(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063364
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】画像読取装置、画像読取装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240502BHJP
H04N 1/193 20060101ALI20240502BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240502BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H04N1/12 Z
H04N1/193
H04N1/00 L
H04N1/00 567H
B65H7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171240
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】有森 和彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雅也
【テーマコード(参考)】
3F048
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
3F048AA04
3F048AA08
3F048AB02
3F048BB02
3F048BB05
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5C062AA05
5C062AB02
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5C062AC70
5C062AE01
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5C062AF10
5C072AA01
5C072BA15
5C072CA02
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5C072FB12
5C072FB23
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5C072NA01
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5C072NA07
5C072RA02
5C072RA04
5C072RA16
5C072UA02
5C072UA13
5C072VA06
5C072WA02
(57)【要約】
【課題】厚み方向で凹凸や段差等が存在する媒体では、画像読取手段が暴れて読み取り画像の乱れが生じる場合がある。
【解決手段】画像読取装置の制御部は、媒体を第1方向に搬送しながら読み取る第1読み取り動作を行った後、画像補正制御を実行可能であり、画像補正制御は、媒体を第1方向とは反対の第2方向に搬送しながら読み取る第2読み取り動作と、第1読み取り動作で取得した画像データの一部である第1領域と第2読み取り動作で取得した画像データの一部である第2領域とを合成することで一ページの画像データを取得する合成処理とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送経路において媒体を搬送する第1搬送ローラー対と、
前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対に対し第1方向に位置し、媒体を搬送する第2搬送ローラー対と、
前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対と前記第2搬送ローラー対との間に位置し、媒体の画像を読み取る読取部と、
前記第1搬送ローラー対、前記第2搬送ローラー対、及び前記読取部を制御する制御部と、を備え、
前記読取部は、前記搬送経路に対し進退する方向に変位可能であるとともに前記搬送経路に向けて押圧され、
前記制御部は、媒体を前記第1方向に搬送しながら読み取る第1読み取り動作を行った後、画像補正制御を実行可能であり、
前記画像補正制御は、
媒体を前記第1方向とは反対の第2方向に搬送しながら読み取る第2読み取り動作と、
前記第1読み取り動作で取得した画像データの一部である第1領域と前記第2読み取り動作で取得した画像データの一部である第2領域とを合成することで一ページの画像データを取得する合成処理と、を含む、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置において、前記第1搬送ローラー対及び前記第2搬送ローラー対の駆動源であるDCモーターを備え、
前記制御部は、前記第1読み取り動作の実行中に前記DCモーターの負荷を示す負荷値が閾値を超えた場合、前記画像補正制御を実行する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像読取装置において、前記制御部は、前記負荷値が閾値を超えたタイミングに基づき、前記第1領域および前記第2領域を決定する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像読取装置において、前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対に対し前記第2方向に、媒体を検出する媒体検出部を備え、
前記媒体検出部は、発光部と受光部とを備えた光学センサーであり、
前記制御部は、
前記発光部での検出光の発光強度を第1強度とした場合の前記受光部での受光強度を検出する第1検出処理と、
前記発光部での検出光の発光強度を第1強度よりも強い第2強度とした場合の前記受光部での受光強度を検出する第2検出処理と、を実行可能であり、
更に前記制御部は、前記第1検出処理での前記受光部での受光強度と前記第2検出処理での前記受光部での受光強度との差Rを取得し、
前記差Rの最大値と最小値との差が閾値を超えた場合に、前記画像補正制御を実行する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像読取装置において、前記第1搬送ローラー対を構成する二つのローラーのうち一方が他方に対して進退可能な変位ローラーであり、
前記変位ローラーの変位を検出する変位検出部を備え、
前記制御部は、前記変位検出部の検出情報をもとに、前記変位ローラーの変位量が閾値を超えた場合に、前記画像補正制御を実行する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像読取装置において、前記読取部と対向する位置に、前記読取部によって読み取り可能な部位であってシェーディング補正に利用する背景板を備え、
前記読取部と前記背景板は、媒体の搬送方向と交差する幅方向において最大サイズの媒体より更に外側の位置まで延設され、
前記制御部は、前記第1読み取り動作の実行中に前記背景板を読み取り、輝度の変化量が閾値を超えた場合に、前記画像補正制御を実行する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像読取装置において、前記制御部は、媒体の種類に関する情報を取得可能であり、
前記媒体の種類には、冊子が含まれ、
前記制御部は、媒体の種類が冊子の場合、前記画像補正制御を実行する、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像読取装置において、画像を表示する表示部を備え、
前記制御部は、前記第1読み取り動作の実行後、媒体の搬送を一時停止して、前記第1読み取り動作により読み取った媒体の画像を前記表示部に表示するプレビューモードを実行可能であり、
更に前記制御部は、前記プレビューモードにおいて、前記表示部に媒体の排出を行うか或いは前記画像補正制御を行うかをユーザーに選択させるユーザインタフェースを表示させる、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項9】
請求項1に記載の画像読取装置において、前記第1搬送ローラー対を構成する二つのローラーは、いずれも駆動源によって駆動され、
前記第2搬送ローラー対を構成する二つのローラーは、いずれも前記駆動源によって駆動される、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項10】
