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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063383
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/16 20060101AFI20240502BHJP
   G11C 13/00 20060101ALI20240502BHJP
   H10B 61/00 20230101ALI20240502BHJP
【FI】
G11C11/16 230
G11C13/00 270F
G11C13/00 400H
H01L27/105 447
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171279
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩山 昌由
【テーマコード(参考)】
4M119
【Fターム(参考)】
4M119AA06
4M119AA15
4M119BB01
4M119CC05
4M119DD26
4M119DD37
4M119DD45
(57)【要約】
【課題】 抵抗変化記憶素子の抵抗状態を的確に判定することが可能な記憶装置を提供する。
【解決手段】
実施形態に係る記憶装置は、第1の配線WLと、第2の配線BLと、抵抗変化記憶素子とスイッチング素子とを含むメモリセルMCと、選択されたメモリセルに含まれる抵抗変化記憶素子の抵抗状態の判定動作を制御する判定動作制御回路50とを備え、判定動作制御回路は、第1の読み出し期間の判定対象電圧取得時点で第1の配線と第2の配線との間に印加されている判定対象電圧を取得し、第2の読み出し期間の参照電圧取得時点で第1の配線と第2の配線との間に印加されている参照電圧を取得し、判定対象電圧と参照電圧との電圧差に基づいて抵抗変化記憶素子に設定されていた判定対象抵抗状態を判定し、判定対象電圧取得時点及び参照電圧取得時点は選択されたメモリセルに応じて変化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが第1の方向に延伸する複数の第1の配線と、
それぞれが前記第1の方向と交差する第2の方向に延伸する複数の第2の配線と、
前記複数の第1の配線と前記複数の第2の配線との間に接続された複数のメモリセルであって、それぞれが、第1の抵抗状態及び前記第1の抵抗状態の抵抗よりも高い抵抗を有する第2の抵抗状態を呈することが可能な抵抗変化記憶素子と、前記抵抗変化記憶素子に対して直列に接続され、2端子間に印加される電圧が増加して第1の電圧に達するとオフ状態からオン状態に移行し、前記2端子間に印加される電圧が減少して前記第1の電圧よりも低い第2の電圧に達するとオン状態からオフ状態に移行する特性を有するスイッチング素子とを含む複数のメモリセルと、
選択された前記第1の配線と選択された前記第2の配線との間に接続された選択された前記メモリセルに含まれる前記抵抗変化記憶素子の抵抗状態の判定動作を制御する判定動作制御回路と、
を備える記憶装置であって、
前記判定動作制御回路は、
第1の読み出し期間において、前記選択された第2の配線がフローティング状態に設定されている状態で第1のオン状態設定時点で前記選択された第1の配線の電圧を変化させて前記選択されたメモリセルに含まれる前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第1のオン状態設定時点から第1の経過時間が経過した判定対象電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている判定対象電圧を取得し、
前記第1の読み出し期間の後の書き込み期間において、前記選択されたメモリセルに含まれる前記抵抗変化記憶素子に前記第1の抵抗状態及び前記第2の抵抗状態から選択された参照抵抗状態を設定し、
前記書き込み期間の後の第2の読み出し期間において、前記選択された第2の配線がフローティング状態に設定されている状態で第2のオン状態設定時点で前記選択された第1の配線の電圧を変化させて前記選択されたメモリセルに含まれる前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第2のオン状態設定時点から第2の経過時間が経過した参照電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている参照電圧を取得し、
前記判定対象電圧と前記参照電圧との電圧差に基づいて、前記第1の読み出し期間の前に前記選択されたメモリセルに含まれる前記抵抗変化記憶素子に設定されていた判定対象抵抗状態を判定し、
前記判定対象電圧取得時点及び前記参照電圧取得時点は、前記選択されたメモリセルに応じて変化する
ことを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
前記判定対象電圧取得時点及び前記参照電圧取得時点は、前記選択されたメモリセルに付随する抵抗成分及び容量成分に依存する
ことを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項3】
前記判定動作制御回路は、前記判定対象電圧と前記参照電圧との電圧差が第1の基準電圧差よりも小さい場合には前記判定対象抵抗状態が前記参照抵抗状態と同じであると判定し、前記判定対象電圧と前記参照電圧との電圧差が前記第1の基準電圧差以上の場合には前記判定対象抵抗状態が前記参照抵抗状態と異なっていると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項4】
前記第2の経過時間の長さは前記第1の経過時間の長さと同じである
ことを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項5】
前記判定動作制御回路は、前記判定対象電圧取得時点として、前記第1のオン状態設定時点から第1の予備的な経過時間が経過した第1の予備的な判定対象電圧取得時点、及び前記第1のオン状態設定時点から前記第1の予備的な経過時間よりも長い第2の予備的な経過時間が経過した第2の予備的な判定対象電圧取得時点の一方を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項6】
前記判定動作制御回路は、
前記第1の読み出し期間において、前記第1の予備的な判定対象電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている第1の予備的な判定対象電圧を取得し、前記第2の予備的な判定対象電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている第2の予備的な判定対象電圧を取得し、
前記第1の予備的な判定対象電圧と前記第2の予備的な判定対象電圧との電圧差に基づいて、前記判定対象電圧取得時点として前記第1の予備的な判定対象電圧取得時点及び前記第2の予備的な判定対象電圧取得時点の一方を選択する
ことを特徴とする請求項5に記載の記憶装置。
【請求項7】
前記判定動作制御回路は、
前記第1の予備的な判定対象電圧と前記第2の予備的な判定対象電圧との電圧差が第2の基準電圧差よりも小さい場合には前記判定対象電圧取得時点として前記第1の予備的な判定対象電圧取得時点を選択し、前記第1の予備的な判定対象電圧と前記第2の予備的な判定対象電圧との電圧差が前記第2の基準電圧差以上の場合には前記判定対象電圧取得時点として前記第2の予備的な判定対象電圧取得時点を選択する
ことを特徴とする請求項6に記載の記憶装置。
【請求項8】
前記判定動作制御回路は、
前記第2の読み出し期間において、前記第2のオン状態設定時点から前記第1の予備的な経過時間が経過した第1の予備的な参照電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている第1の予備的な参照電圧を取得し、前記第2のオン状態設定時点から前記第2の予備的な経過時間が経過した第2の予備的な参照電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている第2の予備的な参照電圧を取得し、
前記第1の予備的な判定対象電圧と前記第2の予備的な判定対象電圧との電圧差が第2の基準電圧差よりも大きい場合には、前記判定対象電圧取得時点として前記第1の予備的な判定対象電圧取得時点を選択する第1の選択を行い、
前記第1の選択が行われた場合に、前記第1の予備的な判定対象電圧と前記第1の予備的な参照電圧との電圧差が第3の基準電圧差よりも小さい場合には、前記参照電圧取得時点として前記第1の予備的な参照電圧取得時点を選択し、前記第1の予備的な判定対象電圧と前記第1の予備的な参照電圧との電圧差が前記第3の基準電圧差以上の場合には、前記参照電圧取得時点として前記第2の予備的な参照電圧取得時点を選択する
ことを特徴とする請求項6に記載の記憶装置。
【請求項9】
前記判定動作制御回路は、
前記第1の読み出し期間の第1のサブ期間において、前記選択された第2の配線がフローティング状態に設定されている状態で第1の予備的なオン状態設定時点で前記選択された第1の配線の電圧を変化させて前記選択されたメモリセルに含まれる前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第1の予備的なオン状態設定時点から第1の予備的な経過時間が経過した第1の予備的な判定対象電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている第1の予備的な判定対象電圧を取得し、
