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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063352
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】糸掛けロボット及び紡糸巻取システム
(51)【国際特許分類】
   D01D 7/00 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
D01D7/00 C
D01D7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171222
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】井上 玲
(72)【発明者】
【氏名】杉山 研志
(72)【発明者】
【氏名】堀 哲也
【テーマコード(参考)】
4L045
【Fターム(参考)】
4L045AA05
4L045BA03
4L045DA23
4L045DB07
4L045DC03
4L045DC32
4L045DC34
4L045DC43
4L045DC48
(57)【要約】
【課題】糸を生産する現場環境の騒音を低減可能であって、コンパクトな糸掛けロボットを提供する。
【解決手段】糸掛けロボット2は、紡糸装置3から連続的に紡出された糸Yを紡糸引取装置4に掛ける。糸掛けロボット2は、巻取部25と、ロボットアーム22と、を備える。巻取部25は、紡糸装置3から連続的に紡出された糸Yを巻き取って貯留する。ロボットアーム22は、紡糸装置3から巻取部25に至る糸Yに係合するハンド部23を有する。ロボットアーム22は、ハンド部23を動作させて紡糸装置3から巻取部25に至る糸Yを紡糸引取装置4に掛ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸装置から連続的に紡出された糸を糸処理装置に掛ける糸掛けロボットであって、
前記紡糸装置から連続的に紡出された糸を巻き取って貯留する巻取部と、
前記紡糸装置から前記巻取部に至る糸に係合する糸係合部を有して当該糸係合部を動作
させて前記紡糸装置から前記巻取部に至る糸を前記糸処理装置に掛けるロボットアームと、
を備えることを特徴とする糸掛けロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の糸掛けロボットであって、
前記巻取部の軸方向中央部の横断面が、軸方向両端部の横断面よりも小径となっていることを特徴とする糸掛けロボット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸掛けロボットであって、
貯留された糸を前記巻取部から排出する糸排出部を備えることを特徴とする糸掛けロボット。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の糸掛けロボットであって、
前記巻取部の径が変化可能に構成されていることを特徴とする糸掛けロボット。
【請求項5】
請求項4に記載の糸掛けロボットであって、
前記巻取部が縮径状態及び拡径状態に変化可能に構成され、
前記拡径状態のとき、前記巻取部の軸方向中央部の横断面が、軸方向両端部の横断面よりも小径となることを特徴とする糸掛けロボット。
【請求項6】
請求項4に記載の糸掛けロボットであって、
貯留された糸を前記巻取部から排出する糸排出部を備えることを特徴とする糸掛けロボット。
【請求項7】
請求項6に記載の糸掛けロボットであって、
前記巻取部が縮径状態及び拡径状態に変化可能に構成され、
前記糸排出部に貫通孔が形成され、
前記縮径状態の前記巻取部が前記糸排出部の貫通孔を挿通することを特徴とする糸掛けロボット。
【請求項8】
請求項4から7までの何れか一項に記載の糸掛けロボットであって、
前記巻取部は、一体的に回転可能な複数の棒部材を備え、
複数の前記棒部材は、前記巻取部の回転中心に対して周方向に並べて配置され、
それぞれの前記棒部材は、前記回転中心に対してねじれの位置に配置され、前記回転中心に対して近づく方向及び離れる方向に移動可能であることを特徴とする糸掛けロボット。
【請求項9】
糸を連続的に紡出する紡糸装置と、
前記紡糸装置から連続的に紡出された糸の引取り又は巻取りを行う糸処理装置と、
前記紡糸装置から連続的に紡出された糸を前記糸処理装置に掛ける糸掛けロボットと、
を備える紡糸巻取システムであって、
前記糸掛けロボットは、
前記紡糸装置から連続的に紡出された糸を巻き取って貯留する巻取部と、
前記紡糸装置から前記巻取部に至る糸に係合する糸係合部を有して当該糸係合部を動作
させて前記紡糸装置から前記巻取部に至る糸を前記糸処理装置に掛けるロボットアームと、
を備えることを特徴とする紡糸巻取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸掛けロボット、及び当該糸掛けロボットを備える紡糸巻取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶融した原料から糸を生成して巻き取る紡糸巻取システムにおいて、上流側の紡糸機から糸が継続的に供給される状況下で糸掛けロボットを用いて糸掛け作業を行う構成が知られている。特許文献1は、この種の糸掛けロボットを開示する。
【0003】
