(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063363
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】搬送装置および印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 26/02 20060101AFI20240502BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B65H26/02
B65H7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171239
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 成行
(72)【発明者】
【氏名】奥田 泰康
(72)【発明者】
【氏名】柴田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 竜一
(72)【発明者】
【氏名】上山 直浩
(72)【発明者】
【氏名】石川 正
(72)【発明者】
【氏名】畑田 憲史
【テーマコード(参考)】
3F048
3F105
【Fターム(参考)】
3F048AA05
3F048AB01
3F048AC02
3F048BB02
3F048BB05
3F048BB10
3F048CA10
3F048CC05
3F048DC15
3F048EB24
3F048EB29
3F105AA11
3F105AB04
3F105BA20
3F105CA01
3F105CB01
3F105DA29
3F105DA68
3F105DB11
3F105DC17
(57)【要約】
【課題】布帛の位置ずれの検出精度を向上させる搬送装置および印刷装置を提供すること。
【解決手段】搬送装置10は、布帛Mが巻かれたロール体R1を回転可能に保持する保持部13と、ロール体R1から引き出された布帛Mを、搬送方向の下流へ搬送する搬送部40と、搬送方向と交差する幅方向において、布帛Mの端部MEの画像を取得する画像取得部20と、画像取得部20が取得した画像を処理する画像処理部30と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛が巻かれたロール体を回転可能に保持する保持部と、
前記ロール体から引き出された前記布帛を、搬送方向の下流へ搬送する搬送部と、
前記搬送方向と交差する幅方向において、前記布帛の端部の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した前記画像を処理する画像処理部と、を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
制御部と、
前記保持部を前記幅方向に移動させる幅方向移動部と、を備え、
前記制御部は、前記画像処理部による処理結果に基づいて、前記幅方向移動部の駆動を制御することを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記布帛の種類に応じて、前記幅方向移動部による前記保持部の移動速度を変更することを特徴とする、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
報知部を備え、
前記制御部は、前記幅方向における前記布帛の前記端部が適正位置にない場合に、前記端部が前記適正位置にないことを前記報知部に報知させることを特徴とする、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送部は、前記布帛を挟持しながら互いに逆方向に回転して前記布帛を搬送する搬送ローラー対を含み、
前記制御部は、前記搬送ローラー対による前記布帛の搬送速度を制御し、
前記搬送ローラー対による前記布帛の搬送周期は、
経過時間に応じて前記搬送速度が増加する加速期間と、
前記加速期間の次の期間であり、前記経過時間によらず前記搬送速度が一定となる定速期間と、
前記定速期間の次の期間であり、前記経過時間に応じて前記搬送速度が減少する減速期間と、に区分され、
前記画像取得部は、前記定速期間に前記画像を取得することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記画像取得部は、
光源部および受光部を含むスキャナーユニットと、
前記搬送方向および前記幅方向と交差する方向において、前記布帛を介して前記スキャナーユニットと対向して配置される反射部を含む基準板と、を有し、
前記光源部は、前記布帛の前記幅方向において、
前記光源部と重なる第1領域に光を照射可能な第1部分と、
前記光源部と重ならない第2領域に光を照射可能な第2部分と、を有し、
前記受光部は、前記第2領域に照射されて前記反射部によって反射された光の光量を測定し、
前記制御部は、前記光量に基づいて前記光源部の光量補正を行うことを特徴とする、請求項1から請求項3いずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記搬送部と前記画像取得部との間に配置され、搬送される前記布帛の前記端部に対して気体を吹き付け可能な吹付部と、
前記基準板に取り付けられ、前記スキャナーユニットの前記受光部に入射する外光を低減する仕切り部と、を備えることを特徴とする、請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記搬送部と前記画像取得部との間に配置され、搬送される前記布帛の前記端部に対して気体を吹き付け可能な吹付部を備え、
前記画像取得部は、前記吹付部が稼働していないときに前記画像を取得することを特徴とする、請求項6に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記画像取得部は、前記搬送部によって1回または複数回の前記布帛の搬送が行われる間に前記画像を取得し、
前記画像処理部は、前記布帛の前記端部に対応する正の整数であるn個の位置データを前記画像から取得して、前記n個の前記位置データの平均値を算出することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記搬送部は、前記布帛を挟持しながら互いに逆方向に回転して前記布帛を搬送する搬送ローラー対を含み、
前記制御部は、前記搬送ローラー対による前記布帛の搬送速度を制御し、
