(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063432
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】レーザーモジュール、光学エンジンモジュール及びXRグラス
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02257 20210101AFI20240502BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H01S5/02257
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171374
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】福澤 英明
(72)【発明者】
【氏名】小巻 壮
(72)【発明者】
【氏名】アルダラン・ヘシュマティ
【テーマコード(参考)】
2H199
5F173
【Fターム(参考)】
2H199CA06
2H199CA29
2H199CA34
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA66
2H199CA70
2H199CA96
5F173MA10
5F173MC17
5F173MD64
5F173ME22
5F173ME32
5F173MF03
5F173MF40
(57)【要約】
【課題】小型化が可能であり、光軸合わせが実質的に不要なレーザーモジュールを提供することである。
【解決手段】本発明のレーザーモジュール1000は、レーザー光源60と、レーザー光源60を内部に収容すると共に、レーザー光源60から出射されたレーザー光Lが光学的に透過でき光透過窓101が壁部100aに設けられたパッケージ100と、パッケージ100の外側に設けられ、レーザー光Lの進行方向に配置して、レーザー光Lの通過面積を調整可能な出射光絞り200と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光源と、
前記レーザー光源を内部に収容すると共に、前記レーザー光源から出射されたレーザー光が光学的に透過できる光透過窓が壁部に設けられたパッケージと、
前記パッケージの内側又は外側に設けられ、前記レーザー光の進行方向に配置して、前記レーザー光の通過口面積を調整可能な出射光絞りと、を備える、レーザーモジュール。
【請求項2】
前記レーザー光源は、波長が380nm~800nmの複数の可視光レーザー光源である、請求項1に記載のレーザーモジュール。
【請求項3】
前記出射光絞りは複数の絞り羽根を有する、請求項1に記載のレーザーモジュール。
【請求項4】
前記出射光絞りは、絞り量を調整するように前記絞り羽根を可動させる調整つまみを有する、請求項3記載のレーザーモジュール。
【請求項5】
前記調整つまみを位置決めする位置決め機構を有する、請求項4記載のレーザーモジュール。
【請求項6】
前記複数の絞り羽根は、紙製又はプラスチック製である、請求項3に記載のレーザーモジュール。
【請求項7】
前記パッケージ内に、前記レーザー光源から出射されたレーザー光を導波する光導波路を含む光導波路層を備える、請求項1に記載のレーザーモジュール。
【請求項8】
前記レーザー光源が載置されたサブキャリアと、光導波路層が形成された基板とが金属接合されて一体化された状態で前記パッケージ内に収容されている、請求項1に記載のレーザーモジュール。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のレーザーモジュールと、
前記レーザーモジュールから出射された光を走査する光走査ミラーと、を備える、光学エンジンモジュール。
【請求項10】
請求項9に記載の光学エンジンモジュールを備える、XRグラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーモジュール、光学エンジンモジュール及びXRグラスに関する。
【背景技術】
【0002】
AR(Augmented Reality:拡張現実)グラス、VR(Virtual Reality:仮想現実)グラス等のXRグラスは小型のウェアラブルデバイスとして期待されている。ARグラス、VRグラスのようなウェアラブルデバイスにおいては通常の眼鏡型のサイズに各機能が収まるように小型化されることが普及に対するカギとなっている。
【0003】
また、この小型化によって、光導波路に光を導入する光出射器と光導波路の端部との間で光軸を合わせる調芯工程において、光導波路に結合されない光の成分が生じやすくなる。こうした光の成分は、光導波路素子内の光導波路以外の部分で伝搬し、端面で多重反射後、一部は光検出器に入力される、いわゆる、迷光が生じやすいという課題があった。光導波路素子内を伝搬する迷光は、光検出器の調芯を阻害し、接続損失増大や接続不良の原因となりうる。特に光源として可視光を用いる場合、光導波路が小さくなるため、迷光による影響が大きい。
【0004】
こうした光導波路素子内の迷光を光検出器に向かって出射させないために、例えば特許文献3では、光を導波している導波路部以外の位置に、光導波路層を貫く溝部を設け、この溝部の側面が、素子表面に垂直な面に対して傾斜している光集積回路素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0081530号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0150428号明細書
【特許文献3】特開平11-52154号公報
【特許文献4】特許第6369147号公報
【特許文献5】特許第6787397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示される技術では、迷光を阻止する溝部が基板の表面よりも上部に形成されているので、クラッド層を伝搬する迷光の遮断には効果があるものの、基板を伝搬する迷光を阻止することができないという課題があった。
