(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063376
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ウイルス・微生物防除剤、樹脂添加剤、およびウイルス・微生物の防除方法
(51)【国際特許分類】
A01N 43/40 20060101AFI20240502BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240502BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20240502BHJP
A61L 2/16 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A01N43/40 101K
A01P1/00
A01N25/00 101
A61L2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171271
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 孝之
(72)【発明者】
【氏名】二ツ亀 雅文
(72)【発明者】
【氏名】阿部 加奈子
【テーマコード(参考)】
4C058
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB07
4C058JJ08
4H011AA04
4H011BA04
4H011BB09
4H011BC03
4H011DA13
4H011DC05
4H011DF03
(57)【要約】
【課題】低温安定性に優れるウイルス・微生物防除剤、樹脂添加剤、およびウイルス・微生物の防除方法を提供する。
【解決手段】本発明のウイルス・微生物防除剤は、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)と、C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルとを含有し、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)が、40質量%未満である。本発明の樹脂添加剤は、上記ウイルス・微生物防除剤を含む。本発明のウイルス・微生物の防除方法は、上記ウイルス・微生物防除剤を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)と、
C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルとを
含有し、
前記N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)が、40質量%未満である、ウイルス・微生物防除剤。
【請求項2】
前記C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルが、エチレングリコールモノフェニルエーテルである、請求項1に記載のウイルス・微生物防除剤。
【請求項3】
前記N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)が、30質量%以下である、請求項1に記載のウイルス・微生物防除剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のウイルス・微生物防除剤を含む、樹脂添加剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のウイルス・微生物防除剤を用いる、ウイルス・微生物の防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス・微生物防除剤、樹脂添加剤、およびウイルス・微生物の防除方法、詳しくは、ウイルス、細菌、かび(カビ)、酵母、および藻の防除剤として用いられるウイルス・微生物防除剤、そのウイルス・微生物防除剤を含む樹脂添加剤、およびそのウイルス・微生物防除剤を用いるウイルス・微生物の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の工業製品には、細菌、かび、酵母、藻などの有害な微生物が繁殖しやすく、生産性や品質の低下、悪臭の発生などの原因となっている。そのため、このような有害微生物の繁殖を防除すべく、工業製品には、抗菌、防かび、防腐、および防藻効果を発現する種々の微生物防除剤を添加することが広く知られている。
【0003】
このような微生物防除剤として、例えば、ビス四級アンモニウム塩化合物が、広い抗菌スペクトルを有し、優れた防除効果を発現することが報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の微生物防除剤では、低温安定性が不十分な場合がある。
【0006】
本発明は、低温安定性の向上を図ることができるウイルス・微生物防除剤、ウイルス・微生物防除剤を含む樹脂添加剤、およびウイルス・微生物防除剤を用いるウイルス・微生物の防除方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)と、C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルとを含有し、前記N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)が、40質量%未満である、ウイルス・微生物防除剤を含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、前記C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルが、エチレングリコールモノフェニルエーテルである、上記[1]に記載のウイルス・微生物防除剤を含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)が、30質量%以下である、上記[1]または[2]に記載のウイルス・微生物防除剤を含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれかに記載のウイルス・微生物防除剤を含む、樹脂添加剤を含んでいる。
【0011】
本発明[5]は、上記[1]~[3]のいずれかに記載のウイルス・微生物防除剤を用いる、ウイルス・微生物の防除方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウイルス・微生物防除剤は、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)と、C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルとを含有し、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)が、40質量%未満である。そのため、このようなウイルス・微生物防除剤によれば、低温安定性に優れる。