前記搬送ローラー対による前記布帛の搬送周期は、
経過時間に応じて前記搬送速度が増加する加速期間と、
前記加速期間の次の期間であり、前記経過時間によらず前記搬送速度が一定となる定速期間と、
前記定速期間の次の期間であり、前記経過時間に応じて前記搬送速度が減少する減速期間と、に区分され、
前記画像取得部は、前記定速期間に前記画像を取得することを特徴とする、請求項9に記載の搬送装置。
【請求項11】
布帛が巻かれたロール体を回転可能に保持する保持部と、
前記ロール体から引き出された前記布帛を、搬送方向の下流へ搬送する搬送部と、
前記搬送方向と交差する幅方向において、前記布帛の端部の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した前記画像を処理する画像処理部と、
前記保持部を前記幅方向に移動させる幅方向移動部と、
前記布帛に液体を吐出可能な吐出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記画像処理部による処理結果に基づいて、前記幅方向移動部の駆動を制御することを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送する布帛などの幅方向の位置ずれを検出する搬送装置が知られていた。例えば、特許文献1には、記録媒体の蛇行を修正する媒体送り装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、位置ずれの検出精度を向上させることが難しいという課題があった。詳しくは、2つの蛇行検出センサーを用いて記録媒体の幅方向の位置ずれを検出している。2つの蛇行検出センサーの各々は、検出範囲における記録媒体の有無を検知している。そのため、位置ずれの検出精度は、2つの蛇行検出センサーの配置や間隔に影響を受け易くなっていた。位置ずれの検出精度が十分でない場合には、上記装置を印刷装置などに適用すると、記録媒体へ印刷される画像などの印刷品質が低下し易くなるおそれがある。すなわち、布帛の幅方向の位置ずれの検出精度を向上させる搬送装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
搬送装置は、布帛が巻かれたロール体を回転可能に保持する保持部と、前記ロール体から引き出された前記布帛を、搬送方向の下流へ搬送する搬送部と、前記搬送方向と交差する幅方向において、前記布帛の端部の画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部が取得した前記画像を処理する画像処理部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
印刷装置は、布帛が巻かれたロール体を回転可能に保持する保持部と、前記ロール体から引き出された前記布帛を、搬送方向の下流へ搬送する搬送部と、前記搬送方向と交差する幅方向において、前記布帛の端部の画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部が取得した前記画像を処理する画像処理部と、前記保持部を前記幅方向に移動させる幅方向移動部と、前記布帛に液体を吐出可能な吐出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記画像処理部による処理結果に基づいて、前記幅方向移動部の駆動を制御することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る印刷装置および搬送装置の構成を示す模式図。
【
図3】画像取得部の構成および配置を示す模式斜視図。
【
図4】スキャナーユニットの構成を示す模式平面図。
【
図6】シングルパス印刷における布帛の搬送範囲と画像の取得範囲との関係を示す模式図。
【
図7】マルチパス印刷における布帛の搬送範囲と画像の取得範囲との関係を示す模式図。
【
図8】シングルパス印刷における布帛の端部と平均位置とを示す模式平面図。
【
図9】マルチパス印刷における布帛の端部と平均位置とを示す模式平面図。
【
図10】位置データの取得方法の一例を示す模式図。
【
図11】第2実施形態に係る吹付部および仕切り部の配置を示す模式斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に述べる実施の形態では、布帛のインクジェット捺染に用いる搬送装置および印刷装置を例示し、図面を参照して説明する。なお、本発明の搬送装置および印刷装置の用途は捺染に限定されない。
【0009】
以下の各図においては、必要に応じて相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。Z軸は鉛直方向に沿う仮想軸であって、+Z方向を上方といい、-Z方向を下方ということもある。
【0010】
印刷媒体である布帛Mが原反から解かれて捺染され、印刷物がロール状に巻き取られる輸送経路において、布帛Mの原反側を上流ともいい、印刷物が巻き取られる側を下流ともいう。一部の図においては、X軸と直交すると共に、YZ平面に沿うPF軸を付し、PF軸の矢印が指す方向を布帛Mの搬送方向とする。布帛Mにおいて、搬送方向と交差すると共にX軸に沿う方向を布帛Mの幅方向とする。なお、以下の各図では、図示の便宜上、各部材の大きさを実際とは異ならせている。
【0011】
1.第1実施形態
図1に示すように、本実施形態に係る印刷装置100は、搬送装置10および吐出部60などを備える。搬送装置10は本発明の搬送装置の一例である。なお、
図1においては、印刷装置100の外装筐体やフレームなどの図示を省略している。以下に述べる
図1の説明では、特に断りがない限り、-X方向から側面視した状態を述べることとする。
【0012】
搬送装置10は印刷装置100の上流に配置される。搬送装置10は、制御部1、保持部13、画像取得部20、画像処理部30、搬送部40、および報知部80を備える。搬送装置10は、図示しない幅方向移動部12も備える。搬送装置10は、布帛Mの原反であるロール体R1から布帛Mを引き出して、幅方向の位置ずれを修正した後、布帛Mを吐出部60へ送り出す。
【0013】
制御部1は、搬送装置10および印刷装置100の稼働を統合的に制御する。制御部1における上記位置ずれの修正に関する機能については後述する。
【0014】
