(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006338
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】空間光通信装置、移動体、基地局及び通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/112 20130101AFI20240110BHJP
【FI】
H04B10/112
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107136
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】津田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】古谷 達男
(72)【発明者】
【氏名】大北 百合絵
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA24
5K102AA25
5K102AL23
5K102AL28
5K102PD14
5K102PH38
(57)【要約】
【課題】多数の移動する装置間又は固定した装置から移動する装置との間で、ギガビット毎秒以上の伝送速度で、短時間に大容量の情報を、秘匿性を高くして送受信する空間光通信装置を提供する。
【解決手段】通信対象に送信光信号を送信し、前記通信対象から受信光信号を受信して、前記通信対象と通信する空間光通信装置であって、前記通信対象に向けて前記送信光信号の光線の方向を変更し、前記通信対象に前記送信光信号を送信する送信器と、前記通信対象から前記受信光信号を受信する受信器と、を備える空間光通信装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信対象に送信光信号を送信し、前記通信対象から受信光信号を受信して、前記通信対象と通信する空間光通信装置であって、
前記通信対象に向けて前記送信光信号の光線の方向を変更し、前記通信対象に前記送信光信号を送信する送信器と、
前記通信対象から前記受信光信号を受信する受信器と、
を備える、
空間光通信装置。
【請求項2】
前記送信器は、
前記送信光信号を生成する光生成部と、
前記光生成部から前記送信光信号が入力する入力光導波路と、複数の出力光導波路と、前記入力光導波路と前記複数の出力光導波路との間を切り替えて接続する光スイッチと、を有する光切替部と、
前記光切替部の外部に設けられ、前記複数の出力光導波路から出力される光が入射するレンズと、
を備え、
前記光スイッチにより、前記入力光導波路と接続される前記出力光導波路を切り替えることにより、前記送信光信号の光線の方向を切り替える、
請求項1に記載の空間光通信装置。
【請求項3】
前記送信器は、前記送信光信号のビーム径を変更する光ビーム径変更部を備える、
請求項1に記載の空間光通信装置。
【請求項4】
前記光ビーム径変更部は、
前記送信光信号を生成する光生成部と、
前記光生成部から前記送信光信号が入力する入力光導波路と、複数の出力光導波路と、前記入力光導波路と前記複数の出力光導波路との間を切り替えて接続する光スイッチと、を有する光切替部と、
前記出力光導波路の外部に設けられ、前記複数の出力光導波路のそれぞれが入力され、互いに焦点距離が異なる複数のレンズと、
を備え、
前記光スイッチにより、前記入力光導波路と接続される前記出力光導波路を切り替えることにより、前記送信光信号のビーム径を切り替える、
請求項3に記載の空間光通信装置。
【請求項5】
前記受信器は、複数の受光素子を備える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空間光通信装置。
【請求項6】
前記受信器は、受信方向を制御する方向制御部を備える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空間光通信装置。
【請求項7】
前記送信器は、複数の光ビーム生成部を備える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空間光通信装置。
【請求項8】
前記送信光信号は、持続時間が10-7秒から10-1秒のバースト信号である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空間光通信装置。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空間光通信装置と、
移動機構と、を備える、
移動体。
【請求項10】
光ビーコン部を更に備え、
前記光ビーコン部は、姿勢を示す複数の光源を備える、
請求項9に記載の移動体。
【請求項11】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空間光通信装置を備える、
基地局。
【請求項12】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空間光通信装置を備える移動体と、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空間光通信装置を備える基地局と、
を備える、
