(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063394
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】工作機械の主軸装置
(51)【国際特許分類】
B23B 31/00 20060101AFI20240502BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B23B31/00 B
B23Q11/00 P
B23Q11/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171305
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 昌平
【テーマコード(参考)】
3C011
3C032
【Fターム(参考)】
3C011BB13
3C011BB15
3C032FF07
(57)【要約】
【課題】エア供給プレートを用いることによって、主軸装置と自動工具交換装置との干渉を効果的に避けることができる工作機械の主軸装置を提供する。
【解決手段】工作機械10の主軸装置1は、工具装着部21が形成された回転主軸2と、回転主軸2を軸受31によって回転可能に支持するハウジング3と、環状部41及び複数の突出部42を有するエア供給プレート4と、工具装着部21へ清掃用エアA1を供給するための清掃用エア供給路5とを備える。清掃用エア供給路5は、ハウジング3に形成された第1供給路51と、突出部42に形成された第2供給路52と、回転主軸2の先端部の外周と環状部41との間に環状に形成された第3供給路53と、回転主軸2の先端部に形成され、工具装着部21に清掃用エアA1を吹き出させる第4供給路54とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具ホルダが装着される工具装着部に清掃用エアが供給されるよう構成された工作機械の主軸装置であって、
前記工具装着部が形成された回転主軸と、
前記回転主軸を軸受によって回転可能に支持するハウジングと、
前記ハウジングの先端部に取り付けられ、前記回転主軸の先端部の外周との間に前記回転主軸を回転可能にする円環状のプレート側隙間を形成するエア供給プレートと、
前記工具装着部へ前記清掃用エアを供給するための清掃用エア供給路と、を備え、
前記エア供給プレートは、
前記回転主軸の先端部の外周に配置された環状部と、
前記環状部の周方向の一部から径方向外側に突出した1つ又は複数の突出部と、を有し、
前記清掃用エア供給路は、
前記ハウジングに形成された第1供給路と、
前記第1供給路に連通されるよう前記突出部に形成された第2供給路と、
前記第2供給路に連通されるよう前記回転主軸の先端部の外周と前記環状部との間に環状に形成された第3供給路と、
前記第3供給路に連通されるよう前記回転主軸の先端部に形成され、前記工具装着部に前記清掃用エアを吹き出させる第4供給路と、を有する、工作機械の主軸装置。
【請求項2】
前記回転主軸と前記ハウジングとの間であって前記軸受よりも先端側の位置には、前記ハウジングに対して前記回転主軸を回転可能にする円環状のハウジング側隙間が形成されており、
前記ハウジングには、前記ハウジング側隙間に流入して、前記軸受にクーラントが浸入することを防止するための浸入防止用エアが供給される浸入防止用エア供給路が形成されている、請求項1に記載の工作機械の主軸装置。
【請求項3】
前記浸入防止用エア供給路は、前記浸入防止用エアを吹き出させるよう、前記回転主軸と前記ハウジングとの間から先端側に開放されている、請求項2に記載の工作機械の主軸装置。
【請求項4】
前記工具装着部は、前記回転主軸の先端面から凹んで形成され、前記工具ホルダの軸部が挿入される装着凹部を有しており、
前記第4供給路は、前記回転主軸の周方向の複数箇所に分岐して形成されているとともに、前記装着凹部に開口している、請求項1~3のいずれか1項に記載の工作機械の主軸装置。
【請求項5】
前記工具装着部は、前記工具ホルダのフランジ部の端面が接触する接触先端面を有しており、
前記第4供給路は、前記接触先端面にも開口している、請求項4に記載の工作機械の主軸装置。
【請求項6】
前記ハウジングの先端部における周方向の一部に配置され、クーラントを吐出するクーラントノズルをさらに備え、
前記突出部は、前記ハウジングの先端部のうち、前記クーラントノズルが配置された周方向の位置とは異なる周方向の位置に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の工作機械の主軸装置。
