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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063408
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】口栓付きパウチの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
B29C65/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171325
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信之
(72)【発明者】
【氏名】青木 剛
(72)【発明者】
【氏名】北松 宗親
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA05
4F211AA08
4F211AC03
4F211AD12
4F211AG01
4F211AG08
4F211AH54
4F211AR06
4F211AR11
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD11
4F211TH06
4F211TJ11
4F211TN07
4F211TN24
4F211TQ01
4F211TW15
(57)【要約】
【課題】口栓とフィルムシートとを溶着した際に口栓とフィルムシートとの間に隙間が生じるのを抑制できる口栓付きパウチの製造方法を提供する。
【解決手段】口栓20の溶着部と、フィルムシート11で形成されたパウチ10とを加熱および加圧してヒートシールする口栓付きパウチ100の製造方法であって、前記溶着部を加熱して、前記溶着部の温度を予熱温度範囲の範囲内で高くする口栓供給前加熱工程S1と、前記口栓供給前加熱工程S1を施した後に、前記溶着部と前記パウチ10とを溶着するヒートシール工程S4と、を備え、前記予熱温度範囲は、前記溶着部の融点から前記フィルムシート11の融点を引いた融点差において、前記融点差より10℃低い温度以上、前記融点差より10℃高い温度以下である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口栓の溶着部と、フィルムシートで形成されたパウチとを加熱および加圧してヒートシールする口栓付きパウチの製造方法であって、
前記溶着部を加熱して、前記溶着部の温度を予熱温度範囲の範囲内で高くする口栓供給前加熱工程と、
前記口栓供給前加熱工程を施した後に、前記溶着部と前記パウチとを溶着するヒートシール工程と、
を備え、
前記予熱温度範囲は、前記溶着部の融点から前記フィルムシートの融点を引いた融点差において、前記融点差より10℃低い温度以上、前記融点差より10℃高い温度以下である、
口栓付きパウチの製造方法。
【請求項2】
前記口栓供給前加熱工程は、前記口栓を前記口栓付きパウチの製造ラインへ供給する前に実施される、
請求項1に記載の口栓付きパウチの製造方法。
【請求項3】
前記口栓供給前加熱工程は、前記溶着部に対して非接触の加熱方法によって前記溶着部を加熱する、
請求項2に記載の口栓付きパウチの製造方法。
【請求項4】
前記融点差が、10℃より大きく、かつ、20℃以下のとき、
前記口栓供給前加熱工程は、前記溶着部の温度を約10℃高くする、
請求項3に記載の口栓付きパウチの製造方法。
【請求項5】
前記口栓供給前加熱工程は、前記溶着部に前記加圧方向でホットエアを吹き付けて前記溶着部を加熱する、
請求項4に記載の口栓付きパウチの製造方法。
【請求項6】
前記フィルムシートは、単一素材である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の口栓付きパウチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口栓付きパウチの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂で形成された口栓と、フィルムシートを袋状に形成したパウチとをヒートシールした口栓付きパウチがある。パウチ内部の充填空間に飲料等の内容物を充填して口栓をキャップで閉じることで、内容物を密封保存できる。また、キャップを開けて、充填された飲料を口栓から容易に飲むことができる。