通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間光通信装置、移動体、基地局及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2のそれぞれには、地上局と人工衛星を結ぶ空間光通信装置が開示されている。特許文献1及び特許文献2のそれぞれに開示されている空間光通信装置における送受信器間の距離は、数十キロメートルから数万キロメートルである。特許文献1及び特許文献2のそれぞれに開示されている空間光通信装置は、大型の望遠鏡光学系により構成される。
【0003】
また、特許文献3及び特許文献4のそれぞれには、無線通信による多数のロボット制御方法が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献5及び特許文献6のそれぞれには、広域に光を投射して位置確認する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6920710号公報
【特許文献2】特開2021-027437号公報
【特許文献3】特許第4505998号公報
【特許文献4】特開平05-233059号公報
【特許文献5】国際公開第2017/169911号
【特許文献6】特開2009-055408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2のそれぞれに開示されている空間光通信装置は、大型の望遠鏡光学系により構成されるため、地表又は水上を移動する装置、大気中を飛翔する装置、水中を移動する装置に搭載することが困難である。また、特許文献1及び特許文献2のそれぞれに開示されている空間光通信装置に用いられる人工衛星は軌道情報があるので、位置を推定することが可能である。しかしながら、一般の移動装置の位置は別の方法によって取得する必要がある。また、特許文献1及び特許文献2のそれぞれには、空間光通信を行うための軽量で高速に通信相手を追尾できる機構は開示されていない。
【0007】
また、特許文献3及び特許文献4のそれぞれに開示されている無線通信による多数のロボット制御方法において、無線通信は、搬送波の周波数が低いため、通信速度は高々数百メガビット毎秒にすぎない。また、無線通信は悪電磁環境下や水中では通信が困難であり、同時に多数の装置を動作させると混信して正常に通信できない場合や通信速度が低下する場合も生じる。さらに、無線通信は、通信を傍受されやすく秘匿性の高い通信は困難である。さらにまた、無線通信において、微弱電波以外は、法律の規制により利用可能な周波数帯が制限される。
【0008】
さらに、特許文献5及び特許文献6のそれぞれは、装置の姿勢を推定する方法は開示されていない。
【0009】
上述のような状況を鑑み、本開示は、多数の移動する装置間又は固定した装置から移動する装置との間で、ギガビット毎秒以上の伝送速度で、短時間に大容量の情報を、秘匿性を高くして送受信する空間光通信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様では、通信対象に送信光信号を送信し、前記通信対象から受信光信号を受信して、前記通信対象と通信する空間光通信装置であって、前記通信対象に向けて前記送信光信号の光線の方向を変更し、前記通信対象に前記送信光信号を送信する送信器と、前記通信対象から前記受信光信号を受信する受信器と、を備える空間光通信装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示の空間光通信装置によれば、複数の移動体間又は固定した基地局と移動体との間で、ギガビット毎秒以上の伝送速度で、短時間に大容量の情報を、秘匿性を高くして送受信できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る空間光通信装置の使用状態を説明する図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る空間光通信装置における送信器の概略を説明する図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る空間光通信装置における送信器の構成を説明する図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る空間光通信装置における送信器の構成を説明する図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る空間光通信装置における受信器の概要を説明する図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る空間光通信装置における受信器の構成を説明する図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る空間光通信装置における受信器の構成を説明する図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る空間光通信装置における送信器及び受信器の光学系について説明する図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る空間光通信装置における送信器の概略を説明する図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る空間光通信装置における送信器の概略を説明する図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る空間光通信装置における送信器から送信される光ビームについて説明する図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係る空間光通信装置における送信器の概略を説明する図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る空間光通信装置における送信器の概略を説明する図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係る空間光通信装置における送信器から送信される光ビームについて説明する図である。
