(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063378
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ラグスクリューボルトおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20240502BHJP
B23P 15/00 20060101ALI20240502BHJP
B23G 9/00 20060101ALI20240502BHJP
B23G 1/44 20060101ALI20240502BHJP
B23G 1/04 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
F16B35/00 Q
B23P15/00 Z
B23G9/00 A
B23G1/44 B
B23G1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171273
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】514214508
【氏名又は名称】有限会社太悦鉄工
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】太田 悦雄
(57)【要約】
【課題】短時間で精度よく加工することができる、ラグスクリューボルトおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ラグスクリューボルト10は、雄ネジ18を有する棒状のラグスクリュー部20と、ラグスクリュー部20の長さ方向の基端部に設けられ、他の部材と接続可能に構成された接続部22と、ラグスクリュー部20における長さ方向の両端部20a,20bの間に設けられ、製造時に支持ローラが押し当てられる中間支持部24とを備える。中間支持部24は、雄ネジ18の先端部に形成される。ラグスクリューボルト10の製造方法では、中間支持部24に対応する丸棒材料の対応部分に支持ローラが押し当てられ、丸棒材料が支持ローラで支持された状態で、雄ネジ18および中間支持部24が切削加工される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ネジを有する棒状のラグスクリュー部と、
前記ラグスクリュー部の長さ方向の基端部に設けられ、他の部材と接続可能に構成された接続部と、
前記ラグスクリュー部における長さ方向の両端部の間に設けられ、前記雄ネジの外径よりも小径でかつ周方向に平坦な表面を有する中間支持部とを備える、ラグスクリューボルト。
【請求項2】
前記中間支持部は、前記雄ネジの先端部に形成される、請求項1に記載のラグスクリューボルト。
【請求項3】
前記雄ネジの基部の両側に前記雄ネジに沿って形成された一対のガイド面を有するガイド部と、
前記ラグスクリュー部の表面における隣り合う前記ガイド部どうしの間に、前記ガイド面から前記ラグスクリュー部の径方向の内側へ向けて窪んで形成された溝とを備える、請求項1に記載のラグスクリューボルト。
【請求項4】
前記中間支持部の表面は、前記ガイド面と面一に形成される、請求項3に記載のラグスクリューボルト。
【請求項5】
前記中間支持部の表面は、前記溝の底面と面一に形成される、請求項3に記載のラグスクリューボルト。
【請求項6】
前記中間支持部は、前記ラグスクリュー部と前記接続部とを合わせた全体の長さ方向の中央部に設けられる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のラグスクリューボルト。
【請求項7】
前記ラグスクリュー部の先端部には、前記雄ネジが形成されない部分が設けられる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のラグスクリューボルト。
【請求項8】
前記中間支持部は、前記ラグスクリュー部における前記雄ネジが形成された部分の長さ方向の中央部に設けられる、請求項7に記載のラグスクリューボルト。
【請求項9】
雄ネジを有する棒状のラグスクリュー部と、
前記ラグスクリュー部の長さ方向の基端部に設けられ、他の部材と接続可能に構成された接続部と、
前記ラグスクリュー部における長さ方向の両端部の間に設けられ、支持ローラが押し当てられる支持面を有する中間支持部とを備え、
前記支持面は、前記ラグスクリュー部と同軸となる仮想円筒面に沿うように、前記ラグスクリュー部の全周にわたって連続して形成される、ラグスクリューボルトの製造方法であって、
(a)金属で形成された円形断面を有する丸棒材料を準備し、
(b)前記丸棒材料における長さ方向の両端部を回転可能に支持するとともに、前記丸棒材料における前記中間支持部に対応する部分を前記支持ローラで支持し、