保持部13は、布帛Mが巻かれたロール体R1を、X軸に沿う回転軸にて回転可能に保持する。ロール体R1は芯材15を介して保持部13に保持される。芯材15は略丸棒状である。保持部13は、ロール体R1の+X方向の端部と-X方向の端部とに各々配置され、芯材15の両端付近を保持する。
【0015】
各保持部13は、X軸に沿う方向である幅方向において、移動可能に支持部材11に支持される。各支持部材11は各々脚部111に固定される。一対の脚部111は、印刷装置100の接地面に設置される。
【0016】
布帛Mに含まれる繊維としては、例えば、綿、絹、麻、モヘヤ、ウール、およびカシミヤなどの天然繊維、レーヨンおよびキュプラなどの再生繊維、ナイロン、ポリエステル、およびポリウレタンなどの合成繊維を、単糸、双糸、または混紡としたものが挙げられる。布帛Mは、上記繊維が織布または不織布に加工されて成る。布帛Mには、捺染される色材の発色性や定着性を向上させるために、前処理が施されていてもよい。
【0017】
搬送部40は、布帛Mの輸送経路を形成する屈曲部材41,42、ガイド部材45,46、および搬送ローラー対47を含む。搬送部40は、搬送ローラー対47によって、ロール体R1から布帛Mを引き出して搬送方向下流の吐出部60へ搬送する。
【0018】
搬送部40では、上流から下流に向かって、屈曲部材41、屈曲部材42、ガイド部材45,ガイド部材46、および搬送ローラー対47がこの順番で配置される。特に、布帛Mの輸送経路において、屈曲部材41,42は保持部13の下流側近傍に配置され、搬送ローラー対47は吐出部60の上流側近傍に配置される。また、屈曲部材41と屈曲部材42との間には、画像取得部20が設けられる。
【0019】
画像取得部20は、布帛Mの幅方向において、布帛Mの-X方向の端部の画像を取得する。画像取得部20は、スキャナーユニット21および基準板23を有する。画像処理部30は、画像取得部20が取得した画像を処理する。画像処理部30における処理結果は、後述する布帛Mの幅方向の位置ずれの修正に反映される。画像取得部20は、ロール体R1に対して比較的近くに配置される。そのため、後述する布帛Mの幅方向の位置ずれの修正を精度よく、効率的に行うことができる。
【0020】
屈曲部材41,42は、ロール体R1から引き出された布帛Mの輸送経路を屈曲させる。屈曲部材41,42は、略円柱状の部材であり、円柱の高さ方向がX軸に沿って配置される。円柱の高さ方向、すなわち幅方向の長さは、布帛Mの幅方向の長さよりも長い。上方からの平面視にて、屈曲部材42は、屈曲部材41に対して+Y方向に位置する。屈曲部材41,42によって、布帛Mの輸送経路は、+Z方向から+Y方向の斜め上方向きへと変えられる。
【0021】
屈曲部材41,42に代えて、YZ平面に沿う断面形状が略楕円状の1つの部材を採用してもよい。この場合には、画像取得部20が配置される領域を透光性の部材で形成するか、上記領域に切欠きを設ける。
【0022】
保持部13は、ロール体R1の回転に弱い抵抗が伴うように保持する。そのため、布帛Mは、バックテンションがかかった状態でロール体R1から引き出される。該バックテンションおよび上述した屈曲部材41,42の配置によって、屈曲部材41と屈曲部材42との間では、布帛Mに輸送経路に沿って張力が作用する。したがって、屈曲部材41,42の間で布帛Mが張った状態となり、画像取得部20による後述する画像の取得時に、布帛Mにおける皺やたるみの発生を抑えて撮像することが可能となる。
【0023】
ガイド部材45は屈曲部材42の下流近傍に配置される。ガイド部材45は、+Y方向の斜め上方向きの輸送経路に沿って布帛Mを案内する。ガイド部材46は、曲面を有し、該曲面によって輸送経路を+Y方向へ変換する。ガイド部材46により、布帛Mは+Y方向へ搬送される。
【0024】
搬送ローラー対47は、布帛Mに対して、上方に配置される搬送ローラー47aと、下方に配置される搬送ローラー47bとを含む。搬送ローラー47a,47bの表面、すなわち布帛Mに触れる面はゴム材などの柔軟な素材で形成される。
【0025】
図示しないモーターの駆動により、搬送ローラー47aは時計回りに回転し、搬送ローラー47bは反時計回りに回転する。搬送ローラー47a,47bは互いに密着して配置されるため、互いの回転力がスリップの発生を抑えて布帛Mに伝播される。これにより、搬送ローラー対47は、布帛Mをロール体R1から引き出して、挟持しながら互いに逆方向に回転して下流の吐出部60へ布帛Mを搬送する。
【0026】
吐出部60は、印刷装置100の上方に配置される。吐出部60は、プラテン51と上下方向に対向して配置される。布帛Mはプラテン51の上方の面に沿って搬送される。吐出部60は、プラテン51上を搬送される布帛Mの上方の面と対向する。吐出部60は、布帛Mに液体であるインクを吐出可能である。布帛Mの上方の面には、吐出部60から吐出されたインクが付着する。
【0027】
吐出部60は、インクジェットヘッド61,キャリッジ63、および図示しないガイドレールを備える。インクジェットヘッド61は、キャリッジ63の下方に搭載される。図示を省略するが、インクジェットヘッド61は、布帛Mを介してプラテン51と対向するノズル面を有する。ノズル面には複数のノズル列が配置される。複数のノズル列の各々は、複数のノズルから成り、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどの色を呈するインクが個別に吐出される。これらのインクは、図示しないインクタンクからインクジェットヘッド61に供給される。
【0028】
ガイドレールは、X軸に沿って延在するレールである。ガイドレールは、キャリッジ63をX軸に沿う方向に往復移動可能に支持する。キャリッジ63は、図示しないキャリッジモーターの駆動によって、ガイドレールに案内されながら、X軸に沿う方向に走査される。
【0029】
これにより、布帛Mを+Y方向に搬送させながら、キャリッジ63をX軸に沿う方向に走査させることにより、布帛Mの任意の位置にインクを付着させることが可能となる。これにより、布帛Mに画像、模様、テキスト、色彩などが印刷される。
【0030】
なお、キャリッジ63の走査と布帛Mの搬送とは連動して行われる。具体的には、布帛Mの搬送は、インクジェットヘッド61から布帛Mへインクが吐出されている期間には実施されず、インクが吐出されていない期間に実施される。すなわち、布帛Mの搬送は段階的に実施される。後述する、画像取得部20による布帛Mの端部の画像の取得も、上述した布帛Mの搬送に連動して行われる。
