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特開2024-63424口栓および口栓付きパウチ並びに口栓付きパウチの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063424
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】口栓および口栓付きパウチ並びに口栓付きパウチの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
B65D33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171360
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信之
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064BA26
3E064BC16
3E064BC18
3E064EA30
3E064FA04
3E064HM01
3E064HN65
(57)【要約】
【課題】口栓とフィルムシートとを溶着した際に口栓とフィルムシートとの間に隙間が生じるのを抑制できる口栓と、該口栓を用いた口栓付きパウチおよび口栓付きパウチの製造方法とを提供する。
【解決手段】口栓20は、略円筒状の本体部20aと、前記本体部20aの外周面に配置された溶着部22sと、を備え、前記溶着部22sを形成する樹脂の融点は、前記本体部20aを形成する樹脂の融点より低い。口栓付きパウチは、前記口栓20と、袋状にヒートシールされたフィルムシートと、を備え、前記口栓20の前記溶着部22sと、前記フィルムシートとがヒートシールされている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状の本体部と、
前記本体部の外周面に配置された溶着部と、
を備え、
前記溶着部を形成する樹脂の融点は、前記本体部を形成する樹脂の融点より低い、
口栓。
【請求項2】
前記溶着部を形成する樹脂の融点は、前記本体部を形成する樹脂の融点より少なくとも10℃低い、
請求項1に記載の口栓。
【請求項3】
前記本体部は、高密度ポリエチレンを含み、
前記溶着部は、直鎖状低密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンを含む、
請求項2に記載の口栓。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の口栓と、
袋状にヒートシールされたフィルムシートと、
を備え、
前記口栓の前記溶着部と、前記フィルムシートとがヒートシールされている、
口栓付きパウチ。
【請求項5】
前記フィルムシートは、単一素材である、
請求項4に記載の口栓付きパウチ。
【請求項6】
前記溶着部を形成する樹脂の融点は、前記フィルムシートを形成する樹脂の融点以下の温度である、
請求項5に記載の口栓付きパウチ。
【請求項7】
前記溶着部を形成する樹脂の融点の上限値は、前記フィルムシートを形成する樹脂の融点より5℃低い温度であり、
前記溶着部を形成する樹脂の融点の下限値は、前記フィルムシートを形成する樹脂の融点より15℃低い温度である、
請求項6に記載の口栓付きパウチ。
【請求項8】
前記フィルムシートは、直鎖状低密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンを含む、
請求項7に記載の口栓付きパウチ。
【請求項9】
本体部と、前記本体部を形成する樹脂の融点より融点が低い樹脂で形成された溶着部とを有する口栓を形成する口栓供給工程と、
前記溶着部と、袋状のフィルムシートとを溶着するヒートシール工程と、
を備える、
口栓付きパウチの製造方法。
【請求項10】
前記フィルムシートは、単一素材である、
請求項9に記載の口栓付きパウチの製造方法。
【請求項11】
前記溶着部を形成する樹脂の融点は、前記フィルムシートを形成する樹脂の融点以下の温度であり、
前記ヒートシール工程において前記溶着部と前記フィルムシートとを加熱する温度は、前記フィルムシートを形成する樹脂の融点以下の温度である、
請求項10に記載の口栓付きパウチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口栓および口栓付きパウチ並びに口栓付きパウチの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂で形成された口栓と、フィルムシートを袋状に形成したパウチとをヒートシールした口栓付きパウチがある。パウチ内部の充填空間に飲料等の内容物を充填して口栓をキャップで閉じることで、内容物を密封保存できる。また、キャップを開けて、充填された飲料を口栓から容易に飲むことができる。