【0013】
また、本発明の樹脂添加剤は、上記ウイルス・微生物防除剤を含んでいる。そのため、このような樹脂添加剤によれば、低温安定性に優れる。
【0014】
本発明のウイルス・微生物の防除方法は、上記ウイルス・微生物防除剤を用いている。そのため、このようなウイルス・微生物の防除方法によれば、上記ウイルス・微生物防除剤が、低温安定性に優れるため、使用時まで上記ウイルス・微生物防除剤を低温で安定的に保管でき、ウイルス・微生物の防除をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のウイルス・微生物防除剤は、有効成分として、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)を含有している。
【0016】
N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)のアルキレン基としては、例えば、炭素数1~18のアルキレン基が挙げられる。
【0017】
炭素数1~18のアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、イソデシレン、ドデシレン、テトラデシレン、ヘキサデシレン、およびオクタデシレンが挙げられる。
【0018】
N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)のアルキレン基として、好ましくは、炭素数4~12のアルキレン基、より好ましくは、炭素数6~8のアルキレン基、さらに好ましくは、ヘキシレンが挙げられる。ヘキシレンは、好ましくは、ヘキサメチレンである。
【0019】
N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)のアルキル基としては、例えば、炭素数が1~18のアルキル基が挙げられる。
【0020】
炭素数が1~18のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、n-ヘキシル、iso-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、へプタデシル、およびオクタデシルが挙げられる。
【0021】
炭素数が1~18のアルキル基として、好ましくは、炭素数が8~12のアルキル基、より好ましくは、デシルが挙げられる。
【0022】
N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)のピリジニウム塩としては、例えば、ブロマイド(ピリジニウムブロマイド)、アイオダイド(ピリジニウムアイオダイド)、およびアセテート(ピリジニウムアセテート)が挙げられる。
【0023】
N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)のピリジニウム塩として、好ましくは、ブロマイド(ピリジニウムブロマイド)、およびアセテート(ピリジニウムアセテート)、より好ましくは、ブロマイド(ピリジニウムブロマイド)が挙げられる。
【0024】
N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)の具体例としては、例えば、N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウム塩)が挙げられる。
【0025】
N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウム塩)としては、例えば、N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウムブロマイド)、N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウムアイオダイド)、およびN,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウムアセテート)が挙げられる。
【0026】
N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウム塩)として、好ましくは、N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウムブロマイド)が挙げられる。
【0027】
これらN,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)は、単独または2種以上併用してもよい。
【0028】
また、本発明に用いられるN,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)は、市販品を用いることもでき、例えば、N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウムブロマイド)(ダイマー38、イヌイ社製)、N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウムアセテート)(ダイマー38A、イヌイ社製)が挙げられる。
【0029】
N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)の含有割合は、ウイルス・微生物防除剤の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、4質量%以上、さらに好ましくは、5質量%以上、特に好ましくは、10質量%以上であり、最も好ましくは、15質量%以上であり、また、40質量%未満、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下である。上記上限以上であれば、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)は、C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルに完全に溶解できない。また、本発明のウイルス・微生物防除剤は、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)が、高濃度(例えば、5質量%以上)であっても、C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルに溶解でき、その後の低温安定性に優れる。その結果、使用時まで安定的に貯蔵でき、使用時に希釈して使用することができる。
【0030】