【0031】
また、印刷方法として、シングルパス印刷とマルチパス印刷とがある。シングルパス印刷では、1回の布帛Mの搬送に対して、インクジェットヘッド61を1回走査させて印刷を行う。マルチパス印刷では、1回の布帛Mの搬送に対して、インクジェットヘッド61を複数回走査させて印刷を行う。マルチパス印刷は、シングルパス印刷に対して、布帛Mが搬送される距離が短く、搬送範囲が狭い。一般的に、マルチパス印刷は、シングルパス印刷よりも高精細な画像の印刷に適している。
【0032】
印刷が施された布帛Mは、後述する芯材75の回転により、吐出部60と対向する位置から+Y方向へ搬送される。吐出部60およびプラテン51の下流にはガイド部材71が配置される。ガイド部材71は、曲面を有し、布帛Mの輸送経路を+Y方向から+Y方向の斜め下方へ変換する。
【0033】
輸送経路のガイド部材71の下流には、ガイドローラー73が配置される。ガイドローラー73は輸送経路を略下方へ変換する。布帛Mはガイドローラー73に案内されて、下方の一対の脚部113の芯材75へ向けて搬送される。
【0034】
一対の脚部113は、印刷が施された布帛Mを芯材75に巻き取る。詳しくは、芯材75に対して、+X方向の端部および-X方向の端部に脚部113が各々配置される。一対の脚部113は、芯材75を回転可能に保持すると共に、図示しないモーターの駆動によって芯材75を反時計回りに回転させる。これによって布帛Mはロール体R2へと巻き取られる。一対の脚部113は、印刷装置100の接地面に設置される。
【0035】
なお、印刷装置100の布帛Mの搬送にベルト式搬送機構を適用してもよい。ベルト式搬送機構としては、ベルトの表面に布帛Mを張り付けて搬送する機構が挙げられる。該機構は、ベルトと布帛Mとのずれが生じ難い利点がある反面、構成が複雑となり易い。本実施形態では、布帛Mの位置ずれの発生が修正されるため、構成が簡単な上述した機構を採用している。
【0036】
報知部80は、搬送装置10および印刷装置100の稼働に関する各種情報を使用者に報知する。報知部80は、印刷装置100の図示しない外装筐体に設置される。報知部80には、画面表示にて情報を報知する表示装置、音声にて情報を報知するスピーカーなどの音声発生装置、および各色の発光や発光パターンにて情報を告知するパイロットランプのいずれか1種類以上は適用される。
【0037】
上記表示装置としては、液晶表示装置および有機エレクトロルミネッセンス表示装置などが挙げられる。液晶表示装置は、タッチパネル式の液晶表示装置であってもよい。また、報知部80は、スマートフォンやパーソナルコンピューターなどの情報端末装置を介して、使用者に上記の各種情報を報知する通信装置であってもよい。
【0038】
図2に示すように、一対の脚部111の各々に、支持部材11を介して保持部13が支持される。一対の保持部13は、各々支持部材11に案内されて芯材15を保持しながら、支持部材11上をX軸に沿って連動して移動する。なお、以下の
図2に関する説明では、特に断りがない限り-Y方向から側面視した状態を述べることとする。
【0039】
幅方向移動部12は、一対の保持部13のうち、-X方向の保持部13の-X方向に、調整部材16を介して付設される。幅方向移動部12は、固定部材14を介して脚部111に固定される。
【0040】
幅方向移動部12は、図示しない内蔵モーターの駆動により、ボールねじである調整部材16をX軸に沿う回転軸に対して回転させる。調整部材16の回転によって、-X方向の保持部13は、幅方向移動部12に対して引き寄せられるか遠ざけられる。すなわち、幅方向移動部12は、-X方向の保持部13を移動させることによって、一対の保持部13を幅方向に移動させる。
【0041】
一対の保持部13の移動と連動して、芯材15およびロール体R1も幅方向に移動する。そのため、ロール体R1から吐出部60へ搬送される布帛Mは、吐出部60に対してX軸に沿う方向に移動する。したがって、布帛Mの幅方向の位置ずれの程度に応じて幅方向移動部12を作動させ、一対の保持部13を移動させることにより、上記の位置ずれを修正することが可能となる。
【0042】
画像取得部20は、布帛Mの-X方向の端部を含む領域に設置される。上述した通り、画像取得部20は、布帛Mの-X方向の端部の画像を取得する。上記画像は、布帛Mの幅方向の位置ずれの情報を包含している。そのため、上記画像を上述した画像処理部30にて画像処理した処理結果が、幅方向移動部12の作動に反映される。
【0043】
画像取得部20において、スキャナーユニット21と基準板23とは、布帛Mの輸送経路を挟んで対向して配置される。すなわち、スキャナーユニット21は布帛Mの略+Y方向に配置され、基準板23は布帛Mの略-Y方向に配置される。
【0044】
図3に示すように、スキャナーユニット21と基準板23とは、布帛Mを介して対向して配置される。スキャナーユニット21は、基準板23と対向する面21aを有する。基準板23は、鏡面である反射部23aを有する。面21aと反射部23aとは、X-PF平面に沿い、搬送方向および幅方向と交差する方向において対向する。
【0045】
詳しくは、面21aと反射部23aとの一部の領域が、布帛Mを介して対向する。
図3では、上述した屈曲部材41,42の間を拡大して表示している。布帛Mは、屈曲部材41,42の間においてX-PF平面に沿って搬送される。
【0046】
なお、スキャナーユニット21および基準板23は、搬送装置10の図示しないフレームなどに固定される。また、
図3では、スキャナーユニット21に接続される各種配線の図示を省略している。
【0047】
図4に示すように、スキャナーユニット21は、面21aに配置される光源部22Lおよび受光部22Sを含む。光源部22Lおよび受光部22Sは、各々X軸に沿う細長い形状である。受光部22Sに対して、搬送方向に光源部22Lが位置する。
【0048】
光源部22Lは、第1部分A1および第2部分A2を有する。第1部分A1は、布帛Mの幅方向において、光源部22Lと重なる第1領域に光を照射可能である。第2部分A2は、布帛Mの幅方向において、光源部22Lと重ならない第2領域に光を照射可能である。また、布帛Mの幅方向の-X方向の端部MEは、第1領域にあって第1部分A1と重なる。なお、ここでいうところの重なる、または重ならないとは、搬送方向および幅方向と直交する方向から平面視したときの状態を指す。
【0049】