【0007】
特許文献1、2で提案されているARグラス、VRグラス等のXRグラスでは、小型化が進んでおらず、また、光軸合わせが非常に複雑である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、小型化が可能であり、光軸合わせが実質的に不要なレーザーモジュール、光学エンジンモジュール及びXRグラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0010】
本発明の態様1に係るレーザーモジュールは、レーザー光源と、前記レーザー光源を内部に収容すると共に、前記レーザー光源から出射されたレーザー光が光学的に透過できる光透過窓が壁部に設けられたパッケージと、前記パッケージの内側又は外側に設けられ、前記レーザー光の進行方向に配置して、前記レーザー光の通過口面積を調整可能な出射光絞りと、を備える。
【0011】
本発明の態様2に係る光学エンジンモジュールは、態様1のレーザーモジュールと、前記レーザーモジュールから出射された光を走査する光走査ミラーと、を備える。
【0012】
本発明の態様3に係るXRグラスは、態様2の光学エンジンモジュールを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレーザーモジュールによれば、小型化が可能であり、光軸合わせが実質的に不要なレーザーモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係るレーザーモジュールの概念図であり、(a)は出射光絞りをパッケージの外側に取り付けた場合であり、(b)は出射光絞りをパッケージの内側に取り付けた場合である。
【
図2】一実施形態に係るレーザーモジュールの一例を示す平面模式図である。
【
図3】
図2に示すレーザーモジュールの側面図であり、内部が一部見えるように切り欠いている。
【
図4】出射光絞りの概要を示す平面模式図であり、(a)は最大に絞った場合であり、(b)は(a)の場合と(c)の場合の中間的な絞りの場合であり、(c)は最大に開いた場合である。
【
図5】位置決め機構が用いる代表的なプランジャーを示すものであり、(a)はボールプランジャーであり、(b)はピンプランジャーであり、(c)はインデックスプランジャーである。
【
図6】位置決め機構がボールプランジャーである場合の出射光絞りの構成例を示す斜視模式図である。
【
図7】一実施形態に係るレーザーモジュールをx軸方向に沿って切った縦断面模式図である。
【
図8】PLCのレーザー光入射面から視た平面模式図である。
【
図9】ニオブ酸リチウム膜からなる光導波路を有する光導波路層を備えるレーザーモジュールの概念図である。
【
図10】(a)は近赤外光レーザー光源及び対応する光導波路の近傍を拡大した平面模式図であり、(b)は(a)においてX1-X1線で切断した断面模式図である。
【
図11】レーザーモジュールを可視レーザー光及び近赤外レーザー光の出射面から視た平面模式図である。
【
図12】出射光絞りの他の構成例を示す斜視模式図である。
【
図13】本実施形態に係るXRグラスを説明するための概念図である。
【
図14】実施形態に係るレーザーモジュールから出射されたレーザー光によって網膜に直接画像が投影される様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0016】
〔レーザーモジュール〕
図1は、一実施形態に係るレーザーモジュールの概念図である。
図2は、一実施形態に係るレーザーモジュールの一例を示す平面模式図である。
図3は、
図2に示すレーザーモジュールの側面図であり、内部が一部見えるように切り欠いている。
【0017】
本実施形態に係るレーザーモジュールが備えるレーザー光源及びパッケージは公知のものを用いることができる。以下に具体例を示して説明する。
図1(a)に示すレーザーモジュール1000は、レーザー光源60と、レーザー光源60を内部に収容すると共に、レーザー光源60から出射されたレーザー光Lが光学的に透過でき光透過窓101が壁部100aに設けられたパッケージ100と、パッケージ100の外側に設けられ、レーザー光Lの進行方向に配置して、レーザー光Lの通過面積を調整可能な出射光絞り200と、を備える。
図1(a)において、SLで指した点線矢印は迷光の一部を示すものであり、出射光絞り200によって迷光がレーザーモジュール1000の外部に漏れるのが阻止されている。
【0018】
図1(a)に示すレーザーモジュール1000では、出射光絞り200をパッケージ100の外側に備えているが、
図1(b)に示すレーザーモジュール1000Aのようにパッケージ100の内側に備えてもよい。
図1(a)に示すレーザーモジュール1000では、レーザー光源60はRGB3色のレーザー光を出射する3個の可視光レーザー光源であるが、レーザー光源の数や種類は一例であってそれ以外でもよい。例えば、アイトラッキング等の目的で近赤外光を出力する近赤外光レーザー光源を備えてもよい。
【0019】
<パッケージ>
パッケージ100は、キャビティ構造を有する本体102と、本体102を覆うカバー105と、を備える。
本体102は、内部に収容される部材が載置される底部と、それらの部材を側方から囲繞するように配置する壁部(側壁部)100aとを有する。
レーザー光が出射される方向に配置する壁部(側壁部)100aには、レーザー光源60から出射されたレーザー光Lが光学的に透過でき光透過窓101が形成されている。
【0020】
収容部107の側壁部100aのうち、レーザーモジュール1000から出射されるレーザー光Lの出射部近傍の側壁部100aには、光透過窓(開口)101が形成されている。開口101は、側壁部100aにおいて出射されるレーザー光の光軸と交差する位置を略中心として形成されている。開口101は、側壁部100aの外方からガラス板220によって隙間なく覆われている。つまり、収容部107は、カバー105に加えてガラス板220によって気密封止されている。ガラス板220を気密封止に用いているが、レーザー光が透過可能な材料であればガラス板に限らない。ガラス板220の両板面には、不図示の反射防止膜が設けられていてもよい。