請求項1に記載の画像読取装置において、前記第1搬送ローラー対を構成する二つのローラーのうちの一方のローラーであって前記搬送経路に対し前記読取部と同じ側にあるローラーは、他方のローラーに対して進退可能な変位ローラーであり、
前記変位ローラーには、前記変位ローラーと一体に変位する部位であって前記読取部と係合可能な係合部が設けられ、
前記変位ローラーが前記他方のローラーから離間する場合、前記係合部が前記読取部を前記変位ローラーとともに変位させる、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項11】
請求項1に記載の画像読取装置において、前記搬送経路において前記読取部に対し前記第2方向に、前記第1方向に搬送される媒体を前記読取部と対向する位置へ案内する案内部を備え、
前記案内部は、前記搬送経路に対し進退する方向に変位可能であるとともに、前記読取部と一体に設けられる、
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項12】
媒体を搬送する搬送経路において媒体を搬送する第1搬送ローラー対と、
前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対に対し第1方向に位置し、媒体を搬送する第2搬送ローラー対と、
前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対と前記第2搬送ローラー対との間に位置し、媒体の画像を読み取る読取部であって、前記搬送経路に対し進退する方向に変位可能であるとともに前記搬送経路に向けて押圧される前記読取部と、
を備えた画像読取装置の制御方法であって、
媒体を前記第1方向に搬送しながら読み取る第1読み取り動作と、
媒体を前記第1方向とは反対の第2方向に搬送しながら読み取る第2読み取り動作と、
前記第1読み取り動作で取得した画像データの一部である第1領域と前記第2読み取り動作で取得した画像データの一部である第2領域とを合成することで一ページの画像データを取得する合成処理と、を含む、
ことを特徴とする画像読取装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体の画像を読み取る画像読取装置に関する。また本発明は、画像読取装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置の一例であるスキャナーには、媒体としての原稿を搬送しながら読み取りを行うシートフィードタイプがある。またこの様なシートフィードタイプのスキャナーには、特許文献1に示される様に画像読取手段がシート搬送面に対して進退可能に設けられ、シート材の厚みに応じて画像読取手段がシート搬送面に対して進退する様に構成されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スキャナーにおいて読み取りを行いたい原稿はシート状のものに限らず、一例として冊子状のものがある。冊子状の原稿は、見開きの一方のページと他方のページとで厚みが異なる場合がある。この様な冊子状の原稿を搬送する場合、厚みが変化する際に画像読取手段が暴れて読み取り画像の乱れが生じる場合がある。またこの様な冊子状の媒体に限らず、厚み方向で凹凸や段差等が存在する原稿では、画像読取手段が暴れて読み取り画像の乱れが生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の画像読取装置は、媒体を搬送する搬送経路において媒体を搬送する第1搬送ローラー対と、前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対に対し第1方向に位置し、媒体を搬送する第2搬送ローラー対と、前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対と前記第2搬送ローラー対との間に位置し、媒体の画像を読み取る読取部と、前記第1搬送ローラー対、前記第2搬送ローラー対、及び前記読取部を制御する制御部と、を備え、前記読取部は、前記搬送経路に対し進退する方向に変位可能であるとともに前記搬送経路に向けて押圧され、前記制御部は、媒体を前記第1方向に搬送しながら読み取る第1読み取り動作を行った後、画像補正制御を実行可能であり、前記画像補正制御は、媒体を前記第1方向とは反対の第2方向に搬送しながら読み取る第2読み取り動作と、前記第1読み取り動作で取得した画像データの一部である第1領域と前記第2読み取り動作で取得した画像データの一部である第2領域とを合成することで一ページの画像データを取得する合成処理と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また本発明の画像読取装置の制御方法は、媒体を搬送する搬送経路において媒体を搬送する第1搬送ローラー対と、前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対に対し第1方向に位置し、媒体を搬送する第2搬送ローラー対と、前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対と前記第2搬送ローラー対との間に位置し、媒体の画像を読み取る読取部であって、前記搬送経路に対し進退する方向に変位可能であるとともに前記搬送経路に向けて押圧される前記読取部と、を備えた画像読取装置の制御方法であって、媒体を前記第1方向に搬送しながら読み取る第1読み取り動作と、媒体を前記第1方向とは反対の第2方向に搬送しながら読み取る第2読み取り動作と、前記第1読み取り動作で取得した画像データの一部である第1領域と前記第2読み取り動作で取得した画像データの一部である第2領域とを合成することで一ページの画像データを取得する合成処理と、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】スキャナーにおける制御系統を示すブロック図。
【
図4】第1搬送ローラー対、第2搬送ローラー対、上部読取センサーの構成の詳細を示す図。
【
図5】制御部が実行する制御の流れを示すフローチャート。
【
図6】デューティー比の変化の一例を示すチャート。
【
図7】第1読み取り動作に読み取った画像領域の一例を示す図。
【
図8】第2読み取り動作に読み取った画像領域の一例を示す図。
【
図10】検出光の発光強度と受光電圧との関係を示すプロット図。
【
図11】第1媒体検出部を用いて画像補正制御の実行の有無を判断する際の処理の流れを示すフローチャート。
【
図12】上部第1ローラーの変位を検出する変位検出部を備えた構成を示す図。
【
図13】変位検出部を用いて画像補正制御の実行の有無を判断する際の処理の流れを示すフローチャート。
【
図14】背景板を用いて画像補正制御の実行の有無を判断する際の処理の流れを示すフローチャート。
【
図15】プレビューモードにおいて表示されるユーザインタフェースの一例を示す図。
【
図16】(A)、(B)は上部第1ローラーに上部読取センサーと係合する係合部を設ける構成を示す図。
【
図17】(A)、(B)は上部読取センサーに案内部を設ける構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る画像読取装置は、媒体を搬送する搬送経路において媒体を搬送する第1搬送ローラー対と、前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対に対し第1方向に位置し、媒体を搬送する第2搬送ローラー対と、前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対と前記第2搬送ローラー対との間に位置し、媒体の画像を読み取る読取部と、前記第1搬送ローラー対、前記第2搬送ローラー対、及び前記読取部を制御する制御部と、を備え、前記読取部は、前記搬送経路に対し進退する方向に変位可能であるとともに前記搬送経路に向けて押圧され、前記制御部は、媒体を前記第1方向に搬送しながら読み取る第1読み取り動作を行った後、画像補正制御を実行可能であり、前記画像補正制御は、媒体を前記第1方向とは反対の第2方向に搬送しながら読み取る第2読み取り動作と、前記第1読み取り動作で取得した画像データの一部である第1領域と前記第2読み取り動作で取得した画像データの一部である第2領域とを合成することで一ページの画像データを取得する合成処理と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記制御部は、媒体を前記第1方向に搬送しながら読み取る第1読み取り動作を行った後、画像補正制御を実行可能である。前記画像補正制御は、媒体を前記第1方向とは反対の第2方向に搬送しながら読み取る第2読み取り動作と、前記第1読み取り動作で取得した画像データの一部である第1領域と前記第2読み取り動作で取得した画像データの一部である第2領域とを合成することで一ページの画像データを取得する合成処理と、を含むことから、前記合成処理によって画像乱れの生じた領域を除外することができ、良好な前記一ページの画像データを取得することができる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様において、前記第1搬送ローラー対及び前記第2搬送ローラー対の駆動源であるDCモーターを備え、前記制御部は、前記第1読み取り動作の実行中に前記DCモーターの負荷を示す負荷値が閾値を超えた場合、前記画像補正制御を実行することを特徴とする。