換言すると、第1領域は、布帛Mの一部と基準板23の反射部23aに位置し、第2領域は、基準板23の反射部23aに位置する。上記平面視にて、第1領域は第1部分A1を含む領域であり、第2領域は第2部分A2を含む領域である。そのため、
図4では、第1領域および第2領域の図示を省略している。
【0050】
上記の配置により、第1部分A1から照射された光は、第1領域において、端部MEを含む布帛Mと、反射部23aにて反射、または減衰される。また、第2部分A2から照射された光は、第2領域において、反射部23aにて反射される。
【0051】
光源部22Lは、図示しない単一の発光ダイオードを有し、該発光ダイオードによって第1部分A1および第2部分A2が発光する。幅方向において光源部22Lの長さに対する第2部分A2の長さは、例えば約1/3である。
【0052】
受光部22Sは、図示しない集光レンズおよび複数の撮像素子を有する。複数の撮像素子は、幅方向に沿って1列に配置される。撮像素子としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などが挙げられる。
【0053】
受光部22Sは、光源部22Lから照射された光のうち、第1領域および第2領域にて反射された反射光を受光する。すなわち、受光部22Sは、第1領域および第2領域にて反射された反射光の光量を測定する。
【0054】
第1部分A1から照射された光は、布帛Mによって一部が減衰して照射された光よりも光量が低下する。光源部22Lの発光と、受光部22Sによる光量の測定とを、布帛Mの搬送と連動して行うことにより、布帛Mの幅方向の端部MEを含む画像が取得される。
【0055】
一方、第2部分A2から照射された光は、上記画像の取得には関与しない。第2部分A2が第2領域に照射する光は、光源部22Lにおける発光ダイオードの光量の校正に用いられる。詳しくは、受光部22Sは、第2部分A2から第2領域に照射されて反射部23aによって反射された光の光量を測定する。上記光量を含む情報は、上述した画像処理部30にて処理され、処理結果として制御部1に発信される。制御部1は、上記光量に基づいて光源部22Lの発光ダイオードの光量補正を行う。
【0056】
発光ダイオードは、時間の経過によって光量が変化する場合がある。したがって、定期的に光量の校正を行うことが好ましい。上記の構成によれば、布帛Mが画像取得部20と重なる状態にて光量の校正が実施可能である。そのため、校正作業に際して布帛Mを都度取り外す手間が省かれて、使用者の利便性を向上させることができる。
【0057】
画像取得部20としては、レーザーセンサーを用いてもよいが、部品コストの観点から、上述した構成を適用することが好ましい。
【0058】
図5に示すように、制御部1は、画像取得部20、画像処理部30、幅方向移動部12、搬送部40、および報知部80と電気的に接続される。以下に述べる搬送装置10の制御に関する説明では、
図1および
図2なども参照することとする。なお、
図5は制御部1の全ての機能を網羅するものではない。
【0059】
制御部1は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、システムバス、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含む。CPUは搬送装置10および印刷装置100の全体の制御を司る。CPUは、システムバスを介して、ROM、RAM、および上記の構成と電気的に接続される。ROMには、CPUが実行する各種制御プログラムやメンテナンスシーケンスなどが格納される。RAMは一時的にデータを格納する。
【0060】
画像取得部20は、使用者の操作による制御部1から指示に応じて、布帛Mの幅方向の端部MEを含む画像を取得する。このとき、取得される上記画像の搬送方向の範囲、すなわち搬送範囲は、上述した布帛Mが搬送される距離に対応する。上記画像のデータは、画像取得部20から画像処理部30に送信される。
【0061】
画像処理部30は、画像のデータを画像取得部20から受信して画像処理を行う。これにより、処理結果として、搬送範囲における端部MEの平均位置が得られる。端部MEの平均位置は、画像処理部30から制御部1へ送信される。平均位置の詳細については後述する。
【0062】
制御部1は、画像処理部30による処理結果に基づいて、上記の平均位置とROMに予め格納されている端部MEの適正位置とを比較して、幅方向移動部12の駆動を制御する。幅方向移動部12は、上記の平均位置と適正位置との差分を解消するように保持部13をX軸に沿って移動させる。これにより、布帛Mの幅方向の位置ずれや蛇行を精密に修正することができる。なお、適正位置は、ROMに予め格納されている値でなくともよく、布帛Mをセットする際に都度設定される値でもよい。
【0063】
制御部1は、幅方向移動部12を介して保持部13を移動させる際に、布帛Mの種類に応じて幅方向移動部12による保持部13のX軸に沿う方向の移動速度を変更する。具体的には、布帛Mが柔軟で伸び易い材質または織り方の場合には、上記移動速度を比較的に低くする。これによれば、伸び易く柔軟な布帛Mを用いる場合に、布帛Mの位置ずれの修正における皺や局所的な伸びの発生を抑えることができる。なお、上記移動速度の上限は、搬送ローラー対47に挟まれている布帛Mが、保持部13の移動によってずれて動かない速度とする。
【0064】
制御部1は、画像処理部30による処理結果に基づいて、上記の平均位置とROMに格納される端部MEの適正位置とを比較する。そして、制御部1は、幅方向における布帛Mの端部MEが適正位置にない場合に、端部MEが適正位置にないことを報知部80に報知させる。これにより、使用者が布帛Mの幅方向の位置ずれを認知することができる。なお、端部MEが適正位置にあるか否かの判断は、上記の平均位置と適正位置との差を予め設定した閾値と比較して行ってもよい。
【0065】
制御部1は、搬送部40の搬送ローラー対47による布帛Mの搬送速度を制御する。搬送ローラー対47による布帛Mの搬送周期は、加速期間、定速期間、および減速期間に区分される。
【0066】
加速期間では、経過時間に応じて布帛Mの搬送速度が増加する。加速期間とは、例えば、印刷中のインクジェットヘッド61を走査させる合間において、布帛Mの搬送速度がゼロから所定の搬送速度まで増大させる期間などである。
【0067】
定速期間は加速期間の次の期間である。定速期間では、経過時間によらず布帛Mの搬送速度が一定となる。定速期間とは、例えば、上記合間において、所定の搬送速度を維持して布帛Mを搬送する期間である。