(c)前記丸棒材料を回転させながら、前記丸棒材料に前記雄ネジを切削加工するとともに、前記中間支持部を切削加工する、ラグスクリューボルトの製造方法。
【請求項10】
前記(c)工程では、前記丸棒材料に対する前記支持ローラの接触状態を保持するように前記支持ローラの位置を調整しながら、前記丸棒材料における前記中間支持部に対応する部分の表面を、前記仮想円筒面に近づけるように複数回に分けて切削加工する、請求項9に記載のラグスクリューボルトの製造方法。
【請求項11】
前記(c)工程では、(a)工程で準備した前記丸棒材料の表面に前記雄ネジの先端を残しながら、前記丸棒材料に前記雄ネジを切削加工する、請求項9または10に記載のラグスクリューボルトの製造方法。
【請求項12】
前記ラグスクリューボルトは、前記雄ネジの基部の両側に前記雄ネジに沿って形成された一対のガイド面を有するガイド部と、前記ラグスクリュー部の表面における隣り合う前記ガイド部どうしの間に、前記ガイド面から前記ラグスクリュー部の径方向の内側へ向けて窪んで形成された溝とを備え、
前記(c)工程の前に、(d)前記丸棒材料に前記溝を切削加工し、
前記(c)工程では、前記丸棒材料に前記ガイド面を切削加工する、請求項9または10に記載のラグスクリューボルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建築現場などで木材に設けられた下穴にねじ込まれて使用される、ラグスクリューボルトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なラグスクリューボルトは、雄ネジを有する棒状のラグスクリュー部と、ラグスクリュー部の長さ方向の一方端部(基端部)に設けられた接続部(雌ネジ部または雄ネジ部)とを有している。ラグスクリュー部の雄ネジを構成する山部の外径は、木材に設けられた下穴の内径よりも大きく定められており、ラグスクリュー部の雄ネジを構成する谷部の外径は、木材に設けられた下穴の内径とほぼ同じに定められている。そのため、ラグスクリューボルトを下穴にねじ込む際には、谷部の内面と下穴の内面との摩擦抵抗が大きくなり、通常の工具を用いて容易にねじ込むことが困難であった。
【0003】
下記特許文献1に記載されたラグスクリューボルトは、上記問題を解決するものであり、雄ネジの基部の両側に設けられた細幅のガイド面と、ラグスクリュー部の軸方向で隣り合うガイド面どうしの間に設けられた溝とを有している。このラグスクリューボルトによれば、溝の内面と下穴の内面との間に隙間が生じるので、ガイド面が下穴の内面に接触するものの、その接触による摩擦抵抗を小さくでき、下穴へのねじ込み作業を、通常の工具を用いて容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたラグスクリューボルトでは、雄ネジおよびガイド面を精度よく加工するために、一度の切削量を少なくしなければならず、全体の加工時間が長くなる(例えば4時間)という問題があった。
【0006】
つまり、ラグスクリューボルトの製造時には、丸棒材料(ワーク)の一方端部が回転駆動装置のチャックに固定され、他方端部がセンター押えで支持されるが、この状態で丸棒材料を切削加工すると、切削刃から受ける力で丸棒材料が撓んで雄ネジおよびガイド面の加工精度が低下する。そのため、一度の切削量を多くしたり、切削速度を高めたりすることができず、例えば、建築現場で多量のラグスクリューボルトが必要な場合でも、必要数を直ちに揃えることが困難であった。
【0007】
なお、加工時間が長くなる問題は、ガイド面を有するラグスクリューボルトで顕著に存在していたが、ガイド面を有さないラグスクリューボルトでも少なからず存在していた。
【発明の概要】
【0008】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、短時間で精度よく加工することができる、ラグスクリューボルトおよびその製造方法を提供することにある。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るラグスクリューボルトの特徴は、雄ネジを有する棒状のラグスクリュー部と、前記ラグスクリュー部の長さ方向の基端部に設けられ、他の部材と接続可能に構成された接続部と、前記ラグスクリュー部における長さ方向の両端部の間に設けられ、前記雄ネジの外径よりも小径でかつ周方向に平坦な表面を有する中間支持部とを備えることにある。
【0010】
この構成によれば、中間支持部の表面に支持ローラを押し当てることによって、製造時におけるラグスクリュー部の撓みを抑制できるので、雄ネジを加工する際に、一度の切削量を多くしたり、切削速度を高めたりすることが可能であり、ラグスクリューボルトの全体を短時間で精度よく加工することができる。
【0011】
本発明に係るラグスクリューボルトの他の特徴は、前記中間支持部は、前記雄ネジの先端部に形成されることにある。
