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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063391
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/496 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
A61F13/496 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171296
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】細田 涼太
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA12
3B200CA03
3B200DA21
3B200DA27
3B200DE02
3B200DE10
(57)【要約】
【課題】廃棄方法を容易に認識することができ、力が弱い着用者や介護者であっても廃棄時に容易に外装体を破ることが可能なパンツ型吸収性物品を提供する。
【解決手段】本開示に係るパンツ型吸収性物品10は、着用時に着用者の腹部の前方に位置する腹側領域31と、着用者の背部の後方に位置する背側領域32と、着用者の股下に位置する股下領域33とを有する外装体30と、外装体30の少なくとも股下領域33に配置される吸収性本体20と、を備え、腹側領域31の左右の両端部と背側領域32の左右の両端部とは、互いに接合されて左右のサイドシール部36を構成し、外装体30の腹側領域31及び背側領域32の少なくとも一方は、左右のサイドシール部36の近傍に形成された破断誘導構造40と、破断誘導構造40の位置の目印となる目印部50とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用時に着用者の腹部の前方に位置する腹側領域と、着用者の背部の後方に位置する背側領域と、着用者の股下に位置する股下領域とを有する外装体と、
前記外装体の少なくとも前記股下領域に配置される吸収性本体と、を備え、
前記腹側領域の左右の両端部と前記背側領域の左右の両端部とは、互いに接合されて左右のサイドシール部を構成し、
前記外装体の前記腹側領域及び前記背側領域の少なくとも一方は、前記左右のサイドシール部の近傍に形成された破断誘導構造と、前記破断誘導構造の位置の目印となる目印部とを有する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記破断誘導構造は、前記腹側領域及び前記背側領域の双方に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記外装体の前記腹側領域及び前記背側領域の上端縁は、ウエスト開口を区画し、
前記外装体の前記股下領域の左右の両端縁は、左右の脚開口を区画し、
前記破断誘導構造は、複数の切断部と複数の非切断部とを交互に配置したミシン目状に形成され、前記ウエスト開口から前記左右の脚開口にかけて設けられる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記ウエスト開口から前記左右の脚開口にかけての前記破断誘導構造の総長さに対する前記複数の切断部の長さの総和の割合は、50%以上80%以下である
ことを特徴とする請求項3に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記破断誘導構造と前記サイドシール部との間の距離は、2mm以上12mm以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
前記目印部は、前記破断誘導構造の上端部及び下端部の少なくとも一方の近傍に設けられる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
前記目印部は、前記破断誘導構造の上端部及び下端部の双方の近傍に設けられる
ことを特徴とする請求項6に記載のパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パンツ型の使い捨ておむつが開示されている。このおむつの左右両側には、ウエスト開口部からレッグ開口部にかけて着用者の背丈方向に延びるサイドシール部が設けられる。また、おむつの胴回り部の肌面側には、一対の帯材(腹側帯材、背側帯材)が胴回り方向にその長手方向を向け延在している。サイドシール部は、外装シート腹側部、腹側帯材、背側帯材、外装シート背側部の順で4層構造となっており、これらをまとめてヒートエンボス加工により接合一体化している。腹側帯材のサイドシール部に挟持接合された部分の近傍には、ミシン目状の破断誘導切込構造が形成されている。使用後のおむつを廃棄するためにサイドシール部を引き裂く場合、着用者ないし介助者は、手指でサイドシール部の両側を摘んで、徐々にウエスト開口部側のサイドシール部上端縁から下方へ向けサイドシール部を引き裂く。そして、帯材の上端縁の部分にさしかかったとき、そこで帯材がそのまま残ってしまうことなく破断誘導切込構造をなすミシン目状の切込みが破断され、帯材が破断される。
【0003】
