(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063456
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】表層除去機
(51)【国際特許分類】
E01C 19/34 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
E01C19/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171428
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 雅嘉
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AD13
2D052BC01
2D052BC11
(57)【要約】
【課題】汎用性とアタッチメントの剛性を高め、転圧板にアタッチメントが良好に固定され、衝撃を緩和し、騒音の発生を低減できる表層除去機を提供する。
【解決手段】表層除去機1は、ランマー3の転圧板10に取り付けられ、アスファルト混合物層を打撃する複数の突起50を有するアタッチメント12を備える表層除去機であって、アタッチメント12は上方を開口する箱形部材13であり、箱形部材13の内側に衝撃吸収部材34を挟んで転圧板10が配置し、転圧板10は開口部15(開口側)から押さえ板で締め付け固定した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランマーの転圧板に取り付けられ、アスファルト混合物層を打撃する複数の突起を有するアタッチメントを備える表層除去機であって、
前記アタッチメントは上方を開口する箱形部材であり、
前記箱形部材の内側に衝撃吸収部材を挟んで前記転圧板を配置し、前記転圧板は前記開口側から押さえ板で締め付け固定した、
表層除去機。
【請求項2】
前記転圧板の略全周囲が、前記箱形部材の4辺の壁部により囲われる、
請求項1に記載の表層除去機。
【請求項3】
前記押さえ板は、前記箱形部材の前壁に配置される前押さえ板と、前記箱形部材の後壁に配置される後押さえ板とを備える、
請求項1又は2に記載の表層除去機。
【請求項4】
前記複数の突起は前記アタッチメントの後方から見て前列の突起の間に後列の突起が位置するように配列される、
請求項1又は2に記載の表層除去機。
【請求項5】
前記突起は超硬合金製の突起体を備える、
請求項1又は2に記載の表層除去機。
【請求項6】
前記衝撃吸収部材はゴムシートである、
請求項1又は2に記載の表層除去機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表層除去機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切削機により切削除去した後の、コンクリート床版上に残存するアスファルト混合物層は、はつり機や金属製ブラシにより除去される。特許文献1は、ランマーの転圧板の底面に、複数個の突起を設けた打撃式転圧機を開示する。特許文献2は、ランマーの転圧板の底面に、スパイク状の突起を設けたアタッチメントを、ボルトにより着脱自在に取付けた打撃式転圧機を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2の技術では、ランマーの転圧板に突起や、アタッチメントを取付けるボルト孔などを加工する必要があり、一般のランマーをそのまま転用できず、汎用性に劣る課題がある。また、コンクリート床版上に残存するアスファルト混合物層を除去する場合、かなりの打撃力が必要であり、アタッチメントの剛性が課題となり、過大な衝撃と、これに伴う騒音が課題となる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、汎用性とアタッチメントの剛性を高め、衝撃を緩和し、騒音を低減できる表層除去機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ランマーの転圧板に取り付けられ、アスファルト混合物層を打撃する複数の突起を有するアタッチメントを備える表層除去機であって、前記アタッチメントは上方を開口する箱形部材であり、前記箱形部材の内側に衝撃吸収部材を挟んで前記転圧板を配置し、前記転圧板は前記開口側から押さえ板で締め付け固定した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、汎用性とアタッチメントの剛性を高め、転圧板にアタッチメントが良好に固定され、衝撃を緩和し、騒音の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.実施形態の構成]