【0012】
この構成によれば、雄ネジの機能を残しながら中間支持部を形成することができる。
【0013】
本発明に係るラグスクリューボルトの他の特徴は、前記雄ネジの基部の両側に前記雄ネジに沿って形成された一対のガイド面を有するガイド部と、前記ラグスクリュー部の表面における隣り合う前記ガイド部どうしの間に、前記ガイド面から前記ラグスクリュー部の径方向の内側へ向けて窪んで形成された溝とを備えることにある。
【0014】
この構成によれば、ラグスクリューボルトを木材の下穴にねじ込む際に、溝の内面と下穴の内面との間に隙間が生じるので、ガイド面が下穴の内面に接触するものの、その接触による摩擦抵抗を小さくすることが可能であり、下穴へのねじ込み作業を、通常の工具を用いて容易に行うことができる。
【0015】
本発明に係るラグスクリューボルトの他の特徴は、前記中間支持部の表面は、前記ガイド面と面一に形成されることにある。
【0016】
この構成によれば、中間支持部がガイド面から突出することがなく、中間支持部は、ラグスクリューボルトをねじ込む際の抵抗にならない。
【0017】
本発明に係るラグスクリューボルトの他の特徴は、前記中間支持部の表面は、前記溝の底面と面一に形成されることにある。
【0018】
この構成によれば、中間支持部が溝の底面から突出することがなく、中間支持部は、ラグスクリューボルトをねじ込む際の抵抗にならない。
【0019】
本発明に係るラグスクリューボルトの他の特徴は、前記中間支持部は、前記ラグスクリュー部と前記接続部とを合わせた全体の長さ方向の中央部に設けられることにある。
【0020】
この構成によれば、丸棒材料(ワーク)の両端部を支持してラグスクリューボルトを製造する際に、丸棒材料(ワーク)の全体を安定して支持できる。
【0021】
本発明に係るラグスクリューボルトの他の特徴は、前記ラグスクリュー部の先端部には、前記雄ネジが形成されない部分が設けられることにある。
【0022】
この構成によれば、ラグスクリュー部の先端部の雄ネジが形成されない部分を、木材の下穴に挿し込み易いので、ラグスクリューボルトを下穴にねじ込む作業を容易に行うことができる。
【0023】
本発明に係るラグスクリューボルトの他の特徴は、前記中間支持部は、前記ラグスクリュー部における前記雄ネジが形成された部分の長さ方向の中央部に設けられることにある。
【0024】
この構成によれば、雄ネジが形成された部分の長さ方向の中央部に中間支持部が設けられるので、雄ネジを加工する際には、中間支持部を挟んだ両側の雄ネジの長さが等しくなり、中間支持部を挟んだ両側で雄ネジをバランスよく加工することができる。
【0025】
上記目的を達成するため、本発明に係るラグスクリューボルトの製造方法の特徴は、雄ネジを有する棒状のラグスクリュー部と、前記ラグスクリュー部の長さ方向の基端部に設けられ、他の部材と接続可能に構成された接続部と、前記ラグスクリュー部における長さ方向の両端部の間に設けられ、支持ローラが押し当てられる支持面を有する中間支持部とを備え、前記支持面は、前記ラグスクリュー部と同軸となる仮想円筒面に沿うように、前記ラグスクリュー部の全周にわたって連続して形成される、ラグスクリューボルトの製造方法であって、(a)金属で形成された円形断面を有する丸棒材料を準備し、(b)前記丸棒材料における長さ方向の両端部を回転可能に支持するとともに、前記丸棒材料における前記中間支持部に対応する部分を前記支持ローラで支持し、(c)前記丸棒材料を回転させながら、前記丸棒材料に前記雄ネジを切削加工するとともに、前記中間支持部を切削加工することにある。
【0026】
この構成によれば、丸棒材料における中間支持部に対応する部分を支持ローラで支持し、その状態で丸棒材料に雄ネジを切削加工するので、丸棒材料が撓むことを抑制できる。したがって、雄ネジを加工する際に、一度の切削量を多くしたり、切削速度を高めたりすることが可能であり、ラグスクリューボルトの全体を短時間で精度よく加工することができる。支持面は、ラグスクリュー部と同軸となる仮想円筒面に沿うように、ラグスクリュー部の全周にわたって連続して形成されるので、製造時には、支持面に対する支持ローラの接触状態を安定させることが可能であり、ラグスクリューボルトの全体を精度よく加工することができる。
【0027】
本発明に係るラグスクリューボルトの製造方法の他の特徴は、前記(c)工程では、前記丸棒材料に対する前記支持ローラの接触状態を保持するように前記支持ローラの位置を調整しながら、前記丸棒材料における前記中間支持部に対応する部分の表面を、前記仮想円筒面に近づけるように複数回に分けて切削加工することにある。
【0028】
この構成によれば、丸棒材料に対する支持ローラの接触状態を保持しつつ、中間支持部に対応する部分の表面を切削加工するので、中間支持部の加工と他の部分の加工とを中断することなく(時間的な間隔を無くして)連続的に行うことが可能であり、ラグスクリューボルトの全体を短時間で加工することができる。