【
図15】
図15は、第4実施形態に係る空間光通信装置が使用される移動体について説明する図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態に係る空間光通信装置が使用される移動体について説明する図である。
【
図17】
図17は、第4実施形態に係る空間光通信装置が使用される移動体における光ビーコン部について説明する図である。
【
図18】
図18は、第5実施形態に係る空間光通信装置が使用される移動体及び基地局について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の又は対応する機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する場合がある。また、理解を容易にするために、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。
【0015】
平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右及び前後等の方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、それぞれ略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0016】
例えば、略平行は、2つの線あるいは2つの面が互いに完全に平行でなくても、製造上許容される範囲内で互いに平行として扱うことができることを意味する。他の略直角、略直交、略水平及び略垂直のそれぞれについても、略平行と同様に、2つの線又は2つの面の相互の位置関係が製造上許容される範囲内であればそれぞれに該当することが意図される。
【0017】
≪第1実施形態≫
<構成>
最初に、第1実施形態に係る空間光通信装置について説明する。
図1は、第1実施形態に係る空間光通信装置10が用いられる状態を説明する図である。なお、
図1において、空間光通信装置10が通信を行う通信対象の例として、空間光通信装置10Aを用いて説明する。空間光通信装置10Aは、空間光通信装置10と同じ構成の空間光通信装置である。空間光通信装置10は、空間光通信装置10Aと、光バースト信号により通信を行う。
【0018】
空間光通信装置10は、送信器11と、受信器12と、制御部13と、を備える。なお、空間光通信装置10が通信を行う通信対象である空間光通信装置10Aは、空間光通信装置10と同様に、送信器11と、受信器12と、制御部13と、を備える。空間光通信装置10は、送信器11から光バースト信号を空間光通信装置10Aに送信する。また、空間光通信装置10は、受信器12により、空間光通信装置10Aから送信された光バースト信号を受信する。
【0019】
[送信器11]
送信器11は、通信対象である空間光通信装置10Aに、送信光信号Ltを送信する。送信器11は、通信対象である空間光通信装置10Aに向けて送信光信号Ltの光線の方向を変更できる。
【0020】
図2は、第1実施形態に係る空間光通信装置10における送信器11の構成を示す概念図である。送信器11は、光源部11aと、光ビーム制御部11bと、を備える。
【0021】
光源部11aは、例えば、直接変調される半導体レーザである。なお、光源部11aは、直接変調される半導体レーザに限らず、例えば、半導体レーザと光変調器を備え、半導体レーザから出射した連続光を光変調器で変調してもよい。
【0022】
光ビーム制御部11bは、送信器11から送信される送信光信号Ltの光ビームのビーム径(半径ω
0)及び出射方向を制御する。送信光信号Ltの光ビームのビーム径は、例えば、レンズ又はミラーを用いて自由に変換できる。また、送信光信号Ltの光ビームの出射方向は、
図2に示す座標系におけるX軸回り及びY軸回りに回転する機構を設けることにより制御する。
【0023】
図3は、送信光信号Ltの光ビームの出射方向をX軸回り及びY軸回りに回転する機構について説明する図である。例えば、2軸の回転機構として、眼球状の駆動機構である駆動機構11cがロボット用に利用されている。光ビーム制御部11bにおける送信光信号Ltの光ビームの出射方向を回転する機構として、駆動機構11cにおける眼球部分の回転中心に光ファイバ端面又はコリメータレンズ端面を配置する方法などが考えられる。
【0024】
図4は、送信光信号Ltの光ビームの出射方向をX軸回り及びY軸回りに回転する機構について説明する図である。駆動機構11cは、光ファイバ11dと、ビーム径調整レンズ11eと、を備える。
【0025】