特許文献1の糸掛けロボットは、ロボットアームを備え、ロボットアームの先端にサクションが配置されている。このロボットは、上流側から供給される糸を、サクションにより吸引保持しながら糸掛け作業を行う。サクションによって吸引された糸は、サクションに接続された廃棄箱に廃棄される。これにより、糸の弛みが防止され、ロボットが糸掛け作業を適切に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-123814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような従来の糸掛けロボットにおいては、ロボットアームが、糸群を保持するサクションインジェクタ及び圧縮空気を供給する圧縮空気管路等の重量を支持する必要がある。従って、ロボットアームの強度を確保する必要があり、小型化が難しかった。また、従来の糸掛けロボットは、負圧によって糸を吸引する構成であるため、空気音による騒音が大きく、改善が望まれていた。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、現場環境の騒音を低減可能で、コンパクトな糸掛けロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸掛けロボットが提供される。即ち、この糸掛けロボットは、紡糸装置から連続的に紡出された糸を糸処理装置に掛ける。前記糸掛けロボットは、巻取部と、ロボットアームと、を備える。前記巻取部は、前記紡糸装置から連続的に紡出された糸を巻き取って貯留する。前記ロボットアームは、前記紡糸装置から前記巻取部に至る糸に係合する糸係合部を有する。前記ロボットアームは、当該糸係合部を動作させて、前記紡糸装置から前記巻取部に至る糸を前記糸処理装置に掛ける。
【0009】
これにより、糸掛けロボットにおいて、糸を巻取部に貯留することができる。この結果、糸を吸引して、別途に設けられた廃糸容器等に直接排出する必要がなくなる。よって、ロボットアームの先端に、重量が大きいサクションガン等の吸引装置を搭載する必要がなくなり、ロボットアームの小型化及び低出力を実現することができる。また、負圧による吸引力で糸を吸引保持する構成に比べて、騒音を低減することができる。
【0010】
前記の糸掛けロボットにおいては、前記巻取部の軸方向中央部の横断面が、軸方向両端部の横断面よりも小径となっていることが好ましい。
【0011】
これにより、巻取部からの糸の脱落を防止でき、糸を好適に貯留することができる。
【0012】
前記の糸掛けロボットにおいては、貯留された糸を前記巻取部から排出する糸排出部を備えることが好ましい。
【0013】
これにより、巻取部に巻かれた糸を容易に排出することができる。
【0014】
前記の糸掛けロボットにおいては、前記巻取部の径が変化可能であることが好ましい。
【0015】
これにより、巻取部の径を減少させることで、巻取部に巻かれた糸を、コンパクトな状態で容易に排出することができる。
【0016】
前記の糸掛けロボットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記巻取部が縮径状態及び拡径状態に変化可能に構成される。前記拡径状態のとき、前記巻取部の軸方向中央部の横断面が、軸方向両端部の横断面よりも小径となる。
【0017】
これにより、巻取部からの糸の脱落を防止でき、糸を好適に貯留することができる。
【0018】
前記の糸掛けロボットにおいては、貯留された糸を前記巻取部から排出する糸排出部を備えることが好ましい。
【0019】
これにより、巻取部に巻かれた糸を容易に排出することができる。
【0020】
前記の糸掛けロボットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記巻取部が縮径状態及び拡径状態に変化可能に構成される。前記糸排出部に貫通孔が形成されている。前記縮径状態の前記巻取部が前記糸排出部の貫通孔を挿通する。
【0021】
これにより、巻取部が糸排出部の貫通孔に差し込まれた状態で、巻取部に巻き取られた糸を糸排出部が押すことで、糸を好適に排出することができる。
【0022】
前記の糸掛けロボットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記巻取部は、一体的に回転可能な複数の棒部材を備える。複数の前記棒部材は、前記巻取部の回転中心に対して周方向に並べて配置される。それぞれの前記棒部材は、前記回転中心に対してねじれの位置に配置され、前記回転中心に対して近づく方向及び離れる方向に移動可能である。
【0023】
これにより、簡単な構成で、巻取部の径を容易に変化させることができる。
【0024】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の紡糸巻取システムが提供される。即ち、この紡糸巻取システムは、紡糸装置と、糸処理装置と、糸掛けロボットと、を備える。前記紡糸装置は、糸を連続的に紡出する。前記糸処理装置は、前記紡糸装置から連続的に紡出された糸の引取り又は巻取りを行う。前記糸掛けロボットは、前記紡糸装置から連続的に紡出された糸を糸処理装置に掛ける。前記糸掛けロボットは、巻取部と、ロボットアームと、を備える。前記巻取部は、前記紡糸装置から連続的に紡出された糸を巻き取って貯留する。前記ロボットアームは、前記紡糸装置から前記巻取部に至る糸に係合する糸係合部を有する。前記ロボットアームは、当該糸係合部を動作させて、前記紡糸装置から前記巻取部に至る糸を前記糸処理装置に掛ける。
【0025】
これにより、紡糸巻取システムの簡素化及び出力の低減を図ることができるとともに、負圧による紡糸巻取システムの騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る紡糸巻取システムの概略な構成を示す斜視図である。
図2】紡糸巻取ユニットの構成を示す模式図である。
図3】紡糸巻取システムの制御構成を簡略的に示すブロック図である。
図4】糸降ろし装置の構成を示す模式図である。
図5】糸掛けロボットの構成を示す斜視図である。
図6】糸掛けロボットの構成を示す側面図である。
図7】巻取部の径が小さくなった様子を示す斜視図である。
図8】巻取部に巻き取られた糸を糸排出部が排出する様子を示す斜視図である。
図9】巻取部の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