【0029】
本発明に係るラグスクリューボルトの製造方法の他の特徴は、前記(c)工程では、(a)工程で準備した前記丸棒材料の表面に前記雄ネジの先端を残しながら、前記丸棒材料に前記雄ネジを切削加工することにある。
【0030】
この構成によれば、雄ネジの先端を切削加工する必要がないので、ラグスクリューボルトの全体を短時間で加工することができる。
【0031】
本発明に係るラグスクリューボルトの製造方法の他の特徴は、前記ラグスクリューボルトは、前記雄ネジの基部の両側に前記雄ネジに沿って形成された一対のガイド面を有するガイド部と、前記ラグスクリュー部の表面における隣り合う前記ガイド部どうしの間に、前記ガイド面から前記ラグスクリュー部の径方向の内側へ向けて窪んで形成された溝とを備え、前記(c)工程の前に、(d)前記丸棒材料に前記溝を切削加工し、前記(c)工程では、前記丸棒材料に前記ガイド面を切削加工することにある。
【0032】
この構成によれば、高い精度が要求されない溝と、高い精度が要求されるガイド面とを別工程で加工するので、例えば、溝を加工する際の刃物の送り速度(加工速度)を速くすることによって、ラグスクリューボルトの全体を短時間で加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施形態に係るラグスクリューボルトの構成を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)における一点鎖線枠1Bの部分拡大図である。
【
図2】(A)は、実施形態に係るラグスクリューボルトの使用方法を示す分解図、(B)は、実施形態に係るラグスクリューボルトの使用状態を示す部分拡大図である。
【
図3】実施形態に係るラグスクリューボルトの製造方法を示す図であり、(A)は、丸棒材料の準備工程を示す図、(B)は、黒皮除去工程を示す図、(C)は、溝の形成工程を示す図、(D)は、雄ネジ、ガイド部および中間支持部の形成工程を示す図である。
【
図4】(A)は、3点支持装置の構成を示す図、(B)は、2点支持装置の構成を示す図である。
【
図5】中間支持部の変形例の構成を示す図であり、(A)は、第1変形例の構成を示す図、(B)は、第2変形例の構成を示す図、(C)は、第3変形例の構成を示す図である。
【
図6】他の実施形態に係るラグスクリューボルトの構成を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るラグスクリューボルトおよびその製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
(実施形態に係るラグスクリューボルト構成)
図1は、実施形態に係るラグスクリューボルト10の構成を示す図であり、
図1(A)は正面図、
図1(B)は
図1(A)における一点鎖線枠1Bの部分拡大図である。
図2(A)は、実施形態に係るラグスクリューボルト10の使用方法を示す分解図、
図2(B)は、ラグスクリューボルト10の使用状態を示す部分拡大図である。
【0036】
図2(A)に示すように、ラグスクリューボルト10は、木材12に形成された下穴14にねじ込んで使用される建築用のボルトであり、
図3(A)に示す円形断面を有する金属製の丸棒材料16を切削加工することによって形成されている。本実施形態で使用される丸棒材料16は、炭素鋼(例えばS45C)などの金属からなる長尺の棒状部材である。なお、ラグスクリューボルト10の製造方法は、切削加工に限定されるものではなく、一部にプレス加工(圧縮変形加工)などの塑性加工が用いられてもよい。
【0037】
図1(A)に示すように、ラグスクリューボルト10は、雄ネジ18を有する棒状のラグスクリュー部20と、ラグスクリュー部20の長さ方向の一方端部(基端部)20aに設けられた接続部22と、中間支持部24とを備えている。また、
図1(B)に示すように、ラグスクリューボルト10は、ガイド部26と、溝28とを備えている。
【0038】
図2(B)に示すように、ラグスクリュー部20の雄ネジ18は、下穴14の内面14aにくい込んで、内面14aとの間で軸方向の摩擦力を生じさせる部分である。
図1(B)に示す本実施形態の雄ネジ18は、三角形の横断面(図示省略)を有する螺旋状に形成されている。
【0039】
図1(A)に示すラグスクリュー部20のサイズは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、長さが580mm、外径が38mmに定められている。
図1(B)に示す雄ネジ18のサイズは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、高さが2.5mm、頂角が30度、ピッチが10mmに定められている。
