(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063346
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171215
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 晃裕
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA35
4C093DA04
4C093FD03
4C093FF16
4C093FF20
4C093FF23
4C093FF24
(57)【要約】
【課題】被検体の脳内における血腫拡大の予測をより高い精度で行えるようにすること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、算出部と、推定部とを備える。取得部は、被検体の脳領域を含む医用画像を取得する。算出部は、前記医用画像に基づいて、前記脳領域の大きさに関する特徴量を算出する。推定部は、前記脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、前記脳領域に含まれる血腫の拡大に関する情報を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の脳領域を含む医用画像を取得する取得部と、
前記医用画像に基づいて、前記脳領域の大きさに関する特徴量を算出する算出部と、
前記脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、前記脳領域に含まれる血腫の拡大に関する情報を推定する推定部と
を備える、医用画像処理装置。
【請求項2】
前記医用画像から画像特徴量を抽出する抽出部をさらに備え、
前記推定部は、前記画像特徴量にさらに基づいて、前記血腫の拡大に関する情報を推定する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記被検体の臨床情報をさらに取得し、
前記推定部は、前記臨床情報にさらに基づいて、前記血腫の拡大に関する情報を推定する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記脳領域の大きさに関する特徴量として、脳体積を算出する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記脳体積として、頭蓋内容積、全脳容積、又は、脳に含まれる部位若しくは組織ごとの容積を算出する、
請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記血腫の拡大に関する情報として、血腫の大きさの変化度合いを推定する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記推定部は、脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、当該脳領域に含まれる血腫の拡大に関する情報を推定する学習済みモデルに対して、前記算出部によって算出された脳領域の大きさに関する特徴量を入力することで、前記血腫の拡大に関する情報を推定する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記抽出部は、ラジオミクスモデル又は深層学習モデルを用いて、前記医用画像から画像特徴量を抽出する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
取得部が、被検体の脳領域を含む医用画像を取得するステップと、
算出部が、前記医用画像に含まれる前記脳領域の大きさに関する特徴量を算出するステップと、
推定部が、前記脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、前記脳領域に含まれる血腫の拡大に関する情報を推定するステップと
を含む、医用画像処理方法。
【請求項10】
被検体の脳領域を含む医用画像を取得する手順と、
前記医用画像に含まれる前記脳領域の大きさに関する特徴量を算出する手順と、
前記脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、前記脳領域に含まれる血腫の拡大に関する情報を推定する手順と
をコンピュータに実行させる、医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理方法及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医用画像診断装置によって撮像された医用画像に基づいて、被検体の脳内における血腫拡大の予測を支援する技術が知られている。
【0003】
一般的に、血腫拡大(Hematoma Expansion)は、脳内出血(Intracerebral Hemorrhage:ICH)の発症後、初めての非造影CT(Non-Contrast Computed Tomography:NCCT)検査からフォローアップNCCT検査までの間に血腫の体積が相対量で33%増加すること、又は、絶対量で6ml増加することと定義されるが、このような血腫拡大の治療法は極めて限定的であり、発症した患者は予後不良に陥りやすい。そのため、血腫拡大リスクの高い患者を前もって発見し、積極的に予防治療を行うことが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Teng L,Ren Q,Zhang P,Wu Z,Guo W,Ren T.Artificial Intelligence Can Effectively Predict Early Hematoma Expansion of Intracerebral Hemorrhage Analyzing Noncontrast Computed Tomography Image.Front Aging Neurosci.2021 May 26;13:632138.doi:10.3389/fnagi.2021.632138.PMID:34122038;PMCID:PMC8188896.
【非特許文献2】Liu J,Xu H,Chen Q,Zhang T,Sheng W,Huang Q,Song J,Huang D,Lan L,Li Y,Chen W,Yang Y.Prediction of hematoma expansion in spontaneous intracerebral hemorrhage using support vector machine.EBioMedicine.2019 May;43:454-459.doi:10.1016/j.ebiom.2019.04.040.Epub 2019 May 3.PMID:31060901;PMCID:PMC6558220.