図1に示す紡糸巻取システム100は、生成した合成繊維の糸Yを巻き取ってパッケージPを形成するシステムである。紡糸巻取システム100において、合成繊維の糸Yは、溶融された化合繊原料を押し出すことにより生成される。紡糸巻取システム100は、プラントにおいて、複数階層を有する建物内に設置されている。
【0029】
紡糸巻取システム100は、図1に示すように、複数の紡糸巻取ユニット1を備える。紡糸巻取システム100は、各紡糸巻取ユニット1及び糸掛けロボット2の動作を制御する集中制御装置101を有する。集中制御装置101は、各紡糸巻取ユニット1及び糸掛けロボット2のロボット制御部20と、無線又は有線によって通信可能に接続される。
【0030】
図2に示す糸掛けロボット(糸掛け装置)2は、複数の紡糸巻取ユニット1で共用されるように備えられる。糸掛けロボット2は、ロボット制御部20の制御指令に応じて、複数の紡糸巻取ユニット1の間で、図示しないレールに沿って走行することができる。
【0031】
以下の説明において「上流」及び「下流」とは、生成された糸Yの巻取時における、糸Yの走行方向での上流及び下流を意味する。左右方向とは、複数の紡糸巻取ユニット1が並べられる方向を意味する。左右方向及び上下方向の何れに対しても垂直な方向を前後方向と称する。
【0032】
紡糸巻取ユニット1のそれぞれは、紡糸装置3と、紡糸引取装置(糸処理装置)4と、紡糸巻取ユニット制御装置102と、を備える。紡糸巻取ユニット1は、各装置を駆動するモータ等の駆動装置を備える。紡糸巻取ユニット制御装置102は、集中制御装置101からの制御指令に応じて、駆動装置の動作を制御する。紡糸引取装置4は、紡糸装置3の下流側に配置されている。紡糸引取装置4は、糸降ろし装置5と、引取部6と、巻取装置(糸巻取装置)7と、を主として備える。
【0033】
紡糸引取装置4は、糸Yの巻取り時に、糸Yを案内する処理等を行う。紡糸引取装置4は、引取部6及び巻取装置7以外に各種の糸処理部を備える。この糸処理部には、例えば、油剤ガイド11、糸保持装置14等がある。油剤ガイド11及び糸保持装置14の詳細については後述する。
【0034】
紡糸巻取システム100が設置されている建物は、仕切床9によって、上側の階層と下側の階層とに仕切られている。上側の階層には、紡糸装置3が設置される。また、上側の階層には、紡糸引取装置4の一部である糸降ろし装置5が設置される。下側の階層には、紡糸引取装置4の一部である、引取部6及び巻取装置7等が設置される。
【0035】
仕切床9には、糸通過孔9aが形成されている。糸通過孔9aは、各紡糸巻取ユニット1に対応して1つずつ設けられている。紡糸装置3により紡出された複数の糸Yは、糸通過孔9aを通過することができる。糸通過孔9aは、複数の糸Yを下側の階層に送るための通路を構成する。
【0036】
糸通過孔9aに接続するように、ダクト状のインターフロアチューブ8が仕切床9に固定されている。インターフロアチューブ8は、複数の糸Yが上側の階層から下側の階層へ走行する過程で、風等の外部要因により糸揺れが発生することを防止する。
【0037】
上側の階層において、仕切床9に形成された糸通過孔9aの近傍には、糸保持装置14が設けられている。糸保持装置14は、吸引装置14a、及び図略のカッタを備える。下流側の紡糸引取装置4の部分(例えば引取部6又は巻取装置7)等において、糸Y又は各装置に何らかの異常が発生した場合に、糸保持装置14は、紡糸装置3から下流側へ走行する複数の糸Yをカッタによって切断する。更に、糸保持装置14は、切断された上流側(紡糸装置3側)の複数の糸Yを吸引装置14aで吸引することによって一時的に保持する。このように、紡糸装置3により紡出された複数の糸Yは、糸保持装置14の吸引装置14aの内部に吸引され、引取部6及び巻取装置7へ走行せず、保持される。糸保持装置14による糸の保持は、異常が解消されるまで継続される。
【0038】
紡糸装置3は、図示しないが、複数(例えば、12個)の紡糸口を備える。紡糸口には、高温状態の溶融ポリマーが、ギアポンプ等からなる図略のポリマー供給装置によって供給される。紡糸装置3は溶融ポリマーを、それぞれの紡糸口から押し出す。これにより、糸Yが紡糸装置3のそれぞれの紡糸口から紡出される。紡糸口の数(言い換えれば、紡糸装置3において紡糸される糸Yの数)は、12個に限定されない。
【0039】
紡糸巻取システム100の上側の階層には、冷却装置10と、油剤ガイド11と、が設置されている。
【0040】
冷却装置10は、紡糸装置3のすぐ下側に設置されている。冷却装置10は、図略の複数の冷却筒を備える。それぞれの冷却筒には、図示しない冷却空気配管を通じて、冷却空気が供給される。冷却筒を通過する糸Yは、冷却空気によって冷却されて固化する。
【0041】
油剤ガイド11は、冷却装置10の下方に配置される。油剤ガイド11は、紡糸装置3で紡出される糸Yの本数と同じ数だけ設置されている。複数の油剤ガイド11のそれぞれは、通過する糸Yのそれぞれに油剤を付与する。油剤が付与された複数の糸Yは、仕切床9に形成された糸通過孔9aを通って下側の階層に至る。
【0042】
糸降ろし装置5は、複数の糸Yを、上側の階層から、巻取装置7等が設置されている下側の階層へ降ろすために用いられる。糸掛け作業とは、紡糸装置3からの糸Yを所定の経路に沿って引取部6にセットした後、巻取装置7のボビンBに固定する作業を意味する。この糸掛け作業により、巻取装置7が糸Yを巻き取ってパッケージPを形成することができる状態になる。
【0043】
糸降ろし装置5は、図4に示すように、ガイド部材51と、昇降部52と、糸吸引部53と、を主として備える。なお、糸降ろし装置5は、台車を備えるように構成されても良い。糸降ろし装置5の各部は、集中制御装置101の制御指令に応じて動作するそれぞれの糸降ろし装置駆動モータ59により駆動される。
【0044】
ガイド部材51は、昇降部52が昇降するとき、昇降部52を上下方向に案内するために用いられる。ガイド部材51は、例えば、多数の要素部品を1列に並べてそれぞれ回転可能に連結したチェーン状の部材によって構成される。
