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特開2024-63428信頼性評価装置、信頼性評価方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063428
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】信頼性評価装置、信頼性評価方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/36 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
G06F11/36 196
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171368
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊作
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042HH07
5B042MA08
5B042MA14
5B042MC30
5B042MC32
(57)【要約】
【課題】評価対象システムを構成する構成要素のそれぞれが様々な故障要因によって故障することを考慮して、システム全体の信頼性を評価する装置を提供する。
【解決手段】信頼性評価装置は、評価対象システムの信頼性ブロック図と、前記構成要素と故障要因との対応関係を定めた影響マトリクスと、を取得し、影響マトリクスに基づいて、構成要素別に故障要因を直列に接続した構成要素別故障要因ブロック線図を生成し、構成要素別故障要因ブロック線図を、信頼性ブロック図の対応するブロックに関連付けた事象別信頼ブロック図を生成し、システムを所定の運用時間にわたって運用するシミュレーションを実行し、シミュレーション中に故障要因を発生させつつ、当該故障要因によってシステムが停止するかどうかを事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、システムが停止する場合のシステム停止時間と運用時間に基づいてシステムの信頼性を評価する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象のシステムを構成する構成要素のそれぞれをブロックとする信頼性ブロック図と、前記構成要素と故障要因との対応関係を定めた影響マトリクスと、を取得する入力部と、
前記影響マトリクスに基づいて、前記構成要素別に当該構成要素の故障要因を直列に接続した構成要素別故障要因ブロック線図を生成し、生成した前記構成要素別故障要因ブロック線図を、前記信頼性ブロック図における当該構成要素別故障要因ブロック線図に対応するブロックに関連付けた事象別信頼ブロック図を生成する事象別信頼ブロック生成部と、
前記システムを所定の運用時間にわたって運用するシミュレーションを実行し、前記シミュレーション中に所定の発生確率に基づいて前記構成要素別の前記故障要因を発生させつつ、当該故障要因によって前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合の前記システムの停止時間と前記運用時間とに基づいて、前記システムの信頼性を評価する信頼性評価部と、
を備える信頼性評価装置。
【請求項2】
前記構成要素別、前記故障要因別の故障の発生実績に基づいて、前記構成要素別、前記故障要因別に前記故障要因の発生頻度を算出する故障要因発生頻度算出部、
をさらに備え、
前記信頼性評価部は、前記発生頻度に基づいて、前記構成要素別、前記故障要因別に前記発生確率を設定する、
請求項1に記載の信頼性評価装置。
【請求項3】
前記信頼性評価部は、前記シミュレーション中に前記故障要因が発生する度に、前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合、前記故障要因が発生した前記構成要素に基づいて前記システムの停止時間を算出し、算出した前記停止時間を積算した前記運用時間における総停止時間と前記運用時間とに基づいて前記システムの可動率を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の信頼性評価装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記構成要素別、前記故障要因別に深刻度を定めた深刻度マトリクスと、前記構成要素別、前記深刻度別に故障からの復旧に要する時間である復旧時間を定めた復旧時間マトリクスとを取得し、
前記信頼性評価部は、前記シミュレーション中に前記故障要因が発生する度に、前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合、前記深刻度マトリクスに基づいて前記深刻度を算出し、前記復旧時間マトリクスと算出した前記深刻度に基づいて、前記復旧時間を算出し、算出した前記復旧時間を積算した前記運用時間における総停止時間と前記運用時間とに基づいて前記システムの可動率を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の信頼性評価装置。
【請求項5】
前記信頼性評価部は、前記シミュレーション中に前記故障要因が発生する度に、前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合、前記故障要因が発生した前記構成要素に基づいて所定の復旧コストを算出し、算出した前記復旧コストを積算して、前記運用時間における総復旧コストを算出する、
請求項1又は請求項2に記載の信頼性評価装置。
【請求項6】
前記入力部は、前記構成要素別、前記故障要因別に深刻度を定めた深刻度マトリクスと、前記構成要素別、前記深刻度別に故障からの復旧コストを定めたコストマトリクスとを取得し、
前記信頼性評価部は、前記シミュレーション中に前記故障要因が発生する度に、前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合、前記深刻度マトリクスに基づいて深刻度を算出し、前記コストマトリクスと算出した前記深刻度に基づいて、前記復旧コストを算出し、算出した前記復旧コストを積算して、前記運用時間における総復旧コストを算出する、