特許文献2には、使い捨ておむつが開示されている。この使い捨ておむつの外装体は、装着者の腹側に対向する前身頃に位置する前身頃シートと背側に対向する後身頃に位置する後身頃シートで形成され、前身頃シートと後身頃シートの幅方向の両側部はヒートシールによって溶着固定されサイドシール部を形成する。外側体の前身頃シートにおけるサイドシール部の外面には、複数の係合ピンからなる係合部が形成されている。前身頃シートにおけるサイドシール部の内側の近傍には、上端部から下端部に向かって延在するミシン目が設けられている。これにより、使い捨ておむつのサイズが大きい場合には、ミシン目を切断して、サイドシール部を前身頃シートの幅方向の中心部に向かって折曲げて、前身頃シートにサイドシール部を係合部で係合することによって、テープタイプの使い捨ておむつとして使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-136787号公報
【特許文献2】特開2018-51078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パンツ型吸収性物品は、交換の際に外装体の両脇のサイドシール部を裂いて脱ぐ方法が一般的である。しかし、従来のパンツ型吸収性物品は、比較的大きな力が必要となるので、力が弱い着用者(例えば、身体機能が衰え始めた着用者)や介護者にとって、サイドシール部を裂くために大きな力が必要であり、裂く箇所も分かり難いという課題があった。
【0006】
特許文献1に記載のパンツ型の使い捨ておむつ(パンツ型吸収性物品)では、使用後のパンツ型吸収性物品を脱ぐ際に、サイドシール部を上端縁から下方へ向け引き裂く。帯材に破断誘導切込構造が設けられているものの、力が弱い着用者や介護者にとっては、サイドシール部を上端縁から下方へ向け引き裂くこと自体が難しい場合がある。
【0007】
特許文献2に記載の使い捨ておむつ(パンツ型吸収性物品)では、前身頃シートにおけるサイドシール部の内側の近傍のミシン目で引き裂き可能となっているが、これはサイズ調節可能なテープタイプの吸収性物品として使用するためのものである。また、このパンツ型吸収性物品を使用後に廃棄する際には、ミシン目の存在又は位置が一見して分からず、通常通りサイドシール部を裂くこととなる。この場合、力が弱い着用者や介護者にとっては、このパンツ型吸収性物品の外装体を裂いて破棄することが難しい。
【0008】
そこで、本開示は、廃棄方法を容易に認識することができ、力が弱い着用者や介護者であっても廃棄時に容易に外装体を破ることが可能なパンツ型吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様のパンツ型吸収性物品は、着用時に着用者の腹部の前方に位置する腹側領域と、着用者の背部の後方に位置する背側領域と、着用者の股下に位置する股下領域とを有する外装体と、前記外装体の少なくとも前記股下領域に配置される吸収性本体と、を備え、前記腹側領域の左右の両端部と前記背側領域の左右の両端部とは、互いに接合されて左右のサイドシール部を構成し、前記外装体の前記腹側領域及び前記背側領域の少なくとも一方は、前記左右のサイドシール部の近傍に形成された破断誘導構造と、前記破断誘導構造の位置の目印となる目印部とを有する。
【0010】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様のパンツ型吸収性物品であって、前記破断誘導構造は、前記腹側領域及び前記背側領域の双方に設けられる。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様のパンツ型吸収性物品であって、前記外装体の前記腹側領域及び前記背側領域の上端縁は、ウエスト開口を区画し、前記外装体の前記股下領域の左右の両端縁は、左右の脚開口を区画し、前記破断誘導構造は、複数の切断部と複数の非切断部とを交互に配置したミシン目状に形成され、前記ウエスト開口から前記左右の脚開口にかけて設けられる。
【0012】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様のパンツ型吸収性物品であって、前記ウエスト開口から前記左右の脚開口にかけての前記破断誘導構造の総長さに対する前記複数の切断部の長さの総和の割合は、50%以上80%以下である。
【0013】
本発明の第5の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様のパンツ型吸収性物品であって、前記破断誘導構造と前記サイドシール部との間の距離は、2mm以上12mm以下である。
【0014】
本発明の第6の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様のパンツ型吸収性物品であって、前記目印部は、前記破断誘導構造の上端部及び下端部の少なくとも一方の近傍に設けられる。
【0015】
本発明の第7の態様は、上記第6の態様のパンツ型吸収性物品であって、前記目印部は、前記破断誘導構造の上端部及び下端部の双方の近傍に設けられる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、廃棄方法を容易に認識することができ、力が弱い着用者や介護者であっても廃棄時に容易に外装体を破ることが可能なパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るパンツ型吸収性物品の前方からの外観斜視図である。