【0040】
図1(A)に示すように、ラグスクリュー部20の表面のうち、中間支持部24が設けられた部分には、雄ネジ18の一部(先端部)が欠けた状態で形成されている。また、ラグスクリュー部20の先端部20bにも、雄ネジ18は形成されていない。つまり、ラグスクリュー部20の先端部20bには、雄ネジ18が形成されない部分が設けられており、この部分が、
図2(A)に示す下穴14に挿し込み易い挿し込み部30となっている。
【0041】
挿し込み部30の長さは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、20mmに定められている。
【0042】
図1(A)に示す接続部22は、他の部材と接続可能に構成された部分である。本実施形態の接続部22は、
図3(A)に示す丸棒材料16の一方端部に雌ネジ32を形成することによって得られた雌ネジ部である。接続部22の雌ネジ32と、ラグスクリュー部20の雄ネジ18とは、共通の中心軸Pを有している。
【0043】
接続部22のサイズは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、長さが70mm、外径が38mm、ネジ径が24mmに定められている。なお、接続部22は、雌ネジ部に限定されるものではなく、例えば、図示しない雄ネジを有する雄ネジ部として構成されてもよい。
【0044】
図1(A)に示す中間支持部24は、ラグスクリューボルト10の製造時に、
図4(A)に示す3点支持装置34で支持される部分であり、ラグスクリュー部20における長さ方向の両端部20a,20bの間に設けられている。より詳細には、中間支持部24は、ラグスクリュー部20と接続部22とを合わせた全体の長さ方向の中央部に設けられている。
【0045】
図1(B)に示すように、中間支持部24は、
図4(A)に示す3点支持装置34を構成する3つの支持ローラ36が同時に押し当てられる支持面38を有している。支持面38は、ラグスクリュー部20と同軸となる仮想円筒面Mに沿うように、ラグスクリュー部20の全周にわたって連続して形成されている。この中間支部部24は、中間支持部24の軸方向外側に形成された雄ネジ18の外径よりも小径に形成されている。
【0046】
本実施形態の中間支持部24は、ラグスクリュー部20の径方向における雄ネジ18の先端部を、仮想円筒面Mで除去した形状に形成されており、除去により形成された仮想除去面Nに対応する面が支持面38となっている。言い換えると、中間支持部24は、雄ネジ18の先端部に形成されており、中間支持部24の表面が支持面38となっている。したがって、中間支持部24の表面すなわち支持面38は、雄ネジ18の外径よりも小径でかつ周方向に平坦な帯状であり、支持面38の一部38aと他の一部38bとが、ラグスクリュー部20の軸方向において互いに隣り合うように配置されている。
【0047】
本実施形態においては、中間支持部24の外径は36mmに形成されているが、この外径に限定されるものでないことは当然である。また、支持面38の幅は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、2mmに定められている。
【0048】
図1(B)に示すように、ガイド部26は、雄ネジ18および中間支持部24のそれぞれの基部の両側に雄ネジ18に沿って螺旋状に形成された一対のガイド面40a,40bを有している。ガイド面40a,40bは、ラグスクリューボルト10を
図2(A)に示す下穴14にねじ込む際に、下穴14の内面14aに沿って移動する面であり、下穴14の内部でラグスクリューボルト10を案内する機能を有している。上記の雄ネジ18は、ガイド部26の上面から立ち上がって形成されている。つまり、ガイド部26と雄ネジ18とは、二段に重ねて形成されている。
【0049】
ガイド部26のサイズは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、外径が33mm、ガイド面40a,40bの幅が0.7mmに定められている。
【0050】
図1(B)に示すように、溝28は、ラグスクリュー部20の表面における隣り合うガイド部26どうしの間に、ガイド面40a,40bからラグスクリュー部20の径方向の内側へ向けて窪んで形成されている。溝28の横断面は、底面と側面とが滑らかに湾曲して繋がった形状に形成されている。
【0051】
溝28のサイズは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、幅が7.1mm、深さが3.5mm、底面と側面との間の湾曲面の曲率半径が3mmに定められている。溝28の横断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、直角の角部を有する四角形に形成されてもよい。
【0052】