前記第1の読み出し期間の第2のサブ期間において、前記選択された第2の配線がフローティング状態に設定されている状態で第2の予備的なオン状態設定時点で前記選択された第1の配線の電圧を変化させて前記選択されたメモリセルに含まれる前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第2の予備的なオン状態設定時点から第2の予備的な経過時間が経過した第2の予備的な判定対象電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている第2の予備的な判定対象電圧を取得し、
前記第1の予備的な判定対象電圧と前記第2の予備的な判定対象電圧との電圧差に基づいて、前記第1の予備的な判定対象電圧取得時点及び前記第2の予備的な判定対象電圧取得時点の一方を前記判定対象電圧取得時点として選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項10】
前記判定動作制御回路は、前記判定対象電圧取得時点及び前記参照電圧取得時点を、前記複数のメモリセルが設けられたメモリセルアレイ領域における前記選択されたメモリセルの位置に基づいて決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項11】
前記判定動作制御回路は、前記判定対象電圧取得時点及び前記参照電圧取得時点を、前記判定対象電圧及び前記参照電圧を検出する電圧検出部から前記選択されたメモリセルの位置までの距離に基づいて決定する
ことを特徴とする請求項10に記載の記憶装置。
【請求項12】
前記第1の経過時間の長さ及び前記第2の経過時間の長さは、前記電圧検出部から前記選択されたメモリセルまでの距離が長い場合の方が前記電圧検出部から前記選択されたメモリセルまでの距離が短い場合よりも長い
ことを特徴とする請求項11に記載の記憶装置。
【請求項13】
それぞれが第1の方向に延伸する複数の第1の配線と、
それぞれが前記第1の方向と交差する第2の方向に延伸する複数の第2の配線と、
前記複数の第1の配線と前記複数の第2の配線との間に接続された複数のメモリセルであって、それぞれが、第1の抵抗状態及び前記第1の抵抗状態の抵抗よりも高い抵抗を有する第2の抵抗状態を呈することが可能な抵抗変化記憶素子と、前記抵抗変化記憶素子に対して直列に接続され、2端子間に印加される電圧が増加して第1の電圧に達するとオフ状態からオン状態に移行し、前記2端子間に印加される電圧が減少して前記第1の電圧よりも低い第2の電圧に達するとオン状態からオフ状態に移行する特性を有するスイッチング素子とを含む複数のメモリセルと、
選択された前記第1の配線と選択された前記第2の配線との間に接続された選択された前記メモリセルに含まれる前記抵抗変化記憶素子の抵抗状態の判定動作を制御する判定動作制御回路と、
を備える記憶装置であって、
前記判定動作制御回路は、
第1の読み出し期間において、前記選択された第2の配線がフローティング状態に設定されている状態で第1のオン状態設定時点で前記選択された第1の配線の電圧を変化させて前記選択されたメモリセルに含まれる前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第1のオン状態設定時点から第1の経過時間が経過した第1の予備的な判定対象電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている第1の予備的な判定対象電圧を取得し、
前記第1の読み出し期間において、前記選択された第2の配線がフローティング状態に設定されている状態で第2のオン状態設定時点で前記選択された第1の配線の電圧を変化させて前記選択されたメモリセルに含まれる前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第2のオン状態設定時点から前記第1の経過時間とは異なる第2の経過時間が経過した第2の予備的な判定対象電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている第2の予備的な判定対象電圧を取得し、
前記第1の読み出し期間の後の書き込み期間において、前記選択されたメモリセルに含まれる前記抵抗変化記憶素子に前記第1の抵抗状態及び前記第2の抵抗状態から選択された参照抵抗状態を設定し、
前記書き込み期間の後の第2の読み出し期間において、前記選択された第2の配線がフローティング状態に設定されている状態で第3のオン状態設定時点で前記選択された第1の配線の電圧を変化させて前記選択されたメモリセルに含まれる前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第3のオン状態設定時点から前記第1の経過時間が経過した第1の予備的な参照電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている第1の予備的な参照電圧を取得し、
前記第2の読み出し期間において、前記選択された第2の配線がフローティング状態に設定されている状態で第4のオン状態設定時点で前記選択された第1の配線の電圧を変化させて前記選択されたメモリセルに含まれる前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第4のオン状態設定時点から前記第2の経過時間が経過した第2の予備的な参照電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている第2の予備的な参照電圧を取得し、
前記第1の予備的な判定対象電圧と前記第2の予備的な判定対象電圧とを加算することで得られる判定対象電圧と、前記第1の予備的な参照電圧と前記第2の予備的な参照電圧とを加算することで得られる参照電圧との電圧差に基づいて、前記第1の読み出し期間の前に前記選択されたメモリセルに含まれる前記抵抗変化記憶素子に設定されていた判定対象抵抗状態を判定する
ことを特徴とする記憶装置。
【請求項14】
前記第1のオン状態設定時点と前記第2のオン状態設定時点とは同一時点であり、
前記第3のオン状態設定時点と前記第4のオン状態設定時点とは同一時点である
ことを特徴とする請求項13に記載の記憶装置。
【請求項15】
前記第1のオン状態設定時点は前記第1の読み出し期間の第1のサブ期間に含まれ、前記第2のオン状態設定時点は前記第1のサブ期間の後の第2のサブ期間に含まれ、
前記第3のオン状態設定時点は前記第2の読み出し期間の第3のサブ期間に含まれ、前記第4のオン状態設定時点は前記第3のサブ期間の後の第4のサブ期間に含まれる
ことを特徴とする請求項13に記載の記憶装置。
【請求項16】
前記判定動作制御回路は、前記判定対象電圧と前記参照電圧との電圧差が基準電圧差よりも小さい場合には前記判定対象抵抗状態が前記参照抵抗状態と同じであると判定し、前記判定対象電圧と前記参照電圧との電圧差が前記基準電圧差以上の場合には前記判定対象抵抗状態が前記参照抵抗状態と異なっていると判定する
ことを特徴とする請求項13に記載の記憶装置。
【請求項17】
前記抵抗変化記憶素子は、磁気抵抗効果素子である
ことを特徴とする請求項1又は13に記載の記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に磁気抵抗効果素子等の抵抗変化記憶素子及びセレクタ(スイッチング素子)を含むメモリセルが集積化された記憶装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-047950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抵抗変化記憶素子の抵抗状態を的確に判定することが可能な記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る記憶装置は、それぞれが第1の方向に延伸する複数の第1の配線と、それぞれが前記第1の方向と交差する第2の方向に延伸する複数の第2の配線と、前記複数の第1の配線と前記複数の第2の配線との間に接続された複数のメモリセルであって、それぞれが、第1の抵抗状態及び前記第1の抵抗状態の抵抗よりも高い抵抗を有する第2の抵抗状態を呈することが可能な抵抗変化記憶素子と、前記抵抗変化記憶素子に対して直列に接続され、2端子間に印加される電圧が増加して第1の電圧に達するとオフ状態からオン状態に移行し、前記2端子間に印加される電圧が減少して前記第1の電圧よりも低い第2の電圧に達するとオン状態からオフ状態に移行する特性を有するスイッチング素子とを含む複数のメモリセルと、選択された前記第1の配線と選択された前記第2の配線との間に接続された選択された前記メモリセルに含まれる前記抵抗変化記憶素子の抵抗状態の判定動作を制御する判定動作制御回路と、を備える記憶装置であって、前記判定動作制御回路は、第1の読み出し期間において、前記選択された第2の配線がフローティング状態に設定されている状態で第1のオン状態設定時点で前記選択された第1の配線の電圧を変化させて前記選択されたメモリセルに含まれる前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第1のオン状態設定時点から第1の経過時間が経過した判定対象電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている判定対象電圧を取得し、前記第1の読み出し期間の後の書き込み期間において、前記選択されたメモリセルに含まれる前記抵抗変化記憶素子に前記第1の抵抗状態及び前記第2の抵抗状態から選択された参照抵抗状態を設定し、前記書き込み期間の後の第2の読み出し期間において、前記選択された第2の配線がフローティング状態に設定されている状態で第2のオン状態設定時点で前記選択された第1の配線の電圧を変化させて前記選択されたメモリセルに含まれる前記スイッチング素子をオン状態に設定し、前記第2のオン状態設定時点から第2の経過時間が経過した参照電圧取得時点で前記選択された第1の配線と前記選択された第2の配線との間に印加されている参照電圧を取得し、前記判定対象電圧と前記参照電圧との電圧差に基づいて、前記第1の読み出し期間の前に前記選択されたメモリセルに含まれる前記抵抗変化記憶素子に設定されていた判定対象抵抗状態を判定し、前記判定対象電圧取得時点及び前記参照電圧取得時点は、前記選択されたメモリセルに応じて変化する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る記憶装置の全体的な構成を示した図である。