【0003】
口栓付きパウチの製造方法として、特許文献1に記載のプラスチック容器の製造方法がある。特許文献1に記載のプラスチック容器の製造方法では、口栓とプラスチックシートを加熱および加圧して溶着する際に、耐熱剥離シートでプラスチックシートの表面を被覆する。被覆した耐熱剥離シートを加熱金型で挟着してプラスチックシートの表面を加熱および押圧することで、溶融したプラスチックが加熱金型の周縁に流れ出るのを抑制する。そのため、溶融したプラスチックが加熱金型に付着するのを防ぎ、また、溶融したプラスチックの流動を抑制することで、プラスチックシートを高温に加熱してもピンホールの発生を少なくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-24916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のプラスチック容器の製造は、口栓の融点がフィルムシート(プラスチックシート)の融点と比較して高い場合、口栓とフィルムシートとを十分にヒートシールするためには、フィルムシートの融点に対して高温で加熱する必要がある。その結果、フィルムシートの口栓とヒートシールした箇所にシワが発生して、口栓とフィルムシートとの間に隙間ができ、充填した内容物が外部へ漏れてしまう虞がある。また、シワの発生による外観の悪化や、外部からパウチ(プラスチック容器)の内部へ酸素等が入り込むことによる内容物の劣化が懸念される。
【0006】
例えば、口栓の材質には、剛性の高い高密度ポリエチレン(HDPE)が使用されることが多い。ナイロンやアルミニウムの中間層を有する積層フィルムをパウチのフィルムシートとして使用する場合、中間層の剛性が高いため、フィルムシートを高温に加熱してもシワが発生しにくい。しかしながら、リサイクル性の観点から、単一素材(モノマテリアル)のフィルムシートが求められている。
【0007】
単一素材のフィルムシートを口栓付きパウチに用いる場合、ヒートシールのしやすさから、フィルムシートの材質として低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が用いられる。低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の融点は、高密度ポリエチレン(HDPE)の融点よりも低いため、高密度ポリエチレン(HDPE)を用いた口栓と、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いたフィルムシートとをヒートシールする際、融点の高い口栓を溶融させるための加熱温度および加熱時間によってフィルムシートが収縮し、フィルムシートにシワが発生する虞がある。
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、口栓とフィルムシートとを溶着した際に口栓とフィルムシートとの間に隙間が生じるのを抑制できる口栓付きパウチの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の口栓付きパウチの製造方法は、口栓の溶着部と、フィルムシートで形成されたパウチとを加熱および加圧してヒートシールする口栓付きパウチの製造方法であって、前記溶着部を加熱して、前記溶着部の温度を予熱温度範囲の範囲内で高くする口栓供給前加熱工程と、前記口栓供給前加熱工程を施した後に、前記溶着部と前記パウチとを溶着するヒートシール工程と、を備え、前記予熱温度範囲は、前記溶着部の融点から前記フィルムシートの融点を引いた融点差において、前記融点差より10℃低い温度以上、前記融点差より10℃高い温度以下である。
【0010】
上記口栓付きパウチの製造方法では、前記口栓供給前加熱工程は、前記口栓を前記口栓付きパウチの製造ラインへ供給する前に実施されてもよい。
【0011】
上記口栓付きパウチの製造方法では、前記口栓供給前加熱工程は、前記溶着部に対して非接触の加熱方法によって前記溶着部を加熱してもよい。
【0012】
上記口栓付きパウチの製造方法では、前記融点差が、10℃より大きく、かつ、20℃以下のとき、前記口栓供給前加熱工程は、前記溶着部の温度を約10℃高くしてもよい。
【0013】
上記口栓付きパウチの製造方法では、前記口栓供給前加熱工程は、前記溶着部に前記加圧方向でホットエアを吹き付けて前記溶着部を加熱してもよい。
【0014】
上記口栓付きパウチの製造方法では、前記フィルムシートは、単一素材であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の口栓付きパウチの製造方法によれば、口栓とフィルムシートとを溶着した際に口栓とフィルムシートとの間に隙間が生じるのを抑制できる口栓付きパウチの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る口栓付きパウチの斜視図である。
図2】本実施形態に係る口栓の正面図および側面図である。
図3】同口栓付きパウチのヒートシールされた口栓とフィルムシートとの断面図である。
図4】本実施形態に係る口栓付きパウチの製造方法を示すフローチャートである。
図5】同口栓付きパウチの製造方法を模式的に示す図である。
図6】内容物を充填した実施例1の口栓付きパウチを示す写真である。
図7】内容物を充填した比較例1の口栓付きパウチを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る口栓付きパウチ100の斜視図である。
口栓付きパウチ100は、パウチ10と、口栓20と、キャップ30と、を備える。口栓付きパウチ100は、袋状のパウチ10と口栓20とをヒートシールによって接続し、パウチ10の充填空間10sに飲料等の内容物を充填して、口栓20をキャップ30で閉じることで密封されているため、内容物は口栓付きパウチ100の外部へ漏れない。使用者は、キャップ30を開けることで密封状態を解除し、口栓20から内容物の飲料を飲むことができる。
【0019】
パウチ10を構成する対向したフィルムシートで口栓20を挟み、口栓20を挟み込んだ方向の両側からパウチ10と口栓20とを加圧および加熱して溶着する。口栓付きパウチ100は、有底のスタンディングパウチ容器であり、口栓20を上側にして机等に置くことができる。
【0020】
本実施形態では、図1に示すように、口栓20を上側にして置いた状態の口栓付きパウチ100における鉛直方向を「上下方向V」、鉛直上向きを上下方向Vにおける「上側UP」、鉛直下向きを上下方向Vにおける「下側LO」と定義する。また、パウチ10と口栓20とのヒートシール時に加圧した方向を「奥行方向D」、奥行方向Dにおける一方側を「前側FR」、奥行方向Dにおける他方側を「後側RR」と定義する。また、上下方向Vおよび奥行方向Dと直交する方向を「水平方向H」、水平方向Hにおける一方側を「左側LT」、水平方向Hにおける他方側を「右側RT」と定義する。
【0021】
パウチ10は、充填空間10sと、フィルムシート11と、上シール部12と、横シール部13と、底シール部14と、を備える。充填空間10sは、フィルムシート11に囲われた空間であり、口栓付きパウチ100の内容物が充填される空間である。
【0022】
フィルムシート11は、単一素材(モノマテリアル)の樹脂で形成されたシート状の樹脂フィルムである。フィルムシート11の材料として、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を採用できる。フィルムシート11の材質は、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)に限られず、ヒートシール(熱溶着)に適したものであればよい。フィルムシート11は、単一素材の単層フィルムでもよいし、同系統の樹脂を積層した単一素材の複層フィルムでもよい。フィルムシート11を単一素材で形成することで、リサイクル性を向上できる。
フィルムシート11には、商品名又はロゴ等の印刷を施してもよい。
【0023】
フィルムシート11は、前フィルム11aと、後フィルム11bと、底フィルム11cと、を備える。前フィルム11aは、パウチ10の前側FRに配置されている。後フィルム11bは、パウチ10の後側RRに配置されている。前フィルム11aおよび後フィルム11bは、略長方形で、パウチ10の充填空間10sに充填される内容物を覆うのに十分な形状を有する。
【0024】
パウチ10は、奥行方向Dに対向させた前フィルム11aおよび後フィルム11bを上シール部12および横シール部13でヒートシールし、前フィルム11aおよび後フィルム11bと、その間に二つ折りにして挟んだ底フィルム11cとを底シール部14でヒートシールして袋状に形成されている。パウチ10は、一枚のフィルムシート11を折り曲げてヒートシールすることで形成されてもよいし、複数のフィルムシート11をヒートシールして接続することで形成されてもよい。口栓付きパウチ100が底面を有さない場合、パウチ10は、底フィルム11cを備えなくてもよい。
また、パウチ10は、側部において前フィルム11aと後フィルム11bとの間に二つ折りにして挟んだ折り込み部材を備えるガゼットタイプの形状としてもよい。
【0025】
上シール部12は、奥行方向Dに対向した前フィルム11a、後フィルム11bおよび口栓20をヒートシールした部位であり、パウチ10の上側UPの端部に配置されている。横シール部13は、奥行方向Dに対向した前フィルム11aと後フィルム11bとをヒートシールした部位であり、パウチ10の左側LTおよび右側RTの端部に配置されている。底シール部14は、奥行方向Dに対向した前フィルム11a、後フィルム11bおよび底フィルム11cをヒートシールした部位であり、パウチ10の下側LOの端部に配置されている。上シール部12、横シール部13および底シール部14によって充填空間10sの周囲のフィルムシート11をヒートシールすることで、充填空間10sを密封した略長方形の袋状のパウチ10が形成される。
【0026】
図2は、本実施形態に係る口栓20を示す正面図および側面図である。図2(a)は、口栓20の正面図である。図2(b)は、口栓20の側面図である。
図3は、口栓20とフィルムシート11とが溶着された上シール部12の断面図である。
【0027】
口栓20は、口部21と、溶着部22と、流路23と、延長部24と、を備える。口栓20は、樹脂材を用いた射出成型により形成されている。口栓20の材質として、高密度ポリエチレン(HDPE)等を採用できる。口栓20の材質は、高密度ポリエチレン(HDPE)に限られず、フィルムシート11とヒートシール可能で、かつ、十分な剛性を有した材料であればよい。また、口栓20の表層の材質の融点は、フィルムシート11の材質の融点よりも高い。
【0028】
口部21は、略円筒状であり、口栓20の上側UPに配置されている。ここで、口部21の上下方向Vにおける中心軸を中心軸Oと定義する。口部21は、キャップ30と螺合する螺旋状の螺子部21aを備える。
【0029】
溶着部22は、図3に示すように、円筒部22aと、左側延長部22bと、右側延長部22cと、を有する。円筒部22aは、溶着部22の基部であり、中心軸Oを中心軸とする略円筒状である。左側延長部22bは、円筒部22aの左側LTに接続され、上側UPから見たとき、右側RTから左側LTに向かって先細った形状を有する。右側延長部22cは、円筒部22aの右側RTに接続され、上側UPから見たとき、左側LTから右側RTに向かって先細った形状を有する。
【0030】
溶着部22は、溶着リブ22dを備える。溶着リブ22dは、溶着部22の奥行方向Dに突出した凸形状であり、本実施形態において、前側FRと後側RRとに各3本配置されている。溶着部22が溶着リブ22dを備えることで、溶着部22とフィルムシート11とをヒートシールするとき、溶着部22は、溶融する樹脂量を十分に確保できる。また、ヒートシールした溶着部22とフィルムシート11において、溶着リブ22dが上下方向Vにおけるフィルムシート11との引っ掛かりとなり、上下方向Vにおいて溶着部22とフィルムシート11との溶着剥がれを抑制できる。溶着部22が溶着リブ22dを備えなくてもフィルムシート11と十分にヒートシールできる場合は、溶着部22は溶着リブ22dを備えなくてもよい。
【0031】
溶着部22は、口部21の下側LOに配置されている。口部21の下側LOの端部と、溶着部22の上側UPの端部が接続されている。口部21の内周面と円筒部22aの内周面とが連通して流路23を形成している。
【0032】
流路23は、口部21と溶着部22とに連通し、中心軸Oを中心軸とする円柱状の空間である。口栓付きパウチ100の充填空間10sに充填された内容物は、流路23を経由して口部21の上側UPの端部から外部へ取り出される。
【0033】
延長部24は、前側FRおよび後側RRから見たとき、U字の開口を上側UPに向けた略U字形状をしている。延長部24の上側UPの端部と、溶着部22の下側LOの端部とが接続されている。延長部24は、奥行方向Dにおいて一定の厚さを有する。そのため、使用者が充填空間10sに充填された内容物を吸い出す際、延長部24がフィルムシート11の奥行方向Dの移動を規制して、充填空間10sの奥行方向Dにおける空間を確保し、流路23の下側LOの端部がフィルムシート11によって塞がれるのを抑制できる。
【0034】
キャップ30は、口栓付きパウチ100の内容物が外部へ漏れるのを防ぐ蓋である。キャップ30は、上側UPが塞がれた略円筒状であり、内周面に有する溝が口栓20の螺子部21aと螺合して口栓20に接続される。キャップ30によって口栓20に蓋をすることで口栓付きパウチ100の内容物は密封される。使用者は、口栓20とキャップ30との螺合を解除して口栓付きパウチ100を開けることで、充填空間10sに充填された内容物を外部へ取り出すことができる。例えば、充填空間10sに充填された内容物が飲料の場合、使用者は、キャップ30を口栓20から外して開けて、流路23を経由して口栓20の上側UPの開口から飲料を飲むことができる。
【0035】
次に、口栓付きパウチ100の製造方法の一例について説明する。
【0036】
図4は、口栓付きパウチ100の製造方法の一例を示すフローチャートである。図5は、口栓付きパウチ100の製造方法の一例を模式的に示す図である。
【0037】
まず、ステップS1(口栓供給前加熱工程)を実施する。ステップS1において、口栓20にホットエアを吹き付けて、口栓20を加熱する。
【0038】
ステップS1における口栓20の加熱は、口栓20の溶着部22を加熱するために施す。そのため、溶着部22の近傍のみを加熱してもよいし、口栓20の全体を加熱してもよい。加熱設備にかかる費用や加熱設備の設置面積を少なくするため、溶着部22の近傍のみを加熱するのが望ましい。
【0039】
ここで、ステップS1で上昇させる溶着部22の温度の範囲を、「予熱温度範囲T1」と定義する。また、溶着部22の融点から、フィルムシート11の融点を引いた温度差を、「融点差T2」と定義する。
【0040】
ステップS1における予熱温度範囲T1は、融点差T2より10℃低い温度以上、融点差T2より10℃高い温度以下である。ステップS1において、溶着部22を加熱して、溶着部22の温度を予熱温度範囲T1の範囲内で高くする。ステップS1で上昇させる溶着部22の温度は、約10℃が望ましい。また、融点差T2は、10℃より大きく、かつ、20℃以下が望ましい。
【0041】
ステップS1において、パーツフィーダ(自動部品供給装置)の近傍にホットエアを吹き付ける設備を設置し、パーツフィーダ内の口栓20にホットエアを吹き付ける。例えば、パーツフィーダ内を搬送される口栓20において、雰囲気温度が95℃の加熱設備の内部を4秒かけて口栓20を通過させる。ホットエアを吹き付けることによる加熱を口栓20に施すことで、溶着部22の表面温度を加熱前より約10℃高くする。加熱設備における上記の雰囲気温度および口栓20の通過時間は一例であり、これに限定されない。例えば、加熱設備の内部の雰囲気温度を95℃より高くして口栓20を通過させる時間を4秒より短くしてもよい。
【0042】
また、口栓20を加熱する設備としてホットエアを採用することで、溶着部22を均一に加熱することができる。例えば、金型を溶着部22に押し当てて加熱する場合、口栓20や金型の寸法のバラつきにより、金型と溶着部22とが十分に接触する箇所と、金型と溶着部22との接触が不十分な箇所とが生じやすい。その場合、溶着部22が均一に加熱されず、溶着部22の上昇温度が設定した予熱温度範囲T1の範囲外となる虞がある。溶着部22を均一に加熱できる加熱方法であれば、ホットエア以外の加熱方法を採用してもよく、例えば、赤外線照射による加熱等の非接触の加熱方法を用いることができる。
【0043】
なお、ステップS1は、口栓20を口栓付きパウチ100の製造ラインに供給するパーツフィーダ内に待機している口栓20に対して施される。ここで、製造ラインとは、供給された口栓付きパウチ100の各構成部品が、各工程を順番に工程ごとに決められた時間で送られ、ヒートシール等の加工を施される一連の流れ作業による製造工程を示す。
