(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063466
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20240502BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171444
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】望月 泰志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 重人
(72)【発明者】
【氏名】高野 朋昭
【テーマコード(参考)】
5G309
5G352
【Fターム(参考)】
5G309AA01
5G309AA09
5G352CH03
(57)【要約】
【課題】品質を向上できるワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス10は、複数の電線20を有する電線束30と、電線束30の外周に螺旋状に巻き付けられた粘着テープ40と、を備える。電線束30のねじれ量は、電線束30の長さ方向に沿う長さ10cm当たりにおける電線20の回転量が2回転以内となるねじれ量である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を有する電線束と、
前記電線束の外周に螺旋状に巻き付けられた粘着テープと、を備え、
前記電線束のねじれ量は、前記電線束の長さ方向に沿う長さ10cm当たりにおける前記電線の回転量が2回転以内となるねじれ量である、ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記複数の電線の各々は、導体断面積が5mm2以下の電線である、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記電線束は、2本の前記電線により構成されている、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記粘着テープの長さ方向の端面は、切断面であり、
前記切断面は、前記粘着テープの長さ方向と交差する第1方向に沿って直線状に延びている、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記切断面は、前記第1方向における第1端部および第2端部を有し、
前記第1端部と前記第2端部との間の長さのうち前記粘着テープの長さ方向に沿う長さである前記切断面の突出長は、5mm以下である、請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記粘着テープは、第1の幅を有する第1部分と、前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2部分とを有し、
前記第2の幅は、前記第1の幅の0.5倍以上1倍未満の長さである、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記第1部分は、第1の厚みを有し、
前記第2部分は、前記第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有し、
前記第2の厚みは、前記第1の厚みの0.5倍以上1倍未満の厚みである、請求項6に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記第1部分は、前記第2部分よりも前記粘着テープの長さ方向に沿う寸法が大きい、請求項6に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
前記粘着テープは、複数の前記第1部分と複数の前記第2部分とを有し、前記粘着テープの長さ方向に沿って前記第1部分と前記第2部分とが1つずつ交互に連なって設けられており、
前記粘着テープは、前記電線束の外周に螺旋状に複数回巻き付けられており、
前記複数の第1部分は、前記電線束の周方向において互いに同じ位置に設けられており、
前記複数の第2部分は、前記電線束の周方向において互いに同じ位置に設けられている、請求項6に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
前記粘着テープは、前記電線束の外周に一定のピッチで螺旋状に巻き付けられている、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両の内部に配索されるワイヤハーネスとしては、複数の電線を有する電線束と、複数の電線を束ねる粘着テープとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のワイヤハーネスでは、電線束の外周に対して粘着テープを巻き付けるテープ巻き作業がテープ巻き装置を用いて実施される。テープ巻き装置を用いたテープ巻き作業では、粘着テープに一定の張力を与えつつ、その粘着テープを電線束の外周に螺旋状に巻き付けていく。テープ巻き装置を用いることにより、テープ巻き作業を自動化および機械化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ワイヤハーネスにおいては、品質の向上が望まれている。
本開示の目的は、品質を向上できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のワイヤハーネスは、複数の電線を有する電線束と、前記電線束の外周に螺旋状に巻き付けられた粘着テープと、を備え、前記電線束のねじれ量は、前記電線束の長さ方向に沿う長さ10cm当たりにおける前記電線の回転量が2回転以内となるねじれ量である。
【発明の効果】
【0006】
本開示のワイヤハーネスによれば、品質を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略側面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のワイヤハーネスの一例を示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のワイヤハーネスの一例を示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の粘着テープを示す概略平面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態の粘着テープを示す概略平面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態の粘着テープを示す概略縦断面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態のテープ巻き装置を示す概略構成図である。