【0003】
口栓付きパウチとして、特許文献1に記載の液体充填容器がある。特許文献1に記載の液体充填容器は、液体等の内容物を充填する袋状容器本体の上方開口部に内容物取出装置が固着されている。袋状容器本体は、ポリエステルフィルム、アルミホイル、延伸ナイロンフィルムおよびポリエチレンフィルムの積層フィルムを素材として作られている。内容物取出装置は、口部と、口部に一体に連接される導管部とを有し、導管部の上端部に近い部分に開口が形成されている。
【0004】
内容物取出装置をストローとして利用する場合には、口部に口を付けて吸い込むと導管部の開口が袋状容器本体の壁部により閉じられ、導管部の下端より内容物が吸い上げられる。また、内容物取出装置を注ぎ口として利用する場合には、袋状容器本体を手で持ち、傾けると、導管部の開口が取入口として作用し、袋状容器本体の内容物を最後の一滴まで取出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平02-021399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の液体充填容器は、パウチ(袋状容器本体)の素材としてナイロンやアルミニウム等を積層した積層フィルムを用いるため、リサイクル性が劣る。
【0007】
口栓の材質には、剛性の高い高密度ポリエチレン(HDPE)が使用されることが多い。また、リサイクル性を向上させるために、単一素材のフィルムシートが求められている。単一素材のフィルムシートをパウチの素材として用いる場合、ヒートシールのしやすさから、フィルムシートの材質として低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が用いられる。低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の融点は、高密度ポリエチレン(HDPE)の融点よりも低い。
【0008】
そのため、口栓とフィルムシートとを十分にヒートシールするためには、フィルムシートの融点に対して高温で加熱する必要がある。ポリエチレン等の単一素材のフィルムシートは、ナイロンやアルミニウム等を積層した積層フィルムと比較して剛性が低いため、高密度ポリエチレン(HDPE)を用いた口栓と、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いたフィルムシートとをヒートシールする際、融点の高い口栓を溶融させるための加熱温度および加熱時間によってフィルムシートが収縮し、フィルムシートにシワが発生する虞がある。その結果、口栓とフィルムシートとの間に隙間ができ、充填した内容物が外部へ漏れてしまう虞がある。また、シワの発生による外観の悪化や、外部からパウチの内部へ酸素等が入り込むことによる内容物の劣化が懸念される。
【0009】
上記事情を踏まえ、本発明は、口栓とフィルムシートとを溶着した際に口栓とフィルムシートとの間に隙間が生じるのを抑制できる口栓と、該口栓を用いた口栓付きパウチおよび口栓付きパウチの製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の口栓は、略円筒状の本体部と、前記本体部の外周面に配置された溶着部と、を備え、前記溶着部を形成する樹脂の融点は、前記本体部を形成する樹脂の融点より低い。
【0011】
上記口栓では、前記溶着部を形成する樹脂の融点は、前記本体部を形成する樹脂の融点より少なくとも10℃低くてもよい。
【0012】
上記口栓では、前記本体部は、高密度ポリエチレンを含み、前記溶着部は、直鎖状低密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンを含んでもよい。
【0013】
本発明の口栓付きパウチは、上記口栓と、袋状にヒートシールされたフィルムシートと、を備え、前記口栓の前記溶着部と、前記フィルムシートとがヒートシールされている。
【0014】
上記口栓付きパウチでは、前記フィルムシートは、単一素材であってもよい。
【0015】
上記口栓付きパウチでは、前記溶着部を形成する樹脂の融点は、前記フィルムシートを形成する樹脂の融点以下の温度であってもよい。
【0016】
上記口栓付きパウチでは、前記溶着部を形成する樹脂の融点の上限値は、前記フィルムシートを形成する樹脂の融点より5℃低い温度であり、前記溶着部を形成する樹脂の融点の下限値は、前記フィルムシートを形成する樹脂の融点より15℃低い温度であってもよい。
