(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063416
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】溝研削方法、溝研削装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B24B 19/02 20060101AFI20240502BHJP
B24B 49/10 20060101ALN20240502BHJP
【FI】
B24B19/02
B24B49/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171347
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳史
(72)【発明者】
【氏名】濱口 直紀
(72)【発明者】
【氏名】小谷 一貴
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
【Fターム(参考)】
3C034BB92
3C034CA13
3C034CB08
3C034DD20
3C049AA03
3C049AB04
3C049CA01
3C049CB01
(57)【要約】
【課題】研削後の未研削部分の発生を抑制する。
【解決手段】溝研削方法はシャフトの外周面に所定の角度間隔で設けられた複数の溝を砥石で順番に研削する溝研削方法であって、センタリングされたシャフトの振れの最大点又は最小点が存在する外周上の位置或いは領域を特定する制御工程と、複数の溝のうち上記位置或いは上記領域に存在する溝を最初に研削加工する第1研削加工溝として、第1研削加工溝の中心と砥石の中心とを合わせた上で第1研削加工溝を研削加工する制御工程と、その後、複数の溝のうち残りの溝それぞれに対し順次所定の角度間隔分シャフトを回転させて研削加工を行う制御工程と、を含む加工工程により複数の溝全てを研削する溝研削方法である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの外周面に所定の角度間隔で設けられた複数の溝を砥石で順番に研削する溝研削方法であって、
センタリングされた前記シャフトの振れの最大点又は最小点が存在する外周上の位置或いは領域を特定する制御工程と、
前記複数の溝のうち前記位置或いは前記領域に存在する溝を最初に研削加工する第1研削加工溝として、前記第1研削加工溝の中心と前記砥石の中心とを合わせた上で前記第1研削加工溝を研削加工する制御工程と、
その後、前記複数の溝のうち残りの溝それぞれに対し順次前記所定の角度間隔分前記シャフトを回転させて研削加工を行う制御工程と、
を含む加工工程により前記複数の溝全てを研削する、
溝研削方法。
【請求項2】
請求項1に記載の溝研削方法であって、
前記複数の溝それぞれは、溝数をNとして前記シャフトの外周上に360/N度間隔で形成され、
前記位置或いは前記領域を特定する制御工程は、前記シャフトを180/N度間隔で回転させるとともにその都度、前記シャフトの外周に配置したセンサを用いて前記シャフトの振れを測定することで、2N箇所で前記シャフトの振れを測定し、前記2N箇所で測定した振れ同士を比較して当該2N箇所の間での前記シャフトの振れの最大点又は最小点を特定することを含む、
溝研削方法。
【請求項3】
請求項2に記載の溝研削方法であって、
前記位置或いは前記領域を特定する制御工程は、前記領域を特定する工程であって、前記領域を所定領域として前記シャフトに対して当該所定領域を含む180/N度間隔の複数の領域を設定し、前記2N箇所の間での前記シャフトの振れの最大点又は最小点に基づき前記所定領域を特定する工程である、
溝研削方法。
【請求項4】
請求項3に記載の溝研削方法であって、
前記第1研削加工溝を研削加工する制御工程は、
前記所定領域であって前記シャフトの振れの最大点が存在する領域である第1領域に前記複数の溝のいずれかが存在する場合は、当該第1領域に存在する溝を前記第1研削加工溝とすることと、
前記第1領域に前記複数の溝のいずれもが存在しない場合は、前記複数の領域のうち前記シャフトの中心点に対し前記第1領域の反対側に位置する領域を前記シャフトの振れの最小点が存在する第2領域として、当該第2領域に存在する溝を前記第1研削加工溝とすることと、
を含む溝研削方法。
【請求項5】
シャフトを軸方向に心押してセンタリングするとともに、当該シャフトの回転を行う第1ユニット部と、
砥石が設けられた回転軸を有し、前記第1ユニット部とともに前記シャフトの外周面に所定の角度間隔で設けられた複数の溝を前記砥石で順番に研削する第2ユニット部と、
前記シャフトの外周に配置されたセンサと、
前記第1ユニット部と前記第2ユニット部とを制御するコントローラと、
を備える溝研削装置であって、
前記コントローラは、
前記センサの出力に基づき、前記第1ユニット部によりセンタリングされた前記シャフトの振れの最大点又は最小点が存在する外周上の位置或いは領域を特定する制御と、
前記複数の溝のうち前記位置或いは前記領域に存在する溝を最初に研削加工する第1研削加工溝として、前記第2ユニット部により前記第1研削加工溝の中心と前記砥石の中心とを合わせた上で前記第1研削加工溝を研削加工する制御と、
その後、前記複数の溝のうち残りの溝それぞれに対し順次、前記第1ユニット部により前記所定の角度間隔分前記シャフトを回転させて前記第2ユニット部により研削加工を行う制御と、
を含む加工制御により前記複数の溝全てを研削する、
溝研削装置。
【請求項6】
シャフトの外周面に所定の角度間隔で設けられた複数の溝を砥石で順番に研削する溝研削装置のコンピュータが実行可能なプログラムであって、
センタリングされた前記シャフトの振れの最大点又は最小点が存在する外周上の位置或いは領域を特定することと、
前記複数の溝のうち前記位置或いは前記領域に存在する溝を最初に研削加工する第1研削加工溝として、前記第1研削加工溝の中心と前記砥石の中心とを合わせた上で前記第1研削加工溝を研削加工することと、
その後、前記複数の溝のうち残りの溝それぞれに対し順次前記所定の角度間隔分前記シャフトを回転させて研削加工を行うことと、
を含む加工プログラムにより前記複数の溝全てを研削する制御を行わせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溝研削方法、溝研削装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはインデックスユニットと心押し台とで挟持したワークの溝を高速回転する砥石で研削する溝研削機が開示されている。この溝研削機では1個の溝を研削したら、インデックスユニットによりワークを120°回転させて次の溝を砥石に臨ませる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-136254(例えば
図5、段落0015参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャフトの溝を研削するにあたり、センタリングされたシャフトは振れを有する。このため、シャフトを回転させて割り出した溝位置がシャフトの振れに起因してずれる結果、溝の縁部分で研削加工の取り代がなくなり、未研削部分が残る虞がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、研削後の未研削部分の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の溝研削方法は、シャフトの外周面に所定の角度間隔で設けられた複数の溝を砥石で順番に研削する溝研削方法であって、センタリングされた前記シャフトの振れの最大点又は最小点が存在する外周上の位置或いは領域を特定する制御工程と、前記複数の溝のうち前記位置或いは領域に存在する溝を最初に研削加工する第1研削加工溝として、前記第1研削加工溝の中心と前記砥石の中心とを合わせた上で前記第1研削加工溝を研削加工する制御工程と、その後、前記複数の溝のうち残りの溝それぞれに対し順次前記所定の角度間隔分前記シャフトを回転させて研削加工を行う制御工程と、を含む加工工程により前記複数の溝全てを研削する溝研削方法である。
【0007】
本発明の別の態様によれば、上記溝研削方法に対応する溝研削装置及びプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
これらの態様によれば、上記のように第1研削加工溝を設定することで、残りの溝の位置を割り出す際にシャフトの振れに起因して生じる溝位置のずれが抑制される。結果、複数の溝全体で未研削部分を生じさせ難くすることができ、研削加工後に残る未研削部分の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、溝研削装置の要部を上方から見た概略構成図である。
【
図2】
図2は、溝研削装置の要部を側方から見た概略構成図である。
【
図3】
図3は、センサの溝検出位置を説明する図である。
【
図4】
図4は、センサの振れ測定位置を説明する図である。
【
図5】
図5は、加工工程を構成する制御工程の説明図である。
【
図6】
図6は、振れ特定工程での振れの特定方法の説明図の第1図である。
【
図7】
図7は、振れ特定工程での振れの特定方法の説明図の第2図である。
【
図8】
図8は、第1研削工程及び第2研削工程の説明図である。
【
図9】
図9は、加工制御の一例をフローチャートで示す図である。
【
図11】
図11は、更なる検証で用いた3つのケースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は溝研削装置100の要部を上方から見た概略構成図である。
図2は溝研削装置100の要部を側方から見た概略構成図である。図示のZ方向は鉛直方向に対応する。溝研削装置100は砥石23を有し、ワークWの外周面に所定の角度間隔で設けられた複数の溝Gを砥石23で順番に研削する。ワークWはシャフトであり、例えば無段変速機の固定プーリとされる。複数の溝Gの溝数はここでは3つであり、この場合に所定の角度間隔は120°間隔とされる。複数の溝Gの溝数をNとした場合、所定の角度間隔は360/Nである。
図2では複数の溝Gのうち砥石23に臨む溝Gを代表的に示す。
【0012】
複数の溝GそれぞれはワークWの軸方向に沿って延伸する。複数の溝Gそれぞれは断面円弧状の形状を有し、固定プーリにおいて玉軸受構造を構成するためのボール(コロ)の保持溝を構成する。複数の溝Gそれぞれは例えば鍛造工程で粗加工され浸炭処理により熱処理された後に、溝研削装置100で研削されることにより仕上げられる。従って、溝研削装置100には複数の溝Gそれぞれが研削される前の状態のワークWがセットされる。
【0013】
溝研削装置100は第1ユニット部10と第2ユニット部20とセンサ部30とコントローラ50とを備える。第1ユニット部10はワーク側ユニットであり、ワークWを軸方向に心押してセンタリングするとともに、ワークWの回転を行う。第1ユニット部10はインデックス部11と心押し部12とを備える。
【0014】
インデックス部11は固定センタ111とモータ112と把持部113とを有する。固定センタ111はワークWのセンタリングに用いられる。固定センタ111はワークWの一端部に設けられた中心穴に挿入される。モータ112はワークWを回転させる。モータ112はワークWを一定の角度間隔で回転させることができ、これにより溝位置などワークWの回転位置の割り出しが行われる。溝位置の割り出しではワークWは120°つまり所定の角度間隔毎に位置決めされ、その都度溝Gの研削加工が行われる。把持部113はワークWを一端部でクランプ(把持)する。ワークWは把持部113によりクランプされた状態で把持部113を介してモータ112で回転される。
【0015】
心押し部12はテールセンタ121と移動機構122とを有する。テールセンタ121は固定センタ111とともにワークWのセンタリングを行う。テールセンタ121はワークWの他端部に設けられた中心穴に挿入される。テールセンタ121は移動機構122に設けられる。移動機構122は第1ユニット部10の軸方向(図示のX方向)に沿って移動可能に構成される。移動機構122が第1ユニット部10の軸方向に沿ってワークW側に移動することで、テールセンタ121が第1ユニット部10の軸方向にワークWを心押して固定センタ111とともにワークWをセンタリングする。
【0016】
第2ユニット部20はツール側ユニットであり、回転軸21と移動機構22と砥石23とを備える。回転軸21は第1ユニット部10の軸方向に対し直交配置とされる。回転軸21の軸方向は第2ユニット部20の軸方向を構成し、図示のY方向に対応する。従って、第1ユニット部10と第2ユニット部20とは軸線同士が互いに直交する直交配置とされる。回転軸21は移動機構22に設けられる。
【0017】
移動機構22はモータ221を有し、モータ221は回転軸21を回転させる。移動機構22は第1ユニット部10の軸方向、第2ユニット部20の軸方向、及びこれらの軸方向それぞれに直交する方向、つまり図示のX方向、Y方向及びZ方向に移動可能に構成される。移動機構22が移動すると、移動機構22に設けられた回転軸21及びモータ221もともに移動する。
【0018】
砥石23は回転軸21に設けられる。砥石23は回転軸21の先端部に固定される。砥石23は円盤状の形状を有し、回転軸21に対して同心配置とされる。砥石23は回転軸21と一体となって回転し、複数の溝Gそれぞれを研削する。砥石23は断面円弧状の外周部231を有し、外周部231で複数の溝Gそれぞれを研削する。
【0019】
このように構成された第2ユニット部20は第1ユニット部10とともに複数の溝Gを砥石23で順番に研削する。つまり、第1ユニット部10と第2ユニット部20とは協働して複数の溝Gを順次研削する。
【0020】
センサ部30はセンサ31と移動機構32とを備える。センサ31はワークWの外周に配置される。センサ31は近接センサであり、ワークWとの接近、離間に応じてON、OFFする。センサ31は移動機構32に設けられ、移動機構32とともに移動する。移動機構32は図示のX方向及びZ方向に移動可能に構成され、センサ31はワークWに対しZ方向から臨む配置とされる。このため、センサ31はワークWの延伸方向に沿ってワークWの直上を移動可能とされるとともに、ワークWに対し接近、離間可能とされる。
図2ではセンサ31が待機位置にある場合を示す。
【0021】
センサ31は溝Gの検出とワークWの振れの測定とに用いられる。ワークWの振れはワークWの外径の振れであり、ワークWの半径方向の振れ(半径が増加する方向に測定される場合はプラス、半径が減少する方向に測定される場合はマイナスとされる振れ)である。センサ31はこれらの場合に次に説明するように配置される。
【0022】
図3はセンサ31の溝検出位置を説明する図である。
図4はセンサ31の振れ測定位置を説明する図である。溝G検出時にはセンサ31は例えば待機位置から第1ユニット部10の軸方向に沿って固定センタ111側に移動することで、複数の溝Gと径方向にオーバーラップする軸方向位置に移動される。当該軸方向位置は溝検出位置であり、溝検出位置ではセンサ31はさらに溝Gを検出可能な径方向位置までワークWに接近される。溝Gはセンサ31からの信号に基づきセンサ31がONからOFFになったことを検出することで検出できる。
【0023】
溝Gは例えばワークW上の周方向位置の基準となる基準溝としてセンサ31で検出される。基準溝として検出された溝GはワークW上の周方向位置の基準としてワークWの振れ測定に用いられる。複数の溝Gのいずれかを基準溝として検出するのは、センサ31で検出可能な複数の溝Gのいずれかを検出して基準とすることで、ワークWの周方向において複数の溝Gそれぞれの溝位置に振れ測定位置(測定点)を合わせることが容易になるためである。
【0024】
これに対し、ワークWの回転位置とワークW上の周方向位置との関係を把握するためには、例えばセンサ31がワークW上の任意の周方向位置に臨む場合に当該周方向位置が基準として検出され、設定されてもよい。この場合でも基準を設定した後に複数の溝Gのいずれかを検出すれば、検出した溝Gと基準との位置関係を把握できるので、複数の溝Gの溝位置に測定点を合わせることは可能である。但しこの場合は、基準設定とは別に溝Gを検出する分、時間がかかることになる。
【0025】
振れ測定時にはセンサ31は溝検出位置から複数の溝Gと径方向にオーバーラップしない軸方向位置であってワークWが断面円形になる軸方向位置に移動される。当該軸方向位置は振れ測定位置であり、振れ測定位置ではセンサ31がOFFとなる離間位置からワークWに次第に接近され、センサ31がONになった際のZ方向位置が記憶される。結果、基準溝に対応する周方向位置でのワークWの外径位置が測定される。そして、基準溝に対応する周方向位置を測定開始点として、第1ユニット部10でワークWを60°間隔で回転させるとともにその都度、外径位置を測定することで、6箇所でワークWの外径位置が測定される。ワークWの外径位置はワークWの振れを指標するので、これにより計6箇所でワークWの振れが測定される。
【0026】
60°間隔で回転させることは、複数の溝Gの溝数をNとした場合に180/N度間隔で回転させることに相当する。また、6箇所で測定することは複数の溝Gの溝数をNとした場合に2N箇所で測定することに相当する。複数の測定点の間で最初に測定を行う測定開始点を基準溝に対応する周方向位置に設定することで、複数の溝Gそれぞれの溝位置に測定点を対応させることができる。測定開始点は他の周方向位置に設定されてもよい。
【0027】
図1、
図2に戻り、コントローラ50は中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えた1又は複数のコンピュータ(マイクロコンピュータ)で構成される。コントローラ50はROM又はRAMに格納されたプログラムをCPUによって実行することで制御を行う。プログラムとしては、例えばCD-ROM等の非一過性の記憶媒体に記憶されたものが用いられてもよい。
【0028】
コントローラ50は第1ユニット部10、第2ユニット部20及びセンサ部30を制御する。第1ユニット部10ではモータ112や把持部113や移動機構122がコントローラ50により制御される。第2ユニット部20では移動機構22やモータ221が、センサ部30では移動機構32がコントローラ50により制御される。コントローラ50には例えばセンサ31からの信号が入力される。コントローラ50には加工制御に必要なその他の信号が適宜入力されてよい。
【0029】
コントローラ50は格納されたプログラムに基づき、複数の制御工程からなる加工工程を形成する加工制御を実行することにより、ワークWの複数の溝G全てを研削する。当該加工制御は加工プログラムに基づき実行される。従って換言すれば、コントローラ50に格納されたプログラムは、当該加工プログラムによりワークWの複数の溝G全てを研削する制御をコントローラ50に行わせる。加工工程は次に説明する複数の制御工程により構成される。
【0030】
図5は加工工程を構成する制御工程の説明図である。
図5に示すように、加工工程はセンタリング工程PC1、振れ特定工程PC2、第1研削工程PC3及び第2研削工程PC4の4つの制御工程に大別される。センタリング工程PC1は第1ユニット部10によりワークWを軸方向に心押してセンタリングする工程である。センタリング工程PC1の次は振れ特定工程PC2となる。
【0031】
振れ特定工程PC2は、センタリングされたワークWの振れの最大点又は最小点が存在する外周上の位置或いは領域Rを特定する工程である。振れ特定工程PC2は換言すれば、センタリングされたワークWの振れの最大点又は最小点を外周上の位置或いは領域Rにより特定する工程であり、領域Rによる特定ではその領域Rに振れの最大点又は最小点が存在するということが特定される。振れ特定工程PC2は前述した基準溝の検出及びワークWの振れ測定のほか、次に説明する振れの特定をさらに含む。
【0032】
図6、
図7は振れ特定工程PC2での振れの特定方法の説明図である。
図6は第1領域Rmaxに溝Gが存在する場合を示し、
図7は第2領域Rminに溝Gが存在する場合を示す。第1領域Rmaxは振れの最大点が存在する外周上の領域Rであり、第2領域Rminは振れの最小点が存在する外周上の領域Rである。ワーク中心P1はワークWの中心を示す。
【0033】
図6、
図7に示すように、振れ特定工程PC2ではワークWの外周が複数の領域Rに区分される。複数の領域Rは互いに均等な領域として設定され、測定点が計6箇所の場合は60°間隔の領域Rが計6つ設定される。つまり、領域Rは測定点と同数設定される。このため、複数の領域Rそれぞれには測定点が必ず一つ存在することになる。複数の領域Rそれぞれは複数の領域Rのいずれかにおいて溝Gが周方向中央にくるように設定でき、これにより複数の溝Gそれぞれに対してバランス良く領域Rを設定できる。複数の溝Gの溝数をNとすると、ワークWに対しては第1領域Rmax又は第2領域Rminを所定領域として当該所定領域を含む180/N度間隔の複数の領域Rが設定されることになる。
【0034】
図6に示す第1領域Rmaxは振れが最大の測定点に基づき特定される。つまり、複数の測定点のうち振れが最大の測定点が存在する領域Rが第1領域Rmaxとして特定される。振れが最大の測定点は計6箇所で測定した振れ同士を比較することで把握できる。従って、第1領域Rmaxは計6箇所で測定した振れ同士の比較に基づき特定される。
【0035】
図7に示す第2領域Rminはワーク中心P1に対し第1領域Rmaxの反対側に位置し、第1領域Rmaxと点対称となる。このため、第2領域Rminは第1領域Rmaxを特定することで間接的に特定される。つまり、第1領域Rmax、第2領域Rminのいずれか一方の特定は他方の特定を兼ねる。振れ特定工程PC2はこのような意味においても、振れの最大点又は最小点が存在する外周上の領域Rを特定する工程といえる。
【0036】
第1領域Rmaxは、複数の溝Gのうち最初に研削を行う第1研削加工溝を決定するために特定される。
図6に示すように、第1領域Rmaxに溝Gが存在する場合は第1領域Rmaxに存在する溝Gが第1研削加工溝とされる。その一方で、第1領域Rmaxに溝Gが存在しない場合は、
図7に示すように第2領域Rminに存在する溝Gが第1研削加工溝とされる。
【0037】
上記のような第1研削加工溝の設定は第1研削加工溝を研削加工するための制御の一部として観念できる。このため、第1研削加工溝の設定は次に説明する第1研削工程PC3の制御の一部として把握される。
図5に示したように、振れ特定工程PC2の次は第1研削工程PC3となり、その後は第2研削工程PC4となる。第1研削工程PC3及び第2研削工程PC4について説明すると次の通りである。
【0038】
図8は第1研削工程PC3及び第2研削工程PC4の説明図である。第1研削工程PC3は複数の溝Gのうち第1領域Rmax又は第2領域Rminに存在する溝Gを第1研削加工溝として、第1研削加工溝の中心Y1と砥石23の中心Y2とを合わせた上で第1研削加工溝を研削加工する工程である。
【0039】
このため、第1研削工程PC3ではまず第1研削加工溝の検出が行われる(制御A)。第1研削加工溝の検出ではセンサ31が前述した振れ検出位置から溝検出位置に移動され、ワークWに接近される。そしてこの状態でワークWを回転させながらセンサ31からの信号に基づき第1研削加工溝の検出が行われる。この際には第1領域Rmax(又は第2領域Rmin)の範囲内でセンサ31が第1研削加工溝の検出を行うようにワークWを回転させることができる。
【0040】
第1研削加工溝が検出されると、第1検出加工溝の中心Y1の検出が行われる(制御B)。第1検出加工溝の中心Y1はY方向の中心であり、次のように検出される。すなわち、中心Y1はセンサ31をY方向に移動させることで第1研削加工溝の周方向両側の縁部分をセンサ31で検出するとともに、検出した2箇所の縁部分のY方向座標に基づきこれらの間のY方向中心座標を演算することで検出される。
【0041】
制御Bではさらに第1研削加工溝の中心Y1と砥石23の中心Y2とが合わせられる。砥石23の中心Y2もY方向の中心であり、第1研削加工溝と砥石23との中心合わせは、砥石23をY方向に移動させて第1研削加工溝の中心Y1に砥石23の中心Y2を合わせることで行われる。
【0042】
第1検出加工溝の中心Y1と砥石23の中心Y2とが合わせられると、砥石23により第1研削加工溝の研削加工が行われる(制御C)。第1研削加工溝の研削加工は
図2に二点破線で示す砥石23の位置からX方向に沿って固定センタ111側に砥石23を回転させながら移動させることで行われる。
【0043】
第2研削工程PC4はその後、複数の溝Gのうち残りの溝Gそれぞれに対し順次所定の角度間隔分、従って120°間隔でワークWを回転させて研削加工を行う工程である。つまり、第1研削工程PC3の後には第2研削工程PC4で残りの溝Gの研削加工が行われる(制御D)。
【0044】
残りの溝Gは2番目に研削加工される第2研削加工溝、及び3番目に研削加工される第3研削加工溝であり、第1研削加工溝の研削加工が終了すると、ワークWが120°回転されて第2研削加工溝が研削加工される。また、第2研削加工溝の研削加工が終了すると、ワークWが再び120°回転されて第3研削加工溝が研削加工される。
【0045】
図9はコントローラ50が行う加工制御の一例をフローチャートで示す図である。ステップS1ではワークWのセンタリングが行われる。つまり、ステップS1はセンタリング工程PC1に対応する。ステップS2からステップS4は振れ特定工程PC2に対応する。ステップS2では基準溝の検出が、ステップS3ではワークWの振れ測定が、ステップS4では第1領域Rmaxの特定がそれぞれ行われる。
【0046】
ステップS5からステップS9は第1研削工程PC3に対応する。ステップS5では第1領域Rmaxに溝Gがあるか否かが判定される。ステップS5で肯定判定の場合はステップS6で第1領域Rmaxに存在する溝Gが第1研削加工溝に設定される。ステップS5で否定判定の場合はステップS7で第2領域Rminに存在する溝Gが第1研削加工溝に設定される。ステップS6又はステップS7の後にはステップS8に進み、第1研削加工溝と砥石23との中心合わせが行われる。また、ステップS9で第1研削加工溝の研削が行われる。
【0047】
ステップS10からステップS13は第2研削工程PC4に対応する。ステップS10ではワークWが120°回転されることで第2研削加工溝の溝位置が割り出され、ステップS11で第2研削加工溝の研削が行われる。また、ステップS12ではワークWが再び120°回転されることで第3研削加工溝の溝位置が割り出され、ステップS13で第3研削加工溝が研削される。結果、複数の溝G全てに対して研削が行われる。
【0048】
ワークWの回転により溝位置が割り出される第2研削加工溝及び第3研削加工溝に対しては、砥石23との中心合わせは行われない。その一方で、センタリングされたワークWは振れを有する。このため、第2研削加工溝及び第3研削加工溝では割り出された溝位置がワークWの振れに起因してずれる結果、縁部分で研削加工の取り代がなくなり、未研削部分が残ること(いわゆる黒皮残りが発生すること)が懸念される。
【0049】
本実施形態ではこのような事情に鑑みて、振れ特定工程PC2で第1領域Rmax又は第2領域Rminを特定するとともに、第1研削工程PC3で複数の溝Gのうち第1領域Rmax又は第2領域Rminに存在する溝Gを第1研削加工溝として研削加工を行うようにしている。これは次に説明する検証結果に基づく。
【0050】
図10Aから
図10Cは検証結果の説明図である。
図10Aから
図10Cでは複数の溝Gである溝G1、溝G2及び溝G3を丸印で模式的に示すとともに、溝G1が振れの最大点に位置する場合、従って溝G1が第1領域Rmaxに存在する場合について示す。
図10Aから
図10Cでは図の横方向がY方向に対応し、図の上下方向がZ方向に対応する。このことは後述する
図11から
図14についても同様である。
【0051】
図10Aは溝G1から研削加工を開始した場合を示す。
図10Bは溝G2から研削加工を開始した場合、
図10Cは溝G3から研削加工を開始した場合を示す。従って、
図6からもわかるように、
図10B、
図10Cは第1領域Rmax及び第2領域Rminに存在しない溝Gを第1研削加工溝として研削加工を開始した場合を示す。
【0052】
第1溝配置は複数の溝Gに対し最初に研削加工を行う際の複数の溝Gの溝配置を示す。第2溝配置は次いで2番目に、3番目溝配置は次いで3番目に研削加工を行う際の複数の溝Gの溝配置を示す。第1溝配置においてワーク中心P1は第1研削加工溝の中心Y1に対応する。ワーク中心P1は第2研削加工溝及び第3研削加工溝の中心にも対応する。加工中心P2はセンタリングされたワークWの回転中心を示す。
【0053】
図10Aに示すように、溝G1が加工開始溝つまり第1研削加工溝の場合、溝G1が振れの最大点に位置するので、ワーク中心P1は加工中心P2の真上にずれている。結果、第1ワーク配置では加工中心P2を中心とした角度が溝G1及び溝G2間、及び溝G1及び溝G3間で120°よりも大きさα分減少し、溝G2及び溝G3間で120°よりも大きさ2α分増加することになる。
【0054】
第1溝配置では第1研削加工溝である溝G1と砥石23との中心合わせが行われる。中心合わせではY方向において砥石23の中心Y2が中心Y1に合わせられる。結果、砥石23の中心Y2は加工中心P2と同じY方向位置に位置する。砥石23の中心Y2と加工中心P2とのY方向の相対的な位置関係は、ワークWが回転しても変化しない。このため、
図10Aに示す場合は、第1溝配置から第3溝配置全てにおいて砥石23の中心Y2が加工中心P2と同じY方向位置に位置することになる。
【0055】
第2溝配置ではワーク中心P1が振れによって加工中心P2から偏心した状態で、加工中心P2を回転中心として第1溝配置から120°回転されている。この場合、加工対象となる溝G2は砥石23の中心Y2との関係上、図中右側で角度が「+α」(従って、図中左側では「-α」)加算されたかのような状態となる。結果、溝G2の図中左側の縁部分が理想的な状態と比べて左下にずれるので、当該縁部分で研削取り代が少なくなる。
【0056】
第3溝配置ではワークWが加工中心P2を回転中心として第2溝配置からさらに120度回転されている。この場合、溝G3は砥石23の中心Y2との関係上、理想的な状態と比べて図中右側で角度が「-α」加算(従って、図中左側で角度が「+α」加算)されたかのような状態になる。結果、溝G3の図中右側の縁部分が理想的な状態と比べて右下にずれるので、当該縁部分で研削取り代が少なくなる。
【0057】
図10Bに示すように、溝G2が第1研削加工溝の場合、第1溝配置は
図10Aに示す第2溝配置と同様になる。その一方で、第1溝配置では第1研削加工溝と砥石23との中心合わせが行われる。従ってこの場合は、砥石23の中心Y2が第1研削加工溝の中心Y1に合わせられる結果、
図10Aの第2溝配置に示すような大きさαに起因するY方向の溝位置のずれはなくなる。その一方で、この場合は中心合わせが行われることで、砥石23の中心Y2は加工中心P2に対しY方向に溝G1側へずれる。
【0058】
第2溝工配置では第1溝配置からワークWが120°回転されている。その一方で、砥石23の中心Y2と加工中心P2とのY方向の相対的な位置関係は変化しない。従ってこの場合は、溝G2は砥石23の中心Y2との関係上、図中右側で角度が「-2α」(従って、図中左側で「+2α」)加算されたかのような状態になる。結果、この場合は溝G3の図中右側の縁部分が砥石23から右に大きくずれる分、研削取り代もより少なくなる。
【0059】
第3溝配置でも砥石23の中心Y2と加工中心P2とのY方向の相対的な位置関係は変化しない。このためこの場合も、溝G1は砥石23の中心Y2との関係上、図中右側で角度が「-α」(従って、図中左側で「+α」)加算されたかのような状態になる。
【0060】
図10Cに示すように、溝G3が第1研削加工溝の場合も第1溝配置では砥石23の中心Y2が第1研削加工溝の中心Y1に合わせられる結果、砥石23の中心Y2は加工中心P2に対しY方向に溝G1側へずれる。またこの場合も、第2溝配置、第3溝配置では砥石23の中心Y2と加工中心P2とのY方向の相対的な位置関係は変化しない。結果、第2溝配置では溝G1が砥石23の中心Y2との関係上、図中右側で角度「+α」(従って、図中左側で「-α」)加算されたかのような状態になる。また、第3溝配置では溝G2が砥石23の中心Y2との関係上、図中右側で角度が「+2α」(従って、図中左側で「-2α」)加算されたかのような状態になる。
【0061】
以上のことから、振れの最大点に位置する溝G1を第1研削加工溝とする
図10Aに示す場合は、
図10Bや
図10Cに示す場合と比べて、砥石23に対する第2研削加工溝や第3研削加工溝の位置ずれが抑制されることがわかる。上記を踏まえ、次に更なる検証及びその検証結果について説明する。
【0062】
図11は更なる検証で用いた3つのケースを示す図である。更なる検証では黒皮残りが発生し易い次の3つのケースについて検証した。第1のケースは振れの最大点の反対側(従って最小点)に溝G1がある場合である。第2のケースは振れの最大点に溝G1がある場合である。第3のケースは振れの最大点が溝G1に対し溝G2側に真横にあり、溝G1が第1領域Rmax及び第2領域Rminのいずれにも存在しない場合である。
【0063】
図12から
図14は3つのケースの検証結果を示す図である。
図12は第1のケース、
図13は第2のケース、
図14は第3のケースに対応する。
図12から
図14それぞれでは第1研削加工溝を溝G1、溝G2、溝G3とした場合の溝G1、溝G2、溝G3それぞれの研削加工の取り代を示す。
【0064】
第1研削加工溝に対しては砥石23との中心合わせが行われる。このため、第1研削加工溝の取り代は、
図12から
図14に示す各ケースともに太枠で示すように左右均等になり、研削結果は良好となる(丸印)。
【0065】
図12に示す第1のケースでは、振れが最小となる位置の溝G1を第1研削加工溝とした場合は、溝G2及び溝G3の左右の縁部分間で取り代に偏りが生じるものの、取り代は確保される(三角印)。その一方で、溝G2、溝G3を第1研削加工溝とする場合は、取り代がマイナス値になる場合、つまり取り代がなくなる場合が生じる(バツ印)。結果、溝G2を第1研削加工溝とした場合は溝G3の左側の縁部分に黒皮残りが発生し、溝G3を第1研削加工溝とした場合は溝G2の右側の縁部分に黒皮残りが発生することになる。
【0066】
図13に示す第2のケースでは、振れが最大となる位置の溝G1を第1研削加工溝とした場合は、
図12に示す第1のケースと同様、取り代は確保される。その一方で、溝G2を第1研削加工溝とした場合は溝G3の右側の縁部分に黒皮残りが発生し、溝G3を第1研削加工溝とした場合は溝G2の左側の縁部分に黒皮残りが発生することになる。
【0067】
図14に示す第3のケースでは、溝G2は複数の溝G間において振れが最小となる位置の溝Gとなっており、溝G3は複数の溝G間において振れが最大となる位置の溝Gとなっている。つまり、溝G2は振れの最小点には存在しないものの第2領域Rminに存在する溝Gとなっており、溝G3は振れの最大点には存在しないものの第1領域Rmaxに存在する溝Gとなっている。この場合、溝G1を第1研削加工溝とした場合は溝G3の左側の縁部分の取り代が-0.02mmとなる。
【0068】
その一方で、溝G2を第1研削加工溝とした場合は溝G1の右側の縁部分の取り代が-0.0006mm、溝G3を第1研削加工溝とした場合は溝G1の右側の縁部分の取り代が-0.0001mmとごく僅かとなる。結果、溝G2又は溝G3を第1研削加工溝とした場合は、黒皮残りを無視できるか或いは研削加工の調整により除去可能な範囲内に収まることになる。
【0069】
以上のことから、第1領域Rmax又は第2領域Rminに存在する溝Gを第1研削加工溝とすることで、第1領域Rmax及び第2領域Rminのいずれにも存在しない溝Gを第1研削加工溝とした場合と比べ、黒皮残りの発生を抑制できることがわかる。
【0070】
次に本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0071】
(1)本実施形態にかかる溝研削方法はワークWの外周面に120°間隔で設けられた複数の溝Gを砥石23で順番に研削する溝研削方法であって、センタリングされたワークWの振れの最大点又は最小点が存在する外周上の領域Rつまり第1領域Rmax又は第2領域Rminを特定する振れ特定工程PC2と、複数の溝Gのうち第1領域Rmax又は第2領域Rminに存在する溝Gを最初に研削加工する第1研削加工溝として、第1研削加工溝の中心Y1と砥石23の中心Y2とを合わせた上で第1研削加工溝を研削加工する第1研削工程PC3と、その後、複数の溝Gのうち残りの溝Gそれぞれに対し順次120°間隔分ワークWを回転させて研削加工を行う第2研削工程PC4と、を含む加工工程により複数の溝G全てを研削する溝研削方法である。
【0072】
このような方法によれば、上記のように第1研削加工溝を設定することで、残りの溝Gの位置を割り出す際にワークWの振れに起因して生じる溝位置のずれを抑制できる。結果、複数の溝G全体で黒皮残りを生じさせ難くすることができ、黒皮残りの発生が抑制される。
【0073】
(2)複数の溝Gそれぞれは、溝数をNとしてシャフトの外周上に360/N度間隔で形成される。振れ特定工程PC2はワークWを180/N度間隔で回転させるとともにその都度、センサ31を用いてワークWの振れを測定することで、2N箇所でワークWの振れを測定し、2N箇所で測定した振れ同士を比較して当該2N箇所の間でのワークWの振れの最大点又は最小点を特定することを含む。N=3の場合、複数の溝Gは120°間隔で形成される。また、ワークWは60°間隔で回転され、計6箇所で振れの測定が行われる。
【0074】
このような方法によれば、全周に亘ってワークWの振れを測定せずとも、2N箇所の間でのワークWの振れの最大点又は最小点に基づき、ワークWの全周における振れの最大点又は最小点が一定の角度範囲内に存在することを特定できる。従って、例えば既存の設備に全周に亘ってワークWの振れを測定なセンサがなくても、溝Gの有無を検出可能な近接センサがあれば適用し得る点で適用性が高い。また、全周に亘ってワークWの振れを測定なセンサと比べて安価な近接センサをセンサ31に用いることができる点でコスト面でも有利である。
【0075】
(3)振れ特定工程PC2は第1領域Rmax又は第2領域Rminを特定する工程であって、第1領域Rmax又は第2領域Rminを所定領域としてワークWに対して当該所定領域を含む180/N度間隔の複数の領域Rを設定し、2N箇所の間でのワークWの振れの最大点又は最小点に基づき第1領域Rmax又は第2領域Rminを特定する工程とされる。N=3の場合、複数の領域Rは60°間隔で設定される。
【0076】
このような方法によれば、複数の領域Rそれぞれに測定点が一つずつ含まれることになる。このため、2N箇所の間でのワークWの振れの最大点が存在する領域Rを第1領域Rmaxと特定することや、2N箇所の間でのワークWの振れの最小点が存在する領域Rを第2領域Rminと特定することができる。
【0077】
(4)第1研削工程PC3は、第1領域Rmaxに複数の溝Gのいずれかが存在する場合は第1領域Rmaxに存在する溝Gを第1研削加工溝とすることと、第1領域Rmaxに複数の溝Gのいずれもが含まれない場合は、複数の領域Rのうちワーク中心P1に対し第1領域Rmaxの反対側に位置する領域Rを第2領域Rminとして、第2領域Rminに含まれる溝Gを第1研削加工溝とすることとを含む。
【0078】
このような方法によれば、第1領域Rmax、第2領域Rminのいずれか一方を特定することで第1研削加工溝を設定できるので、加工制御の簡素化が図られる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0080】
例えばセンサ31には全周に亘ってワークWの振れを測定可能なセンサが用いられてもよい。この場合、振れ特定工程PC2では例えばセンタリングされたワークWの振れの最大点又は最小点を外周上の位置により特定することができる。さらにこの場合において、ワークWの振れの最大点又は最小点に溝Gが存在する場合には、特定した位置に存在する溝Gを第1研削加工溝として研削加工を行うこともできる。
【0081】
2N箇所の間でのワークWの振れの最大点又は最小点は、ワークWの全周における振れの最大点又は最小点とみなすことに用いられてもよい。この場合、2N箇所の間でのワークWの振れの最大点又は最小点の測定点が、ワークWの全周における振れの最大点又は最小点が存在する外周上の位置とみなすことができる。この場合も複数の溝Gの溝位置それぞれにワークWの振れの測定点が対応する場合は、特定した位置に存在する溝Gを第1研削加工溝として研削加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
10 第1ユニット部
20 第2ユニット部
21 回転軸
23 砥石
31 センサ
50 コントローラ
G 溝
PC1 センタリング工程
PC2 振れ特定工程
PC3 第1研削工程
PC4 第2研削工程
R 領域(複数の領域)
Rmax 第1領域(所定領域、シャフトの振れの最大点が存在する領域)
Rmin 第2領域(所定領域、シャフトの振れの最小点が存在する領域)
Y1 第1研削加工溝の中心
Y2 砥石の中心
W ワーク(シャフト)
100 溝研削装置