図1は、床版上の表層除去機1の斜視図である。
図1には、X軸、Y軸、及びZ軸を示す。X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交する。Z軸は、上下方向に延びる軸であり、+Z方向を上方向とする。X軸及びY軸は、水平面に平行である。以下の説明において、X軸に沿った方向を前後方向とし、+X方向を前方向とする。Y軸に沿った方向を左右方向とし、+Y方向を左方向とする。
図1におけるX軸、Y軸、及びZ軸は、他の各図においても同じ方向を示す。
【0010】
図2は、アタッチメント12を上方から見た平面図である。
図3は
図2のA-A断面図である。
図4は、アタッチメント12及び転圧板10の側面図である。
図5はアタッチメント12を下方から見た平面図である。なお、
図2及び
図3では、説明のために転圧板10と固定具40とを図示しておらず、
図4では支持軸9を図示していない。
【0011】
表層除去機1は、タンピングランマー3と、ランマー3の転圧板10に取付けられるアタッチメント12と、により構成される。
図1に示すように、ランマー3は、エンジンの原動機2と、原動機2に接続された起振体5と、を備え、起振体5の下部には、ベローズ7を介して、支持軸9が取付けられている。支持軸9の下部には転圧板10が取付けられ、転圧板10には、
図2及び
図3に示す板状のゴムシート(衝撃吸収部材)34を挟んで、アタッチメント12が取付けられている。原動機2は、内燃機関に限定されず、電動機であってもよい。
【0012】
転圧板10の前部分である転圧板反り部10Uは上方へ折り曲げられている。折り曲げ形成された転圧板10の表面に沿うように、アタッチメント12の前部分であるアタッチメント反り部12Uは上方へ折り曲げられている。アタッチメント反り部12Uはランマー3の進行方向の前方に位置している。
【0013】
アタッチメント12は、
図2及び
図3に示すように、前方に前壁16と、後方に後壁18と、左右に1つずつ、計2つの側壁20を備える。すなわち、アタッチメント12は蓋のない箱形部材となっており、転圧板10は、前壁16と、後壁18と、側壁20とに囲まれるように配置される。
【0014】
すなわち、アタッチメント12は上方に開口部15を有する箱形部材13を備える。また、転圧板10の側面は、4辺の壁部、すなわち前壁16と、後壁18と、側壁20とによって囲まれている。転圧板10の側面は、前壁16と、後壁18と、側壁20とに接するか、近傍に位置する。
【0015】
前壁16は、上部に前押さえ板22を備え、前壁16の上面と前押さえ板22との間に前高さ変更板26を備える。後壁18は、上部に後押さえ板24を備え、後壁18の上面と後押さえ板24との間に後高さ変更板28を備える。
【0016】
前押さえ板22及び後押さえ板24には、それぞれ3つの貫通孔30が設けられており、前壁16及び後壁18には各貫通孔30に対応する数のねじ穴32が形成されている。また、前高さ変更板26及び後高さ変更板28には、各貫通孔30に対応する位置に貫通孔が設けられている。
【0017】
前押さえ板22及び後押さえ板24は、3つの貫通孔30を介して3つの固定具40により、前壁16及び後壁18に固定される。前押さえ板22及び後押さえ板24の短手方向の幅は、支持軸9の下部に干渉しない程度の大きさである。
【0018】
転圧板10は、前押さえ板22及び後押さえ板24によって箱形部材13の内側に押さえつけられることで固定される。箱形部材13の内側には、ゴムシート34が配置され、ゴムシート34の上に転圧板10が配置される。
前壁16及び前高さ変更板26を含む高さと、後壁18及び後高さ変更板28を含む高さとが、ゴムシート34の上に配置された転圧板10の上面より若干低くなるように形成されている。前高さ変更板26と、後高さ変更板28とは、ゴムシート34や転圧板10の厚さに応じ、異なる厚さの変更板に変更すればよい。前高さ変更板26と、後高さ変更板28との厚さは変更せずに、ゴムシート34の厚さで調整してもよい。