請求項1又は請求項2に記載の信頼性評価装置。
【請求項7】
評価対象のシステムを構成する複数の構成要素のそれぞれをブロックとする信頼性ブロック図と、前記構成要素と故障要因との対応関係を定めた影響マトリクスと、を取得するステップと、
前記影響マトリクスに基づいて、前記構成要素別に当該構成要素の故障要因を直列に接続した構成要素別故障要因ブロック線図を生成し、生成した前記構成要素別故障要因ブロック線図を、前記信頼性ブロック図における前記構成要素別故障要因ブロック線図に対応するブロックに関連付けた事象別信頼ブロック図を生成するステップと、
前記システムを所定の運用時間にわたって運用するシミュレーションを実行し、前記シミュレーション中に所定の発生確率に基づいて前記構成要素別の前記故障要因を発生させつつ、当該故障要因によって前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合の前記システムの停止時間と前記運用時間とに基づいて、前記システムの信頼性を評価するステップと、
を有する信頼性評価方法。
【請求項8】
コンピュータに、
評価対象のシステムを構成する複数の構成要素のそれぞれをブロックとする信頼性ブロック図と、前記構成要素と故障要因との対応関係を定めた影響マトリクスと、を取得するステップと、
前記影響マトリクスに基づいて、前記構成要素別に当該構成要素の故障要因を直列に接続した構成要素別故障要因ブロック線図を生成し、生成した前記構成要素別故障要因ブロック線図を、前記信頼性ブロック図における前記構成要素別故障要因ブロック線図に対応するブロックに関連付けた事象別信頼ブロック図を生成するステップと、
前記システムを所定の運用時間にわたって運用するシミュレーションを実行し、前記シミュレーション中に所定の発生確率に基づいて前記構成要素別の前記故障要因を発生させつつ、当該故障要因によって前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合の前記システムの停止時間と前記運用時間とに基づいて、前記システムの信頼性を評価するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信頼性評価装置、信頼性評価方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の構成要素からなるシステムの系統図に基づいて、構成要素間の関係を表す信頼性ブロック図を作成し、構成要素毎に故障確率等を設定して、シミュレーションによりシステム全体の稼動率を評価する方法が開示されている。特許文献1では、構成要素のそれぞれに初期故障係数、偶発故障係数、経年劣化係数を設定して、初期故障率、偶発故障率、経年劣化故障率を算出し、これらを合計することによって、各構成要素の故障率を求め、各構成要素の故障率からシステム全体の稼動率を算出している。特許文献1では、構成要素の稼働時間に応じて、初期故障率(稼働初期)、偶発故障率(稼働中期)、経年劣化故障率(稼働後期)を算出し、各時期の故障率をワイブル曲線でモデル化している(特許文献1の図7)。
【0003】
特許文献1では、例えば、稼働初期の故障要因として初期故障のみを想定しており、他の要因による故障を想定しない。しかし、システムの構成要素は、複数の要因によって故障しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6251201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各構成要素が複数の故障要因によって故障が発生しうる場合に、各構成要素が様々な故障要因によって故障することを考慮に入れて、システム全体の信頼性を評価する方法が求められている。
【0006】
本開示は、上記課題を解決することができる信頼性評価装置、信頼性評価方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の信頼性評価装置は、評価対象のシステムを構成する構成要素のそれぞれをブロックとする信頼性ブロック図と、前記構成要素と故障要因との対応関係を定めた影響マトリクスと、を取得する入力部と、前記影響マトリクスに基づいて、前記構成要素別に当該構成要素の故障要因を直列に接続した構成要素別故障要因ブロック線図を生成し、生成した前記構成要素別故障要因ブロック線図を、前記信頼性ブロック図における当該構成要素別故障要因ブロック線図に対応するブロックに関連付けた事象別信頼ブロック図を生成する事象別信頼ブロック生成部と、前記システムを所定の運用時間にわたって運用するシミュレーションを実行し、前記シミュレーション中に所定の発生確率に基づいて前記構成要素別の前記故障要因を発生させつつ、当該故障要因によって前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合の前記システムの停止時間と前記運用時間とに基づいて、前記システムの信頼性を評価する信頼性評価部と、を備える。
【0008】
本開示の信頼性評価方法は、評価対象のシステムを構成する複数の構成要素のそれぞれをブロックとする信頼性ブロック図と、前記構成要素と故障要因との対応関係を定めた影響マトリクスと、を取得するステップと、前記影響マトリクスに基づいて、前記構成要素別に当該構成要素の故障要因を直列に接続した構成要素別故障要因ブロック線図を生成し、生成した前記構成要素別故障要因ブロック線図を、前記信頼性ブロック図における前記構成要素別故障要因ブロック線図に対応するブロックに関連付けた事象別信頼ブロック図を生成するステップと、前記システムを所定の運用時間にわたって運用するシミュレーションを実行し、前記シミュレーション中に所定の発生確率に基づいて前記構成要素別の前記故障要因を発生させつつ、当該故障要因によって前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合の前記システムの停止時間と前記運用時間とに基づいて、前記システムの信頼性を評価するステップと、を有する。
【0009】
