(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063421
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】セラミックスヒーター、およびシャフト付きセラミックスヒーター
(51)【国際特許分類】
H05B 3/12 20060101AFI20240502BHJP
C04B 35/582 20060101ALI20240502BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H05B3/12 A
C04B35/582
H05B3/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171355
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】北林 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】下嶋 浩正
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA05
3K092QB11
3K092QB26
3K092QB43
3K092RF03
3K092RF11
3K092RF19
3K092RF27
3K092VV22
(57)【要約】
【課題】内側ヒーター用電極の抵抗が外側ヒーター用電極の抵抗より低くなりすぎることを抑制することができ、載置面の温度分布を均温化することができるセラミックスヒーターを提供する。
【解決手段】セラミックスヒーター100であって、載置面112を有し、AlNを主成分としイットリウムもしくはその他の希土類化合物またはアルカリ土類金属化合物を含む粒界組成物を合計で0.1wt%以上10wt%以下含むセラミックス焼結体からなる円盤状の基材110と、前記基材に埋設され、複数の領域に分割されたMoメッシュを含むヒーター用電極120と、前記基材に埋設され、前記載置面側から透視した形状で、面積が前記載置面の面積の40%以上である平面状電極130と、を備え、前記ヒーター用電極のうち、少なくとも前記基材の径方向最内に位置する内側ヒーター用電極122は、Mo
2Cが含まれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスヒーターであって、
載置面を有し、AlNを主成分としイットリウムもしくはその他の希土類化合物またはアルカリ土類金属化合物を含む粒界組成物を合計で0.1wt%以上10wt%以下含むセラミックス焼結体からなる円盤状の基材と、
前記基材に埋設され、複数の領域に分割されたMoメッシュを含むヒーター用電極と、
前記基材に埋設され、前記載置面側から透視した形状で、面積が前記載置面の面積の40%以上である平面状電極と、を備え、
前記ヒーター用電極のうち、少なくとも前記基材の径方向最内に位置する内側ヒーター用電極は、Mo2Cが含まれることを特徴とするセラミックスヒーター。
【請求項2】
前記内側ヒーター用電極のうち平面視で前記平面状電極と重なる部分において、前記載置面に垂直な断面の前記内側ヒーター用電極の断面積に対するMo2C化している領域の断面積の比率が10%以上であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒーター。
【請求項3】
前記平面状電極は、静電吸着用電極または高周波電極、および前記ヒーター用電極に電力を供給する接続用電極であり、
前記内側ヒーター用電極は、前記載置面に垂直な断面において少なくとも一部で前記静電吸着用電極または前記高周波電極と前記接続用電極とで挟まれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックスヒーター。
【請求項4】
前記内側ヒーター用電極の幅は、前記基材の最外に位置する外側ヒーター用電極の幅より小さいことを特徴とする請求項3に記載のセラミックスヒーター。
【請求項5】
前記平面状電極は、静電吸着用電極、高周波電極、または前記ヒーター用電極に電力を供給する接続用電極であり、
前記載置面に垂直な断面において前記内側ヒーター用電極と前記載置面との間または前記内側ヒーター用電極と前記載置面に対向する前記基材の下面との間のいずれか一方に前記平面状電極が配置されないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックスヒーター。
【請求項6】
前記基材は、前記粒界組成物を合計で2wt%以下含むことを特徴とする請求項5記載のセラミックスヒーター。
【請求項7】
シャフト付きセラミックスヒーターであって、
請求項3に記載の前記セラミックスヒーターと、
前記載置面に対向する前記基材の下面に接合され、前記セラミックスヒーターを支持する筒状のシャフトと、を備え、
前記シャフトより内側に位置する前記ヒーター用電極の幅は、前記シャフトより外側に位置する前記ヒーター用電極の幅より小さいことを特徴とするシャフト付きセラミックスヒーター。
【請求項8】
シャフト付きセラミックスヒーターであって、
請求項1または請求項2に記載の前記セラミックスヒーターと、
前記載置面に対向する前記基材の下面に接合され、前記セラミックスヒーターを支持する筒状のシャフトと、を備えることを特徴とするシャフト付きセラミックスヒーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスヒーター、およびシャフト付きセラミックスヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用の部材としてセラミックス焼結体にヒーター用電極が埋設されたセラミックスヒーターが提案されている。
【0003】
特許文献1には、窒化アルミニウム製の焼結体からなる基板にヒーター電極層が形成されたセラミックヒーターを製造する方法において、一炭化一タングステン粒子を含む導電性ペーストを用いて、窒化アルミニウム製のグリーンシートにヒーター電極層を形成し、次いでグリーンシートを非酸化性雰囲気下にて本焼成時よりも低い温度域で加熱する熱処理工程を行った後、グリーンシートを完全に焼結させる本焼成工程を行うセラミックヒーター製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、耐熱性金属材料の表面に、金属炭化物の標準生成自由エネルギーが該耐熱性金属材料より小さい金属材料からなる金属皮膜を形成する皮膜形成ステップと、皮膜形成ステップで皮膜を形成した耐熱性金属材料を、セラミックス基体の原材料である粉体中の所定の位置に配設し、加圧成型してセラミックス成型体を成型する成型ステップと、成型ステップで成型したセラミックス成型体を焼結してセラミックス焼結体を生成する焼結ステップとを含むセラミックス焼結体の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、セラミックス基体の原料となるセラミックス原料粉中に、発熱体と該発熱体を取り囲む金属部材とを両者の間にセラミックス原料粉と主成分が同じ原料粉が介在するように埋設させて成形体を作製する工程と、金属部材が発熱体に優先して炭化又は酸化するように成形体を焼結させることによりセラミックス基体及び反応層を作製する工程とを含むセラミックスヒーターの製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、セラミック焼結体と、このセラミック焼結体に接触するように設けられている抵抗発熱体とを備えているセラミックヒーターを製造する方法であって、セラミック粉末の成形体に、抵抗発熱体、および周期律表4a、5aおよび6a族元素から選ばれた一種以上の金属元素を含む金属からなるダミー部材を接触させ、次いで成形体を焼結させることによってセラミック焼結体を得るセラミックヒーターの製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献5は、AlNセラミックスを含む基材にヒーター用電極が埋設されてなるセラミックスヒーターであって、前記ヒーター用電極はMoおよびCを含み、Moの原子数とCの原子数との合計に対するCの原子数の比が0.20以上であることを特徴としたセラミックスヒーターの技術が開示されている。