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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063443
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】車両制御方法及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/12 20200101AFI20240502BHJP
   B60W 40/105 20120101ALI20240502BHJP
   B60W 40/114 20120101ALI20240502BHJP
【FI】
B60W30/12
B60W40/105
B60W40/114
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171400
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】飯田 智晴
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 裕樹
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA10
3D241BA12
3D241BA20
3D241BB27
3D241BC02
3D241DB02Z
3D241DB12Z
(57)【要約】
【課題】目標走行軌道に対して自車両の車両状態のずれが生じた場合に、自車両の実際の走行軌道に対して目標側高速度が超過速度になるのを抑制する。
【解決手段】車両制御方法では、目標走行軌道に沿った位置に応じた目標速度である速度プロファイルを設定し(S2)、自車両の現在位置である自己位置と現在の姿勢角とを検出し(S3)、自己位置と速度プロファイルとに基づいて、自車両の走行速度が速度プロファイルに応じた速度となるように走行制御を行う(S4)。さらに、自己位置、姿勢角及び速度プロファイルに基づいて、自車両の現在位置から第1所定距離前方までの走行軌道である予測軌道を予測し(S5)、予測軌道と目標走行軌道との間の車線幅方向の距離の最大値が所定閾値距離以上である場合に、自車両を減速する減速制御を行う(S6~S8)。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方の車線における前記自車両の目標走行軌道を算出し、
前記目標走行軌道に沿った位置に応じた目標速度である速度プロファイルを設定し、
前記自車両の現在位置である自己位置と現在の姿勢角とを検出し、
前記自己位置と前記速度プロファイルとに基づいて、前記自車両の走行速度が前記速度プロファイルに応じた速度となるように走行制御を行う車両制御方法であって、
前記自己位置、前記姿勢角及び前記速度プロファイルに基づいて、前記自車両の現在位置から所定距離前方までの走行軌道である予測軌道を予測し、
前記予測軌道と前記目標走行軌道との間の車線幅方向の距離の最大値が所定閾値距離以上である場合に、前記自車両を減速する減速制御を行う、
ことを特徴とする車両制御方法。
【請求項2】
前記減速制御に加え、前記自車両の操向輪を転舵する転舵制御又は前記自車両にヨーモーメントを付与する制駆動力配分制御によって、前記予測軌道が前記目標走行軌道から乖離する方向と反対方向の横力を付与することにより、前記自車両の走行軌道を修正することを特徴とする請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項3】
前記所定閾値距離は、前記目標走行軌道から前記車線の走路境界までの距離と等しいことを特徴とする請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項4】
前記自車両の現在位置から所定距離前方までの前記目標走行軌道が旋回軌道であるか否かを判定し、
前記予測軌道と前記目標走行軌道との間の車線幅方向の距離の最大値が前記所定閾値距離以上であり、前記目標走行軌道が旋回軌道である場合に、前記減速制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項5】
前記予測軌道が前記目標走行軌道よりも旋回方向の外側に位置するか否かを判定し、
前記予測軌道と前記目標走行軌道との間の車線幅方向の距離の最大値が前記所定閾値距離以上であり、前記目標走行軌道が旋回軌道であり、前記予測軌道が前記目標走行軌道よりも旋回方向の外側に位置する場合にのみ、前記減速制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の車両制御方法。
【請求項6】
前記予測軌道と前記目標走行軌道との間の車線幅方向の距離の最大値が大きい場合に、前記最大値が小さい場合よりも大きな減速度で前記減速制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項7】
目標旋回曲率を設定し、前記減速制御において、前記目標旋回曲率で旋回できる速度まで前記自車両を減速することを特徴とする請求項6に記載の車両制御方法。
【請求項8】
前記予測軌道と前記車線の走路境界との間の車線幅方向の離間距離を算出し、
前記離間距離が所定閾値以下の場合に、前記予測軌道上の地点を車線幅方向の前記目標走行軌道側へオフセットした位置を走行できるように前記目標旋回曲率を設定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の車両制御方法。
【請求項9】
前記予測軌道と前記目標走行軌道との間の車線幅方向の離間距離を算出し、
前記離間距離が所定閾値以上の場合に、前記予測軌道上の地点を車線幅方向の前記目標走行軌道側へオフセットした位置を走行できるように前記目標旋回曲率を設定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の車両制御方法。
