要家及び蓄電池非保有需要家の双方のスマートメータデータを収集する。負荷特性算出部102は、蓄電池非保有需要家のスマートメータデータを、スマートメータデータ取得部101が収集したスマートメータデータの中から取得する(ステップS101)。
【0069】
次に、負荷特性算出部102は、取得したスマートメータデータを用いて蓄電池非保有需要家のP-Q相関図を作成する(ステップS102)。
【0070】
次に、負荷特性算出部102は、蓄電池非保有需要家のP-Q相関図から負荷特性202を算出する(ステップS103)。その後、負荷特性算出部102は、蓄電池非保有需要家のP-Q相関図及び負荷特性202をデータ格納部103に格納する。
【0071】
次に、推定部105は、推定対象需要家のスマートメータデータを、スマートメータデータ取得部101が収集したスマートメータデータの中から取得する(ステップS104)。
【0072】
次に、推定部105は、取得したスマートメータデータを用いて推定対象需要家のP-Q相関図を作成する(ステップS105)。
【0073】
次に、推定部105は、蓄電池非保有需要家のP-Q相関図及び負荷特性202をデータ格納部103から取得する。そして、推定部105は、負荷特性202を基に、蓄電池非保有需要家のP-Q相関図と推定対象需要家のP-Q相関図とを比較して推定対象需要家における蓄電池23の充放電量及び実負荷を推定する(ステップS106)。
【0074】
その後、推定部105は、推定結果である推定対象需要家における蓄電池23の充放電量及び実負荷をデマンドレスポンス生成装置11に送信して通知する(ステップS107)。
【0075】
デマンドレスポンス生成部112は、推定対象需要家の蓄電池23の充放電量及び実負荷の推定値を出力推定装置10の推定部105から受信する。次に、デマンドレスポンス生成部112は、需要家2の全体の電力使用量の推移、並びに、推定対象需要家の蓄電池23の充放電量及び実負荷の推定値を基に、推定対象需要家に対するデマンドレスポンスの内容を決定してデマンドレスポンス指令を生成する。そして、デマンドレスポンス生成部112は、生成したデマンドレスポンス指令を送信部111へ出力する。送信部111は、推定対象需要家に対するデマンドレスポンス指令の入力をデマンドレスポンス生成部112から受ける。そして、送信部111は、取得した推定対象需要家に対するデマンドレスポンス指令を推定対象需要家の需要家端末装置21へ送信して、推定対象需要家に対してデマンドレスポンスの内容を通知する(ステップS108)。
【0076】
図8は、出力推定装置による推定対象需要家の蓄電池の充放電量及び実負荷の推定処理のフローチャートである。次に、
図8を参照して、出力推定装置10による推定対象需要家の蓄電池23の充放電量及び実負荷の推定処理の流れを説明する。
図8のフローにおける各処理は、
図7のフローにおけるステップS106で実行される処理の一例にあたる。
【0077】
推定部105は、需要家情報記憶部104に記憶された情報を確認して、推定対象需要家の蓄電池23の定格出力の情報が存在するか否かを判定する(ステップS201)。
【0078】
推定対象需要家の蓄電池23の定格出力の情報が存在する場合(ステップS201:肯定)、推定部105は、負荷特性202をデータ格納部103から取得する(ステップS202)。
【0079】
次に、推定部105は、負荷特性202に蓄電池23の充電量の定格出力であるP(充電)/2を加算して充電閾値203を算出する(ステップS203)。
【0080】
また、推定部105は、負荷特性202から蓄電池23の放電量の定格出力であるP(放電)/2を減算して放電閾値204を算出する(ステップS204)。
【0081】
次に、推定部105は、充電閾値203より下側の点でのスマートメータデータの有効電力量からP(充電)を減算して、推定対象需要家の実負荷を算出する(ステップS205)。
【0082】
次に、推定部105は、放電閾値204より上側の点でのスマートメータデータの有効電力量にP(放電)を加算して、推定対象需要家の実負荷を算出する(ステップS206)。
【0083】
これに対して、推定対象需要家の蓄電池23の定格出力の情報が存在しない場合(ステップS201:否定)、推定部105は、蓄電池非保有需要家のP-Q相関図及び負荷特性202をデータ格納部103から取得する(ステップS207)。
【0084】
次に、推定部105は、蓄電池非保有需要家のP-Q相関図における点の個数閾値以上の点を間に挟むように充電閾値205及び放電閾値206を決定する(ステップS208)。
【0085】
次に、推定部105は、蓄電池23の充電量の定格出力をP(充電α)として初期値に設定する(ステップS209)。
【0086】
次に、推定部105は、充電閾値205より下側の点でのスマートメータデータの有効電力量からP(充電α)を減算し、さらにその点と無効電力量が同じ場合の負荷特性202での有効電力量を減算した値の積算値を算出する。すなわち、推定部105は、Σt∈TL(t)を算出する(ステップS210)。ここで、時刻tは、充電閾値205より下側の点の蓄電池23に充電が行われた時刻であり、時刻tをまとめた時間帯が蓄電池23への充電時間帯Tである。さらに、L(t)は、時刻tにおけるスマートメータデータの有効電力量からP(充電α)を減算し、さらにその点と無効電力量が同じ場合の負荷特性202での有効電力量を減算した値である。