【0068】
減速期間は定速期間の次の期間である。減速期間では、経過時間に応じて布帛Mの搬送速度が減少する。減速期間とは、例えば、上記合間において、所定の搬送速度で搬送された布帛Mを停止させる期間である。
【0069】
画像取得部20は、定速期間に布帛Mの端部MEの画像を取得する。定速期間では、加速期間および減速期間と比べて、搬送によって布帛Mに掛かる張力の変動が小さい。そのため、布帛Mの幅方向の位置ずれの検出精度をさらに向上させることができる。
【0070】
制御部1は、上述した発光ダイオードの光量の校正を定期的に実行する。具体的には、画像取得部20および画像処理部30から、第2部分A2の光量のデータを入手する。次いで、制御部1は、予めROMに格納された適正光量と比較して、第2部分A2の光量を適正光量に補正する。この光量の校正は、印刷装置100の印刷前に実行される。なお、光量の校正は、使用者の指示によって実行されてもよい。
【0071】
図6に示すように、シングルパス印刷では、例えば布帛Mは搬送範囲Fs1から搬送範囲Fs3へと順次段階的に搬送される。布帛Mの端部MEには、位置ずれに加えて、生地の毛羽などによる微視的な凹凸が存在する。
【0072】
制御部1は、検出範囲Lと搬送範囲Fsとを比較する。ここで、検出範囲Lとは、使用者が所望する布帛Mの位置ずれの修正精度を満たすために必要な、布帛Mの端部MEの搬送方向の範囲である。検出範囲Lは、例えば生地の素材や厚み、毛羽の長さなど、布帛Mの種類に応じたデフォルト値が、制御部1のROMに格納されている。実際に使用する検出範囲Lとして、上記デフォルト値がそのまま設定されてもよいし、使用者の所望する修正精度を満たすようにデフォルト値を適宜修正した値が設定されてもよい。なお、上記デフォルト値は、ROMに格納されていなくともよく、制御部1と電気的に接続される別の記憶部に、布帛Mの種類に応じた素材や厚み、毛羽の長さなどのパラメータと、それに応じたデフォルト値とが格納されていてもよい。
【0073】
制御部1は、検出範囲Lと搬送範囲Fsとを比較した結果に基づいて、端部MEの画像データの取得範囲SAを設定する。
図6に示すシングルパス印刷の例では、搬送範囲Fsが検出範囲L以上であるため、少なくとも搬送範囲Fsに対応する範囲の端部MEの画像データを取得することによって、布帛Mの位置ずれの修正精度を満たすことができる。よって、制御部1は、搬送範囲Fs1,Fs2,Fs3に対応させて端部MEの画像データの取得範囲SA1,SA2,SA3を設定する。
図6に示す例では、搬送範囲Fs1に取得範囲SA1が対応し、搬送範囲Fs2に取得範囲SA2が対応し、搬送範囲Fs3に取得範囲SA3が対応する。
【0074】
なお、シングルパス印刷においても、搬送範囲Fsが検出範囲L未満となる場合には、複数の搬送範囲Fsを合計した範囲に対応させて取得範囲SAを設定してもよい。例えば、搬送範囲Fs1,Fs2,Fs3を合計した範囲に対応させてSA1を設定してもよい。
【0075】
また、画像データの取得範囲SA1,SA2,SA3は、布帛Mの位置ずれの修正精度の観点から、比較的に広い方が好ましい。このため、搬送範囲Fsが検出範囲L以上である場合でも、複数の搬送範囲Fsを合計した範囲に対応させて取得範囲SAを設定してもよい。
【0076】
図7に示すように、マルチパス印刷では、例えば布帛Mは搬送範囲Fp1から搬送範囲Fp6へと順次段階的に搬送される。マルチパス印刷は、シングルパス印刷に比べて、搬送範囲Fp1,Fp2,・・・,Fp6が比較的に狭い。
【0077】
シングルパス印刷と同様に、制御部1は、検出範囲Lと搬送範囲Fpとを比較した結果に基づいて、端部MEの画像データの取得範囲SAを設定する。
図7に示すマルチパス印刷の例では、搬送範囲Fpが検出範囲L未満であるため、搬送範囲Fpに対応する範囲の端部MEの画像データを取得するだけでは、布帛Mの位置ずれの修正精度を満たすことができない。よって、制御部1は、合計した範囲が少なくとも検出範囲L以上となるような複数の搬送範囲Fpに対応させて取得範囲SAを設定する。
図7に示す例では、搬送範囲Fp1,Fp2,Fp3の3つを合計した範囲が取得範囲SA1に対応し、搬送範囲Fp2,Fp3,Fp4の3つを合計した範囲が取得範囲SA2に対応し、搬送範囲Fp3,Fp4,Fp5の3つを合計した範囲が取得範囲SA3に対応し、搬送範囲Fp4,Fp5,Fp6の3つを合計した範囲が取得範囲SA4に対応する。
【0078】
なお、マルチパス印刷においても、搬送範囲Fpが検出範囲L以上となる場合には、搬送範囲Fpに対応させて取得範囲SAを設定してもよい。例えば、搬送範囲Fp1に対応させてSA1を設定し、搬送範囲Fp2に対応させてSA2を設定し、搬送範囲Fp3に対応させてSA3を設定してもよい。
【0079】
また、画像データの取得範囲SA1,SA2,SA3,SA4は、布帛Mの位置ずれの修正精度の観点から、比較的に広い方が好ましい。このため、搬送範囲Fpが検出範囲L以上である場合でも、複数の搬送範囲Fpを合計した範囲に対応させて取得範囲SAを設定してもよい。
【0080】
図8に示すように、
図6に示すシングルパス印刷の例においては、端部MEについて、画像データの取得範囲SA1に対応する平均位置MX1が算出され,取得範囲SA2に対応する平均位置MX2が算出される。詳しくは、画像処理部30にて、布帛Mの端部MEの屈折した線が画像処理されて、処理結果として屈折した箇所が均された平均位置MX1,MX2が得られる。平均位置MX1,MX2は、制御部1のROMに格納される適正位置と比較されて、保持部13の移動に反映される。
【0081】
処理結果としての平均位置MX1は、取得範囲SA1に対応させた搬送範囲Fs1の次の搬送範囲である、搬送範囲Fs2の搬送時に反映されて保持部13が移動される。そして、平均位置MX2は、取得範囲SA2に対応させた搬送範囲Fs2の次の搬送範囲である、搬送範囲Fs3の搬送時に反映されて保持部13が移動される。つまり、取得範囲SAに対応する平均位置MXは、取得範囲SAに対応させた搬送範囲Fsの次の搬送範囲Fsの搬送時に反映されて保持部13が移動される。このように、処理結果に従って順次保持部13が移動されて、布帛Mの幅方向の位置ずれおよび蛇行が修正される。
【0082】
また、
図9に示すように、