【
図9】
図9は、一実施形態のテープ巻き装置の装置本体を示す概略正面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態のテープ巻き装置の装置本体を示す概略正面図である。
【
図11】
図11は、一実施形態のテープ巻き装置の装置本体を示す概略正面図である。
【
図12】
図12は、一実施形態のテープ巻き装置の装置本体を示す概略正面図である。
【
図13】
図13は、一実施形態のテープ巻き装置を用いたテープ巻き方法を示す説明図である。
【
図14】
図14は、従来のテープ巻き装置を用いてテープ巻きした場合のワイヤハーネスを示す概略斜視図である。
【
図15】
図15は、従来のテープ巻き装置を用いてテープ巻きした場合の粘着テープを示す概略平面図である。
【
図16】
図16は、従来のテープ巻き装置を用いてテープ巻きした場合の粘着テープを示す概略縦断面図である。
【
図17】
図17は、比較例の粘着テープを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のワイヤハーネスは、複数の電線を有する電線束と、前記電線束の外周に螺旋状に巻き付けられた粘着テープと、を備え、前記電線束のねじれ量は、前記電線束の長さ方向に沿う長さ10cm当たりにおける前記電線の回転量が2回転以内となるねじれ量である。
【0009】
この構成によれば、電線束のねじれ量が2回転以内/10cmとなり、電線束のねじれ量が小さくなる。これにより、電線束のねじれに起因して電線束の長さ方向の寸法が短くなることを好適に抑制でき、ワイヤハーネスの品質を向上できる。
【0010】
[2]上記[1]において、前記複数の電線の各々は、導体断面積が5mm2以下の電線であってもよい。
この構成によれば、電線束を構成する各電線がねじれの生じやすい細物電線であっても、電線束のねじれ量を小さく抑えることができる。これにより、電線束を構成する各電線が細物電線であっても、電線束のねじれに起因して電線束の長さ方向の寸法が短くなることを好適に抑制できる。
【0011】
[3]上記[1]または[2]において、前記電線束は、2本の前記電線により構成されていてもよい。
この構成によれば、電線束にねじれが最も生じやすい2本の電線により電線束が構成される場合であっても、電線束のねじれ量を小さく抑えることができる。これにより、電線束が2本の電線で構成される場合であっても、電線束のねじれに起因して電線束の長さ方向の寸法が短くなることを好適に抑制できる。
【0012】
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、前記粘着テープの長さ方向の端面は、切断面であり、前記切断面は、前記粘着テープの長さ方向と交差する第1方向に沿って直線状に延びていてもよい。
【0013】
この構成によれば、粘着テープの長さ方向の端面が、一直線状に延びる切断面に形成される。このため、作業者が手作業により粘着テープを切断した場合の切断面に比べて、切断面の品質を向上できる。
【0014】
[5]上記[4]において、前記切断面は、前記第1方向における第1端部および第2端部を有し、前記第1端部と前記第2端部との間の長さのうち前記粘着テープの長さ方向に沿う長さである前記切断面の突出長は、5mm以下であってもよい。
【0015】
この構成によれば、切断面の突出長を5mm以下に抑えることができ、切断面において粘着テープが意図せずに伸長されることを抑制できる。これにより、作業者が手作業により粘着テープを切断した場合の切断面に比べて、切断面の品質を向上できる。
【0016】
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、前記粘着テープは、第1の幅を有する第1部分と、前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2部分とを有し、前記第2の幅は、前記第1の幅の0.5倍以上1倍未満の長さであってもよい。
【0017】
この構成によれば、第1部分と第2部分とにおけるテープ幅の差を50%以内に抑えることができる。これにより、粘着テープにおけるテープ幅のばらつきを50%以内に抑えることができる。
【0018】
[7]上記[6]において、前記第1部分は、第1の厚みを有し、前記第2部分は、前記第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有し、前記第2の厚みは、前記第1の厚みの0.5倍以上1倍未満の厚みであってもよい。
【0019】
この構成によれば、第1部分と第2部分とにおけるテープ厚の差を50%以内に抑えることができる。これにより、粘着テープにおけるテープ厚のばらつきを50%以内に抑えることができる。
【0020】
[8]上記[6]または[7]において、前記第1部分は、前記第2部分よりも前記粘着テープの長さ方向に沿う寸法が大きくてもよい。
この構成によれば、テープ幅の小さい第2部分の長さを第1部分よりも短くできる。これにより、粘着テープの長さ方向において、テープ幅の小さい第2部分の領域を小さくできる。
【0021】
[9]上記[6]から[8]のいずれかにおいて、前記粘着テープは、複数の前記第1部分と複数の前記第2部分とを有し、前記粘着テープの長さ方向に沿って前記第1部分と前記第2部分とが1つずつ交互に連なって設けられており、前記粘着テープは、前記電線束の外周に螺旋状に複数回巻き付けられており、前記複数の第1部分は、前記電線束の周方向において互いに同じ位置に設けられており、前記複数の第2部分は、前記電線束の周方向において互いに同じ位置に設けられていてもよい。
【0022】
この構成によれば、粘着テープが電線束の外周に螺旋状に複数回巻き付けられる。このとき、第1部分および第2部分の各々が、電線束の周方向において常に同じ位置に設けられる。この結果、電線束の外周に対する粘着テープの巻き付けの品質を向上できる。
【0023】
[10]上記[1]から[9]のいずれかにおいて、前記粘着テープは、前記電線束の外周に一定のピッチで螺旋状に巻き付けられていてもよい。