(実施形態に係るラグスクリューボルトの使用方法)
図2(A)に示すように、ラグスクリューボルト10を使用する際には、使用者は、木材12に下穴14が形成し、この下穴14にラグスクリューボルト10をねじ込む。中間支持部24は、雄ネジ18の先端部を切除した形状に形成されているので、ラグスクリューボルト10を下穴14にねじ込む際には、先行する雄ネジ18が通った後を中間支持部24が通ることになる。したがって、中間支持部24は、ラグスクリューボルト10をねじ込む際の抵抗は低く抑えられている。
【0053】
図2(B)に示すように、ラグスクリューボルト10を下穴14に完全にねじ込んだ後には、木材12に形成された注入孔42から溝28の内側の充填空間Sに接着剤44を充填する。このとき、接着剤44は、溝28の滑らかに湾曲した内面に沿って流れるため、充填空間Sに接着剤44を均一に充填することができる。
【0054】
(実施形態に係るラグスクリューボルトの製造方法)
図3は、ラグスクリューボルト10の製造方法を示す図であり、
図3(A)は、丸棒材料16の準備工程を示す図、
図3(B)は、黒皮除去工程を示す図、
図3(C)は、溝28の形成工程を示す図、
図3(D)は、雄ネジ18、ガイド部26および中間支持部24の形成工程を示す図である。
図4(A)は、3点支持装置34の構成を示す図、
図4(B)は、2点支持装置56の構成を示す図である。
【0055】
図1(A)に示すラグスクリューボルト10を製造する際には、製造者は、「丸棒材料の準備工程」、「黒皮除去工程」、「溝の形成工程」および「雄ネジ、ガイド部および中間支持部の形成工程」をこの順番に実行する。
【0056】
図3(A)に示す「丸棒材料の準備工程」では、製造者は、炭素鋼(例えばS45C)などの金属からなる丸棒材料16を準備する。そして、丸棒材料16の一方端部に雌ネジ32を形成する。雌ネジ32を形成する際には、丸棒材料16の表面をチャック(図示省略)で把持することができるので、その形成作業は容易である。
【0057】
図3(B)に示す「黒皮除去工程」では、製造者は、丸棒材料16の一方端部16aを回転駆動装置46のチャック48で固定し、他方端部16bをセンター押え50で支持する。そして、丸棒材料16における中間支持部24に対応する部分(以下、「対応部分」という。)24aに、0.3~0.5mm程度の切削加工を全周にわたって施す。この工程によって、丸棒材料16の表面の汚れや黒皮が除去されて、支持ローラ36が押し当てられる円筒面が得られる。なお、この工程で使用する切削工具は、旋盤のバイトでもよいし、フライス盤のエンドミルでもよい。また、サンドペーパー(例えば180番)でもよい。
【0058】
図3(C)に示す「溝の形成工程」では、製造者は、丸棒材料16における対応部分24aに、
図4(A)に示す3点支持装置34の3つの支持ローラ36を押し当てる。そして、回転駆動装置46で丸棒材料16を回転させながら、切削工具52で溝28を加工する。この工程では、切削工具52を丸棒材料16の長さ方向へ繰り返し移動させて、溝28を少しずつ加工する。なお、この工程で使用する切削工具52は、旋盤のバイトでもよいし、フライス盤のエンドミルでもよい。
【0059】
本実施形態では、高い精度が要求されない溝28と、高い精度が要求される雄ネジ18およびガイド部26(ガイド面40a,40bを含む。)とを別工程で加工するので、「溝の形成工程」では、一度の切削量を多くしたり、切削速度を高めたりすることが可能であり、ラグスクリューボルト10の全体を短時間で精度よく加工することができる。
【0060】
図3(D)に示す「雄ネジ、ガイド部および中間支持部の形成工程」では、製造者は、「溝の形成工程」で使用した切削工具52を、適切な他の種類の切削工具52に交換する。そして、回転駆動装置46で丸棒材料16を回転させながら、切削工具52で雄ネジ18、ガイド部26および中間支持部24を加工する。この工程では、切削工具52を丸棒材料16の長さ方向へ繰り返し移動させて、雄ネジ18、ガイド部26および中間支持部24を少しずつ加工する。なお、この工程で使用する切削工具52は、旋盤のバイトでもよいし、フライス盤のエンドミルでもよい。
【0061】
この工程では、対応部分24aを支持ローラ36で支持した状態で、丸棒材料16に雄ネジ18、ガイド部26および中間支持部24を切削加工するので、加工の最中に丸棒材料16が撓むことを抑制できる。したがって、一度の切削量を多くしたり、切削速度を高めたりすることが可能であり、ラグスクリューボルトの全体を短時間で精度よく加工することができる。
【0062】
中間支持部24を加工する際に、対応部分24a(
図3(C))を切削工具52で切削していくと、対応部分24aの外径が小さくなるため、3点支持装置34による支持状態を保持できなくなる。そこで、