また、前記基材はY成分を含み、前記基材における前記ヒーター用電極の周囲にYAGが形成されており、前記ヒーター用電極の周囲の前記基材のX線回折チャートにおいて、2θが54.978°の位置におけるYAGのピーク強度をAとし、2θが36.041°の位置におけるAlNのピーク強度をBとするとき、(A/B)≧0.11の関係式を満たす技術が開示されている。これらにより、AlNセラミックスを含む基材にMoを含むヒーター用電極が埋設されてなるセラミックスヒーターにおいて、発熱体(ヒーター用)の体積抵抗率が安定し、加熱温度の均一性が高くなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-012194号公報
【特許文献2】特開2012-096948号公報
【特許文献3】特開2009-295960号公報
【特許文献4】特開2003-288975号公報
【特許文献5】特開2021-157948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
AlNセラミックスに埋設されたMo電極は、同時焼成されることにより一部がMo2Cとなる。MoとMo2Cは体積抵抗率(比抵抗)が異なるため、Mo2C化の度合いによって電極の抵抗値が異なる。特に、平面状電極および複数の領域に分割されたヒーター用電極が埋設されたセラミックスヒーターは、ヒーター用電極の位置によって設計通りのヒーター抵抗値が得られる部分と得られない部分が生じる場合があり、電流過多や電力不足など機能的な不具合の原因となっていた。そのため、内側ヒーター用電極と外側ヒーター用電極の組成の差(Mo2C化の度合い)を調整し、体積抵抗率の差を小さくすることによって内側ヒーター用電極と外側ヒーター用電極の抵抗値を設計通りにすることができるセラミックスヒーターが望まれていた。
【0010】
特許文献1~4のセラミックヒーターの製造方法では、AlNセラミックスに埋設されるW、Mo等の発熱体の炭化を抑制することによってヒーター用電極の体積抵抗率を小さくし(電気伝導率を大きくし)、体積抵抗率のばらつきを抑制しようとしていた。しかしながら、これらの方法では、部分的にヒーター用電極の体積抵抗率が小さくなって体積抵抗率のばらつきが生じ、その結果、載置面の温度分布が不均一になっていた。
【0011】
また、特許文献5記載の技術は、発熱体(ヒーター用)の体積抵抗率が安定化し、加熱温度の均一性が高くなるが、そのために制御する必要のある条件がシビアであり、製造方法も複雑なものになっていた。また、いずれの特許文献も、平面状電極および複数の領域に分割されたヒーター用電極が埋設されたセラミックスヒーターにおいて、ヒーター用電極の位置による炭化度合いの違いに注目していない。
【0012】
すなわち、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、内側ヒーター用電極と外側ヒーター用電極の組成の差(Mo2C化の度合い)を調整し、体積抵抗率の差を小さくすることによって、内側ヒーター用電極の抵抗が外側ヒーター用電極の抵抗より低くなりすぎることを抑制することができ、載置面の温度分布を均温化することができるセラミックスヒーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記の目的を達成するため、本発明のセラミックスヒーターは、以下の手段を講じた。すなわち、本発明の適用例のセラミックスヒーターは、セラミックスヒーターであって、載置面を有し、AlNを主成分としイットリウムもしくはその他の希土類化合物またはアルカリ土類金属化合物を含む粒界組成物を合計で0.1wt%以上10wt%以下含むセラミックス焼結体からなる円盤状の基材と、前記基材に埋設され、複数の領域に分割されたMoメッシュを含むヒーター用電極と、前記基材に埋設され、前記載置面側から透視した形状で、面積が前記載置面の面積の40%以上である平面状電極と、を備え、前記ヒーター用電極のうち、少なくとも前記基材の径方向最内に位置する内側ヒーター用電極は、Mo2Cが含まれることを特徴としている。
【0014】
面積の広い平面状電極がある場合、内側ヒーター用電極は、外側ヒーター用電極よりカーバイド化されにくい。しかしながら、粒界組成物が所定量含まれ、内側ヒーター用電極にMo2Cが含まれるように構成することにより、内側ヒーター用電極の抵抗が外側ヒーター用電極の抵抗より低くなりすぎることを抑制することができ、載置面の温度分布を均温化することができる。
【0015】
(2)また、上記(1)の適用例のセラミックスヒーターにおいて、前記内側ヒーター用電極のうち平面視で前記平面状電極と重なる部分において、前記載置面に垂直な断面の前記内側ヒーター用電極の断面積に対するMo2C化している領域の断面積の比率が10%以上であることを特徴としている。
【0016】
平面状電極と重なる部分の内側ヒーター用電極は、さらにカーバイド化されにくくなるが、当該部分の内側ヒーター用電極の断面積に対するMo2C化している領域の断面積が10%以上となるように調整することで、内側ヒーター用電極の当該部分の抵抗が低くなりすぎることを十分に抑制することができ、内側ヒーター用電極の出力を所定の値にすることができる。
【0017】
(3)また、上記(1)または(2)の適用例のセラミックスヒーターにおいて、前記平面状電極は、静電吸着用電極または高周波電極、および前記ヒーター用電極に電力を供給する接続用電極であり、前記内側ヒーター用電極は、前記載置面に垂直な断面において少なくとも一部で前記静電吸着用電極または前記高周波電極と前記接続用電極とで挟まれることを特徴としている。
【0018】
内側ヒーター用電極が平面状電極に挟まれている場合、内側ヒーター用電極は、非常にカーバイド化されにくくなる。しかしながら、本発明のセラミックスヒーターは、カーバイド化されにくい内側ヒーター用電極にもMo2Cが含まれるように調整することができる。よって、このような構造のセラミックスヒーターであっても内側ヒーター用電極の抵抗が低くなりすぎることを抑制することができ、載置面の温度分布を均温化することができる。
【0019】
(4)また、上記(1)から(3)のいずれかの適用例のセラミックスヒーターにおいて、前記内側ヒーター用電極の幅は、前記基材の最外に位置する外側ヒーター用電極の幅より小さいことを特徴としている。
【0020】
このように、予め内側ヒーター用電極の幅を外側ヒーター用電極の幅より小さくして、抵抗を高くしておくことで、焼成後の内側ヒーター用電極の抵抗の低下を補償することができ、内側ヒーター用電極の出力を所定の値にすることができる。
【0021】
(5)また、上記(1)から(4)のいずれかの適用例のセラミックスヒーターにおいて、前記平面状電極は、静電吸着用電極、高周波電極、または前記ヒーター用電極に電力を供給する接続用電極であり、前記載置面に垂直な断面において前記内側ヒーター用電極と前記載置面との間または前記内側ヒーター用電極と前記載置面に対向する前記基材の下面との間のいずれか一方に前記平面状電極が配置されないことを特徴としている。
【0022】