【0017】
上記口栓付きパウチでは、前記フィルムシートは、直鎖状低密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンを含んでもよい。
【0018】
本発明の口栓付きパウチの製造方法は、本体部と、前記本体部を形成する樹脂の融点より融点が低い樹脂で形成された溶着部とを有する口栓を形成する口栓供給工程と、前記溶着部と、袋状のフィルムシートとを溶着するヒートシール工程と、を備える。
【0019】
上記口栓付きパウチの製造方法では、前記フィルムシートは、単一素材であってもよい。
【0020】
上記口栓付きパウチの製造方法では、前記溶着部を形成する樹脂の融点は、前記フィルムシートを形成する樹脂の融点以下の温度であり、前記ヒートシール工程において前記溶着部と前記フィルムシートとを加熱する温度は、前記フィルムシートを形成する樹脂の融点以下の温度であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の口栓および口栓付きパウチによれば、口栓とフィルムシートとを溶着した際に口栓とフィルムシートとの間に隙間が生じるのを抑制できる口栓と、該口栓を用いた口栓付きパウチおよび口栓付きパウチの製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る口栓付きパウチの斜視図である。
図2】本実施形態に係る口栓の正面図および側面図である。
図3】同口栓付きパウチのヒートシールされた口栓とフィルムシートとの断面図である。
図4】本実施形態に係る口栓付きパウチの製造方法を示すフローチャートである。
図5】同口栓付きパウチの製造方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る口栓付きパウチ100の斜視図である。
口栓付きパウチ100は、パウチ10と、口栓20と、キャップ30と、を備える。口栓付きパウチ100は、袋状のパウチ10と口栓20とをヒートシールによって接続し、パウチ10の充填空間10sに飲料等の内容物を充填して、口栓20をキャップ30で閉じることで密封されているため、内容物は口栓付きパウチ100の外部へ漏れない。使用者は、キャップ30を開けることで密封状態を解除し、口栓20から内容物の飲料を飲むことができる。
【0025】
パウチ10を構成する対向したフィルムシートで口栓20を挟み、口栓20を挟み込んだ方向の両側からパウチ10と口栓20とを加圧および加熱して溶着する。口栓付きパウチ100は、有底のスタンディングパウチ容器であり、口栓20を上側にして机等に置くことができる。
【0026】
本実施形態では、図1に示すように、口栓20を上側にして置いた状態の口栓付きパウチ100における鉛直方向を「上下方向V」、鉛直上向きを上下方向Vにおける「上側UP」、鉛直下向きを上下方向Vにおける「下側LO」と定義する。また、パウチ10と口栓20とのヒートシール時に加圧した方向を「奥行方向D」、奥行方向Dにおける一方側を「前側FR」、奥行方向Dにおける他方側を「後側RR」と定義する。また、上下方向Vおよび奥行方向Dと直交する方向を「水平方向H」、水平方向Hにおける一方側を「左側LT」、水平方向Hにおける他方側を「右側RT」と定義する。
【0027】
パウチ10は、充填空間10sと、フィルムシート11と、上シール部12と、横シール部13と、底シール部14と、を備える。充填空間10sは、フィルムシート11に囲われた空間であり、口栓付きパウチ100の内容物が充填される空間である。
【0028】
フィルムシート11は、単一素材(モノマテリアル)の樹脂で形成されたシート状の樹脂フィルムである。フィルムシート11の材料として、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を採用できる。フィルムシート11の材質は、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)に限られず、ヒートシール(熱溶着)に適したものであればよい。フィルムシート11は、単一素材の単層フィルムでもよいし、同系統の樹脂を積層した単一素材の複層フィルムでもよい。フィルムシート11を単一素材で形成することで、リサイクル性を向上できる。フィルムシート11には、予め商品名又はロゴ等の印刷を施してもよい。
【0029】
フィルムシート11は、前フィルム11aと、後フィルム11bと、底フィルム11cと、を備える。前フィルム11aは、パウチ10の前側FRに配置されている。後フィルム11bは、パウチ10の後側RRに配置されている。前フィルム11aおよび後フィルム11bは、略長方形で、パウチ10の充填空間10sに充填される内容物を覆うのに十分な形状を有する。
【0030】
パウチ10は、奥行方向Dに対向させた前フィルム11aおよび後フィルム11bを上シール部12、横シール部13でヒートシールし、前フィルム11aおよび後フィルム11bと、その間に二つ折りにして挟んだ底フィルム11cとを底シール部14でヒートシールして袋状に形成されている。パウチ10は、一枚のフィルムシート11を折り曲げてヒートシールすることで形成されてもよいし、複数のフィルムシート11をヒートシールして接続することで形成されてもよい。口栓付きパウチ100が底面を有さない場合、パウチ10は、底フィルム11cを備えなくてもよい。
また、パウチ10は、側部において前フィルム11aと後フィルム11bとの間に二つ折りにして挟んだ折り込み部材を備えるガゼットタイプの形状としてもよい。
【0031】
上シール部12は、奥行方向Dに対向した前フィルム11a、後フィルム11bおよび口栓20をヒートシールした部位であり、パウチ10の上側UPの端部に配置されている。横シール部13は、奥行方向Dに対向した前フィルム11aと後フィルム11bとをヒートシールした部位であり、パウチ10の左側LTおよび右側RTの端部に配置されている。底シール部14は、奥行方向Dに対向した前フィルム11a、後フィルム11bおよび底フィルム11cをヒートシールした部位であり、パウチ10の下側LOの端部に配置されている。上シール部12、横シール部13および底シール部14によって充填空間10sの周囲のフィルムシート11をヒートシールすることで、充填空間10sを密封した略長方形の袋状のパウチ10が形成される。
【0032】
図2は、本実施形態に係る口栓20を示す正面図および側面図である。図2(a)は、口栓20の正面図である。図2(b)は、口栓20の側面図である。
図3は、口栓20とフィルムシート11とが溶着された上シール部12の断面図である。
【0033】
口栓20は、本体部20aと、溶着部22sと、を備える。本体部20aと溶着部22sとは異なる樹脂材で形成されており、溶着部22sを形成する樹脂の融点は、本体部20aを形成する樹脂の融点より低い。溶着部22sを形成する樹脂の融点は、本体部20aを形成する樹脂の融点より10℃以上低いのが望ましい。
【0034】
本体部20aは、口部21と、接続部22と、流路23と、延長部24と、を備える。本体部20aは、樹脂材を用いた射出成型により形成されている。本体部20aの材質として、高密度ポリエチレン(HDPE)等を採用できる。本体部20aの材質は、高密度ポリエチレン(HDPE)に限られず、十分な剛性を有した材料であればよい。
【0035】
口部21は、略円筒状であり、本体部20aの上側UPに配置されている。ここで、口部21の上下方向Vにおける中心軸を中心軸Oと定義する。口部21は、キャップ30と螺合する螺旋状の螺子部21aを備える。
【0036】
接続部22は、図3に示すように、円筒部22aと、左側延長部22bと、右側延長部22cと、を有する。円筒部22aは、接続部22の基部であり、中心軸Oを中心軸とする略円筒状である。左側延長部22bは、円筒部22aの左側LTに接続され、上側UPから見たとき、右側RTから左側LTに向かって先細った形状を有する。右側延長部22cは、円筒部22aの右側RTに接続され、上側UPから見たとき、左側LTから右側RTに向かって先細った形状を有する。
【0037】
接続部22は、口部21の下側LOに配置されている。口部21の下側LOの端部と、接続部22の上側UPの端部が接続されている。口部21の内周面と円筒部22aの内周面とが連通して流路23を形成している。
【0038】
流路23は、口部21と接続部22とに連通し、中心軸Oを中心軸とする円柱状の空間である。口栓付きパウチ100の充填空間10sに充填された内容物は、流路23を経由して口部21の上側UPの端部から外部へ取り出される。
【0039】
延長部24は、前側FRおよび後側RRから見たとき、U字の開口を上側UPに向けた略U字形状をしている。延長部24の上側UPの端部と、接続部22の下側LOの端部とが接続されている。延長部24は、奥行方向Dにおいて一定の厚さを有する。そのため、使用者が充填空間10sに充填された内容物を吸い出す際、延長部24がフィルムシート11の奥行方向Dの移動を規制して、充填空間10sの奥行方向Dにおける空間を確保し、流路23の下側LOの端部がフィルムシート11によって塞がれるのを抑制できる。
【0040】