本開示のプログラムは、コンピュータに、評価対象のシステムを構成する複数の構成要素のそれぞれをブロックとする信頼性ブロック図と、前記構成要素と故障要因との対応関係を定めた影響マトリクスと、を取得するステップと、前記影響マトリクスに基づいて、前記構成要素別に当該構成要素の故障要因を直列に接続した構成要素別故障要因ブロック線図を生成し、生成した前記構成要素別故障要因ブロック線図を、前記信頼性ブロック図における前記構成要素別故障要因ブロック線図に対応するブロックに関連付けた事象別信頼ブロック図を生成するステップと、前記システムを所定の運用時間にわたって運用するシミュレーションを実行し、前記シミュレーション中に所定の発生確率に基づいて前記構成要素別の前記故障要因を発生させつつ、当該故障要因によって前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合の前記システムの停止時間と前記運用時間とに基づいて、前記システムの信頼性を評価するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上述の信頼性評価装置、信頼性評価方法及びプログラムによれば、評価対象のシステムについて、システムを構成する複数の構成要素のそれぞれが様々な故障要因によって故障することを考慮して、システム全体の信頼性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】各実施形態に係る信頼性評価装置の一例を示すブロック図である。
図2A】第一実施形態に係る信頼性ブロック図の一例を示す第1の図である。
図2B】第一実施形態に係る信頼性ブロック図の一例を示す第2の図である。
図3】第一実施形態に係る構成要素と故障要因の影響マトリクスの一例を示す図である。
図4A】第一実施形態に係る事象別信頼性ブロック図のサブダイアグラムの一例を示す第1図である。
図4B】第一実施形態に係る事象別信頼性ブロック図のサブダイアグラムの一例を示す第2図である。
図5A】第一実施形態に係る事象別信頼性ブロック図の一例を示す第1図である。
図5B】第一実施形態に係る事象別信頼性ブロック図の一例を示す第2図である。
図6A】第一実施形態に係る故障事例の入力データの一例を示す図である。
図6B】第一実施形態に係る故障事例集計時運用期間の入力データの一例を示す図である。
図6C】第一実施形態に係る平均復旧時間の入力データの一例を示す図である。
図6D】第一実施形態に係る平均復旧コストの入力データの一例を示す図である。
図7】第一実施形態に係る要因発生頻度情報の一例を示す図である。
図8】第一実施形態に係るシミュレーション結果の一例を示す図である。
図9】第一実施形態に係る信頼性評価処理の一例を示すフローチャートである。
図10A】第二実施形態に係る構成要素と故障要因の深刻度マトリクスの一例を示す図である。
図10B】第二実施形態に係る構成要素と深刻度のコストマトリクスの一例を示す図である。
図11】第二実施形態に係る要因発生頻度情報の一例を示す図である。
図12】第二実施形態に係るシミュレーション結果の一例を示す図である。
図13】第二実施形態に係る構成要素と深刻度の復旧時間マトリクスの一例を示す図である。
図14】第二実施形態に係る要因発生頻度情報の一例を示す図である。
図15】第二実施形態に係るシミュレーション結果の一例を示す図である。
図16】各実施形態に係る信頼性評価装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
以下、本開示の信頼性評価方法について図面を参照して説明する。
(構成)
図1は、各実施形態に係る信頼性評価装置の一例を示すブロック図である。信頼性評価装置100は、不図示のシステムαの構成要素が様々な故障要因によって故障するパターンとその発生確率を考慮して、システムα全体の信頼性(可動率)を評価する。
信頼性評価装置100は、1台又は複数台のコンピュータによって構成される。図示するように信頼性評価装置100は、入力部101と、信頼性ブロック記憶部102と、マトリクス記憶部103と、事象別信頼ブロック生成部104と、故障要因発生頻度算出部105と、可動率算出部106と、出力部107と、を備える。
【0013】
入力部101は、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタン、各種入力用インタフェース等の入力装置を用いて構成され、信頼性評価に必要な様々な情報を取得する。例えば、入力部101は、評価対象のシステムαの信頼性ブロック図(図2A図2B)、構成要素と故障要因の影響マトリクス(図3)、故障事例(図6A)、故障事例集計時運用期間(図6B)、平均復旧時間(図6C)、平均復旧コスト(図6D)等の情報を取得する。
【0014】
信頼性ブロック記憶部102は、入力部101が取得した信頼性ブロック図を記憶する。信頼性ブロック図の一例を図2A図2Bに示す。図2Aに示す信頼性ブロック図2aは、評価対象のシステムαが、構成要素A~Bで構成され、構成要素Aと構成要素Bのうち何れかが故障するとシステム停止に至ることを示している。図2Bに示す信頼性ブロック図2bは、システムαが、構成要素A~Bで構成され、構成要素Bについては2重に冗長化されており、構成要素Aが故障するか、2つの構成要素Bの両方が故障するとシステム停止に至ることを示している。
【0015】
マトリクス記憶部103は、入力部101が取得した構成要素と故障要因の影響マトリクスを記憶する。構成要素と故障要因影響マトリクスの一例を図3に示す。構成要素と故障要因の影響マトリクス3aは、システムαの構成要素Aが、故障要因1又は故障要因3によって故障すること、構成要素Bが、故障要因1又は故障要因2によって故障すること、を示している。例えば、システムαが信頼性ブロック図2aの構成の場合、構成要素Aに故障要因1又は故障要因3が発生するか、又は、構成要素Bに故障要因1又は故障要因2が発生すればシステムαは停止する。
【0016】