【請求項10】
前記予測軌道と前記目標走行軌道との間の車線幅方向の乖離量が大きい場合に、前記乖離量が小さい場合よりも大きなオフセット量で、前記予測軌道上の地点をオフセットすることを特徴とする請求項8又は9に記載の車両制御方法。
【請求項11】
自車両の現在位置である自己位置と現在の姿勢角とを検出するセンサと、
前記自車両の前方の車線における前記自車両の目標走行軌道を算出する処理と、前記目標走行軌道に沿った位置に応じた目標速度である速度プロファイルを設定する処理と、前記自己位置と前記速度プロファイルとに基づいて、前記自車両の走行速度が前記速度プロファイルに応じた速度となるように走行制御を行うコントローラと、
を備える車両制御装置であって、
前記コントローラは、前記自己位置、前記姿勢角及び前記速度プロファイルに基づいて、前記自車両の現在位置から所定距離前方までの走行軌道である予測軌道を予測する処理と、前記予測軌道と前記目標走行軌道との間の車線幅方向の距離の最大値が所定閾値距離以上である場合に、前記自車両を減速する減速制御を行う処理と、を実行することを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御方法及び車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、操舵制御や車輪の制駆動力配分制御により自車両にヨーモーメントを適切に付加して、目標コースに沿って自車両を追従走行させる追従走行制御が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-167733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、目標走行速度が目標走行軌道に応じて設定されていると、目標走行軌道の演算において想定していた自車両の車両状態から、実際の車両状態がずれた場合に、自車両の実際の走行軌道に対して目標走行速度が超過速度になることがある。
本発明は、目標走行軌道に対して自車両の車両状態のずれが生じた場合に、自車両の実際の走行軌道に対して目標走行速度が超過速度になるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、自車両の前方の車線における自車両の目標走行軌道を算出し、目標走行軌道に沿った位置に応じた目標速度である速度プロファイルを設定し、自車両の現在位置である自己位置と現在の姿勢角とを検出し、自己位置と速度プロファイルとに基づいて、自車両の走行速度が速度プロファイルに応じた速度となるように走行制御を行う車両制御方法が与えられる。車両制御方法では、自己位置、姿勢角及び速度プロファイルに基づいて、自車両の現在位置から第1所定距離前方までの走行軌道である予測軌道を予測し、予測軌道と目標走行軌道との間の車線幅方向の距離の最大値が所定閾値距離以上である場合に、自車両を減速する減速制御を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、目標走行軌道に対して自車両の車両状態のずれが生じた場合に、自車両の実際の走行軌道に対して目標側高速度が超過速度になるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の車両制御装置の一例の概略構成図である。
図2】第1~3実施形態のコントローラの機能構成の一例のブロック図である。
図3】自車両の前方の走路の模式図である。
図4】走行計画部の機能構成の一例のブロック図である。
図5】乖離量予測部の機能構成の一例のブロック図である。
図6】速度計画部の機能構成の一例のブロック図である。
図7】第1実施形態の車両制御方法の一例のフローチャートである。
図8】(a)及び(b)は目標位置の設定例の模式図である。
図9】第3実施形態の速度計画修正部の処理の一例のフローチャートである。
図10】速度プロファイル修正判定処理の一例のフローチャートである。
図11】速度プロファイル修正量演算処理の一例のフローチャートである。
図12】修正量演算処理の一例のフローチャートである。
図13】第4実施形態のコントローラの機能構成の一例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(第1実施形態)
(構成)
図1は、実施形態の車両制御装置の一例の概略構成図である。車両制御装置10は自車両1に搭載されて、自車両1の走行制御を実行する。
車両制御装置10は、物体センサ11と、車両センサ12と、測位装置13と、地図データベース14と、コントローラ17と、駆動力源コントローラ18aと、ブレーキコントローラ18bと、ステアリングコントローラ18cと、駆動力源19aと、ブレーキアクチュエータ19bと、転舵アクチュエータ19cを備える。なお、図面において地図データベースを「地図DB」と表記する。
【0010】
物体センサ11は、自車両1の周囲の周囲環境についての様々な情報(周囲環境情報)を検出する。物体センサ11は、例えば自車両1に搭載されたレーザレーダや、ミリ波レーダ、カメラ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)など、自車両1の周囲の物体を検出する複数の異なる種類の物体検出センサを備える。
車両センサ12は、自車両1に搭載され、自車両1から得られる様々な情報(車両情報)を検出する。車両センサ12には、例えば、自車両1の車速を検出する車速センサ、自車両1のタイヤの回転速度を検出する車輪速センサ、自車両1の3軸方向の加速度及び減速度を検出する3軸加速度センサ、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサ、操向輪(転舵輪)の転舵角を検出する転舵角センサ、自車両1の角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ、自車両のアクセル開度を検出するアクセルセンサと、ブレーキ操作量を検出するブレーキセンサが含まれる。