【0011】
前記DCモーターの負荷を示す負荷値が閾値を超えた場合、前記読取部が暴れた可能性があり、この様な場合に前記制御部は前記画像補正制御を実行することから、画像乱れの生じたことを既存の手段で検出することができ、装置のコストアップを抑制できる。
【0012】
第3の態様は、第2の態様において、前記制御部は、前記負荷値が閾値を超えたタイミングに基づき、前記第1領域および前記第2領域を決定することを特徴とする。
本態様によれば、前記制御部は、前記負荷値が閾値を超えたタイミングに基づき、前記第1領域および前記第2領域を決定することから、画像乱れの生じた範囲を適切に除外することができる。
【0013】
第4の態様は、第1の態様において、前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対に対し前記第2方向に、媒体を検出する媒体検出部を備え、前記媒体検出部は、発光部と受光部とを備えた光学センサーであり、前記制御部は、前記発光部での検出光の発光強度を第1強度とした場合の前記受光部での受光強度を検出する第1検出処理と、前記発光部での検出光の発光強度を第1強度よりも強い第2強度とした場合の前記受光部での受光強度を検出する第2検出処理と、を実行可能であり、更に前記制御部は、前記第1検出処理での前記受光部での受光強度と前記第2検出処理での前記受光部での受光強度との差Rを取得し、前記差Rの最大値と最小値との差が閾値を超えた場合に、前記画像補正制御を実行することを特徴とする。
【0014】
厚さが第1の厚さである媒体の第1部位と、厚さが前記第1の厚さより厚い媒体の第2部位とがある場合、前記発光部での検出光の発光強度を変化させた際の前記受光部での受光強度の差Rは、前記第1部位が、前記第2部位よりも大きくなる性質がある。この為、前記差Rの最小値と最大値との差が閾値を超えた場合、厚みの変化が大きい媒体が前記媒体検出部を通過したこととなり、画像乱れが生じる虞が高いと言える。
本態様によればこの様な性質を利用して前記画像補正制御を行う必要の有無を判断する為、前記画像補正制御を行う必要の有無を判断する為の専用の検出手段を設ける必要がなく、装置のコストアップを抑制できる。
【0015】
第5の態様は、第1の態様において、前記第1搬送ローラー対を構成する二つのローラーのうち一方が他方に対して進退可能な変位ローラーであり、前記変位ローラーの変位を検出する変位検出部を備え、前記制御部は、前記変位検出部の検出情報をもとに、前記変位ローラーの変位量が閾値を超えた場合に、前記画像補正制御を実行することを特徴とする。
【0016】
前記変位ローラーの変位量が閾値を超えた場合、厚みの変化が大きい媒体が搬送されていることとなる。本態様によれば、前記制御部は、前記変位検出部の検出情報をもとに、前記変位ローラーの変位量が閾値を超えた場合に、前記画像補正制御を行うことから、前記画像補正制御を行う必要の有無を精度良く判断することができる。
【0017】
第6の態様は、第1の態様において、前記読取部と対向する位置に、前記読取部によって読み取り可能な部位であってシェーディング補正に利用する背景板を備え、前記読取部と前記背景板は、媒体の搬送方向と交差する幅方向において最大サイズの媒体より更に外側の位置まで延設され、前記制御部は、前記第1読み取り動作の実行中に前記背景板を読み取り、輝度の変化量が閾値を超えた場合に、前記画像補正制御を実行することを特徴とする。
【0018】
厚さが第1の厚さである原稿の第1部位と、厚さが前記第1の厚さより厚い原稿の第2部位とがある場合、前記背景板を読み取った場合の輝度は、前記第1部位が通過する場合と前記第2部位が通過する際とで異なることとなる。従って輝度の変化が大きい場合、厚みの変化が大きい媒体が前記読取部を通過したこととなり、画像乱れが生じる虞が高いと言える。
本態様によればこの様な性質を利用し、前記画像補正制御を行う必要の有無を判断する為、前記画像補正制御を行う必要の有無を判断する為の専用の検出手段を設ける必要がなく、装置のコストアップを抑制できる。
【0019】
第7の態様は、第1の態様において、前記制御部は、媒体の種類に関する情報を取得可能であり、前記媒体の種類には、冊子が含まれ、前記制御部は、媒体の種類が冊子の場合、前記画像補正制御を実行することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記制御部は、媒体の種類に関する情報を取得可能であり、前記制御部は、媒体の種類が冊子の場合、前記画像補正制御を行うことから、前記画像補正制御を行う必要の高い冊子を読み取る場合に、確実に前記画像補正制御を実行することができる。
【0021】
第8の態様は、第1の態様において、画像を表示する表示部を備え、前記制御部は、前記第1読み取り動作の実行後、媒体の搬送を一時停止して、前記第1読み取り動作により読み取った媒体の画像を前記表示部に表示するプレビューモードを実行可能であり、更に前記制御部は、前記プレビューモードにおいて、前記表示部に媒体の排出を行うか或いは前記画像補正制御を行うかをユーザーに選択させるユーザインタフェースを表示させることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、前記制御部は、前記プレビューモードにおいて、前記表示部に媒体の排出を行うか或いは前記画像補正制御を行うかをユーザーに選択させるユーザインタフェースを表示させることから、ユーザーは前記画像補正制御を行うか否かを選択することができ、ユーザビリティを向上させることができる。
【0023】
第9の態様は、第1の態様において、前記第1搬送ローラー対を構成する二つのローラーは、いずれも駆動源によって駆動され、前記第2搬送ローラー対を構成する二つのローラーは、いずれも前記駆動源によって駆動されることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、前記第1搬送ローラー対を構成する二つのローラーは、いずれも駆動源によって駆動され、前記第2搬送ローラー対を構成する二つのローラーは、いずれも前記駆動源によって駆動されることから、媒体の搬送力が向上し、搬送精度の低下による読み取り画像の乱れを抑制できる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2~第8の態様のいずれかに適用しても良い。
【0025】
第10の態様は、第1の態様において、前記第1搬送ローラー対を構成する二つのローラーのうちの一方のローラーであって前記搬送経路に対し前記読取部と同じ側にあるローラーは、他方のローラーに対して進退可能な変位ローラーであり、前記変位ローラーには、前記変位ローラーと一体に変位する部位であって前記読取部と係合可能な係合部が設けられ、前記変位ローラーが前記他方のローラーから離間する場合、前記係合部が前記読取部を前記変位ローラーとともに変位させることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、前記変位ローラーが前記他方のローラーから離間する場合、前記係合部が前記読取部を前記変位ローラーとともに変位させることから、媒体が前記読取部を通過する際に媒体が通過する為の隙間が大きくなり、これにより前記読取部が暴れることに伴う読み取り画像の乱れを抑制できる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2~第9の態様のいずれかに適用しても良い。
【0027】