事象別信頼ブロック生成部104は、信頼性ブロック記憶部102が記憶する信頼性ブロック図2a,2bとマトリクス記憶部103が記憶する影響マトリクス3aに基づいて、事象別信頼ブロック図を生成する。まず、事象別信頼ブロック生成部104は、影響マトリクス3aに基づいて、構成要素別に、故障要因のサブダイアグラムを生成する。サブダイアグラムの表記は、信頼性ブロック図と類似している。例えば、構成要素Aに故障要因1又は故障要因3が発生すると、構成要素Aは故障する。このことを、サブダイアグラムでは、故障要因1と故障要因3を直列に接続した図で表す。構成要素Aのサブダイアグラム4aを図4Aに示す。サブダイアグラム4aは、故障要因1と故障要因3の何れかが発生すれば構成要素Aが故障することを表している。構成要素Bのサブダイアグラム4bを図4Bに示す。サブダイアグラム4bは、故障要因1と故障要因2の何れかが発生すれば構成要素Bが故障することを表している。構成要素別に故障要因のサブダイアグラムを生成すると、事象別信頼ブロック生成部104は、生成したサブダイアグラムを、対応する構成要素のブロックに関連付けて、事象別信頼ブロック図を生成する。信頼性ブロック図2aの事象別信頼ブロック図5aの一例を図5Aに示し、信頼性ブロック図2bの事象別信頼ブロック図5bの一例を図5Bに示す。事象別信頼ブロック図は、例えば、信頼性ブロック図の各構成要素の中に、その構成要素に関する故障要因のサブダイアグラムが含まれる入れ子構造となる。サブダイアグラム4a,4bは構成要素別故障要因ブロック線図の一例である。
【0017】
故障要因発生頻度算出部105は、入力部101が取得した故障事例、故障事例集計時運用期間の入力データを用いて、影響マトリクス3aに基づく構成要素別、故障要因別に、故障の発生頻度(例えば、後述するMTBF)を算出し、入力部101が取得した平均復旧時間、平均復旧コストと合わせて要因発生頻度情報(図7)を算出する。
【0018】
入力部101が取得する故障事例データ6aの一例を図6Aに示す。故障事例データ6aには、構成要素A~Bの故障の実績が記録されている。故障事例データ6aには、運転期間中のある日時に故障要因3によって構成要素Aが故障し、別の日時に故障要因3によって構成要素Aが故障したことが記録され、構成要素Bについても故障要因2による故障、故障要因1による故障が発生したことが記録されている。入力部101が取得する故障事例集計時運用期間データ6bの一例を図6Bに示す。故障事例集計時運用期間データ6bには、構成要素A~Bそれぞれの運用期間が記録されている。故障事例集計時運用期間データ6bの場合、構成要素Aの運用期間が100万時間で、構成要素Bの運用期間が200万時間であることが記録されている。入力部101が取得する平均復旧時間データ6cの一例を図6Cに示す。平均復旧時間データ6cには、構成要素A~BそれぞれのMTTR(Mean Time To Repair:平均復旧時間)が記録されている。平均復旧時間データ6cの場合、構成要素AのMTTRが100時間で、構成要素BのMTTRが50時間である。入力部101が取得する平均復旧コストデータ6dの一例を図6Dに示す。平均復旧コストデータ6dには、構成要素A~Bそれぞれの復旧に要するコストが記録されている。平均復旧コストデータ6dの場合、構成要素Aの平均復旧コストが200万円、構成要素Bの平均復旧コストが50万円である。
【0019】
故障要因発生頻度算出部105は、故障事例データ6aと故障事例集計時運用期間データ6bからMTBF(Mean Time Between Failure:平均故障間隔)を算出する。例えば、故障事例データ6aに構成要素Aが20回、故障要因1によって故障したことが記録されている場合、故障要因発生頻度算出部105は、運用期間(100万時間)÷故障回数(20回)=5万時間によって、構成要素Aの故障要因1によるMTBF=5万時間を算出する。同様にして、故障要因発生頻度算出部105は、構成要素Aの故障要因3によるMTBF、構成要素Bの故障要因1によるMTBF、構成要素Bの故障要因2によるMTBFを算出する。故障要因発生頻度算出部105は、算出した構成要素別、故障要因別のMTBFと、平均復旧時間データ6c、平均復旧コストデータ6dを合わせて、図7に例示する要因発生頻度情報7を算出し、要因発生頻度情報7を記憶する。
【0020】
可動率算出部106は、構成要素Aと構成要素Bがそれぞれ故障要因1,3と故障要因1,2によって故障することと、それぞれの故障要因の発生確率を考慮して、モンテカルロシミュレーションによりシステムαの稼働状態を模擬し、システムαの信頼性を評価する。例えば、可動率算出部106は、故障要因発生頻度算出部105が算出した構成要素別、故障要因別のMTBFに基づいて、構成要素別、故障要因別の故障要因の発生確率を示す確率分布を算出する。そして、可動率算出部106は、構成要素別の各故障要因が算出した確率分布に従って発生するとして、所定のシミュレーション運用期間(例えば、20万時間)だけシステムαを運用するシミュレーション(システムαの稼働状態の模擬)を所定回数(例えば1000回)実行する。1回のシミュレーションでは、構成要素Aでの故障要因1の発生、構成要素Aでの故障要因3の発生、構成要素Bでの故障要因1の発生、構成要素Bでの故障要因2の発生が、それぞれの確率分布に基づいて確率的に模擬される。可動率算出部106は、事象別信頼ブロック生成部104が生成した事象別信頼ブロック図5a等に基づいて、システムαを停止させる構成要素と故障要因の組合せを算出し、算出した組合せの事象が発生すると、システムαが停止したとして、その停止時間と復旧に要するコストを算出する。例えば、図5Aに例示する事象別信頼ブロック図5aの場合、可動率算出部106は、構成要素Aに故障要因1又は故障要因3が発生するか、又は、構成要素Bに故障要因1又は故障要因2が発生した場合にシステムαが停止すると判定する。図5Bに例示する事象別信頼ブロック図5bの場合、可動率算出部106は、構成要素Aに故障要因1又は故障要因3が発生するか、又は、2つの構成要素Bに同時に故障要因1又は故障要因2が発生(一方に故障要因1が発生し、他方に故障要因2が発生する場合を含む。)した場合にシステムαが停止すると判定する。可動率算出部106は、システムαが停止したと判定する度に、要因発生頻度情報7(図7)のMTTRに基づいて、システムαの停止時間を計算し、1回のシミュレーションで発生したシステムαの停止回数分、計算した停止時間を積算して総故障停止時間を算出する。同様に可動率算出部106は、1回のシミュレーションで発生したシステムαの停止回数分だけ、各停止に対する復旧に要するコストを積算し、総復旧コストを算出する。