【0021】
図1(a)に示すレーザーモジュール1000においては、レーザー光Lは光透過窓(開口)101、ガラス板220、出射光絞り200の順で通過してレーザーモジュール1000から出射される。
図1(b)に示すレーザーモジュール1000Aにおいては、出射光絞り200がパッケージ100の内側に備えられる場合は、レーザー光Lは出射光絞り200、光透過窓(開口)101、ガラス板220の順で通過してレーザーモジュール1000Aから出射される。
【0022】
図1に示すレーザーモジュール1000では、本体102は、レーザー光源60等が収容される箱状の収容部107と、収容部107に隣り合う電極部108と、を有する。本体102は、例えばセラミック等で形成されている。収容部107の上面には開口が形成されている。上面視で開口の周縁の収容部107の上面には、コバール等の金属膜112が形成されている。カバー105は、金属膜112を介して、収容部107の上面に形成された開口を隙間なく覆っている。カバー105で収容部107を気密封止する際に、収容部107の内部空間に窒素(N
2)等の不活性ガスが封入されている。つまり、収容部107は、カバー105によって気密封止されている。収容部107の内部空間は、不活性ガスで満たされている。
【0023】
<レーザー光源>
レーザー光源60としては、各種レーザー素子が使用可能である。例えば、市販の赤色光、緑色光、青色光、近赤外光等のレーザーダイオード(LD)が使用可能である。赤色光は、ピーク波長が600nm以上830nm以下である光が使用可能であり、緑色光は、ピーク波長が500nm以上600nm以下である光が使用可能であり、青色光は、ピーク波長が380nm以上500nm以下である光が使用可能である。また、近赤外光は、ピーク波長が830nm以上2000nm以下である光が使用可能である。
図1に示すレーザーモジュール1000において、レーザー光源60-1、60-2、60-3をそれぞれ、青色光を発するLD、緑色光を発するLD、及び赤色光を発するLDとする。LD60-1、60-2、60-3はそれぞれ、例えば、ベアチップ(パッケージ化されていないチップ)でサブキャリア61-1、61-2、61-3、71に実装可能である。サブキャリア61-1、61-2、61-3は、例えば窒化アルミニウム(AlN)や、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、シリコン(Si)等で構成されている。
【0024】
サブキャリア61とLD60との間には、金属層75,76が設けられている(
図7参照)。サブキャリア61とLD60とは、金属層75,76を介して接続されている。金属層75,76を形成する方法としては、公知の方法が利用可能で特に問わないが、スパッタ、蒸着、ペースト化した金属の塗布等の公知手法が利用可能である。金属層75,76は、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)及びタンタル(Ta)、タングステン(W)、金(Au)とスズ(Sn)の合金、スズ(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)系はんだ合金(SAC)、SnCu、InBi、SnPdAg、SnBiIn及びPbBiInからなる群から選択される1又は複数の金属を含み、この群から選択される1又は複数の金属で構成されていてもよい。
【0025】
<出射光絞り>
図1に示すレーザーモジュール1000においては、出射光絞り200はパッケージ100の外側に設けられ、レーザー光Lの進行方向に配置して、出射光絞り200の開口(レーザー光Lの通過口)200M(
図4(b)参照)の面積、あるいは開口200Mの径D(
図4(c)参照)を調整可能である。出射光絞り200は開口面積可変アパーチャーである。
出射光絞り200は、レーザー光Lを通過する通過口200M以外の部分で迷光がレーザーモジュール1000の外部に漏れるのを阻止又は抑制する機能を有する。
また、出射光絞り200はレーザー光Lのうち、使いたい部分(例えば、ガウシアン分布の中心部分)だけを通過可能とするピックアップ機能を発揮できる。これによってユーザーが最適なビームサイズを設定することが可能となる。
出射光絞り200は、カメラの絞りに用いられている公知の絞り機構を適用してもよい。
【0026】
出射光絞り200は公知の方法でパッケージ100に固定することができる。例えば、出射光絞り200の可動しない外側の部位をパッケージ100に接着して取り付けることができる。このとき、取付位置の精度を高めるためにパッケージに溝を設けて取り付けてもよい。
【0027】
開口200Mの径Dは迷光を十分に抑制できるサイズとする。例えば最小(
図4(a)参照)は0.2~2mm程度であり、最大(
図4(c)参照)は1mm~3mmである。具体的な大きさは、パッケージ内のレーザー出射部とパッケージの距離によっても変わるが、本発明が主眼とする40mm
3~100mm
3程度のパッケージサイズではこのような径が望ましい範囲となる。
【0028】
本実施形態に係るレーザーモジュールが、可視光レーザー光源と、不可視の近赤外光レーザー光源とを備える場合、可視光レーザー及び近赤外光レーザーのそれぞれに出射光絞りを備えてもよい。
【0029】
出射光絞り200は複数の絞り羽根を有し、絞り羽根の可動によって絞り量又は絞り径を調整する構成でよい。絞り羽根の可動は自動でも手動でもよい。
出射光絞り200は、手動で絞り羽根で可動する調整つまみを有し、調整つまみをスライドや旋回して絞り羽根を可動する機構でもよい。
【0030】
図4に、出射光絞り200の一例を示す。
図4に示す出射光絞り200は、6枚の絞り羽根201(201a、201b、201c、201d、201e、201f)を備える。出射光絞り200は、絞り羽根の枚数が6枚であるが、6枚は一例であって、それ以外の枚数でもよい。
絞り羽根201は、紙製又はプラスチック製であってもよい。
【0031】