本発明のウイルス・微生物防除剤では、低温安定性の向上を図るために、溶剤として、C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルを含有している。
【0031】
C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル(2-フェノキシエタノール)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(1-フェノキシ-2-プロパノールおよび3-フェノキシ-1-プロパノール)、およびブチレングリコールモノフェニルエーテル(4-フェノキシ-1-ブタノール)が挙げられる。
【0032】
C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルとして、好ましくは、エチレングリコールモノフェニルエーテル、およびプロピレングリコールモノフェニルエーテル(好ましくは、1-フェノキシ-2-プロパノール)、より好ましくは、エチレングリコールモノフェニルエーテルが挙げられる。
【0033】
C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルは、単独または2種以上併用してもよい。
【0034】
C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルの含有割合は、ウイルス・微生物防除剤の総量に対して、例えば、好ましくは、60質量%超過、より好ましくは、70質量%以上であり、さらに好ましくは、75質量%以上であり、特に好ましくは、80質量%以上であり、また、例えば、99.9質量%以下、より好ましくは、99質量%以下、さらに好ましくは、96質量%以下、特に好ましくは、90質量%以下、最も好ましくは、85質量%以下である。
【0035】
C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルの含有割合は、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)100質量部に対して、例えば、150質量部超過、より好ましくは、230質量部以上、さらに好ましくは、300質量部以上、特に好ましくは、400質量部以上、また、例えば、99900質量部以下、好ましくは、9900質量部以下、より好ましくは、2400質量部以下、さらに好ましくは、900質量部以下、特に好ましくは、560質量部以下である。
【0036】
また、C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルの含有割合は、ウイルス・微生物防除剤において、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)および必要により含有される添加剤(後述)の残部である。
【0037】
本発明のウイルス・微生物防除剤は、その目的および用途によって、公知の添加剤、例えば、界面活性剤、他の防藻剤および/または防かび剤、酸化防止剤、および光安定剤を含有してもよい。
【0038】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、およびアニオン性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤として好ましくは、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、エーテル型非イオン性界面活性剤が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンが挙げられる。ポリオキシエチレン誘導体として好ましくは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルが挙げられる。
【0039】
これら界面活性剤は、単独または2種以上併用してもよい。
【0040】
これら界面活性剤は、市販品として入手可能であり、より具体的には、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルとして、例えば、エマルゲン(花王社製、以下同じ)A-60、エマルゲンA-90、エマルゲンA-500が挙げられる。
【0041】
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、例えば、エマルゲン705、エマルゲン707、エマルゲン709が挙げられる。
【0042】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、例えば、エマルゲンLS-110、およびエマルゲンLS-114が挙げられる。
【0043】
ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルとして、例えば、エマルゲンB-66が挙げられる。
【0044】
界面活性剤の含有割合は、ウイルス・微生物防除剤に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上、さらに好ましくは、1.5質量%以上、特に好ましくは、1.75質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、7.5質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下、特に好ましくは、4質量%以下、最も好ましくは、3質量%以下である。
【0045】
界面活性剤の含有割合は、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、2.5質量部以上、より好ましくは、5.0質量部以上、さらに好ましくは、7.5質量部以上、特に好ましくは、8.75質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、37.5質量部以下、さらに好ましくは、25質量部以下、特に好ましくは、20質量部以下、最も好ましくは、15質量部以下である。
【0046】
本発明のウイルス・微生物防除剤は、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)、C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテル、および必要により添加剤を配合して、液剤として得ることができる。
【0047】
本発明のウイルス・微生物防除剤は、優れた、抗ウイルス、抗菌、防かび、防腐、防藻作用などを発現し、ウイルス、細菌、かび、酵母、藻などに対する防除剤として用いることができる。しかも、本発明のウイルス・微生物防除剤は、C2-4アルキレングリコールモノフェニルエーテルを含有するため、低温安定性に優れる。とりわけ、本発明のウイルス・微生物防除剤は、N,N’-アルキレン-ビス(4-カルバモイル-1-アルキルピリジニウム塩)が高濃度(5質量%以上)の場合であっても、低温安定性に優れる。