図2図1のパンツ型吸収性物品を展開した状態の肌側からの平面図である。
図3図2のIIIーIII矢視断面図である。
図4】破断誘導構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るパンツ型吸収性物品10について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るパンツ型吸収性物品の前方からの外観斜視図である。図2は、図1のパンツ型吸収性物品を展開した状態の肌側からの平面図である。図3は、図2のIIIーIII矢視断面図である。図4は、破断誘導構造の説明図である。なお、図4は、パンツ型吸収性物品の左側の端部の概略図であって、着用者の正面から視た状態を示す。
【0019】
なお、各図は、パンツ型吸収性物品10の構成部材の寸法の大小関係を規定するものではなく、各構成部材の寸法は、パンツ型吸収性物品10の用途、使用対象とする着用者の年齢等に応じてそれぞれ広い範囲から適宜選択できる。
【0020】
本明細書において、パンツ型吸収性物品10の着用とは、体液の吸収前、吸収時、及び吸収後を問わず、パンツ型吸収性物品10を身体に装着した状態を意味する。また、「前側」とは、パンツ型吸収性物品10を着用したときに着用者の腹側となる方向を意味し、「後側」とは、着用者の背側となる方向を意味する。また、「上側」とは、パンツ型吸収性物品10を着用したときに着用者の頭側となる方向を意味し、「下側」とは、着用者の足側となる方向を意味する。また、左右方向とは、前方を向いた状態の着用者から視た左右方向をいう。また、パンツ型吸収性物品10の各構成部材の長手方向とは、パンツ型吸収性物品10を展開した状態(図2に示す状態)における長手となる方向を意味し、図中の矢印Xに沿った方向である。また、パンツ型吸収性物品10の各構成部材の幅方向とは、パンツ型吸収性物品10を展開した状態における長手方向と直交する方向(左右に沿った方向)をいい、図中の矢印Yに沿った方向を意味する。また、パンツ型吸収性物品10の各構成部材の厚み方向とは、各構成部材を積層する方向をいい、図中の矢印Zに沿った方向を意味する。また、パンツ型吸収性物品10の各構成部材の「肌側」とは、厚み方向のうちパンツ型吸収性物品10を着用したときの着用者の肌側の方向を意味し、「非肌側」とは、厚み方向のうち肌側とは反対の方向を意味する。また、体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0021】
(パンツ型吸収性物品)
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るパンツ型吸収性物品10は、着用者の股間部を前方、下方、及び後方から覆う前後方向に略帯状の形態を有する吸収性本体20と、吸収性本体20の外側に重なりつつ吸収性本体20の周囲に延びてパンツ状の外形形状を構成する外装体30と、を備える。外装体30は、後述するように、着用時に着用者の腹部の前方に位置する腹側領域31と、着用者の背部の後方に位置する背側領域32と、着用者の股下に位置する股下領域33とを有する。吸収性本体20は、主として外装体30の股下領域33の内面側に配置されるが、その一部(前後の端部)が外装体30の腹側領域31又は背側領域32にまで延在してもよい。
【0022】
なお、パンツ型吸収性物品10の展開時の長手方向(図2の矢印Xに沿った方向)の寸法Lは600mm以上1000mm以下、幅方向(図2の矢印Yに沿った方向)の寸法Wは450mm以上900mm以下であることが好ましい。パンツ型吸収性物品10の展開時の寸法を上記の範囲とすることにより、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ等の各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【0023】
(吸収性本体)
図3に示すように、吸収性本体20は、肌側の液透過性のトップシート21と、非肌側の液不透過性のバックシート22と、トップシート21及びバックシート22の間に配置される吸収体23とを含む。なお、上記と同様に、各種サイズの成人用のパンツ型吸収性物品を提供することができるようにするために、吸収性本体20の長手方向の寸法は300mm以上500mm以下、幅方向の寸法は100mm以上300mm以下であることが好ましい。
【0024】
(トップシート)
トップシート21は、体液が吸収体23へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されていればよい。基材の一例としては、例えば、サーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートなどが挙げられる。また、トップシート21には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート21には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0025】