この構成によれば、電線束の外周に対して粘着テープが一定のピッチで巻き付けられる。このため、粘着テープの幅方向における所定部分同士が重なるように粘着テープを螺旋状に巻き付ける場合には、粘着テープの重なり幅が一定となるように、粘着テープを電線束の外周に巻き付けることができる。これにより、電線束の外周に対する粘着テープの巻き付けの品質を向上できる。
【0024】
ここで、本明細書の「一定のピッチ」には、基準のピッチ(設計値)に対して誤差のない場合の他、基準のピッチに対して±5mm程度の誤差がある場合も含む。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」、「直交」、「全長」や「全周」は、厳密に平行、直交、全長や全周の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行、直交、全長や全周の場合も含まれる。また、本明細書において「一定」とは、正確に一定の場合の他、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で多少のばらつきがある場合も含む。本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」等の用語は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、各構成を順位付けするものではない。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
(車両1の構成)
図1に示すように、車両1は、複数の電気機器2,3と、複数の電気機器2,3を電気的に接続するワイヤハーネス10とを有している。電気機器2,3としては、例えば、バッテリ、インバータ、モータ、エアーコンディショナー装置、ウィンカー装置、エアバッグ装置を挙げることができる。
【0026】
(ワイヤハーネス10の構成)
図2に示すように、ワイヤハーネス10は、複数の電線20を有する電線束30と、電線束30の外周に巻き付けられた粘着テープ40とを備えている。本実施形態の電線束30は、2本の電線20を有している。電線束30は、長尺状に形成されている。電線束30は、例えば、ワイヤハーネス10の配索経路に応じて、二次元状または三次元状に曲げられるように形成されている。なお、電線束30は、例えば、ワイヤハーネス10の長さ方向の途中で分岐していてもよい。
【0027】
(電線20の構成)
各電線20は、導体よりなる芯線21と、芯線21の外周を囲うとともに電気絶縁性を有する絶縁被覆22とを有する被覆電線である。各電線20は、例えば、12V程度の低電圧に対応可能な低圧電線である。各電線20は、例えば、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線であってもよいし、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線であってもよい。本実施形態の各電線20は、ノンシールド電線である。
【0028】
芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚線や単一の導体からなる単芯線を用いることができる。単芯線としては、例えば、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や、内部が中空構造をなす筒状導体を用いることができる。また、芯線21としては、撚線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。芯線21の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系の金属材料を用いることができる。
【0029】
絶縁被覆22は、例えば、芯線21の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆22は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料により構成されている。
各電線20の長さ方向と直交する平面によって電線20を切断した断面形状、つまり各電線20の横断面形状は、任意の形状に形成することができる。各電線20の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、扁平形状に形成することができる。本実施形態の各電線20の横断面形状は、円形状に形成されている。
【0030】
各電線20は、例えば、導体断面積、つまり芯線21の横断面積が小さい細物電線である。ここで、本明細書における「細物電線」とは、導体断面積が5mm2(所謂5sq)以下の電線である。各電線20としては、導体断面積が0.35mm2と同じかそれよりも小さい電線であることが好ましい。ここで、導体断面積が0.35mm2と同じ電線とは、JIS規格における0.35sqに適合する電線、または米国ワイヤゲージ規格におけるAWG22に適合する電線である。また、導体断面積が0.35mm2と同じ電線とは、導体断面積が0.35mm2よりも若干大きい電線であってもよいし、導体断面積が0.35mm2よりも若干小さい電線であってもよい。導体断面積が0.35mm2よりも小さい電線としては、例えば、JIS規格における0.35sqよりも導体断面積が小さい規格の電線(例えば、0.13sqの電線)を用いることができる。また、導体断面積が0.35mm2よりも小さい電線としては、例えば、米国ワイヤゲージ規格におけるAWG22よりも導体断面積が小さい規格の電線(例えば、AWG26の電線)を用いることができる。本実施形態の各電線20は、導体断面積が0.13sqの電線である。
【0031】
電線束30の外径は、例えば、3mm~30mm程度とすることができる。本実施形態の電線束30の外径は、約3mmとすることができる。なお、本明細書における「A部材の外径」とは、A部材の軸方向に垂直な断面、つまりA部材の横断面における外径を意味する。ここで、A部材の横断面形状は、真円形に限らず、楕円形、長円形や多角形等の非円形であってもよい。A部材の横断面形状が非円形の場合における「A部材の外径」は、A部材の非円形の横断面に外接する1または2以上の円のうち、最大の直径を有する外接円の直径を指す。すなわち、本明細書における「A部材の外径」とは、A部材の横断面における外面上の2点間の最長距離を指す。
【0032】
(粘着テープ40の構成)