【0011】
測位装置13は、全地球型測位システム(GNSS)受信機を備え、複数の航法衛星から電波を受信して自車両1の現在の位置及び姿勢角を測定する。以下の説明において自車両1の現在の位置を「自己位置」と表記することがある。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であってよい。測位装置13は、例えば慣性航法装置であってもよい。
地図データベース14は、道路地図データを記憶している。例えば地図データベース14は、自動運転用の地図情報として好適な高精度地図データ(以下、単に「高精度地図」という)を記憶してよい。地図データベース14は、ナビゲーション用の地図データ(以下、単に「ナビ地図」という)を記憶してもよい。
【0012】
コントローラ17は、自車両1の車両制御を行う電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。
例えばコントローラ17による車両制御は、物体センサ11からの周囲環境情報や、車両センサ12からの車両情報、測位装置13が測定した現在位置、道路地図データに基づいて、設定された目的地まで自車両1を自律走行させる自律運転制御であってよい。
また、例えば車両制御装置10による車両制御は、周囲環境情報や、車両情報、道路地図データ等に基づいて、自車両1の加速、減速及び操舵を制御することにより運転者による自車両1の運転を支援する運転支援制御であってもよい。
【0013】
例えば運転支援制御は、自車両1が走行車線から逸脱しないように自車両1の操舵を制御する車線維持制御や、自車両1が先行車両に追従して走行するように自車両1の加速及び減速を制御する先行車追従制御や、定速走行制御、車間距離制御を含んでいてよい。
コントローラ17は、プロセッサ17aと、記憶装置17b等の周辺部品とを含む。プロセッサ17aは、例えばCPUやMPUであってよい。記憶装置17bは、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。
【0014】
記憶装置17bは、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM及びRAM等のメモリを含んでよい。以下に説明するコントローラ17の機能は、例えばプロセッサ17aが、記憶装置17bに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
なお、コントローラ17を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。例えば、コントローラ17は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントローラ17はFPGA等のPLD等を有していてもよい。
【0015】
駆動力源コントローラ18aは、コントローラ17から出力される駆動トルク指令値に従って動作するように、駆動力源19aを制御するECUである。駆動力源19aは、例えば駆動用モータ及び内燃機関(エンジン)の一方又は両方を備えてもよい。
ブレーキコントローラ18bは、コントローラ17から出力される制動液圧指令値に従って動作するように、前輪及び後輪の制動装置(ブレーキ装置)を作動させるブレーキアクチュエータ(液圧アクチュエータ)19bを制御するECUである。
ステアリングコントローラ18cは、コントローラ17から出力される操舵トルク指令値に従って動作するように、操向輪を転舵させる転舵アクチュエータ19cを制御するECUである。
【0016】
図2は、第1実施形態のコントローラ17の機能構成の一例のブロック図である。コントローラ17は、走路境界生成部30と、走行計画部31と、速度制御部32と、軌道追従制御部33と、乖離量予測部34と、速度計画修正部36と、制駆動力演算部37と、操舵トルク演算部38を備える。
走路境界生成部30は、物体センサ11が検出した自車両1が走行する車線の車線区分線(白線)の情報や、地図データベース14の高精度地図に基づいて、車線に沿って自車両1が走行可能な前方領域である走路を生成する。
【0017】
図3は、自車両1の前方の走路の模式図である。なお、X軸の正方向を自車両1の進行方向と定め、X軸と直角かつ自車両1の左側方向をY軸の正方向と定めている。図8(a)及び図8(b)も同様である。
走路境界生成部30は、走路の右側の境界BR(以下「右側走路境界BR」と表記することがある)と、左側の境界BL(以下「左側走路境界BL」と表記することがある)を生成する。右側走路境界BR及び左側走路境界BLを総称して「走路境界BR及びBL」と表記することがある。
【0018】
例えば走路境界生成部30は、右側走路境界BRとして、境界線を形成する点列PR0、PR1、PR2…PR8を生成し、左側走路境界BLとして、境界線を形成する点列PL0、PL1、PL2…PL8を生成してよい。以下の説明において、これら点列に含まれる個々の点PR0、PR1、PR2…PR8、PL0、PL1、PL2…PL8を「境界点」と表記することがある。なお、これら走路境界BR及びBLの点列の数は9個に限定されず、8個以下でもよく10個以上でもよい。
【0019】
図2を参照する。走行計画部31は、測位装置13が測定した自己位置と、走路境界生成部30が生成した走路境界BR及びBLとに基づいて、目標とする将来の走行軌道である目標走行軌道を算出する。また、算出した目標走行軌道と、速度計画修正部36から出力される減速要求フラグF及び補正速度Vpと、に基づいて、目標走行軌道に沿った位置に応じた目標速度である速度プロファイルを設定する。
図4は、走行計画部31の機能構成の一例のブロック図である。走行計画部31は、軌道計画部40と、速度計画部41を備える。
【0020】