図2】第1の実施形態に係る記憶装置のメモリセルアレイ領域の基本的な構成を模式的に示した斜視図である。
図3】第1の実施形態に係る記憶装置の磁気抵抗効果素子の構成を模式的に示した断面図である。
図4】第1の実施形態に係る記憶装置のセレクタの電流-電圧特性を模式的に示した図である。
図5】第1の実施形態に係る記憶装置において、選択されたメモリセルの読み出し時における電流-電圧特性を模式的に示した図である。
図6】第1の実施形態に係る記憶装置の判定動作の基本的な原理である自己参照読み出しの動作を示したタイミング図である。
図7】第1の実施形態に係る記憶装置の判定動作制御回路の構成を示したブロック図である。
図8】第1の実施形態に係る記憶装置の判定動作制御回路によって行われる動作を示したフローチャートである。
図9】第1の実施形態に係る記憶装置の判定動作制御回路によって行われる動作を示したタイミング図である。
図10】第2の実施形態に係る記憶装置の判定動作制御回路によって行われる動作を示したフローチャートである。
図11】第2の実施形態に係る記憶装置の判定動作制御回路によって行われる動作を示したタイミング図である。
図12】第3の実施形態に係る記憶装置の判定動作制御回路によって行われる動作を示したフローチャートである。
図13】第4の実施形態に係る記憶装置の判定動作制御回路の構成を示したブロック図である。
図14】第4の実施形態に係る記憶装置の判定動作制御回路によって行われる動作を示したフローチャートである。
図15】第4の実施形態に係る記憶装置におけるメモリセルアレイ領域と電圧検出部との位置関係を模式的に示した図である。
図16】第5の実施形態に係る記憶装置の判定動作制御回路の構成を示したブロック図である。
図17】第5の実施形態に係る記憶装置の判定動作制御回路によって行われる動作を示したフローチャートである。
図18】第5の実施形態の変形例に係る記憶装置の判定動作制御回路によって行われる動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る記憶装置の全体的な構成を示した図である。
【0009】
図1に示した記憶装置は、メモリセルアレイ領域10と、ワード線選択/駆動回路20と、ビット線選択/駆動回路30と、制御回路40とを含んでいる。
【0010】
図2は、上述したメモリセルアレイ領域10の基本的な構成を模式的に示した斜視図である。
【0011】
図2に示すように、メモリセルアレイ領域10には、それぞれがX方向に延伸する複数のワード線(第1の配線)WLと、それぞれがX方向と交差するY方向に延伸する複数のビット線(第2の配線)BLと、複数のワード線WLと複数のビット線BLとの間に接続された複数のメモリセルMCとが設けられている。選択されたメモリセルMCに接続された選択されたワード線WLと選択されたメモリセルMCに接続された選択されたビット線BLとの間に所定の電流を流すことで、選択されたメモリセルMCに対して書き込みや読み出しを行うことが可能である。
【0012】
各メモリセルMCは、低抵抗状態(第1の抵抗状態)及び低抵抗状態の抵抗よりも高い抵抗を有する高抵抗状態(第2の抵抗状態)を呈することが可能な磁気抵抗効果素子(抵抗変化記憶素子)101と、磁気抵抗効果素子101に対して直列に接続されたセレクタ(2端子型のスイッチング素子)102とが含まれている。
【0013】
なお、図2に示した例では、磁気抵抗効果素子101がセレクタ102の上層側に設けられているが、磁気抵抗効果素子101がセレクタ102の下層側に設けられていてもよい。また、図2に示した例では、ビット線BLがワード線WLの上層側に設けられているが、ビット線BLがワード線WLの下層側に設けられていてもよい。
【0014】
図3は、メモリセルMCに含まれる磁気抵抗効果素子101の構成を模式的に示した断面図である。磁気抵抗効果素子101は、不揮発性の抵抗変化記憶素子であり、MTJ(magnetic tunnel junction)素子である。
【0015】
図3に示すように、磁気抵抗効果素子101は、記憶層(第1の磁性層)101aと、参照層(第2の磁性層)101bと、トンネルバリア層(非磁性層)101cとを含んでいる。
【0016】
記憶層101aは、可変の磁化方向を有する強磁性層である。参照層101bは、固定された磁化方向を有する強磁性層である。トンネルバリア層101cは、記憶層101aと参照層101bとの間に設けられた絶縁層である。なお、可変の磁化方向とは、所定の書き込み電流に対して磁化方向が変わることを意味する。固定された磁化方向とは、所定の書き込み電流に対して磁化方向が変わらないことを意味する。
【0017】
記憶層101aの磁化方向が参照層101bの磁化方向に対して平行である場合には磁気抵抗効果素子101は低抵抗状態となり、記憶層101aの磁化方向が参照層101bの磁化方向に対して反平行である場合には磁気抵抗効果素子101は高抵抗状態となる。したがって、磁気抵抗効果素子101は、抵抗状態に応じて2値データを記憶することが可能である。また、磁気抵抗効果素子101の抵抗状態は、磁気抵抗効果素子101を流れる書き込み電流の方向に応じて設定することができる。
【0018】
なお、図3に示した例は、記憶層101aが参照層101bよりも下層側に位置するボトムフリー型の磁気抵抗効果素子であるが、記憶層101aが参照層101bよりも上層側に位置するトップフリー型の磁気抵抗効果素子を用いてもよい。
【0019】
図4は、メモリセルMCに含まれるセレクタ(2端子型のスイッチング素子)102の電流-電圧特性を模式的に示した図である。
【0020】
図4に示すように、セレクタ102は、電流掃引を行う場合に、2端子間に印加される電圧が増加して閾値電圧(第1の電圧)Vthに達するとオフ状態からオン状態に移行し、2端子間に印加される電圧が減少して第1の電圧Vthよりも低いホールド電圧(第2の電圧)Vholdに達するとオン状態からオフ状態に移行する特性を有している。
【0021】
したがって、ワード線WLとビット線BLとの間に電圧を印加してセレクタ102をオン状態にすることで、セレクタ102に対して直列に接続された磁気抵抗効果素子101に電流が流れ、磁気抵抗効果素子101に対して書き込みや読み出しを行うことが可能となる。
【0022】
図1の説明に戻る。ワード線選択/駆動回路20は選択されたメモリセルMCに接続されたワード線WLを選択及び駆動するものであり、ビット線選択/駆動回路30は選択されたメモリセルMCに接続されたビット線BLを選択及び駆動するものである。選択されたワード線WLと選択されたビット線BLとの間に電圧を印加して選択されたメモリセルMCに所定の電流を流すことで、上述したように、選択されたメモリセルMCに対して書き込みや読み出しを行うことが可能となる。
【0023】
制御回路40は、ワード線選択/駆動回路20及びビット線選択/駆動回路30の制御を含む各種の制御を行うものであり、判定動作制御回路50を含んでいる。判定動作制御回路50は、選択されたメモリセルMCに含まれる磁気抵抗効果素子101の抵抗状態の判定動作を制御するものである。すなわち、判定動作制御回路50は、磁気抵抗効果素子101に予め設定されている判定対象抵抗状態(低抵抗状態又は高抵抗状態)を判定するものである。判定対象抵抗状態に基づいて、磁気抵抗効果素子101に予め設定されている2値データが判定される。
【0024】
まず、本実施形態の判定動作の基本的な原理である自己参照(self-reference)読み出し動作について説明する。
【0025】
図5は、選択されたメモリセルMCの読み出し時における電流-電圧特性を模式的に示した図である。図5において、横軸は、選択されたメモリセルMCの両端間に印加される電圧を示しており、選択されたワード線WLと選択されたビット線BLとの間に印加される電圧に概ね対応している。縦軸は、選択されたメモリセルMCに流れる電流を示しており、選択されたワード線WLと選択されたビット線BLとの間に流れる電流に概ね対応している。また、特性Lは磁気抵抗効果素子101が低抵抗状態に設定されているときの特性であり、特性Hは磁気抵抗効果素子101が高抵抗状態に設定されているときの特性である。
【0026】
磁気抵抗効果素子101及びセレクタ102を含むメモリセルMCでは、一般的に、磁気抵抗効果素子101の抵抗(低抵抗状態のときの抵抗、高抵抗状態のときの抵抗)よりも、セレクタ102のオフ抵抗の方が十分に大きい。そのため、セレクタ102がオフ状態からオン状態に移行するまでのメモリセルMCの電流-電圧特性(特性部分(a)に対応)は、磁気抵抗効果素子101が低抵抗状態に設定されている場合と磁気抵抗効果素子101が高抵抗状態に設定されている場合とで、実質的に同じである。すなわち、セレクタ102がオフ状態からオン状態に移行するときにメモリセルMCの両端間に印加されている電圧(閾値電圧Vth)は、セレクタ102が低抵抗状態に設定されている場合とセレクタ102が高抵抗状態に設定されている場合とで実質的に同じである。