粘着テープ40は、長尺の帯状に形成されている。粘着テープ40は、基材と、基材の1つの面に設けられた粘着層とを有する。粘着テープ40は、例えば、弾性を有する材料から構成されている。なお、基材の材料としては、例えば、樹脂材料や紙を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂またはポリ塩化ビニルを用いることができる。
【0033】
粘着テープ40は、電線束30を構成する複数の電線20を束ねるように、電線束30の外周に巻き付けられている。粘着テープ40は、例えば、電線束30の長さ方向の一部に設けられている。粘着テープ40は、例えば、電線束30の外周を周方向全周にわたって覆うように設けられている。粘着テープ40は、例えば、粘着層が電線束30と対向するように、電線束30の長さ方向に沿って電線束30の外周に螺旋状に巻き付けられている。粘着テープ40は、例えば、粘着テープ40の幅方向の一部が重なるように、電線束30の外周に螺旋状に巻き付けられている。すなわち、粘着テープ40は、オーバーラップ巻きの構造を有している。ここで、オーバーラップ巻きの構造とは、粘着テープ40の幅方向における所定部分同士が重なるように粘着テープ40を螺旋状に巻き付けた構造である。オーバーラップ巻きの構造においては、先に巻かれた部分の全幅に対して、後に巻かれた部分の幅の割合をラップ代と称する。オーバーラップ巻きとしては、例えば、テープ部材の幅の半分が重ねられるハーフラップ巻きを採用することができる。なお、ハーフラップ巻きにおけるラップ代は2分の1である。本実施形態の粘着テープ40は、ハーフラップ巻きの構造を有している。
【0034】
粘着テープ40は、例えば、後述するテープ巻き装置60(
図8等参照)を用いて、電線束30の外周に巻き付けられる。すなわち、粘着テープ40は、作業者による手作業ではなく、テープ巻き装置60によって自動的および機械的に電線束30の外周に巻き付けられる。
【0035】
粘着テープ40は、例えば、電線束30の外周に一定のピッチで螺旋状に巻き付けられている。ここで、本明細書における粘着テープ40の「ピッチ」とは、電線束30の外周に対して粘着テープ40が1周したときに電線束30の長さ方向に進む距離のことである。換言すると、粘着テープ40の「ピッチ」とは、i(iは1以上の自然数)周目の粘着テープ40の幅方向中心と、(i+1)周目の粘着テープ40の幅方向中心との間の距離(間隔)である。また、本明細書の「一定のピッチ」には、基準のピッチ(設計値)に対して誤差のない場合の他、基準のピッチに対して±5mm程度の誤差(ばらつき)がある場合も含む。粘着テープ40のピッチは、基準のピッチに対する誤差が小さいほど好ましい。本実施形態における粘着テープ40のピッチは、基準のピッチに対して±0.2mmの範囲内である。粘着テープ40は、例えば、オーバーラップ巻きにおけるラップ代が一定となるように、電線束30の外周に螺旋状に巻き付けられている。
【0036】
次に、
図3および
図4にしたがって、粘着テープ40が巻き付けられた状態における電線束30の構造について説明する。
図3および
図4は、電線束30の構造例をそれぞれ示している。なお、
図3および
図4では、粘着テープ40が透視的に描かれている。
【0037】
図3および
図4に示すように、電線束30は、ねじれが小さい。ここで、電線束30の「ねじれ」とは、電線束30の長さ方向に対して垂直な面内で回転させたときに電線束30に生じる変形である。
図3に示した電線束30は、ねじれが発生しておらず、電線束30を構成する各電線20が電線束30の長さ方向に沿って真っ直ぐに延びている。
図4に示した電線束30には、比較的小さいねじれが発生している。
図4に示すように、ねじれが発生した電線束30では、電線束30を構成する2本の電線20が螺旋状にねじれている。具体的には、ねじれが発生した電線束30では、電線束30を構成する各電線20が電線束30の長さ方向に沿って螺旋状に回転するとともに、2本の電線20が撚り合わされている。
【0038】
電線束30は、電線束30の長さ方向に沿う長さ10cm当たりにおける各電線20の回転量が2回転以内となるねじれを有している。すなわち、電線束30のねじれ量は、2回転以内/10cmである。電線束30のねじれ量は、1回転以内/10cmであることがより好ましい。また、電線束30は、電線束30におけるねじれピッチP1が5cm以上となるねじれを有している。ここで、「電線束30におけるねじれピッチP1」とは、電線束30を構成する電線20が螺旋状に1回転したときに電線束30の長さ方向に進む距離のことである。電線束30におけるねじれピッチP1は、10cm以上であることがより好ましい。
【0039】
ここで、
図3に示した電線束30のねじれ量は、0回転/10cmである。また、
図3に示した電線束30におけるねじれピッチP1(
図4参照)は、10cm以上である。
図4に示した電線束30のねじれ量は、2回転/10cmである。また、
図4に示した電線束30におけるねじれピッチP1は、5cmである。
【0040】
次に、
図5、
図6および
図7にしたがって、電線束30の外周に巻き付けられた状態の粘着テープ40の構造について詳述する。
図5、
図6および
図7は、電線束30の外周に巻き付けられた状態の粘着テープ40の構造を判り易くするために、電線束30の外周に巻き付けられた後の粘着テープ40を電線束30の外周から取り外した状態の構造を図示している。
図5および
図6は、電線束30の外周から取り外した後の粘着テープ40を示す概略平面図である。
図7は、電線束30の外周から取り外した後の粘着テープ40を示す概略縦断面図である。
【0041】
粘着テープ40は、長さ方向と、その長さ方向と平面視で直交する幅方向と、それら長さ方向と幅方向の双方と直交する厚み方向とを有している。本明細書では、粘着テープ40の長さ方向に沿って延びる長さを「テープ長」と称し、粘着テープ40の幅方向に沿って延びる長さを「テープ幅」と称し、粘着テープ40の厚み方向に沿って延びる長さを「テープ厚」と称する場合がある。
【0042】
図5に示すように、粘着テープ40の長さ方向の各端面は、切断面40Aである。すなわち、粘着テープ40の長さ方向の両端には、切断面40Aが設けられている。切断面40Aは、例えば、一直線状に粘着テープ40が切断された面である。切断面40Aは、粘着テープ40の長さ方向と交差する第1方向D1に沿って直線状に延びている。ここで、第1方向D1は、粘着テープ40の幅方向と平行な方向であってもよいし、粘着テープ40の幅方向と交差する方向であってもよい。本実施形態の粘着テープ40の切断面40Aは、粘着テープ40の幅方向と交差する第1方向D1に沿って直線状に延びている。
【0043】