光ファイバ11dは、光源部11aから出力される送信光信号Ltを駆動機構11cに伝達する。光ファイバ11dの駆動機構11cにおける端部には、光ファイバ端のモードフィールド径を大きくするために、光ファイバにTEC(Thermally-Expanded-Core)構造を設けたり、光コリメートレンズを付加したりする。
【0026】
ビーム径調整レンズ11eの端部、いいかえると、ビーム径調整レンズ11eにおける光の出射点は、駆動機構11cの回転中心11caに配置される。ビーム径調整レンズ11eの端部が駆動機構11cの回転中心11caに配置されて、駆動機構11cの眼球部分が回ることにより、送信光信号Ltの出射方向をX軸及びY軸回りに制御できる。
【0027】
駆動機構11cは、例えば、制御部13からの制御信号に基づいて、送信光信号Ltの光ビームの出射方向をX軸回り及びY軸回りに回転する。制御部13は、通信対象の位置及び姿勢等に基づいて、送信光信号Ltの光ビームの出射方向を制御する。
【0028】
[受信器12]
受信器12は、通信対象である空間光通信装置10Aから、受信光信号Lrを受信する。
【0029】
図5は、第1実施形態に係る空間光通信装置10における受信器12の構成を示す概念図である。受信器12は、レンズ12aと、フォトダイオード12bと、受信回路12cと、を備える。
【0030】
レンズ12aは、受信光信号Lrをフォトダイオード12bに集光する。レンズ12aは、半径r、焦点距離fのレンズである。
【0031】
フォトダイオード12bは、受光した受信光信号Lrを電気信号に変換する。フォトダイオード12bは、受信回路12cに接続される。フォトダイオード12bは、レンズ12aから設置距離d離れた場所に設けられる。
【0032】
受信回路12cは、フォトダイオード12bを駆動するとともに、フォトダイオード12bで変換した電気信号を受信する。受信回路12cで受信した電気信号は、例えば、制御部13に送信される。
【0033】
空間光通信装置10と、通信対象である空間光通信装置10Aとは、距離L離れているとする。距離Lは、半径rと比較して長い。距離Lが半径rと比較して長いため、受信器12に入射する入射光を平面波と近似できる。レンズ12aに入射した受信光信号Lrは、受信光信号Lrが平面波とみなせることから、レンズ12aから焦点距離f離れた場所に集光される。したがって、設置距離dは、レンズ12aの焦点距離fと等しくする。
【0034】
一方、受信光信号Lrの入射ビームがZ軸に対して角度θずれた方向から入射すると、集光位置は、距離fθだけZ軸から離れる。集光位置のずれがフォトダイオード12bの径よりも大きくなると、フォトダイオード12bで受信光信号Lrを受光できない。
【0035】
図6は、フォトダイオード12bに換えて、フォトダイオードアレイ12dを用いる例について説明する図である。フォトダイオードアレイ12dは、複数の受光素子(フォトダイオード12da)を備える。フォトダイオード12bに換えて、フォトダイオードアレイ12dを用いることにより、受信器12のレンズ12aにおける光軸に対して受信光信号Lrが斜めに入射した時にも、受信光信号Lrを受光できる。フォトダイオードアレイ12dは、例えば、一辺が長さsである正方形の受光面を有するフォトダイオード12daを備える。フォトダイオード12daは、間隔sで、X軸方向及びY軸方向に並んでいる。
【0036】
なお、
図7に示すように、受信器12は、送信器11と同様の光軸回転機構12eを備えるようにしてもよい。すなわち、受信器12は、受信方向を制御する方向制御部を備えてもよい。
【0037】
[制御部13]
制御部13は、送信器11と受信器12を制御する。制御部13は、送信器11から送信する送信光信号Ltを送信データに基づいて強度制御(変調制御)及び方向制御する。また、制御部13は、受信器12で受信した受信光信号Lrを変換した電気信号から受信データに変換する。
【0038】
<光学系の設計>
次に、光学系の設計について説明する。ここでは、
図8を用いて光学系の設計を説明する。空間光通信装置10を送信側、空間光通信装置10Aを受信側として説明する。
【0039】
空間光通信装置10と空間光通信装置10Aとの間の距離をLとする。また、空間光通信装置10の送信器11から送信した送信光信号Ltの受信側の空間光通信装置10Aにおけるビーム径をω1とする。さらに、送信光信号Ltの光軸Lt1から空間光通信装置10Aの受信器12までの距離をδL、送信光信号Ltの受信器12への入射角をθ0とする。
【0040】
受信器12のレンズ(受信器12のレンズ12aに対応するレンズ)が、送信光信号Ltの光ビーム内にある場合、光ビームのパワーをPoutとすると、受光パワーPinは式1で近似される。
【0041】
【0042】
例えば、当初は、δL=0であり、送信光信号Ltの光軸Lt1に垂直な方向における相対速度をv、送信光信号Ltのバースト光の時間長をtbとするならば、レンズ径を無視して、式2の不等式を満たす必要がある。
【0043】
【0044】
また、受信器12の最小受信感度をPrとすれば、式3が成立することは明らかである。
【0045】
【0046】
具体的な数値を用いて検討する。空間光通信装置10及び空間光通信装置10Aのそれぞれの大きさにもよるが、大きな光学系を搭載することは避けたいことから、レンズ12aの半径rは、2センチメートル(cm)とする。送信光信号Ltの波長は、1500ナノメートル(nm)とする。また、送信器11の送信光信号Ltの送信パワー、すなわち、Poutは、典型的な値として10-2ワット(W)とする。光信号のビットレートを10ギガビット毎秒(Gbps)とすると、最小受信感度Prは、典型的な値として、10-4ワット(W)である。式3から、ω1は、20センチメートル(cm)以下とする必要があることが分かる。