図7に示すマルチパス印刷の例においても同様に、端部MEについて、画像データの取得範囲SA1に対応する平均位置MX1が算出され,取得範囲SA2に対応する平均位置MX2が算出される。平均位置MX1,MX2は、制御部1のROMに格納される適正位置と比較されて、保持部13の移動に反映される。
【0083】
処理結果としての平均位置MX1は、取得範囲SA1に対応させた複数の搬送範囲Fp1,Fp2,Fp3の次の搬送範囲である、搬送範囲Fp4の搬送時に反映されて保持部13が移動される。そして、平均位置MX2は、取得範囲SA2に対応させた複数の搬送範囲Fp2,Fp3,Fp4の次の搬送範囲である、搬送範囲Fp5の搬送時に反映されて保持部13が移動される。つまり、取得範囲SAに対応する平均位置MXは、取得範囲SAに対応させた複数の搬送範囲Fpの次の搬送範囲Fpの搬送時に反映されて保持部13が移動される。このように、処理結果に従って順次保持部13が移動されて、布帛Mの幅方向の位置ずれおよび蛇行が修正される。
【0084】
上述した画像処理部30での処理過程では、端部MEの屈折した線を総計して平均位置MX1,MX2を算出しているが、この方法に限定されない。例えば、以下に述べる方法を採用してもよい。
【0085】
図10に示すように、画像取得部20による端部MEの画像について、取得範囲SA1ではn個の位置データを取得して平均位置MX1を算出してもよい。詳しくは、画像取得部20は、搬送部40によって1回または複数回の布帛Mの搬送が行われる間に、布帛Mの端部MEを含む画像のデータを取得する。
【0086】
詳しくは、画像処理部30は、布帛Mの端部MEの凹凸に対応する正の整数であるn個の位置データを、画像のデータから取得する。n個の位置データは、端部MEの凸部または凹部の座標データである。次いで、画像処理部30は、n個の位置データの平均値として1つの平均位置データを算出する。平均位置データのX軸に沿う方向の位置が平均位置MX1となる。これによれば、布帛Mの端部MEの毛足や毛羽などの影響が抑えられて、位置ずれの検出精度をさらに向上させることができる。
【0087】
なお、上述した平均位置MX1などの算出手段は、スキャナーユニット21を用いる構成に限定されず、レーザーセンサーやカメラなどを用いる構成に適用されてもよい。
【0088】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0089】
布帛Mの幅方向の位置ずれの検出精度を向上させることができる。詳しくは、布帛Mの端部MEの画像のデータが取得されて、画像処理によって端部ME、または端部の凹凸が特定される。そのため、従来の方式と比べて、布帛Mの端部MEの屈折した線または凹凸の位置を精密に検知することが可能となる。したがって、布帛Mの幅方向の位置ずれの検出精度を向上し、布帛Mの位置ずれや蛇行を精密に修正する搬送装置10および印刷装置100を提供することができる。
【0090】
2.第2実施形態
本実施形態に係る搬送装置では、第1実施形態の搬送装置10に対して、吹付部25および仕切り部27a,27bが追加されている。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成部位には同一の符号を使用して、重複する説明は省略する。
【0091】
図11に示すように、本実施形態の搬送装置は、吹付部25、および仕切り部27a,27bを備える。
【0092】
吹付部25は、画像取得部20の基準板23と、上記搬送部40との間に配置される。吹付部25は、搬送される布帛Mの端部MEに対して気体を吹き付け可能である。詳しくは、吹付部25は、気体を噴射する噴射口25nを備える。噴射口25nは、略+Z方向から、布帛Mの端部MEを含む領域に気体の気流Fを噴射する。
【0093】
気体には圧縮空気を用いる。吹付部25は、図示しない圧縮空気タンクやコンプレッサーに接続され、これらから圧縮空気が供給される。吹付部25による気流Fの吹き付け動作は、制御部1によって制御される。
【0094】
吹付部25から端部MEに吹き付けられる気流Fによって、端部MEに付着している布帛Mの毛羽が排除される。そのため、スキャナーユニット21によって取得される端部MEの画像においてノイズ成分が除去される。これにより、布帛Mの幅方向の位置ずれの検出精度をより向上させることができる。
【0095】
画像取得部20のスキャナーユニット21は、吹付部25が稼働していないときに端部MEの画像を取得する。これによれば、吹付部25からの気流Fによる端部MEの揺動が起こらないため、位置ずれの検出精度をよりいっそう向上させることができる。
【0096】
仕切り部27a,27bは、基準板23の搬送方向に取り付けられる。仕切り部27a,27bは、遮光性を有し、樹脂フィルムや布などの柔軟な素材から成る。仕切り部27a,27bは、スキャナーユニット21の受光部22Sに入射する外光を低減する。
【0097】
仕切り部27aは、搬送方向および+X方向と直交する方向からの平面視にて、端部MEよりも-X方向に配置される。仕切り部27aは基準板23からスキャナーユニット21側へ垂れ下がっている。
【0098】
仕切り部27bは、上記の平面視にて、端部MEよりも+X方向に配置される。仕切り部27bは基準板23からスキャナーユニット21側へ垂れ下がっている。搬送方向および+X方向と直交する方向において、仕切り部27bの長さは仕切り部27aの長さよりも短い。仕切り部27bは布帛Mには触れない。
【0099】
+X方向において、仕切り部27aと仕切り部27bとは、吹付部25から端部MEへ向かう気流Fを妨げないために、間隔を空けて配置されている。仕切り部27a,27bは、布帛Mの端部ME以外の領域へ気流Fが当たることを防ぐ機能を有していてもよい。
【0100】
仕切り部27a,27bによって、受光部22Sにおける外光の影響が低減され、位置ずれの検出精度をさらに向上させることができる。なお、吹付部25および仕切り部27a,27bの配置や形態は上記に限定されない。
【0101】
本実施形態によれば第1実施形態の効果に加えて、さらに布帛Mの位置ずれの検出精度を向上させることができる。
【0102】
以下に、実施形態から導き出される内容を記載する。
【0103】
搬送装置は、布帛が巻かれたロール体を回転可能に保持する保持部と、ロール体から引き出された布帛を、搬送方向の下流へ搬送する搬送部と、搬送方向と交差する幅方向において、布帛の端部の画像を取得する画像取得部と、画像取得部が取得した画像を処理する画像処理部と、を備えることを特徴とする。
【0104】