図4に示す出射光絞り200は、開口面積あるいは絞り量あるいは絞り径Dを調整するように絞り羽根201を可動させる調整つまみ202を有する。
図4(a)は出射光絞り200を最も絞った状態を示すものであり、(c)は出射光絞り200を最も開いた状態を示すものであり、(b)はその中間の状態を示すものである。
【0032】
出射光絞り200は、調整つまみを位置決めする位置決め機構を有してもよい。
調整つまみを位置決めする位置決め機構は、プランジャーであってもよい。
プランジャーは通常、円筒形状であり、先端にボール又はピンを備え、そのボール(ピン)は、荷重を掛けると本体内部に沈み込むが、スプリングを内蔵しているため、荷重が解けるとバネの力で元に戻る。ねじ込み取付けタイプでは、円筒の側面にはネジ山が形成されている。
プランジャーは耐久性の観点で本体、ボール又はピン、バネなどステンレス製であることが好ましい。
【0033】
図5に、代表的な機構のプランジャーの例を示す。
図5(a)は先端にボールを備えたボールプランジャーであり、(b)は先端にピンを備えたピンプランジャーであり、(c)はノブ等で操作をするインデックスプランジャーである。
【0034】
図5(a)に示すボールプランジャーは、ボールに接触している対象の摺動(滑らせて動かすこと)が行いやすく、摺動部の位置決めに適している。また、ボールの部分は水平方向からの荷重を受けても沈み込むため、スライドする機構の位置決めにも適している。
【0035】
図5(b)に示すピンプランジャーは、ピンは先が半球や先細りの円筒形のものが多い。ボールプランジャ―とは異なり、ストローク(ボール又はピンの本体内部への沈み込むことが可能な最大長さ)を長くできる。
【0036】
図5(c)に示すインデックスプランジャーは、ピンがある先端の逆側にピンの沈み込み長さを操作できるノブを備えており、ノブを引くとピンが沈み、ノブを押すとピンが出てくる。インデックスプランジャーでは、例えば、ピンを位置決め用の穴に当てることで、バネの作用で簡単にピンを穴に嵌めることができ、ノブを引くことで、容易に位置決めを解除することができる。
【0037】
図6に、ボールプランジャーを例に挙げて詳細に説明する。
図6に示す出射光絞り200は、ケース部材213(上ケース部211と下ケース部212)と、調整つまみ202と、ボールプランジャー(位置決め部材)215と、絞り羽201とを備えている。
絞り羽201は、して、光軸を中心に回動可能にケース部材内に配置されている回動部材(不図示)の内部に設けられている。調整つまみ202はケース部材の外周面に形成された切欠き211aから突出している。調整つまみ202は、回動部材と一体に形成されており、調整つまみ202を切欠き211aに沿って移動させることによって、回動部材が光軸を中心に回動し、その回動に伴って、絞り羽201が絞り動作を行って絞り径Dを変化させることができる。
ボールプランジャー215は、ケース部材内に挿入された凸部と、凸部内に設けられたコイルバネと、凸部の先端に設けられ、コイルバネによって回動部材の方向に付勢されるボールとを備えている。ボールプランジャー215は、回動部材の外周面をボールによって押圧することにより、回動部材の回転に伴って回動部材の外周面に形成された溝部に係合する。
溝部は、回動部材の回転に伴ってボールプランジャー215が溝部に係合した際の絞り径Dが、所望される絞り径Dの種類に応じた位置に形成されている。
【0038】
<光導波路層>
本実施形態に係るレーザーモジュールは、パッケージ内にレーザー光源から出射されたレーザー光を導波する光導波路を含む光導波路層を備えることができる。この光導波路層としては特に制限なく、例えば公知の構成を採用できる。以下、光導波路層の例を示す。
【0039】
レーザーモジュール1000は、パッケージ100内に、レーザー光源60から出射されたレーザー光を導波する光導波路51(51-1、51-2、51-3)を含む光導波路層50を備えてもよい。光導波路層50は、PLC(Planar lightwave circuit)と称されるものである。以下では、光導波路層50をPLC50と称することがある。また、光導波路51-1、51-2、51-3について、コア51-1、51-2、51-3と称することがある。
レーザーモジュール1000においては、光導波路層50は基板40上に形成されており、また、上述の通り、レーザー光源60は載置されたサブキャリア61上に載置されている。基板40とサブキャリア61とは金属接合されて一体化されている。
この金属接合によって、正確な光軸配置が可能とされており、また、小型化が実現されている。
【0040】
以下で、主に
図7に示すx軸方向に沿って切った縦断面模式図、及び、
図8に示すPLC50の入射面の平面模式図を用いて、パッケージ100内に収容された光学モジュールについて詳細に説明する。
基板40は例えば、シリコン(Si)で構成されている。PLC50は、集積回路等の微細な構造を形成する際に用いられる公知のフォトリソグラフィやドライエッチングを含む半導体プロセスによって、上面41に、基板40と一体になるように作製されている。
図1に示すように、PLC50には、LD60-1,60-2,60-3と同数のコア51-1,51-2,51-3と、コア51-1,51-2,51-3を囲むクラッド52が設けられている。クラッド52の厚みと、コア51-1,51-2,51-3の幅方向寸法は、特に制限されない。例えば、50μm程度の厚みを有するクラッド52中に、数ミクロン程度の幅方向寸法を有するコア51-1,51-2,51-3が配設されている。
【0041】
コア51-1,51-2,51-3及びクラッド52は、例えば石英で構成されている。以下では石英系PLC50ということがある。コア51-1,51-2,51-3の屈折率は、クラッド52の屈折率より所定値だけ高くなっている。このことによって、コア51-1,51-2,51-3の各々に入射した光が、各コアとクラッド52との界面で全反射しながら、各コアを伝搬する。コア51-1,51-2,51-3には、例えばゲルマニウム(Ge)等の不純物が前述の所定値に応じた量でドープされている。
【0042】