【0047】
また、例えば、空間光通信装置10と空間光通信装置10Aとの間の相対速度を100メートル毎秒(m/s)とすれば、式2からバースト光の時間長tbは2×10-3秒よりも十分短い必要がある。また、空間光通信装置10と空間光通信装置10Aとの間の相対速度を0.1メートル毎秒(m/s)とすれば、式2からバースト光の時間長tbは2秒よりも十分短い必要がある。
【0048】
一方、バースト信号受信には同期するための時間が必要である。バースト信号受信において同期するための時間は高性能な受信器の場合10-8秒である。したがって、空間光通信装置10及び空間光通信装置10Aとの間の通信において、バースト光の持続時間は、を相対速度が100メートル毎秒(m/s)の場合、10-7秒から10-4秒程度とする。また、移動速度が0.1メートル毎秒(m/s)の場合、10-7秒から10-1秒程度とする。
【0049】
例えば、バースト信号の持続時間を10
-5秒とすれば一つのバーストで、10万ビットの情報を伝送することができる。10ギガビット毎秒(Gbps)信号を受信するためには、フォトダイオードが高速に動作する必要があり、小型であることが要求される。受信器12において、
図5に示したように、フォトダイオード12bの一辺の長さsは0.1ミリメートル(mm)となる。例えば、
図6に示したように、フォトダイオードアレイを用いた場合、フォトダイオードアレイがN×Nの配列でフォトダイオードを備えていると、Nが8の場合受光径は0.8ミリメートル(mm)となる。入射光がフォトダイオード上に集光されるために式4を満たす必要がある。
【0050】
【0051】
例えば、レンズ12aの焦点距離fが10センチメートル(cm)の時に、θ
0は、8×10
-3ラジアン(rad)以下である必要がある。したがって、
図7に示すように、送信器11と同様の光軸回転機構12eを備えてもよい。
【0052】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る空間光通信装置について説明する。
図9及び
図10は、第2実施形態に係る空間光通信装置の送信器111の概略を示す図である。なお、
図9は、送信器111を+Y側からY軸方向に沿ってY軸と反対向きに見た図である。
図10は、送信器111を-X側からX軸方向に沿ってX軸向きに見た図である。第2実施形態に係る空間光通信装置は、第1実施形態に係る空間光通信装置10の送信器11に換えて、送信器111を備える。
【0053】
送信器111は、複数の送信部111aと、レンズ111bと、を備える。送信部111aは、光ビーム生成部となる。すなわち、送信器111は、複数の光ビーム生成部を備える。複数の送信部111aのそれぞれは、半導体レーザ111cと、シリコン基板111dと、を備える。半導体レーザ111cは、送信光信号Ltを生成する。シリコン基板111dは、シリコン光導波路である入力光導波路111eと、1対nの光スイッチ111fと、シリコン光導波路である複数の出力光導波路111gと、を有する。送信光信号Ltは、入力光導波路111eに入力される。複数の出力光導波路111gのそれぞれの出力端111hは、レンズ111bの焦点面内に配置される。複数の出力光導波路111gのそれぞれの出力端111hがレンズ111bの焦点面内に配置されることにより、出射光はレンズ111bによって幾何光学的には平行光に変換される。
【0054】
また、複数の出力光導波路111gのそれぞれの出力端111hは、互いに位置が異なる。複数の出力光導波路111gのそれぞれの出力端111hが互いに位置が異なることによって、複数の出力光導波路111gのそれぞれの出力端111hから出射する光は、出力端111hに依存して異なる方向に出射される。光スイッチ111fによって、複数の出力光導波路111gの内の一つの出力光導波路111gを選択する。光スイッチ111fによって複数の出力光導波路111gの内の一つの出力光導波路111gを選択すると、光ビームの出射方向を制御できる。
【0055】
図11を利用して具体的数値で構成を検討する。一般にスポットサイズを拡大した、シリコン光導波路からの出射光のビーム径(半径、ω
s)は、2マイクロメートル(μm)である。また、導波路と光軸間の距離d
sを0.5ミリメートル(mm)とする。レンズ111bの焦点距離f
sを5センチメートル(cm)とする。ここで、導波路端から123までの距離l1を5.22センチメートル(cm)とする。光ビームをガウスビームで近似すると、レンズ111bによって、ビームウエスト径ω
outは、45マイクロメートル(μm)となる。また、ビームの角度θ
sは、幾何光学近似で式5で表される。式5を用いれば、ビーム径ω
sは約0.01ラジアン(rad)となる。
【0056】
【0057】
送信器111から20メートル(m)離れた地点では、ビーム径(半径)は約20センチメートル(cm)となる。また、角度θsに対応して光軸から20センチメートル(cm)ずれる。すなわち、導波路端間隔を0.5ミリメートル(mm)として、ビームを出射する導波路を切り替えれば、20メートル(m)離れた地点で、ビーム径20センチメートル(cm)のビームを20センチメートル(cm)ずつ移動、走査できる。