【請求項7】
前記回転主軸は、前記軸受によって、水平方向に沿った回転軸線を中心に回転可能に前記ハウジングに支持されており、
前記クーラントノズルは、前記環状部の上方に配置され、前記クーラントの一部を前記環状部に向けて吐出するよう構成されており、
前記突出部の上面は、前記環状部に繋がる径方向内側の位置から径方向外側に向かって下方へ傾斜した形状に形成されている、請求項6に記載の工作機械の主軸装置。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の工作機械の主軸装置を備えた工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸装置は、工具を把持して回転させ、工作物に対して種々の加工を行う。主軸装置に把持される工具は、自動工具交換装置(ATC)等によって、適宜必要とする工具に交換される。この主軸装置の工具交換の際には、切屑等の異物が、主軸装置における工具装着部に付着しないように、クーラント(切削液)、エア等が利用される。
【0003】
例えば、特許文献1の工作機械の主軸装置においては、工具装着部としての主軸先端のテーパ穴にエアを吐出することによって、テーパ穴の清掃を行うことが記載されている。この主軸装置においては、テーパ穴及び工具の清掃と工具の食い付き防止を図るとともに、工具のクランプ時にエアブロー流路を閉鎖して、テーパ穴からエアブロー流路へ切削液が逆流することを阻止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
主軸装置の工具装着部に装着する工具を交換する際には、工具装着部に自動工具交換装置が接近する。また、エアの吹き出しによって工具装着部に切屑が付着することを防止する構造は、工具装着部の周辺に形成される。この場合に、主軸装置と自動工具交換装置との干渉を効果的に避けるためには、工具装着部の構造に更なる工夫が必要である。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、エア供給プレートを用いることによって、主軸装置と自動工具交換装置との干渉を効果的に避けることができる工作機械の主軸装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
工具ホルダが装着される工具装着部に清掃用エアが供給されるよう構成された工作機械の主軸装置であって、
前記工具装着部が形成された回転主軸と、
前記回転主軸を軸受によって回転可能に支持するハウジングと、
前記ハウジングの先端部に取り付けられ、前記回転主軸の先端部の外周との間に前記回転主軸を回転可能にする円環状のプレート側隙間を形成するエア供給プレートと、
前記工具装着部へ前記清掃用エアを供給するための清掃用エア供給路と、を備え、
前記エア供給プレートは、
前記回転主軸の先端部の外周に配置された環状部と、
前記環状部の周方向の一部から径方向外側に突出した1つ又は複数の突出部と、を有し、
前記清掃用エア供給路は、
前記ハウジングに形成された第1供給路と、
前記第1供給路に連通されるよう前記突出部に形成された第2供給路と、
前記第2供給路に連通されるよう前記回転主軸の先端部の外周と前記環状部との間に環状に形成された第3供給路と、
前記第3供給路に連通されるよう前記回転主軸の先端部に形成され、前記工具装着部に前記清掃用エアを吹き出させる第4供給路と、を有する、工作機械の主軸装置にある。
【発明の効果】
【0008】
前記工作機械の主軸装置においては、ハウジングの先端部に取り付けられたエア供給プレートに、外周側に突出する突出部を形成し、突出部を経由して清掃用エアを吹き出させるようにしている。具体的には、工具装着部へ清掃用エアを供給するための清掃用エア供給路は、ハウジングから突出部を経由して回転主軸の工具装着部まで、第1~第4供給路として形成されている。
【0009】
そして、第2供給路が、環状部の周方向の一部に位置する突出部に形成されていることにより、環状部の径方向外側において、突出部が配置されていない周方向の残部に周方向スペースを形成することができる。これにより、主軸装置の工具装着部に装着する工具ホルダを交換する際に、工具装着部に自動工具交換装置が接近したときでも、周方向スペースを利用して主軸装置と自動工具交換装置との干渉を効果的に避けることができる。
【0010】
それ故、前記一態様の工作機械の主軸装置によれば、エア供給プレートを用いることによって、主軸装置と自動工具交換装置との干渉を効果的に避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態にかかる、主軸装置が設けられた工作機械について示す斜視図である。