図1及び
図7に示すように、コア51-1,51-2,51-3は、PLC50の出射面64に到達する手前側で互いに1つに集められている。即ち、コア51-1,51-2,51-3は、x方向の前方に向かうにしたがって順次合流して、1つのコア51-4に合流する。コア51-1,51-2,51-3からの漏れ光が生じないように、コア51-1,51-2,51-3はそれぞれ、所定の曲率半径以上の曲率半径でコア51-4に接続されるのが好ましい。
【0043】
基板40とサブキャリア61との金属接合によって、PLC50の各コア51-1,51-2,51-3の入射口の中心と、対応する各LD60-1,60-2,60-3からの出射光の光軸とがほぼ一致するように正確に光軸合わせがなされた状態で、各コアと対応する各LDとが対向配置されている。
【0044】
図1に示すように、LD60-1,60-2,60-3から発せられる赤色光、緑色光、青色光は、コア51-1,51-2,51-3にそれぞれ入射した後、各コアを伝搬する。コア51-3及び51-2を伝搬する赤色光及び緑色光は、合流位置57-2よりx方向の後方の所定の合流位置57-1で合波される。合波された赤色光及び緑色光と51-2を伝搬する青色光は、合流位置57-2で合わさる。合流位置57-2で合波されたRGB光は、コア51-4を伝搬し、出射面64に到達し、出射面64から出射される。
【0045】
図7に示すように、サブキャリア61は例えば、金属層(第1金属層74,第2金属層72,第3金属層73)を介して基板40と接続される。本実施形態では、サブキャリア61において基板40に対向する側面(第1側面)22と基板40においてサブキャリア61に対向する側面(第2側面)42とは、第1金属層74、第2金属層72、第3金属層73、反射防止膜81を介して接続されている。金属層75の融点は、第3金属層73の融点よりも高い。
【0046】
第1金属層74は、スパッタ又は蒸着等によって側面22に当接した状態で設けられ、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)及びタンタル(Ta)からなる群から選択される1又は複数の金属を含み、この群から選択される1又は複数の金属で構成されていてもよい。好ましくは、第1金属層74が、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む。第2金属層72は、スパッタ又は蒸着等によって側面42に当接した状態で設けられ、例えばチタン(Ti)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)からなる群から選択される1又は複数の金属を含み、この群から選択される1又は複数の金属で構成されていてもよい。好ましくは、第2金属層72に、タンタル(Ta)が用いられる。第3金属層73は、第1金属層74と第2金属層72との間に介在し、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、AuSn、SnCu、InBi、SnAgCu、SnPdAg、SnBiIn及びPbBiInからなる群から選択される1又は複数の金属を含み、この群から選択される1又は複数の金属で構成されていてもよい。好ましくは、第3金属層73に、AuSn、SnAgCu、SnBiInが用いられる。
【0047】
第1金属層74の厚み、即ち第1金属層74のy方向の大きさは、例えば0.01μm以上5.00μm以下である。第2金属層72の厚み、即ち第2金属層72のy方向の大きさは、例えば0.01μm以上1.00μm以下である。第3金属層73の厚み、即ちy方向の大きさは、例えば0.01μm以上5.00μm以下である。また、第3金属層73の厚みは、第1金属層74及び第2金属層72の各厚みより大きいことが好ましい。このような構成では、第1金属層74、第2金属層72、第3金属層73の前述の各役割が良好に発現され、基板40に対する第1金属層74の材料の進入及び各金属層同士の接着強度の低下が抑えられる。第1金属層74、第2金属層72および第3金属層73の厚みは、例えば分光エリプソメトリにより測定される。
【0048】
図示するレーザーモジュール1000では、LD60とPLC50との間に反射防止膜81が設けられている。例えば、反射防止膜81は、基板40の側面42とPLC50の入射面62とに、一体的に形成されている。但し、反射防止膜81は、PLC50の入射面62のみに形成されていてもよい。
【0049】
図示するレーザーモジュール1000では、入射面62に加えて出射面64にも、反射防止膜82が設けられている。なお、
図1では、図示するレーザーモジュール1000の概略構成を示しており、第1金属層74、第2金属層72、第3金属層73及び反射防止膜81,82は省略されている。
【0050】
反射防止膜81,82は、PLC50への入射光又は出射光が入射面62又は出射面64から各面に進入する方向とは逆向きに反射することを防止し、入射光又は出射光の透過率を高めるための膜である。反射防止膜81,82は、例えば複数の種類の誘電体が、入射光である赤色光、緑色光、青色光の波長に応じた所定の厚みで交互に積層されることによって形成される多層膜である。前述の誘電体としては、例えば酸化チタン(TiO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)等が挙げられる。
【0051】
LD60の出射面31とPLC50の入射面62とは、所定の間隔で配置されている。入射面62は出射面31と対向しており、x方向において出射面31と入射面62との間には隙間Sがある。レーザーモジュール1000がXRグラスに用いられる点及びXRグラスで求められる光量等をふまえると、隙間(間隔)70のx方向の大きさは、例えば0μmより大きく、5μm以下である。
【0052】
図示するレーザーモジュール1000は、サブキャリア(基台)61の上面(表面)61aに対向する底面(基台底面)61bと、基板40の上面(表面)41に対向する底面(基板底面)43とが、互いに略同一平面S上に位置するように設けられている。レーザーモジュール1000では、サブキャリア(基台)61と基板40とが金属層を介して接続されているため、接着剤によって接続される場合と比べて、加熱工程による位置ズレの発生が著しく抑制されている。