【0044】
ホットエア等の非接触の加熱方法によって溶着部22を加熱する場合、設定した予熱温度範囲T1の範囲まで溶着部22の温度を上昇させるのに時間を要する可能性がある。しかしながら、パーツフィーダ内に待機している口栓20に対してステップS1を施すことで、口栓付きパウチ100の製造にかけることができる時間(タクトタイム)外でステップS1を施すことができる。そのため、ステップS1にかかる時間が口栓付きパウチ100のタクトタイムに影響することなく溶着部22の温度を予熱温度範囲T1の範囲内で上昇させることができる。また、既存の口栓付きパウチの製造ラインを変更する必要がなく、パーツフィーダに加熱設備を追加するだけであるため、設備変更にかかる費用を最小限にできる。ステップS1は、口栓付きパウチ100の製造ラインに供給される前の口栓20に施されればよく、パーツフィーダ以外の設備に保管された口栓20に対して施されてもよい。
【0045】
次に、ステップS2(口栓供給工程)を実施する。ステップS2において、ステップS1で予熱温度範囲T1の範囲内で溶着部22の温度を上昇させた口栓20を、パーツフィーダから口栓付きパウチ100の製造ラインに供給する。口栓20を口栓付きパウチ100の製造ラインに供給した後、口栓20において、溶着部22に金型を接触させて加熱(プレヒート)する。ステップS2において溶着部22へ施す加熱は、ステップS1で施す非接触の加熱とは異なり、金型を溶着部22へ接触させる加熱方法である。そのため、ステップS1での加熱と比較して、溶着部22の全体を均一に加熱するのが難しく、主に溶着リブ22dが加熱される。ステップS2において、例えば、口栓20の溶着部22に金型を押し当てて、150℃で0.18秒加熱する。
【0046】
次に、ステップS3(フィルム供給工程)を実施する。ステップS3において、フィルムシート11を製造ラインに供給する。ステップS3で製造ラインに供給されるフィルムシート11は、横シール部13および底シール部14がヒートシールされており、上側UPに開いた袋形状をしている。フィルムシート11には、予め商品名又はロゴ等の印刷を施してもよい。
【0047】
また、ステップS3において、後述するヒートシール工程に備え、フィルムシート11と口栓20との位置を決めるための仮ヒートシール工程を実施する。仮ヒートシール工程では、供給された袋状のフィルムシート11の上側UPの開口に口栓20を差し込み、フィルムシート11の上側UPの端部において、奥行方向Dに対向したフィルムシート11で口栓20の溶着部22を挟み込む。口栓20を挟み込んだフィルムシート11の前側FRおよび後側RRから、フィルムシート11および溶着部22を加熱および加圧して、フィルムシート11と溶着部22とを溶融接着する。ここで、仮ヒートシール工程では口栓20に対するフィルムシート11の位置を決められればよく、例えば、上シール部12において、フィルムシート11および溶着部22の一部分のみに金型を押し当てて180°で0.8秒加熱し、フィルムシート11と溶着部22の一部分のみを溶融接着して、口栓20に対するフィルムシート11の位置を決定する。なお、仮ヒートシール工程による位置決めが不要な場合は、仮ヒートシール工程を施さずにステップS4へ移行してもよい。
【0048】
次に、ステップS4(ヒートシール工程)を実施する。ステップS4において、ステップS2およびステップS3で製造ラインに供給された口栓20とフィルムシート11とをヒートシールして接続する。フィルムシート11の前側FRおよび後側RRから、フィルムシート11および溶着部22を加熱および加圧して、フィルムシート11と溶着部22とを溶融接着する。ステップS4でフィルムシート11と溶着部22とをヒートシールすることで、パウチ10の上シール部12が形成される。なおこの際、ヒートシールの工程は複数回に分けて実施されてもよく、また、ヒートシール後に冷却工程を設けてヒートシール部を冷却するようにしてもよい。
【0049】
例えば、ステップS4において、155℃で0.8秒加熱する工程を3回実施する。ステップS4で実施するヒートシールを、第一ヒートシール工程、第二ヒートシール工程および第三ヒートシール工程として3回に分けることで、ステップS4にかかる時間が他の工程より多くなることを抑制し、口栓付きパウチ100の製造にかけることができる時間(タクトタイム)への影響を最小限にできる。