トップシート21の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の点から、14g/m以上40g/m以下であることが好ましい。14g/mより小さい場合、吸収性本体20の製造時にトップシート21が破損し易くなる傾向があり、40g/mより大きい場合、肌に当たる際にトップシート21の硬さを感じる傾向があり、いずれの場合も好ましくない。トップシート21の形状は、特に制限されるものではないが、体液を漏れがないように吸収体23へと誘導するため、吸収体23を覆う形状であればよい。
【0026】
(バックシート)
バックシート22は、吸収体23が保持している体液の非肌側への漏れがないように液不透過性を備えた基材を用いて形成されていればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布等の複数の同種及び/又は異種の不織布を積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0027】
バックシート22の坪量は、強度及び加工性の観点から、15g/m以上60g/m以下であることが好ましい。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート22には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート22に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート22にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。例えば、樹脂とフィラーとを混練し、得られた混練物をフィルム状に成形し、得られたフィルムからフィラーを除去することにより、多孔性(通気性)樹脂フィルムを得ることができる。
【0028】
(吸収体)
吸収体23は、体液吸収材料を含み、好ましくは、基材と、基材に保持された体液吸収材料と、を含む。体液吸収材料としては、体液を吸収及び保持するものであれば特に限定されないが、例えば、フラッフパルプや高吸収性樹脂(Super Absorbent Polymer(SAP))等が挙げられる。吸収体23の基材は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布といった材料から形成される。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。また、吸収体23の基材の坪量は、吸収性能及び肌触りを良好なものとするため、100g/m以上800g/m以下とすることが好ましい。100g/mより小さい場合、尿等の体液を吸収する量が少なくなる傾向があり、800g/mよりも大きい場合、吸収体23を安定的に製造することが難しくなる傾向があり、いずれの場合も好ましくない。
【0029】
SAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物といった材料から形成されたものを挙げることができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩系が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウム系がより好ましい。吸収体23のSAPの坪量は、吸収性能及び肌触りを良好なものとする観点から、50g/m以上500g/m以下とすることが好ましい。50g/mより小さい場合、尿を吸収しにくい傾向があり、500g/mより大きい場合、吸収体23を製造する際にSAPの歩留まりが低下する傾向があり、いずれの場合も好ましくない。
【0030】
吸収体23は、基材とSAPとを含有するものが好ましく、その構成は、基材中にSAP粒子を混合して形成したもの、基材間にSAP粒子を固着したSAPシート等が挙げられる。また、SAP粒子の脱落防止や、吸収体23の形状安定化の観点から、吸収体23をキャリアシートに包むことが好ましい。また、SAPを繊維状に成形し、基材に混合して用いてもよい。キャリアシートの基材としては、親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布が挙げられる。吸収体23がキャリアシートを複数備える場合には、キャリアシートの基材は同一でも異なってもよい。
【0031】
吸収体23の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、矩形状、砂時計状、I字状、長方形の4角が丸まった角丸四角形状、長円状、一方向に長い楕円形状等が挙げられる。吸収体23は、2層以上を重ねて用いてもよい。
【0032】
吸収性本体20は、体液の横漏れを防止するための一対の立体ギャザー24を含んでもよい。立体ギャザー24は、幅方向(図2の矢印Yに沿った方向)の外端がバックシート22の肌側の面に、幅方向の中間部がトップシート21の肌側の面にそれぞれ固定され、幅方向の内端が自由端となってトップシート21の肌側の面に延在してもよい。立体ギャザーをこのように構成することで、立体ギャザーの自由端付近に起立性が付与され、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。
【0033】
(外装体)