図4に示すように、前押さえ板22及び後押さえ板24を複数の固定具40によって締め付けることで、ゴムシート34が圧迫され、転圧板10は、箱形部材13の内側に固定される。この構成によれば、アタッチメント12の取付けに当たり、転圧板10に突起やボルト孔などを加工する必要がなく、一般のランマーをそのまま転用でき、汎用性が高められる。また、アタッチメント12の内側に、ゴムシート34が圧迫されて配置されるため、作業者への衝撃が緩和され、騒音の発生を低減できる。
【0019】
ゴムシート34は、
図2及び
図3に示すように、アタッチメント12の内面12Aに接するように配置される。ゴムシート34の前部は、
図4に示すように、転圧板反り部10Uと、アタッチメント反り部12Uとに沿うように折り曲げられており、ゴムシート反り部34Uが形成されている。
ゴムシート34の厚さは、転圧板10の厚さの5分の1程度である。例えば、転圧板10の厚さが「50mm」であるとき、ゴムシート34の厚さは「10mm」である。ゴムシート34の材質は、例えば硬質ゴムが好適である。平面視において、ゴムシート34の大きさは、転圧板10の大きさよりも小さい。
【0020】
転圧板10は、その上面に、左右に1つずつ、計2つの押さえ金14を備える。押さえ金14は、転圧板10の剛性を高め、平面視では略矩形である。押さえ金14は、転圧板10の上面に3つの固定具42で固定されている。
アタッチメント12は、前壁16と、後壁18と、2つの側壁20と、を備える。前壁16と、後壁18とには、前押さえ板22、前高さ変更板26、及び後押さえ板24、後高さ変更板28が配置されている。この構成によれば、アタッチメント12の断面係数が大きくなり、アタッチメント12の曲げ応力に対する剛性が高められる。
【0021】
アタッチメント12の底面12Bに、
図3に示すように、複数の突起50が設けられている。突起50は、底面12Bと接続する台座54と、台座54の先端に接続する切削体56(突起体)とを備える。
【0022】
切削体56の材質は、超硬合金であり、アスファルトの切削に好適である。突起50は、底面12Bに台座54を溶接し、台座54に切削体56をロウ付けしている。
【0023】
複数の突起50は、
図5に示すように、ランマー3の進行方向に直交する方向に向けて横並びに配置され、かつ、ランマー3の進行方向の前方から後方に向けて多列に亘って設けられている。
【0024】
図5に、左右方向に延びる仮想線で列62を示し、第1列62A、第2列62B、第3列62C、第4列62D、第5列62Eを示す。
アタッチメント12の底面12Bの最前列である第1列62Aに3個の突起50が横並びに配置される。その後列である第2列62Bに4個の突起50が配置される。その後列である第3列62Cに、同じく4個の突起50が配置される。さらに、その後列である第4列62Dに、4個の突起50が配置される。最後に、その後列である第5列62Eに、3個の突起50が横並びに配置されている。
【0025】
すなわち、アタッチメント12の後方から見たときに、隣り合う2列に並べられたそれぞれの複数の突起50は、前列の突起50の間に後列の突起50が位置するように配列されている。アタッチメント12の後方から見たときに、後列の切削部56の先端が、前列の切削部56の先端の間に位置するように配列されている。
第2列62B、第3列62C、第4列62Dに並べられた複数の突起50は、いずれの突起50との組み合わせにおいても、切削部56の先端が重ならない。
【0026】
[2.作用]
上記構成の表層除去機1は、
図1及び
図2に示すように、原動機2により起振体5を動作させ、ベローズ7を介して、支持軸9の方向に転圧板10を振動させる。転圧板10が振動することで、アタッチメント12、及び、
図5に示すアタッチメント12に接着された複数の突起50が、コンクリート床版の上に形成されたアスファルト混合物層(表層)を打撃する。複数の突起50は、先端に超硬合金製の切削体56(突起体)を備え、該切削体56はアスファルト混合物層と比較して、十分な硬度と耐久度を有するため、アスファルト混合物層を破壊し、除去することができる。
また、表層除去機1は、切削体56を用いて表層を打撃するため、表層を容易に除去できる。そのため、タンピングランマー3を用いた除去作業の時間が短くなり、コンクリート床版の損傷を抑制できる。
【0027】
また、