なお、ここでいう略同一平面Sは、底面(基台底面)61bと、底面(基板底面)43との僅かなズレを許容する。具体的には、基板40のz方向に沿った厚みに対して20μm以下の範囲のズレを許容するが、ズレは小さいほどよく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0053】
図示するレーザーモジュール1000のように、サブキャリア61の底面61bと、基板40の底面43とが、略同一平面S上になるように形成すれば、サブキャリア61と基板40の両方を、例えばパッケージやヒートシンクの一平面上に接合することができる。これによって、サブキャリアの底面と、基板の底面とが略同一平面上に無く、どちらか一方の底面でしか接合できない場合と比較して、レーザーモジュール1000は、LD(光半導体素子)60の動作で生じた熱を、サブキャリア61の底面61bと、基板40の底面43の両方で効率的に放熱することができる。
【0054】
また、図示するレーザーモジュール1000のように、サブキャリア61の底面61bと、基板40の底面43とを、略同一平面S上に設けることによって、光学モジュールを1他の基板等の一平面上に接合する際に、サブキャリア61の底面61bと、基板40の底面43の両方で基板等の一平面上に接合できるので、接合強度を高く保ち、耐衝撃性に優れたレーザーモジュール1000を実現することができる。
例えば、サブキャリアの底面が基板の底面よりも+z方向に位置する場合すなわち、サブキャリアの底面が基板の底面よりもパッケージ100のベース180(
図7参照)から上方に離間して配置する場合、サブキャリアの第1側面の大きさが小さく、放熱を効率的にできず、また基板との接合強度が十分ではなく後述するワイヤーボンディングをした場合に、サブキャリアが滑落する場合があった。しかしながら、図示するレーザーモジュール1000では、側面22の大きさを十分に確保し、底面61bおよび側面22からの放熱や基板40との接合を十分に行うことができるため、放熱性や耐衝撃性を向上できる。耐衝撃性を向上することで、例えば、LD60がPLC50に対して最適な位置に維持される。従って、レーザーモジュール1000に所望の光利用効率及び光学特性を発揮させ、レーザーモジュール1000の信頼性を高めることができる。
【0055】
電極部108は、収容部107のx方向で手前側、即ちx方向の後方に配置されている。電極部108の上面は、収容部107の上面よりも下に位置している。電極部108の底面は、収容部107の底面と略同じ高さに位置している。電極部108の上面には、y方向に間隔をあけて複数の外部電極パッド210が設けられている。
【0056】
図7に示すように、収容部107の底部の所定の位置に、LD60及びそれを載置したサブキャリア61、並びに、PLC50及びそれを形成した基板40を含む光学モジュールを設置するためのベース180が設けられている。この光学モジュールは、ベース180の上に設けられている。つまり、この光学モジュールは、収容部107の内部空間に配置されている。この光学モジュールは、サブキャリア(基台)61の底面(基台底面)61bと、基板40の底面(基板底面)43とが、互いに略同一平面S上に位置するように形成されているので、この光学モジュールはサブキャリア61及び基板40は、共にベース180の上面180a(一内面)に接合されている。
【0057】
サブキャリア(基台)61の底面(基台底面)61bと、基板40の底面(基板底面)43は、ベース180の上面180a(一内面)との間で接着層182を介して接合されていればよい。この接着層182は、熱伝導性を高めるために、樹脂にフィラーを混合した材料が用いられている。接着層182を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。また、樹脂の熱伝導性を向上させるフィラーとしては、銅粉末やアルミニウム粉末、アルミナ粉末などを用いることができる。
なお、こうした接着層182は、一定以上の熱伝導性を保つために、熱伝導率が0.5W/m・K以上にすることが好ましく、熱伝導率が1W/m・K以上にすることが好ましく、熱伝導率が4W/m・K以上にすることがさらに好ましい。
【0058】
このように、光学モジュールのサブキャリア(基台)61と、基板40の両方をパッケージ100のベース180の上面180aに接合することによって、LD60の動作により生じた熱を、サブキャリア(基台)61の底面(基台底面)61bと、基板40の底面(基板底面)43の両方から、ベース180に向けて効率よく放熱することができる。また、更に、サブキャリア(基台)61の底面(基台底面)61bと、基板40の底面(基板底面)43の両方を、フィラーを混合した樹脂からなる接着層を用いて接合することにより、サブキャリア(基台)61の底面(基台底面)61bと、基板40の底面(基板底面)43の両方から、ベース180に向けて効率よく熱を伝搬させることができる。
【0059】
次に、本実施形態に係るレーザーモジュールが備える光導波路層の光導波路がニオブ酸リチウム膜(LiNbO3)からなる場合について説明する(例えば、特許文献4参照)。この場合の光導波路層を以下では、LN系PLCということがある。
【0060】
図9に、ニオブ酸リチウム膜からなる光導波路を有する光導波路層を備えるレーザーモジュールの概念図を示す。
図10(a)は近赤外光レーザー光源及び対応する光導波路の近傍を拡大した平面模式図であり、(b)は(a)においてX1-X1線で切断した断面模式図である。
図11は、レーザーモジュールを可視レーザー光及び近赤外レーザー光の出射面から視た平面模式図である。
上述したレーザーモジュール1000と共通する部材については同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