図1及び図2に示すように、外装体30は、パンツ型吸収性物品10の外形形状を構成する部材であり、不織布及び伸縮性部材を積層して形成される。本実施形態では、外装体30は、非肌側の外装不織布シート34aと、外装不織布シート34aの肌側に位置する内装不織布シート34bと、外装不織布シート34aと内装不織布シート34bとの間に介在する複数の弾性伸縮部材35a,35bとを積層して形成される。なお、外装不織布シート34a及び内装不織布シート34bに加えて、吸収性本体20の周縁を覆う補助シートを、外装体30に設けてもよく、補助シートは、内装不織布シート34bに積層されていてもよい。
【0034】
外装不織布シート34a及び内装不織布シート34bには、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、好ましくはエアスルー不織布又はスパンボンド不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を用いることができる。これらの不織布を用いる場合、その坪量は、10g/m以上40g/m以下とすればよい。
【0035】
外装体30は、上述したように、着用時に着用者の腹部の前方に位置する腹側領域31と、着用者の背部の後方に位置する背側領域32と、着用者の股下に位置する股下領域33とを有する。腹側領域31の左右の両端部と背側領域32の左右の両端部とは、互いに接合されて(本実施形態では、超音波溶着によって互いに接合されて)左右のサイドシール部36を構成する。左右のサイドシール部36を超音波溶着で接合することによって、種々の材質の外装不織布シート34a及び内装不織布シート34bに対応し、十分な溶着強度と良好な風合いを両立することができる。
【0036】
図2に示すように、外装体30は、サイドシール部36を接合する前の展開した状態では、左右対称の形状を有する。腹側領域31と背側領域32とは、長手方向に互いに離間した位置に配置され、股下領域33は、腹側領域31と背側領域32との間に位置する。サイドシール部36は、腹側領域31及び背側領域32の幅方向の両端部に設けられて長手方向に沿って延びる。外装体30の股下領域33の内装不織布シート34bには、吸収性本体20が接合されている。外装体30は、内装不織布シート34b側が肌側となる状態で、腹側領域31の左右のサイドシール部36と背側領域32の左右のサイドシール部36とを接合することによって、図1に示すように、腹側領域31の左右の両端部と背側領域32の左右の両端部とが連続し、全体としての外形形状を構成する。なお、以下の説明では、外装体30についての方向は、パンツ状に構成されて着用者に着用された状態(図1に示す状態)における方向を示す。
【0037】
図1に示すように、外装体30は、着用時に着用者の胴が内側に挿通するウエスト開口37と、着用者の脚が内側に挿通する左右の脚開口38a,38bとを有する。ウエスト開口37は、腹側領域31及び背側領域32の上端縁によって区画され、周方向に伸縮性を有する。左右の脚開口38a,38bは、股下領域33の左右の両端縁によって区画される、周方向に伸縮性を有する。左右のサイドシール部36は、ウエスト開口37から左右の脚開口38a,38bまで上下方向に延びている。
【0038】
図1及び図2に示すように、腹側領域31及び背側領域32の上端縁部には、ウエスト開口37の周方向に伸縮可能な複数の弾性伸縮部材35aが、ウエスト開口37の周方向に沿って設けられる。また、股下領域33の左右の両端縁部には、左右の脚開口38a,38bの周方向に伸縮可能な複数の弾性伸縮部材35bが、左右の脚開口38a,38bの周方向に沿って設けられる。各弾性伸縮部材35a,35bは、外装不織布シート34a及び内装不織布シート34bに接合されている。弾性伸縮部材35a,35bとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができ、その太さは、300dtex以上1500dtex以下であることが好ましい。
【0039】
外装体30の腹側領域31及び背側領域32の少なくとも一方(本実施形態では、腹側領域31及び背側領域32の双方)は、左右のサイドシール部36の近傍に形成された破断誘導構造40と、破断誘導構造40の位置の目印となる目印部50とを有する。なお、本実施形態では、破断誘導構造40及び目印部50を、腹側領域31及び背側領域32の双方に設けたが、腹側領域31及び背側領域32のいずれか一方のみに設けてもよい。
【0040】
図4に示すように、破断誘導構造40は、使用後のパンツ型吸収性物品10を着用者から取り外す際に、外装体30の左右の両端部を破り易くするために破断を誘導可能な構造であって、上下方向に直線状に設けられる。破断誘導構造40は、左右のサイドシール部36を裂くよりも小さな力で外装体30を切断し易く形成された易切断部である。本実施形態の破断誘導構造40は、外装体30を予めカット(切断)している複数の切断部41と、カット(切断)していない複数の非切断部42とを交互に配置したミシン目状に形成され、ウエスト開口37から左右の脚開口38a,38bにかけて設けられる。複数の切断部41は、互いに離間した状態(その間の領域が非切断部42となる)で上下方向に直列的に配置される。非切断部42は、複数の切断部41のうち最も上側の切断部41とウエスト開口37との間にも設けられ、また、複数の切断部41のうち最も下側の切断部41と左右の脚開口38a,38bとの間にも設けられる。なお、図4には、外装体30の左前側の破断誘導構造40が図示されているが、図示されていない外装体30の左後側、右前側、及び右後側の破断誘導構造40も同様の構成を有する。