【非特許文献3】Li Q,Zhang G,Huang YJ,Dong MX,Lv FJ,Wei X,Chen JJ,Zhang LJ,Qin XY,Xie P.Blend Sign on Computed Tomography:Novel and Reliable Predictor for Early Hematoma Growth in Patients With Intracerebral Hemorrhage.Stroke.2015 Aug;46(8):2119-23.doi:10.1161/STROKEAHA.115.009185.Epub 2015 Jun 18.PMID:26089330.
【非特許文献4】Li Q,Zhang G,Xiong X,Wang XC,Yang WS,Li KW,Wei X,Xie P.Black Hole Sign:Novel Imaging Marker That Predicts Hematoma Growth in Patients With Intracerebral Hemorrhage.Stroke.2016 Jul;47(7):1777-81.doi:10.1161/STROKEAHA.116.013186.Epub 2016 May 12.PMID:27174523.
【非特許文献5】Li Q,Liu QJ,Yang WS,Wang XC,Zhao LB,Xiong X,Li R,Cao D,Zhu D,Wei X,Xie P.Island Sign:An Imaging Predictor for Early Hematoma Expansion and Poor Outcome in Patients With Intracerebral Hemorrhage.Stroke.2017 Nov;48(11):3019-3025.doi:10.1161/STROKEAHA.117.017985.Epub 2017 Oct 10.PMID: 29018128.
【非特許文献6】Li Z,You M,Long C,Bi R,Xu H,He Q,Hu B.Hematoma Expansion in Intracerebral Hemorrhage: An Update on Prediction and Treatment.Front Neurol.2020 Jul 17;11:702.doi:10.3389/fneur.2020.00702.PMID:32765408;PMCID:PMC7380105.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、被検体の脳内における血腫拡大の予測をより高い精度で行えるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、算出部と、推定部とを備える。取得部は、被検体の脳領域を含む医用画像を取得する。算出部は、前記医用画像に基づいて、前記脳領域の大きさに関する特徴量を算出する。推定部は、前記脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、前記脳領域に含まれる血腫の拡大に関する情報を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の処理回路が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る算出機能によって行われる脳体積の算出の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る推定機能によって行われる血腫の大きさの変化度合いの推定の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置の処理回路が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る推定機能によって行われる血腫の大きさの変化度合いの推定の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置、医用画像処理方法及び医用画像処理プログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置の構成の一例を示す図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、例えば、医用画像診断装置10、医用画像保管装置20及び臨床情報保管装置30と、ネットワーク40を介して相互に通信可能に接続される。例えば、医用画像処理装置100は、病院や診療所等に設置され、医師等の操作者によって利用される。
【0011】
医用画像診断装置10は、被検体から収集したデータに基づいて、被検体に関する各種の医用画像を撮像する。例えば、医用画像診断装置10は、X線CT(Computed Tomography)装置、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置、X線診断装置等のモダリティによって実現される。
【0012】
医用画像保管装置20は、医用画像診断装置10によって撮像された各種の医用画像を保管する。例えば、医用画像保管装置20は、PACS(Picture Archiving Communication System)等が実装されたサーバ、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0013】