【0027】
一方、セレクタ102がオフ状態からオン状態に移行した後は、磁気抵抗効果素子101が低抵抗状態の場合と高抵抗状態の場合とで、メモリセルMCの電流-電圧特性(特性部分(b)に対応)に差が生じてくる。例えば、セレクタ102がオン状態からオフ状態に移行するときにメモリセルMCの両端間に印加されているホールド電圧は、磁気抵抗効果素子101が低抵抗状態の場合にはVholdlであり、磁気抵抗効果素子101が高抵抗状態の場合にはVholdhである。したがって、メモリセルMCに読み出し電流を供給したときに、磁気抵抗効果素子101が低抵抗状態の場合と高抵抗状態の場合とで、メモリセルMCの両端間の電圧に電圧差が生じる。したがって、このような電圧の違いに基づいて、磁気抵抗効果素子101の抵抗状態(低抵抗状態、高抵抗状態)を判定することが可能である。
【0028】
図6は、本実施形態の判定動作の基本的な原理である自己参照読み出しの動作を示したタイミング図である。
【0029】
図6(a)は、後述する第1の読み出し期間、第2の読み出し期間及び書き込み期間のタイミングを示している。図6(b)は、ワード線WLの電位及びビット線BLの電位を示している。Lは磁気抵抗効果素子101に判定対象抵抗状態として低抵抗状態が設定されているときのビット線電位であり、Hは磁気抵抗効果素子101に判定対象抵抗状態として高抵抗状態が設定されているときのビット線電位である。
【0030】
以下、図6を参照して、自己参照読み出しの基本的な動作を説明する。なお、以下の説明は、自己参照読み出しの基本的な動作の説明であり、ワード線WLの抵抗及びビット線BLの抵抗は無視している。
【0031】
まず、ワード線WL及びビット線BLに同一の電圧Vuselを印加する。電圧Vuselの値は、上述した閾値電圧Vthの値の半分程度である。このとき、メモリセルMCに印加される電圧はゼロである。
【0032】
次に、ビット線BLに閾値電圧Vthよりも少し高い電圧(Vth+α)を印加する。ワード線WLには、電圧Vuselが印加されている。
【0033】
次に、ビット線BLをフローティング状態に設定する。このとき、ビット線BLの電圧は(Vth+α)に維持されている。
【0034】
次に、ビット線BLがフローティング状態に維持されている状態で、ワード線WLにグラウンド電圧(電圧ゼロ)VGNDを印加する。これにより、ワード線WLとビット線BLとの間には、閾値電圧Vthよりも高い電圧(Vth+α)が印加される。その結果、メモリセルMCには電圧(Vth+α)が印加され、メモリセルMC内のセレクタ102はオフ状態からオン状態に移行する。
【0035】
セレクタ102がオフ状態からオン状態に移行すると、メモリセルMCを介してワード線WLとビット線BLとの間に電流が流れる。このとき、ビット線BLはフローティング状態に維持されているため、電流が流れるにしたがってビット線BLの電位は自動的に徐々に減少する。
【0036】
ビット線BLの電位が減少してワード線WLとビット線BLとの間の電圧がホールド電圧Vhold(図6に示したVholdl又はVholdh)になると、メモリセルMCの両端間の電圧がホールド電圧Vholdとなり、セレクタ102がオン状態からオフ状態に移行する。
【0037】
すでに述べたように、セレクタ102がオフ状態からオン状態に移行した後は、メモリセルMCの両端間の電圧は、磁気抵抗効果素子101が低抵抗状態の場合と高抵抗状態の場合とで異なる。すなわち、ワード線WLとビット線BLとの間の電圧は、磁気抵抗効果素子101が低抵抗状態の場合と高抵抗状態の場合とで異なる。そこで、ビット線BLがフローティング状態となっている状態で、セレクタ102がオフ状態からオン状態に移行した時点から所定時間が経過した時点で、ワード線WLとビット線BLとの間に印加されている電圧を判定対象電圧として取得する。
【0038】
以上のようにして、第1の読み出し期間で判定対象電圧を取得した後、書き込み期間の動作を行う。書き込み期間では、メモリセルMC内の磁気抵抗効果素子101に低抵抗状態及び高抵抗状態の一方を参照抵抗状態として設定する。具体的には、ワード線WLとビット線BLとの間に所定の電圧を印加してセレクタ102をオフ状態からオン状態に移行させ、磁気抵抗効果素子101に所定の書き込み電流を流すことで、磁気抵抗効果素子101に参照抵抗状態が設定される。
【0039】
書き込み期間で磁気抵抗効果素子101に参照抵抗状態を設定した後、第2の読み出し期間の動作が行われる。
【0040】
第2の読み出し期間の動作の基本的なシーケンスは、上述した第1の読み出し期間の動作のシーケンスと同様である。
【0041】
すなわち、まず、ワード線WL及びビット線BLに同一の電圧Vuselを印加する。続いて、ビット線BLに電圧(Vth+α)を印加し、さらにビット線BLをフローティング状態に設定する。続いて、ビット線BLがフローティング状態に維持されている状態で、ワード線WLにグラウンド電圧(電圧ゼロ)を印加する。これにより、メモリセルMCには電圧(Vth+α)が印加され、メモリセルMC内のセレクタ102はオフ状態からオン状態に移行する。その結果、ビット線BLの電位は自動的に徐々に減少し、ワード線WLとビット線BLとの間の電圧がホールド電圧Vholdになると、セレクタ102がオン状態からオフ状態に移行する。
【0042】
すでに述べたように、ビット線BLがフローティング状態に維持されている状態でセレクタ102がオフ状態からオン状態に移行する。そこで、第1の読み出し動作と同様に、ビット線BLがフローティング状態になっている状態で、セレクタ102がオフ状態からオン状態に移行した時点から所定時間(第1の読み出し期間における所定時間と同じ)が経過した時点でワード線WLとビット線BLとの間に印加されている電圧を参照電圧として取得する。
【0043】
第1の読み出し期間の前に予め磁気抵抗効果素子101に設定されていた判定対象抵抗状態が、書き込み期間で磁気抵抗効果素子101に設定された参照抵抗状態と同じであれば、判定対象電圧と参照電圧とは実質的に同じ値になる。一方、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっていれば、判定対象電圧と参照電圧とは異なった値になる。具体的には、判定対象電圧と参照電圧との電圧差を基準電圧差(第1の基準電圧差)Vdif1と比較し、判定対象電圧と参照電圧との電圧差が基準電圧差Vdif1よりも小さければ、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と同じであると判定し、判定対象電圧と参照電圧との電圧差が基準電圧差Vdif1よりも大きければ、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっていると判定される。
【0044】
以上のようにして、判定対象電圧を参照電圧と比較することで、判定対象抵抗状態を判定することができる。
【0045】
上述した判定動作において、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっている場合に、判定対象電圧と参照電圧との電圧差は、セレクタ102がオフ状態からオン状態に移行した時点から判定対象電圧或いは参照電圧を取得するまでの時間に応じて変化する。したがって、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっている場合に判定対象電圧と参照電圧との電圧差ができるだけ大きくなる時点で、判定対象電圧或いは参照電圧を取得することが望ましい。
【0046】
また、セレクタ102がオフ状態からオン状態に移行した後にビット線BLの電位(ワード線WLとビット線BLとの間の電圧に対応)が減衰する速度は、メモリセルMCに応じて変化する。具体的には、ビット線BLの電位が減衰する速度は、メモリセルMCに付随する抵抗成分(寄生抵抗成分)R及び容量成分(寄生容量成分)Cに応じて変化する。すなわち、実際には、ワード線WL及びビット線BLには抵抗成分及び容量成分が存在し、メモリセルMCにも抵抗成分が存在するため、ビット線BLの電位が減衰する速度は、メモリセルアレイ領域10におけるメモリセルMCの位置等に応じて変化する。したがって、判定対象電圧と参照電圧との電圧差が大きくなるように、メモリセルMCに付随するRC成分に応じて判定対象電圧及び参照電圧を取得するタイミングを設定することが好ましい。
【0047】
本実施形態では、上述したような観点から、以下のようにして判定動作を行うようにしている。
【0048】
図7は、図1に示した判定動作制御回路50の構成(機能的な構成)を示したブロック図である。
【0049】
図7に示されるように、判定動作制御回路50は、フローティング状態設定部(フローティング状態設定回路)51、電圧制御部(電圧制御回路)52、時間制御部(時間制御回路)53、電圧取得部(電圧取得回路)54、電圧差判定部(電圧差判定回路)55、参照抵抗状態設定部(参照抵抗状態設定回路)56、抵抗状態判定部(抵抗状態判定回路)57を含んでいる。
【0050】
図8は、本実施形態において、判定動作制御回路50によって行われる動作を示したフローチャートである。
【0051】
図9は、本実施形態において、判定動作制御回路50で行われる動作を示したタイミング図である。横軸は時間であり、縦軸は電圧である。
【0052】