このように、内側ヒーター用電極と載置面の間または内側ヒーター用電極と下面との間に平面状電極が配置されないように構成することで、内側ヒーター用電極が平面状電極に挟まれている場合と比較して、内側ヒーター用電極をカーバイド化させることが容易になり、電極にMo2Cが含まれるように調整することができる。その結果、内側ヒーター用電極の抵抗が低くなりすぎることを抑制することができ、内側ヒーター用電極の出力を所定の値にすることができる。
【0023】
(6)また、上記(1)から(5)のいずれかの適用例のセラミックスヒーターにおいて、前記基材は、前記粒界組成物を合計で2wt%以下含むことを特徴としている。
【0024】
例えば、内側ヒーター用電極と載置面の間または内側ヒーター用電極と下面との間に平面状電極が配置されない場合、基材の粒界組成物の含有量を低減させても、中心近傍の電極にMo2Cが含まれるまたはMo2C化している領域の断面積の比率が10%以上となるように調整することが可能である。また、内側ヒーター用電極の幅を外側ヒーター用電極の幅より小さくすることで、内側ヒーター用電極の抵抗が低くなりすぎることを抑制することもできる。これらの技術を適用することで、基材の粒界組成物の含有量を低減することができ、基材の熱伝導率や体積抵抗率等の性質を幅広い範囲から選択できるようになる。
【0025】
(7)また、本発明の適用例のシャフト付きセラミックスヒーターは、シャフト付きセラミックスヒーターであって、上記(1)から(6)のいずれかに記載の前記セラミックスヒーターと、前記載置面に対向する前記基材の下面に接合され、前記セラミックスヒーターを支持する筒状のシャフトと、を備え、前記シャフトより内側に位置する前記ヒーター用電極の幅は、前記シャフトより外側に位置する前記ヒーター用電極の幅より小さいことを特徴としている。
【0026】
このように、シャフトより内側に位置するヒーター用電極の幅をシャフトより外側に位置するヒーター用電極の幅より小さくすることで、シャフトからの伝熱によるシャフトより内側に位置するヒーター用電極の温度低下を低減することができ、載置面の温度分布を均温化することができる。
【0027】
(8)また、本発明の適用例のシャフト付きセラミックスヒーターは、シャフト付きセラミックスヒーターであって、上記(1)から(6)のいずれかに記載の前記セラミックスヒーターと、前記載置面に対向する前記基材の下面に接合され、前記セラミックスヒーターを支持する筒状のシャフトと、を備えることを特徴としている。
【0028】
これにより、プロセスチャンバーとセラミックスヒーターとの伝熱を低減することができ、載置面の温度分布を均温化することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、面積の広い平面状電極を含むセラミックスヒーターにおいて、内側ヒーター用電極の抵抗が外側ヒーター用電極の抵抗より低くなりすぎることを抑制することができ、載置面の温度分布を均温化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態に係るセラミックスヒーターの一例を示す模式的な断面図である。
【
図2】(a)~(c)、それぞれ実施形態に係るセラミックスヒーターの内側ヒーター用電極、外側ヒーター用電極、および平面状電極の一例を示す模式的な平面図である。
【
図3】実施形態に係るセラミックスヒーターの変形例を示す模式的な断面図である。
【
図4】実施形態に係るセラミックスヒーターの変形例を示す模式的な断面図である。
【
図5】実施形態に係るセラミックスヒーターの変形例を示す模式的な断面図である。
【
図6】実施形態に係るセラミックスヒーターの変形例を示す模式的な断面図である。
【
図7】実施形態に係るセラミックスヒーターの変形例を示す模式的な断面図である。
【
図8】実施形態に係るシャフト付きセラミックスヒーターの一例を示す模式的な断面図である。
【
図9】実施形態に係るセラミックスヒーターの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10】(a)~(c)それぞれ実施形態に係るセラミックスヒーターの製造工程の一段階を模式的に示す断面図である。
【
図11】実施形態に係るセラミックスヒーターの製造工程の一段階を模式的に示す断面図である。
【
図12】実施例および比較例の基材の組成、電極埋設形態、その他の特徴、および測定結果を示す表である。
【
図13】実施例8の内側ヒーター用電極の断面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。なお、構成図において、各構成要素の大きさは概念的に表したものであり、必ずしも実際の寸法比率を表すものではない。
【0032】
本発明者らは、平面状電極を含むセラミックスヒーターのヒーター用電極のカーバイド化は電極配置およびヒーター用電極の部分によって異なることを発見した。すなわち、平面状電極を含むセラミックスヒーターは、内側ヒーター用電極が外側ヒーター用電極よりもカーバイド化し難くなり、電極配置によってはその影響が顕著となる。そのため、電極配置を考慮せずにヒーター用電極の設計をすると各々のヒーター用電極の体積抵抗率に差が生じ、その結果、各ヒーター用電極間の抵抗値の差が大きくなりすぎ、許容範囲を超えることとなる。
【0033】
また、本発明者らは、ヒーター用電極のカーバイド化は、AlNセラミックス中の焼結助剤の成分および焼結助剤とAlNとの反応によって生成された成分(粒界組成物)の濃度によって変化し、粒界組成物の濃度が高いほうがMo電極のカーバイド化が進むことを発見した。しかし、AlNセラミックスに添加される焼結助剤の量はAlNセラミックスの物性(機能)と大きく関連するため、ヒーター用電極のカーバイド化促進のためだけに焼結助剤の量を決定することはできなかった。
【0034】
そこで、本発明は、電極配置、添加可能な焼結助剤の量、許容範囲の抵抗値の差を考慮してセラミックスヒーターを設計する。さらに、場合によっては、予め内側ヒーター用電極の幅を小さくすることで抵抗値の低下を補償する。これらにより、面積の広い平面状電極を含むセラミックスヒーターにおいて、内側ヒーター用電極の抵抗が外側ヒーター用電極の抵抗より低くなりすぎることを抑制することができ、載置面の温度分布を均温化することができる。
【0035】
[実施形態]
[セラミックスヒーターの構成]
まず、本実施形態に係るセラミックスヒーターの構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るセラミックスヒーターの一例を示す断面図である。また、
図2(a)~(c)は、それぞれ本発明の実施形態に係るセラミックスヒーターの内側ヒーター用電極、外側ヒーター用電極、および平面状電極の一例を示す模式的な平面図である。本実施形態に係るセラミックスヒーター100は、基材110と、ヒーター用電極120と、平面状電極130とを備える。
【0036】
基材110は、AlNを主成分とするセラミックス焼結体からなる。基材110がAlNを主成分とするとは、AlNを90wt%以上含むセラミックス焼結体からなることをいう。基材110は、平板状に形成され、一方の主面に基板を載置する載置面112を有する。また、基材110の形状は、円板状に形成される。
【0037】
AlNを主成分とするセラミックス焼結体は、熱伝導率や体積抵抗率を変化させることを目的として焼結助剤を添加することがある。熱伝導率については、一般的に、焼結助剤の添加量は、量を増やすと熱伝導率が高くなるが、一定量以上添加すると熱伝導率の低下を引き起こすことが知られている。したがって、焼結助剤の含有量は、10wt%以下とすることが望ましい。焼結助剤は、後述するイットリウムもしくはその他の希土類またはアルカリ土類金属の酸化物を使用することができる。
【0038】
AlNを主成分とするセラミックス焼結体は、熱伝導率が高く、耐熱性、耐プラズマ性に優れており、添加する焼結助剤の種類や量を調整することで、容易に熱伝導率や体積抵抗率を調整することができる。そのため、AlNを主成分とするセラミックス焼結体により基材110を形成することで、熱伝導率や体積抵抗率が調整され、耐熱性、耐プラズマ性に優れた基材110を構成できる。
【0039】
基材110は、イットリウムもしくはその他の希土類化合物またはアルカリ土類金属化合物を含む粒界組成物を合計で0.1wt%以上10wt%以下含む。本明細書において粒界組成物とは、イットリウム化合物もしくはその他の希土類化合物またはアルカリ土類金属化合物またはこれらとAlNとの反応によって生成した化合物をいう。イットリウム化合物の場合、例えば、Y2O3のほかYAG、YAM、YAPなどのAlとYとの複酸化物が挙げられる。その他の希土類金属やアルカリ土類金属の化合物についても同様である。ここでいうその他の希土類には、例えば、Nd、Sm、Eu、Gd、Ce、Er等が含まれる。また、アルカリ土類金属には、Ca、Mg、Sr等が含まれる。粒界組成物は、AlN粒子間に存在する。AlN粒子間とは、基材110の研磨面において3つのAlN粒子に囲まれた三重点や2つのAlN粒子の辺の間である。AlN粒子の平均粒子径は、助剤量の種類や添加量等のAlNセラミックスの組成、焼成温度や昇温速度等の焼成条件等によって異なるが、例えば、2.5μm~7.0μmである。
【0040】
粒界組成物は、原料に添加した焼結助剤が、単独でまたはAlNと反応して生成した化合物である。これらの粒界組成物は、AlNと比較して相対的に融点が低く高温焼成時に流動しやすい。このとき、原料粉またはカーボン製の焼成ジグ、焼成雰囲気などの外部環境から混入するカーボン成分が粒界組成物に伴って移動し、電極と反応する機会が増え、電極の少なくとも一部がMo2C化する。粒界組成物は、電極同士の位置関係や電極と外部環境までの距離等に応じて焼成時に基材110内を流動するため、ヒーター用電極120とカーボン成分が反応する機会は、ヒーター用電極120と他の電極との位置関係によって制約を受ける。そのため、ヒーター用電極120から見て、粒界組成物の流動性の制約が大きくなる電極配置ではヒーター用電極120の炭化度合いが小さく、制約が少ない配置ではヒーター用電極120の炭化度合いが大きくなる。例えば、後述する面積の広い平面状電極130が埋設されている場合は、中心近傍ほど粒界組成物の流動性が低くなり、Mo2C化し難くなる。その結果、後述する内側ヒーター用電極122の炭化が抑制されてしまう。ヒーター用電極120の抵抗が局所的に低くなると当該部分の発熱量が減少し、低温部が生じやすく温度分布を均温化することが難しくなる。
【0041】
本発明のセラミックスヒーター100は、粒界組成物を0.1wt%以上10wt%以下含む。これにより、粒界組成物およびそれに伴うカーボン成分の流動を容易化している。そのため、平面状電極130が埋設されていてもカーボン成分の移動が促進され、内側ヒーター用電極122の少なくとも一部をMo2C化し、電極の配置位置によらず、ヒーター用電極120の抵抗が局所的に低くなりすぎることを抑制することができる。粒界組成物の含有量は、GDMSによる定量分析やEPMAを用いた半定量分析などの簡易定量分析で確かめることができる。なお、粒界組成物が10wt%を越えると、焼結体の作製が難しくなる場合があると共に、AlNを主成分とするセラミックス焼結体の熱伝導率や体積抵抗率がヒーター用の基材として不適となる場合がある。
【0042】
基材110は、粒界組成物を合計で2wt%以下含むことが好ましい。例えば、内側ヒーター用電極122と載置面112の間または内側ヒーター用電極122と下面114との間に平面状電極130が配置されない場合、基材110の粒界組成物の含有量を低減させても、中心近傍の電極にMo2Cが含まれるまたはMo2C化している領域の断面積の比率が10%以上となるように調整することが可能である。また、後述するように、内側ヒーター用電極122の幅を外側ヒーター用電極124の幅より小さくすることで、内側ヒーター用電極122の抵抗が低くなりすぎることを抑制することもできる。これらの技術を単独でまたは組み合わせて適用することで、基材110の粒界組成物の含有量を低減することができ、基材110の熱伝導率や体積抵抗率等の性質を幅広い範囲から選択できるようになる。
【0043】
ヒーター用電極120は、基材110に埋設され、複数の領域に分割されたMoメッシュを含む。ヒーター用電極120のうち、少なくとも基材110の径方向最内に位置する内側ヒーター用電極122は、Mo2Cが含まれる。このように、内側ヒーター用電極122にMo2Cが含まれるように構成することにより、内側ヒーター用電極122の抵抗が基材110の径方向最外に位置する外側ヒーター用電極124の抵抗より低くなりすぎることを抑制することができ、載置面112の温度分布を均温化することができる。
【0044】
なお、内側ヒーター用電極122より基材110の径方向外側にあるヒーター用電極120は、内側ヒーター用電極122よりもカーバイド化されやすい。そのため、内側ヒーター用電極122にMo
2Cが含まれる場合、内側ヒーター用電極122より基材110の径方向外側にあるヒーター用電極120は、Mo
2Cが含まれると考えてよい。また、
図1および
図2では、ヒーター用電極120は、内側ヒーター用電極122と外側ヒーター用電極124の2つの領域に分割されているが、ヒーター用電極120は、3つ以上の領域に分割されていてもよい。
【0045】
内側ヒーター用電極122がMo2Cを含むことは、EPMAにおいて内側ヒーター用電極122の断面全面の元素マッピング分析を行うことで確かめることができる。内側ヒーター用電極122がMo2Cを含むとは、EPMAで元素分析を行い、半定量分析によりCおよびMoをatоm%換算で定量し、C/(C+Mo)比が0.2以上となっている領域が存在することをいう。
【0046】
内側ヒーター用電極122のうち平面視で平面状電極130と重なる部分において、載置面112に垂直な断面の内側ヒーター用電極122の断面積に対するMo2C化している領域の断面積の比率が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。平面状電極130と重なる部分の内側ヒーター用電極122は、さらにカーバイド化されにくくなるが、当該部分のMo2C化している領域が10%以上となるように調整することで、内側ヒーター用電極122の当該部分の抵抗が低くなりすぎることを十分に抑制することができ、内側ヒーター用電極122の出力を所定の値にすることができる。
【0047】
内側ヒーター用電極122のうち平面視で平面状電極130と重なる部分において、載置面112に垂直な断面の内側ヒーター用電極122の断面積に対するMo2C化している領域の断面積の比率が10%以上であることは、EPMAにおいて内側ヒーター用電極122の断面全面の元素マッピング分析を行うことで確かめることができる。内側ヒーター用電極122のうち平面視で平面状電極130と重なる部分において、載置面112に垂直な断面を露出させ、EPMAで元素分析を行い、半定量分析によりCおよびMoをatоm%換算で定量し、C/(C+Mo)比が0.2以上となっている領域の面積比率を求めればよい。
【0048】
ヒーター用電極120のメッシュを形成するワイヤーは、線径が0.02mm以上0.15mm以下であることが好ましい。これにより、ヒーター用電極の抵抗を高い値に設計することがより容易になり、ヒーター用電極120の設計の自由度をより高くすることができる。Moは融点が高く加工が難しいので、線径が0.02mm未満のワイヤーは、製造が困難である。また、線径が0.15mmより大きいワイヤーを織り込んでメッシュを形成すると、抵抗値を高くすることが難しくなり、必要な抵抗値に設計することが難しくなる場合がある。
【0049】