第11の態様は、第1の態様において、前記搬送経路において前記読取部に対し前記第2方向に、前記第1方向に搬送される媒体を前記読取部と対向する位置へ案内する案内部を備え、前記案内部は、前記搬送経路に対し進退する方向に変位可能であるとともに、前記読取部と一体に設けられることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、前記案内部は、前記搬送経路に対し進退する方向に変位可能であるとともに、前記読取部と一体に設けられることから、媒体が前記読取部を通過する際に媒体が通過する為の隙間が大きくなり、これにより前記読取部が暴れることに伴う読み取り画像の乱れを抑制できる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2~第9の態様のいずれかに適用しても良い。
【0029】
第12の態様に係る画像読取装置の制御方法は、媒体を搬送する搬送経路において媒体を搬送する第1搬送ローラー対と、前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対に対し第1方向に位置し、媒体を搬送する第2搬送ローラー対と、前記搬送経路において前記第1搬送ローラー対と前記第2搬送ローラー対との間に位置し、媒体の画像を読み取る読取部であって、前記搬送経路に対し進退する方向に変位可能であるとともに前記搬送経路に向けて押圧される前記読取部と、を備えた画像読取装置の制御方法であって、媒体を前記第1方向に搬送しながら読み取る第1読み取り動作と、媒体を前記第1方向とは反対の第2方向に搬送しながら読み取る第2読み取り動作と、前記第1読み取り動作で取得した画像データの一部である第1領域と前記第2読み取り動作で取得した画像データの一部である第2領域とを合成することで一ページの画像データを取得する合成処理と、を含むことを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、画像読取装置の制御方法は、媒体を前記第1方向に搬送しながら読み取る第1読み取り動作を行った後、媒体を前記第1方向とは反対の第2方向に搬送しながら読み取る第2読み取り動作と、前記第1読み取り動作で取得した画像データの一部である第1領域と前記第2読み取り動作で取得した画像データの一部である第2領域とを合成することで一ページの画像データを取得する合成処理と、を含むことから、前記合成処理によって画像乱れの生じた領域を除外することができ、良好な前記一ページの画像データを取得することができる。
【0031】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では、本発明に係る画像読取装置の一実施形態について図面に基づき説明する。本実施形態では画像読取装置の一例として、媒体の一例である原稿(以下、原稿Pと言う)の表面及び裏面の少なくとも一面を読み取り可能なドキュメントスキャナー(以下、単にスキャナー1と称する)を例に挙げる。
【0032】
尚、各図において示すX-Y-Z座標系はX軸方向が装置幅方向であり原稿幅方向である。装置前面から見て左を+X方向、右を-X方向とする。
またY軸方向は原稿搬送方向である。本実施形態においてY軸方向は水平面に対して交差する方向である。原稿Pが搬送されていく方向である+Y方向は第1方向の一例であり、これと反対の方向である-Y方向は第2方向の一例である。
またZ軸方向はY軸方向と交差する方向であって、概ね搬送される原稿の面と直交する方向である。+Z方向は鉛直上方成分を含む方向であり、-Z方向は鉛直下方成分を含む方向である。
また以下では部材の回転方向を方向Kaと方向Kbとを用いて説明する。
【0033】
スキャナー1は、原稿Pの画像を読み取る上部読取センサー20A及び下部読取センサー20B(
図2参照)を内部に備える装置本体2を備えている。
装置本体2は、下ユニット3及び上ユニット4を備えて構成されている。上ユニット4は下ユニット3に対して原稿搬送方向下流の回動軸4b(
図2参照)を回動支点として回動することで開閉可能に設けられている。上ユニット4を装置前面側に
図2の符号4-1で示す様に回動して開くことで、原稿Pの原稿搬送経路を露呈させて原稿Pのジャムの処理を容易に行うことができる。
【0034】
装置本体2の背面には、給送される原稿Pを載置する載置面11aを有する原稿載置部11が設けられている。原稿載置部11は、装置本体2に対して着脱可能に設けられている。
また、原稿載置部11には、原稿Pの搬送方向(Y軸方向)と交差する幅方向(X軸方向)の側縁をガイドする左右一対のエッジガイド12A、12Bが設けられている。
【0035】
原稿載置部11は、第1ペーパーサポート8及び第2ペーパーサポート9を備えている。第1ペーパーサポート8及び第2ペーパーサポート9は、原稿載置部11の内部に収納可能であり、且つ、
図1に示す様に原稿載置部11から引き出し可能に構成され、載置面11aの長さを調整可能になっている。
【0036】
装置本体2は、上ユニット4の装置前面側に、各種読み取り設定や読み取り実行の操作を行い、また読み取り設定内容や画像読取結果のプレビュー画像等を示すユーザインタフェース(UI)が実現される操作パネル7を備えている。操作パネル7は、本実施形態では表示と入力の双方が行える所謂タッチパネルであり、各種操作を行う為の操作部と、各種情報を表示する為の表示部とを兼用する。
上ユニット4の上部には装置本体2内部に連なる給送口6が設けられており、原稿載置部11に載置される原稿Pは、給送口6から装置本体2内部に給送される。
また、下ユニット3の装置前面側には、排出される原稿Pを受ける排紙トレイ5が設けられている。
【0037】
次に、主として
図2を参照して、スキャナー1における原稿搬送経路について説明する。
図2において符号Tで示す実線は、原稿搬送経路(換言すれば、原稿Pの通過軌跡)を示している。原稿搬送経路Tは、下ユニット3と、上ユニット4とによって挟まれた空間である。
【0038】
原稿搬送経路Tの最も上流側には、原稿載置部11が設けられており、原稿載置部11の下流側には、原稿載置部11の載置面11aに載置された原稿Pを+Y方向に向けて送る給送ローラー14と、給送ローラー14との間で原稿Pをニップして分離する分離ローラー15が設けられている。
【0039】
給送ローラー14は、原稿載置部11の載置面11aに載置された原稿Pのうち、最下位のものと接する。従って、スキャナー1において複数枚の原稿Pを原稿載置部11にセットした場合には、載置面11a側の原稿Pから順に下流側に向けて給送される。
給送ローラー14は、給送モーター45(
図3参照)により回転駆動される。給送ローラー14は給送モーター45から回転トルクを得て方向Kbに回転する。
【0040】
分離ローラー15には、搬送モーター46(
図3参照)から、不図示のトルクリミッタを介して方向Kbの回転トルクが伝達される。
給送ローラー14と分離ローラー15との間に原稿Pが介在しない場合、或いは1枚のみ介在する場合、分離ローラー15は、不図示のトルクリミッタにおいて滑りが生じることにより、搬送モーター46から受ける回転トルクに拘わらず方向Kaに従動回転する。
給送ローラー14と分離ローラー15との間に、給送されるべき原稿Pに加えて更に2枚目以降の原稿Pが入り込むと、原稿間で滑りが生じることにより、分離ローラー15は搬送モーター46から受ける回転トルクにより方向Kbに回転し、2枚目以降の原稿Pが上流に戻され、重送が防止される。
尚、複数枚のシートが重ねられた原稿である冊子が給送される際、不図示の動力切換手段により、搬送モーター46から分離ローラー15への動力伝達は切断される。
【0041】
給送ローラー14の下流側には、第1搬送ローラー対16が設けられている。第1搬送ローラー対16は、搬送モーター46(
図3参照)により回転駆動される下部第1ローラー16aと、搬送モーター46(
図3参照)により回転駆動される上部第1ローラー16bとを備えて成る。原稿Pを+Y方向に搬送する際、下部第1ローラー16aは方向Kbに回転駆動され、上部第1ローラー16bは方向Kaに回転駆動される。また原稿Pを-Y方向に搬送する際、下部第1ローラー16aは方向Kaに回転駆動され、上部第1ローラー16bは方向Kbに回転駆動される。
給送ローラー14により給送された原稿Pは第1搬送ローラー対16にニップされて、第1搬送ローラー対16の下流側に位置する上部読取センサー20A及び下部読取センサー20Bに搬送される。
【0042】
給送ローラー14の下流側には、第1原稿検出部31が設けられている。第1原稿検出部31は、一例として光学式センサーとして構成され、原稿搬送経路Tを挟んで対向配置される発光部31aと、受光部31bとを備えて成る。受光部31bは制御部40(
図3参照)に検出光の強度を示す電気信号を送信する。搬送される原稿Pが発光部31aから発せられる検出光を遮ることにより、前記検出光の強度を示す電気信号が変化し、これにより制御部40は、原稿Pの先端或いは後端の通過を検知できる。