溶着部22sは、図3に示すように、接続部22の外周面(表面)に形成され、口栓付きパウチ100において、フィルムシート11とヒートシールされる部位である。溶着部22sの材質として、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を採用できる。
【0041】
溶着部22sを形成する樹脂の融点は、フィルムシート11を形成する樹脂の融点以下の温度が望ましい。また、溶着部22sを形成する樹脂の融点の上限値は、フィルムシート11を形成する樹脂の融点より5℃低い温度がより望ましく、下限値は、フィルムシート11を形成する樹脂の融点より15℃低い温度がより望ましい。
【0042】
溶着部22sは、溶着リブ22dを備える。溶着リブ22dは、溶着部22sの表面に形成され、奥行方向Dに突出した凸形状である。溶着リブ22dは、本実施形態において、前側FRと後側RRとに各3本配置されている。
【0043】
溶着部22sおよび溶着リブ22dは、口栓20とフィルムシート11とをヒートシールする際に、溶融してフィルムシート11と接着される部位である。溶着部22sが溶着リブ22dを備えることで、口栓20とフィルムシート11とをヒートシールするとき、口栓20は、溶融する樹脂量を十分に確保できる。また、ヒートシールした口栓20とフィルムシート11において、溶着リブ22dが上下方向Vにおけるフィルムシート11との引っ掛かりとなり、上下方向Vにおいて口栓20とフィルムシート11との溶着剥がれを抑制できる。溶着部22sが溶着リブ22dを備えなくても口栓20とフィルムシート11とを十分にヒートシールできる場合は、溶着部22sは溶着リブ22dを備えなくてもよい。
【0044】
キャップ30は、口栓付きパウチ100の内容物が外部へ漏れるのを防ぐ蓋である。キャップ30は、上側UPが塞がれた略円筒状であり、内周面に有する溝が口栓20の螺子部21aと螺合して口栓20に接続される。キャップ30によって口栓20に蓋をすることで口栓付きパウチ100の内容物は密封される。使用者は、口栓20とキャップ30との螺合を解除して口栓付きパウチ100を開けることで、充填空間10sに充填された内容物を外部へ取り出すことができる。例えば、充填空間10sに充填された内容物が飲料の場合、使用者は、キャップ30を口栓20から外して開けて、流路23を経由して口栓20の上側UPの開口から飲料を飲むことができる。
【0045】
次に、口栓付きパウチ100の製造方法の一例について説明する。
【0046】
図4は、口栓付きパウチ100の製造方法の一例を示すフローチャートである。図5は、口栓付きパウチ100の製造方法の一例を模式的に示す図である。
【0047】
まず、ステップS1(口栓供給工程)を実施する。ステップS1において、まず、口栓20を形成する。口栓20は、異なる樹脂で形成された本体部20aと溶着部22sとを有する。そのため、口栓20は、二色成型によって形成される。
【0048】
ここで、二色成型とは、2種類以上の材料を用いて成型品を成型する射出成型法である。口栓20の成型工程において、高密度ポリエチレン(HDPE)等の十分な剛性を有した樹脂を金型へ射出し、本体部20aを成型する。次に、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等の本体部20aを形成する樹脂の融点より融点が低い樹脂を金型へ射出し、溶着部22sを成型する。二色成型を用いることで、融点が異なる2つ以上の樹脂を用いて口栓20を成型できる。
【0049】
形成した口栓20を口栓付きパウチ100の製造ラインに供給する。口栓20を口栓付きパウチ100の製造ラインに供給した後、口栓20において、溶着部22sに金型を接触させて加熱(プレヒート)する。ステップS1において、例えば、口栓20の溶着部22sに金型を押し当てて、150℃で0.18秒加熱する。ここで、製造ラインとは、供給された口栓付きパウチ100の各構成部品が、各工程を順番に工程ごとに決められた時間で送られ、ヒートシール等の加工を施される一連の流れ作業による製造工程を示す。
【0050】
次に、ステップS2(フィルム供給工程)を実施する。ステップS2において、フィルムシート11を製造ラインに供給する。ステップS2で製造ラインに供給されるフィルムシート11は、横シール部13および底シール部14がヒートシールされており、上側UPに開いた袋形状をしている。フィルムシート11には、予め商品名又はロゴ等の印刷を施してもよい。
【0051】