さらに、ワイヤーの線径が0.15mmより大きい場合、焼結時にワイヤーに圧裂(クラック)が生じる虞が高くなる。また、ワイヤーの交点部分のメッシュの厚みは0.3mmより大きくなり、ヒーター用電極120の上部のAlNセラミックスを薄い絶縁層として構成する場合に、絶縁層にクラックを生じさせる虞が増大する。このように、十分に細いワイヤーでヒーター用電極120を構成することで、焼結時にワイヤーに圧裂が生じる虞をより低減することができ、また、ヒーター用電極120の上部のAlNセラミックスを薄い絶縁層として構成しても、絶縁層にクラックを生じさせる虞をより低減させることができる。
【0050】
内側ヒーター用電極122の幅は、基材110の最外に位置する外側ヒーター用電極124の幅より小さいことが好ましい。このように、予め内側ヒーター用電極122の幅を外側ヒーター用電極124の幅より小さくして、抵抗を高くしておくことで、焼成後の内側ヒーター用電極122の抵抗の低下を補償することができ、内側ヒーター用電極122の出力を所定の値にすることができる。
【0051】
ヒーター用電極120の幅は、領域ごとのヒーター用電極120のパターンの中心線に直交する幅を指す。1つの領域のヒーター用電極120の幅が位置によって異なる場合は、幅が同じ領域iの長さをLi、幅をWiとして、W=(ΣLi×Wi)/ΣLiで求めることとする。ただし、ヒーター用電極のパターンの中心線の角となる部分や曲率が変化する部分を含む幅を決定出来ない範囲は、上記式から除くこととする。また、1つの領域のヒーター用電極120を径方向にさらに分割して、その領域ごとの幅を他の領域の幅と比較して小さく、または大きくしてもよい。
【0052】
平面状電極130は、基材110に埋設され、載置面112側から透視した形状で、面積が載置面112の面積の40%以上である。このように、面積の広い平面状電極130がある場合、内側ヒーター用電極122は、外側ヒーター用電極124よりカーバイド化されにくい。しかしながら、粒界組成物が所定量含まれ、内側ヒーター用電極122にMo2Cが含まれるように構成することにより、内側ヒーター用電極122の抵抗が外側ヒーター用電極124の抵抗より低くなりすぎることを抑制することができ、載置面112の温度分布を均温化することができる。平面状電極130は、例えば、静電吸着用電極、高周波電極、またはヒーター用電極120に電力を供給するためのいずれのヒーター用電極120より幅が広い接続用電極として使用することができる。接続用電極132は、いずれのヒーター用電極120より幅を広くして面積を広くすることで抵抗値を小さくし、ジュール発熱を抑制することができる。ここで接続用電極132の幅とは、接続用電極132内を流れる電流の方向に垂直の方向の幅を指す。また、平面状電極130の面積とは、上面視で裁断された平面電極の外形輪郭によって画定される領域の面積をいう。これにより、意図しない箇所での発熱を抑制することができる。平面状電極130は、用途により形状や材質は異なるが、例えば、Mo、W等で形成することができる。
【0053】
図3および
図4は、それぞれ本発明の実施形態に係るセラミックスヒーターの変形例を示す模式的な断面図である。
図3および
図4に示されるように、本発明のセラミックスヒーターは、様々な電極配置に対応でき、内側ヒーター用電極122の抵抗が外側ヒーター用電極124の抵抗より低くなりすぎることを抑制することができ、載置面112の温度分布を均温化することができる。
【0054】
図5~
図7は、それぞれ本発明の実施形態に係るセラミックスヒーターの変形例を示す模式的な断面図である。
図5~
図7に示されるように、平面状電極130は、静電吸着用電極または高周波電極134、およびヒーター用電極120に電力を供給する接続用電極132であってもよい。
【0055】
図5または
図6に示されるように、内側ヒーター用電極122は、載置面112に垂直な断面において少なくとも一部で静電吸着用電極または高周波電極134と接続用電極132とで挟まれる配置位置であってもよい。内側ヒーター用電極122が平面状電極130に挟まれている場合、内側ヒーター用電極122は、非常にカーバイド化されにくくなる。しかしながら、本発明のセラミックスヒーター100は、粒界組成物を所定量含むことによって粒界組成物の流動が促進し、環境やジグからのカーボン成分や原料に含まれるカーボン成分と電極との反応の機会を増やすことにより、カーバイド化されにくい内側ヒーター用電極122にもMo
2Cが含まれるように調整することができる。よって、このような構造のセラミックスヒーター100であっても内側ヒーター用電極122の抵抗が低くなりすぎることを抑制することができ、載置面112の温度分布を均温化することができる。
【0056】
図1、3、4に示されるように、平面状電極130は、ヒーター用電極120に電力を供給する接続用電極132であり、載置面112に垂直な断面において内側ヒーター用電極122と載置面112との間または内側ヒーター用電極122と載置面112に対向する基材110の下面114との間のいずれか一方に平面状電極130が配置されないことが好ましい。また、
図7に示されるように、平面状電極130は、静電吸着用電極または高周波電極134、およびヒーター用電極120に電力を供給する接続用電極132であり、載置面112に垂直な断面において内側ヒーター用電極122と載置面112との間または内側ヒーター用電極122と載置面112に対向する基材110の下面114との間のいずれか一方に平面状電極130が配置されないことが好ましい。
【0057】
これらのように、内側ヒーター用電極122と載置面112の間または内側ヒーター用電極122と下面114との間に平面状電極130が配置されないように構成することで、内側ヒーター用電極122が平面状電極130に挟まれている場合と比較して、粒界組成物の流動が促進し、環境やジグからのカーボン成分や原料に含まれるカーボン成分と電極との反応の機会が増え、内側ヒーター用電極122をカーバイド化させることが容易になり、電極にMo
2Cが含まれるように調整することが容易になる。その結果、内側ヒーター用電極122の抵抗が低くなりすぎることを抑制することができ、内側ヒーター用電極122の出力を所定の値にすることができる。なお、内側ヒーター用電極122と平面状電極130が同一面に配置される構成は除くものとする。また、
図5~
図7において、接続用電極132を平面状電極130として構成しない場合も、上記のメリットを有し、本発明に含まれる。
【0058】
セラミックスヒーター100は、各電極に電気を供給するまたは電気的に接続するための端子、および端子穴を備えていてもよい。また、セラミックスヒーター100は、端子と電極との間でそれぞれと電気的に接続される接続部材を備えていてもよい。端子は、Niなどで形成することができる。端子は、電極または接続部材とAuロウなどでロウ付けされる。接続部材は、Mo、Wなどで形成することができる。
図1等には、端子、端子穴、接続部材等は図示していない。
【0059】
図8は、本発明の実施形態に係るシャフト付きセラミックスヒーターの一例を示す模式的な断面図である。
図8に示されるように、本発明のセラミックスヒーターは、シャフト付きセラミックスヒーター200であってもよい。これにより、プロセスチャンバーとセラミックスヒーター100との伝熱を低減することができ、載置面112の温度分布を均温化することができる。
【0060】
シャフト140は、上記で説明したセラミックスヒーター100を支持する。シャフト140は、基材110の載置面112に対向する基材110の下面114に接合される。基材110の下面114には、シャフト140を接合する凸部116が形成されてもよい。シャフト140は、セラミックス焼結体からなり、筒状に形成される。シャフト140を形成するセラミックス焼結体は、基材110を形成するセラミックス焼結体と同様にAlNを主成分とすることが好ましい。この場合、焼結助剤の有無やその量は異なっていてもよい。