【0048】
本発明のウイルス・微生物防除剤は、各種工業製品の樹脂に添加する樹脂添加剤として、好適に用いられる。すなわち、樹脂添加剤は、ウイルス・微生物防除剤を含む。
【0049】
また、本発明の樹脂添加剤が添加される樹脂としては、例えば、カゼイン、澱粉糊、にかわ、塗工紙、紙用塗工液、表面サイズ剤、接着剤、合成ゴムラテックス、インキ、ポリビニルアルコールフィルム、塩化ビニルフィルム、セメント混和剤、シーリング剤、目地剤、樹脂エマルション、および塗料などが挙げられる。
【0050】
なお、本発明のウイルス・微生物防除剤または樹脂添加剤は、その適用対象に応じて添加量を適宜決定すればよい。本発明のウイルス・微生物防除剤または樹脂添加剤は、微生物防除剤として用いる場合、例えば、1mg(全有効成分)/kg(製品)以上、好ましくは、5mg(全有効成分)/kg(製品)以上であり、また、例えば、50000mg(全有効成分)/kg(製品)以下、好ましくは、10000mg(全有効成分)/kg(製品)以下の濃度として用いることができる。本発明のウイルス・微生物防除剤または樹脂添加剤は、ウイルス防除剤(抗ウイルス剤)として用いる場合、例えば、1mg(全有効成分)/kg(製品)以上、好ましくは、5mg(全有効成分)/kg(製品)以上であり、また、例えば、500000mg(全有効成分)/kg(製品)以下、好ましくは、100000mg(全有効成分)/kg(製品)以下の濃度として用いることができる。ウイルス・微生物防除剤または樹脂添加剤が、高濃度(5質量%以上)の場合、適宜希釈して用いることができる。
【0051】
本発明のウイルス・微生物の防除方法は、上記ウイルス・微生物防除剤を用いる。
【0052】
本発明の本発明のウイルス・微生物の防除方法では、その適用対象に応じて、上記ウイルス・微生物防除剤の添加量を適宜決定すればよい。本発明のウイルス・微生物防除の方法では、上記ウイルス・微生物防除剤を用いる場合、製品に対する、全有効成分の割合((全有効成分)/kg(製品))は、例えば、上記した割合で用いることができる。
【実施例0053】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0054】
実施例1
6Kガラスビンに、ダイマー38(99重量%、イヌイ社製)4.0g、およびエチレングリコールモノフェニルエーテル16.0gを秤量した。室温(25℃)で撹拌して溶解し、20gの液剤を得た。
【0055】
実施例2
6Kガラスビンに、ダイマー38(99重量%、イヌイ社製)6.0g、およびエチレングリコールモノフェニルエーテル14.0gを秤量した。室温(25℃)で撹拌して溶解し、20gの液剤を得た。
【0056】
実施例3
6Kガラスビンに、ダイマー38(99重量%、イヌイ社製)4.0g、およびプロピレングリコール-1-モノフェニルエーテル(1-フェノキシ-2-プロパノール)16.0gを秤量した。室温(25℃)で撹拌して溶解し、20gの液剤を得た。
【0057】
実施例4
6Kガラスビンに、ダイマー38(99重量%、イヌイ社製)4.0g、エチレングリコールモノフェニルエーテル15.6g、およびエマルゲンLS-110(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、花王社製)0.4gを秤量した。室温(25℃)で撹拌して溶解し、20gの液剤を得た。
【0058】
実施例5
6Kガラスビンに、ダイマー38(99重量%、イヌイ社製)4.0g、エチレングリコールモノフェニルエーテル15.6g、およびエマルゲンLS-114(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、花王社製)0.4gを秤量した。室温(25℃)で撹拌して溶解し、20gの液剤を得た。
【0059】
実施例6
6Kガラスビンに、ダイマー38(99重量%、イヌイ社製)4.0g、エチレングリコールモノフェニルエーテル15.2g、およびエマルゲンLS-114(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、花王社製)0.8gを秤量した。室温(25℃)で撹拌して溶解し、20gの液剤を得た。
【0060】
実施例7
6Kガラスビンに、ダイマー38(99重量%、イヌイ社製)4.0g、エチレングリコールモノフェニルエーテル15.6g、およびエマルゲンB-66(ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、花王社製)0.4gを秤量した。室温(25℃)で撹拌して溶解し、20gの液剤を得た。
【0061】
比較例1
6Kガラスビンに、ダイマー38(99重量%、イヌイ社製)8.0g、およびエチレングリコールモノフェニルエーテル12.0gを秤量した。室温(25℃)で撹拌したが、ダイマー38は完全に溶解しなかった。
【0062】
比較例2
6Kガラスビンに、ダイマー38(99重量%、イヌイ社製)4.0g、およびプロピレングリコール16.0gを秤量した。室温(25℃)で撹拌して溶解し、20gの液剤を得た。
【0063】
比較例3
6Kガラスビンに、ダイマー38(99重量%、イヌイ社製)4.0g、プロピレングリコール15.6g、およびエマルゲンLS-114(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、花王社製)0.4gを秤量した。室温(25℃)で撹拌して溶解し、20gの液剤を得た。
【0064】
(低温安定性の測定方法)
蓋付ガラス容器(2Kガラスビン)に調製した液剤を入れ、5℃の冷蔵庫内で4日間保管した。低温保管後、自然光下、肉眼観察により、液剤が透明か否かを評価した。さらに、容器を傾け、液剤の流動性の有無を評価した。なお、比較例1は、ダイマー38が不溶であったため、測定できなかった。
【0065】
(低温安定性の評価基準)
低温安定性の評価は、以下の基準で行った。
〇:低温保管後、透明な溶液を維持している
△:低温保管後、析出物があるが、流動性がある状態
×:低温保管により固化し、流動性がない状態
【0066】
【0067】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
ダイマー38:N,N’-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウムブロマイド)
エマルゲンLS-110:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
エマルゲンLS-114:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
エマルゲンB-66:ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル