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特開2024-634液漏れについての検査対象の漏れ穴の許容最大サイズを同定する方法
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  • 特開-液漏れについての検査対象の漏れ穴の許容最大サイズを同定する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000634
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】液漏れについての検査対象の漏れ穴の許容最大サイズを同定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/02 20060101AFI20231226BHJP
   G01M 3/26 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G01M3/02 A
G01M3/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099431
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】390019035
【氏名又は名称】株式会社フクダ
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 真央
(72)【発明者】
【氏名】田辺 明満
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA44
2G067BB03
2G067BB40
2G067CC02
2G067CC04
2G067DD03
2G067DD09
2G067EE09
(57)【要約】
【課題】検査対象の液漏れ検査を簡便なエアリークテスト等で代替する。
【解決手段】
異なる径の漏れ穴15を有する複数の疑似漏れ素子10の一方の面11を、検査対象の表面と同レベルのぬれ性を有するように表面処理する。複数の疑似漏れ素子10を、複数のワーク本体21にそれぞれ装着することにより、複数の疑似漏れ用ワーク20を用意する。複数の疑似漏れ用ワーク20の液漏れ試験を行ない、この試験結果から、液漏れが生じない最大径を検査対象の漏れ穴の許容最大径として同定する。または許容液漏れ量に対応する漏れ穴径を、検査対象の漏れ穴の許容最大径として同定する、そして、この許容最大径の基準漏れ穴35を有する基準漏れ素子30を、検査対象と同一構造のワーク本体41に装着することにより、基準漏れ用ワーク40を用意する。基準漏れ用ワーク40を用いてエアリークテスト装置の検出出力の閾値を設定し、この閾値を用いて検査対象の良否を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の疑似漏れ素子を用意する工程と、
前記複数の疑似漏れ素子に、異なるサイズの漏れ穴を形成する工程と、
前記複数の疑似漏れ素子の一方の面を、検査対象の表面と同レベルのぬれ性を有するように表面処理する工程と、
前記複数の疑似漏れ素子を、前記一方の面が外部に露出した状態で複数の中空のワーク本体にそれぞれ装着し、前記ワーク本体の壁に形成された連通穴と前記漏れ穴のみを介して前記ワーク本体の内部空間を外部に連通させることにより、複数の疑似漏れ用ワークを用意する工程と、
外部から前記複数の疑似漏れ用ワークの前記内部空間への液漏れの試験を行う工程と、
前記複数の疑似漏れ用ワークについての前記液漏れ試験の結果から、前記内部空間への液漏れを阻止できる前記漏れ穴の最大サイズ又は前記内部空間への許容される最大液漏れ量に対応する前記漏れ穴のサイズを、前記検査対象における漏れ穴の許容最大サイズとして同定する工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表面処理の工程において、前記疑似漏れ素子の前記一方の面を、レーザ照射またはプラズマ表面処理することにより、前記検査対象の表面と同レベルのぬれ性にすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記許容最大サイズの基準漏れ穴が形成された基準漏れ素子を、前記検査対象と同一構造の中空のワーク本体に装着し、当該ワーク本体の壁に形成された連通穴と前記基準漏れ穴を介してのみ前記ワーク本体の内部空間と外部とを連通させることにより、基準漏れ用ワークを用意し、
気体リークテスト装置により、前記基準漏れ用ワークを用いてリークテストを実行し、その結果得られた検出出力に基づき閾値を設定し、
前記気体リークテスト装置により、前記検査対象のリークテストを実行し、その結果得られた検出出力を閾値と比較することにより、前記検査対象の良否の判定をすることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液漏れについての検査対象の漏れ穴の許容最大サイズを同定する方法、および同定された許容最大サイズの基準漏れ穴を有する基準漏れ用ワークを用いて気体リークテスト装置の検出出力の閾値を設定し、この気体リークテスト装置により検査対象の液漏れについての良品判定を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空の製品、例えばガスメータや水道メータ等の屋外設置のメータ、スマートフォン、無線機は、内蔵されたセンサや回路基板を有害な液体例えば水から保護するために、高い密封性が要求される。
【0003】
中空の製品の液体に対する密封性例えば水に対する密封性を検査する場合、所定の水深で所定時間浸漬させ、気泡の発生の有無により、製品の内部空間に水が浸入しているか(液漏れが生じているか)否かを判定している。なお、製品の内部空間への水の侵入(液漏れ)が許容量まで容認されている場合には、製品を分解して目視または特殊な測定手段を用いて測定し、測定された液漏れ量が許容量を超えているか否かの良否判定を行っている。しかし、これら液漏れ検査は手間と時間を要する。
【0004】
特許文献1には、中空の製品にとって有害な特定物質の漏れ量と製品の欠陥サイズとの相関データを取得する方法が開示されている。簡単に説明すると、複数の疑似漏れ用ワークを用意する。これら疑似漏れ用ワークは、製品と同一構造の複数のワーク本体に、異なるサイズの漏れ穴を有する疑似漏れ素子を装着することにより構成されている。ワーク本体の内部空間は、ワーク本体の壁に形成された連通穴と疑似漏れ素子の漏れ穴を介してのみ外部に連通されている。
【0005】
上述のように構成された疑似漏れ用ワークを、所定濃度の特定物質を含むガスの雰囲気中に浸漬し、所定時間経過後に疑似漏れ用ワークへの特定物質の侵入量すなわち漏れ量を測定する。この漏れ量は漏れ穴サイズと一義的関係を有しているから、特定物質の許容漏れ量に対応する漏れ穴サイズを同定することができる。この同定されたサイズの漏れ穴を有する基準漏れ素子を製品と同一構造のワーク本体に装着することにより、疑似漏れ用ワークと同様の基準漏れ用ワークを用意する。この基準漏れ用ワークを用いてエアリークテスト装置でエアリークテストを実行し、その検出出力に基づき閾値を設定する。その後で、このエアリークテスト装置を用いて製品のエアリークテストを実行し、その検出出力を上記閾値と比較して製品の良否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-196952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、上述の液漏れ検査の煩雑を回避するために、エアリークテスト(気体リークテスト)で代替することを検討した。そのためには、製品(検査対象)の欠陥すなわち漏れ穴の許容最大サイズを同定する必要があるが、この同定のための試験において、実際の検査対象のケーシングに所定サイズの漏れ穴を高精度に形成することは困難である。特に検査対象のケーシングがプラスチックである場合にはより一層困難である。
【0008】
また、特許文献1と同様の疑似漏れ素子を用いて液漏れ試験を行なうことはできない。検査対象のケーシングの材質と疑似漏れ素子の材質が異なるため、漏れ穴のサイズが同じであっても、疑似漏れ素子の漏れ穴からの液漏れ現象と、実際の検査対象の漏れ穴からの液漏れ現象は異なるからである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明方法は上記課題を解決するためになされたものであり、複数の疑似漏れ素子を用意する工程と、前記複数の疑似漏れ素子に、異なるサイズの漏れ穴を形成する工程と、前記複数の疑似漏れ素子の一方の面を、検査対象の表面と同レベルのぬれ性を有するように表面処理する工程と、前記複数の疑似漏れ素子を、前記一方の面が外部に露出した状態で複数の中空のワーク本体にそれぞれ装着し、前記ワーク本体の壁に形成された連通穴と前記漏れ穴のみを介して前記ワーク本体の内部空間を外部に連通させることにより、複数の疑似漏れ用ワークを用意する工程と、外部から前記複数の疑似漏れ用ワークの前記内部空間への液漏れの試験を行う工程と、前記複数の疑似漏れ用ワークについての前記液漏れ試験の結果から、前記内部空間への液漏れを阻止できる前記漏れ穴の最大サイズ又は前記内部空間への許容される最大液漏れ量に対応する前記漏れ穴のサイズを、前記検査対象における漏れ穴の許容最大サイズとして同定する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