この構成によれば、布帛の幅方向の位置ずれの検出精度を向上させることができる。詳しくは、布帛の端部の画像が取得されて、画像処理によって布帛の端部の位置が特定される。そのため、従来の方式と比べて、布帛の端部の位置を精密に検知することが可能となる。したがって、布帛の幅方向の位置ずれの検出精度を向上させる搬送装置を提供することができる。
【0105】
上記の搬送装置は、制御部と、保持部を幅方向に移動させる幅方向移動部と、を備え、制御部は、画像処理部による処理結果に基づいて、幅方向移動部の駆動を制御することを特徴とする。
【0106】
この構成によれば、布帛の幅方向の端部の位置に応じて、保持部が幅方向に移動される。そのため、布帛の幅方向の位置ずれや蛇行を精密に修正することができる。
【0107】
上記の搬送装置は、制御部は、布帛の種類に応じて、幅方向移動部による保持部の移動速度を変更することを特徴とする。
【0108】
この構成によれば、布帛の織り方や材質などに応じて、保持部の移動速度が変更される。そのため、伸び易く柔軟な布帛を搬送する場合に、布帛における傷みの発生を抑えることができる。
【0109】
上記の搬送装置において、制御部は、幅方向における布帛の端部が適正位置にない場合に、端部が適正位置にないことを報知部に報知させることを特徴とする。
【0110】
この構成によれば、搬送装置の使用者は、布帛の幅方向の位置ずれを認識することができる。
【0111】
上記の搬送装置は、搬送部は、布帛を挟持しながら互いに逆方向に回転して布帛を搬送する搬送ローラー対を含み、制御部は、搬送ローラー対による布帛の搬送速度を制御し、搬送ローラー対による布帛の搬送周期は、経過時間に応じて搬送速度が増加する加速期間と、加速期間の次の期間であり、経過時間によらず搬送速度が一定となる定速期間と、定速期間の次の期間であり、経過時間に応じて搬送速度が減少する減速期間と、に区分され、画像取得部は、定速期間に画像を取得することを特徴とする。
【0112】
この構成によれば、加速期間および減速期間と比べて、定速期間では搬送によって布帛に掛かる張力の変動が小さい。そのため、布帛の幅方向の位置ずれの検出精度をさらに向上させることができる。
【0113】
上記の搬送装置は、画像取得部は、光源部および受光部を含むスキャナーユニットと、搬送方向および幅方向と交差する方向において、布帛を介してスキャナーユニットと対向して配置される反射部を含む基準板と、を有し、光源部は、布帛の幅方向において、光源部と重なる第1領域に光を照射可能な第1部分と、光源部と重ならない第2領域に光を照射可能な第2部分と、を有し、受光部は、第2領域に照射されて反射部によって反射された光の光量を測定し、制御部は、光量に基づいて光源部の光量補正を行うことを特徴とする。
【0114】
この構成によれば、布帛が画像取得部にある状態にて、光量の校正作業が実施可能である。そのため、校正作業に際して都度布帛を取り外す手間が省かれて、使用者の利便性を向上させることができる。
【0115】
上記の搬送装置は、搬送部と画像取得部との間に配置され、搬送される布帛の端部に対して気体を吹き付け可能な吹付部と、基準板に取り付けられ、スキャナーユニットの受光部に入射する外光を低減する仕切り部と、を備えることを特徴とする。
【0116】
この構成によれば、吹付部からの気体により、布帛の端部の毛羽や塵埃などが除去されて、布帛の端部の画像が鮮明に撮像される。また、仕切り部によって、受光部における外光の影響が低減される。これらにより、位置ずれの検出精度をさらに向上させることができる。
【0117】
上記の搬送装置は、搬送部と画像取得部との間に配置され、搬送される布帛の端部に対して気体を吹き付け可能な吹付部を備え、画像取得部は、吹付部が稼働していないときに画像を取得することを特徴とする。
【0118】
この構成によれば、吹付部からの気体による布帛の端部の揺動が起こらないため、位置ずれの検出精度をさらに向上させることができる。
【0119】
上記の搬送装置は、画像取得部は、搬送部によって1回または複数回の布帛の搬送が行われる間に画像を取得し、画像処理部は、布帛の端部に対応する正の整数であるn個の位置データを画像から取得して、n個の位置データの平均値を算出することを特徴とする。
【0120】
この構成によれば、布帛の搬送に対応させて画像が取得され、n個の位置データの平均値から位置ずれが検出される。そのため、布帛の端部の毛足の影響が抑えられて、位置ずれの検出精度をさらに向上させることができる。
【0121】
上記の搬送装置は、布帛を挟持しながら互いに逆方向に回転して布帛を搬送する搬送ローラー対を含み、制御部は、搬送ローラー対による布帛の搬送速度を制御し、搬送ローラー対による布帛の搬送周期は、経過時間に応じて搬送速度が増加する加速期間と、加速期間の次の期間であり、経過時間によらず搬送速度が一定となる定速期間と、定速期間の次の期間であり、経過時間に応じて搬送速度が減少する減速期間と、に区分され、画像取得部は、定速期間に画像を取得することを特徴とする。
【0122】
この構成によれば、布帛の端部の毛足の影響に加えて、布帛に作用する張力の変動の影響が抑えられる。そのため、幅方向における布帛の端部の検出精度がさらに向上する。
【0123】
印刷装置は、布帛が巻かれたロール体を回転可能に保持する保持部と、ロール体から引き出された布帛を、搬送方向の下流へ搬送する搬送部と、搬送方向と交差する幅方向において、布帛の端部の画像を取得する画像取得部と、画像取得部が取得した画像を処理する画像処理部と、保持部を幅方向に移動させる幅方向移動部と、布帛に液体を吐出可能な吐出部と、制御部と、を備え、制御部は、画像処理部による処理結果に基づいて、幅方向移動部の駆動を制御することを特徴とする。
【0124】
この構成によれば、布帛の端部の位置ずれや蛇行が精密に修正され、布帛へ印刷される画像などの印刷品質を向上させることができる。すなわち、印刷品質が向上する印刷装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0125】
1…制御部、10…搬送装置、12…幅方向移動部、13…保持部、20…画像取得部、21…スキャナーユニット、22L…光源部、22S…受光部、23…基準板、23a…反射部、25…吹付部、27a,27b…仕切り部、30…画像処理部、40…搬送部、47…搬送ローラー対、60…吐出部、80…報知部、100…印刷装置、A1…第1部分、A2…第2部分、M…布帛、ME…端部、R1…ロール体。