図9において、特性Aは、メモリセルMCに付随するRC成分が小さい場合のビット線電圧(ビット線電位)の特性である。特性A1は磁気抵抗効果素子101に高抵抗状態が設定されている場合であり、特性A2は磁気抵抗効果素子101に低抵抗状態が設定されている場合である。特性Bは、メモリセルMCに付随するRC成分が大きい場合のビット線電圧(ビット線電位)の特性である。特性B1は磁気抵抗効果素子101に高抵抗状態が設定されている場合であり、特性B2は磁気抵抗効果素子101に低抵抗状態が設定されている場合である。なお、実際には、ビット線電圧の放電特性は、図6に示したような特性であるが、図9では簡略化して直線で示している。
【0053】
以下、主として図6図7図8及び図9を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0054】
なお、以下の説明では、説明の簡単化のため、選択されたメモリセルMC(読み出し対象となるメモリセルMC)を単にメモリセルMC、選択されたメモリセルMCに接続されたワード線WLを単にワード線WL、選択されたメモリセルMCに接続されたビット線BLを単にビット線BLと呼ぶ場合もある。
【0055】
また、本実施形態では、磁気抵抗効果素子101に判定対象抵抗状態として高抵抗状態が設定されており、磁気抵抗効果素子101に参照抵抗状態として低抵抗状態が設定される場合について説明する。したがって、図9の特性A1及びB1は第1の読み出し期間におけるビット線電圧を示しており、図9の特性A2及びB2は第2の読み出し期間におけるビット線電圧を示している。そのため、本来は、図9の特性A1及びB1と図9の特性A2及びB2とは時間軸の異なった位置に示されるものであるが、説明をわかり易くするために、特性A1及びB1と特性A2及びB2とを時間軸の同じ位置に示している。
【0056】
まず、第1の読み出し期間では、図6に示した電圧がワード線WL及びビット線BLに設定された後、図9のtfの時点でビット線BLをフローティング状態に設定する(S11)。すなわち、図7のフローティング状態設定部51によって図1のビット線選択/駆動回路30を制御することで、ビット線BLがフローティング状態に設定される。
【0057】
次に、ビット線BLがフローティング状態に設定されている状態で、t0の時点(第1のオン状態設定時点)でワード線WLの電位(電圧)を変化させる。具体的には、電圧制御部52によってワード線選択/駆動回路20を制御することで、ワード線WLの電位がグラウンド電位(電位ゼロ)に設定される。その結果、ワード線WLとビット線BLとの間に印加される電圧が増大し、選択されたメモリセルMCに含まれるセレクタ102がオン状態に設定される(S12)。
【0058】
次に、オン状態設定時点t0から一定時間(第1の予備的な経過時間)が経過した後に、時間制御部53によって設定された時点t1(第1の予備的な判定対象電圧取得時点)で、ビット線BLがフローティング状態に設定されている状態で、ワード線WLとビット線BLとの間に印加されている電圧(第1の予備的な判定対象電圧)を電圧取得部54で取得する(S13)。すなわち、ビット線BLの電圧V11A(RC成分が小さい場合)又は電圧V11B(RC成分が大きい場合)を取得する。
【0059】
次に、第1のオン状態設定時点t0から一定時間(第2の予備的な経過時間)が経過した後に、ビット線BLがフローティング状態に設定されている状態で、時間制御部53によって設定された時点t1よりも後の時点t2(第2の予備的な判定対象電圧取得時点)で、ワード線WLとビット線BLとの間に印加されている電圧(第2の予備的な判定対象電圧)を電圧取得部54によって取得する(S14)。すなわち、ビット線BLの電圧V12A(RC成分が小さい場合)又は電圧V12B(RC成分が大きい場合)を取得する。
【0060】
なお、以後の説明では、上述した電圧V11A及び電圧V11Bを単に電圧V11と呼び、上述した電圧V12A及び電圧V12Bを単に電圧V12と呼ぶ場合もある。
【0061】
次に、電圧V11と電圧V12との電圧差(V11-V12)を基準電圧差(第2の基準電圧差)Vdif2と比較し、電圧差(V11-V12)が基準電圧差Vdif2よりも小さいか否かが電圧差判定部55で判定される(S15)。
【0062】
図9に示すように、RC成分が小さい場合(特性A)には、ビット線BLの電圧が減衰する速度は相対的に速い。RC成分が大きい場合(特性B)には、ビット線BLの電圧が減衰する速度は相対的に遅い。そのため、RC成分が小さい場合(特性A)の方が、RC成分が大きい場合(特性B)よりも、電圧差(V11-V12)の値が小さくなる。
【0063】
また、図9に示した例では、RC成分が小さい場合(特性A)には、t1の時点での予備的な判定対象電圧V11Aと予備的な参照電圧V21Aとの差(V11A-V21A)の方が、t2の時点での予備的な判定対象電圧V12Aと予備的な参照電圧V22Aとの差(V12A-V22A)よりも大きい。逆に、RC成分が大きい場合(特性B)には、t2の時点での予備的な判定対象電圧V12Bと予備的な参照電圧V22Bとの差(V12B-V22B)の方が、t1の時点での予備的な判定対象電圧V11Bと予備的な参照電圧V21Bとの差(V11B-V21B)よりも大きい。
【0064】
上述したことから、参照抵抗状態として低抵抗状態を設定する場合、電圧差(V11-V12)が基準電圧差Vdif2よりも小さい場合(特性Aに対応)には、t1の時点で判定対象電圧と参照電圧との差(V11A-V21A)を取得し、電圧差(V11-V12)が基準電圧差Vdif2以上の場合(特性Bに対応)には、t2の時点で判定対象電圧と参照電圧との差(V12B-V22B)を取得する。このようにすることで、判定対象抵抗状態を高い精度で判定することが可能である。
【0065】
上述したように、電圧差(V11-V12)が基準電圧差Vdif2よりも小さい場合には、判定対象電圧取得時点としてt1を選択し、t1の時点で取得された電圧V11Aを判定対象電圧として採用し、電圧V11Aをストアしておく(S16)。
【0066】
逆に、電圧差(V11-V12)が基準電圧差Vdif2以上の場合には、判定対象電圧取得時点としてt2を選択し、t2の時点で取得された電圧V12Bを判定対象電圧として採用し、電圧V12Bをストアしておく(S17)。上記のようにして、第1の読み出し期間が終了した後、参照電圧の書き込み期間に移行する。
【0067】
参照電圧の書き込み期間では、参照抵抗状態設定部56によって磁気抵抗効果素子101に低抵抗状態及び高抵抗状態から選択された参照抵抗状態を設定する。本例では、参照抵抗状態として低抵抗状態を設定する(S18、S19)。
【0068】
参照電圧の書き込み期間が終了した後、第2の読み出し期間に移行する。すでに述べたように、第2の読み出し期間の基本的な読み出し動作は、第1の読み出し期間の読み出し動作と同様である。
【0069】
すなわち、ビット線BLがフローティング状態に設定されている状態で、t0の時点(第2のオン状態設定時点)でワード線WLの電位(電圧)をグラウンド電位(電位ゼロ)に変化させる。これにより、選択されたメモリセルMCに含まれるセレクタ102がオン状態に設定される。
【0070】
判定対象電圧取得時点としてt1が選択された場合(S16が選択された場合)には、オン状態設定時点t0から一定時間が経過した時点t1(参照電圧取得時点)で、ビット線BLがフローティング状態に設定されている状態で、ワード線WLとビット線BLとの間に印加されている電圧(参照電圧)を取得する(S20)。すなわち、ビット線BLの電圧V21Aを取得する。
【0071】
判定対象電圧取得時点としてt2が選択された場合(S17が選択された場合)には、オン状態設定時点t0から一定時間が経過した時点t2(参照電圧取得時点)で、ビット線BLがフローティング状態に設定されている状態で、ワード線WLとビット線BLとの間に印加されている電圧(参照電圧)を取得する(S21)。すなわち、ビット線BLの電圧V22Bを取得する。
【0072】
上述したように、第1の読み出し期間における第1のオン状態設定時点t0から判定対象電圧取得時点(t1又はt2)までの経過時間(第1の経過時間)と、第2の読み出し期間における第2のオン状態設定時点t0から参照電圧取得時点(t1又はt2)までの経過時間(第2の経過時間)とは同じである。
【0073】
また、第1の読み出し期間における判定対象電圧取得時点(t1又はt2)及び第2の読み出し期間における参照電圧取得時点(t1又はt2)は、RC成分(RC時定数)に応じて決まる。すなわち、セレクタ102がオン状態からオフ状態に移行した時点をtoffとすると、t0<toff<t1<t2、t0<t1<toff<t2、或いは、t0<t1<t2<toff、となる。
【0074】
次に、上述した判定対象電圧と参照電圧とに基づいて、第1の読み出し期間の前に予め抵抗変化記憶素子101に設定されていた判定対象抵抗状態を判定する。すなわち、判定対象電圧と参照電圧との電圧差に基づいて判定対象抵抗状態を判定する。
【0075】
判定対象電圧取得時点としてt1が選択された場合(S16が選択された場合)には、判定対象電圧V11Aと参照電圧V21Aとの電圧差(V11A-V21A)を基準電圧差Vdif1(第1の基準電圧差)と比較する(S22)。
【0076】
判定対象電圧V11Aと参照電圧V21Aとの電圧差(V11A-V21A)が基準電圧差Vdif1よりも小さい場合(この場合、判定対象電圧は実質的にはV21Aである)には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と同じであると判定する(S23)。
【0077】
判定対象電圧V11Aと参照電圧V21Aとの電圧差(V11A-V21A)が基準電圧差Vdif1以上の場合には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっていると判定する(S24)。