【0041】
破断誘導構造40の総長さA(mm)は、全ての切断部41の長さa1の総和(Σa1)と、全ての非切断部42の長さa2の総和(Σa2)とを足した値であり、左右のサイドシール部36の上下方向の長さと略同じ長さとなる。
【0042】
破断誘導構造40の総長さAに対する複数の切断部41の長さa1の総和(Σa1)の割合(Σa1/A×100)は、50%以上80%以下であることが好ましい。この範囲に設定することによって、使用時の外装体30の強度(丈夫さ)を確保しつつ、使用後に取り外す際の破り易さを確保することができる。
【0043】
破断誘導構造40は、外装体30のうち、左右のサイドシール部36から幅方向の内側へ離間した位置に配置される。左右のサイドシール部36から幅方向の内側への破断誘導構造40の離間距離Bは、2mm以上12mm以下であることが好ましい。この範囲に設定することによって、断誘導構造40の左右のサイドシール部36への挟持埋在を防ぎ、破断誘導構造40による弾性伸縮部材35a、35bの切断による着用性の悪化を防ぐことができる。左右のサイドシール部36から幅方向の内側への破断誘導構造40の離間距離Bを2mmよりも短くすると、製造時にサイドシール部36に破断誘導構造40が埋在してしまい、引き裂き性が低下してしまう可能性がある。また、左右のサイドシール部36から幅方向の内側への破断誘導構造40の離間距離Bを12mmよりも長くすると、破断誘導構造40によってパンツ型吸収性物品10の弾性伸縮部材35a、35b(糸ゴム等)の胴体正面もしくは背面の中心に近い箇所が切断されるため、パンツ型吸収性物品10のフィット性が低下する可能性がある。
【0044】
なお、本実施形態では、破断誘導構造40を、複数の切断部41と複数の非切断部42とを交互に配置したミシン目状に形成したが、これに限定されるものではなく、破断誘導構造40は、左右のサイドシール部36を裂くよりも小さな力で外装体30を切断し易く形成された易切断部であればよい。例えば、破断誘導構造40を外装体30の他の領域よりも薄肉に形成してもよい。
【0045】
図1及び図4に示すように、目印部50は、破断誘導構造40の位置を視認可能にするための目印であって、外部から視認可能に、外装体30の表面にプリント等によって表示される。
【0046】
本実施形態の目印部50は、破断誘導構造40の上端部及び下端部の少なくとも一方(本実施形態では、上端部及び下端部の双方)の近傍に設けられる。なお、破断誘導構造40の近傍とは、破断誘導構造40に隣接する位置のみならず、破断誘導構造40に重なる位置も含む。また、本実施形態では、目印部50を、破断誘導構造40の上端部及び下端部の双方の近傍に設けたが、破断誘導構造40の上端部及び下端部のいずれか一方の近傍のみに設けてもよい。
【0047】
目印部50としては、例えば、破る方向を指し示すことが可能な矢印、三角形、V形状や、又は破る方向を指し示さない星型、四角形、丸等の形状の模様が挙げられる。矢印、三角形、V形状の目印部50は、破断誘導構造40の上端部の近傍に設ける場合には、鋭角側を下方へ向けて表示し、破断誘導構造40の下端部の近傍に設ける場合には、鋭角側を上方へ向けて表示することによって、破る方向を指し示すことができる。図1及び図4には、目印部50として矢印を設けた状態が図示されている。
【0048】
なお、本実施形態では、目印部50を、破断誘導構造40の上端部及び下端部の少なくとも一方の近傍に設けたが、これに限定されるものではない。例えば、外装体30の色(例えば白色)とは異なる色の帯状又は線状のラインを目印部50として、破断誘導構造40の近傍(隣接する位置又は重なる位置)に、ウエスト開口37から左右の脚開口38a,38bまで延ばしてもよい。
【0049】
次に、使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から取り外す場合について説明する。
【0050】
使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から取り外す場合、着用者又は介護者は、目印部50を視認し、破断誘導構造40の位置を認識する。着用者又は介護者は、左右の片側ずつ、破断誘導構造40の上端又は下端から、破断誘導構造40に沿って外装体30を破り、使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から取り外す。
【0051】
上記のように構成されたパンツ型吸収性物品10では、外装体30の腹側領域31及び背側領域32の少なくとも一方は、左右のサイドシール部36の近傍に形成された破断誘導構造40を有する。破断誘導構造40は、左右のサイドシール部36を裂くよりも小さな力で外装体30を切断し易く形成された易切断部であるので、使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から取り外す際に、着用者又は介護者は、左右のサイドシール部36を裂くよりも小さな力で、外装体30を容易に破ることができる。このため、力が弱い着用者や介護者であっても廃棄時に容易に外装体30を破り、使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から取り外すことができる。