臨床情報保管装置30は、被検体に関する各種の臨床情報を保管する。例えば、臨床情報保管装置30は、HIS(Hospital Information System)、RIS(Radiology Information System)、電子カルテシステム等が実装されたサーバ、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0014】
医用画像処理装置100は、ネットワーク40を介して、医用画像診断装置10、医用画像保管装置20及び臨床情報保管装置30から被検体に関する医用情報を取得し、取得した医用情報に基づいて、各種の処理を実行する。例えば、医用画像処理装置100は、サーバ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等のコンピュータ機器によって実現される。
【0015】
具体的には、医用画像処理装置100は、ネットワーク(NetWork:NW)インタフェース110と、記憶回路120と、入力インタフェース130と、ディスプレイ140と、処理回路150とを有する。
【0016】
NWインタフェース110は、ネットワーク40を介して接続された他の装置と医用画像処理装置100との間で送受信される各種データの伝送及び通信を制御する。具体的には、NWインタフェース110は、処理回路150に接続されており、医用画像診断装置10又は医用画像保管装置20から受信した医用画像を処理回路150に出力する。例えば、NWインタフェース110は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0017】
記憶回路120は、各種データや各種プログラム等を記憶する。具体的には、記憶回路120は、処理回路150に接続されており、処理回路150から送られる命令に応じて、入力された医用画像を記憶し、又は、記憶している医用画像を処理回路150に出力する。例えば、記憶回路120は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0018】
入力インタフェース130は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース130は、処理回路150に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号に変換して処理回路150に出力する。例えば、入力インタフェース130は、関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース130は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース130の例に含まれる。
【0019】
ディスプレイ140は、各種情報及び各種データを表示する。具体的には、ディスプレイ140は、処理回路150に接続されており、処理回路150から出力される各種情報及び各種データを表示する。例えば、ディスプレイ140は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0020】
処理回路150は、入力インタフェース130を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用画像処理装置100の構成要素を制御する。例えば、処理回路150は、NWインタフェース110から出力される医用画像を記憶回路120に記憶させる。また、例えば、処理回路150は、記憶回路120から医用画像を読み出し、ディスプレイ140に表示する。
【0021】
以上、本実施形態に係る医用画像処理装置100の構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、医用画像診断装置10によって撮像された医用画像に基づいて、被検体の脳内における血腫拡大の予測を支援する機能を有する。
【0022】
一般的に、血腫拡大(Hematoma Expansion)は、脳内出血(Intracerebral Hemorrhage:ICH)の発症後、初めての非造影CT(Non-Contrast Computed Tomography:NCCT)検査からフォローアップNCCT検査までの間に血腫の体積が相対量で33%増加すること、又は、絶対量で6ml増加することと定義されるが、このような血腫拡大の治療法は極めて限定的であり、発症した患者は予後不良に陥りやすい。そのため、血腫拡大リスクの高い患者を前もって発見し、積極的に予防治療を行うことが必要である。
【0023】
これに対し、現在、血腫拡大リスクの高い患者を予測する技術として、ICH患者の脳のNCCT画像の画像特徴量や臨床情報を使用して、頭蓋内血腫が拡大するリスクがあるか否かを予測する技術が研究されている。例えば、ICH患者の脳のNCCT画像の画像特徴量を畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)やラジオミクスを利用して取得し、当該画像特徴量から予測する方法や、ICHが発症してから初回のNCCT検査までに要した時間等のICH患者の臨床情報から、SVM(Support Vector Machine)等の機械学習手法を利用して予測する方法、又は、それらを組み合わせて予測する方法等が研究されている。
【0024】
しかしながら、病院や診療所等の医療の現場では、より高い精度で、被検体であるICH患者の脳内における血腫拡大の予測を行うことが求められている。
【0025】