図8に、1000回のシミュレーション結果を示す。図8のシミュレーション結果8は、システムαが図2Aの信頼性ブロック図2aで表せる場合のシミュレーション結果である。シミュレーション結果8の1行目(「No」=1)は、1回目のシミュレーション結果を示している。この例の場合、シミュレーション運用期間中に、構成要素Aに故障要因3が1回発生してシステムαが1回停止し、構成要素Bに故障要因1が2回発生してシステムαが2回停止したことを表している。構成要素AのMTTRは100時間(図7の「MTTR」)、構成要素BのMTTRは50時間であるから、総故障停止時間は、100時間×1+50時間×2=200時間となる。構成要素Aの復旧コストは200万円(図7の「復旧コスト」)、構成要素Bの復旧コストは50万円であるから、総復旧コストは、200万円×1+50万円×2=300万円となる。また、1回のシミュレーションにおける運用期間20万時間、総故障停止時間200時間より、システムαの可動率は、((20万時間-200時間)÷20万時間)×100=99.90%となる。例えば、可動率算出部106は、1000回のシミュレーション結果を集計し、各回に計算した総故障停止時間、総復旧コスト、可動率の平均値を算出し、平均故障停止時間(例えば、270時間)、平均復旧コスト(例えば、430万円)、平均可動率(例えば、99.87%)を算出する。
【0021】
出力部107は、可動率算出部106が算出した平均故障停止時間、平均復旧コスト、平均可動率を表示装置、他装置、電子ファイル等へ出力する。
【0022】
(動作)
次に第一実施形態に係る信頼性評価処理の流れについて説明する。
図9は、第一実施形態に係る信頼性評価処理の一例を示すフローチャートである。
入力部101が、信頼性ブロック図、構成要素と故障要因の影響マトリクス、故障事例データ、故障事例集計時運用期間データ、平均復旧時間データ、平均復旧コストデータ等の情報を取得する(ステップS1)。入力部101は、信頼性ブロック図2a等を信頼性ブロック記憶部102へ出力する。信頼性ブロック記憶部102は、信頼性ブロック図2a等を記憶する。入力部101が、影響マトリクス3aをマトリクス記憶部103へ出力する。マトリクス記憶部103は取得した影響マトリクス3aを記憶する。入力部101は、故障事例データ6a、故障事例集計時運用期間データ6b、平均復旧時間データ6c、平均復旧コストデータ6dを故障要因発生頻度算出部105へ出力する。故障要因発生頻度算出部105はこれらのデータを記憶する。
【0023】
次に事象別信頼ブロック生成部104が、信頼性ブロック記憶部102が記憶する信頼性ブロック図2a等とマトリクス記憶部103が記憶する影響マトリクス3aに基づいて事象別信頼ブロック図5a等を生成する(ステップS2)。
【0024】
次に故障要因発生頻度算出部105が、故障事例データ6a、故障事例集計時運用期間データ6b、平均復旧時間データ6c、平均復旧コストデータ6dに基づいて要因発生頻度情報7を算出する(ステップS3)。
ステップS2とステップS3の実行順は逆でもよいし、両方を同時並行的に行ってもよい。
【0025】
次に可動率算出部106が、モンテカルロシミュレーションを実行する(ステップS4)。可動率算出部106は、要因発生頻度情報7の「MTBF」に基づいて、構成要素別、故障要因別の故障発生確率をランダムに設定し、設定した確率で各構成要素に故障を生じさせる故障要因が発生したときのシステムαの停止を、事象別信頼ブロック図5a等に基づいて判定する。システムαが停止した場合には、可動率算出部106は、その停止時間、復旧コストを要因発生頻度情報7の「MTTR」と「復旧コスト」に基づいて算出し、それらを累積し、総故障停止時間、総復旧コストを算出する。また、可動率算出部106は、シミュレーション運用期間と総故障停止時間に基づいてシステムαの可動率を算出する。可動率算出部106は、このようなシミュレーションを所定回数だけ繰り返し実行する。
【0026】
シミュレーションを所定回数実行し終えると、次に可動率算出部106は、システムαの信頼性を評価する(ステップS5)。例えば、可動率算出部106は、各回のシミュレーションで得られた総故障停止時間と総復旧コストと可動率をそれぞれ平均して、平均故障停止時間と平均復旧コストと平均可動率を算出する。出力部107は、平均故障停止時間、平均復旧コスト、平均可動率を表示装置等へ出力する。
【0027】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、事象別信頼ブロック図を生成することで、構成要素と故障要因の組合せを一つのブロックとして、システム停止と各ブロックの関係性を整理する。これにより、各構成要素に故障要因が発生したときに、システム停止に至るかどうかを判断しやすくなる。また、構成要素別、故障要因別の故障発生実績に基づいて、構成要素別、故障要因別(ブロック単位)に故障頻度や故障要因の発生確率を算出することができ、その算出結果を有効に活用することができる。即ち、構成要素別、故障要因別に算出した発生確率を設定し、設定した発生確率に基づいて故障要因を発生させつつ、システムαの運用をシミュレーションし、可動率を算出する。これにより、システムαについて、各構成要素がそれぞれの発生確率で発生する様々な故障要因によって故障することを考慮に入れて信頼性評価を行うことができる。
【0028】
なお、上記の実施形態では、構成要素Aと構成要素Bに共通する故障要因1を各構成要素別に発生する事象として扱ったが、構成要素の何れかで故障要因1が発生すると、他の構成要素にもその影響が波及して故障するような性質を持つようなものとしてもよい。こうすることで、例えば、構成要素Aで故障要因1が発生すると構成要素Aだけではなく構成要素Bも故障するといった事象や、故障要因1は構成要素A、Bで同時に発生し、構成要素A、Bを故障させるといった事象を表現することができる。
【0029】
<第二実施形態>
次に、図10A図12を参照して、第二実施形態に係る信頼性評価方法について説明する。第一実施形態では、1つの構成要素の復旧コストを平均復旧コストデータ6dに基づいて1つの値としたが、発生する故障要因の種類と構成要素の組合せによって被害が異なる場合がある。第二実施形態では、故障の深刻度を考慮し、より精緻に復旧コストを評価することを可能とする。