【0058】
図8及び
図9に示すように、複数の送信部111aを積層することで、Y軸方向にもビームを走査できる。熱光学効果を利用するシリコン導波路光スイッチの動作速度は30マイクロ秒(μs)程度と高速である。
【0059】
なお、半導体レーザ111cは光生成部の一例、シリコン基板111dが光切替部の一例、である。
【0060】
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態に係る空間光通信装置について説明する。
図12及び
図13は、第3実施形態に係る空間光通信装置の送信器211の概略を示す図である。なお、
図12は、送信器211を+Y側からY軸方向に沿ってY軸と反対向きに見た図である。
図13は、送信器211を-X側からX軸方向に沿ってX軸向きに見た図である。第3実施形態に係る空間光通信装置は、第1実施形態に係る空間光通信装置10の送信器11に換えて、送信器211を備える。送信器211は、光ビーム径変更部として作用する。
【0061】
送信器211は、送信部211aと、複数のレンズ211bと、を備える。送信部211aは、半導体レーザ211cと、シリコン基板211dと、を備える。半導体レーザ111cは、送信光信号Ltを生成する。シリコン基板211dは、シリコン光導波路である入力光導波路211eと、1対nの光スイッチ211fと、シリコン光導波路である複数の出力光導波路211gと、を有する。送信光信号Ltは、入力光導波路211eに入力される。複数の出力光導波路211gのそれぞれの出力端211hは、対応するレンズ211bに対向する位置に配置される。
【0062】
複数のレンズ211bのそれぞれは、互いに焦点距離が異なる。複数のレンズ211bのそれぞれの焦点距離、導波路端までの距離が互いに異なるので、複数のレンズ211bのそれぞれによって出力端に依存して異なるビーム径で出射される。光スイッチ211fによって複数の出力光導波路211gの内の一つの出力光導波路211gを選択すると、光ビームのビーム径を制御できる。
【0063】
図14を利用して具体的数値で構成を検討する。一般に石英光導波路からの出射光のビーム径(半径、ω
s)は、5マイクロメートル(μm)である。ここで、レンズ211bの焦点距離が1、2及び3センチメートル(cm)であるレンズ211bについて検討する。
【0064】
焦点距離が1センチメートル(cm)であるレンズ211bについて、例えば、導波路端までの距離を1.25センチメートル(cm)とする。すなわち、レンズ211bの焦点距離を1センチメートル(cm)、導波路端までの距離を1.25センチメートル(cm)とする。上記の場合、ビームウエスト径は20マイクロメートル(μm)となり、20メートル(m)離れた位置でのビーム径は、50センチメートル(cm)となる。
【0065】
焦点距離が2センチメートル(cm)であるレンズ211bについて、例えば、導波路端までの距離を2.25センチメートル(cm)とする。すなわち、レンズ211bの焦点距離を2センチメートル(cm)、導波路端までの距離を2.25センチメートル(cm)とする。上記の場合、ビームウエスト径は40マイクロメートル(μm)となり、20メートル(m)離れた位置でのビーム径は、25センチメートル(cm)となる。
【0066】
焦点距離が3センチメートル(cm)であるレンズ211bについて、例えば、導波路端までの距離を3.25センチメートル(cm)とする。すなわち、レンズ211bの焦点距離を3センチメートル(cm)、導波路端までの距離を3.25センチメートル(cm)とする。上記の場合、ビームウエスト径は60マイクロメートル(μm)となり、20メートル(m)離れた位置でのビーム径は、16センチメートル(cm)となる。
【0067】
上述のように、光スイッチ211fを切り替えることにより、送信光信号Ltが照射する範囲を制御できる。例えば、レンズ直径を1.5センチメートル(cm)、導波路端の間隔を1.5センチメートル(cm)とすれば、隣接する導波路からの光ビームが隣接するレンズに入射したり、レンズが重なったりすることはない。すなわち、出射する導波路を選択することで光ビーム広がり角を変えることができる。X軸方向に光ビーム位置がシフトするが、20メートル(m)離れた受信側ではビーム径は15センチメートル(cm)以上に広がるので影響は僅かである。熱光学効果を利用する石英導波路光スイッチの動作速度は2ミリ秒(ms)程度と比較的高速である。
【0068】
なお、半導体レーザ211cは光生成部の一例、シリコン基板211dが光切替部の一例、である。
【0069】
≪第4実施形態≫
次に、本実施形態に係る空間光通信装置が用いられる状況について説明する。
図15は、本実施形態に係る空間光通信装置を用いた移動体500について説明する図である。
【0070】
<構成>
移動体500は、移動機構を有する装置である。移動体500は、移動可能な装置である。移動体500は、例えば、二足歩行型のロボット、車輪やキャタピラーを有する車、飛翔装置を有するドローン又は航空機、スクリューや水流ジェットによる船舶又は潜水艦等である。
【0071】
移動体500の間で、本実施形態に係る空間光通信装置を用いて光バースト信号を用いた通信を行う。
【0072】
図16は、移動体500の詳細について説明する図である。移動体500は、空間光通信装置10と、無線通信部510と、光ビーコン部520と、撮像部530と、距離測定部540と、移動機構部550と、中央制御部560と、を備える。