切断面40Aは、第1方向D1における第1端部41および第2端部42を有している。第1端部41は、各切断面40Aのうち反対側の切断面40Aに最も近い位置に設けられている。第2端部42は、各切断面40Aのうち反対側の切断面40Aから最も遠い位置に設けられている。本実施形態の第1端部41は、粘着テープ40の幅方向の端部である。本実施形態の第2端部42は、粘着テープ40の幅方向の端部である。切断面40Aの突出長PL1は、5mm以下である。ここで、切断面40Aの突出長PL1とは、第1端部41と第2端部42との間の長さのうち粘着テープ40の長さ方向に沿う長さである。各切断面40Aの突出長PL1は、小さいほど好ましい。本実施形態の各切断面40Aの突出長PL1は、0.2mm以下である。
【0044】
図6に示すように、粘着テープ40は、第1の幅W1を有する第1部分51と、第2の幅W2を有する第2部分52とを有している。粘着テープ40は、例えば、複数の第1部分51と、複数の第2部分52とを有している。第1の幅W1は、第1部分51におけるテープ幅であり、第1部分51のうち粘着テープ40の幅方向に沿って延びる長さである。第2の幅W2は、第2部分52におけるテープ幅であり、第2部分52のうち粘着テープ40の幅方向に沿って延びる長さである。
【0045】
第2の幅W2は、第1の幅W1よりも小さい。第2の幅W2は、第1の幅W1の0.5倍以上1倍未満の長さである。第2の幅W2は、第1の幅W1の0.8倍以上1倍未満の長さであることが好ましい。例えば、第2の幅W2が第1の幅W1の0.5倍の長さである場合には、粘着テープ40の全長にわたってテープ幅のばらつきを50%未満に抑えることができる。例えば、第2の幅W2が第1の幅W1の0.8倍の長さである場合には、粘着テープ40の全長にわたってテープ幅のばらつきを20%未満に抑えることができる。
【0046】
なお、第1部分51における第1の幅W1は、電線束30の外周に巻き付ける前の粘着テープ40のテープ幅、つまり粘着テープ40の元のテープ幅の0.8倍以上1倍以下の長さである。例えば、第1の幅W1が粘着テープ40の元のテープ幅の0.8倍である場合には、粘着テープ40の元のテープ幅に対する第1部分51のテープ幅の縮み率を20%未満に抑えることができる。
【0047】
第1部分51は、例えば、第2部分52よりも粘着テープ40の長さ方向の寸法が大きい。詳述すると、粘着テープ40の長さ方向に沿う第1部分51の長さ、つまり第1部分51のテープ長は、粘着テープ40の長さ方向に沿う第2部分52の長さ、つまり第2部分52のテープ長よりも大きい。第1部分51のテープ長は、例えば、第2部分52のテープ長の1.5倍以上3.5倍未満の長さである。第1部分51のテープ長は、例えば、第2部分52のテープ長の2.5倍以上3.5倍未満の長さであることが好ましい。
【0048】
粘着テープ40は、粘着テープ40の長さ方向に沿って第1部分51と第2部分52とが1つずつ交互に連なって設けられている。粘着テープ40では、粘着テープ40の長さ方向において、第1部分51と第2部分52とが周期的に設けられている。すなわち、粘着テープ40では、所定の周期P2毎に第1部分51と第2部分52とが交互に設けられている。1つの周期P2では、1つの第1部分51と1つの第2部分52とが連なって設けられている。ここで、1つの周期P2は、粘着テープ40が電線束30の外周に螺旋状に巻き付けられた際の1周分の長さに相当する。すなわち、粘着テープ40では、電線束30の外周に対して螺旋状に1周する毎に、1つの第1部分51と1つの第2部分52とが連なって設けられる。このような粘着テープ40が電線束30の外周に螺旋状に複数回巻き付けられた状態では、複数の第1部分51が電線束30の周方向において互いに同じ位置に設けられるとともに、複数の第2部分52が電線束30の周方向において互いに同じ位置に設けられる。すなわち、第1部分51および第2部分52の各々が、電線束30の周方向において常に同じ位置に設けられる。
【0049】
図7に示すように、第1部分51は、第1の厚みT1を有している。第2部分52は、第2の厚みT2を有している。第1の厚みT1は、第1部分51におけるテープ厚であり、第1部分51のうち粘着テープ40の厚み方向に沿って延びる長さである。第2の厚みT2は、第2部分52におけるテープ厚であり、第2部分52のうち粘着テープ40の厚み方向に沿って延びる長さである。
【0050】
第2の厚みT2は、第1の厚みT1よりも小さい。第2の厚みT2は、第1の厚みT1の0.5倍以上1倍未満の厚みである。第2の厚みT2は、第1の厚みT1の0.8倍以上1倍未満の厚みであることが好ましい。例えば、第2の厚みT2が第1の厚みT1の0.5倍の厚みである場合には、粘着テープ40の全長にわたってテープ厚のばらつきを50%未満に抑えることができる。例えば、第2の厚みT2が第1の厚みT1の0.8倍の厚みである場合には、粘着テープ40の全長にわたってテープ厚のばらつきを20%未満に抑えることができる。
【0051】
なお、第1部分51における第1の厚みT1は、電線束30の外周に巻き付ける前の粘着テープ40のテープ厚、つまり粘着テープ40の元のテープ厚の0.8倍以上1倍以下の厚みである。例えば、第1の厚みT1が粘着テープ40の元のテープ厚の0.8倍である場合には、粘着テープ40の元のテープ厚に対する第1部分51のテープ厚の縮み率を20%未満に抑えることができる。
【0052】
(ワイヤハーネス10の製造方法)
次に、
図8から
図13にしたがって、ワイヤハーネス10の製造方法について説明する。ここでは、電線束30の外周に対して粘着テープ40を巻き付けるテープ巻き方法について詳述する。電線束30に対する粘着テープ40のテープ巻き作業は、
図8から
図13に示したテープ巻き装置60を用いて実施される。なお、
図9から
図13では、図面の簡略化のために、電線束30における複数の電線20を1つにまとめて図示している。
【0053】
(テープ巻き装置60の構成)
まず、テープ巻き装置60の構成について説明する。
図8に示すように、テープ巻き装置60は、電線束30を水平に保持する一対の保持部材61と、電線束30の長さ方向に沿って電線束30の長さ方向に移動可能な装置本体62とを備えている。図示は省略するが、テープ巻き装置60は、装置本体62を移動させる移動部材を備えている。テープ巻き装置60は、装置本体62の移動速度を調整することにより、粘着テープ40の幅方向の一部が重なるように、電線束30の外周に粘着テープ40を螺旋状に巻き付けることができる。
【0054】