【0061】
シャフト付きセラミックスヒーター200は、シャフト140の接合部の外径より内側に位置するヒーター用電極120の幅が、シャフト140の接合部の外径より外側に位置するヒーター用電極120の幅より小さいことが好ましい。これにより、シャフト140への伝熱によるシャフト140より内側に位置するヒーター用電極120の温度低下を低減することができ、載置面112の温度分布を均温化することができる。
【0062】
[セラミックスヒーターの製造方法]
次に、本実施形態に係るセラミックスヒーターの製造方法を説明する。
図9は、本発明の実施形態に係るセラミックスヒーターの製造方法の一例を示すフローチャートである。本発明の実施形態に係るセラミックスヒーターの製造方法は、
図9に示すように、造粒粉準備工程STEP1、セラミックス成形体形成工程STEP2、積層体形成工程STEP3、および焼成工程STEP4を備えている。なお、以下では成形体を積層して製造する成形体ホットプレス法による製造方法を説明するが、本発明はセラミックスヒーターの電極配置に応じて基材に含まれる粒界組成物の量を調整することで、ヒーター用電極のカーバイド化を促進することが重要であり、その調整が可能である限りにおいて、上記工程は別の方法に置き換えてもよい。
【0063】
図10(a)~(c)および
図11は、それぞれ本実施形態に係るセラミックスヒーターの製造工程の一段階を模式的に示す断面図である。
【0064】
造粒粉準備工程STEP1は、AlN原料粉末から造粒粉を準備する。例えば、AlN原料粉末にセラミックスヒーターの電極配置に応じて必要な粒界組成物が含まれるように、焼結助剤となる粉末を添加する。そして、バインダ、可塑剤、分散剤などの添加剤を適宜添加して混合して、スラリーを作製し、スプレードライ法等により造粒粉を造粒する。
【0065】
AlN原料粉末は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上である。また、AlN原料粉末の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上1.0μm以下、より好ましくは0.3μm以上0.8μm以下である。焼結助剤として、例えば、Y2O3を用いる場合は、AlN原料粉末に内比で0.1wt%~10wt%のY2O3を添加し、PVA系等のバインダ、分散剤、溶剤を添加してスラリーを調製し、スプレードライヤー等により造粒粉を造粒する。混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えばボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。
【0066】
セラミックス成形体形成工程STEP2は、造粒粉から複数のセラミックス成形体11、12、13を形成する。例えば、造粒粉を造粒後、加圧成形して複数のセラミックス成形体11、12、13を形成することができる。このようにバインダを用いた製法をとる場合、バインダ由来のC成分が後述する脱脂工程後もセラミックス脱脂体内に100ppm~500ppm程度残ることとなる。このC成分やジグ等の環境からのC成分が炭化の原因となると推定される。
【0067】
成形方法としては、例えば、一軸加圧成形や冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)法などの公知の方法を用いればよい。なお、セラミックス成形体を形成する方法は、加圧成形に限らず、例えば、グリーンシート積層、または鋳込み成形であっても適用が可能であり、これらを適宜脱脂、またはさらに仮焼する工程により、セラミックス成形体を製造することができる。なお、
図10ではセラミックス成形体は3の部材に分かれているが、設計に応じて4以上であってもよい。
【0068】
複数のセラミックス成形体11、12、13は、成形後、機械加工により成形体の形状が整えられてもよい。また、所定のセラミックス成形体の片面または両面に、電極等の形状に合わせた形状の凹部が形成されてもよい。
【0069】
複数のセラミックス成形体11、12、13は、所定の温度以上、所定の時間以上脱脂処理して複数のセラミックス脱脂体21、22、23を作製してもよい。セラミックス成形体11、12、13は、例えば、400℃以上800℃以下の温度で熱処理され、セラミックス脱脂体21、22、23となる。脱脂時間は、1時間以上120時間以下であることが好ましい。脱脂には、大気炉または窒素雰囲気炉を用いることができる。機械加工は、脱脂後に行ってもよい。例えば、
図10(b)に示されるように、脱脂後にセラミックス脱脂体21、22、23の片面または両面(他のセラミックス脱脂体21、22、23との接合面)に、ヒーター用電極120または平面状電極130の形状に合わせた形状の凹部が形成されてもよい。
【0070】
ヒーター用電極前駆体120a(
図10では、内側ヒーター用電極前駆体122a、および外側ヒーター用電極前駆体124a)、および平面状電極130は、セラミックスヒーター100の設計に応じた形状に加工されたものを準備する。ヒーター用電極前駆体120aは、Moワイヤーを織り込んだメッシュを所定の形状に切断したものであることが好ましい。ヒーター用電極前駆体120aのメッシュを形成するワイヤーの線径は、0.02mm以上0.15mm以下であることが好ましい。平面状電極130は、接続用電極132か静電吸着用電極または高周波電極134かによって形状、材質等は異なるが、例えば、Mo、W等を用いて形成することができる。
【0071】
ヒーター用電極前駆体120aは、Moからなることが好ましい。ヒーター用電極前駆体120aがMoからなるとは、純度が98wt%以上のMoで形成されたことを示し、他の遷移金属や希土類の単体またはその化合物およびCの合計が2wt%以下であることを示す。Moからなるヒーター用電極前駆体120aが後述する焼成工程STEP4を経ることにより、Mo2Cを含むヒーター用電極120となる。
【0072】
積層体形成工程STEP3では、ヒーター用電極前駆体120a、平面状電極130、および複数のセラミックス成形体11、12、13もしくはセラミックス脱脂体21、22、23を組み合わせて、平板状に形成され、ヒーター用電極前駆体120aおよび平面状電極130が埋設された積層体30を形成する。
【0073】
また、粉末ホットプレス法により積層体30を形成してもよい。粉末ホットプレス法は、造粒粉と所定のヒーター用電極120や平面状電極130を交互に重ねることによりヒーター用電極120や平面状電極130をセラミックスの内部に埋設する方法である。
【0074】
焼成工程STEP4では、積層体30を主面(載置面)に垂直方向に一軸加圧焼成して、セラミックスヒーター100を得る。加圧する力は、1MPa以上であることが好ましい。また、焼成温度は、1500℃以上2000℃以下であることが好ましい。焼成時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましい。焼成雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。これにより、複数のセラミックス成形体11、12、13またはセラミックス脱脂体21、22、23が焼結してセラミックス焼結体となり、これらが一体化され、ヒーター用電極120および平面状電極130が埋設されたセラミックスヒーター100が得られる。
【0075】