また、ステップS2において、後述するヒートシール工程に備え、フィルムシート11と口栓20との位置を決めるための仮ヒートシール工程を実施する。仮ヒートシール工程では、供給された袋状のフィルムシート11の上側UPの開口に口栓20を差し込み、フィルムシート11の上側UPの端部において、奥行方向Dに対向したフィルムシート11で口栓20の溶着部22sを挟み込む。口栓20を挟み込んだフィルムシート11の前側FRおよび後側RRから、フィルムシート11および溶着部22sを加熱および加圧して、フィルムシート11と溶着部22sとを溶融接着する。ここで、仮ヒートシール工程では口栓20に対するフィルムシート11の位置を決められればよく、例えば、上シール部12において、フィルムシート11および溶着部22sの一部分のみに金型を押し当てて180°で0.8秒加熱し、フィルムシート11と溶着部22sの一部分のみを溶融接着して、口栓20に対するフィルムシート11の位置を決定する。なお、仮ヒートシール工程による位置決めが不要な場合は、仮ヒートシール工程を施さずにステップS3へ移行してもよい。
【0052】
次に、ステップS3(ヒートシール工程)を実施する。ステップS3において、ステップS1およびステップS2で製造ラインに供給された口栓20とフィルムシート11とをヒートシールして接続する。フィルムシート11の前側FRおよび後側RRから、フィルムシート11および溶着部22sを加熱および加圧して、フィルムシート11と溶着部22sとを溶融接着する。ステップS3でフィルムシート11と溶着部22sとをヒートシールすることで、パウチ10の上シール部12が形成される。なおこの際、ヒートシールの工程は複数回に分けて実施されてもよく、また、ヒートシール後に冷却工程を設けてヒートシール部を冷却するようにしてもよい。
【0053】
例えば、ステップS3において、155℃で0.8秒加熱する工程を3回実施する。ステップS3で実施するヒートシールを、第一ヒートシール工程、第二ヒートシール工程および第三ヒートシール工程として3回に分けることで、ステップS3にかかる時間が他の工程より多くなることを抑制し、口栓付きパウチ100の製造にかけることができる時間(タクトタイム)への影響を最小限にできる。
【0054】
また、ヒートシール後の冷却工程において、例えば、フィルムシート11と溶着部22sとをヒートシールした箇所(ヒートシール部)に金型(冷却シール板)を接触させてヒートシール部を冷却する。冷却シール板において、室温(常温)状態の冷却シール板を用いてもよいし、内部にチラー水を循環させて室温以下の温度とした冷却シール板を用いてもよい。
【0055】
横シール部13および底シール部14を形成するヒートシールは、ステップ3で施されてもよい。例えば、ヒートシールされていないシート状のフィルムシート11を製造ラインに供給し、ステップS3においてフィルムシート11と口栓20とをヒートシールする際に、横シール部13および底シール部14のヒートシールを施してもよい。
【0056】
口栓20とフィルムシート11とをヒートシールする際、溶着部22sが溶融してフィルムシート11と固着し、口栓20とフィルムシート11とが接着される。溶着部22sが溶着リブ22dを備える場合は、溶着部22sと共に溶着リブ22dも溶融してフィルムシート11と固着する。ここで、溶着部22sを形成する樹脂の融点は、本体部20aを形成する樹脂の融点より低い。また、溶着部22sを形成する樹脂の融点は、フィルムシート11を形成する樹脂の融点以下の温度である。また、ステップS3において、溶着部22sとフィルムシート11とを加熱する温度は、フィルムシート11を形成する樹脂の融点以下の温度が望ましい。
【0057】
口栓20は、異なる融点を有する樹脂を用いて二色成型によって成型されている。例えば、本体部20aは、融点131℃の高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されている。また、溶着部22sは、融点113℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で形成されている。口栓20の大部分は、高密度ポリエチレン(HDPE)で形成されているため、口栓20は十分な剛性を有する。
【0058】
また、フィルムシート11は、融点113℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で形成されている。溶着部22sを形成する樹脂の融点と、フィルムシート11を形成する樹脂の融点が同じため、ステップS3において、フィルムシート11と口栓20とをヒートシールする際、フィルムシート11を形成する樹脂の融点と近い温度で加熱してヒートシールできる。その結果、フィルムシート11に過剰な熱量が加わることが無く、フィルムシート11にシワが発生しない。そのため、口栓20とフィルムシート11との間に隙間を生じさせずにヒートシールすることができ、口栓付きパウチ100において、充填空間10sに充填された内容物が外部へ漏れるのを抑制できる。