尚詳しくは後述するが、制御部40は、発光部31aから発する検出光の強度を変更することで、原稿Pの厚みを判定することができる。
【0043】
第1原稿検出部31の下流側には、原稿Pの重送を検出する重送検出部30が配置されている。重送検出部30は、原稿搬送経路Tを挟んで対向配置される超音波発信部30aと、超音波を受信する超音波受信部30bとを備えて成り、超音波受信部30bが制御部40(
図3参照)に検出した超音波の強度を示す電気信号を送信する。原稿Pの重送が生じると、前記超音波の強度を示す電気信号が変化し、これにより制御部40は、原稿Pの重送を検知できる。
【0044】
また、重送検出部30の下流側には、第2原稿検出部32が設けられている。第2原稿検出部32は、レバーを有する接触式センサーとして構成されており、原稿Pの先端或いは後端の通過に伴いレバーが回動すると、第2原稿検出部32から制御部40(
図3参照)に送られる電気信号が変化し、これにより制御部40は、原稿Pの先端或いは後端の通過を検知できる。
制御部40は、上述した第1原稿検出部31或いは第2原稿検出部32により、原稿搬送経路Tにおける原稿Pの位置や長さを把握することができる。
【0045】
第2原稿検出部32の下流には、上部読取センサー20Aと下部読取センサー20Bとが対向配置される。上部読取センサー20Aは、上ユニット4に設けられ、下部読取センサー20Bは、下ユニット3に設けられる。
下部読取センサー20Bにより、原稿Pの下面即ち第1面が読み取られ、上部読取センサー20Aにより、原稿Pの上面即ち第2面が読み取られる。
【0046】
上部読取センサー20Aは、イメージセンサー21Aを有し、下部読取センサー20Bは、イメージセンサー21Bを備える。イメージセンサー21A、21Bは、本実施形態では密着型イメージセンサーモジュール(CISM)である。
【0047】
下部読取センサー20Bは、上側のイメージセンサー21Aと対向する位置に背景板22Bを備え、上部読取センサー20Aは、下側のイメージセンサー21Bと対向する位置に背景板22Aを備えている。
【0048】
背景板22B及び背景板22Aは、シェーディング補正の為に、対向するイメージセンサーにより読み取られる基準板で、例えば白色、灰色、黒色等の樹脂板または白色、灰色、黒色等に塗装された金属板等を用いることができる。
背景板22B及び背景板22Aは不図示の動力源の動力により回転可能に設けられ、回転することにより対向するイメージセンサーと対面する対面状態(
図2の実線)と非対面状態(
図2の破線)とを切り換えることができる。本実施形態では、背景板22B及び背景板22Aは一例として白色を成しており、前記対面状態では白色基準値を取得することができ、前記非対面状態では黒色基準値を取得することができる。
【0049】
原稿Pは、原稿Pの第1面及び第2面の少なくとも一方の面の画像を読み取られた後、第2搬送ローラー対17にニップされて、下ユニット3の装置前面側に設けられた排出口18から排出される。
第2搬送ローラー対17は、搬送モーター46(
図3参照)により回転駆動される下部第2ローラー17aと、搬送モーター46(
図3参照)により回転駆動される上部第2ローラー17bとを備えて成る。
原稿Pを+Y方向に搬送する際、下部第2ローラー17aは方向Kbに回転駆動され、上部第2ローラー17bは方向Kaに回転駆動される。また原稿Pを-Y方向に搬送する際、下部第2ローラー17aは方向Kaに回転駆動され、上部第2ローラー17bは方向Kbに回転駆動される。
【0050】
続いて
図3を参照しつつスキャナー1における制御系統について説明する。
図3は本発明に係るスキャナー1の制御系統を示すブロック図である。
図3において、制御手段としての制御部40は原稿Pの送り制御及び読み取り制御を含め、その他スキャナー1の各種制御を行う。制御部40には操作パネル7からの信号が入力され、また、操作パネル7の表示、特にユーザインタフェース(UI)を実現する為の信号が制御部40から操作パネル7に送信される。
【0051】
制御部40は、給送モーター45、搬送モーター46、のこれらモーターを制御する。上述したように給送モーター45は、給送ローラー14の動力源であり、搬送モーター46は、分離ローラー15、第1搬送ローラー対16、第2搬送ローラー対17、のこれらの動力源である。本実施形態において給送モーター45と搬送モーター46はいずれもDCモーターである。
【0052】
制御部40には、上部読取センサー20A及び下部読取センサー20Bから読み取った情報が入力され、制御部40はこれをもとに画像データを生成する。また制御部40は、上部読取センサー20A及び下部読取センサー20Bを制御する為の信号を上部読取センサー20A及び下部読取センサー20Bに送信する。
制御部40には、重送検出部30、第1原稿検出部31、第2原稿検出部32、のこれら検出手段からの検出信号も入力され、これら検出信号に基づき必要な制御を行う。
【0053】
制御部40は、CPU41、ROM42、メモリ43を備えている。CPU41はROM42に格納されたプログラム44に従って各種演算処理を行い、スキャナー1全体の動作を制御する。記憶部の一例であるメモリ43は読み出し及び書き込みが可能な不揮発性メモリであり、操作パネル7を介して入力された設定情報等が保存される。
以降説明する各種制御は、CPU41がプログラム44を実行することによって実現される。
【0054】
またスキャナー1は外部コンピュータ100と接続可能に構成されており、制御部40には、外部コンピュータ100から情報が入力され、その情報に基づいて制御部40が必要な制御を行う。
【0055】
続いて、
図4を参照して第1搬送ローラー対16、第2搬送ローラー対17、及び上部読取センサー20Aの構成について更に説明する。
上部読取センサー20Aは、Z軸方向即ち原稿搬送経路Tに対し進退する方向に変位可能な読取部の一例であり、押圧部材の一例であるばね24によって原稿搬送経路Tに向けて押圧されている。
【0056】
上部読取センサー20A及び下部読取センサー20Bには、-Y方向の角部に、+Y方向に搬送される原稿Pを上部読取センサー20Aと下部読取センサー20Bとの間に案内する案内面U1が形成されている。同様に上部読取センサー20A及び下部読取センサー20Bには、+Y方向の角部に、-Y方向に搬送される原稿Pを上部読取センサー20Aと下部読取センサー20Bとの間に案内する案内面U2が形成されている。
【0057】
第1搬送ローラー対16を構成する二つのローラーのうち一方のローラーであって原稿搬送経路Tに対して上部読取センサー20Aと同じ側に位置する上部第1ローラー16bは、他方のローラーである下部第1ローラー16aに対して進退可能に設けられている。そして上部第1ローラー16bは、押圧部材の一例であるばね23によって下部第1ローラー16aに向けて押圧されている。
【0058】
同様に第2搬送ローラー対17を構成する二つのローラーのうち一方のローラーであって原稿搬送経路Tに対して上部読取センサー20Aと同じ側に位置する上部第2ローラー17bは、他方のローラーである下部第2ローラー17aに対して進退可能に設けられている。そして上部第2ローラー17bは、押圧部材の一例であるばね25によって下部第2ローラー17aに向けて押圧されている。
【0059】
原稿Pが第1搬送ローラー対16に対し-Y方向から+Y方向に搬送される場合、原稿Pはばね23のばね力に抗して上部第1ローラー16bを+Z方向に押し上げる。次いで原稿Pは、ばね24のばね力に抗して上部読取センサー20Aを+Z方向に押し上げる。そして更に原稿Pは、ばね25のばね力に抗して上部第2ローラー17bを+Z方向に押し上げる。
同様に原稿Pが第2搬送ローラー対17に対し+Y方向から-Y方向に搬送される場合、原稿Pはばね25のばね力に抗して上部第2ローラー17bを+Z方向に押し上げる。次いで原稿Pは、ばね24のばね力に抗して上部読取センサー20Aを+Z方向に押し上げる。そして更に原稿Pは、ばね23のばね力に抗して上部第1ローラー16bを+Z方向に押し上げる。
【0060】
この様に原稿Pは上部読取センサー20Aと下部読取センサー20Bとの間を通る際、ばね24のばね力に抗して上部読取センサー20Aを+Z方向に押し上げる為、読み取り動作の途中で上部読取センサー20Aが+Z方向に大きく押し上げられたり、或いは-Z方向に大きく下がったりすると、上部読取センサー20Aが暴れ、読み取り画像の乱れが生じる場合がある。
制御部40はこの様な問題に鑑み、以降説明する画像補正制御を実行可能である。
【0061】