なお、脱脂工程を設ける場合、脱脂工程の後にさらにセラミックス仮焼体作製工程を設けてもよい。セラミックス仮焼体作製工程を設ける場合、セラミックス脱脂体を1200℃以上1700℃以下の温度で仮焼してセラミックス仮焼体を作製する。これにより、セラミックスヒーター100の外形やヒーター用電極120の埋設位置などの寸法精度をより高くすることができる。仮焼時間は、0.5時間以上12時間以下であることが好ましい。仮焼雰囲気は、窒素や不活性ガス雰囲気であることが好ましいが、真空などの雰囲気であってもよい。仮焼体作製工程を設ける場合、機械加工は仮焼体作製工程の後に行ってもよい。
【0076】
焼成後のセラミックスヒーター100に図示しない端子穴を設けて、ヒーター用電極120等に端子を接続する工程を設けてもよい。また、図示しない接続部材などをあらかじめ基材110に埋設しておいてもよい。ヒーター用電極120等の表面または接続部材にロウ材等で端子を接続することができる。端子は、Ni等を用いることができる。また、ロウ材はAuロウ等を用いることができる。
【0077】
シャフト付きセラミックスヒーターを製造する場合、シャフトを作製する。例えば、AlNを主成分とし、焼結助剤が添加された、または焼結助剤が添加されない第2の造粒粉からシャフト成形体を形成する。第2の造粒粉の作製方法やシャフト成形体の成形方法等は、造粒粉準備工程やセラミックス成形体形成工程と同じでよい。第2の造粒粉は、焼結助剤を含まないことが好ましい。シャフト成形体は、脱脂を行ってもよい。シャフト成形体の脱脂条件の数値範囲等は、上記のセラミックス脱脂体作製と同じでよい。なお、シャフト脱脂体作製を、セラミックス脱脂体作製と同時に行ってもよい。
【0078】
シャフト焼成は、シャフト成形体またはシャフト脱脂体を焼成して基材を支持するシャフトを焼成する。支持部材の焼成は、常圧焼成であることが好ましい。また、焼成温度は、1800℃以上2000℃以下であることが好ましい。焼成時間は、1時間以上12時間以下であることが好ましい。焼成雰囲気は、例えば、窒素や不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。
【0079】
接合は、基材とシャフトとを接合する。基材とシャフトとの接合は、既知の方法を適用することができ、接合材を用いた接合方法、および接合材を用いない接合方法のいずれも使用することができる。
【0080】
このようにすることで、面積の広い平面状電極があるセラミックスヒーターにおいて、内側ヒーター用電極の抵抗が外側ヒーター用電極の抵抗より低くなりすぎることを抑制することができ、載置面の温度分布を均温化することができるセラミックスヒーターを製造することができる。
【0081】
[実施例および比較例]
(実施例1)
AlN原料粉に内比で5wt%のY2O3(純度99.9%以上)を添加し、バインダ(PVA)、分散剤、溶剤を添加してスラリーを調製し、スプレードライヤーにより造粒粉を造粒した。作製した造粒粉を用いて、CIP成形(圧力1ton/cm2)し、成形体のインゴットを得た。これを機械加工することで、直径300mのセラミックス成形体を4つ形成した。4つのセラミックス成形体の厚みは、5mm~15mmの範囲で、焼成後のセラミックスヒーターの高周波電極、内側ヒーター用電極、および外側ヒーター用電極と接続用電極が、それぞれ載置面からの埋設深さが1mm、7mm、および13mmとできる厚みを選択した。次に、セラミックス成形体を、550℃、12時間脱脂して、セラミックス脱脂体を作製した。そして、所定の厚みのセラミックス脱脂体の一方の面に、成形体の中心を共有し、高周波電極、内側ヒーター用電極、または外側ヒーター用電極と接続用電極を収納するための深さ0.1mmの凹部を設けた。
【0082】
これとは別に、Mo製のメッシュ(線径0.1mm、平織り、メッシュサイズ♯50)を所定の形状に裁断して、外径210mmの内側ヒーター用電極前駆体、および外径296mm、内径220mmの外側ヒーター用電極前駆体を準備した。内側ヒーター用電極および外側ヒーター用電極の幅は、いずれも5mmとした。また、Mo製のメッシュ(線径0.1mm、平織り、メッシュサイズ♯50)を所定の形状に裁断して、接続ポイントを除いた外径200mmの半円形の2つの接続用電極を準備した。
【0083】
次に、高周波電極、内側ヒーター用電極前駆体、外側ヒーター用電極前駆体、および接続用電極を、凹部を設けた所定のセラミックス脱脂体の凹部に載置し、所定の順序で積層することで積層体を作製した。次に、積層体をホットプレス炉に載置して、積層体の主面(載置面)に垂直な方向に10MPaの力を加えつつ、1800℃、2時間、1軸ホットプレス焼成した。このようにして、セラミックスヒーターを焼成した。その後、総厚24mm、絶縁層厚み1mmとなるように全面に研削、研磨加工を行った。そして、高周波電極、内側ヒーター用電極、および接続用電極に端子を接続するための端子穴を穿設し、各電極にNi端子をAuロウで接続した。接続用電極と外側ヒーター用電極は、基材内部の同一面内で電気的に接続されている。このようにして、実施例1のセラミックスヒーターを作製した。すなわち、実施例1のセラミックスヒーターの電極埋設形態は、
図5に例示したセラミックスヒーターの概略断面図の電極の順序および形態と同様である。
【0084】
(実施例2)
実施例2は、実施例1の造粒粉をAlN原料粉に内比で5wt%のNd
2O
3を添加したものに変更した。また、焼成後のセラミックスヒーターの高周波電極、内側ヒーター用電極と外側ヒーター用電極、および接続用電極を、それぞれ載置面からの埋設深さが1mm、7mm、および13mmとなる位置に埋設した。接続用電極の外径は、240mmとした。外側ヒーター用電極と接続用電極の接続は、W(タングステン)多孔体を同時焼成して形成したビアにより行った。すなわち、実施例2のセラミックスヒーターの電極埋設形態は、
図6に例示したセラミックスヒーターの概略断面図の電極の順序および形態と同様である。それ以外は、実施例1と同じ工程、条件で実施例2のセラミックスヒーターを作製した。
【0085】
(実施例3)
実施例3は、実施例2の造粒粉をAlN原料粉に内比で5wt%のCaOを添加したものに変更した。それ以外は、実施例2と同じ工程、条件で実施例3のセラミックスヒーターを作製した。
【0086】
(実施例4)
実施例4は、実施例1の造粒粉をAlN原料粉に内比で1.5wt%のY
2O
3を添加したものに変更した。焼成後のセラミックスヒーターの高周波電極、外側ヒーター用電極と接続用電極、および内側ヒーター用電極を、それぞれ載置面からの埋設深さが1mm、7mm、および13mmとなる位置に埋設した。すなわち、実施例4のセラミックスヒーターの電極埋設形態は、
図7に例示したセラミックスヒーターの概略断面図の電極の順序および形態と同様である。それ以外は、実施例1と同じ工程、条件で実施例4のセラミックスヒーターを作製した。
【0087】
(実施例5)
実施例5は、実施例4の造粒粉をAlN原料粉に内比で5wt%のY2O3を添加したものに変更した。それ以外は、実施例4と同じ工程、条件で実施例5のセラミックスヒーターを作製した。
【0088】
(実施例6)
実施例6は、実施例1のセラミックスヒーターから高周波電極を無くした形態に変更した。外側ヒーター用電極と接続用電極、および内側ヒーター用電極の埋設深さは、実施例1と同様である。すなわち、実施例6のセラミックスヒーターの電極埋設形態は、
図1に例示したセラミックスヒーターの概略断面図の電極の順序および形態と同様である。それ以外は、実施例1と同じ工程、条件で実施例6のセラミックスヒーターを作製した。
【0089】
(実施例7)
実施例7は、実施例4の造粒粉をAlN原料粉に内比で5wt%のY
2O
3を添加したものに変更した。また、実施例7は、実施例4のセラミックスヒーターから高周波電極を無くした形態に変更した。外側ヒーター用電極と接続用電極、および内側ヒーター用電極の埋設深さは、実施例4と同様である。すなわち、実施例7のセラミックスヒーターの電極埋設形態は、