図9に示すように、装置本体62は、電線束30の周りを回転する回転部70と、粘着テープ40のロール部81を回転自在に保持するテープ保持部80と、回転部70を支持する回転支持部90とを備えている。ロール部81は、例えば、円環状をなす芯部材82の外周に対して粘着テープ40が幾重にも渦巻状に巻き付けられて構成されている。
【0055】
回転支持部90は、例えば、全体として回転部70の外周を囲う枠状に形成されている。回転支持部90の内周面は、例えば、円弧状に形成されている。回転支持部90の外周面は、例えば、円弧状に形成されている。回転支持部90は、回転支持部90の周方向の一部に設けられた開口部91を有している。開口部91は、回転支持部90の径方向に開口している。開口部91は、例えば、回転支持部90の径方向外方から径方向内方に向かうに連れて開口幅が小さくなるように傾斜している。
【0056】
回転部70は、例えば、図示しないモータ等により、電線束30を中心として回転可能に構成されている。回転部70は、電線束30の長さ方向の一部を収容可能な収容部71を有している。収容部71は、例えば、正面視した形状がU字状に形成されている。収容部71は、奥壁部72を有している。奥壁部72の内周面は、例えば、円弧状に形成されている。収容部71は、例えば、電線束30を収容部71の内側、つまり奥壁部72に向かって誘導する誘導部73を有している。誘導部73は、回転部70の径方向外方から径方向内方に向かうに連れて開口幅が小さくなるように傾斜している。電線束30は、例えば、電線束30の外周面が奥壁部72の内周面に接触するように、収容部71の内部に収容される。
【0057】
回転部70は、テープ巻き装置60の初期状態、つまり回転部70が回転動作を開始する前の状態には、収容部71の誘導部73が正面視において回転支持部90の開口部91と重なるように配置された状態(開放状態)になる。
図9、
図10、
図11および
図12に示すように、回転部70は、テープ巻き装置60の作動時には、電線束30を中心として時計回りに回転する。テープ巻き装置60の作動中には、開放状態(
図9参照)を除き、収容部71の誘導部73が回転支持部90によって塞がれた状態(閉塞状態)となる(
図10から
図12参照)。
【0058】
テープ保持部80は、回転部70に設けられている。テープ保持部80は、例えば、収容部71の奥壁部72に隣接して設けられている。
図10から
図12に示すように、回転部70の回転に伴って電線束30の周りを回転可能に構成されている。テープ保持部80は、粘着テープ40のロール部81を回転可能に保持している。ここで、粘着テープ40のうちロール部81から引き出された引出部40Dの先端部が、電線束30の外周に粘着されるようになっている。そして、粘着テープ40の引出部40Dが引っ張られることにより、ロール部81は、ロール部81の中心軸を中心にして反時計回りに回転する。
【0059】
次に、テープ巻き装置60を用いた粘着テープ40のテープ巻き方法について説明する。
まず、
図8に示すように、一対の保持部材61により電線束30を水平に保持する。このとき、装置本体62は、例えば、電線束30の側方(つまり、電線束30の長さ方向と交差する方向)に離れた位置に配置される。また、装置本体62の回転部70は、
図9に示した開放状態にセットされる。
【0060】
続いて、
図9に示すように、電線束30に対して装置本体62をセットする。具体的には、装置本体62を電線束30に向かって移動し、開口部91および誘導部73から収容部71の内部に電線束30を導入する。電線束30は、収容部71の奥壁部72に接触するまで収容部71の内部に導入される。
【0061】
次いで、電線束30の外周面に粘着テープ40の先端部を貼り付ける。具体的には、収容部71の奥壁部72まで導入された電線束30の外周に、粘着テープ40のうちロール部81から引き出された引出部40Dの先端部を貼り付ける。
【0062】
次に、電線束30の外周に粘着テープ40を螺旋状に巻き付ける。具体的には、図示しない移動手段により装置本体62を電線束30の長さ方向に移動させつつ、電線束30を中心として回転部70を回転させることにより、電線束30の外周に粘着テープ40を螺旋状に巻き付ける。このとき、装置本体62を一定の速度で移動させることにより、電線束30の外周に粘着テープ40を一定のピッチで螺旋状に巻き付けることができる。また、装置本体62の移動速度を調整することにより、電線束30の外周に対して粘着テープ40をオーバーラップ巻きすることができるとともに、そのオーバーラップ巻きにおけるラップ代を調整することができる。
【0063】
ここで、従来のテープ巻き装置では、電線束30の外周に粘着テープ40を巻き付ける際に、ロール部81から引き出された引出部40Dに対して常に大きな張力が付与される。すなわち、
図9から
図12に示した全ての状態において、引出部40Dに対して大きな張力が付与される。この場合の電線束30は、粘着テープ40の張力により電線束30の長さ方向と交差する方向(例えば、電線束30の周方向)に振れる力を受けることになる。このため、従来のテープ巻き装置を用いたテープ巻き作業時には、電線束30の周方向に振られる力が常に電線束30に加わることになる。この結果、
図14に示すように、電線束30に大きなねじれが発生してしまう。例えば、従来のテープ巻き装置を用いて粘着テープ40Bがテープ巻きされた場合の電線束30のねじれ量は、5回転以上/10cm程度となる。すなわち、従来のテープ巻き装置を用いて粘着テープ40Bがテープ巻きされた場合の電線束30には、電線束30の長さ方向に沿う長さ10cm当たりにおける各電線20の回転量が5回転以上となるねじれが生じる。このような大きなねじれが電線束30に生じると、電線束30の長さ方向の寸法が短くなるという問題が生じる。
【0064】
また、従来のテープ巻き装置を用いたテープ巻き作業では、引出部40Dが、常に電線束30とロール部81との間で長さ方向に引っ張られて緊張した状態になる。引出部40Dが緊張状態になると、引出部40Dが長さ方向に弾性的に伸長し、その伸長した分だけ、粘着テープ40Bのテープ幅およびテープ厚が小さくなる。
【0065】
詳述すると、
図15に示すように、従来のテープ巻き装置を用いてテープ巻きされた粘着テープ40Bのテープ幅W3は、電線束30の外周に巻き付ける前の粘着テープ40Bである粘着テープ40Cのテープ幅W4よりも小さくなる。粘着テープ40Bのテープ幅W3は、粘着テープ40Bの長さ方向の全長にわたって、粘着テープ40Cのテープ幅W4よりも小さくなる。粘着テープ40Bのテープ幅W3は、粘着テープ40Bの長さ方向の全長にわたって一定の幅である。粘着テープ40Bのテープ幅W3は、粘着テープ40Cの元のテープ幅W4の半分以下になる。