上述の方法によれば、検査対象と疑似漏れ素子の材質が異なっても、疑似漏れ素子の表面を検査対象と同レベルのぬれ性を有するように表面処理することにより、疑似漏れ素子の漏れ穴からの液漏れを検査対象の漏れ穴からの液漏れと同条件で試験できる。その結果、疑似漏れ素子を装着した疑似漏れ用ワークを用いて液漏れ試験を行なうことにより、検査対象の漏れ穴の許容最大サイズを同定することができる。
【0011】
好ましくは、前記表面処理の工程において、前記疑似漏れ素子の前記一方の面を、レーザ照射またはプラズマ表面処理することにより、前記検査対象の表面と同レベルのぬれ性にする。
【0012】
好ましくは、前記許容最大サイズの基準漏れ穴が形成された基準漏れ素子を、前記検査対象と同一構造の中空のワーク本体に装着し、当該ワーク本体の壁に形成された連通穴と前記基準漏れ穴を介してのみ前記ワーク本体の内部空間と外部とを連通させることにより、基準漏れ用ワークを用意し、気体リークテスト装置により、前記基準漏れ用ワークを用いてリークテストを実行し、その結果得られた検出出力に基づき閾値を設定し、前記気体リークテスト装置により、前記検査対象のリークテストを実行し、その結果得られた検出出力を閾値と比較することにより、前記検査対象の良否の判定をする。
上記方法により、気体リークテスト装置を用いて、検査対象の液漏れについての良否判定を簡便に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液漏れに対する検査対象の漏れ穴の許容最大サイズを同定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明方法の一実施形態で用いられる疑似漏れ素子の表面処理工程を、概略的に示す断面図であり、疑似漏れ素子の厚さと漏れ穴の径を誇張して示す。
図2】同疑似漏れ素子を装着した疑似漏れ用ワークの水漏れ試験を、概略的に示す断面図である。
図3図2のIII-III線に沿う要部拡大断面図であり、疑似漏れ素子の厚さと漏れ穴の径を誇張して示す。
図4】上記試験により同定された許容最大サイズの基準漏れ穴を有する基準漏れ素子を装着した基準漏れ用ワークの要部拡大断面図であり、基準漏れ素子の厚さと基準漏れ穴の計を誇張して示す。
図5】上記基準漏れ用ワークを用いてエアリークテスト装置の検出出力の閾値を設定する工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明方法の一実施形態を図面にしたがって説明する。
<疑似漏れ素子>
図1に示す疑似漏れ素子10を複数、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上用意する。この疑似漏れ素子10は、ステンレス鋼、ニッケル、銅、白金等の金属製の薄くて(例えば10~100μm)柔軟性を有する円盤形状の板からなり、その中央には漏れ穴15(ピンホール)を有している。複数の疑似漏れ素子10の漏れ穴15は互いに異なる径(例えば1~100μm)を有している。漏れ穴15はレーザビームを照射することにより形成される。疑似漏れ素子10は、微小の漏れ穴を高精度に形成することができれば、他の金属で形成してもよいし、金属以外の材料で形成してもよい。
【0016】
<疑似漏れ素子の表面処理>
複数の疑似漏れ素子10の一方の面11を表面処理する。例えば図1に示すようにレーザビームLを面11に均等に照射して表面粗さを調節し、これにより面11のぬれ性を、検査対象の例えば樹脂からなるケーシングの表面のぬれ性と実質的に同レベルにする。すなわち、液体の面11に対する接触角を、検査対象の表面に対する接触角と実質的に等しくする。液体の検査対象に対する接触角は予め測定するか、既に測定データがある場合にはその測定データを利用する。液体の面11に対する接触角は表面処理の度に測定してもよいし、既に表面粗さとぬれ性(接触角)の関係を測定したデータがあれば、その表面粗さになるようにレーザビームの強さ、照射時間を設定しておいてもよい。レーザ照射の代わりに面11にプラズマ表面処理を施してもよい。
【0017】
<疑似漏れ用ワーク>
次に、図2図3に示すように、漏れ穴15の径が異なる複数の疑似漏れ素子10を、複数の中空のワーク本体21にそれぞれ装着して、複数の疑似漏れ用ワーク20を作成する。なお、ワーク本体21は検査対象と同一構造、同一材質のものを用いてもよいし、異なる構造、材質のものを用いてもよく、例えば中空の箱であってもよい。ワーク本体21は内部空間22を有し、疑似漏れ素子10が装着される壁23には連通穴25が形成されている。疑似漏れ素子10の表面処理された面11が外部に露出し、反対側の面の周縁部が壁23の平滑な面に接着され、両者の間がシールされている。疑似漏れ素子10の漏れ穴15は、連通穴25の略中央に配置される。この疑似漏れ素子10の装着状態で、ワーク本体21の内部空間22は、連通穴25と疑似漏れ素子10の漏れ穴15を介してのみ外部と連通している。
【0018】
<水漏れ試験>
次に、上述した複数の疑似漏れ用ワーク20を用いた液漏れ試験について、液体が水である場合を例にとって説明する。図2に示すように、疑似漏れ用ワーク20を水槽50の水中に、所定水深で所定時間浸漬する。試験方法は検査対象のおかれる環境に対応して種々選択することでき、例えば水面を加圧してもよい。この試験を複数の疑似漏れ用ワーク20毎に個別に実行してもよいし、一度に実施してもよい。
【0019】
<許容最大径の同定>
上記試験により、疑似漏れ用ワーク20の内部空間22に水が浸入したか否かを検査する。水が浸入しなかった疑似漏れ用ワーク20のうち、最も大きな径の漏れ穴15を有する疑似漏れ用ワーク20を特定し、この漏れ穴15の径(水の浸入を阻止できる最大の径)を、検査対象の漏れ穴における許容最大径(許容最大サイズ)として同定する。疑似漏れ素子10の面11のぬれ性と検査対象の表面のぬれ性が同レベルであるため、水は、疑似漏れ用ワーク20に対して、同径(同サイズ)の漏れ穴を有する検査対象に対するのと同条件で侵入するので、疑似漏れ用ワーク20の試験により得られた水の侵入を阻止できる最大径を、検査対象の漏れ穴の許容最大径として同定できるのである。
【0020】
多数の疑似漏れ用ワーク20の試験において、水漏れが生じた疑似漏れ用ワーク20の漏れ穴15の最小径と、水漏れが生じなかった疑似漏れ用ワーク20の漏れ穴15の最大径の差が小さい場合には、水漏れが生じなかった疑似漏れ用ワーク20の漏れ穴15の最大径を、検査対象の漏れ穴の許容最大値として同定するが、水漏れが生じた漏れ穴15の最小径と水漏れが生じなかった漏れ穴15の最大径との差が比較的大きい場合には、両者の中間の径の漏れ穴15を有する1つまたは複数の疑似漏れ用ワーク20で再試験を行うことが好ましい。
【0021】
<許容最大径の同定・・・別形態>
検査対象への水の侵入が許容量であれば容認できる場合には、次のようにして検査対象の漏れ穴の許容最大径を同定する。
【0022】
上記試験により、疑似漏れ用ワーク20の内部空間22に侵入した水の量即ち水漏れ量(液漏れ量)を測定する。許容される最大の水漏れ量に対応する疑似漏れ用ワーク20を特定し、その漏れ穴15の径(漏れ穴サイズ)を、検査対象の漏れ穴の許容最大径(許容最大サイズ)として同定する。
【0023】
多数の疑似漏れ用ワーク20の試験において、許容漏れ量と等しい漏れ量の疑似漏れ用ワーク20が無い場合には、許容漏れ量に最も近くそれより少ない漏れ量の疑似漏れ用ワークを特定し、その漏れ穴15の径を、検査対象の漏れ穴の許容最大径(許容最大サイズ)として同定してもよいが、この漏れ量と許容漏れ量の差が比較的大きい場合には、少し大きな漏れ穴径の1つまたは複数の疑似漏れ用ワークで再試験を行うことが好ましい。なお、多数の疑似漏れ用ワーク20の漏れ穴径と水漏れ量のデータから、その相関曲線(相関データ)を取得し、この相関曲線に基づいて許容漏れ量に対応する検査対象の漏れ穴の許容最大径を同定することもできる。
【0024】
上記試験における水漏れの有無の判定、水漏れ量の測定は、疑似漏れ用ワーク20を分解して行う。ワーク本体21が透明である場合には外部から目視することもできる。さらに水漏れ量の測定の場合には、疑似漏れ用ワーク20内に予め水吸着物質(液吸着物質)を収容しておき、試験後に水吸着物質を取り出し、水吸着物質の試験前の重量と試験後の重量の差から、水漏れ量を求めることもできる。
【0025】
<基準漏れ素子>
図4に示すように、上記のようにして同定された許容最大径と同径の基準漏れ穴35を有する基準漏れ素子30を作成する。この基準漏れ素子30は前述した疑似漏れ素子10と同様に作成されるが、表面処理は不要である。基準漏れ素子30は水漏れ試験に用いないからである。基準漏れ素子30の材質、厚さは、疑似漏れ素子10と同じでもよいし異なっていてもよい。
【0026】
<基準漏れ用ワーク>
基準漏れ素子30を、検査対象と同一構造のワーク本体41には装着することにより、基準漏れ用ワーク40を作成する。ワーク本体41は内部空間42を有し、基準漏れ素子30が装着される壁43には連通穴45が形成されている。基準漏れ素子30の周縁部が壁43の平滑な面に接着され、両者の間がシールされている。基準漏れ素子30の基準漏れ穴35は、連通穴45の略中央に配置される。この基準漏れ素子30の装着状態で、ワーク本体41の内部空間42は、連通穴45と基準漏れ穴35を介してのみ外部と連通している。