【0030】
(構成)
入力部101は、影響マトリクス3aと平均復旧コストデータ6dに代えて、図10Aに例示する構成要素と故障要因の深刻度マトリクス10aと、図10Bに例示する構成要素と深刻度のコストマトリクス10bを取得する。構成要素と故障要因の深刻度マトリクス10aには、どの故障要因がどの構成要素の故障要因となるかだけではなく、故障の深刻度が定義されている。例えば、深刻度マトリクス10aは、構成要素Aが故障要因1又は故障要因3によって故障し、故障要因1による故障は故障の深刻度が大きく、故障要因3による故障は故障の深刻度が中程度であること、構成要素Bが故障要因1又は故障要因2によって故障し、故障要因1による故障は深刻度が小さく、故障要因2による故障は深刻度が大きいことを示している。コストマトリクス10bには、構成要素別、深刻度別の復旧コストが定義されている。例えば、深刻度が大の場合、構成要素Aの復旧コストは1000万円、構成要素Bの復旧コストは100万円である。
【0031】
マトリクス記憶部103は、深刻度マトリクス10aとコストマトリクス10bを記憶する。
事象別信頼ブロック生成部104は、影響マトリクス3aに代えて、深刻度マトリクス10aに基づいて事象別信頼ブロック図5a等を生成する。事象別信頼ブロック生成部104は、深刻度マトリクス10aにおいて「大」、「中」、「小」の何れかが設定されている場合、その故障要因によって構成要素が故障すると見做して、事象別信頼ブロック図を生成する。
【0032】
故障要因発生頻度算出部105は、第一実施形態と同様にして要因発生頻度情報を算出するが、復旧コストについては、深刻度マトリクス10aとコストマトリクス10bに基づいて、構成要素別、発生要因別に復旧コストを算出する。例えば、構成要素Aの故障要因1が発生した場合の復旧コストは、深刻度マトリクス10aを参照すると深刻度が「大」である。コストマトリクス10bを参照すると、深刻度「大」の場合の構成要素Aの復旧コストは、1000千万となる。故障要因発生頻度算出部105は、深刻度マトリクス10aとコストマトリクス10bに基づいて、構成要素別、発生要因別に復旧コストを算出し、図11に例示する要因発生頻度情報11を算出する。図7の要因発生頻度情報7と比較して「復旧コスト」の値が変更されている。
【0033】
可動率算出部106は、第一実施形態と同様にモンテカルロシミュレーションを実行するが、システムαが停止した際の復旧コストを、深刻度別の復旧コストが設定された要因発生頻度情報11に基づいて算出する。第二実施形態に係るシミュレーション結果を図12に示す。第一実施形態のシミュレーション結果8とシミュレーション結果12の違いは、「総復旧コスト」である。例えば、シミュレーション結果12の1行目(「No」=1)は1回目のシミュレーション結果を示しているが、故障要因3による構成要素Aの故障が1回、故障要因1による構成要素Bの故障が2回発生している。可動率算出部106は、図11の要因発生頻度情報11を参照して、故障要因3による構成要素Aの故障に要する復旧コスト1000万円、故障要因1による構成要素Bの故障に要する復旧コスト0万円を読み出し、1回目のシミュレーションに関する総復旧コストとして1000万円×1回+0円×2回=1000万円を算出する。
【0034】
第二実施形態に係る信頼性ブロック記憶部102、出力部107の機能については、第一実施形態と同様である。
【0035】
(動作)
次に第二実施形態に係る信頼性評価処理の流れについて、図9を援用して説明する。第一実施形態と同様の処理については説明を省略する。
入力部101が、信頼性ブロック図2a、深刻度マトリクス10a、コストマトリクス10b、故障事例データ6a、故障事例集計時運用期間データ6b、平均復旧時間データ6c等の情報を取得する(ステップS1)。マトリクス記憶部103は深刻度マトリクス10a、コストマトリクス10bを記憶する。
【0036】
次に事象別信頼ブロック生成部104が、信頼性ブロック記憶部102が記憶する信頼性ブロック図2aとマトリクス記憶部103が記憶する深刻度マトリクス10aに基づいて事象別信頼ブロック図5aを生成する(ステップS2)。
【0037】
次に故障要因発生頻度算出部105が、故障事例データ6a、故障事例集計時運用期間データ6b、平均復旧時間データ6c、深刻度マトリクス10a、コストマトリクス10bに基づいて要因発生頻度情報11を算出する(ステップS3)。
【0038】
次に可動率算出部106が、モンテカルロシミュレーションを実行する(ステップS4)。可動率算出部106は、要因発生頻度情報11の「復旧コスト」に基づいて、総復旧コストを算出する。
【0039】
次に可動率算出部106は、システムαの信頼性を評価する(ステップS5)。出力部107は、平均可動率、平均故障停止時間、平均復旧コストを表示装置等へ出力する。
【0040】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、第一実施形態の効果に加え、復旧コストをパラメータ化してシミュレーションすることにより、構成要素別、故障要因別の故障実体に即した復旧コストを算出することができる。
【0041】
<第三実施形態>
次に、図13図15を参照して、第三実施形態に係る信頼性評価方法について説明する。第一、第二実施形態では、1つの構成要素の復旧時間を平均復旧時間データ6cに基づいて1つの値としたが、発生する故障要因の種類と構成要素の組合せによって被害が異なる場合がある。第三実施形態では、故障の深刻度を考慮し、より精緻に復旧時間を評価することを可能とする。第三実施形態は、第一実施形態、第二実施形態の何れとも組み合わせることが可能である。以下では、第一実施形態との違いを説明する。
【0042】
(構成)
入力部101は、影響マトリクス3aと平均復旧時間データ6cに代えて、第二実施形態で説明した深刻度マトリクス10aと、図13に例示する構成要素と深刻度の復旧時間マトリクス13を取得する。深刻度マトリクス10aには、どの故障要因がどの構成要素の故障要因となるかだけではなく、故障の深刻度が定義されている。復旧時間マトリクス13には、構成要素別、深刻度別の復旧時間が定義されている。例えば、深刻度が大の場合、構成要素Aの復旧時間は30日、構成要素Bの復旧時間は5日である。