【0050】
また、ヒートシール後の冷却工程において、例えば、フィルムシート11と溶着部22とをヒートシールした箇所(ヒートシール部)に金型(冷却シール板)を接触させてヒートシール部を冷却する。冷却シール板において、室温(常温)状態の冷却シール板を用いてもよいし、内部にチラー水を循環させて室温以下の温度とした冷却シール板を用いてもよい。
【0051】
また、ステップS1における溶着部22の加熱は、ステップS4における加圧方向(奥行方向D)で溶着部22にホットエアを吹き付けることで、溶着部22のフィルムシート11と溶着される部位を効率よく加熱することができる。
【0052】
横シール部13および底シール部14を形成するヒートシールは、ステップS4で施されてもよい。例えば、ヒートシールされていないシート状のフィルムシート11を製造ラインに供給し、ステップS4においてフィルムシート11と口栓20とをヒートシールする際に、横シール部13および底シール部14のヒートシールを施してもよい。
【0053】
また、フィルムシート11とヒートシールされる溶着部22の表層の融点は、フィルムシート11の融点よりも高い。例えば、溶着部22の材質として、融点131℃の高密度ポリエチレン(HDPE)を用いる。フィルムシート11の材質として、融点113℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いる。この場合、溶着部22とフィルムシート11とを十分にヒートシールするためには、溶着部22の融点である131℃よりも高い温度で加熱してヒートシールする。そのため、フィルムシート11の融点とヒートシールする加熱温度との温度差が大きく、加熱によりフィルムシート11が収縮してシワが発生し、溶着部22とフィルムシート11との間に隙間ができる虞がある。その結果、充填空間10sに充填された内容物が、溶着部22とフィルムシート11との間の隙間から外部へ漏れる虞がある。
【0054】
ステップS1で溶着部22を加熱して、予熱温度範囲T1の範囲内で溶着部22の表面温度を高くすることで、ステップS4でフィルムシート11と溶着部22とをヒートシールする際、溶着部22の温度が融点まで達するまでの加熱時間を短くできる。そのため、フィルムシート11を加熱する時間が短くなり、フィルムシート11にシワが発生するのを抑制できる。その結果、溶着部22とフィルムシート11との間に隙間を生じさせずにヒートシールすることができ、口栓付きパウチ100において、充填空間10sに充填された内容物が外部へ漏れるのを抑制できる。
【0055】
また、ヒートシール時の加熱でフィルムシート11にシワが発生する虞がある場合は、フィルムシート11のシワを防止するためにナイロンやアルミニウム等を積層して剛性を高くした積層フィルムをフィルムシート11に用いる必要があるが、ステップS1で溶着部22の温度を予熱温度範囲T1の範囲内で高くすることで、ポリエチレン樹脂等の単一素材で形成されたフィルムシート11を用いても口栓20とフィルムシート11とを十分にヒートシールできるため、リサイクル性に優れた口栓付きパウチ100を製造できる。
【0056】
予熱温度範囲T1が、融点差T2より10℃低い温度未満だと、ステップS4で溶着部22とフィルムシート11とをヒートシールする際に必要な熱量が大きくなり、フィルムシート11にシワが発生して口栓20とフィルムシート11との間に隙間が生じる。予熱温度範囲T1が、融点差T2より10℃高い温度より大きいと、ステップS1で溶着部22を加熱する際に、ホットエアの温度をより高くすることや、ホットエアを吹き付ける時間を長くすることが必要であり、製造にかかる費用又は時間が多くなる。そのため、ステップS1における溶着部22の予熱温度範囲T1は、融点差±10℃にする。
【0057】
例えば、溶着部22の融点が131℃、フィルムシート11の融点が113℃の場合、融点差T2は18℃である。このとき、ステップS1において、予熱温度範囲T1は、8℃以上28℃以下である。そのため、ステップS1において、溶着部22の温度が8℃以上28℃以下の範囲内で上昇するように加熱する。
【0058】