このため、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、被検体の脳内における血腫拡大の予測をより高い精度で行えるように構成されている。
【0026】
具体的には、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、被検体の脳体積を予測因子として使用して、当該被検体の脳内における血腫拡大の予測を行う。
【0027】
ここで、脳体積と血腫拡大との相関について説明する。
【0028】
表1は、脳体積と血腫拡大との相関を調べるために、2016年8月から2019年12月までの間にBuffalo General Medical Centerを受診した200人のICH患者の患者データを記録した結果を示している。
【0029】
【0030】
表1に示すように、患者データには、年齢、性別(男性、女性)、Glasgow Coma Scale(GCS)、ICH Score、NIH Stroke Scale(NIHSS)、ICHの発症から初回CT検査までの時間、脳体積、血腫体積、CT Sign(Blend sign(非特許文献3を参照)、Black hole sign(非特許文献4を参照)、Island sign(非特許文献5を参照)、Edema(浮腫))(有り、無し)の項目ごとに、血腫が拡大した患者及び拡大しなかった患者それぞれの統計値(平均値、中央値(Median)等)の情報が記録されている。この結果では、200人のICH患者のうち、血腫が拡大した患者は70人であり、血腫が拡大しなかった患者は130人であった。
【0031】
これについて、血腫が拡大した患者群と拡大しなかった患者群との間で、患者データの項目ごとに有意水準5%のウェルチのt検定で両側検定による有意差検定を行ったところ、表1に示すように、脳体積の平均値について有意差が認められた。
【0032】
さらに、
図1で統計的に有意差のあった7つの項目(GCS、NIHSS、発症から初回CTまでの時間、脳体積、血腫体積、Blend sign、Island sign)がどれだけ予測に影響するかを調べるために、目的変数を血腫拡大の有無として多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ、表2に示すように、有意水準5%で脳体積が有意であることが認められた(p=0.008)。なお、ICH Scoreは、血腫体積、GCSが含まれるため多重共線性を考えて除いている。
【0033】
【0034】
このように、表1及び2の結果から、ICH患者の脳体積と血腫拡大との間に相関があることが示され、脳体積を予測因子として使用することにより、血腫拡大の予測精度が従来と比べて向上することが想定できる。しかしながら、従来の技術では、脳体積は血腫拡大の予測因子として用いられていない。
【0035】
このことから、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、上述した脳体積と血種拡大との相関に基づいて、被検体の脳体積を血腫拡大の新たな予測因子として使用するものである。
【0036】
具体的には、本実施形態では、医用画像処理装置100の処理回路150が、取得機能151と、算出機能152と、推定機能153とを有する。ここで、取得機能151は、取得部の一例である。また、算出機能152は、算出部の一例である。また、推定機能153は、推定部の一例である。
【0037】
取得機能151は、被検体の脳領域を含む医用画像を取得する。また、算出機能152は、取得機能151によって取得された医用画像に基づいて、被検体の脳領域の大きさに関する特徴量を算出する。そして、推定機能153は、算出機能152によって算出された脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、被検体の脳領域に含まれる血腫の拡大に関する情報を推定する。
【0038】
ここで、本実施形態では、算出機能152は、脳領域の大きさに関する特徴量として、脳領域に関する脳体積を算出する。また、推定機能153は、血腫の拡大に関する情報として、血腫の大きさの変化度合いを推定する。
【0039】
なお、本実施形態では、処理回路150は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記憶される。そして、処理回路150は、記憶回路120に記憶された各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、処理回路150は、各プログラムを読み出した状態で、
図1に示した各処理機能を有することになる。
【0040】
以下、上述した処理回路150が有する処理機能について詳細に説明する。
【0041】
図2は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100の処理回路150が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0042】
図2に示すように、本実施形態では、まず、取得機能151が、被検体の脳領域を含む医用画像を取得する(ステップS101)。
【0043】
具体的には、取得機能151は、ネットワーク40を介して、医用画像診断装置10又は医用画像保管装置20から被検体の脳領域を含む医用画像を取得する。
【0044】
例えば、取得機能151は、医用画像として、X線CT装置によって撮像されたCT画像、又は、MRI装置によって撮像されたMR画像を取得する。なお、一般的には、ICH患者の通常の治療フローでは、最初にNCC検査が行われるため、NCCT画像のみを使うことが第一に想定される。そのため、例えば、取得機能151は、NCCT画像を取得する。