軌道計画部40は、自己位置と、走路境界BR及びBLとに基づいて、目標走行軌道Ttを算出する。例えば軌道計画部40は、走路境界BR及びBLの中間を通る軌道を目標走行軌道Ttとして算出してよい。
図3を参照する。例えば軌道計画部40は、目標走行軌道Ttとして、軌道を形成する点列Pt1、Pt2…Pt8を生成してよい。例えば、境界点PR1とPL1の中間点、境界点PR2とPL2の中間点、…境界点PR8とPL8の中間点を、それぞれ目標走行軌道Tt上の点Pt1、Pt2…Pt8として算出してよい。なお、これら目標走行軌道Ttの点列の数は8個に限定されず、7個以下でもよく9個以上でもよい。
図4を参照する。速度計画部41は、目標走行軌道Ttと、後述の減速要求フラグF及び補正速度Vpとに基づいて速度プロファイルを設定する。速度計画部41の詳細は後述する。
【0021】
図2を参照する。速度制御部32は、走行計画部31が設定した速度プロファイルと自己位置とに基づいて、自車両1の走行速度が速度プロファイルに応じた速度となるように制御するための制駆動力指令を演算し、制駆動力演算部37に出力する。
軌道追従制御部33は、走行計画部31が算出した目標走行軌道Ttに沿って走行するための旋回指令を生成する。旋回指令は、例えば自車両1に発生させる目標横力指令であってもよく、操向輪を転舵する目標転舵トルク指令であってもよく、操向輪の目標転舵角指令であってもよい。
【0022】
軌道追従制御部33は、現在時刻から将来までの所定長の時間範囲以内の複数時刻における旋回指令を生成する。例えば軌道追従制御部33は、モデル予測制御の最適化演算によって、自車両1の走行軌道と目標走行軌道Ttとの差が最小となるように、現在時刻から将来の各時刻における旋回指令を生成してよい。
以下の説明では、旋回指令が目標横力指令Fyである場合を想定する。添字i=0、1、2、3…は各時刻を示しており、Fyは現在時刻における目標横力指令であり、Fy、Fy、Fy…は、将来の各時刻における目標横力指令である。
軌道追従制御部33は、現在時刻における旋回指令Fyを操舵トルク演算部38に出力し、現在時刻から将来の各時刻における旋回指令Fy、Fy、Fy、Fy…を乖離量予測部34に出力する。
【0023】
乖離量予測部34は、自車両1の現在位置から所定距離前方までの走行軌道である予測軌道を予測し、予測軌道と目標走行軌道Ttとの間の車線幅方向の乖離量(逸脱量)を予測する。
図5は、乖離量予測部34の機能構成の一例のブロック図である。乖離量予測部34は、予測軌道生成部50と、乖離量算出部51と、を備える。
予測軌道生成部50は、車両センサ12の車速センサが検出した自車両1の現在の車速と、測位装置13が測定した自車両1の現在の自己位置及び姿勢角と、旋回指令Fyと、速度プロファイルとに基づいて予測軌道を生成する。
【0024】
図3を参照する。例えば予測軌道生成部50は、予測軌道Tpとして、軌道を形成する点列P、P…Pを生成してよい。以下の説明において、これら点列P、P…Pに含まれる個々の点を「予測点」と表記することがある。なお、これら予測軌道Tpの点列の数は8個に限定されず、7個以下でもよく9個以上でもよい。
【0025】
例えば予測軌道生成部50は、車両センサ12の車速センサが検出した現在時刻における車速と速度プロファイルに基づいて、現在から将来までの各時刻における車速Vを設定し、各時刻におけるヨーレイトdθ/dtを、dθ/dt=Fy/mVによって算出してよい。式中のmは自車両1の質量である。
【0026】
そして、測位装置13が測定した現在の姿勢角θを初期値としてヨーレイトdθ/dtを積分することにより将来の各時刻における姿勢角θを算出し、将来の各時刻における自車両1のY座標の変化量dY/dt=V×θを算出する。そして、現在の自己位置のY座標を初期値として変化量dY/dtを積分することにより、将来の各時刻における自車両1のY座標Yを算出する。同様の方法により将来の各時刻における自車両1のX座標Xも算出する。
【0027】
図5を参照する。乖離量算出部51は、予測軌道Tpと目標走行軌道Ttとの間の車線幅方向の乖離量ΔYを予測する。例えば乖離量算出部51は、予測軌道Tpと目標走行軌道Ttとの間の車線幅方向の距離の最大値を乖離量ΔYとして算出してよい。例えば、各々の予測点P、P…Pと目標走行軌道Ttとの間の車線幅方向の乖離量をそれぞれd、d…dとすると、最大値max(d,d…d)を乖離量ΔYとして算出してよい。
【0028】
図2を参照する。乖離量予測部34は、算出した乖離量ΔYを速度計画修正部36へ出力する。速度計画修正部36は、乖離量の絶対値|ΔY|が所定の閾値距離ΔYth以上であるか否かを判定する。例えば閾値距離ΔYthは、目標走行軌道Ttから走路境界BL及びBRまでの距離であってよい。
絶対値|ΔY|が閾値距離ΔYth以上である場合に速度計画修正部36は、減速要求フラグFの値を「1」に設定する。絶対値|ΔY|が閾値距離ΔYth以上でない場合に速度計画修正部36は、減速要求フラグFの値を「0」に設定する。
【0029】
また速度計画修正部36は、乖離量の絶対値|ΔY|が閾値距離ΔYth以上である場合に、速度プロファイルよりも低い速度を補正速度Vpとして設定する。例えば速度計画修正部36は、絶対値|ΔY|が大きいほど、速度プロファイルと比較して補正速度Vpの低減量を大きくしてよい。速度計画修正部36は、減速要求フラグFと補正速度Vpを走行計画部31に出力する。
【0030】
図6は、走行計画部31の速度計画部41の機能構成の一例のブロック図である。速度計画部41は、目標走行軌道Tt上の各点Pti(i=1、2…)における曲率である目標曲率ρを演算し、各点Ptiにおいて自車両1に許容される横加速度ayを設定する。速度計画部41は、例えば横加速度ayとして旋回加速度の許容最大値を設定してよい。以下の説明において横加速度ayを「設定横加速度ay」と表記する。速度計画部41は、各点Ptiにおいて設定横加速度ayに従って目標曲率ρの軌道を走行するための目標速度を、速度プロファイルとして算出する。
【0031】