【0066】
また、
図16に示すように、従来のテープ巻き装置を用いてテープ巻きされた粘着テープ40Bのテープ厚T3は、電線束30の外周に巻き付ける前の粘着テープ40Cのテープ厚T4よりも小さくなる。粘着テープ40Bのテープ厚T3は、粘着テープ40Bの長さ方向の全長にわたって、粘着テープ40Cのテープ厚T4よりも小さくなる。粘着テープ40Bのテープ厚T3は、粘着テープ40Bの長さ方向の全長にわたって一定の厚みである。粘着テープ40Bのテープ厚T3は、粘着テープ40Cの元のテープ厚T4の半分以下になる。
【0067】
これに対し、
図13に示すように、本実施形態のテープ巻き装置60では、粘着テープ40の引出部40Dに第1の張力を付与する第1区間S1と、引出部40Dに第1の張力と異なる第2の張力を付与する第2区間S2とが設定される。第1区間S1では、従来のテープ巻き装置と同様に、粘着テープ40の引出部40Dに対して大きな第1の張力が付与される。このため、第1区間S1では、引出部40Dが、電線束30とロール部81との間で長さ方向に引っ張られて緊張した状態になる。第2区間S2では、粘着テープ40の引出部40Dに対して、第1の張力よりも小さい第2の張力が付与される。すなわち、第2区間S2では、第1区間S1に比べて、粘着テープ40に付与される張力が弛緩される。このため、第2区間S2では、引出部40Dの緊張状態が解放される。これにより、第2区間S2では、第1区間S1に比べて、粘着テープ40の張力に起因して電線束30に加わる力、つまり電線束30の周方向に振られる力が小さくなる。このため、第2区間S2では、電線束30における各電線20が周方向に振られることを好適に抑制できる。この結果、電線束30にねじれが発生することを好適に抑制できる。このように、本実施形態のテープ巻き装置60では、回転部70の回転範囲の一部である第2区間S2において、粘着テープ40に付与される張力を弛緩することにより、電線束30にねじれが発生することを抑制する。
【0068】
テープ巻き装置60では、例えば、回転部70の回転範囲のうち約1/4の範囲が第1区間S1に設定されるとともに、回転部70の回転範囲のうち約3/4の範囲が第2区間S2に設定されている。なお、第1区間S1および第2区間S2の各々の範囲の大きさは、任意に設定することができる。ここで、第1区間S1でテープ巻きされた部分が
図6および
図7に示した粘着テープ40の第2部分52となり、第2区間S2でテープ巻きされた部分が
図6および
図7に示した粘着テープ40の第1部分51となる。このため、第1区間S1の長さが第2部分52の長さに対応しており、第2区間S2の長さが第1部分51の長さに対応している。
【0069】
詳述すると、第1区間S1では、引出部40Dが、電線束30とロール部81との間で長さ方向に緊張した状態になる。引出部40Dが緊張状態になると、引出部40Dが長さ方向に弾性的に伸長し、その伸長した分だけ、粘着テープ40のテープ幅およびテープ厚が小さくなる。これにより、
図6および
図7に示すように、第2部分52におけるテープ幅およびテープ厚が小さくなる。一方、第2区間S2では、引出部40Dに付与される張力が弛緩され、引出部40Dの緊張状態が解放される。このため、第2区間S2では、第1区間S1に比べて、粘着テープ40のテープ幅およびテープ厚が小さくなるのを抑制できる。これにより、
図6および
図7に示すように、第1部分51の第1の幅W1が第2部分52の第2の幅W2よりも大きくなるとともに、第1部分51の第1の厚みT1が第2部分52の第2の厚みT2よりも大きくなる。
【0070】
図8に示すように、以上説明したテープ巻き装置60を用いたテープ巻き工程により、電線束30の長さ方向の所定範囲にわたって粘着テープ40を巻き付ける。その後、粘着テープ40の引出部40Dに張力を付与し、その張力が付与された引出部40Dを図示しないスライドカッタにより切断する。これにより、テープ巻き作業が終了する。なお、スライドカッタは、例えば、装置本体62に設けられている。
図5に示すように、スライドカッタにより切断された粘着テープ40の切断面40Aは、一直線状に粘着テープ40が切断された面になる。
【0071】
ここで、
図17は、作業者が手作業で粘着テープ100を切断した場合の粘着テープ100の切断面100A、つまり比較例の粘着テープ100の切断面100Aを示している。切断面100Aは、作業者により粘着テープ100が長さ方向に引っ張られて切断される。このため、切断面100Aにおける粘着テープ100が伸長されるとともに、切断面100Aが凹凸形状に形成される。これにより、切断面100Aの突出長PL2が、本実施形態の粘着テープ40の切断面40Aの突出長PL1(
図5参照)よりも大きくなる。換言すると、本実施形態の粘着テープ40の切断面40Aの突出長PL1は、作業者が手作業で切断した粘着テープ100の切断面100Aの突出長PL2よりも小さくなる。
【0072】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)ワイヤハーネス10は、複数の電線20を有する電線束30と、電線束30の外周に螺旋状に巻き付けられた粘着テープ40とを備えている。電線束30のねじれ量は、電線束30の長さ方向に沿う長さ10cm当たりにおける電線20の回転量が2回転以内となるねじれ量である。
【0073】
この構成によれば、電線束30のねじれ量が2回転以内/10cmとなり、電線束30のねじれ量が小さくなる。これにより、電線束30のねじれに起因して電線束30の長さ方向の寸法が短くなることを好適に抑制でき、ワイヤハーネス10の品質を向上できる。
【0074】
(2)複数の電線20の各々は、導体断面積が5mm2以下の電線である。すなわち、複数の電線20の各々は、導体断面積が小さい細物電線である。ここで、電線束30を構成する電線20が細物電線である場合には、電線束30にねじれが生じやすい。このような細物電線である電線20によって電線束30が構成される場合であっても、電線束30のねじれ量を2回転以内/10cmと小さく抑えることができる。これにより、電線束30を構成する各電線20が細物電線であっても、電線束30のねじれに起因して電線束30の長さ方向の寸法が短くなることを好適に抑制できる。
【0075】