【0045】
さらに、取得機能151は、被検体の臨床情報を取得する(ステップS102)。
【0046】
具体的には、取得機能151は、ネットワーク40を介して、臨床情報保管装置30から被検体の臨床情報を取得する。
【0047】
例えば、取得機能151は、臨床情報として、初回CT検査時の血腫体積値、ICHの発症から初回CT検査までの時間、性別等を取得する。または、取得機能151は、臨床情報として、NIHSS、GCS、収縮期血圧(Systolic Blood Pressure:SBP)、血糖値、抗血小板療法の経験の有無、アルコール摂取の有無、年齢等を取得してもよい。
【0048】
続いて、算出機能152が、取得機能151によって取得された医用画像に基づいて、被検体の脳体積を算出する(ステップS103)。
【0049】
具体的には、算出機能152は、医用画像から一つ又は複数の脳領域を特定し、特定した脳領域に基づいて脳体積を算出する。
【0050】
例えば、算出機能152は、脳体積として、頭蓋内容積を算出する。この場合に、頭蓋内容積は、例えば、脳の白質、灰白質及び脳脊髄液の容積の合計である。
【0051】
または、例えば、算出機能152は、脳体積として、全脳容積を算出する。この場合に、全脳容積は、例えば、脳の白質、灰白質の容積の合計である。
【0052】
または、例えば、算出機能152は、脳体積として、脳に含まれる部位若しくは組織ごとの容積を算出する。この場合に、脳に含まれる部位は、例えば、大脳、小脳等である。また、脳に含まれる組織は、例えば、白質、灰白質等である。また、例えば、算出機能152は、脳に含まれる複数の部位の組み合わせ、複数の組織の組み合わせ、又は、部位及び組織の組み合わせについて、それらの容積の合計を脳体積として算出してもよい。
【0053】
具体的には、算出機能152は、被検体の脳を撮像した医用画像から対象となる脳領域をセグメンテーション処理によって抽出し、抽出された脳領域の総ピクセル数に画像の解像度を乗ずることで、当該脳領域の体積を脳体積として算出する。
【0054】
図3は、第1の実施形態に係る算出機能152によって行われる脳体積の算出の一例を示す図である。
【0055】
図3に示すように、例えば、算出機能152は、まず、被検体の脳を撮像した医用画像から、脳実質以外の骨(頭蓋骨)、筋、脂肪、眼球等の組織の除去(Skull-stripping)を行う(
図3の(A)を参照)。次に、算出機能152は、脳実質から、白質、灰白質等の領域抽出を行う(
図3の(B)を参照)。
【0056】
このとき、例えば、算出機能152は、画像の輝度値に基づく閾値処理や深層学習を用いて、組織の除去及び領域抽出を行う。例えば、算出機能152は、医用画像がCT画像又はMR画像である場合に、3D Slicer、Image J等のソフトウェアを用いて、組織の除去及び領域抽出を行ってもよい。また、例えば、算出機能152は、医用画像がMR画像である場合に、VBM(Voxel-Based Morphometry)、Freesurfer(MRI)等のソフトウェアを用いて、組織の除去及び領域抽出を行ってもよい。
【0057】
そして、算出機能152は、抽出された白質、灰白質等の領域の総ピクセル数に画像の解像度を乗ずることで、当該領域の体積を脳体積として算出する。
【0058】
図2に戻り、続いて、推定機能153が、算出機能152によって算出された被検体の脳体積及び取得機能151によって取得された被検体の臨床情報に基づいて、被検体の脳領域に含まれる血腫の大きさの変化度合いを推定する(ステップS104)。
【0059】
具体的には、推定機能153は、脳体積及び臨床情報に基づいて、脳領域に含まれる血腫の大きさの変化度合いを推定する学習済みモデルに対して、算出機能152によって算出された脳体積及び取得機能151によって取得された臨床情報を入力することで、被検体の脳領域に含まれる血腫の大きさの変化度合いを推定する。
【0060】
図4は、第1の実施形態に係る推定機能153によって行われる血腫の大きさの変化度合いの推定の一例を示す図である。
【0061】
図4に示すように、例えば、推定機能153は、脳体積値、血腫体積値、年齢等を含む非画像データを機械学習モデルに入力して学習させ、当該学習によって得られた学習済みモデルを用いて、血腫の大きさの変化度合いを予測する。
【0062】
ここで、機械学習モデルに入力される非画像データには、例えば、初回CT検査時の血腫体積値、ICHの発症から初回CT検査までの時間、性別等が含まれてもよい。また、機械学習モデルとしては、例えば、ロジスティック回帰、Support Vector Machine(SVM)、Random Forest等が用いられてもよい。
【0063】
また、学習済みモデルによって推定される血腫の大きさの変化度合いは、例えば、血腫の大きさが拡大するか否かを示す情報であってもよいし、所定時間後(例えば、24時間後)における血腫の体積の増加量であってもよい。この場合に、血腫の体積の増加量は、現時点の体積と所定時間後の体積との相対量を表す割合であってもよいし、体積の増加分を表す絶対量であってもよい。
【0064】
図2に戻り、その後、推定機能153は、推定された血腫の大きさの変化度合いを示す情報をディスプレイ140に出力する(ステップS105)。
【0065】
なお、前述したように、処理回路150がプロセッサによって実現される場合、