【0045】
糸降ろし作業を行わないとき、ガイド部材51は、巻き取られた状態で収納されている。糸降ろし作業を行うとき、ガイド部材51は、仕切床9に形成された糸通過孔9aを通過し、上側の階層と下側の階層に跨って上下方向に延びるように位置する。ガイド部材51は、昇降部52を上下方向に案内する機能を有する限り、上記の構成に限定されない。例えば、ガイド部材51を、上下方向に延びる細長い部材から構成することもできる。
【0046】
昇降部52は、ガイド部材51に沿って上下方向に昇降可能に取り付けられている。図4に示すように、昇降部52は、支持部54と、保持部55と、を備える。支持部54は、細長い板状に形成され、上下方向に延びるように設置されている。支持部54の下端部には、保持部55が取り付けられている。
【0047】
保持部55は、2つの糸掛けローラ55aを備える。2つの糸掛けローラ55aは、紡糸巻取システム100の左右方向に並んで配置されている。それぞれの糸掛けローラ55aは、例えば、回転可能に支持されたローラとして構成されている。それぞれの糸掛けローラ55aは、その軸が前後方向に延びるように取り付けられている。2つの糸掛けローラ55aは、支持部54を挟んで、左右方向における支持部54の両側に位置する。
【0048】
糸掛けローラ55aの外周面には、断面が略V字状に形成されたリング状の溝部が形成される。2つの糸掛けローラ55aは、実質的に水平方向に案内された糸Yの部分に対して上から下降することで、糸Yを溝部に入り込ませる。糸掛けローラ55aに掛けられた複数の糸Yは、V字状の溝の案内によって、当該溝の最も深い部分に移動する。この結果、複数の糸Yが集束されるので、後述のロボットアーム22による捕捉が容易になる。
【0049】
糸吸引部53は、糸降ろし作業時において、紡糸装置3から紡出された複数の糸Yを一時的に吸引保持するために用いられる。糸吸引部53は、例えばサクションガンから構成される。糸吸引部53によって吸引された複数の糸Yは、当該糸吸引部53に連結された図略の吸引ホースを通って、図略の廃糸容器等に廃棄される。
【0050】
この構成により、複数の糸Yの中途部が2つの糸掛けローラ55aに掛けられた状態で、昇降部52が上側の階層の待機位置から下側の階層の引渡位置まで移動することで、複数の糸Yを下方へ降ろすことができる。
【0051】
図2に示すように、引取部6よりも上流側には、糸規制ガイド12が設置されている。糸規制ガイド12は、例えば、糸Yの数に応じて12個の案内溝が形成された櫛歯状の部材とすることができる。糸規制ガイド12は、下側の階層であって、引取部6の近傍に位置する。糸規制ガイド12は、複数の紡糸巻取ユニット1が並ぶ方向と平行な方向に移動可能に設けられている。糸規制ガイド12は、例えばシリンダからなる図略のガイド駆動部により駆動される。
【0052】
引取部6は、上側の階層から下方へ走行する複数の糸Yを引き取るために用いられる。引取部6は、引取フレーム60と、2つのゴデットローラ61,62と、を備える。以下の説明では、糸Yの走行方向において、上流側に位置するゴデットローラを上流ゴデットローラ61と称し、下流側に位置するゴデットローラを下流ゴデットローラ62と称する。
【0053】
糸Yの巻取り時、糸規制ガイド12は実質的に、上流ゴデットローラ61の真上に位置する。以下の説明においては、当該位置を「動作位置」と称する。
【0054】
糸掛け作業のとき、糸規制ガイド12は、上流ゴデットローラ61の真上から左右方向にずれた位置に位置する。これにより、糸掛け作業を容易に行うことができる。以下の説明においては、糸掛け作業時における糸規制ガイド12の位置を「準備位置」と称する。
【0055】
上流ゴデットローラ61は、糸規制ガイド12の動作位置のほぼ真下に位置するように、引取フレーム60に配置されている。上流ゴデットローラ61は、上流ゴデットモータ61aにより駆動される。一方、下流ゴデットローラ62は、図2の鎖線矢印で示すように、上流ゴデットローラ61に近接した糸掛け位置と、巻取装置7の直上に位置するパッケージ形成位置と、の間で移動可能である。下流ゴデットローラ62は、下流ゴデットモータ62aにより駆動される。この上流ゴデットモータ61a及び下流ゴデットモータ62aは、紡糸巻取ユニット制御装置102の制御指令に応じて動作する。
【0056】
糸掛け作業時、下流ゴデットローラ62は、上流ゴデットローラ61の近傍の糸掛け位置に下降する。糸掛け作業が終了すると、下流ゴデットローラ62は、パッケージ形成位置まで上昇する。
【0057】
巻取装置7は、引取部6から走行してくる複数の糸Yを巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置7は、ターレット71と、2本のボビンホルダ72と、トラバース装置73と、接触ローラ74と、を主として備える。
【0058】
ターレット71は、回転可能に設置されている。ターレット71には、2本のボビンホルダ72のそれぞれが回転可能に支持されている。それぞれのボビンホルダ72は、前後方向に細長く形成されている。2本のボビンホルダ72は、ターレット71の回転軸を挟んで互いに反対側に配置されている。ターレット71が回転することによって、2本のボビンホルダ72の位置が入れ替わる。
【0059】
具体的には、2本のボビンホルダ72は、上側の巻取位置と、下側の待機位置と、のそれぞれに位置する。巻取位置にあるボビンホルダ72は接触ローラ74と近接しており、待機位置にあるボビンホルダ72は接触ローラ74から離れている。各ボビンホルダ72には、複数のボビンBが装着されている。複数のボビンBは、ボビンホルダ72の長手方向に並べられている。
【0060】