速度計画部41は、曲率演算部60と、目標速度演算部61と、選択部62を備える。曲率演算部60は、目標曲率ρを演算する。目標速度演算部61は、各点Ptiにおいて設定横加速度ayで目標曲率ρの軌道を走行するための目標速度Vを演算する。例えば目標速度演算部61は、次式(1)により目標速度Vを算出してもよい。
=ay/ρ …(1)
目標速度Vを算出する際に、目標速度演算部61は、減速要求フラグFの値が「1」であるか否かを判定する(すなわち乖離量の絶対値|ΔY|が閾値距離ΔYth以上であるか否かを判定する)。
【0032】
減速要求フラグFの値が「1」である場合、目標速度演算部61は、自車両1を減速する減速制御を行う。例えば目標速度演算部61は、目標速度Vを下げることにより自車両1を減速させてもよい。この結果、自車両1が減速するように自車両1の速度プロファイルが修正される。
また例えば目標速度演算部61は、設定横加速度ayの値を減少させてもよい。この結果、速度プロファイルの目標速度V自体が低くなり自車両1を減速する減速制御が行われる。
また選択部62は、各点Ptiにおいて目標速度Vと補正速度Vpのうちより低い速度を選択して、速度プロファイルとして出力する。従って補正速度Vpが目標速度Vよりも低い場合には、目標速度Vよりも低い速度が速度プロファイルとして出力され、自車両1を減速する減速制御が行われる。
【0033】
図2を参照する。制駆動力演算部37は、速度制御部32が出力した制駆動力指令に従って自車両1に駆動力を発生させる駆動トルク指令値を生成し、駆動力源コントローラ18aに出力する。また、制駆動力指令に従って自車両1の制動装置に制動力を発生させる制動液圧指令値を生成し、ブレーキコントローラ18bに出力する。
操舵トルク演算部38は、軌道追従制御部33が出力した旋回指令に従って操向輪を転舵させる操舵トルク指令値を生成し、ステアリングコントローラ18cに出力する。
【0034】
図7は、第1実施形態の車両制御方法の一例のフローチャートである。
ステップS1において走行計画部31は目標走行軌道Ttを算出する。ステップS2において走行計画部31は速度プロファイルを設定する
ステップS3において測位装置13は、現在の自己位置及び姿勢角を算出する。ステップS4において速度制御部32は、自己位置と速度プロファイルとに基づいて、自車両の走行速度が速度プロファイルに応じた速度となるように自車両の走行速度を制御する。
【0035】
ステップS5において乖離量算出部51は、予測軌道Tpを予測する。ステップS6において乖離量算出部51は、予測軌道Tpと目標走行軌道Ttとの間の車線幅方向の乖離量ΔYを算出する。
ステップS7において速度計画修正部36は、乖離量の絶対値|ΔY|が所定の閾値距離ΔYth以上であるか否かを判定する。絶対値|ΔY|が閾値距離ΔYth以上である場合(ステップS7:Y)に処理はステップS8へ進む。絶対値|ΔY|が閾値距離ΔYth以上でない場合(ステップS7:N)に処理は終了する。
ステップS8において走行計画部31の速度計画部41は、自車両を減速する減速制御を行う。例えば目標速度演算部61は、目標速度Viを下げることにより自車両1を減速させてもよい。この結果、自車両1が減速するように自車両1の速度プロファイルが修正される。また例えば目標速度演算部61は、設定横加速度ayiの値を減少させてもよい。この結果、速度プロファイルの目標速度Vi自体が低くなり自車両1を減速する減速制御が行われる。その後に処理は終了する。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態の車両制御装置10は、第1実施形態の車両制御装置10の機能に加えて、予測軌道Tpと目標走行軌道Ttとの間の車線幅方向の乖離量の絶対値|ΔY|が所定の閾値距離ΔYth以上である場合に、予測軌道Tpと目標走行軌道Ttとの間の車線幅方向の乖離量ΔYが大きいほど、大きな減速度で自車両1の減速制御を行う。第2実施形態におけるコントローラ17の機能構成は、図2に示す第1実施形態のコントローラ17の機能構成と同様であり、同一又は類似の構成要素には同一の参照符号で示す。
【0037】
図2を参照する。速度計画修正部36は、乖離量の絶対値|ΔY|が大きいほどより低くなるように補正速度Vpを設定してよい。補正速度Vpが低いほどより低い速度プロファイルが設定されるため、現在の走行速度から速度プロファイルまで減速するための減速度が大きくなる。
【0038】
例えば速度計画修正部36は、予測軌道Tpよりも目標走行軌道へ近づいた地点を自車両1が通過できる旋回曲率を目標旋回曲率ρpとして設定し、目標旋回曲率ρpで旋回できる速度を補正速度Vpとして設定してよい。これにより、自車両1は、目標旋回曲率ρpで旋回できる補正速度Vpまで減速される。速度計画修正部36は、乖離量の絶対値|ΔY|が大きいほど、より大きな値を目標旋回曲率ρpに設定してよい。
【0039】
図8(a)を参照する。乖離量の絶対値|ΔY|が所定の閾値距離ΔYth以上である場合、速度計画修正部36は、例えば予測軌道Tp上の予測点Pを車線幅方向の目標走行軌道Tt側へオフセット量Ofsでオフセットした目標位置Ptを設定する。図8(a)の例では、目標走行軌道Tt上に目標位置Ptを設定している。
速度計画修正部36は、自車両1が目標位置Ptを走行するように旋回するための目標旋回曲率ρpを算出する。
【0040】
例えば、自車両1の現在位置を座標原点とする座標系における目標位置Ptのx座標及びy座標をそれぞれxp及びypとし、X軸の正方向を自車両1の進行方向と定め、X軸と直角かつ自車両1の左側方向をY軸の正方向と定める。この場合に速度計画修正部36は、次式(2)により目標旋回曲率ρpを算出してよい。
ρp=2×yp/(xp+yp) …(2)
【0041】
速度計画修正部36は、目標旋回曲率ρpの軌道を補正速度Vpで旋回する際に発生できる横力最大値m×ρp×Vpと、予測軌道Tp上を走行した場合に発生する横力最大値m×ρ×Vとが等しいと想定して、次式(3)により補正速度Vpを算出してよい。