【
図2】実施形態にかかる、主軸装置を回転主軸の中心軸線の先端側から見た状態で示す平面図である。
【
図3】実施形態にかかる、
図2における清掃用エア供給路が形成された周方向位置を適宜示す、
図2のIII-III断面図である。
【
図4】実施形態にかかる、
図2における浸入防止用エア供給路が形成された周方向位置を適宜示す、
図2のIV-IV断面図である。
【
図5】実施形態にかかる、清掃用エア供給路の形成位置を示す、
図3のV-V断面図である。
【
図6】実施形態にかかる、浸入防止用エア供給路の形成位置を示す、
図4のVI-VI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
1.工作機械10の構成
主軸装置1が設けられた工作機械10について、
図1を参照して説明する。主軸装置1が設けられた工作機械10は、主軸装置1の回転主軸2の中心軸線CLが水平方向に向けられた横型マシニングセンタ等として構成される。工作機械10は、主軸装置1をY軸方向(鉛直方向、符号Yで示す。)に移動させるコラム12、コラム12に配置されて、主軸装置1をZ軸方向(回転主軸2の中心軸線CLの方向、符号Zで示す。)に移動させるZ軸移動体13、回転主軸2によって加工されるワークをX軸方向(Y軸方向及びZ軸方向の両方に直交する方向、符号Xで示す。)に移動させるX軸移動テーブル14、X軸移動テーブル14をY軸方向に平行な軸線の回りに回転させる回転テーブル15、コラム12及び回転テーブル15が配置されたベッド11等を備える。
【0013】
図示は省略するが、工作機械10の周囲には、主軸装置1の工具装着部21に装着される工具ホルダ8を交換する自動工具交換装置(ATC)が設置されている。自動工具交換装置は、工具装着部21に工具ホルダ8を着脱するチェンジアーム、複数の工具ホルダ8が保持されて、チェンジアームによって把持される工具ホルダ8を変更可能な工具マガジン等を備える。工具ホルダ8は、種々の工具81を保持可能に構成されている。複数の工具ホルダ8は、共通の形状を有しており、種々の工具81を保持した状態で主軸装置1の工具装着部21と工具マガジンとの間で交換が可能である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、工具ホルダ8は、主軸装置1の工具装着部21の後述する接触先端面212に対面するフランジ部83と、主軸装置1の工具装着部21の後述する装着凹部211に挿入される軸部82とを有する。工具81は、工具ホルダ8の軸線方向における軸部82が形成された側と反対側に配置される。
【0015】
2.主軸装置1の構成
主軸装置1について、
図2~
図6を参照して説明する。ここで、
図2は、主軸装置1を回転主軸の中心軸線CLの先端側Z1から見た状態で示す。
図3は、
図2における後述する清掃用エア供給路5の第1供給路51、第2供給路52及び第4供給路54の周方向Cの形成位置の断面として示す。
図4は、
図2における後述する浸入防止用エア供給路6の軸方向部分61及び径方向部分62の周方向Cの形成位置の断面として示す。
【0016】
図5は、
図3における中心軸線CLの方向Zの清掃用エア供給路5の第2供給路52及び第4供給路54の形成位置の断面として示す。
図6は、
図4における中心軸線CLの方向Zの浸入防止用エア供給路6の軸方向部分61及び径方向部分62の形成位置の断面として示す。
【0017】
図2及び
図3に示すように、工作機械10の主軸装置1は、工具装着部21が形成された回転主軸2と、回転主軸2を軸受31によって回転可能に支持するハウジング3とを備える。工具装着部21には、工具81を保持する工具ホルダ8が装着される。工具装着部21には、工具装着部21に切屑等の異物が付着することを防止するための清掃用エアA1が供給されるよう構成されている。
【0018】
回転主軸2は、モータ等の回転駆動源によって回転駆動され、工具装着部21に装着された工具ホルダ8及び工具81を回転させる。回転主軸2の中心軸線CLの周りの中心部には、工具ホルダ8の軸部82が装着される工具装着部21が形成されている。回転主軸2は、中心軸線CLを含む中心部に位置する主軸中心部22、主軸中心部22の外周に配置された主軸外周部23、主軸中心部22及び主軸外周部23の先端側Z1に配置された主軸キャップ部24等を有する。ここで、先端側Z1とは、回転主軸2の中心軸線CLの方向Zにおいて、回転主軸2の工具装着部21に対して工具ホルダ8が装着される側のことをいう。
【0019】