図5に示すように、各複数の突起50は左右方向に亘る各列に沿って設けられている。隣り合う2列に並べられた複数の突起50は、アタッチメント12の後方から見たときに、切削部56の先端が重ならない位置にある。そのため、表層除去機1が前進しながらアスファルト混合物層を打撃するとき、前列の複数の突起50が打撃しなかった範囲のアスファルト混合物層を打撃することができる。すなわち、表層除去機1が通過する範囲のアスファルト混合物層を漏れなく打撃することができる。
【0028】
さらに、
図2及び
図3に示すように、転圧板10とアタッチメント12との間には、ゴムシート34が挟まれており、ゴムシート34は振動を吸収する。また、アタッチメント12は、前壁16と、後壁18と、側壁20とを備えるので、転圧板10の側面と、ゴムシート34とが覆われる。そのため、転圧板10及びゴムシート34が摩耗することを防止できる。
【0029】
[3.効果]
以上説明したように、本実施形態において、表層除去機1は、ランマー3の転圧板10に取り付けられ、アスファルト混合物層を打撃する複数の突起50を有するアタッチメント12を備え、アタッチメント12は上方を開口する箱形部材13であり、箱形部材13の内側にゴムシート34(衝撃吸収部材)を挟んで転圧板10が配置し、転圧板10は開口部15(開口側)から前押さえ板22(押さえ板)及び後押さえ板24(押さえ板)で締め付け固定した。
この構成によれば、アタッチメント12の取付けに当たり、転圧板10に突起やボルト孔などを加工する必要がなく、一般のランマーをそのまま転用でき、汎用性が高められる。また、アタッチメント12の内側に、ゴムシート34が圧迫されて配置されるため、ゴムシート34が衝撃を吸収し、作業者への衝撃が緩和され、騒音の発生を低減できる。また、アタッチメント12が箱形部材13で形成されるため、転圧板10やゴムシート34などの耐久性が向上する。また、転圧板10を締め付け固定する前押さえ板22及び後押さえ板24は、固定具40で止められるが、固定具40が緩んだ場合でも、アタッチメント12が箱形部材13で形成されるため、転圧板10の横ずれが側壁20で押えられ、アタッチメント12が転圧板10から外れることがなく、良好に固定できる。
【0030】
また、本実施形態において、押さえ板は、箱形部材13の前壁に配置される前押さえ板と、箱形部材13の後壁に配置される後押さえ板24とを備えてもよい。
これによれば、アタッチメント12の剛性が高められ、作業者への衝撃が緩和され、騒音の発生を低減できる。また、転圧板10の転圧板反り部10Uも良好に固定でき、転圧板10の固定強度が向上する。
【0031】
また、本実施形態において、転圧板10の略全周囲が、箱形部材13の4辺の壁部により囲われてもよい。
これによれば、アタッチメント12の剛性が高められ、作業者への衝撃が緩和され、表層除去機1によるコンクリート床版上の表層の除去作業時の騒音を抑制できる。
【0032】
また、本実施形態において、複数の突起50はアタッチメント12の後方から見て前列の突起50の間に後列の突起50が位置するように配列されてもよい。
これによれば、効率よくアスファルト混合物層を除去できる。
【0033】
また、本実施形態において、突起50は超硬合金製の突起体56を備えてもよい。
これによれば、コンクリート床版の損傷を抑えながら、コンクリート床版上の表層を破壊できる。
【0034】
また、本実施形態において、衝撃吸収部材はゴムシート34であってもよい。
これによれば、作業者への衝撃を緩和し、騒音の発生を低減できる。
【0035】
[4.他の実施形態]
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0036】
上述した実施形態では、複数の突起50が多列に亘って設けられる態様の例として、第1列62A、第2列62B、第3列62C、第4列62D、第5列62Eに各複数の突起50が設けられることを示したが、これらは一例である。列の数や、切削部56の先端の位置が重ならない範囲において複数の突起50の配列等は、変更可能である。
【0037】
また、転圧板10は平板状であってもよい。この場合、アタッチメント12も併せて平板状に形成される。
【符号の説明】
【0038】
1 表層除去機
3 ランマー
10 転圧板
12 アタッチメント
13 箱形部材
16 前壁
18 後壁
20 側壁
22 前押さえ板
24 後押さえ板
34 ゴムシート(衝撃吸収部材)
50 突起
56 切削体(突起体)