【0073】
無線通信部510は、電波により他の移動体500と通信を行う。無線通信部510は、空中線511と、無線制御回路512と、を備える。
【0074】
光ビーコン部520は、いわゆる、光ビーコン送受信装置である。光ビーコン部520は、全方位に光信号を送信する。また、光ビーコン部520は、全方位から光信号を受信する。光ビーコン部520は、送受信部521と、光ビーコン制御回路522と、を備える。
【0075】
図17は、光ビーコン部520の送受信部521の概要について説明する図である。送受信部521は、光受信部523と、光送信部524と、を備える。
【0076】
光受信部523は、全方位から受光できるように、複数のフォトダイオード525が異なる向きに取り付けられている。
【0077】
光送信部524は、複数の光源526から構成される。光送信部524における複数の光源526は、外部から視認することができる。光送信部524は、例として、四面体の頂点に光源526を配置している。例えば、他の移動体500が備える撮像部530により、光源526を撮像して、撮像部530が撮像した画像の2次元配置から、移動体500の姿勢を推定できる。
【0078】
また、光送信部524における複数の光源526は明るいので、撮像した画像から速度を容易に推定できる。また、光源526を数メガビット毎秒(Mbps)程度で低速に変調して、他の移動体500が備える光ビーコン部520で受信することにより、情報の伝送ができる。光ビーコン部520を利用することにより、電磁環境が悪いときにも低速の光通信ができる。
【0079】
撮像部530は、移動体500の周りを撮像する。撮像部530は、光学系531と、画像処理回路532と、を備える。光学系531は、例えば、ズームレンズ等の光学レンズ、レンズを保持する鏡筒及びレンズの向きを変える駆動装置等を備える。画像処理回路532は、撮像素子を備え、撮像素子で撮像した結果を画像として保存する。
【0080】
距離測定部540は、移動体500の周りにある対象物までの距離を測定する。距離測定部540は、例えば、ライダ(LiDAR:Light Detection And Ranging)である。距離測定部540は、光学系541と、距離処理回路542と、を備える。
【0081】
移動機構部550は、移動体500を移動させる駆動力を発生させる。移動体500は、例えば、モータ等を備える。
【0082】
中央制御部560は、移動体500全体を制御する。
【0083】
<処理>
複数の移動体500同士における通信手順について説明する。ここでは、
図15における移動体500aと移動体500bとが通信する場合について説明する。移動体500aが移動体500bに通信する必要が生じたとする。
【0084】
(ステップS10)
移動体500aが、無線通信部510を利用して、移動体500bへの通信リクエストを送信する。通信リクエストには、移動体500aの位置情報、移動情報及び姿勢情報等も含まれる。移動体500bがリクエストを直接受信してもよいし、移動体500aと移動体500bが端末となるネットワークを経由してもよい。また、移動体500aは、無線通信部510を利用せず、移動体500aの光ビーコン部520から光信号を送信して移動体500bの光ビーコン部520で受信するようにしてもよい。
【0085】
(ステップS20)
移動体500bが、リクエストを許可する場合、無線通信部510を利用して、許諾信号を移動体500aに送信する。同時に、移動体500bの位置情報、移動情報及び姿勢情報等を送信する。また、光ビーコン部520から光ビーコンが発せられ、低速信号が重畳され、最新の位置情報、移動情報及び固体識別情報等が送信される。なお、光ビーコン部520を用いて許諾信号及び位置情報等を送受信してもよい。さらに、光ビーコン部520は、複数の光源526を備えることから、撮像部530で撮像したときの光源配置から、移動体500bの姿勢や移動体500bまでの距離を推定してもよい。
【0086】
(ステップS30)
次に、移動体500bは光信号受信準備処理を行う。移動体500bは、無線通信部510で受信した電波信号、撮像部530から得られた画像信号及び光ビーコン部520で得られた光ビーコンに重畳された信号及び距離測定部540から得られた信号等から、移動体500aの位置情報と移動情報を得る。そして、移動体500bは、送信器11の光軸が移動体500aの方向になるように姿勢制御を行う。また、移動体500bの光ビーコン部520からの送信信号に情報を載せて、移動体500aの光ビーコン部520で受信することも可能である。移動体500aに向けて光ビーコン部520から光ビーコンを発する。光ビーコンには低速信号が重畳され、最新の位置情報、移動情報及び固体識別情報等が送信される。
【0087】
(ステップS40)
移動体500aも移動体500bと同様に姿勢制御を行う。
【0088】
(ステップS50)
姿勢制御が終了したら、送信器11及び受信器12を用いて互いに光バースト信号を送信、受信して情報を交換する。互いの位置情報、移動情報及び姿勢情報等は、常に更新して送信器11及び受信器12の光軸が一致するように制御する。
【0089】