トラバース装置73は、複数のボビンBに対応して、複数のトラバースガイド73aを備える。各トラバースガイド73aは、それぞれのボビンBに対応するように配置される。トラバースガイド73aは、紡糸巻取ユニット制御装置102の制御指令に応じて動作するトラバースモータ73bにより駆動される。各トラバースガイド73aがボビンホルダ72の長手方向と平行な方向に往復移動することで、糸YがトラバースされつつボビンBに巻き取られる。
【0061】
接触ローラ74は、それぞれのボビンBに形成された複数のパッケージPの外周面に接触して、当該複数のパッケージPのそれぞれに接圧を付与する。接触ローラ74は、紡糸巻取ユニット制御装置102の制御指令に応じて動作する巻取モータ70により駆動される。
【0062】
糸掛けロボット2は、図2に示すように、建物の下側の階層に配置されている。糸掛けロボット2は、複数の紡糸巻取ユニット1の間で走行可能であり、各紡糸巻取ユニット1に対する糸掛け作業を自動的に行う。
【0063】
糸掛けロボット2は、ロボット本体21と、ロボット制御部20と、ロボットアーム22と、ハンド部23と、糸貯留部24と、を備える。糸掛けロボット2の各部の動作は、ロボット本体21に搭載されるロボット制御部20により制御される。ロボット制御部20は、図3に示すように、CPU、ROM、RAM等を備える公知のコンピュータである。
【0064】
下側の階層には、図略のガイドレールが設けられている。ガイドレールは、複数の紡糸巻取ユニット1が並ぶ方向(左右方向)に沿って延びている。ロボット本体21は、移動モータ21aを備える。移動モータ21aを駆動することにより、ロボット本体21はガイドレールに沿って移動することができる。
【0065】
ロボットアーム22は、多関節型に構成され、ロボット本体21に取り付けられている。ロボットアーム22は、アーム駆動モータ22aにより駆動され、3次元的な動作を行うことができる。ロボットアーム22の先端部には、糸Yを引っ掛けて案内できるハンド部(糸係合部、ガイド部)23が取り付けられている。ハンド部23には図略のカッタが取り付けられても良い。移動モータ21a及びアーム駆動モータ22aの動作は、図7に示すように、ロボット制御部20により制御される。即ち、ロボット本体21の移動及びロボットアーム22の動作は、ロボット制御部20により制御される。カッタの位置はハンド部23に限定されず、ロボット本体21に取り付けられても良い。
【0066】
ハンド部23は、ロボットアーム22の先端に取り付けられるエンドエフェクタであって、複数の糸Yを案内可能な形状に形成されている。一例として、ハンド部23は、開閉可能な1対のフィンガー部を備える。フィンガー部が閉じられた状態では、糸Yを保持可能な孔が形成される。フィンガー部が閉じられた状態で、糸Yは孔の内部を走行することができる。フィンガー部が開かれた状態では、孔に対して糸Yを出し入れすることができる。ハンド部23の構成は上記に限定されず、案内のために糸Yに対して係合できる限り、他の形状に形成されても良い。
【0067】
糸貯留部24は、糸掛けロボット2が糸掛け作業を行うとき、紡糸装置3により紡出された複数の糸Yを巻き取って貯留するために用いられる。一例として図2に示すように、糸貯留部24は、ロボット本体21の背面に配置されている。ロボット本体21の背面は、紡糸巻取ユニット1と対面する面と言い換えることもできる。糸貯留部24の配置はロボット本体21の背面に限定されず、側面や底面に設けられても良い。
【0068】
糸貯留部24は、図5に示すように、巻取部25と、廃糸排出プレート(糸排出部)26と、を主として備える。
【0069】
巻取部25は、前後方向において、ロボット本体21の背面から紡糸巻取ユニット1に近づく向きに延びるように配置されている。巻取部25は、ロボット本体21に対して回転可能に取り付けられている。巻取部25は、縮径状態及び拡径状態に変化可能となるかせくり機から構成され、中心軸体(中心棒)25aと、中心軸体25a周りに設置された拡縮部25bと、を備える。
【0070】
中心軸体25aは、棒状部材であって、概ね水平な向きに突出している。中心軸体25aは、巻取部25の回転中心に位置している。拡縮部25bは、複数の第1支持棒25cと、複数の第2支持棒25dと、複数の連結棒(棒部材)25eと、固定ボス25fと、移動スリーブ25gと、から構成される。巻取部25を構成する第1支持棒25c、第2支持棒25d及び連結棒25eの数はそれぞれ等しい。
【0071】
第1支持棒25c、第2支持棒25d及び連結棒25eのそれぞれは、何れも直線状に細長い棒状の部材である。中心軸体25aの先端部には、固定ボス25fが固定されている。中心軸体25aの根元部には、円筒状の移動スリーブ25gが支持されている。移動スリーブ25gは、中心軸体25aの長手方向に沿って移動可能である。固定ボス25f及び移動スリーブ25gは、中心軸体25aと一体的に回転する。
【0072】
それぞれの第1支持棒25cの一端(以下「移動端」と称する)は、ヒンジを介して移動スリーブ25gに連結されている。それぞれの第1支持棒25cの他端は、ヒンジを介して連結棒25eに連結されている。それぞれの第2支持棒25dの一端(以下、「固定端」と称する)は、ヒンジを介して固定ボス25fに連結されている。それぞれの第2支持棒25dの他端は、ヒンジを介して連結棒25eに連結されている。第1支持棒25cが移動スリーブ25gに取り付けられる位相は、第2支持棒25dが固定ボス25fに取り付けられる位相と対応している。
【0073】
即ち、第1支持棒25c及び第2支持棒25dにおいて、移動スリーブ25g又は固定ボス25fに取り付けられる側と反対側の端部同士が、連結棒25eを介して互いに連結されている。中心軸体25aを中心として周方向に並べられた複数の連結棒25eは、実質的に、糸Yを巻付け可能な外周面を構成する。
【0074】
ロボット本体21は、図示しないモータを備える。モータの駆動により中心軸体25aを回転させることができる。第1支持棒25c、第2支持棒25d及び連結棒25eは、中心軸体25aと一体的に回転する。
【0075】