【0078】
本実施形態では、参照抵抗状態は低抵抗状態であり、判定対象抵抗状態は高抵抗状態であるとして説明している。したがって、S24が選択され、判定対象抵抗状態は高抵抗状態であると判定される。
【0079】
判定対象電圧取得時点としてt2が選択された場合(S17が選択された場合)には、判定対象電圧V12Bと参照電圧V22Bとの電圧差(V12B-V22B)を基準電圧差Vdif1(第1の基準電圧差)と比較する(S25)。
【0080】
判定対象電圧V12Bと参照電圧V22Bとの電圧差(V12B-V22B)が基準電圧差Vdif1よりも小さい場合(この場合、判定対象電圧は実質的にはV22Bである)には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と同じであると判定する(S26)。
【0081】
判定対象電圧V12Bと参照電圧V22Bとの電圧差(V12B-V22B)が基準電圧差Vdif1以上の場合には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっていると判定する(S27)。
【0082】
本実施形態では、参照抵抗状態は低抵抗状態であり、判定対象抵抗状態は高抵抗状態であるとして説明している。したがって、S27が選択され、判定対象抵抗状態は高抵抗状態であると判定される。
【0083】
以上のように、本実施形態では、第1の読み出し期間で判定対象電圧を取得する判定対象電圧取得時点及び第2の読み出し期間で参照電圧を取得する参照電圧取得時点が、選択されたメモリセルMCに付随するRC成分に応じて変化する(選択される)。このように、適切な時点で取得された判定対象電圧と参照電圧との電圧差を用いて判定対象抵抗状態を判定することで、判定対象抵抗状態と参照抵抗状態とが異なっている場合に、判定対象電圧と参照電圧との電圧差が大きくなる時点で判定対象電圧と参照電圧との電圧差を取得することが可能である。そのため、判定対象電圧と参照電圧との電圧差が基準電圧差Vdif1よりも小さいか或いは大きいかを的確に判定することができ、判定対象抵抗状態を的確に判定することが可能となる。
【0084】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る記憶装置について説明する。なお、基本的な事項は第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態で説明した事項の説明は省略する。
【0085】
本実施形態における判定動作制御回路50の基本的な構成(機能的な構成)のブロック図は、第1の実施形態で示したブロック図(図7)と同様に表されるため、図示は省略する。
【0086】
図10は、本実施形態において、判定動作制御回路50によって行われる動作を示したフローチャートである。
【0087】
図11は、本実施形態において、判定動作制御回路50で行われる動作を示したタイミング図である。横軸は時間であり、縦軸は電圧である。
【0088】
本実施形態では、図11に示した特性A及び特性Bが第1の実施形態の図9に示した特性と異なっており、図11に示したような特性の場合に判定動作制御回路50によって行われる動作について説明する。
【0089】
なお、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、参照抵抗状態として低抵抗状態が設定されており、判定対象抵抗状態として高抵抗状態が設定されている場合について説明する。したがって、図11の特性A1及びB1は第1の読み出し期間におけるビット線電圧を示しており、図11の特性A2及びB2は第2の読み出し期間におけるビット線電圧を示している。
【0090】
まず、第1の読み出し期間では、第1の実施形態のS11及びS12と同様の動作が行われる。すなわち、図11のtfの時点でビット線BLをフローティング状態に設定し、t0の時点(第1のオン状態設定時点)でワード線WLの電圧をゼロに変化させて、セレクタ102をオン状態に設定する。
【0091】
次に、第1の実施形態と同様に、時点t1(第1の予備的な判定対象電圧取得時点)で第1の予備的な判定対象電圧V11A(RC成分が小さい場合)又はV11B(RC成分が大きい場合)を取得し、時点t2(第2の予備的な判定対象電圧取得時点)で第2の予備的な判定対象電圧V12A(RC成分が小さい場合)又はV12B(RC成分が大きい場合)を取得する(S31)。
【0092】
なお、本実施形態でも、以後の説明において、上述した電圧V11A及び電圧V11Bを単に電圧V11と呼び、上述した電圧V12A及び電圧V12Bを単に電圧V12と呼ぶ場合もある。
【0093】
次に、参照電圧の書き込み期間に移行し、第1の実施形態と同様にして、磁気抵抗効果素子101に参照抵抗状態を設定する。本実施形態では、参照抵抗状態として低抵抗状態が設定される(S32)。
【0094】
次に、第2の読み出し期間に移行し、時点t1(第1の予備的な参照電圧取得時点)で第1の予備的な参照電圧V21A(RC成分が小さい場合)又はV21B(RC成分が大きい場合)を取得し、時点t2(第2の予備的な参照電圧取得時点)で第2の予備的な参照電圧V22A(RC成分が小さい場合)又はV22B(RC成分が大きい場合)を取得する(S33)。
【0095】
次に、第1の予備的な判定対象電圧V11と第2の予備的な判定対象電圧V12との電圧差(V11-V12)を基準電圧差(第2の基準電圧差)Vdif2と比較し、電圧差(V11-V12)が基準電圧差Vdif2よりも大きいか否かを判定する(S34)。
【0096】
電圧差(V11-V12)が基準電圧差Vdif2よりも大きい場合は、RC成分が大きく、特性Bに対応する。この場合には、判定対象電圧取得時点として第1の予備的な判定対象電圧取得時点t1が選択され、t1の時点で取得された電圧V11Bを判定対象電圧として採用する(S35)。
【0097】
次に、電圧差(V11B-V21B)を基準電圧差Vdif3と比較し、電圧差(V11B-V21B)が基準電圧差Vdif3よりも小さいか否かを判定する(S36)。すなわち、t1の時点で取得された予備的な判定対象電圧V11Bと、t1の時点で取得された予備的な参照電圧V21Bとの電圧差(V11B-V21B)を基準電圧差Vdif3と比較する。
【0098】
電圧差(V11B-V21B)が基準電圧差Vdif3よりも小さい場合には、t1の時点で取得された電圧V21Bを参照電圧として採用する(S37)。
【0099】
次に、判定対象電圧V11Bと参照電圧V21Bとの電圧差(V11B-V21B)を基準電圧差Vdif1(第1の基準電圧差)と比較する(S38)。
【0100】
判定対象電圧V11Bと参照電圧V21Bとの電圧差(V11B-V21B)が基準電圧差Vdif1よりも小さい場合(この場合、判定対象電圧は実質的にはV21Bである)には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と同じであると判定する(S39)。
【0101】
判定対象電圧V11Bと参照電圧V21Bとの電圧差が(V11B-V21B)が基準電圧差Vdif1以上の場合には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっていると判定する(S40)。
【0102】
S36で電圧差(V11B-V21B)が基準電圧差Vdif3以上と判定された場合には、t2の時点で取得された電圧V22Bを参照電圧として採用する(S41)。
【0103】
次に、判定対象電圧V11Bと参照電圧V22Bとの電圧差(V11B-V22B)を基準電圧差Vdif1(第1の基準電圧差)と比較する(S42)。
【0104】
判定対象電圧V11Bと参照電圧V22Bとの電圧差(V11B-V22B)が基準電圧差Vdif1よりも小さい場合(この場合、判定対象電圧は実質的にはV21Bである)には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と同じであると判定する(S43)。
【0105】
判定対象電圧V11Bと参照電圧V22Bとの電圧差が(V11B-V22B)が基準電圧差Vdif1以上の場合には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっていると判定する(S44)。
【0106】
上述したような判定動作を行う理由について説明する。
【0107】
電圧差(V11B-V21B)が基準電圧差Vdif3以上の場合には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっている可能性が高いと考えられる。図11に示されるように、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっている場合には、判定対象電圧と参照電圧との差は、t1の時点で取得された判定対象電圧V11Bとt2の時点で取得された参照電圧V22Bとの差(V11B-V22B)が最も大きくなる。そのため、電圧差(V11B-V22B)を基準電圧差Vdif1と比較することで、高い確率で判定対象電圧が参照電圧と異なっていると判定することができる。
【0108】
一方、電圧差(V11B-V21B)が基準電圧差Vdif3よりも小さい場合には、判定対象抵抗状態は参照抵抗状態と同じである可能性が高い。この場合に、仮にt1の時点で取得された判定対象電圧V21B及びt2の時点で取得された参照電圧V22Bを採用したとすると、図11からわかるように、電圧差(V21B-V22B)はある程度の大きさを有している。したがって、仮に電圧差(V21B-V22B)を基準電圧差Vdif1と比較したとすると、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっていると誤って判定されるおそれがある。そのため、t1の時点で取得された判定対象電圧とt1の時点で取得された参照電圧との差を基準電圧差Vdif1と比較することで、高い確率で判定対象電圧が参照電圧と同じであると判定することができる。