【0087】
次に、推定部105は、P(充電α)が上限値か否かを判定する(ステップS211)。P(充電α)が上限値でない場合(ステップS211:否定)、推定部105は、P(充電α)を1ステップ上昇させる(ステップS212)。その後、推定部105は、ステップS210へ戻る。
【0088】
これに対して、P(充電α)が上限値の場合(ステップS211:肯定)、推定部105は、Σt∈TL(t)が最小となるP(充電α)の値を選択する(ステップS213)。
【0089】
そして、推定部105は、充電時間帯Tにおけるスマートメータデータの有効電力量から選択したP(充電α)を減算して推定対象需要家の実負荷を算出する(ステップS214)。
【0090】
次に、推定部105は、蓄電池23の放電量P(放電β)を初期値に設定する(ステップS215)。
【0091】
次に、推定部105は、放電閾値206より上側の点でのスマートメータデータの有効電力量からP(放電β)を加算し、さらにその点と無効電力量が同じ場合の負荷特性202での有効電力量を減算した値の積算値を算出する。すなわち、推定部105は、Σt’∈T’L’(t’)を算出する(ステップS216)。ここで、時刻t’は、放電閾値206より上側の点の蓄電池23が放電した時刻であり、時刻t’をまとめた時間帯は蓄電池23の放電時間帯T’である。さらに、L(t’)は、時刻t’におけるスマートメータデータの有効電力量にP(放電β)を加算し、さらにその点と無効電力量が同じ場合の負荷特性202での有効電力量を減算した値である。
【0092】
次に、推定部105は、P(放電β)が上限値か否かを判定する(ステップS217)。P(放電β)が上限値でない場合(ステップS217:否定)、推定部105は、P(放電β)を1ステップ上昇させる(ステップS218)。その後、推定部105は、ステップS216へ戻る。
【0093】
これに対して、P(放電β)が上限値の場合(ステップS217:肯定)、推定部105は、Σt’∈T’L’(t’)が最小となるP(放電β)の値を選択する(ステップS219)。
【0094】
そして、推定部105は、放電時間帯T’におけるスマートメータデータの有効電力量に選択したP(放電β)を加算して推定対象需要家の実負荷を算出する(ステップS220)。
【0095】
以上に説明したように、本実施例に係る出力推定装置は、Cルートを介して得られる蓄電池非保有需要家のスマートメータデータを用いて蓄電池非保有需要家のP-Q相関図及び負荷特性を算出する。そして、出力推定装置は、負荷特性を基に、蓄電池非保有需要家のP-Q相関図と推定対象需要家のP-Q相関図とを比較して、推定対象需要家の蓄電池の充放電量及び実負荷を推定する。
【0096】
これにより、蓄電池などの電気供給機器の充放電量を計測するセンサや新たな通信経路を増やすことなく、推定対象需要家の蓄電池の充放電量及び実負荷を推定することができる。すなわち、Cルートを介してスマートメータデータを利用することで、簡易な構成で需要調整を行うことが可能となる。また、各需要家から収集可能なスマートメータデータを用いて推定を行うため、個々の需要家の蓄電池の充放電量及び実負荷を推定することが容易にできる。したがって、簡易な構成でコストを抑えつつ、的確な需要調整を行うことが可能となる。
推定部105は、推定対象需要家についての例えば1週間といった一定期間のスマートメータデータをスマートメータデータ取得部101から取得する。そして、推定部105は、一定期間の各日の各時刻のスマートメータデータの平均を求める。
推定部105は、推定対象需要家の一定期間における各時刻のスマートメータデータの平均を用いて、推定対象需要家の蓄電池23の充電時間帯及び充電量、並びに、放電時間帯及び放電量を推定する。
以上に説明したように、本実施例に係る出力推定装置は、一定期間のスマートメータデータの平均値を用いて充放電量や実負荷の推定処理を実行する。これにより、負荷カーブの日々の変化を吸収することができ、推定精度が向上し、より的確な需要調整を行うことが可能となる。
ここで、以上の各実施例では、出力推定装置10とデマンドレスポンス生成装置11とを別の装置として説明したが、デマンドレスポンス生成装置11が有する機能を出力推定装置10に組み込んで1つの装置とすることも可能である。
ネットワークインタフェース94は、出力推定装置10と外部装置との通信インタフェースである。ネットワークインタフェース94は、例えば、送配電事業者システム3やデマンドレスポンス生成装置11とCPU91との間の通信を中継する。
ハードディスク93は、補助記憶装置である。ハードディスク93は、データ格納部103及び需要家情報記憶部104の機能を実現することができる。また、ハードディスク93は、スマートメータデータ取得部101、負荷特性算出部102及び推定部105の各部の機能を実現するためのプラグラムを含む各種プログラムを格納する。
CPU91は、ハードディスク93から各種プログラムを読み出してメモリ92に展開して実行する。これにより、CPU91は、スマートメータデータ取得部101、負荷特性算出部102及び推定部105の機能を実現する。