それぞれの連結棒25eの長手方向一端が第1支持棒25cに連結され、他端が第2支持棒25dに連結される。連結棒25eは、第1支持棒25cに対して、その連結箇所の位相が対応している第2支持棒25dではなく、連結箇所の位相が1つ分以上ずれている第2支持棒25dを連結している。これにより、それぞれの連結棒25eは、中心軸体25aの軸方向(言い換えれば、巻取部25の回転中心)に対してねじれの位置に配置される。従って、巻取部25の外周面は、実質的に、中心軸体25aを中心とした一葉双曲面に似た形状となる。この外周面は、その軸方向中央部分の横断面が軸方向全体のうち最小径となるように凹んでいる。こうして形成される凹部(脱落防止構造)25hにより、巻取部25により巻き取った糸Yが軸方向に抜けることを防止することができる。
【0076】
第1支持棒25cの移動端が連結された移動スリーブ25gは、例えば、図略の駆動機構等の駆動により、中心軸体25aに沿って移動する。
【0077】
移動スリーブ25gが中心軸体25aの先端側へ移動すると、これに連動して、複数の連結棒25eが径方向において中心軸体25aから離れるように移動する。この結果、巻取部25は、径が大きくなる拡径状態になる。
【0078】
移動スリーブ25gが中心軸体25aの根元側へ移動すると、これに連動して、複数の連結棒25eが径方向において中心軸体25aに近づくように移動する。この結果、巻取部25は、径が小さくなる縮径状態になる。
【0079】
糸Yを巻き取るとき、図5に示すように、移動スリーブ25gは所定の位置となるように制御される。この結果、巻取部25は、その径が所定の大きさである拡径状態になる。この拡径状態において、軸方向中央部の横断面は、軸方向両端部の横断面より小径となる。
【0080】
廃糸排出プレート26は、円環状に形成され、巻取部25の中心軸体25aに沿って、ロボット本体21から離れるように移動可能に取り付けられている。具体的には、廃糸排出プレート26は、ロボット本体21の近傍における待機位置と、ロボット本体21から離れた(中心軸体25aの先端に近い)残糸排出位置と、の間で移動可能である。
【0081】
廃糸排出プレート26には、例えば、図8に示すように、当該廃糸排出プレート26と垂直な方向に延びる伸縮可能な押付け棒26aが取り付けられている。廃糸排出プレート26の中心部には、貫通状の孔が形成されている。径が小さくなった縮径状態の巻取部25は、廃糸排出プレート26の孔を通過可能である。押付け棒26aが伸縮することで、廃糸排出プレート26は、待機位置と残糸排出位置との間で移動する。
【0082】
次に、糸掛けロボット2による糸掛け作業について説明する。図5及び図6は、糸掛けロボット2が行う糸掛け作業において、糸Yが貯留されるときの糸貯留部24の様子を示す図である。図7及び図8は、糸掛け作業後、貯留された糸Yが排出されるときの糸貯留部24の様子を示す図である。
【0083】
紡糸巻取ユニット1において、例えばパッケージPの形成開始前の準備段階、又は、何らかの原因により糸切れが発生した場合等に、巻取装置7による糸Yの巻取りを開始(再開)する前に、上方の紡糸装置3から紡出された複数の糸Yを引取部6等に引っ掛ける糸掛け作業を行う必要がある。
【0084】
本実施形態においては、紡糸装置3からの複数の糸Yを上側の階層から下側の階層まで降ろす糸降ろし作業が、オペレータが糸降ろし装置5を操作することにより行われる。下側の階層における糸掛け作業が、糸掛けロボット2によって自動的に行われる。
【0085】
糸降ろし作業を開始する前に、オペレータは、糸降ろし装置5を対象の紡糸巻取ユニット1まで移動させる。その後、オペレータは、糸降ろし装置5から糸吸引部53を取り外し、それと同時に又はその前に糸吸引部53を動作させる。オペレータは、糸吸引部53を用いて、油剤ガイド11より上流側において、紡糸装置3から紡出された複数の糸Yを吸引保持する。
【0086】
そして、オペレータは、糸吸引部53により吸引保持された複数の糸Yを油剤ガイド11に掛ける。オペレータは、複数の糸Yを油剤ガイド11に掛けた後、又は、糸降ろし装置5を対象の紡糸巻取ユニット1まで移動させた後、適切なタイミングで、糸降ろし装置5のガイド部材51を、糸通過孔9aを通過して2つの階層に跨った状態とする。
【0087】
その後、オペレータは、例えばフック状の糸掛け用工具(図示しない)を適宜の場所から取り出し、糸吸引部53と油剤ガイド11との間で、糸吸引部53によって吸引保持された糸Yを糸掛け用工具に掛ける。複数の糸Yが糸掛け用工具に掛けられた後、オペレータは、糸吸引部53と糸掛け用工具との間の複数の糸Yが、糸降ろし装置5の保持部55が備える2つの糸掛けローラ55aの真下に位置するように、糸掛け用工具を移動する。
【0088】
この状態でオペレータが糸掛け用工具を外すと、油剤ガイド11と、糸吸引部53と、の間の複数の糸Y(即ち糸Yの中途部)が2つの糸掛けローラ55aに掛けられる。これに伴って、複数の糸Yが2つの糸掛けローラ55aにより集束される。
【0089】
糸降ろし準備作業が完了した後、オペレータは図略の操作スイッチ等を操作して、糸降ろし装置5の糸降ろし動作を開始する。糸降ろし動作が開始すると、糸降ろし装置5の昇降部52は、ガイド部材51に沿って、下側の階層の引渡位置まで移動する。この結果、2つの糸掛けローラ55aに掛けられた複数の糸Yが、下方の位置まで移動する。このように、糸吸引部53により吸引保持されている複数の糸Yの中途部が、糸降ろし装置5により、糸規制ガイド12の近傍まで搬送される。
【0090】
糸掛けロボット2は、上記糸降ろし作業中又は作業後において、集中制御装置101の動作指令に応じて、対象の紡糸巻取ユニット1まで移動する。対象の紡糸巻取ユニット1に到着した糸掛けロボット2は、ロボットアーム22の先端に取り付けられたハンド部23を動作させる。ハンド部23は、糸降ろし装置5の何れかの糸掛けローラ55aに掛けられた複数の糸Yに近接した位置まで移動し、糸Yに係合する。
【0091】