図4に例示したセラミックスヒーターの概略断面図の電極の順序および形態と同様である。それ以外は、実施例4と同じ工程、条件で実施例7のセラミックスヒーターを作製した。
【0090】
(実施例8)
実施例8は、実施例4の造粒粉をAlN原料粉に内比で0.3wt%のY2O3を添加したものに変更した。それ以外は、実施例4と同じ工程、条件で実施例5のセラミックスヒーターを作製した。
【0091】
(実施例9)
実施例9は、実施例1の内側ヒーター用電極の幅を5mmから3mmに変更した。それ以外は、実施例1と同じ工程、条件で比較例1のセラミックスヒーターを作製した。
【0092】
(実施例10)
実施例10は、実施例1のセラミックスヒーターの下面に、外径100mm、内径60mmの拡径部を有する長さ200mmのシャフトを接合した。それ以外は、実施例1と同じ工程、条件で実施例10のセラミックスヒーターを作製した。
【0093】
(実施例11)
実施例11は、実施例10の内側ヒーター用電極のうち、径100mmより外側の幅を3mmから5mmに変更した。径100mm以内の幅は3mmのままとした。それ以外は、実施例10と同じ工程、条件で実施例11のセラミックスヒーターを作製した。
【0094】
(実施例12)
実施例12は、実施例2の造粒粉をAlN原料粉に内比で1wt%のY
2O
3を添加したものに変更した。また、実施例12は、実施例2のセラミックスヒーターから高周波電極を無くした形態に変更した。外側ヒーター用電極と接続用電極、および内側ヒーター用電極の埋設深さは、実施例2と同様である。すなわち、実施例12のセラミックスヒーターの電極埋設形態は、
図3に例示したセラミックスヒーターの概略断面図の電極の順序および形態と同様である。それ以外は、実施例2と同じ工程、条件で実施例12のセラミックスヒーターを作製した。
【0095】
(実施例13)
実施例13は、実施例1の造粒粉をAlN原料粉に内比で7wt%のY2O3を添加したものに変更した。それ以外は、実施例1と同じ工程、条件で実施例13のセラミックスヒーターを作製した。
【0096】
(実施例14)
実施例14は、実施例1の造粒粉をAlN原料粉に内比で3wt%のAl2O3および7wt%のY2O3を添加したものに変更した。それ以外は、実施例1と同じ工程、条件で実施例14のセラミックスヒーターを作製した。
【0097】
(比較例)
比較例は、実施例1の造粒粉をAlN原料粉のみのものに変更した。それ以外は、実施例1と同じ工程、条件で比較例のセラミックスヒーターを作製した。
【0098】
[性能評価]
(内側ヒーター用電極および外側ヒーター用電極の抵抗値の測定)
実施例および比較例のセラミックスヒーターについて、内側ヒーター用電極および外側ヒーター用電極それぞれの端子にテスターのプローブを接触させ、それぞれの端子間のヒーター抵抗値を測定した。
図12は、実施例および比較例の基材の組成、電極埋設形態、その他の特徴、および測定結果を示す表である。
【0099】
(内側ヒーター用電極の組成分析)
各実施例、比較例のセラミックスヒーターを載置面の中心を通る垂直な断面で切断した。そして、平面状電極に重なる位置の内側ヒーター用電極の断面を露出させ研磨後、EMPAで元素マッピングを行った。
【0100】
EPMAは、内側ヒーター用電極の断面をFE-EPMA(電界放出型電子線マイクロアナライザ)による断面の元素マッピング分析を行い、半定量分析でatоm%換算でC/(C+Mo)比で炭化物の判断を行った。そして、断面の画像解析によってC/(C+Mo)比が0.20以上であった領域の面積比率を求めた。
【0101】
また、同一断面の基材の組成、および粒界組成物の含有量をGDMSによる定量分析により確かめた。なお、粒界組成物は原料配合時に添加した焼結助剤およびAlとの反応によって生成した物質であり、粒界組成物の濃度についてはこれらを酸化物に換算して求めている。
【0102】
実施例1~14は、
図12の基材の組成に調整した原料を焼結した。実施例1~14は、いずれも焼結後の基材に0.1wt%以上10wt%以下の粒界組成物が含まれることが確かめられた。例えば、実施例8、実施例13の粒界組成物は各々、0.2wt%と5.3wt%であった。焼成後の粒界組成物の含有量がこのようになった理由は、焼成時に焼結助剤の一部が揮発等で消失していたためと考えられる。一方、少なくとも一部はそのまま残存し、またはAlNと反応して生成した化合物として存在していたことが確かめられた。したがって、原料配合時の焼結助剤量の50%以上は粒界組成物として含まれることになると推定される。
【0103】
一方、比較例は、粒界組成物が含まれないことが確かめられた。また、実施例1~14は、内側ヒーター用電極にMo2Cが含まれることが確かめられた。また、実施例1~14は、比較例と比較して、内側ヒーター用電極と外側ヒーター用電極の抵抗値の差が小さかった。実施例1~14は、セラミックスヒーターの内側ヒーター用電極が比較例よりも多く炭化したため、内側ヒーター用電極と外側ヒーター用電極の抵抗値の差が抑制されたと考えられる。
【0104】
図13は、実施例8の内側ヒーター用電極の断面の500倍のSEM画像である。
図13の内側ヒーター用電極のうち、薄い色で示された部分がMo
2Cを示している。このときの内側ヒーター用電極の断面積に対するMo
2C化された領域の断面積の面積比率は21%であり、
図13に示されるように、実施例8のヒーター用電極は、Mo
2Cが十分に含まれることが確かめられた。
【0105】
実施例1~3の結果から、焼結助剤の種類は、イットリウム酸化物、その他の希土類酸化物、またはアルカリ土類金属酸化物のいずれであっても粒界組成物を生じ、内側ヒーター用電極を含むヒーター用電極の炭化度合いを高めることが確かめられた。
【0106】
実施例1と実施例5~7の比較により、内側ヒーター用電極の上面側および下面側に平面状電極が配置されている場合、同量の焼結助剤を添加しても内側ヒーター用電極の炭化度合いは低くなることが確かめられた。また、実施例1、4、8、および12の結果から、内側ヒーター用電極の上面側または下面側のいずれか一方に平面状電極が配置されていない場合、焼結助剤の添加量を低減しても内側ヒーター用電極の炭化度合いを一定程度高くすることができることが確かめられた。
【0107】
実施例1および9の結果から、内側ヒーター用電極の上面側および下面側に平面状電極が配置されている場合、内側ヒーター用電極の幅を細くする技術を併用することで、内側ヒーター用電極の抵抗値を外側ヒーター用電極の抵抗値に十分近づけることができることが確かめられた。
【0108】
これらの結果、実施例1~14は比較例に比べ内側ヒーター用電極を含むヒーター用電極を炭化させることができ、内側ヒーター用電極と外側ヒーター用電極の抵抗値の差を小さくすることができることが確かめられた。また、本発明の製造方法は、このようなセラミックスヒーターを製造できることが確かめられた。
【0109】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形および均等物に及ぶことはいうまでもない。また、各図面に示された構成要素の構造、形状、数、位置、大きさ等は説明の便宜上のものであり、適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0110】
11、12、13 セラミックス成形体
21、22、23 セラミックス脱脂体
30 積層体
100 セラミックスヒーター
110 基材
112 載置面
114 下面
116 凸部
120 ヒーター用電極
120a ヒーター用電極前駆体
122 内側ヒーター用電極
122a 内側ヒーター用電極前駆体
124 外側ヒーター用電極
124a 外側ヒーター用電極前駆体
130 平面状電極
132 接続用電極
134 静電吸着用電極または高周波電極
136 ビア
140 シャフト
200 シャフト付きセラミックスヒーター