図9においては、レーザーモジュールがレーザー光源としてRGBレーザー光源以外に近赤外レーザー光源を有する例を示す。近赤外レーザーは不可視であるため、アイトラッキングに用いることができる。
【0061】
図9に示すレーザーモジュール2000は、レーザー光源60と近赤外レーザー光源70と、レーザー光源60及び近赤外レーザー光源70を内部に収容すると共に、レーザー光源60から出射されたレーザー光Lが光学的に透過でき光透過窓101が壁部100aに設けられたパッケージ100と、パッケージ100の外側に設けられ、レーザー光Lの進行方向に配置して、レーザー光Lの通過面積を調整可能な出射光絞り200Aと、を備える。
【0062】
近赤外レーザー光源70は、レーザー光源60と同様にサブキャリア70に実装され、また、LN系PLC150は基板140上に形成されている。
【0063】
レーザーモジュール2000は、パッケージ100内に、レーザー光源60から出射されたレーザー光を導波する光導波路151(151-1、151-2、151-3)、及び、近赤外レーザー光源70から出射された近赤外レーザー光を導波する光導波路152を含むLN系PLC150を備える。
レーザーモジュール2000においても、LN系PLC150が形成された基板140と、レーザー光源60が載置されたサブキャリア61及び近赤外レーザー光源70が載置されたサブキャリア71とは金属接合されて一体化されている。
この金属接合によって、正確な光軸配置が可能とされており、また、小型化が実現されている。
【0064】
基板140としては例えば、サファイア基板、Si基板、熱酸化シリコン基板などを挙げることができる。
光導波路151及び光導波路152をニオブ酸リチウム(LiNbO3)膜で形成する場合、ニオブ酸リチウム膜より屈折率が低いものであれば特に限定されないが、単結晶ニオブ酸リチウム膜をエピタキシャル膜として形成させることができる基板として、サファイア単結晶基板もしくはシリコン単結晶基板が好ましい。単結晶基板の結晶方位は特に限定されないが、例えば、c軸配向のニオブ酸リチウム膜は3回対称の対称性を有しているので、下地の単結晶基板も同じ対称性を有していることが望ましく、サファイア単結晶基板の場合はc面、シリコン単結晶基板の場合は(111)面の基板が好ましい。
【0065】
レーザーモジュール2000において、光導波路層(LN系PLC)150は、光導波路151及び光導波路152を有する導波路コア膜150Aと、光導波路151及び光導波路152を被覆するように導波路コア膜150A上に形成される導波路クラッド膜150Bとを有する。導波路クラッド膜150Bは導波路コア膜150Aより屈折率が低い。導波路クラッド膜150Bは、例えば、SiInO、SiO2、Al2O3、MgF2、La2O3、ZnO、HfO2、MgO、Y2O3、CaF2、In2O3等又はこれらの混合物である。
【0066】
以下では、導波路コア膜150Aをニオブ酸リチウム膜150Aと称する場合がある。
ニオブ酸リチウム膜は例えば、c軸配向したニオブ酸リチウム膜である。ニオブ酸リチウム膜は例えば、基板140上にエピタキシャル成長したエピタキシャル膜である。エピタキシャル膜は、下地の基板によって結晶方位が揃えられた単結晶の膜のことである。エピタキシャル膜は、z方向およびxy面内方向に単一の結晶方位をもった膜であり、結晶がx軸、y軸及びz軸方向にともに揃って配向しているものである。基板140上に形成されている膜がエピタキシャル膜かどうかは、例えば、2θ-θX線回折における配向位置でのピーク強度と極点の確認を行うことで証明することができる。
【0067】
ニオブ酸リチウムの組成は、LixNbAyOzである。Aは、Li、Nb、O以外の元素である。xは、0.5以上1.2以下であり、好ましくは0.9以上1.05以下である。yは、0以上0.5以下である。zは1.5以上4.0以下であり、好ましくは2.5以上3.5以下である。Aの元素は、例えば、K、Na、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Zn、Sc、Ceであり、これらの元素を2種類以上の組み合わせても良い。
【0068】
ニオブ酸リチウム膜の膜厚は例えば、2μm以下である。ニオブ酸リチウム膜の膜厚とは、リッジ部以外の部分の膜厚のことである。ニオブ酸リチウム膜の膜厚が厚いと、結晶性が低下する恐れがある。
またニオブ酸リチウム膜の膜厚は、例えば、使用する光の波長の1/10程度以上である。ニオブ酸リチウム膜の膜厚が薄いと、光の閉じ込めが弱くなり、基板140や導波路クラッド膜150Bに光が漏れる。
【0069】
光導波路151及び光導波路152は、内部を光が伝搬する光の通路である。光導波路151及び光導波路152は、ニオブ酸リチウム膜150Aのスラブ層150Aaの第1面150AAから突出するリッジである。以下では、光導波路151-1、光導波路151-2、光導波路151-3及び光導波路152をそれぞれ、リッジ151-1、リッジ151-2、リッジ151-3、リッジ152ということがある。第1面150AAは、ニオブ酸リチウム膜150Aのリッジ部以外の部分(スラブ層150Aa)における上面である。ニオブ酸リチウム膜150Aはリッジ151-1、151-2、151-3、152とスラブ層150Aaとからなる。
【0070】
図11に示すリッジ151-4及びリッジ152の断面形状定形部の断面形状は矩形であるが、光を導波できる形状であればよく、例えば、台形、三角形、半円形等であってもよい。y方向の幅Waは、0.3μm以上5.0μm以下であることが好ましく、リッジの高さ(第1面150AAからの突出高さHa)は、例えば、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0071】
図9に示すように、光導波路151-1、光導波路151-2及び光導波路151-3は、PLC150の出射面に到達する手前側で互いに1つに集められている。即ち、光導波路151-1、光導波路151-2及び光導波路151-3は、x方向の前方に向かうにしたがって順次合流して、1つの光導波路151-4に合流する。光導波路151-1、光導波路151-2及び光導波路151-3からの漏れ光が生じないように、光導波路151-1、光導波路151-2及び光導波路151-3はそれぞれ、所定の曲率半径以上の曲率半径で光導波路151-4に接続されるのが好ましい。