ロボットアーム22は、捕捉された糸Yを巻取部25まで案内する。巻取部25は、ロボットアーム22が上記の糸捕捉動作を開始する前、又はその後に回転を開始する。巻取部25に案内された糸Yは、巻取部25の外周を例えば周回するようにロボットアーム22によって導かれることで、回転している巻取部25に巻き付く。これにより、巻取部25への糸Yの実質的な固定が実現し、糸Yの巻取りが開始される。これに伴って、紡糸装置3から巻取部25に至る糸Yにハンド部23が係合した状態になる。
【0092】
巻取部25による糸Yの巻取りが開始された後、糸掛けロボット2は、ハンド部23又はロボット本体21に取り付けられた図略のカッタによって、巻取部25より下流側(例えば、巻取部25と、糸掛けローラ55aと、の間)の糸Yを切断する。切断箇所より下流側の糸Yは、糸降ろし装置5の糸吸引部53により吸引され、図略の廃糸容器まで排出される。糸Yは、糸掛けロボット2とは別途に設けられたカッタによって切断されても良い。また、ハンド部23によって捕捉された糸Yの巻取部25による巻取りが開始される前に、当該糸の切断を行っても良い。
【0093】
その後、糸掛けロボット2は、複数の糸Yを巻取部25により貯留しながら、糸規制ガイド12、引取部6(上流ゴデットローラ61及び下流ゴデットローラ62)、複数の支点ガイド13の順に掛けていくように、ロボットアーム22を移動させる。
【0094】
その後、糸掛けロボット2は、上側に位置するボビンホルダ72よりも下方の所定位置にハンド部23が位置するように、ロボットアーム22を移動させ、複数の糸YのそれぞれをそれぞれのボビンBに接触させる。
【0095】
ロボットアーム22による糸YのボビンBへの案内と同時に、又はその少し前に、巻取装置7の巻取動作が開始されている。回転するボビンBの端部に糸Yを巻き付けることで、糸Yの端部をボビンBに固定することができる。巻取動作が開始すると、ボビンBが回転するのに連動して、トラバースガイド73aがボビンBの軸方向と平行な方向に往復移動する。トラバースガイド73aの往復移動中に、それぞれのトラバースガイド73aに糸Yが掛けられる。その後は、トラバースガイド73aの案内によって、糸YをボビンBにトラバースしながら巻き取ることができる。この結果、パッケージPを形成することができる。
【0096】
糸掛けロボット2は、複数の糸Yを複数のボビンBに固定した後、図略のカッタによって、糸吸引部53との間の糸YをボビンBに近い位置で切断する。切断された糸吸引部53と糸掛けロボット2のハンド部23との間の複数の糸Yは、巻取部25によって巻き取られる。
【0097】
その後、糸掛けロボット2は、図略の廃糸容器まで移動する。本実施形態においては、この廃糸容器は、例えば、糸掛け作業を行わないとき糸掛けロボット2が待機する待機位置の近傍に設置されている。
【0098】
廃糸容器に到着した後、糸掛けロボット2は、移動スリーブ25gをロボット本体21側に移動させる。この結果、図7に示すように、巻取部25の径が縮小する。そのすぐ後に、糸掛けロボット2は、図8に示すように、押付け棒26aをロボット本体21から中心軸体25aの軸方向先端側へ進出させることで、廃糸排出プレート26を移動させる。これにより、廃糸排出プレート26は、巻取部25に巻き取った糸Yを、巻取部25の先端から排出することができる。
【0099】
糸掛け作業時においては、紡糸装置3の紡糸は停止しないので、上流側から糸Yが継続的に供給される。本実施形態の糸掛けロボット2は、巻取部25に糸Yを巻き取って貯留するので、負圧による吸引口をハンド部23に設けることなく、ハンド部23の近傍の糸Yを弛ませないようにすることができる。従って、可撓性の負圧配管をロボットアーム22に取り付ける必要がないので、ロボットアーム22が支持しなければならない重量が小さくなる。この結果、ロボットアーム22の構成の簡素化、低コスト化を実現することができる。また、ハンド部23において空気音が生じないので、騒音を良好に低減することができる。
【0100】
以上に説明したように、本実施形態の糸掛けロボット2は、紡糸装置3から連続的に紡出された糸Yを紡糸引取装置4に掛ける。糸掛けロボット2は、巻取部25と、ロボットアーム22と、を備える。巻取部25は、紡糸装置3から連続的に紡出された糸Yを巻き取って貯留する。ロボットアーム22は、紡糸装置3から巻取部25に至る糸Yに係合するハンド部23を有する。ロボットアーム22は、ハンド部23を動作させて、紡糸装置3から巻取部25に至る糸Yを紡糸引取装置4に掛ける。
【0101】
これにより、糸掛けロボット2において、糸Yを巻取部25に貯留することができる。この結果、糸Yを吸引して、別途に設けられた廃糸容器等に直接排出する必要がなくなる。よって、ロボットアーム22の先端に、重量が大きいサクションガン等の吸引装置を搭載する必要がなくなり、ロボットアーム22の小型化及び低出力を実現することができる。また、負圧による吸引力で糸Yを吸引保持する構成に比べて、騒音を低減することができる。
【0102】
本実施形態の糸掛けロボット2において、巻取部25の軸方向中央部の横断面が、軸方向両端部の横断面よりも小径となっている。
【0103】
これにより、巻取部25からの糸Yの脱落を防止でき、糸Yを好適に貯留することができる。
【0104】
本実施形態の糸掛けロボット2は、貯留された糸Yを巻取部25から排出する廃糸排出プレート26を備える。
【0105】
これにより、巻取部25に巻かれた糸Yを容易に排出することができる。
【0106】
本実施形態の糸掛けロボット2において、巻取部25の径が変化可能である。
【0107】
これにより、巻取部25の径を減少させることで、巻取部25に巻かれた糸Yを、コンパクトな状態で容易に排出することができる。
【0108】
本実施形態の糸掛けロボット2において、巻取部25は縮径状態及び拡径状態に変化可能に構成される。拡径状態のとき、巻取部25の軸方向中央部の横断面が、軸方向両端部の横断面よりも小径となる。
【0109】