尚、
図4において符号Psは原稿Pの一例である冊子を示している。符号Ps1は冊子Psの見開き1ページのうち+Y方向のページであり、符号Ps2は見開き1ページのうち-Y方向のページであって、ページPs1とページPs2との間には段差Gが存在する。ページPs1の側の厚みとページPs2の側の厚みが同じであれば、段差Gは殆ど無いかあっても僅かであるが、ページPs1の側の厚みとページPs2の側の厚みが異なるほど、段差Gは大きくなる。またページPs1の側の厚みとページPs2の側の厚みが同じであっても、冊子Psの背表紙の部分が段差Gとなる場合もある。この様な段差Gが上部読取センサー20Aと下部読取センサー20Bとの間に入り込む際、或いは上部読取センサー20Aと下部読取センサー20Bとの間から抜け出る際に、上部読取センサー20Aが暴れ、読み取り画像の乱れが生じる場合がある。
尚、本実施形態では下部読取センサー20Bによって読み取る面は、下部読取センサー20Bが固定的に設けられていることから、上述した読み取り画像の乱れは殆ど生じない。
【0062】
図5は、制御部40が実行する制御である。以下では一例として搬送される原稿Pを冊子Psとする。尚、
図5において給送ローラー14や分離ローラー15の制御については図示を省略している。
制御部40は読み取り実行指令を受けると、搬送モーター46を正転させる(ステップS101)。これにより冊子Psは+Y方向に搬送される。制御部40は搬送モーター46を正転させながら読み取り動作を行う(ステップS102)。この読み取り動作を第1読み取り動作とする。
【0063】
図7は、第1読み取り動作において上部読取センサー20Aから送信される画像データに基づいて生成される画像の領域を示しており、符号Ds1は冊子Psの見開き1ページ全体の画像領域を示している。画像領域Ds1は画像データにより形成される。尚、以降において画像領域と画像データは同義のものとして扱うこととする。例えば、画像領域Ds1は画像データDs1と言い換えても良いものとする。
符号A11は、冊子Psの見開き1ページのうち+Y方向のページPs1を第1読み取り動作(ステップS102)によって読み取った際の画像領域である。また符号A12は、冊子Psの見開き1ページのうち-Y方向のページPs2を第1読み取り動作(ステップS102)によって読み取った際の画像領域である。
ページPs1とページPs2との間には上述した様に段差Gが存在する為(
図4参照)、画像領域A12には、上述した上部読取センサー20Aの暴れに伴う画像乱れ領域Ae1が含まれることとなる。
【0064】
図5に戻り、制御部40は画像補正制御を実行する必要のない場合(ステップS103においてNo)、冊子Psをそのまま排出し(ステップS108)、搬送モーター46を停止させる(ステップS109)。画像補正制御を実行する必要のある場合(ステップS103においてYes)、ステップS104に進む。
尚、画像補正制御を実行する必要の判断の具体例については、後に改めて説明する。
【0065】
本実施例においてステップS104~S106は、画像補正制御を構成する。
制御部40は先ず、冊子Psの-Y方向の端部が上部読取センサー20Aと第2搬送ローラー対17との間に位置する状態で、搬送モーター46を逆転させる(ステップS104)。これにより冊子Psは、-Y方向に搬送(逆走)される。そして制御部40は冊子Psを-Y方向に搬送しながら読み取り動作を行う(ステップS105)。この読み取り動作を第2読み取り動作とする。
【0066】
図8は、第2読み取り動作において上部読取センサー20Aから送信される画像データに基づいて生成される画像の領域を示しており、符号Ds2は冊子Psの見開き1ページ全体の画像領域を示している。画像領域Ds2は画像データにより形成される。
符号A21は、冊子Psの見開き1ページのうち+Y方向のページPs1を第2読み取り動作(ステップS105)によって読み取った際の画像領域である。また符号A22は、冊子Psの見開き1ページのうち-Y方向のページPs2を第2読み取り動作(ステップS105)によって読み取った際の画像領域である。
ページPs1とページPs2との間には上述した様に段差Gが存在する為(
図4参照)、画像領域A21には、上述した上部読取センサー20Aの暴れに伴う画像乱れ領域Ae2が含まれることとなる。
【0067】
図5に戻り、制御部40は第2読み取り動作(ステップS105)を実行した後、画像データの合成処理を行う(ステップS106)。合成処理は、第1読み取り動作で取得した画像データの一部である第1領域と第2読み取り動作で取得した画像データの一部である第2領域とを合成することで一ページの画像データを取得する処理である。
合成処理は一例として第1読み取り動作で取得した画像データの一部である画像領域A11(
図7参照)を第1領域とし、第2読み取り動作で取得した画像データの一部である画像領域A22(
図8参照)を第2領域として、
図9に示す様に画像領域A11と画像領域A22とを合成して画像領域Ds0を生成する。これにより
図7に示した画像乱れ領域Ae1や
図8に示した画像乱れ領域Ae2を除外し、良好な見開き1ページの画像領域Ds0を得ることができる。
【0068】
尚、上述した合成処理は一例であり、種々の方法を採用できることは言うまでもない。例えば第1読み取り動作で取得した画像領域Ds1(
図7参照)から画像乱れ領域Ae1を除いた領域を第1領域とし、第2読み取り動作で取得した画像領域Ds2(
図8参照)のうち画像乱れ領域Ae1に対応する領域を第2領域として、第1領域と第2領域とを合成しても良い。
また同様に第1読み取り動作で取得した画像領域Ds1(
図7参照)のうち第2読み取り動作で取得した画像領域Ds2(
図8参照)の画像乱れ領域Ae2に対応する領域を第1領域とし、第2読み取り動作で取得した画像領域Ds2(
図8参照)から画像乱れ領域Ae2を除いた領域を第2領域として、第1領域と第2領域とを合成しても良い。
以上の様に第1領域は、Y方向に沿って連続した領域であっても連続していない領域であっても良いし、第2領域も同様にY方向に沿って連続した領域であっても連続していない領域であっても良い。
また画像乱れ領域Ae1、Ae2は、+Y方向と-Y方向とにそれぞれ正常読み取り領域を或る程度含み、余裕を持った領域であっても良い。
【0069】
次いで、画像乱れ領域Ae1、Ae2の位置、大きさの決定方法の一例について
図6を参照して説明する。
図6において縦軸は制御部40が搬送モーター46に印加するパルス信号のデューティー比を示しており、便宜上搬送モーター46を正転駆動する際のデューティー比をDuty(+)で示し、搬送モーター46を逆転駆動する際のデューティー比をDuty(-)で示している。また+Sh1は搬送モーター46を正転駆動する際のデューティー比の閾値であり、-Sh1は搬送モーター46を逆転駆動する際のデューティー比の閾値である。閾値+Sh1の絶対値と閾値-Sh1の絶対値は本実施例では同じであり、以下ではこの絶対値を第1閾値Sh1と称する。
尚、デューティー比がジャム閾値を超えた場合にジャムであると判定して原稿搬送を中止する制御を採用する場合、第1閾値Sh1はジャム閾値よりも小さい値に設定される。
【0070】
ここでデューティー比について説明する。制御部40は、搬送モーター46に設けられているロータリーエンコーダー(不図示)から出力される検出信号に基づき、搬送モーター46の回転数(回転速度)が所定の目標速度となるようにフィードバック制御する。ここで採用するフィードバック制御とは、例えば、PID制御である。このとき制御部40は、搬送モーター46に印加するパルス信号をパルス幅変調(PWM)することにより、搬送モーター46へ入力される電流を調整して搬送モーター46の回転速度を制御する。
そしてデューティー比とは、上述したPWMされるパルス信号の一周期内のオン期間の比率を言う。仮に、原稿搬送中に第1搬送ローラー対16や第2搬送ローラー対17を駆動する負荷が上昇すると、上記フィードバック制御下で上記デューティー比も上がることとなる。従って、上記デューティー比は、第1搬送ローラー対16や第2搬送ローラー対17を駆動する際の負荷を示す負荷値の一例となる。
【0071】
図6のタイミングt1で、搬送モーター46の正転駆動が開始される。冊子Psは+Y方向に搬送され、タイミングt2で段差Gが上部読取センサー20Aと下部読取センサー20Bとの間に入り込み、タイミングt3でデューティー比が第1閾値Sh1を超える。次いでタイミングt4で、冊子Psの段差Gが上部読取センサー20Aと下部読取センサー20Bとの間から抜ける。
この場合第1読み取り動作における画像乱れ領域Ae1(