溶着部22とフィルムシート11とをヒートシールした後、溶着部22とフィルムシート11とが十分に接着されているかを検査し、次の工程へ移行する。
【0059】
次に、ステップS5(充填工程)を実施する。ステップS5において、口部21の上側UPの開口から流路23を経由して、パウチ10の充填空間10sへ内容物を充填する。充填空間10sに内容物を充填した後、パウチ10および口栓20を洗浄し、乾燥させ、次の工程へ移行する。
【0060】
次に、ステップS6(蓋閉め工程)を実施する。ステップS6において、口部21の上側UPの開口をキャップ30で閉じて、口栓付きパウチ100を密封する。次に、キャップ30が適切に閉められているか否か等の検査を実施し、口栓付きパウチ100の製造工程を完了する。
【0061】
本実施形態の口栓付きパウチ100の製造方法によれば、ステップS1において、口栓20の溶着部22を加熱し、融点差T2より10℃低い温度以上、融点差T2より10℃高い温度以下の予熱温度範囲T1の範囲内で、溶着部22の温度を上昇させる。その後、ステップS4で、口栓20とフィルムシート11とをヒートシールして接着する。そのため、溶着部22の融点がフィルムシート11の融点よりも高い場合でも、フィルムシート11にシワが発生することなく、口栓20とフィルムシート11とをヒートシールできる。その結果、口栓20とフィルムシート11とを溶着した際に口栓20とフィルムシート11との間に隙間が生じるのを抑制できる口栓付きパウチ100の製造方法を提供することができる。また、ポリエチレン樹脂等の単一素材を用いたフィルムシート11でも口栓20とフィルムシート11とを十分にヒートシールできるため、リサイクル性に優れた口栓付きパウチ100の製造方法を提供することができる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0063】
(変形例1)
上記実施形態において、ステップS1において口栓20はホットエアを吹き付けることにより加熱されるが、口栓20を加熱する方法はこれに限定されない。口栓20は、ホットエアの吹き付け以外の方法で加熱されてもよい。例えば、口栓20は、電熱線の近傍を通過させることで加熱されてもよい。
【0064】
以下実施例により、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
融点113℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いて、単一素材のフィルムシート11を形成した。融点131℃の高密度ポリエチレン(HDPE)を用いて、口栓20を形成した。口栓供給前加熱工程S1において、口栓20の溶着部22にホットエアを吹き付けて加熱し、溶着部22の表面温度を加熱前よりも10℃高くした。
【0066】
フィルムシート11と、表面温度を10℃高くした溶着部22とを155℃でヒートシールして接着した。パウチ10の充填空間10sに赤色の液体を充填し、キャップ30で閉じて密封し、実施例1の口栓付きパウチ100を得た。
【0067】
(比較例1)
口栓供給前加熱工程S1を実施しない以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の口栓付きパウチを得た。
【0068】
(実験1)
実施例1および比較例1の口栓付きパウチにおいて、上シール部における口栓とフィルムシートとの間に内容物が漏れ出ているか否かを目視にて確認した。
【0069】
(実験結果)
図6は、内容物を充填した実施例1の口栓付きパウチ100を示す写真である。実施例1の上シール部12において、フィルムシート11にシワは発生しておらず、口栓20とフィルムシート11との間に内容物が漏れ出ていない。
【0070】
図7は、内容物を充填した比較例1の口栓付きパウチを示す写真である。比較例1の上シール部において、フィルムシートにシワが発生し、口栓とフィルムシートとの間に内容物が漏れ出ている。
【符号の説明】
【0071】
100 口栓付きパウチ
10 パウチ
11 フィルムシート
20 口栓
22 溶着部
S1 口栓供給前加熱工程
S4 ヒートシール工程
T1 予熱温度範囲
T2 融点差
D 奥行方向(加圧方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7