本形態の工具装着部21は、いわゆる2面拘束等として知られる工具ホルダ8の装着構造を有するものであり、工具ホルダ8の軸部82のテーパ面及び工具ホルダ8のフランジ部83の端面の両方に接触して工具ホルダ8を保持する。工具装着部21は、回転主軸2の先端面から凹んで形成され、工具ホルダ8の軸部82が挿入される装着凹部211と、回転主軸2の先端面に形成され、工具ホルダ8のフランジ部83の端面が接触する接触先端面212とを有する。装着凹部211の、外周側及び内周側の少なくとも一方の周面には、工具ホルダ8の軸部82のテーパ面が接触し、接触先端面212には、工具ホルダ8のフランジ部83の端面が接触する。
【0020】
図2及び
図4に示すように、装着凹部211は、主軸外周部23の先端側部分と主軸キャップ部24との間において、回転主軸2の先端側Z1から基端側Z2に、環状に凹むことによって形成されている。接触先端面212は、主軸キャップ部24の先端側Z1の表面として形成されている。詳細は省略するが、主軸中心部22と主軸外周部23とは、工具ホルダ8の軸部82を保持するために、回転主軸2の中心軸線CLの方向Zへ相対的に移動可能である。工具ホルダ8の軸部82は、主軸中心部22と主軸外周部23との中心軸線CLの方向Zへの相対的な移動を受けて、装着凹部211に挿入された状態が保持される。
【0021】
なお、工具装着部21は、いわゆる1面拘束等として知られる工具ホルダ8の装着構造を有していてもよい。この場合には、工具装着部21は、装着凹部211によって構成され、装着凹部211の、外周側及び内周側の少なくとも一方の周面が工具ホルダ8の軸部82のテーパ面に接触した状態で、工具ホルダ8を保持する。
【0022】
図2に示すように、主軸装置1は、工具装着部21へ清掃用エアA1を供給するためのエア供給プレート4及び清掃用エア供給路5をさらに備える。エア供給プレート4は、ハウジング3の先端部に取り付けられている。エア供給プレート4は、環形状に形成されており、ハウジング3の先端側Z1であって、回転主軸2の主軸キャップ部24の径方向Rの外側に配置されている。エア供給プレート4は、回転主軸2の先端部の外周に配置された環状部41と、環状部41の周方向Sの一部から径方向Rの外側に突出した複数の突出部42とを有する。本形態の突出部42は、環状部41における、Y軸方向(鉛直方向)の中間位置の左右から突出して形成されている。
【0023】
図2~
図4に示すように、エア供給プレート4の環状部41と回転主軸2の主軸キャップ部24の先端部の外周との間には、ハウジング3に対して回転主軸2を回転可能にする円環状のプレート側隙間40が形成されている。プレート側隙間40は、中心軸線CLの周りの全周に形成されている。
【0024】
図2、
図3及び
図5に示すように、清掃用エア供給路5は、ハウジング3からエア供給プレート4の突出部42を経由して回転主軸2の主軸キャップ部24まで形成されている。清掃用エア供給路5は、第1~第4供給路51,52,53,54として形成されている。第1供給路51は、ハウジング3において、回転主軸2の中心軸線CLの方向Zに平行に形成されている。第2供給路52は、第1供給路51に連通されるよう、エア供給プレート4の突出部42に形成されている。第3供給路53は、第2供給路52に連通されるよう回転主軸2の主軸キャップ部24の先端部の外周と環状部41との間に環状に形成されている。第4供給路54は、第3供給路53に連通されるよう回転主軸2の主軸キャップ部24に形成されており、工具装着部21に清掃用エアA1を吹き出させるよう先端側Z1又は斜め先端側Z1に向けて開口されている。
【0025】
第2供給路52は、第1供給路51に連通される中心軸線CLの方向Zに平行に形成された部分と、第3供給路53に連通される径方向Rに平行に形成された部分とを有する。第3供給路53は、主軸キャップ部24と環状部41との間のプレート側隙間40の径方向Rの幅を大きくする状態で形成されている。第3供給路53は、ハウジング3に対する回転主軸2の周方向Sの位置がどこにあっても、第2供給路52と第4供給路54とが連通されるよう円環形状に形成されている。第3供給路53は、主軸キャップ部24の外周面において凹んで形成された凹部と、環状部41の内周面において凹んで形成された凹部との組み合わせによって形成されている。なお、第3供給路53は、主軸キャップ部24の外周面において凹んで形成された凹部、又は環状部41の内周面において凹んで形成された凹部のいずれかのみによって形成されていてもよい。
【0026】