図7参照)は、デューティー比が上昇を開始したタイミングt2から後の所定期間で発生することとなる。ここでの所定期間は、予め実験により求めることができ、メモリ43(
図3参照)等の記憶部に保存され、読み出すことができる。一例として画像乱れ領域Ae1は、タイミングt2を起点として所定時間経過するまでの画像データとすることができる。
よって画像領域Ds1(
図7参照)における画像乱れ領域Ae1の位置と大きさは、第2原稿検出部32(
図2参照)の検出情報及び搬送モーター46の駆動量から把握される冊子Psの位置(原稿搬送経路Tにおける位置)及びサイズと、デューティー比の変化と、をもとに把握することができる。
【0072】
画像補正制御を行う場合、
図6のタイミングt5で、搬送モーター46の逆転駆動が開始される。冊子Psは-Y方向に搬送され、タイミングt6で段差Gが上部読取センサー20Aと下部読取センサー20Bとの間に入り込み、タイミングt7でデューティー比の絶対値が第1閾値Sh1を超える。次いでタイミングt8で、冊子Psの段差Gが上部読取センサー20Aと下部読取センサー20Bとの間から抜ける。
この場合第2読み取り動作における画像乱れ領域Ae2(
図8参照)は、デューティー比が上昇を開始したタイミングt6から後の所定期間で発生することとなる。ここでの所定期間も上述したのと同様に、予め実験により求めることができ、メモリ43(
図3参照)等の記憶部に保存され、読み出すことができる。一例として画像乱れ領域Ae2は、タイミングt6を起点として所定時間経過するまでの画像データとすることができる。
よって画像領域Ds2(
図8参照)における画像乱れ領域Ae2の位置と大きさは、第2原稿検出部32(
図2参照)の検出情報及び搬送モーター46の駆動量から把握される冊子Psの位置(原稿搬送経路Tにおける位置)及びサイズと、デューティー比の変化と、をもとに把握することができる。
【0073】
以上の様に制御部40は、デューティー比が第1閾値Sh1を超えたタイミングに基づき、第1領域および第2領域を決定することができ、この場合画像乱れの生じた範囲を適切に除外することができる。
【0074】
続いて
図5のステップS103の判断例について説明する。
上述した様に搬送モーター46を駆動する際のデューティー比は、冊子Psの段差Gが上部読取センサー20Aと下部読取センサー20Bとの間に入り込む際に増加する。上述した例ではデューティー比の閾値である第1閾値Sh1を設定しており、ステップS103では、デューティー比が第1閾値Sh1を超えた場合に、画像補正制御の実行が必要と判断することができる。
この様に搬送モーター46の負荷を示す負荷値の一例であるデューティー比を利用して画像補正制御を実行すれば、画像乱れが生じたことを既存の手段で検出することができ、装置のコストアップを抑制できる。
【0075】
また
図5のステップS103の判断は、第1原稿検出部31を利用して行うこともできる。上述した様に本実施形態において第1原稿検出部31は発光部31aと受光部31bとを備えた光学センサーである。
発光部31aからの検出光の発光強度は制御部40の制御のもと変更可能である。
図10において横軸Eaは発光部31aからの検出光の発光強度であり、縦軸Vpは受光部31bが受光する検出光の強度に基づく受光電圧である。
丸で示すプロットは原稿Pのうち第1部位Pq1の場合であり、四角で示すプロットは原稿Pのうち第2部位Pq2の場合である。第2部位Pq2の厚みは第1部位Pq1より厚い。また発光強度Ea2は、発光強度Ea1より強い。
図示する様に発光強度Eaを増やした際の受光電圧Vpの変化は、第1部位Pq1が、第2部位Pq2よりも大きくなる傾向がある。
本実施例ではこの様な性質を利用してステップS103の判断を行う。
【0076】
具体的には、制御部40は
図5のステップS103において、
図11に示す処理を行う。先ず、第1原稿検出部31が原稿先端を検出すると(ステップS201においてYes)、発光部31aでの発光強度を第1強度Ea1とした場合の受光部31bでの受光電圧を検出する第1検出処理を行う(ステップS202)。次いで、発光部31aでの発光強度を第1強度Ea1よりも強い第2強度Ea2とした場合の受光部31bでの受光電圧を検出する第2検出処理を実行する(ステップS203)。そして第1検出処理での受光電圧と第2検出処理での受光電圧との差Rを取得する(ステップS204)。
制御部40は取得した差Rを記憶し、そして差Rを取得する毎に差Rの最大値と最小値との差を更新し、差Rの最大値と最小値との差が第2閾値を超えた場合(ステップS205においてYes)、厚みの変化が大きい部位が存在する原稿であると判断して画像補正制御ありとする(ステップS209)。第1検出処理での受光電圧と第2検出処理での受光強度との差Rは、一例として
図10のR1、R2で示されている。
【0077】
差Rの最大値と最小値との差が第2閾値を超えない場合は(ステップS205においてNo)、所定時間のウェイトを行い(ステップS206)、第1原稿検出部31が原稿後端を検出していない場合には(ステップS207においてNo)、ステップS202以降を再び実施する。第1原稿検出部31が原稿後端を検出した場合には(ステップS207においてYes)、画像補正制御なしとする(ステップS208)。
以上の様に既存の構成要素である第1原稿検出部31を利用して画像補正制御を行う必要の有無を判断する為、画像補正制御を行う必要の有無を判断する為の専用の検出手段を設ける必要がなく、装置のコストアップを抑制できる。
【0078】
尚、上述した様に第1原稿検出部31において検出光の強度を変化させることで原稿厚を把握できる為、把握した原稿厚を他の制御に用いても良い。一例として上述したデューティー比がジャム閾値を超えたことをもってジャム発生と判断する処理を行う場合、把握した原稿厚に応じてジャム閾値を切り換えても良い。
【0079】
また
図5のステップS103の判断は、変位ローラーの一例である上部第1ローラー16bの変位を検出することでも行うことができる。
図12において符号49は上部第1ローラー16bとともに変位する被検出部であり、符号48は被検出部49の変位を検出する変位検出部である。被検出部49は一例としてリニアスケールであり、変位検出部48が一例としてリニアスケールを検出するエンコーダーである。
この場合制御部40が行う制御について
図13を参照して説明する。制御部40は第1搬送ローラー対16に原稿Pが到達したかを例えば第2原稿検出部32(
図2参照)の検出情報をもとに監視し(ステップS301)、第1搬送ローラー対16に原稿Pが到達した場合(ステップS301においてYes)、変位検出部48の検出情報をもとに、上部第1ローラーの変位量が第3閾値を超えるか否かを判断する(ステップS302)。
【0080】
その結果上部第1ローラーの変位量が第3閾値を超えた場合(ステップS302においてYes)、厚みの変化が大きい部位が存在する原稿Pであると判断して画像補正制御ありとする(ステップS305)。
上部第1ローラーの変位量が第3閾値を超えずに、第1搬送ローラー対16から原稿Pが抜けた場合(ステップS302においてNo、ステップS303においてYes)、画像補正制御なしとする(ステップS304)。
この様に制御部40は変位検出部48の検出情報をもとに、上部第1ローラー16bと下部第1ローラー16aとの間隔の変化量が第3閾値を超えた場合に、画像補正制御ありと判断する。これにより、画像補正制御を行う必要の有無を精度良く判断することができる。
【0081】
尚、本実施例でも変位検出部48の検出情報をもとに原稿厚を把握できる為、把握した原稿厚を他の制御に用いても良い。一例として上述したデューティー比がジャム閾値を超えたことをもってジャム発生と判断する処理を行う場合、把握した原稿厚に応じてジャム閾値を切り換えても良い。
【0082】
また
図5のステップS103の判断は、上部読取センサー20Aによって背景板22Bを読み取ることでも行うことができる。
図示は省略するが、上部読取センサー20Aと背景板22Bは、幅方向(X軸方向)において最大サイズの原稿より更に外側の位置まで延設されており、原稿の読み取り中においても、上部読取センサー20Aが背景板22Bを読み取ることができる。
ここで厚さが第1の厚さである原稿の第1部位と、厚さが第1の厚さより厚い原稿の第2部位とがある場合、背景板22Bを読み取った場合の輝度は、第1部位が通過する場合と前記第2部位が通過する際とで異なることとなる。従って輝度の変化が大きい場合、厚みの変化が大きい原稿Pが上部読取センサー20Aを通過したこととなり、画像乱れが生じる虞が高いと言える。本実施例ではこの性質を利用する。