図4(A)に示す3点支持装置34を構成する締付け部54を操作して、丸棒材料16の支持状態を保持するように支持ローラ36の位置を調整する。例えば、切削工具52による加工回数が10回に達するごとに、締付け部54を操作し、3つの支持ローラ36のそれぞれを移動させて、これらを丸棒材料16の表面に接触させる。
【0063】
つまり、丸棒材料16に対する支持ローラ36の接触状態を保持するように支持ローラ36の位置を調整しながら、対応部分24aの表面を、仮想円筒面Mに近づけるように複数回に分けて切削加工する。したがって、中間支持部24の加工と雄ネジ18およびガイド部26の加工とを、中断することなく連続的に行うことが可能であり、ラグスクリューボルト10の全体を短時間で加工することができる。
【0064】
さらに、この工程では、丸棒材料16の最初の表面(元々の表面)に雄ネジ18の先端を残しながら、丸棒材料16に雄ネジ18を切削加工する。したがって、雄ネジ18の先端を切削加工する必要がなく、ラグスクリューボルト10の全体を短時間で加工することができる。なお、雄ネジ18の先端部は、丸棒材料16の最初の表面(例えば、黒皮)を削り取った内部に形成してもよいことは当然である。
【0065】
なお、本発明者の実験によれば、中間支持部24は、対応部分24aを支持ローラ36が支持しているだけで形成することもできる。すなわち、中間支持部24は、丸棒材料16に対して対応部分24aを含めて雄ネジ18およびガイド部26を切削加工している過程において、尖ってきた先端部が支持ローラ36による押圧力によって圧縮変形することで平坦面状に形成されていく。したがって、製造者は、対応部分24aに対して積極的に中間支持部24の形状に切削加工せず雄ネジ18およびガイド部26を切削加工したとしても支持ローラ36による押圧力を適宜調整しておくことで中間支持部24を塑性加工により形成することができる。
【0066】
「雄ネジ、ガイド部および中間支持部の形成工程」が終了すると、製造者は、完成したラグスクリューボルト10をチャック48から取り外し、ラグスクリューボルト10の表面にクロムメッキなどのメッキ処理を施す。
【0067】
なお、本実施形態では、丸棒材料16における中間支持部24に対応する対応部分24aに、
図4(A)に示す3点支持装置34の3つの支持ローラ36を押し当てるようにしているが、これに代えて、
図4(B)に示す2点支持装置56の2つの支持ローラ36を対応部分24aに押し当てるようにしてもよい。また、図示しない支持装置の1つまたは4つ以上の支持ローラ36を対応部分24aに押し当てるようにしてもよい。
【0068】
(効果)
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、支持ローラ36が押し当てられる支持面(表面)38を有する中間支持部24を備えるので、製造時にラグスクリューボルト10(丸棒材料16)が撓むことを抑制できる。したがって、雄ネジ18およびガイド部26(ガイド面40a,40bを含む。)を加工する際に、一度の切削量を多くしたり、切削速度を高めたり(例えば2m/分)することが可能であり、ラグスクリューボルト10の全体を短時間(例えば30分)で精度よく加工することができる。
【0069】
支持面38は、ラグスクリュー部20と同軸となる仮想円筒面Mに沿うように、ラグスクリュー部20の全周にわたって連続して形成されるので、製造時には、支持面38に対する支持ローラ36の接触状態を安定させることが可能であり、ラグスクリューボルト10(丸棒材料16)を安定して支持できる。
【0070】
中間支持部24は、雄ネジ18の先端部に形成されるので、雄ネジ18の機能を残しながら中間支持部24を形成することができる。中間支持部24は、雄ネジ18の先端部を切除した形状に形成されるので、ラグスクリューボルト10を木材12の下穴14にねじ込む際には、先行する雄ネジ18が通った後を中間支持部24が通ることになる。したがって、中間支持部24は、ラグスクリューボルト10をねじ込む際の抵抗にならない。
【0071】
ラグスクリューボルト10を木材12の下穴14にねじ込む際に、溝28の内面と下穴14の内面14aとの間に隙間が生じるので、ガイド面40a,40bが下穴14の内面14aに接触するものの、その接触による摩擦抵抗を小さくでき、下穴14へのねじ込み作業を、通常の工具を用いて容易に行うことができる。
【0072】
中間支持部24は、ラグスクリュー部20と接続部22とを合わせた全体の長さ方向の中央部に設けられるので、丸棒材料16の両端部を支持してラグスクリューボルト10を製造する際に、丸棒材料16の全体を安定して支持できる。
【0073】
ラグスクリュー部20の先端部には、雄ネジ18が形成されていない挿し込み部30が設けられているので、ラグスクリューボルト10を下穴14にねじ込む作業を容易に行うことができる。
【0074】
(変形例)