【0109】
S34で、電圧差(V11-V12)が基準電圧差Vdif2以下であると判定された場合は、RC成分が小さく、特性Aに対応する。この場合には、判定対象電圧取得時点として第1の予備的な判定対象電圧取得時点t1が選択され、t1の時点で取得された電圧V11Aを判定対象電圧として採用する(S45)。また、t1の時点で取得された電圧V21Aを参照電圧として採用する(S46)。
【0110】
次に、判定対象電圧V11Aと参照電圧V21Aとの電圧差(V11A-V21A)を基準電圧差Vdif1(第1の基準電圧差)と比較する(S47)。
【0111】
判定対象電圧V11Aと参照電圧V21Aとの電圧差(V11A-V21A)が基準電圧差Vdif1よりも小さい場合(この場合、判定対象電圧は実質的にはV21Aである)には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と同じであると判定する(S48)。
【0112】
判定対象電圧V11Aと参照電圧V21Aとの電圧差(V11A-V21A)が基準電圧差Vdif1以上の場合には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっていると判定する(S49)。
【0113】
なお、本実施形態でも、参照抵抗状態は低抵抗状態であり、判定対象抵抗状態は高抵抗状態であるとして説明している。したがって、S40、S44或いはS49が選択され、判定対象抵抗状態は高抵抗状態であると判定される。
【0114】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、判定対象電圧取得時点及び参照電圧取得時点が選択されたメモリセルMCに付随するRC成分に応じて変化する(選択される)。したがって、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、判定対象抵抗状態を的確に判定することが可能となる。
【0115】
また、本実施形態では、RC成分が大きい場合に、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっていると予想されるときに、判定対象電圧をt1の時点で取得し、参照電圧をt2の時点で取得することで、判定対象抵抗状態をより的確に判定することが可能となる。
【0116】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る記憶装置について説明する。なお、基本的な事項は第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態で説明した事項の説明は省略する。
【0117】
本実施形態における判定動作制御回路50の基本的な構成(機能的な構成)のブロック図及び判定動作制御回路50で行われる基本的な動作のタイミング図は、第1の実施形態で示したブロック図(図7)及びタイミング図(図9)と同様に表されるため、図示は省略する。
【0118】
図12は、本実施形態において、判定動作制御回路50によって行われる動作を示したフローチャートである。なお、図12のフローチャートでは、第1の実施形態のフローチャート(図8)と異なる部分のみを示している。
【0119】
まず、第1の読み出し期間における第1のサブ期間において、第1の予備的な判定対象電圧を取得する(S51)。具体的には、第1の実施形態の図8のS11、S12及びS13の動作と同様にして、t1の時点(第1の予備的な判定対象電圧取得時点)で第1の予備的な判定対象電圧(V11A又はV11B)を取得する。
【0120】
次に、第1の読み出し期間における第2のサブ期間において、第2の予備的な判定対象電圧を取得する(S52)。具体的には、第1の実施形態の図8のS11、S12及びS14の動作と同様にして、t2の時点(第2の予備的な判定対象電圧取得時点)で第2の予備的な判定対象電圧(V12A又はV12B)を取得する。
【0121】
第2のサブ期間は、第1のサブ期間の後の期間である。すなわち、第1のサブ期間で図8のS11、S12及びS13の動作が行われて第1の予備的な判定対象電圧が取得された後、第2のサブ期間で図8のS11、S12及びS14の動作が行われて第2の予備的な判定対象電圧が取得される。したがって、本実施形態では、第1の読み出し期間において、実質的に2回の読み出し期間(第1のサブ期間及び第2のサブ期間)が設けられていることになる。
【0122】
次に、第1の実施形態の図8のS15の動作と同様にして、電圧V11と電圧V12との電圧差(V11-V12)を基準電圧差(第2の基準電圧差)Vdif2と比較する(S53)。
【0123】
以後の動作は、第1の実施形態の図8のS16~S27の動作と同様であり、最終的に判定対象抵抗状態が低抵抗状態であるか高抵抗状態であるかが判定される。
【0124】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、判定対象電圧取得時点及び参照電圧取得時点が選択されたメモリセルMCに付随するRC成分に応じて変化する(選択される)。したがって、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、判定対象抵抗状態を的確に判定することが可能となる。
【0125】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る記憶装置について説明する。なお、基本的な事項は第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態で説明した事項の説明は省略する。
【0126】
図13は、本実施形態における判定動作制御回路50の基本的な構成(機能的な構成)を示したブロック図である。
【0127】
判定動作制御回路50で行われる基本的な動作のタイミング図は、第1の実施形態で示したタイミング図(図9)と同様に表されるため、図示は省略する。
【0128】
図14は、本実施形態において、判定動作制御回路50によって行われる動作を示したフローチャートである。なお、図14のフローチャートでは、第1の実施形態のフローチャート(図8)と異なる部分のみを示している。
【0129】
本実施形態では、第1の読み出し期間において、まず、図13の位置判定部58によってメモリセルMCの位置を判定する(S61)。すなわち、図1のメモリセルアレイ領域10内における選択されたメモリセルMCの位置を判定する。本実施形態では、図15に示すように、メモリセルアレイ領域10は第1の領域10a及び第2の領域10bを含んでいる。図15に示すように、第1の領域10a及び第2の領域10bは、判定対象電圧及び参照電圧を検出する電圧検出部(電圧検出回路)60からの距離に基づいて決められている。第1の領域10aは電圧検出部60からの距離が相対的に短く、第2の領域10bは電圧検出部60からの距離が相対的に長い。位置判定部58では、選択されたメモリセルMCが、第1の領域10a及び第2の領域10bのどちらの領域に含まれているかが判定される。
【0130】
すでに述べたことからわかるように、電圧検出部60から選択されたメモリセルMCまでの距離が短い場合(選択されたメモリセルMCが第1の領域10aに含まれる場合)の方が、電圧検出部60から選択されたメモリセルMCまでの距離が長い場合(選択されたメモリセルMCが第2の領域10bに含まれる場合)よりも、RC成分が小さい。すなわち、選択されたメモリセルMCが第1の領域10aに含まれる場合の特性は図9の特性Aに概ね対応し、選択されたメモリセルMCが第2の領域10bに含まれる場合の特性は図9の特性Bに概ね対応する。
【0131】
そこで、本実施形態では、電圧検出部60から選択されたメモリセルMCまでの距離に応じて、すなわち、選択されたメモリセルMCが含まれる領域(第1の領域10a或いは第2の領域10b)に応じて、第1の読み出し期間における判定対象電圧取得時点(t1又はt2)及び第2の読み出し期間における参照電圧取得時点(t1又はt2)を決定する(S62、S63)。
【0132】
選択されたメモリセルMCが第1の領域10aに含まれる場合(S62)は、t1の時点が判定対象電圧取得時点及び参照電圧取得時点として選択される(S64)。
【0133】
選択されたメモリセルMCが第2の領域10bに含まれる場合(S63)は、t2の時点が判定対象電圧取得時点及び参照電圧取得時点として選択される(S65)。
【0134】
S62及びS64の動作が行われた場合には、t1の時点で取得された電圧V11Aを判定対象電圧として採用し、電圧V11Aをストアしておく(S66)。
【0135】
S63及びS65の動作が行われた場合には、t2の時点で取得された電圧V12Bを判定対象電圧として採用し、電圧V12Bをストアしておく(S67)。
【0136】
以後の動作は、第1の実施形態の図8のS18~S27と同様であり、最終的に判定対象抵抗状態が低抵抗状態であるか高抵抗状態であるかが判定される。
【0137】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、判定対象電圧取得時点及び参照電圧取得時点が選択されたメモリセルMCに付随するRC成分に応じて変化する(選択される)。したがって、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、判定対象抵抗状態を的確に判定することが可能となる。