【0072】
基板140とサブキャリア61、71との金属接合によって、LN系PLC50の各リッジ151-1、151-2、151-3、152の入射口の中心と、対応する各LD60-1,60-2,60-3、70からの出射光の光軸とがほぼ一致して光学的に接続されるように正確に光軸合わせがなされた状態で、各リッジと対応する各LDとが対向配置されている。
【0073】
各光導波路151-1、151-2、151-3、152の入射口151-1i、151-2i、151-3i、152iが各LD60-1、60-2、60-3、70の出射口と対向し、各LD60-1、60-2、60-3、70の出射口から出射される光が各入射口151-1i、151-2i、151-3i、152iに入射可能に位置決めされて、各LD60-1、60-2、60-3、70と各光導波路151-1、151-2、151-3、152とが光学的に接続されている。
例えば、入射路152の軸線JX-1は、LD70の出射口70aから出射されるレーザー光LRの光軸AXRと略重なっている。このような構成及び配置によって、各LD60-1、60-2、60-3、70から発せられる赤色光、緑色光、青色光、近赤外光は、各光導波路151-1、151-2、151-3、152の入射路に入射可能である。
【0074】
図9に示すように、LD60-1,60-2及び60-3から発せられた赤色光、緑色光及び青色光は、各リッジ151-1、151-2、151-3にそれぞれ入射した後、各リッジを伝搬する。リッジ151-3及び151-2を伝搬する赤色光及び緑色光は、合流位置157-2よりx方向の後方の所定の合流位置157-1で合波される。合波された赤色光及び緑色光と151-2を伝搬する青色光は、合流位置57-2で合波される。合流位置57-2で合波されたRGB光は、リッジ151-4を伝搬し、出射面に到達し、出射面から出射される。
また、LD70から発せられた近赤外光はリッジ152を伝搬し、出射面に到達し、出射面から出射される。
【0075】
サブキャリア71において基板140に対向する側面(第1側面)71Aと基板140においてサブキャリア71に対向する側面(第2側面)10AAとは、金属層(第1金属層74,第2金属層72,第3金属層73)を介して接続されている。
【0076】
レーザーモジュール2000が備える出射光絞り200Aはパッケージ100の外側に設けられ、可視光レーザー光Lの進行方向に配置して、出射光絞り200Aの開口(レーザー光Lの通過口)の面積、あるいは開口の径を調整可能である点は、レーザーモジュール1000が備える出射光絞り200と共通する。
一方、出射光絞り200Aは、近赤外レーザー光LIRがケース部材213(上ケース部211と下ケース部212)の絞り羽根201よりも外周側部分を通過できることである。かかる構成は例えば、ケース部材213が、可視光レーザー光Lは通さない(カットする)が、近赤外レーザー光LIRは通す材料例えば、シリコン(Si)からなることが挙げられる。
【0077】
LN系PLC150が備える各光導波路151-1、151-2、151-3、152はそれぞれ、マッハツェンダー型光導波路であってもよい(例えば、特許文献5参照)。
【0078】
〔XRグラス〕〔光学エンジンモジュール〕
本実施形態に係るXRグラスは、上記実施形態に係るレーザーモジュールのいずれかがグラスに搭載されている。
XRグラス(眼鏡)はメガネ型の端末であり、XRは、仮想現実(VR:Virtual Reality)、拡張現実(AR:Augmented Reality)、複合現実(Mixed Reality)の総称である。
【0079】
図13に、本実施形態に係るXRグラスを説明するための概念図に示す。
図13に示すXRグラス10000は、フレーム10010にレーザーモジュール1001が搭載されている。符号Lは画像表示光である。
【0080】
図13において、レーザーモジュール1001と、光走査ミラー3001と、レーザーモジュール1001と光走査ミラー3001とを結ぶ光学系2001とを合わせて、本明細書では光学エンジンモジュール5001という。レーザーモジュール1001としては、上記実施形態に係るレーザーモジュールのいずれかを用いる。
【0081】
レーザーモジュール1001における光源として例えば、赤色レーザー光源60-1、緑色レーザー光源60-2及び青色レーザー光源60-3のRGBのレーザー光源と、近赤外光レーザー光源70とを有するものを用いることができる。
図14に示すように、メガネフレームに取り付けられたレーザーモジュール1001から照射されたレーザー光は光走査ミラー3001で反射され、その反射光は人の眼球E方向へ反射するミラー4001で反射され、人の眼球E内に入り、網膜Mに直接画像(映像)を投影できる。
アイトラッキング機構を備えることにより、アイトラッキングを行いながら、網膜に直接画像が投影される。アイトラッキング機構としては公知のものを用いることができる。
【0082】
光走査ミラー3001は例えば、MEMSミラーである。2D画像を投影するためには、水平方向(X方向)および垂直方向(Y方向)に角度を変えてレーザー光を反射するように振動する2軸MEMSミラーであることが好ましい。
【0083】
レーザーモジュール1001から出射したレーザー光を光学的に処理する光学系2001として、コリメータレンズ2001aと、スリット2001bと、NDフィルタ2001cとを有する。この光学系は一例であって、他の構成であってもよい。
【0084】
光学エンジン5001は、レーザードライバ1100、光走査ミラードライバ1200、及び、これらのドライバを制御するビデオコントローラ1300を有する。
【符号の説明】
【0085】
60 レーザー光源
100 パッケージ
101 光透過窓
200、200A 出射光絞り
1000、1000A、1001、2000 レーザーモジュール
5001 光学エンジンモジュール
10000 XRグラス