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。すなわち、上記実施形態では、中間支持部24は、ラグスクリュー部20と接続部22とを合わせた全体の長さ方向の中央部に設けられているが、中間支持部24は、ラグスクリュー部20における雄ネジ18が形成された部分の長さ方向の中央部に設けられてもよい。この場合には、雄ネジ18を加工する際に、中間支持部24を挟んだ両側の雄ネジ18の長さが等しくなり、中間支持部24を挟んだ両側で雄ネジ18をバランスよく加工することができる。
【0075】
図5は、中間支持部の変形例を示す図であり、
図5(A)は、第1変形例の構成を示す図、
図5(B)は、第2変形例の構成を示す図、
図5(C)は、第3変形例の構成を示す図である。
【0076】
図1(B)に示すように、上記実施形態の中間支持部24は、正面視で把握できる1つの雄ネジ18の先端部に形成されているが、この中間支持部24は、
図5(A),(B),(C)に示す他の中間支持部60,62,64に変更されてもよい。
【0077】
図5(A)に示す中間支持部60は、正面視で把握できる2つの雄ネジ18の先端部に形成されている。つまり、上記仮想円筒面Mで先端部が除かれる雄ネジ18の数は、1つに限定されるものではなく、中間支持部60のように2つでもよいし、3つ以上(図示省略)でもよい。
【0078】
図5(B)に示す中間支持部62は、支持面(表面)68がガイド面40a,40bと面一になるように形成されている。ここでの「面一」は、僅かに段差が生じても実質的にガイド面40a,40bと面一に見える状態を含む。つまり、中間支持部62は、1つの雄ネジ18の全体をガイド面40a,40bに沿うように定められた仮想円筒面Mで除去した周方向に平坦な平面形状に形成されており、除去により形成された仮想除去面Nに対応する面が支持面68とされている。
【0079】
この構成によれば、中間支持部62がガイド面40a,40bから突出することがなく、ラグスクリューボルト10を木材12の下穴14にねじ込む際には、先行するガイド部26が通った後を中間支持部62が通ることになる。したがって、中間支持部62は、ラグスクリューボルト10をねじ込む際の抵抗にならない。なお、仮想円筒面Mで全体が除去される雄ネジ18の数は、1つに限定されるものではなく、2つ以上(図示省略)でもよい。
【0080】
図5(C)に示す中間支持部64は、支持面(表面)70が溝28の底面28aと面一になるように形成されている。ここでの「面一」は、僅かに段差が生じても実質的に溝28の底面28aと面一に見える状態を含む。つまり、中間支持部64は、1つの雄ネジ18および1つのガイド部26の全体を溝28の底面28aに沿うように定められた仮想円筒面Mで除去した形状に形成されており、除去により形成された仮想除去面Nに対応する面が支持面70とされている。
【0081】
この構成によれば、中間支持部64が溝28の底面28aから突出することがなく、中間支持部64は、ラグスクリューボルト10をねじ込む際の抵抗にならない。なお、仮想円筒面Mで全体が除去される雄ネジ18およびガイド部26の数は、1つに限定されるものではなく、2つ以上(図示省略)でもよい。
【0082】
図6は、他の実施形態に係るラグスクリューボルト72の構成を示す部分拡大図である。上記実施形態のラグスクリューボルト10は、雄ネジ18、ガイド部26および溝28を備えているが、
図6に示すラグスクリューボルト72のように、雄ネジ18を残して、ガイド部26および溝28は省略されてもよい。また、図示していないが、雄ネジ18および溝28を残して、ガイド部26は省略されてもよい。
【0083】
図6に示すラグスクリューボルト72では、従来の一般的なラグスクリューボルトにおいて、1つの雄ネジ18の先端部に中間支持部74が形成されている。なお、中間支持部74が形成される雄ネジ18の数は、1つに限定されるものではなく、2つ以上(図示省略)でもよい。また、雄ネジ18の先端部ではなく、互いに隣り合う2つの雄ネジ18どうしの間の谷部に中間支持部(図示省略)が形成されてもよい。
【0084】
上記実施形態においては、中間支持部64は、雄ネジ18および溝28と同軸で形成した。しかし、中間支持部64は、雄ネジ18および溝28に対して偏心して形成することもできる。
【符号の説明】
【0085】
M…仮想円筒面、N…仮想除去面、P…中心軸、S…充填空間、10,72…ラグスクリューボルト、12…木材、14…下穴、16…丸棒材料、18…雄ネジ、20…ラグスクリュー部、20a,20b…ラグスクリュー部の両端部、22…接続部、24,60,62,64,74…中間支持部、26…ガイド部、28…溝、34…3点支持装置、36…支持ローラ、38,68,70…支持面、40a,40b…ガイド面、42…注入孔、44…接着剤、46…回転駆動装置、48…チャック、50…センター押え、52…切削工具、54…締付け部、56…2点支持装置。