【0138】
また、本実施形態では、選択されたメモリセルMCの位置に応じて判定対象電圧取得時点及び参照電圧取得時点が予め決められるので、電圧を取得する回数を低減することが可能である。
【0139】
上述した実施形態では、メモリセルアレイ領域10に2つの領域(第1の領域10a及び第2の領域10b)を設定し、電圧取得時点(判定対象電圧取得時点及び参照電圧取得時点)として2つの時点(t1及びt2)を設定したが、メモリセルアレイ領域10に3つ以上の領域を設定し、電圧検出部60からの距離に応じて電圧取得時点を3つ以上設定するようにしてもよい。
【0140】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る記憶装置について説明する。なお、基本的な事項は第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態で説明した事項の説明は省略する。
【0141】
図16は、本実施形態における判定動作制御回路50の基本的な構成(機能的な構成)を示したブロック図である。
【0142】
判定動作制御回路50で行われる基本的な動作のタイミング図は、第1の実施形態で示したタイミング図(図9)と同様に表されるため、図示は省略する。
【0143】
図17は、本実施形態において、判定動作制御回路50によって行われる動作を示したフローチャートである。
【0144】
まず、第1の読み出し期間において、第1の予備的な判定対象電圧V11及び第2の予備的な判定対象電圧V12を取得する(S71)。このときの基本的な動作は、第1の実施形態の図8で説明したS11~S14の動作と同様である。すなわち、オン状態設定時点t0から第1の経過時間が経過した第1の予備的な判定対象電圧取得時点t1で第1の予備的な判定対象電圧V11(V11A又はV11B)を取得し、オン状態設定時点t0から第2の経過時間(第1の経過時間とは異なる経過時間)が経過した第2の予備的な判定対象電圧取得時点t2で第2の予備的な判定対象電圧V12(V12A又はV12B)を取得する。
【0145】
次に、参照電圧の書き込み期間に移行し、磁気抵抗効果素子101に参照抵抗状態を設定する(S72)。このときの基本的な動作は、第1の実施形態の図8で説明したS18及びS19の動作と同様である。
【0146】
次に、第2の読み出し期間に移行し、第1の予備的な参照電圧V21及び第2の予備的な参照電圧V22を取得する(S73)。このときの基本的な動作は、第1の実施形態の図8で説明したS20及びS21の動作と同様である。ただし、本実施形態では、第1の実施形態とは異なり、オン状態設定時点t0から第1の経過時間が経過した第1の予備的な参照電圧取得時点t1で第1の予備的な参照電圧V21(V21A又はV21B)を取得し、且つオン状態設定時点t0から第2の経過時間が経過した第2の予備的な参照電圧取得時点t2で第2の予備的な参照電圧V22(V22A又はV22B)を取得する。すなわち、第1の予備的な参照電圧V21及び第2の予備的な参照電圧V22の両方を取得する。
【0147】
次に、電圧加算部(電圧加算回路)59により、第1の予備的な判定対象電圧V11と第2の予備的な判定対象電圧V12とを加算し、第1の予備的な参照電圧V21と第2の予備的な参照電圧V22とを加算する。このようにして得られた判定対象電圧(V11+V12)と参照電圧(V21+V22)との電圧差に基づいて、判定対象抵抗状態を判定する。具体的には、判定対象電圧(V11+V12)と参照電圧(V21+V22)との電圧差(V11+V12)-(V21+V22)が基準電圧差Vdifよりも小さいか否かが、電圧差判定部55で判定される(S74)。
【0148】
電圧差(V11+V12)-(V21+V22)が基準電圧差Vdifよりも小さい場合には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と同じであると判定される(S75)。また、電圧差(V11+V12)-(V21+V22)が基準電圧差Vdif以上の場合には、判定対象抵抗状態が参照抵抗状態と異なっていると判定される(S76)。
【0149】
以上のように、本実施形態では、第1の予備的な判定対象電圧V11と第2の予備的な判定対象電圧V12とを加算することで得られる判定対象電圧(V11+V12)と、第1の予備的な参照電圧V21と第2の予備的な参照電圧V22とを加算することで得られる参照電圧(V21+V22)との電圧差に基づいて、判定対象抵抗状態を判定する。
【0150】
そのため、図9の特性Bのように、t1時点での電圧差(V11-V21)が小さくても、t2時点での電圧差(V12-V22)が大きければ、判定対象電圧(V11+V12)と参照電圧(V21+V22)との電圧差をある程度大きくすることが可能である。また、図9の特性Aのように、t2時点での電圧差(V12-V22)が小さくても、t1時点での電圧差(V11-V21)が大きければ、判定対象電圧(V11+V12)と参照電圧(V21+V22)との電圧差をある程度大きくすることが可能である。特に、メモリセルMCのオフ特性が不十分な場合には、図9の特性Aのように、t2時点での電圧差(V12-V22)が小さくなる可能性が高くなるが、t1時点での電圧差(V11-V21)も取得することで、判定対象電圧(V11+V12)と参照電圧(V21+V22)との電圧差を大きくすることが可能である。したがって、本実施形態では、ある程度以上の判定精度で判定対象抵抗状態を判定することが可能である。
【0151】
また、本実施形態では、第1の実施形態の図8のS15のような判定動作を行わずに、判定対象電圧と参照電圧との電圧差を取得する。そのため、判定対象抵抗状態を判定するまでの動作(ステップ)を簡単化することが可能である。
【0152】
このように、本実施形態では、簡単な動作で且つある程度以上の判定精度で判定対象抵抗状態を判定することが可能である。
【0153】
図18は、本実施形態の変形例の動作を示したフローチャートである。
【0154】
まず、第1の読み出し期間の第1のサブ期間において、第1の予備的な判定対象電圧取得時点t1で第1の予備的な判定対象電圧V11を取得する(S71a)。すなわち、第1のサブ期間において、オン状態設定時点t0から第1の経過時間が経過した第1の予備的な判定対象電圧取得時点t1で第1の予備的な判定対象電圧V11を取得する。
【0155】
次に、第1の読み出し期間の第2のサブ期間において、第2の予備的な判定対象電圧取得時点t2で第2の予備的な判定対象電圧V12を取得する(S71b)。すなわち、第2のサブ期間において、オン状態設定時点t0から第2の経過時間(第1の経過時間とは異なる経過時間)が経過した第2の予備的な判定対象電圧取得時点t2で第2の予備的な判定対象電圧V12を取得する。
【0156】
第1のサブ期間と第2のサブ期間とは異なる期間であり、第2のサブ期間は第1のサブ期間の後の期間である。したがって、本実施形態では、第1の読み出し期間において、実質的に2回の読み出し期間(第1のサブ期間及び第2のサブ期間)が設けられていることになる。
【0157】
次に、参照電圧の書き込み期間に移行し、上述した実施形態の図17のS72の動作と同様にして、磁気抵抗効果素子101に参照抵抗状態を設定する(S72)。
【0158】
次に、第2の読み出し期間に移行する。第2の読み出し期間では、まず、第3のサブ期間において、第1の予備的な参照電圧取得時点t1で第1の予備的な参照電圧V21を取得する(S73a)。すなわち、第3のサブ期間において、オン状態設定時点t0から第1の経過時間が経過した第1の予備的な参照電圧取得時点t1で第1の予備的な参照電圧V21を取得する。
【0159】
次に、第2の読み出し期間の第4のサブ期間において、第2の予備的な参照電圧取得時点t2で第2の予備的な参照電圧V22を取得する(S73b)。すなわち、第4のサブ期間において、オン状態設定時点t0から第2の経過時間が経過した第2の予備的な参照電圧取得時点t2で第2の予備的な参照電圧V22を取得する。
【0160】
第3のサブ期間と第4のサブ期間とは異なる期間であり、第4のサブ期間は第3のサブ期間の後の期間である。したがって、本実施形態では、第2の読み出し期間において、実質的に2回の読み出し期間(第3のサブ期間及び第4のサブ期間)が設けられていることになる。
【0161】
以後、上述した実施形態の図17のS74、S75及びS76の動作と同様にして、判定対象抵抗状態が判定される(S74、S75、S76)。
【0162】
本変形例でも、上述した実施形態と同様に、簡単な動作で且つある程度以上の判定精度で判定対象抵抗状態を判定することが可能である。
【0163】
なお、上述した第1から第5の実施形態では、抵抗変化記憶素子として磁気抵抗効果素子を用いたが、抵抗状態(低抵抗状態、高抵抗状態)に基づいてデータを記憶する素子であれば、他の抵抗変化記憶素子を用いることも可能である。
【0164】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0165】
10…メモリセルアレイ領域 20…ワード線選択/駆動回路
30…ビット線選択/駆動回路 40…制御回路
50…判定動作制御回路
51…フローティング状態設定部 52…電圧制御部 53…時間制御部
54…電圧取得部 55…電圧差判定部 56…参照抵抗状態設定部
57…抵抗状態判定部 58…位置判定部 59…電圧加算部
60…電圧検出部
101…磁気抵抗効果素子 102…セレクタ
MC…メモリセル
WL…ワード線(第1の配線) BL…ビット線(第2の配線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18