Vp=V×(ρp/ρ)1/2 …(3)
なお、上式(2)において旋回曲率ρ及び車速Vは、予測軌道Tp上の任意の地点における旋回曲率及び車速を使用してよい。例えば、予測軌道Tpが走路境界(図8(a)の例では左側走路境界BL)と交差する点Pcにおける旋回曲率と車速を使用してよい。
【0042】
図8(b)の例では、乖離量の絶対値|ΔY|の大きさに応じて、目標位置Ptを予測軌道Tpと目標走行軌道Ttの間の位置に設定している。すなわち、予測軌道Tp上の予測点Pを車線幅方向の目標走行軌道Tt側へオフセットさせるオフセット量Ofsを、乖離量の絶対値|ΔY|の大きさに応じて可変としてよい。
例えば、乖離量の絶対値|ΔY|が大きいほど大きなオフセット量Ofsで予測点Pを目標走行軌道Tt側へオフセットさせて目標位置Ptを設定してもよい。これにより、乖離量の絶対値|ΔY|が大きいほど旋回曲率が大きくなって、補正速度Vpがより低くなる。この結果、現在の走行速度から速度プロファイルまで減速するための減速度が大きくなる。
【0043】
(第3実施形態)
第3実施形態の車両制御装置10は、第1実施形態及び第2実施形態の車両制御装置10の機能に加えて、自車両1の現在位置から所定距離前方までの目標走行軌道Ttが旋回軌道であるか否かを判定し、予測軌道Tpと目標走行軌道Ttとの間の車線幅方向の乖離量の絶対値|ΔY|が所定の閾値距離ΔYth以上であり、目標走行軌道Ttが旋回軌道である場合に、自車両1を減速する減速制御を行う。第2実施形態におけるコントローラ17の機能構成は、図2に示す第1実施形態のコントローラ17の機能構成と同様であり、同一又は類似の構成要素には同一の参照符号で示す。
【0044】
図2を参照する。速度計画修正部36は、自車両1の現在位置から所定距離前方までの目標走行軌道Ttが旋回軌道であるか否かを判定する。
例えば、左側に旋回する場合の旋回曲率の符号を正と定義し、右側に旋回する場合の旋回曲率の符号を負と定義する。速度計画修正部36は、目標走行軌道Tt上の各点の旋回曲率ρと所定の旋回判定閾値ρcrclとを比較してよい。
【0045】
速度計画修正部36は、旋回曲率ρが-ρcrcl未満である場合に、現在位置から所定距離前方までの目標走行軌道Ttが右旋回する旋回軌道であると判定し、旋回曲率ρがρcrclよりも大きい場合に左旋回する旋回軌道であると判定してよい。また、旋回曲率ρが-ρcrcl以上且つρcrcl以下である場合に、現在位置から所定距離前方までの目標走行軌道Ttが旋回軌道でないと判定してよい。
速度計画修正部36は、乖離量の絶対値|ΔY|が所定の閾値距離ΔYth以上であり、目標走行軌道Ttが旋回軌道である場合に、速度プロファイルよりも低い補正速度Vpを設定してよい。
【0046】
また例えば速度計画修正部36は、目標走行軌道Ttが旋回軌道である場合に、予測軌道Tpが目標走行軌道Ttよりも旋回方向の外側に位置するか否かを判定してもよい。
例えば、目標走行軌道Ttが右旋回する旋回軌道である場合には、目標走行軌道Ttよりも左側に位置するか否かを判定する。例えば速度計画修正部36は、乖離量ΔYが閾値距離ΔYth以上である場合に、予測軌道Tpが目標走行軌道Ttよりも旋回方向の左側に位置すると判定する。
【0047】
一方で目標走行軌道Ttが左旋回する旋回軌道である場合には、目標走行軌道Ttよりも右側に位置するか否かを判定する。例えば速度計画修正部36は、乖離量ΔYが閾値距離(-ΔYth)以下である場合に、予測軌道Tpが目標走行軌道Ttよりも旋回方向の右側に位置すると判定する。
速度計画修正部36は、乖離量の絶対値|ΔY|が所定の閾値距離ΔYth以上であり、目標走行軌道Ttが旋回軌道であり、予測軌道Tpが目標走行軌道Ttよりも旋回方向の外側に位置する場合に、速度プロファイルよりも低い補正速度Vpを設定してよい。えば速度計画修正部36は、第2実施形態と同様の補正速度Vpを設定してよい。
【0048】
一方で、予測軌道Tpが目標走行軌道Ttよりも旋回方向の外側に位置すると判定しない場合、速度計画修正部36は、速度計画部41の目標速度演算部61が上式(1)により演算した目標速度Vを修正しない。このため、目標速度Vがそのまま速度プロファイルとして設定される。
例えば速度計画修正部36は、速度計画部41の選択部62が目標速度Vを選択するように、補正速度Vpを目標速度V以上の高さに設定してもよい。
【0049】
図9は、第3実施形態の速度計画修正部36の処理の一例のフローチャートである。
ステップS10において速度計画修正部36は、速度プロファイル修正判定処理を実行する。速度プロファイル修正判定処理の詳細は、図10を参照して後述する。
ステップS11において速度計画修正部36は、速度プロファイル修正量演算処理を実行する。速度プロファイル修正量演算処理の詳細は、図11を参照して後述する。
【0050】
図10は、速度プロファイル修正判定処理の一例のフローチャートである。
ステップS20において速度計画修正部36は、予測軌道Tpと目標走行軌道Ttとの間の車線幅方向の絶対値|ΔY|が所定の閾値距離ΔYth以上であるか否かを判定する。絶対値|ΔY|が閾値距離ΔYth以上である場合(ステップS20:Y)に処理はステップS21へ進む。絶対値|ΔY|が閾値距離ΔYth以上でない場合(ステップS20:N)に処理はステップS22へ進む。
ステップS21において速度計画修正部36は、減速要求フラグFの値を「1」に設定する。その後に速度プロファイル修正判定処理は終了する。
ステップS22において速度計画修正部36は、減速要求フラグFの値を「0」に設定する。その後に速度プロファイル修正判定処理は終了する。
【0051】
図11は、速度プロファイル修正量演算処理の一例のフローチャートである。