これにより、巻取部25からの糸Yの脱落を防止でき、糸Yを好適に貯留することができる。
【0110】
本実施形態の糸掛けロボット2は、貯留された糸Yを巻取部25から排出する廃糸排出プレート26を備える。
【0111】
これにより、巻取部25に巻かれた糸Yを容易に排出することができる。
【0112】
本実施形態の糸掛けロボット2において、巻取部25が縮径状態及び拡径状態に変化可能に構成される。廃糸排出プレート26に貫通孔が形成されている。縮径状態の巻取部25が廃糸排出プレート26の貫通孔を挿通する。
【0113】
これにより、巻取部25が廃糸排出プレート26の貫通孔に差し込まれた状態で、巻取部25に巻き取られた糸Yを廃糸排出プレート26が押すことで、糸Yを好適に排出することができる。
【0114】
本実施形態の糸掛けロボット2において、巻取部25は、一体的に回転可能な複数の連結棒25eを備える。複数の連結棒25eは、巻取部25の回転中心に位置する中心軸体25aに対して周方向に並べて配置される。それぞれの連結棒25eは、中心軸体25aに対してねじれの位置に配置され、中心軸体25aに対して近づく方向及び離れる方向に移動可能である。
【0115】
これにより、簡単な構成で、巻取部25の径を容易に変化させることができる。
【0116】
本実施形態の紡糸巻取システム100は、紡糸装置3と、紡糸引取装置4と、糸掛けロボット2と、を備える。紡糸装置3は、糸Yを連続的に紡出する。紡糸引取装置4は、紡糸装置3から連続的に紡出された糸Yの引取り又は巻取りを行う。糸掛けロボット2は、紡糸装置3から連続的に紡出された糸Yを紡糸引取装置4に掛ける。糸掛けロボット2は、巻取部25と、ロボットアーム22と、を備える。巻取部25は、紡糸装置3から連続的に紡出された糸Yを巻き取って貯留する。ロボットアーム22は、紡糸装置3から巻取部25に至る糸Yに係合するハンド部23を有する。ロボットアーム22は、ハンド部23を動作させて、紡糸装置3から巻取部25に至る糸Yを紡糸引取装置4に掛ける。
【0117】
これにより、紡糸巻取システム100の簡素化及び出力の低減を図ることができるとともに、負圧による紡糸巻取システム100の騒音を抑制することができる。
【0118】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0119】
糸降ろし作業において、糸吸引部53の代わりに、糸保持装置14の吸引装置14aによって、複数の糸Yを吸引保持しても良い。
【0120】
ガイド部材51は、細長い棒状部材から構成され、糸通過孔9aを貫通して各紡糸巻取ユニット1に設置されていても良い。
【0121】
糸掛けロボット2のハンド部23は、糸Yを引っ掛けて案内できれば、例えば、フック状、ローラ状等他の形状に形成されても良い。
【0122】
糸掛けローラ55aは取外し可能に構成されても良い。この場合、糸掛けロボット2は、ハンド部23により糸掛けローラ55aを掴み、糸掛けローラ55aを介して糸Yを案内する。
【0123】
廃糸排出プレート26において、中心部とは異なる位置に、縮径状態の巻取部25が通過するための貫通孔が形成されても良い。廃糸排出プレート26を省略しても良い。この場合、押付け棒26aによって、巻取部25に巻き取られた廃糸を直接押し出して排出することができる。
【0124】
本実施形態の巻取部25は、例えば、図9に示すように変更することができる。図9に示す変形例の巻取部25は、複数の支持棒25pと、複数の糸接触プレート25qと、を備える。複数の支持棒25pは、中心軸体25aの先端部と根元部のそれぞれにおいて、周方向に並べて配置される。それぞれの支持棒25pの一側の端部は、中心軸体25aに対し、ヒンジを介して連結される。支持棒25pにおいて、中心軸体25aと反対側の端部は、糸接触プレート25qに対し、ヒンジを介して連結される。
【0125】
複数の糸接触プレート25qは、中心軸体25aの周方向に並べて配置される。糸接触プレート25qは、細長い板状に形成されている。糸接触プレート25qの長手方向は、中心軸体25aと平行である。
【0126】
複数の支持棒25pのそれぞれは、中心軸体25aに連結している端部を中心として揺動可能に設置されている。支持棒25pの揺動に応じて、糸接触プレート25qは、図9の鎖線に示すように、中心軸体25aに近づく。これにより、糸接触プレート25qと中心軸体25aとの間の距離が小さくなる。即ち、巻取部25の径が小さくなる。この構成は、廃糸排出プレート26と巻取部25の連動を容易に実現することができる。糸接触プレート25qを、直線状でなく、その長手方向中央部分が中心軸体25aに近づくように曲がった曲線状に形成することもできる。この場合、巻取部25の外周面を、実質的に、前述の凹部25hと同様に凹んだ形状とすることができる。
【0127】
糸貯留部24の配置により、巻取部25の向きを変更可能に構成しても良い。例えば、巻取部25の先端が下向きとなるように巻取部25の向きを変更する。これにより、巻取部25に巻かれた糸Yを自重で落下させて排出することができる。また、糸貯留部24の配置にかかわらず、巻かれた糸Yをロボットアーム22が掴んで巻取部25から移動させて排出しても良い。この場合、ロボットアーム22が糸排出部を兼ねることになる。
【0128】
本願の糸掛けロボット2は、糸Yの巻取り作業が一時的に停止され、複数の糸Yは糸規制ガイド12の近傍に設置されたアスピレータによって吸引保持されているとき、糸Yを当該アスピレータ又は糸規制ガイド12から引き取って糸掛け作業を行う場合に適用することもできる。
【符号の説明】
【0129】
2 糸掛けロボット
3 紡糸装置
4 紡糸引取装置(糸処理装置)
22 ロボットアーム
23 ハンド部(糸係合部)
25 巻取部
25e 連結棒(棒部材)
26 廃糸排出プレート(糸排出部)
100 紡糸巻取システム
Y 糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9