【0059】
ヒートシール時の加熱でフィルムシート11にシワが発生する虞がある場合は、フィルムシート11のシワを防止するためにナイロンやアルミニウム等を積層して剛性を高くした積層フィルムをフィルムシート11に用いる必要がある。しかし、溶着部22sを形成する樹脂の融点と、フィルムシート11を形成する樹脂の融点との温度差を小さくすることで、ポリエチレン樹脂等の単一素材で形成されたフィルムシート11を用いても口栓20とフィルムシート11とを十分にヒートシールできるため、口栓付きパウチ100は、リサイクル性に優れる。また、本体部20aは、高密度ポリエチレン(HDPE)等の十分な剛性を有した樹脂で形成されているため、口栓20は十分な剛性を有する。
【0060】
溶着部22sとフィルムシート11とをヒートシールした後、溶着部22sとフィルムシート11とが十分に接着されているかを検査し、次の工程へ移行する。
【0061】
次に、ステップS4(充填工程)を実施する。ステップS4において、口部21の上側UPの開口から流路23を経由して、パウチ10の充填空間10sへ内容物を充填する。充填空間10sに内容物を充填した後、パウチ10および口栓20を洗浄し、乾燥させ、次の工程へ移行する。
【0062】
次に、ステップS5(蓋閉め工程)を実施する。ステップS5において、口部21の上側UPの開口をキャップ30で閉じて、口栓付きパウチ100を密封する。次に、キャップ30が適切に閉められているか否か等の検査を実施し、口栓付きパウチ100の製造工程を完了する。
【0063】
本実施形態の口栓20および口栓付きパウチ100によれば、溶着部22sを形成する樹脂の融点は、本体部20aを形成する樹脂の融点より低い。また、溶着部22sを形成する樹脂の融点は、フィルムシート11を形成する樹脂の融点以下の温度である。そのため、フィルムシート11にシワが発生することなく、口栓20とフィルムシート11とをヒートシールできる。その結果、口栓20とフィルムシート11とを溶着した際に口栓20とフィルムシート11との間に隙間が生じるのを抑制できる口栓20と、口栓付きパウチ100および口栓付きパウチ100の製造方法とを提供することができる。また、ポリエチレン樹脂等の単一素材を用いたフィルムシート11でも口栓20とフィルムシート11とを十分にヒートシールできるため、リサイクル性に優れた口栓付きパウチ100を提供することができる。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0065】
(変形例1)
上記実施形態において、口栓20は、二色成型によって成型されるが、口栓20の成型方法はこれに限定されない。口栓は、インサート成型によって成型されてもよい。
【0066】
口栓をインサート成型で成型する場合、まず、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等で形成されたインサート成型用フィルムを準備する。
【0067】
次に、インサート成型に用いる金型において、溶着部を形成する位置にインサート成型用フィルムを配置する。インサート成型用フィルムが配置された金型に、高密度ポリエチレン(HDPE)等の十分な剛性を有する樹脂を射出して、本体部を成型する。
【0068】
インサート成型により成型した口栓において、溶着部は、インサート成型用フィルムで形成されている。その結果、本体部と溶着部は異なる樹脂で形成されている。
【0069】
本体部を形成する樹脂の融点より融点が低い樹脂でインサート成型用フィルムを形成することで、溶着部を形成する樹脂の融点は、本体部を形成する樹脂の融点より低い。このとき、溶着部を形成する樹脂の融点は、フィルムシート11を形成する樹脂の融点以下の温度である。
【0070】
そのため、フィルムシート11と口栓とをヒートシールする際、フィルムシート11を形成する樹脂の融点と近い温度で加熱してヒートシールできる。その結果、フィルムシート11に過剰な熱量が加わることが無く、フィルムシート11にシワが発生せず、口栓とフィルムシート11との間に隙間が生じるのを抑制できる。また、ポリエチレン樹脂等の単一素材を用いたフィルムシート11でも口栓とフィルムシート11とを十分にヒートシールできるため、リサイクル性に優れた口栓付きパウチを提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
100 口栓付きパウチ
11 フィルムシート
20 口栓
20a 本体部
21 口部
22s 溶着部
S1 口栓供給工程
S3 ヒートシール工程
図1
図2
図3
図4
図5