【0043】
マトリクス記憶部103は、深刻度マトリクス10aと復旧時間マトリクス13を記憶する。
事象別信頼ブロック生成部104は、第二実施形態と同様に、影響マトリクス3aに代えて、深刻度マトリクス10aに基づいて事象別信頼ブロック図を生成する。
【0044】
故障要因発生頻度算出部105は、第一実施形態と同様にして要因発生頻度情報を算出するが、復旧時間については、深刻度マトリクス10aと復旧時間マトリクス13に基づいて、構成要素別、発生要因別に復旧時間を算出する。例えば、構成要素Aの故障要因1が発生した場合の復旧時間は、深刻度マトリクス10aを参照すると深刻度が「大」であるから、復旧時間マトリクス13から深刻度「大」の場合の構成要素Aの復旧時間は30日となる。故障要因発生頻度算出部105は、深刻度マトリクス10aと復旧時間マトリクス13に基づいて、構成要素別、発生要因別に復旧時間を算出し、図14に例示する要因発生頻度情報14を算出する。図7の要因発生頻度情報7と比較して、「MTTR」の値が変更されている。
【0045】
可動率算出部106は、第一実施形態と同様にモンテカルロシミュレーションを実行するが、システムαが停止した際の復旧時間を、深刻度別の復旧時間が設定された要因発生頻度情報14に基づいて算出する。第三実施形態に係るシミュレーション結果を図15に示す。第一実施形態のシミュレーション結果8とシミュレーション結果15の違いは、「総故障停止時間」と「可動率」である。例えば、シミュレーション結果15の1行目(「No」=1)は1回目のシミュレーション結果を示しているが、故障要因3による構成要素Aの故障が1回、故障要因1による構成要素Bの故障が2回発生している。可動率算出部106は、図14の要因発生頻度情報14を参照して、故障要因3による構成要素Aの故障に要する復旧時間120時間、故障要因1による構成要素Bの故障に要する復旧時間0時間を読み出し、1回目のシミュレーションに関する総故障停止時間として120時間×1回+0時間×2回=120時間を算出する。また、可動率算出部106は、((20万時間-120時間)÷20万時間)×100=99.94%を算出する。
【0046】
第三実施形態に係る信頼性ブロック記憶部102、出力部107の機能については、第一実施形態と同様である。
【0047】
(動作)
次に第三実施形態に係る信頼性評価処理の流れについて、図9を援用して説明する。第一実施形態と同様の処理については説明を省略する。
入力部101が、信頼性ブロック図2a、深刻度マトリクス10a、復旧時間マトリクス13、故障事例データ6a、故障事例集計時運用期間データ6b、平均復旧時間データ6c等の情報を取得する(ステップS1)。マトリクス記憶部103は深刻度マトリクス10a、復旧時間マトリクス13を記憶する。
【0048】
次に事象別信頼ブロック生成部104が、信頼性ブロック記憶部102が記憶する信頼性ブロック図2aとマトリクス記憶部103が記憶する深刻度マトリクス10aに基づいて事象別信頼ブロック図5aを生成する(ステップS2)。
【0049】
次に故障要因発生頻度算出部105が、故障事例データ6a、故障事例集計時運用期間データ6b、平均復旧時間データ6c、深刻度マトリクス10a、復旧時間マトリクス13に基づいて要因発生頻度情報14を算出する(ステップS3)。
【0050】
次に可動率算出部106が、モンテカルロシミュレーションを実行する(ステップS4)。可動率算出部106は、要因発生頻度情報14の「MTTR」に基づいて、1回ごとのシミュレーションの総故障停止時間と可動率を算出する。次に可動率算出部106は、システムαの信頼性を評価する(ステップS5)。出力部107は、平均可動率、平均故障停止時間、平均復旧コストを表示装置等へ出力する。
【0051】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、第一実施形態の効果に加え、復旧時間をパラメータ化してシミュレーションすることにより、構成要素別、故障要因別の故障実体に即した復旧時間を算出することができる。
【0052】
図16は、実施形態に係る信頼性評価装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の信頼性評価装置100は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0053】
なお、信頼性評価装置100の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0054】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0055】
<付記>
各実施形態に記載の信頼性評価装置、信頼性評価方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0056】
(1)第1の態様に係る信頼性評価装置100は、評価対象のシステムを構成する構成要素のそれぞれをブロックとする信頼性ブロック図と、前記構成要素と故障要因の対応関係を定めた影響マトリクスと、を取得する入力部と、前記影響マトリクスに基づいて、前記構成要素別に当該構成要素の故障要因を直列に接続した構成要素別故障要因ブロック線図を生成し、生成した前記構成要素別故障要因ブロック線図を、前記信頼性ブロック図における当該構成要素別故障要因ブロック線図に対応するブロックに関連付けた事象別信頼ブロック図を生成する事象別信頼ブロック生成部と、前記システムを所定の運用時間にわたって運用するシミュレーションを実行し、前記シミュレーション中に所定の発生確率に基づいて前記構成要素別の前記故障要因を発生させつつ、当該故障要因によって前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合の前記システムの停止時間と前記運用時間とに基づいて、前記システムの信頼性を評価する信頼性評価部と、を備える。
これにより、評価対象のシステムについて、システムの構成要素それぞれが様々な故障要因によって故障することを考慮して、システム全体の信頼性を評価することができる。