図2に示すステップS101及びS102の処理は、例えば、処理回路150が、取得機能151に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS103の処理は、例えば、処理回路150が、算出機能152に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS104及びS105の処理は、例えば、処理回路150が、推定機能153に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0066】
上述したように、第1の実施形態では、取得機能151が、被検体の脳領域を含む医用画像を取得する。また、算出機能152が、取得機能151によって取得された医用画像に基づいて、被検体の脳体積を算出する。そして、推定機能153が、算出機能152によって算出された脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、被検体の脳領域に含まれる血腫の大きさの変化度合いを推定する。
【0067】
このような構成によれば、被検体の脳体積を血腫拡大の予測因子の一つとして使用することにより、被検体の脳内における血腫拡大の予測をより高い精度で行えるようになる。
【0068】
また、第1の実施形態によれば、脳内出血患者の血腫の大きさの変化度合いを推定することで、医師の適切な治療選択を支援することができる。
【0069】
以上、第1の実施形態について説明したが、上述した医用画像処理装置100は、その構成の一部を適宜に変更して実施することも可能である。そこで、以下では、第1の実施形態の変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下の実施形態では、第1の実施形態と異なる内容を中心に説明し、重複する内容については詳細な説明を省略する。
【0070】
(第2の実施形態)
例えば、第1の実施形態では、脳体積及び臨床情報に基づいて、脳領域に含まれる血腫の大きさの変化度合いを推定することとしたが、実施形態はこれに限られない。例えば、医用画像から抽出された画像特徴量をさらに用いて、脳領域に含まれる血腫の大きさの変化度合いを推定してもよい。以下、このような例を第2の実施形態として説明する。
【0071】
図5は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置の構成の一例を示す図である。
【0072】
図5に示すように、本実施形態に係る医用画像処理装置200は、第1の実施形態と同様に、例えば、医用画像診断装置10、医用画像保管装置20及び臨床情報保管装置30と、ネットワーク40を介して相互に通信可能に接続される。例えば、医用画像処理装置200は、病院や診療所等に設置され、医師等の操作者によって利用される。
【0073】
そして、本実施形態では、医用画像処理装置200の処理回路250が、取得機能151と、算出機能152と、抽出機能254と、推定機能253とを有する。ここで、取得機能151は、取得部の一例である。また、算出機能152は、算出部の一例である。また、抽出機能254は、抽出部の一例である。また、推定機能253は、推定部の一例である。
【0074】
このうち、取得機能151及び算出機能152は、第1の実施形態と同様である。
【0075】
また、抽出機能254は、取得機能151によって取得された医用画像から画像特徴量を抽出する。そして、推定機能253は、抽出機能254によって抽出された画像特徴量にさらに基づいて、被検体の血腫の大きさの変化度合いを推定する。
【0076】
なお、本実施形態では、処理回路250は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記憶される。そして、処理回路250は、記憶回路120に記憶された各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、処理回路250は、各プログラムを読み出した状態で、
図5に示した各処理機能を有することになる。
【0077】
以下、上述した処理回路250が有する処理機能について詳細に説明する。
【0078】
図6は、第2の実施形態に係る医用画像処理装置200の処理回路250が有する処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0079】
図6に示すように、本実施形態では、まず、取得機能151が、第1の実施形態と同様に、被検体の脳領域を含む医用画像を取得する(ステップS201)。
【0080】
さらに、取得機能151は、第1の実施形態と同様に、被検体の臨床情報を取得する(ステップS202)。
【0081】
続いて、算出機能152が、第1の実施形態と同様に、取得機能151によって取得された医用画像に基づいて、被検体の脳体積を算出する(ステップS203)。
【0082】
続いて、抽出機能254が、取得機能151によって取得された医用画像から画像特徴量を抽出する(ステップS204)。
【0083】
例えば、抽出機能254は、ラジオミクスモデル又はCNN等の深層学習モデルを用いて、医用画像から画像特徴量を抽出する。
【0084】
例えば、抽出機能254は、画像特徴量として、血腫の体積、不規則形状、不均一性等を抽出する。また、例えば、抽出機能254は、医用画像がNCCT画像である場合に、画像特徴量として、Blend sign、Black hole sign等を抽出してもよい。また、例えば、抽出機能254は、医用画像がCTA(CT Angiography)画像又はMR画像である場合に、画像特徴量として、Spot signを抽出してもよい。