【0027】
なお、上述した水漏れ試験で用いられた疑似漏れ用ワーク20が、検査対象と同一構造のワーク本体21を有し、同定された検査対象の漏れ穴の許容最大径と同径の漏れ穴15を有する場合には、この疑似漏れ用ワーク20を基準漏れ用ワーク40として用いてもよい。
【0028】
<エアリークテスト装置の検出出力の閾値設定>
次に、図5に示すように、基準漏れ用ワーク40を用いて、エアリークテスト装置(気体リークテスト装置)の検出出力の閾値を設定する。この閾値は検査対象の良否判定に用いられる。
【0029】
エアリークテスト装置は公知であり、共通通路1と、この共通通路1の下流端にそれぞれ接続された分岐通路2aおよび分岐通路2bとを備えている。共通通路1の上流端には圧力源3が接続されている。本実施形態のテスト圧は正圧であるが負圧でもよい。共通通路1には、レギュレータ4およびその下流側の三方弁5が設けられている。
【0030】
分岐通路2a,2bには、弁6a,6b(開閉弁または2方弁)がそれぞれ設けられている。上記分岐通路2a,2bにおいて弁6a,6bの下流側には差圧センサ7(圧力センサ)の2つのポートがそれぞれ接続されており、これにより分岐通路2a,2b間の差圧を検出することができる。
【0031】
分岐通路2aの下流端にはワークカプセル8が接続され、分岐通路2bの下流端にはマスタカプセル9が接続されている。ワークカプセル8は、開閉可能な2つのカプセル半体からなり、基準漏れ用ワーク40を収容した状態で密封できるようになっている。
【0032】
マスタカプセル9も、ワークカプセルと同一構造を有している。マスタカプセル9には漏れのないことが確認された検査対象と同じマスタワークが収容されている。なお、マスタカプセル9は、マスタワークを収容せずワークカプセル8と異なる容積の密閉容器であってもよい。
【0033】
上記弁5,6a,6bは図示しないコントローラでシーケンス制御される。
三方弁5をオンすることにより、圧力源3からのテスト圧が、分岐通路2a,2bを介してワークカプセル8とマスタカプセル9に供給される。次に、弁6a,6bが閉じられ、その下流側の分岐通路2a,2bが互いに隔離される。
【0034】
次に、基準漏れ検出工程に移行する。すなわち、弁6a,6bが閉じてから所定時間経過後の差圧センサ10の検出差圧を比較する。ワークカプセル8内の加圧空気は基準漏れ用ワーク40の基準漏れ穴35から内部空間42に入り込むため、ワークカプセル8内の圧力がテスト圧から徐々に低下する。他方、マスタカプセル9ではテスト圧が維持されている。その結果、ワークカプセル8内の圧力とマスタカプセル9内の圧力との間には差が生じる。この差圧(ワークカプセル8の圧力変動)が差圧センサ7で検出される。この検出出力を、検査対象の漏れ穴の許容最大径に対応する閾値として設定することができる。
【0035】
<エアリークテスト工程>
上記のようにして検出出力の閾値が設定された後で、ワークカプセル8に検査対象を密封してエアリークテストを実行する。このエアリークテスト工程は上述した検出出力の閾値設定工程と同様であるから説明を省略する。
コントローラは、差圧センサ7での検出差圧に基づき検査対象の液漏れについての良否判定を行う。すなわち、検査対象に許容最大径に対応するサイズ以上の欠陥(漏れ穴)が有るか否かの判定を行う。
【0036】
本発明は、前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
疑似漏れ素子の漏れ穴形成工程と表面処理工程の順序は逆であってもよい。
対象となる液体には、水の他に油や溶剤等であってもよい。
検査対象は、センサや回路基板を内蔵したメータ、スマートフォン、無線機等の他に、食品や医薬品の容器、包装等であってもよい。
気体リークテスト装置は、エアリークテスト装置の他にトレーサーガスを用いたリークテスト装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明方法は、製品の液漏れ検査に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
10 疑似漏れ素子
15 漏れ穴
20 疑似漏れ用ワーク
21 ワーク本体
22 内部空間
23 壁
25 連通穴
30 基準漏れ素子
35 基準漏れ穴
40 基準漏れ用ワーク
41 ワーク本体
42 内部空間
43 壁
45 連通穴
図1
図2
図3
図4
図5