第4供給路54は、回転主軸2の主軸キャップ部24の周方向Sの複数箇所に形成されている。第4供給路54は、第3供給路53の周方向Sの複数箇所から分岐して形成されている。第4供給路54は、第3供給路53に連通される径方向Rに平行に形成された径方向部分541と、中心軸線CLに平行に形成された軸方向部分542と、中心軸線CLに平行に形成された部分から先端側Z1又は斜め先端側Z1に向けて開口する開口部分543とを有する。開口部分543の穴径は、径方向部分541及び軸方向部分542の穴径よりも小さい。
【0027】
本形態の第4供給路54の開口部分543は、軸方向部分542から複数に分岐して装着凹部211の先端側Z1の位置と接触先端面212とに開口している。装着凹部211まで形成された開口部分543は、斜め先端側Z1に向けて開口しており、接触先端面212まで形成された開口部分543は、先端側Z1に向けて開口している。そして、清掃用エアA1は、装着凹部211の先端側Z1の位置と接触先端面212とから斜め先端側Z1及び先端側Z1に向けて吹き出される。
【0028】
なお、第4供給路54の開口部分543は、装着凹部211の先端側Z1の位置にのみ形成してもよい。また、第4供給路54の開口部分543は、装着凹部211の中心軸線CLの方向Zにおける中間位置又は基端側Z2の位置に形成してもよい。
【0029】
図2及び
図4に示すように、主軸装置1は、工具装着部21に向けてクーラントCを吐出するクーラントノズル7をさらに備える。クーラントCは、潤滑、冷却、洗浄等を目的として使用されるものである。クーラントノズル7は、ハウジング3の先端部における周方向Sの一部に配置されている。エア供給プレート4の突出部42は、ハウジング3の先端部のうち、クーラントノズル7が配置された周方向Sの位置とは異なる周方向Sの位置に配置されている。この構成により、クーラントノズル7を、エア供給プレート4の突出部42との干渉を避けて、回転主軸2の工具装着部21にできるだけ近い位置に配置することができる。
【0030】
本形態の工作機械10は、横型マシニングセンタ等として構成されており、回転主軸2は、軸受31によって、水平方向に沿った中心軸線CLを中心に回転可能にハウジング3に支持されている。クーラントノズル7は、エア供給プレート4の環状部41の上方に配置されており、クーラントCを回転主軸2の中心軸線CL側に向けて吐出するように構成されている。このとき、クーラントCの一部は、環状部41の外周面に向けて吐出される。換言すれば、本形態のクーラントノズル7は、ハウジング3の先端部における周方向Sの上側の位置(Y軸方向の上側の位置)に配置されており、下側に向けてクーラントCを吐出するよう構成されている。そして、エア供給プレート4の突出部42は、クーラントノズル7が配置された周方向Sの上側の位置とは異なる、左右の位置に形成されている。
【0031】
突出部42は、環状部41における、Y軸方向の中間位置の左右から斜め下方に向けて突出して形成されている。突出部42の上面は、環状部41に繋がる径方向Rの内側の位置から径方向Rの外側に向かって下方へ傾斜した形状に形成されている。この構成により、クーラントノズル7から下方へ吐出されるクーラントCは、左右の突出部42の上面を伝って下方へ流れる。そのため、例えば、切粉等の異物が突出部42の上面に堆積された場合でも、この異物をクーラントCによって下方へ排出することができる。
【0032】
図3に示すように、回転主軸2の主軸キャップ部24の外周面には、エア供給プレート4の環状部41の内周面と対向する先端側外周面242と、先端側外周面242の中心軸線CLの方向Zの基端側Z2に形成されて先端側外周面242よりも大きな外径の基端側外周面243とが形成されている。基端側外周面243は、軸受31の中心軸線CLの方向Zの先端側Z1に位置して、主軸キャップ部24において径方向Rの外側に最も突出する突出部分241の外周面として形成されている。ハウジング3の先端部の内周面には、主軸キャップ部24の突出部分241が配置される環状凹部32が形成されている。
【0033】
プレート側隙間40は、主軸キャップ部24の先端側外周面242とエア供給プレート4の環状部41の内周面との間に形成されている。回転主軸2とハウジング3との間であって軸受31よりも先端側Z1の位置には、ハウジング3に対して回転主軸2を回転可能にする円環状のハウジング側隙間30が形成されている。ハウジング側隙間30は、主軸キャップ部24の突出部分241とハウジング3の環状凹部32との間、及び主軸外周部23の先端側部分とハウジング3の先端側部分との間に形成されている。
【0034】
図2、
図4及び