【0085】
続いて、推定機能253が、算出機能152によって算出された被検体の脳体積、取得機能151によって取得された被検体の臨床情報、及び、抽出機能254によって抽出された画像特徴量に基づいて、被検体の脳領域に含まれる血腫の大きさの変化度合いを推定する(ステップS205)。
【0086】
具体的には、推定機能253は、脳体積、臨床情報及び画像特徴量に基づいて、脳領域に含まれる血腫の大きさの変化度合いを推定する学習済みモデルに対して、算出機能152によって算出された脳体積、取得機能151によって取得された被検体の臨床情報、及び、抽出機能254によって抽出された画像特徴量を入力することで、被検体の脳領域に含まれる血腫の大きさの変化度合いを推定する。
【0087】
図7は、第2の実施形態に係る推定機能253によって行われる血腫の大きさの変化度合いの推定の一例を示す図である。
【0088】
図7に示すように、例えば、推定機能253は、脳体積値、血腫体積値、年齢等を含む非画像データとともに、医用画像の画像データからラジオミクスモデルや深層学習モデルによって抽出された画像特徴量を機械学習モデルに入力して学習させ、当該学習によって得られた学習済みモデルを用いて、血腫の大きさの変化度合いを予測する。
【0089】
ここで、第1の実施形態と同様に、機械学習モデルに入力される非画像データには、例えば、初回CT検査時の血腫体積値、ICHの発症から初回CT検査までの時間、性別等が含まれてもよい。また、第1の実施形態と同様に、機械学習モデルとしては、例えば、ロジスティック回帰、SVM、Random Forest等が用いられてもよい。
【0090】
また、第1の実施形態と同様に、学習済みモデルによって推定される血腫の大きさの変化度合いは、例えば、血腫の大きさが拡大するか否かを示す情報であってもよいし、所定時間後(例えば、24時間後)における血腫の大きさの拡大率、又は、血腫の大きさの増加量であってもよい。
【0091】
図6に戻り、その後、推定機能253は、推定された血腫の大きさの変化度合いを示す情報をディスプレイ140に出力する(ステップS206)。
【0092】
なお、前述したように、処理回路250がプロセッサによって実現される場合、
図6に示すステップS201及びS202の処理は、例えば、処理回路250が、取得機能151に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS203の処理は、例えば、処理回路250が、算出機能152に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS204の処理は、例えば、処理回路250が、抽出機能254に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS205及びS206の処理は、例えば、処理回路250が、推定機能253に対応するプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0093】
上述したように、第2の実施形態では、抽出機能254が、取得機能151によって取得された医用画像から画像特徴量を抽出する。そして、推定機能253が、抽出機能254によって抽出された画像特徴量にさらに基づいて、被検体の血腫の大きさの変化度合いを推定する。
【0094】
このような構成によれば、被検体の脳体積に加えて、医用画像から抽出された画像特徴量を血腫拡大の予測因子の一つとしてさらに使用することにより、被検体の脳内における血腫拡大の予測をさらに高い精度で行えるようになる。
【0095】
(他の実施形態)
なお、上述した実施形態では、算出機能152が、脳領域の大きさに関する特徴量として、脳体積を算出することとしたが、実施形態はこれに限られない。例えば、算出機能152は、脳領域の大きさに関する特徴量として、脳面積を算出してもよい。この場合に、脳面積は、例えば、脳の特定の位置の断面積であってもよいし、脳の表面積であってもよい。
【0096】
また、上述した実施形態では、推定機能153及び253が、血腫の拡大に関する情報として、血腫の大きさの変化度合いを示す情報を推定することとしたが、実施形態はこれに限られない。例えば、推定機能153及び253は、血腫の拡大に関する情報として、所定時間後(例えば、24時間後)における血腫の体積や血腫の特定の位置の断面積を推定してもよいし、血腫が所定の大きさに拡大するまでの時間を推定してもよい。
【0097】
また、上述した実施形態で説明した医用画像処理装置の構成は、クラウド等のネットワークを介したシステムに適用することも可能である。その場合、例えば、システムに含まれるサーバ装置が備える処理回路に、上述した取得機能、算出機能、抽出機能及び推定機能と同様の処理機能が実装される。そして、サーバ装置の推定機能によって推定された血腫の拡大に関する情報が、システムの利用者が使用するクライアント装置に送信され、クライアント装置が備えるディスプレイ等に表示される。
【0098】
また、上述した実施形態は、本明細書における取得部、算出部、抽出部及び推定部を、それぞれ、処理回路の取得機能、算出機能、抽出機能及び推定機能によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における取得部、算出部、抽出部及び推定部は、実施形態で説明した取得機能、算出機能、抽出機能及び推定機能によって実現する他にも、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0099】