【0052】
また、破断誘導構造40は、外装体30を切断し易く形成された易切断部であるので、着用者又は介護者は、左右のサイドシール部36のパターンの形状に拘わらず容易に外装体30を破り、使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から取り外すことができる。
【0053】
また、破断誘導構造40の位置の目印となる目印部50を有するので、使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から取り外す際に、着用者又は介護者は、破断誘導構造40の位置を容易に認識することができる。このため、着用者又は介護者は、破断誘導構造40を使用して使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から取り外し可能であること(廃棄方法)を、容易に認識することができる。
【0054】
このように、本実施形態によれば、廃棄方法を容易に認識することができ、力が弱い着用者や介護者であっても廃棄時に容易に外装体30を破ることが可能なパンツ型吸収性物品10を提供することができる。
【0055】
また、目印部50を、破る方向を指し示すことが可能な形状(上述した矢印等)とした場合には、着用者又は介護者は、目印部50が指し示す方向に沿って破断誘導構造40を破ればよいことを直感的に認識することができる。このため、破断誘導構造40を使用して使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から取り外し可能であることを、更に容易に認識することができる。
【0056】
また、破断誘導構造40を、外装体30の腹側領域31及び背側領域32の双方に設けることによって、前側からのみならず、後側からも外装体30を破ることができ、使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から容易に取り外すことができる。このため、例えば、着用者である被介護者がうつ伏せになっている場合や、横向きに寝転んでいる場合であっても、介護者は、後側から外装体30を破って使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から容易に取り外すことができる。
【0057】
また、ミシン目状の破断誘導構造40を、ウエスト開口37から左右の脚開口38a,38bにかけて設けるので、外装体30の上端側(ウエスト開口37側)、下端側(左右の脚開口38a,38b側)、及び中間部のいずれからも、外装体30を容易に破ることができる。
【0058】
また、目印部50を、破断誘導構造40の上端部及び下端部の少なくとも一方の近傍に設けるので、使用済みのパンツ型吸収性物品10を着用者から取り外す際に、着用者又は介護者は、目印部50を設けている部分から破断誘導構造40を破ることが可能であることを、直感的に認識することができる。
【0059】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【実施例0060】
実施例1及び比較例1~3のパンツ型吸収性物品を製造した。そして、製造したパンツ型吸収性物品について、以下の2つの項目(破り易さ、丈夫さ)の評価を行った。
【0061】
「破り易さ」の評価は、比較例3のミシン目を有しないパンツ型吸収性物品のサイドシール部を裂く場合を基準としたときの「破り易さ」の官能評価である。20人のパネラーに各パンツ型吸収性物品を破ってもらい、比較例3と比較して「とても破り易い」と感じた場合は2ポイント、「破り易い」と感じた場合は1ポイント、「変わらない」と感じた場合は0ポイントとし、合計ポイントにより3段階の評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
○:合計ポイントが25点以上のとき
△:合計ポイントが15点以上25点未満のとき
×:合計ポイントが15点未満のとき
【0062】
「丈夫さ」の評価は、比較例3のミシン目を有しないパンツ型吸収性物品のサイドシール部を裂く場合を基準としたときの「丈夫さ」の官能評価である。20人のパネラーに各パンツ型吸収性物品の使用時の耐久性について比較例3と比較してもらい、「変わらない」と感じた場合は2ポイント、「やや不安」と感じた場合は1ポイント、「不安」と感じた場合は0ポイントとし、合計ポイントにより3段階の評価を行った。評価基準は以下のとおりである。
○:合計ポイントが25点以上のとき
△:合計ポイントが15点以上25点未満のとき
×:合計ポイントが15点未満のとき
【0063】
得られた結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
以上より、本発明のパンツ型吸収性物品は、力が弱い着用者や介護者であっても廃棄時に容易に外装体を破ることが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0066】
10:パンツ型吸収性物品
20:吸収性本体
30:外装体
31:腹側領域
32:背側領域
33:股下領域
36:左右のサイドシール部
37ウエスト開口
38a,38b:左右の脚開口
40:破断誘導構造
図1
図2
図3
図4