ステップS30において速度計画修正部36は、目標走行軌道Tt上の各点の旋回曲率ρが旋回判定閾値(-ρcrcl)未満であるか否かを判定する。旋回曲率ρが旋回判定閾値(-ρcrcl)未満である場合(ステップS30:Y)に、目標走行軌道Ttが右旋回する旋回軌道であると判定し、処理はステップS31へ進む。旋回曲率ρが旋回判定閾値(-ρcrcl)未満でない場合(ステップS30:N)に処理はステップS34へ進む。
【0052】
ステップS31において速度計画修正部36は、乖離量ΔYが閾値距離ΔYth以上であるか否かを判定する。乖離量ΔYが閾値距離ΔYth以上である場合(ステップS31:Y)に、予測軌道Tpが目標走行軌道Ttよりも旋回方向の左側に位置すると判定して、処理はステップS32へ進む。乖離量ΔYが閾値距離ΔYth以上でない場合(ステップS31:N)に処理はステップS33へ進む。
ステップS32において速度計画修正部36は、修正量演算処理を実行する。修正量演算処理の詳細は、図12を参照して後述する。その後に速度プロファイル修正量演算処理は終了する。
【0053】
ステップS34において速度計画修正部36は、目標走行軌道Ttの旋回曲率ρが旋回判定閾値ρcrclよりも大きいか否かを判定する。目標走行軌道Ttの旋回曲率ρが旋回判定閾値ρcrclよりも大きい場合(ステップS34:Y)に、目標走行軌道Ttが左旋回する旋回軌道であると判定し、処理はステップS35へ進む。目標走行軌道Ttの旋回曲率ρが旋回判定閾値ρcrclよりも大きくない場合(ステップS34:N)に、目標走行軌道Ttが旋回軌道でないと判定し、処理はステップS37へ進む。
【0054】
ステップS35において速度計画修正部36は、乖離量ΔYが閾値距離(-ΔYth)以下であるか否かを判定する。乖離量ΔYが閾値距離(-ΔYth)以下である場合(ステップS35:Y)に、予測軌道Tpが目標走行軌道Ttよりも旋回方向の右側に位置すると判定して、処理はステップS36へ進む。乖離量ΔYが閾値距離(-ΔYth)以下でない場合(ステップS35:N)に処理はステップS37へ進む。
ステップS36において速度計画修正部36は、修正量演算処理を実行する。その後に速度プロファイル修正量演算処理は終了する。
ステップS33及びS37において速度計画修正部36は、速度計画部41の目標速度演算部61が演算した目標速度Vを修正しないで処理を終了する。この場合、目標速度Viがそのまま速度プロファイルとして設定される。
【0055】
図12は、修正量演算処理の一例のフローチャートである。
ステップS40において速度計画修正部36は、図8(a)又は図8(b)を参照して説明したように目標位置Ptを設定する。
ステップS41において速度計画修正部36は、自車両1が目標位置Ptを走行するように旋回するための目標旋回曲率ρpを算出する。
ステップS42において速度計画修正部36は、目標旋回曲率ρpで旋回できる速度を補正速度Vpとして演算する。その後に修正量演算処理は終了する。
【0056】
(第4実施形態)
第4実施形態の車両制御装置10は、第1実施形態~第3実施形態の車両制御装置10の機能に加えて、予測軌道Tpと目標走行軌道Ttとの間の車線幅方向の乖離量ΔYに応じて、自車両1の操向輪を転舵する転舵制御又は自車両1にヨーモーメントを付与する制駆動力配分制御を行うことで、予測軌道Tpが目標走行軌道Ttから乖離する方向と反対方向の横力を付与することにより、自車両1の走行軌道を修正する。
【0057】
図13は、第4実施形態のコントローラ17の機能構成の一例のブロック図である。第2実施形態におけるコントローラ17の機能構成は、図2に示す第1実施形態のコントローラ17の機能構成の構成要素を有しており、同一又は類似の構成要素には同一の参照符号で示す。
第4実施形態のコントローラ17は、逸脱回避制御部35を更に備える。乖離量予測部34は、算出した乖離量ΔYを逸脱回避制御部35と速度計画修正部36へ出力する。
【0058】
逸脱回避制御部35は、操向輪を転舵する転舵制御により乖離量ΔYの乖離方向と反対方向の横力を付与するための旋回指令補正量を、乖離量ΔYに応じて演算する。また、逸脱回避制御部35は、自車両1にヨーモーメントを付与する制駆動力配分制御により乖離量ΔYの乖離方向と反対方向の横力を付与するための制駆動力指令補正量を、乖離量ΔYに応じて演算する。
【0059】
例えば逸脱回避制御部35は、乖離量の絶対値|ΔY|が所定の閾値距離ΔYth以上である場合に、旋回指令補正量や制駆動力指令補正量を演算してよい。また例えば逸脱回避制御部35は、乖離量の絶対値|ΔY|が所定の閾値距離ΔYth以上であり、予測軌道Tpが目標走行軌道Ttよりも旋回方向の外側に位置する場合に、旋回方向内側への横力を付与する旋回指令補正量や制駆動力指令補正量を演算してよい。
【0060】
逸脱回避制御部35は、旋回指令補正量を操舵トルク演算部38へ出力し、制駆動力指令補正量を制駆動力演算部37へ出力する。
制駆動力演算部37は、速度制御部32が出力した制駆動力指令を制駆動力指令補正量で補正し、補正後の制駆動力指令に従って駆動トルク指令値と制動液圧指令値を生成し、それぞれ駆動力源コントローラ18aとブレーキコントローラ18bに出力する。
操舵トルク演算部38は、軌道追従制御部33が出力した旋回指令を旋回指令補正量で補正し、補正後の旋回指令に従って操向輪を転舵させる操舵トルク指令値を生成し、ステアリングコントローラ18cに出力する。
【0061】
(変形例)
上記の第1~4実施形態では、予測軌道Tpと目標走行軌道Ttとの間の車線幅方向の乖離量の絶対値|ΔY|が所定の閾値距離ΔYth以上である場合に、自車両1を減速する減速制御を行う構成について説明した。これに代えて又は加えて、上記の第1~4実施形態の各々において、予測軌道Tpと走路境界BR及びBLとの間の車線幅方向の離間距離を算出し、離間距離が所定閾値以下の場合に自車両1を減速する減速制御を行ってもよい。
【0062】
例えば、予測軌道Tp上の予測点P、P…のY座標をそれぞれY、Y…とし、右側走路境界BR上の境界点PR0、PR1、PR2…のY座標をそれぞれYR0、YR1、YR2…とし、左側走路境界BL上の境界点PL0、PL1、PL2…のY座標をそれぞれYL0、YL1、YL2…とする。