また、上述した実施形態では、処理回路が単一のプロセッサによって実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、処理回路が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、処理回路が有する各処理機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。また、ここでは、各処理機能に対応するプログラムが単一の記憶回路に記憶される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、各処理機能に対応するプログラムが複数の記憶回路が分散して記憶され、処理回路が、各記憶回路から各プログラムを読み出して実行する構成としても構わない。
【0100】
また、上述した実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0101】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各処理機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0102】
また、上述した実施形態及び変形例において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0103】
また、上述した実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0104】
なお、本明細書において扱う各種データは、典型的にはデジタルデータである。
【0105】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、被検体の脳内における血腫拡大の予測をより高い精度で行えるようになる。
【0106】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0107】
以上の実施形態に関し、発明の一側面及び選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0108】
(付記1)
被検体の脳領域を含む医用画像を取得する取得部と、
前記医用画像に基づいて、前記脳領域の大きさに関する特徴量を算出する算出部と、
前記脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、前記脳領域に含まれる血腫の拡大に関する情報を推定する推定部と
を備える、医用画像処理装置。
(付記2)
前記医用画像から画像特徴量を抽出する抽出部をさらに備え、
前記推定部は、前記画像特徴量にさらに基づいて、前記血腫の拡大に関する情報を推定してもよい。
(付記3)
前記取得部は、前記被検体の臨床情報をさらに取得し、
前記推定部は、前記臨床情報にさらに基づいて、前記血腫の拡大に関する情報を推定してもよい。
(付記4)
前記算出部は、前記脳領域の大きさに関する特徴量として、脳体積を算出してもよい。
(付記5)
前記算出部は、前記脳体積として、頭蓋内容積、全脳容積、又は、脳に含まれる部位若しくは組織ごとの容積を算出してもよい。
(付記6)
前記頭蓋内容積は、脳の白質、灰白質及び脳脊髄液の容積の合計であってもよい。
(付記7)
前記全脳容積は、脳の白質、灰白質の容積の合計であってもよい。
(付記8)
前記脳に含まれる部位は、大脳、小脳を含み、前記脳に含まれる組織は、白質、灰白質を含んでもよい。
(付記9)
前記推定部は、前記血腫の拡大に関する情報として、血腫の大きさの変化度合いを推定してもよい。
(付記10)
前記血腫の大きさの変化度合いは、血腫の大きさが拡大するか否かを示す情報であってもよい。
(付記11)
前記血腫の大きさの変化度合いは、所定時間後における血腫の大きさの拡大率、又は、血腫の大きさの増加量であってもよい。
(付記12)
前記推定部は、脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、当該脳領域に含まれる血腫の拡大に関する情報を推定する学習済みモデルに対して、前記算出部によって算出された脳領域の大きさに関する特徴量を入力することで、前記血腫の拡大に関する情報を推定してもよい。
(付記13)
前記抽出部は、ラジオミクスモデル又は深層学習モデルを用いて、前記医用画像から画像特徴量を抽出してもよい。
(付記14)
取得部が、被検体の脳領域を含む医用画像を取得するステップと、
算出部が、前記医用画像に含まれる前記脳領域の大きさに関する特徴量を算出するステップと、
推定部が、前記脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、前記脳領域に含まれる血腫の拡大に関する情報を推定するステップと
を含む、医用画像処理方法。
(付記15)
被検体の脳領域を含む医用画像を取得する手順と、
前記医用画像に含まれる前記脳領域の大きさに関する特徴量を算出する手順と、
前記脳領域の大きさに関する特徴量に基づいて、前記脳領域に含まれる血腫の拡大に関する情報を推定する手順と
をコンピュータに実行させる、医用画像処理プログラム。
【符号の説明】
【0109】
100、200 医用画像処理装置
150、250 処理回路
151 取得機能
152 算出機能
153、253 推定機能
254 抽出機能