この場合制御部40が行う制御について
図14を参照して説明する。制御部40は上部読取センサー20Aに原稿Pが到達したかを例えば第2原稿検出部32(
図2参照)の検出情報をもとに監視し(ステップS401)、上部読取センサー20Aに原稿が到達した場合(ステップS401においてYes)、上部読取センサー20Aによって背景板22Bを読み取った際の輝度の変化量が第4閾値を超えるか否かを監視する(ステップS402)。
【0083】
その結果背景板22Bを読み取った際の輝度の変化量が第4閾値を超えた場合(ステップS402においてYes)、厚みの変化が大きい部位が存在する原稿Pであると判断して画像補正制御ありとする(ステップS405)。
背景板22Bを読み取った際の輝度の変化量が第4閾値を超えずに、上部読取センサー20Aから原稿Pが抜けた場合(ステップS402においてNo、ステップS403においてYes)、画像補正制御なしとする(ステップS404)。
この様に制御部40は、第1読み取り動作の実行中に背景板22Bを読み取り、輝度の変化量が第4閾値を超えた場合に、画像補正制御を実行する為、画像補正制御を行う必要の有無を判断する為の専用の検出手段を設ける必要がなく、装置のコストアップを抑制できる。
【0084】
また
図5のステップS103の判断は、制御部40が原稿種類に関する情報を取得した場合、原稿種類に基づいて行うことができる。例えば操作パネル7には、原稿Pの種類を設定可能なユーザインタフェースを表示可能であり、ユーザーは操作パネル7を介して原稿Pの種類を設定することができる。原稿Pの種類には、冊子が含まれる。そして制御部40は、原稿Pの種類が冊子の場合、画像補正制御を実行する。
この場合、画像補正制御を行う必要の高い冊子を読み取る場合に、確実に画像補正制御を実行することができる。
尚、原稿Pの種類は、スキャナー1が備える操作パネル7に限られず、外部コンピュータ100において動作するドライバーを介して設定されても良い。
【0085】
また
図5のステップS103の判断は、ユーザー指示に基づいて行うことができる。
一例として制御部40は、第1読み取り動作の実行後、原稿Pの搬送を一時停止して、第1読み取り動作により読み取った原稿Pの画像を操作パネル7に表示するプレビューモードを実行可能である。
図15はプレビューモードによって操作パネル7に表示されるユーザインタフェースの一例であり、第1読み取り動作により読み取った原稿Pの画像(上部読取センサー20Aによって読み取った画像)がプレビュー画像として表示される。そして「原稿を逆送りして画像補正を行いますか?」のメッセージとともに「はい」及び「いいえ(原稿排出)」を選択するボタンが表示される。ユーザーはプレビュー画像をもとに、読み取り結果が良好であれば「いいえ(原稿排出)」を選択する。この場合制御部40は、画像補正制御を行わずに原稿Pをそのまま排出する。
ユーザーはプレビュー画像をもとに、読み取り結果が不良であれば「はい」を選択する。この場合制御部40は、画像補正制御を行う。
この様に制御部40はプレビューモードにおいて、操作パネル7に原稿の排出を行うか或いは画像補正制御を行うかをユーザーに選択させるユーザインタフェースを表示させることから、ユーザーは画像補正制御を行うか否かを選択することができ、ユーザビリティを向上させることができる。
尚、上記ユーザインタフェースは、スキャナー1が備える操作パネル7に限られず、外部コンピュータ100が備える表示部に表示されても良い。
【0086】
続いて画像乱れを抑制する為のその他の手段について説明する。
先ず本実施形態において、第1搬送ローラー対16を構成する二つのローラーは、いずれも搬送モーター46によって駆動され、更に第2搬送ローラー対17を構成する二つのローラーも、いずれも搬送モーター46によって駆動される。このことにより、原稿の搬送力が向上し、搬送精度の低下による読み取り画像の乱れを抑制できる。
但し第1搬送ローラー対16と第2搬送ローラー対17のうち、いずれか一方のローラー対を構成する二つのローラーが駆動される構成であっても良いし、或いは第1搬送ローラー対16と第2搬送ローラー対17の双方が、ローラー対を構成する二つのローラーのうち一方のみが駆動される構成であっても良い。
【0087】
また
図16に示す様に変位ローラーとしての上部第1ローラー16bと上部読取センサー20Aとが係わり合う様に構成しても良い。
図16において上部読取センサー20Aには、被係合部50が設けられている。そして上部第1ローラー16bには、上部第1ローラー16bと一体に変位する部位であって被係合部50と係合可能な係合部51が設けられている。そして
図16(A)から
図16(B)への変化で示す様に、上部第1ローラー16bが下部第1ローラー16aから所定量以上離間する場合、係合部51が被係合部50に当接し、上部読取センサー20Aを上部第1ローラー16bとともに変位させる。
この様な構成によれば、原稿Pが上部読取センサー20Aを通過する際に原稿Pが通過する為の隙間が大きくなり、これにより上部読取センサー20Aが暴れることに伴う読み取り画像の乱れを抑制できる。
【0088】
また
図17に示す様に上部読取センサー20Aに対し-Y方向に、+Y方向に搬送される原稿Pを上部読取センサー20Aと対向する位置へ案内する案内部53を設けても良い。案内部53は、原稿搬送経路Tに対し進退する方向に変位可能であるとともに、上部読取センサー20Aと一体に設けられる。尚、案内部53の-Y方向端部には、原稿Pを案内部53の下側に案内するガイド面53aが形成されている。
この様な構成によれば、原稿Pが上部読取センサー20Aを通過する際に原稿Pが通過する為の隙間が大きくなり、これにより上部読取センサー20Aが暴れることに伴う読み取り画像の乱れを抑制できる。
【0089】
本発明は上記において説明した各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
例えば、上述した実施例において第1読み取り動作では、原稿Pは+Y方向に搬送され、第2読み取り動作では、原稿Pは-Y方向に搬送されるが、第1読み取り動作において原稿Pが-Y方向に搬送され、第2読み取り動作において原稿Pが+Y方向に搬送されても良い。また原稿Pは、原稿載置部11から+Y方向に給送され、排出口18から+Y方向に排出される形態に限られず、排出口18から-Y方向に送り込まれ、そして排出口18から+Y方向に排出されても良い。
【0090】
また例えば、上記実施例では画像補正制御(
図5のステップS104~S106)を制御部40が行ったが、画像補正制御の少なくとも一部を外部コンピュータ100において動作するスキャナードライバーやアプリケーションプログラム等のプログラムが実行しても良い。例えば制御部40が画像データ(画像補正前の画像データ)を外部コンピュータ100に送信し、外部コンピュータ100において動作するスキャナードライバーやアプリケーションプログラム等のプログラムが、スキャナー1から取得した画像データに対しステップS106の合成処理を行っても良い。更に一例として、
図5に示すステップS105とステップS106との間で制御部40がステップS102、S105により取得した画像データ(画像補正前の画像データ)を外部コンピュータ100に送信し、
図5に示す各ステップのうちステップS106のみを外部コンピュータ100が実行し、その他のステップを制御部40が実行しても良い。またその際、補正後の画像データを外部コンピュータ100から制御部40へ送信しても良い。
【符号の説明】
【0091】
1…スキャナー(画像読取装置)、2…装置本体、3…下ユニット、4…上ユニット、5…排紙トレイ、6…給送口、7…操作パネル、8…第1ペーパーサポート、9…第2ペーパーサポート、11…原稿載置部、12A、12B…エッジガイド、14…給送ローラー、15…分離ローラー、16…第1搬送ローラー対、16a…下部第1ローラー、16b…上部第1ローラー、17…第2搬送ローラー対、17a…下部第2ローラー、17b…上部第2ローラー、18…排出口、20A…上部読取センサー、20B…下部読取センサー、21A、21B…イメージセンサー、22A、22B…背景板、23、24、25…ばね、30…重送検出部、30a…超音波発信部、30b…超音波受信部、31…第1原稿検出部、31a…発光部、31b…受光部、32…第2原稿検出部、40…制御部、41…CPU、42…ROM、43…メモリ、44…プログラム、45…給送モーター、46…搬送モーター、48…変位検出部、49…被検出部、50…被係合部、51…係合部、53…案内部、53a…ガイド面