(3)電線束30は、2本の電線20により構成されている。ここで、電線束30を構成する電線20の本数が少ないほど、電線束30にねじれが生じやすい。このため、電線束30を構成する電線20が2本である場合には、電線束30に最もねじれが生じやすい。このように最もねじれの生じやすい2本の電線20によって電線束30が構成される場合であっても、電線束30のねじれ量を2回転以内/10cmと小さく抑えることができる。これにより、電線束30が2本の電線20により構成される場合であっても、電線束30のねじれに起因して電線束30の長さ方向の寸法が短くなることを好適に抑制できる。
【0076】
(4)粘着テープ40の長さ方向の端面が、一直線状に延びる切断面40Aに形成される。このため、作業者が手作業により粘着テープ100を切断した場合の切断面100Aに比べて、粘着テープ40の切断面40Aの品質を向上できる。すなわち、凹凸を有する切断面100Aに比べて、粘着テープ40の切断面40Aの品質を向上できる。
【0077】
(5)切断面40Aの突出長PL1は、5mm以下である。この構成によれば、切断面40Aの突出長PL1を、作業者が手作業により粘着テープ100を切断した場合の切断面100Aの突出長PL2よりも小さくできる。これにより、切断面40Aにおいて粘着テープ40が意図せずに伸長されることを抑制できる。このため、作業者が手作業により粘着テープ100を切断した場合の切断面100Aに比べて、粘着テープ40の切断面40Aの品質を向上できる。
【0078】
(6)粘着テープ40は、第1の幅W1を有する第1部分51と、第1の幅W1よりも小さい第2の幅W2を有する第2部分52とを有する。第2の幅W2は、第1の幅W1の0.5倍以上1倍未満の長さである。この構成によれば、第1部分51と第2部分52とにおけるテープ幅の差を50%以内に抑えることができる。これにより、粘着テープ40におけるテープ幅のばらつきを50%以内に抑えることができる。このため、電線束30の外周に対して粘着テープ40をオーバーラップ巻きする場合には、オーバーラップ巻きにおけるラップ代のばらつきを小さく抑えることができる。
【0079】
(7)第1部分51は、第1の厚みT1を有する。第2部分52は、第1の厚みT1よりも小さい第2の厚みT2を有する。第2の厚みT2は、第1の厚みT1の0.5倍以上1倍未満の厚みである。この構成によれば、第1部分51と第2部分52とにおけるテープ厚の差を50%以内に抑えることができる。これにより、粘着テープ40におけるテープ厚のばらつきを50%以内に抑えることができる。
【0080】
(8)第1部分51は、第2部分52よりも粘着テープ40の長さ方向に沿う寸法が大きい。この構成によれば、テープ幅の小さい第2部分52の長さを第1部分51よりも短くできる。これにより、粘着テープ40の長さ方向において、テープ幅の小さい第2部分52の領域を小さくできる。このため、電線束30の外周に対して粘着テープ40をオーバーラップ巻きする場合には、オーバーラップ巻きにおけるラップ代が小さくなることを好適に抑制できる。
【0081】
(9)粘着テープ40は、複数の第1部分51と複数の第2部分52とを有し、粘着テープ40の長さ方向に沿って第1部分51と第2部分52とが1つずつ交互に連なって設けられている。粘着テープ40は、電線束30の外周に螺旋状に複数回巻き付けられている。複数の第1部分51は、電線束30の周方向において互いに同じ位置に設けられている。複数の第2部分52は、電線束30の周方向において互いに同じ位置に設けられている。この構成によれば、電線束30の外周に対して粘着テープ40が螺旋状に複数回巻き付けられた状態において、第1部分51および第2部分52の各々を、電線束30の周方向において常に同じ位置に設けることができる。この結果、電線束30の外周に対する粘着テープ40の巻き付けの品質を向上できる。
【0082】
(10)電線束30の外周に対して粘着テープ40が一定のピッチで巻き付けられる。このため、粘着テープ40をオーバーラップ巻きする場合には、オーバーラップ巻きにおけるラップ代が一定になるように、粘着テープ40を電線束30の外周に巻き付けることができる。これにより、電線束30の外周に対する粘着テープ40の巻き付けの品質を向上できる。
【0083】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0084】
・上記実施形態では、2本の電線20により電線束30を構成するようにしたが、電線束30を構成する電線20の本数は特に限定されない。例えば、電線束30を構成する電線20を3本以上にしてもよい。
【0085】
・上記実施形態において、複数の電線20の各々を細物電線としたが、これに限定されない。例えば、複数の電線20の各々を、導体断面積が大きい太物電線としてもよい。ここで、本明細書における「太物電線」とは、導体断面積が5mm2よりも大きい電線である。
【0086】
・上記実施形態において、電線束30を構成する複数の電線20は、大きさが互いに異なる電線であってもよい。例えば、電線束30を、1本以上の細物電線と、1本以上の太物電線とにより構成してもよい。
【0087】
・上記実施形態では、粘着テープ40を、電線束30の外周に対してオーバーラップ巻きするようにしたが、これに限定されない。例えば、粘着テープ40を、電線束30の外周に対して荒巻きするようにしてもよい。すなわち、粘着テープ40を、電線束30の外周に先に巻かれた粘着テープ40に対して、電線束30の外周に後に巻かれた粘着テープ40が重ならないように、電線束30の外周に螺旋状に巻くようにしてもよい。
【0088】
・上記実施形態のテープ巻き装置60では、電線束30の長さ方向に沿って装置本体62を移動させるようにしたが、これに限定されない。例えば、装置本体62に対して電線束30を移動させるようにしてもよい。
【0089】
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
1 車両
2,3 電気機器
10 ワイヤハーネス
20 電線
21 芯線
22 絶縁被覆
30 電線束
40 粘着テープ
40A 切断面
40D 引出部
40B,40C 粘着テープ
41 第1端部
42 第2端部
51 第1部分
52 第2部分
60 テープ巻き装置
61 保持部材
62 装置本体
70 回転部
71 収容部
72 奥壁部
73 誘導部
80 テープ保持部
81 ロール部
82 芯部材
90 回転支持部
91 開口部
100 粘着テープ
100A 切断面
P1 ピッチ
P2 周期
PL1 突出長
PL2 突出長
S1 第1区間
S2 第2区間
T1 第1の厚み
T2 第2の厚み
T3,T4 テープ厚
W1 第1の幅
W2 第2の幅
W3,W4 テープ幅