【0057】
(2)第2の態様に係る信頼性評価装置100は、(1)の信頼性評価装置であって、前記構成要素別、前記故障要因別の故障の発生実績に基づいて、前記構成要素別、前記故障要因別に故障要因の発生頻度を算出する故障要因発生頻度算出部、をさらに備え、前記信頼性評価部は、前記発生頻度に基づいて、前記構成要素別、前記故障要因別に前記発生確率を設定する。
実績に基づく構成要素別、故障要因別に発生確率を設定することにより、精度の良い信頼性評価を実行することができる。
【0058】
(3)第3の態様に係る信頼性評価装置100は、(1)~(2)の信頼性評価装置であって、前記信頼性評価部は、前記シミュレーション中に前記故障要因が発生する度に、前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合、前記故障要因が発生した前記構成要素に基づいて前記システムの停止時間を算出し、算出した停止時間を積算した前記運用時間における総停止時間と前記運用時間とに基づいて前記システムの可動率を算出する。
これにより、可動率を算出してシステムの信頼性を評価することができる。
【0059】
(4)第4の態様に係る信頼性評価装置100は、(1)~(3)の信頼性評価装置であって、前記入力部は、前記構成要素別、前記故障要因別に深刻度を定めた深刻度マトリクスと、前記構成要素別、前記深刻度別に故障からの復旧に要する時間である復旧時間を定めた復旧時間マトリクスとを取得し、前記信頼性評価部は、前記シミュレーション中に前記故障要因が発生する度に、前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合、前記深刻度マトリクスに基づいて深刻度を算出し、前記復旧時間マトリクスと算出した前記深刻度に基づいて、前記復旧時間を算出し、算出した前記復旧時間を積算した前記運用時間における総停止時間と前記運用時間とに基づいて前記システムの可動率を算出する。
構成要素別、前記故障要因別の復旧時間を用いて総停止時間を算出することで、より実態に即した総停止時間を算出や可動率を算出することができる。
【0060】
(5)第5の態様に係る信頼性評価装置100は、(1)~(4)の信頼性評価装置であって、前記信頼性評価部は、前記シミュレーション中に前記故障要因が発生する度に、前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合、前記故障要因が発生した前記構成要素に基づいて所定の復旧コストを算出し、算出した前記復旧コストを積算して、前記運用時間における総復旧コストを算出する。
これにより、システムの信頼性とともに総復旧コストを算出することができる。
【0061】
(6)第6の態様に係る信頼性評価装置100は、(1)~(5)の信頼性評価装置であって、前記入力部は、前記構成要素別、前記故障要因別に深刻度を定めた深刻度マトリクスと、前記構成要素別、前記深刻度別に故障からの復旧コストを定めたコストマトリクスとを取得し、前記信頼性評価部は、前記シミュレーション中に前記故障要因が発生する度に、前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合、前記深刻度マトリクスに基づいて深刻度を算出し、前記コストマトリクスと算出した前記深刻度に基づいて、前記復旧コストを算出し、算出した前記復旧コストを積算して、前記運用時間における総復旧コストを算出する。
構成要素別、前記故障要因別の復旧コストを用いて総復旧コストを算出することで、より実態に即した総復旧コストを算出することができる。
【0062】
(7)第7の態様に係る信頼性評価方法は、評価対象のシステムを構成する複数の構成要素のそれぞれをブロックとする信頼性ブロック図と、前記構成要素と故障要因との対応関係を定めた影響マトリクスと、を取得するステップと、前記影響マトリクスに基づいて、前記構成要素別に当該構成要素の故障要因を直列に接続した構成要素別故障要因ブロック線図を生成し、生成した前記構成要素別故障要因ブロック線図を、前記信頼性ブロック図における前記構成要素別故障要因ブロック線図に対応するブロックに関連付けた事象別信頼ブロック図を生成するステップと、前記システムを所定の運用時間にわたって運用するシミュレーションを実行し、前記シミュレーション中に所定の発生確率に基づいて前記構成要素別の前記故障要因を発生させつつ、当該故障要因によって前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合の前記システムの停止時間と前記運用時間とに基づいて、前記システムの信頼性を評価するステップと、を有する。
【0063】
(8)第8の態様に係るプログラムは、コンピュータに、評価対象のシステムを構成する複数の構成要素のそれぞれをブロックとする信頼性ブロック図と、前記構成要素と故障要因との対応関係を定めた影響マトリクスと、を取得するステップと、前記影響マトリクスに基づいて、前記構成要素別に当該構成要素の故障要因を直列に接続した構成要素別故障要因ブロック線図を生成し、生成した前記構成要素別故障要因ブロック線図を、前記信頼性ブロック図における前記構成要素別故障要因ブロック線図に対応するブロックに関連付けた事象別信頼ブロック図を生成するステップと、前記システムを所定の運用時間にわたって運用するシミュレーションを実行し、前記シミュレーション中に所定の発生確率に基づいて前記構成要素別の前記故障要因を発生させつつ、当該故障要因によって前記システムが停止するかどうかを前記事象別信頼ブロック図に基づいて判定し、前記システムが停止すると判定した場合の前記システムの停止時間と前記運用時間とに基づいて、前記システムの信頼性を評価するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0064】
100・・・信頼性評価装置
101・・・入力部
102・・・信頼性ブロック記憶部
103・・・マトリクス記憶部
104・・・事象別信頼ブロック生成部
105・・・故障要因発生頻度算出部
106・・・可動率算出部
107・・・出力部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16