速度計画修正部36は、予測軌道Tpと左側走路境界BLとの間の車線幅方向の離間距離(YLi-Y)の何れかが所定閾値Δy以下の場合に、減速要求フラグFの値を「1」に設定し、速度プロファイルよりも低い速度を補正速度Vpとして設定する(i=1、2…)。また、予測軌道Tpと右側走路境界BRとの間の車線幅方向の離間距離(Y-YRi)の何れか所定閾値Δy以下の場合(i=1、2…)に、減速要求フラグFの値を「1」に設定し、速度プロファイルよりも低い補正速度Vpを設定する。
【0063】
(実施形態の効果)
(1)実施形態によれば、自車両1の前方の車線における自車両1の目標走行軌道を算出し、目標走行軌道に沿った位置に応じた目標速度である速度プロファイルを設定し、自車両1の現在位置である自己位置と現在の姿勢角とを検出し、自己位置と速度プロファイルとに基づいて、自車両1の走行速度が速度プロファイルに応じた速度となるように走行制御を行う車両制御方法が与えられる。車両制御方法では、自己位置、姿勢角及び速度プロファイルに基づいて、自車両1の現在位置から所定距離前方までの走行軌道である予測軌道を予測し、予測軌道と目標走行軌道との間の車線幅方向の距離の最大値が所定閾値距離以上である場合に、自車両1を減速する減速制御を行う。
【0064】
これにより、目標走行軌道や速度プロファイルにおいて想定されている自車両1の現在の車両状態(例えば位置や姿勢角)にずれが生じ、将来、目標走行軌道に沿って走行ができなくなる場合でも、予測軌道と走路境界との位置や、目標軌道からの予測軌道の乖離量に応じて速度プロファイルを減速できる。この結果、自車両が実際に走行する予定の走行軌道に対して目標走行速度が超過速度になるのを抑制できる。
【0065】
(2)上記の減速制御に加えて、自車両1の操向輪を転舵する転舵制御や自車両1にヨーモーメントを付与する制駆動力配分制御によって、予測軌道が目標走行軌道から乖離する方向と反対方向の横力を付与することにより、自車両1の走行軌道を修正してもよい。
これにより、転舵制御や制駆動力配分制御によって目標走行軌道からの乖離を抑制することができる。
(3)所定閾値距離は目標走行軌道から車線の走路境界までの距離と等しくてもよい。
これにより、走路境界への過度の接近を抑制できる。
【0066】
(4)実施形態の車両制御方法では、自車両1の現在位置から所定距離前方までの目標走行軌道が旋回軌道であるか否かを判定し、予測軌道と目標走行軌道との間の車線幅方向の距離の最大値が所定閾値距離以上であり、目標走行軌道が旋回軌道である場合に、上記の減速制御を行ってもよい。
これにより、走路境界へ接近しやすい旋回時において減速制御を実行できる。
【0067】
(5)実施形態の車両制御方法では、予測軌道が目標走行軌道よりも旋回方向の外側に位置するか否かを判定し、予測軌道と目標走行軌道との間の車線幅方向の距離の最大値が所定閾値距離以上であり、目標走行軌道が旋回軌道であり、予測軌道が目標走行軌道よりも旋回方向の外側に位置する場合にのみ、上記の減速制御を行ってもよい。
これにより、予測軌道が目標走行軌道よりも旋回方向の外側に位置し、走路境界へ接近しやすい状況において減速制御を実行できる。
【0068】
(6)予測軌道と目標走行軌道との間の車線幅方向の距離の最大値が大きい場合に、最大値が小さい場合よりも大きな減速度で上記の減速制御を行ってもよい。
これにより、予測軌道と目標走行軌道の乖離量に応じた適切な減速度で減速できる。
(7)実施形態の車両制御方法では、目標旋回曲率を設定し、減速制御において、目標旋回曲率で旋回できる速度まで自車両1を減速してもよい。
これにより、旋回曲率に従って安定して旋回できる。
【0069】
(8)予測軌道と車線の走路境界との間の車線幅方向の離間距離を算出し、離間距離が所定閾値以下の場合に、予測軌道上の地点を車線幅方向の目標走行軌道側へオフセットした位置を走行できるように目標旋回曲率を設定してもよい。
これにより、走路境界と予測軌道の差に応じた適切な旋回位置で旋回できる。
(9)予測軌道と目標走行軌道との間の車線幅方向の離間距離を算出し、離間距離が所定閾値以上の場合に、予測軌道上の地点を車線幅方向の目標走行軌道側へオフセットした位置を走行できるように目標旋回曲率を設定してもよい。
これにより、目標走行軌道と予測軌道の差に応じた適切な旋回位置で旋回できる。
(10)予測軌道と目標走行軌道との間の車線幅方向の乖離量が大きい場合に、乖離量が小さい場合よりも大きなオフセット量で、予測軌道上の上記の地点をオフセットしてもよい。
これにより、目標軌道と予測軌道の乖離量に応じた適切な旋回位置で旋回できる。
【符号の説明】
【0070】
1…自車両、10…車両制御装置、11…物体センサ、12…車両センサ、13…測位装置、14…地図データベース、15…通信装置、16…ナビゲーション装置、17…コントローラ、17a…プロセッサ、17b…記憶装置、18a…駆動力源コントローラ、18b…ブレーキコントローラ、18c…ステアリングコントローラ、19a…駆動力源、19b…ブレーキアクチュエータ(液圧アクチュエータ)、19b…ブレーキアクチュエータ、19c…転舵アクチュエータ、30…走路境界生成部、31…走行計画部、32…速度制御部、33…軌道追従制御部、34…乖離量予測部、35…逸脱回避制御部、36…速度計画修正部、37…制駆動力演算部、38…操舵トルク演算部、40…軌道計画部、41…速度計画部、50…予測軌道生成部、51…乖離量算出部、60…曲率演算部、61…目標速度演算部、62…選択部
図1
図2
図3
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図5
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図10
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