図6に示すように、ハウジング3には、軸受31をクーラントCから保護するための浸入防止用エアA2が供給される浸入防止用エア供給路6が形成されている。浸入防止用エア供給路6は、ハウジング3の中心軸線CLの方向Zに沿って形成された軸方向部分61と、軸方向部分61から径方向Rの内側に屈曲して形成された径方向部分62と、径方向部分62の径方向Rの内側において周方向Sに環状に形成され、ハウジング側隙間30に連通される環状部分63とを有する。軸方向部分61及び径方向部分62は、ハウジング3の周方向Sの複数箇所に形成されている。軸方向部分61及び径方向部分62は、ハウジング3の周方向Sの1箇所にのみ形成されていてもよい。環状部分63の径方向Rの幅は、ハウジング側隙間30の径方向Rの幅よりも大きい。
【0035】
浸入防止用エア供給路6は、浸入防止用エアA2を先端側Z1へ吹き出させるよう、回転主軸2の主軸キャップ部24とハウジング3の先端側部分との間から先端側Z1に開放されている。また、浸入防止用エア供給路6は、軸受31に浸入防止用エアA2を流入させるよう、軸受31に向けて基端側Z2にも開放されている。
【0036】
浸入防止用エア供給路6に供給される浸入防止用エアA2は、ハウジング側隙間30に流入して、軸受31にクーラントCが浸入することを防止する。浸入防止用エアA2は、浸入防止用エア供給路6の軸方向部分61及び径方向部分62から環状部分63に流入し、環状部分63から中心軸線CLの方向Zの先端側Z1及び基端側Z2へ吹き出される。
【0037】
3.主軸装置1の工具交換動作
主軸装置1の工具装着部21に装着される工具ホルダ8は自動工具交換装置によって交換される。工具装着部21に装着される工具ホルダ8を交換するに当たっては、自動工具交換装置のチェンジアームによって工具装着部21に装着された工具ホルダ8が取り外される。次いで、クーラントノズル7からクーラントCが吐出され、かつ、清掃用エア供給路5から清掃用エアA1が吹き出されるとともに、浸入防止用エア供給路6から浸入防止用エアA2が吹き出される。また、自動工具交換装置のチェンジアームによって別の工具ホルダ8が把持され、別の工具ホルダ8が工具装着部21に装着される。
【0038】
工具交換が高速で行われるために、切屑等の異物は、工具交換前の加工時に排出されて、工具交換時に空中に舞っていることが多い。この工具交換時には、クーラントノズル7から吐出されるクーラントCは、工具装着部21の接触先端面212、及び別の工具ホルダ8の軸部82にかけられ、これらに切屑(切粉)等の異物が付着しないようにする。また、工具交換時には、清掃用エア供給路5の開口部分543から清掃用エアA1が吹き出されることによって、工具装着部21の装着凹部211及び接触先端面212に切屑等の異物及びクーラントCが付着又は侵入することが防止される。また、工具交換時には、浸入防止用エア供給路6から浸入防止用エアA2が吹き出されることによって、軸受31に切屑等の異物及びクーラントCが侵入することが防止される。
【0039】
4.作用効果
本形態の工作機械10の主軸装置1においては、ハウジング3の先端部に取り付けられたエア供給プレート4に、外周側に突出する突出部42を形成し、突出部42を経由して清掃用エアA1を吹き出させるようにしている。具体的には、工具装着部21へ清掃用エアA1を供給するための清掃用エア供給路5は、ハウジング3から突出部42を経由して回転主軸2の工具装着部21まで、第1~第4供給路51,52,53,54として形成されている。
【0040】
そして、第2供給路52が、エア供給プレート4の環状部41の周方向Sの一部に位置する突出部42に形成されていることにより、環状部41の径方向Rの外側において、突出部42が配置されていない周方向Sの残部に周方向Sのスペースを形成することができる。これにより、主軸装置1の工具装着部21に装着する工具ホルダ8を交換する際に、工具装着部21に自動工具交換装置が接近したときでも、周方向Sのスペースを利用して主軸装置1と自動工具交換装置との干渉を効果的に避けることができる。
【0041】
それ故、本形態の工作機械10の主軸装置1によれば、エア供給プレート4を用いることによって、主軸装置1と自動工具交換装置との干渉を効果的に避けることができる。
【0042】
本発明は、実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。
【符号の説明】
【0043】
1 主軸装置
10 工作機械
2 回転主軸
21 工具装着部
3 ハウジング
31 軸受
4 エア供給プレート
40 プレート側隙間
41 環状部
42 突出部
5 清掃用エア供給路
6 浸入防止用エア供給路
7 クーラントノズル
8 工具ホルダ