上記の説明では、アイセイフティの制限が緩いことから、波長1500ナノメートル(nm)の光を利用するとしたが、水中では透過率の高い波長450から600ナノメートルの範囲の可視光を利用してもよい。また、複数の移動体500のそれぞれが異なる波長の光ビームを利用してもよい。波長フィルタを受信器12の前面に配置して、特定の波長のみ受光可能とすれば、送信側の移動体500を選択できる。
【0090】
また、ステップS50に換えて、以下のステップS55を行ってもよい。
【0091】
(ステップS55)
姿勢制御が終了したら、移動体500aの送信器11は、移動体500bの想定される位置の周囲を走査しながら同じ光バースト信号を送信する。移動体500bの送信器11は、移動体500aの想定される位置の周囲を走査しながら同じ光バースト信号を送信する。光バースト信号の持続時間における移動体500a及び移動体500bのそれぞれの移動距離が走査位置の変化に比較して小さいので、移動体500a及び移動体500bのそれぞれが走査範囲に入っていればいずれかの光バースト信号を受信できる。送信光信号Ltを走査することにより、姿勢制御又は送信方向制御の精度を緩和できる。
【0092】
≪第5実施形態≫
次に、本実施形態に係る空間光通信装置が用いられる状況について説明する。
図18は、本実施形態に係る空間光通信装置を用いた移動体500について説明する図である。ここでは、移動体500と移動機構を有しない固定した基地局600との間でも通信を行う。なお、移動体500と基地局600とをあわせて通信システム700という。
【0093】
基地局600は、移動機構を有しないため容易に大型化できる。基地局600は、複数の空間光通信装置10、複数の光ビーコン部520、複数の撮像部530及び複数の距離測定部540を搭載し、同時に複数の移動体500と通信できる。
【0094】
なお、基地局600と通信する場合、移動体500は、送信器11を省いたり、その他の装置を簡易なものとしたりすることで小型化した構成としてもよい。例えば、基地局600と、複数の移動体500とをマスタースレーブ動作させてもよい。
【0095】
複数の移動体500の送信光信号Ltは、異なる波長の光ビームを利用してもよい。基地局600の複数の受信器12がそれぞれ異なる波長の光ビームを利用してもよい。波長フィルタを受信器12の前面に配置して、特定の波長のみ受光可能とすれば、送信側の移動体500を選択できる。
【0096】
<作用、効果>
本開示の空間光通信装置によれば、多数の移動する装置間又は固定した装置から移動する装置との間で、ギガビット毎秒以上の伝送速度で、短時間に大容量の情報を、秘匿性を高くして送受信できる。本開示の空間光通信装置によれば、光送受信器を小型にできる。また、本開示の空間光通信装置によれば、通信対象を簡易にトラッキングできる。さらに、本開示の空間光通信装置によれば、悪電磁環境下や水中においても通信できる。
【0097】
本開示の空間光通信装置によれば、可視光又は近赤外光を利用する通信を移動体500間又は移動体500と固定した基地局600との間に提供できる。光による通信を行うことにより、数メガヘルツから数ギガヘルツの範囲の電磁波による無線通信が困難な電磁環境においても通信できる。
【0098】
また、全方位に光信号を送受信のできる低速の光通信装置である光ビーコンと特定の方向に指向性を持たせた光ビームを利用する高速の光バースト通信装置を組み合わせて、姿勢制御を行いながら高速かつ大容量の光通信ができる。
【0099】
複数の光源526からなる光ビーコン部520を撮像することで、移動体500の姿勢を推定できる。また、光ビーコン部520により、リンクを構成するための姿勢制御と光ビーム投射方向制御が容易となる。また、指向性のある光ビームを利用するので、秘匿性が非常に高い。450から600ナノメートルの範囲の波長帯を利用すれば、水中での長距離通信もできる。また、混信しないように、装置毎に異なる波長の光ビームを利用することもできる。
【0100】
眼球状の二軸回転機構に光ファイバ端を配置して、小型にかつ高速に光通信をできる。また、光導波路と光スイッチを利用した光ビームの方向制御を行うことにより、30マイクロ秒程度の時間で方向制御ができる。
【0101】
また、光導波路と光スイッチを利用した光ビーム径制御により、石英光導波路を利用して、2ミリ秒程度での方向制御ができる。これは、従来のメカニカルな光ビーム制御では困難である。
【0102】
さらに、光バースト信号を利用することによって、光バースト持続時間内では、追尾を行う必要が無く、高速に移動する装置間でも通信できる。また、光バースト信号を利用することによって、姿勢制御及び方向制御の精度を緩和できる。
【0103】
以上、空間光通信装置を実施形態により説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【符号の説明】
【0104】
10、10A 空間光通信装置
11、111、211 送信器
12 受信器
13 制御部
111 送信器
111a 送信部
111b レンズ
111c 半導体レーザ
111d シリコン基板
111e 入力光導波路
111f 光スイッチ
111g 出力光導波路
111h 出力端
211 送信器
211a 送信部
211b レンズ
211c 半導体レーザ
211d シリコン基板
211e 入力光導波路
211f 光スイッチ
211g 出力光導波路
211h 出力端
500、500a、500b 移動体
510 無線通信部
520 光ビーコン部
530 撮像部
550 移動機構部
560 中央制御部
600 基地局
700 通信システム