(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063470
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/083 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
C03B37/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171449
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松浦 禅
(72)【発明者】
【氏名】松林 達也
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 博司
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021MA02
(57)【要約】
【課題】異物によるノズルの閉塞を抑制可能としたガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】ブッシング13は、複数のノズル24を含むブッシング本体20と、開口部33を有するスクリーン30と、を備える。スクリーン30の開口部33は、ブッシング13の高さ方向から見て、各ノズル24の孔24aと重ならない位置に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを流通させるフィーダーと、
前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備えるガラス繊維の製造装置であって、
前記ブッシングは、前記複数のノズルを含むブッシング本体と、前記溶融ガラスの流路内に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、
前記開口部は、前記ブッシングの高さ方向から見て、前記各ノズルの孔と重ならない位置に設けられている、
ガラス繊維の製造装置。
【請求項2】
前記ブッシング本体は、前記複数のノズルからなるノズル列を複数有し、
前記開口部は、前記高さ方向から見て、前記複数のノズル列の間に位置している、
請求項1に記載のガラス繊維の製造装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記ブッシングの高さ方向における中央部よりも前記ノズル側に設けられている、
請求項1に記載のガラス繊維の製造装置。
【請求項4】
ガラス繊維の製造装置を用いて複数のガラスフィラメントを成形する成形工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、
前記ガラス繊維の製造装置は、溶融ガラスを流通させるフィーダーと、前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備え、
前記ブッシングは、前記複数のノズルを含むブッシング本体と、前記溶融ガラスの流路内に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、
前記開口部は、前記ブッシングの高さ方向から見て、前記各ノズルの孔と重ならない位置に設けられている、
ガラス繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、ガラス繊維の製造には、溶融ガラスを流通させるフィーダーと、ブッシングとを備える製造装置が用いられる。ブッシングは、フィーダーから供給された溶融ガラスを流出する複数のノズルを有する。このようなガラス繊維の製造装置では、ブッシングの各ノズルから溶融ガラスを流出させることで、複数のガラスフィラメントを成形することができる。また、ブッシングは、ブッシングの内部において溶融ガラス内の異物がノズル上に堆積することを防止するためのスクリーンを備える。スクリーンは、溶融ガラスが流通する開口部を有している。スクリーンは、溶融ガラス内の異物がノズルに到達する前段において当該異物を捕捉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなガラス繊維の製造装置では、溶融ガラス内の異物がスクリーンの開口部をくぐり抜けてしまうと、その異物がブッシング本体内のノズル上に落下する場合がある。その結果、異物がノズルを塞いでしまうおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、異物によるノズルの閉塞を抑制可能としたガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記課題を解決するガラス繊維の製造装置は、溶融ガラスを流通させるフィーダーと、前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備えるガラス繊維の製造装置であって、前記ブッシングは、前記複数のノズルを含むブッシング本体と、前記溶融ガラスの流路内に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、前記開口部は、前記ブッシングの高さ方向から見て、前記各ノズルの孔と重ならない位置に設けられている。
【0007】
この構成によれば、スクリーンの開口部をくぐり抜けた溶融ガラス内の異物が、ノズル上に落下してノズルの孔を塞いでしまうことを抑制できる。
[2]上記[1]において、前記ブッシング本体は、前記複数のノズルからなるノズル列を複数有し、前記開口部は、前記高さ方向から見て、前記複数のノズル列の間に位置していてもよい。
【0008】
この構成によれば、複数のノズル列の間のスペースを利用することで、スクリーンの開口部をノズルの孔と重ならない位置に配置しつつも、開口部の開口面積を確保できる。
[3]上記[1]または[2]において、前記開口部は、前記ブッシングの高さ方向における中央部よりも前記ノズル側に設けられていてもよい。
【0009】
この構成によれば、スクリーンの開口部をノズルの近くに配置することが可能となる。このため、スクリーンの開口部をくぐり抜けた異物がノズルを塞ぐことをより一層抑制できる。
【0010】
[4]上記課題を解決するガラス繊維の製造方法は、ガラス繊維の製造装置を用いて複数のガラスフィラメントを成形する成形工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、前記ガラス繊維の製造装置は、溶融ガラスを流通させるフィーダーと、前記フィーダーの下方に配置され、前記溶融ガラスを流出する複数のノズルを有するブッシングと、を備え、前記ブッシングは、前記複数のノズルを含むブッシング本体と、前記溶融ガラスの流路内に配置され、開口部を有するスクリーンと、を備え、前記開口部は、前記ブッシングの高さ方向から見て、前記各ノズルの孔と重ならない位置に設けられている。
【0011】
この方法によれば、スクリーンの開口部をくぐり抜けた溶融ガラス内の異物が、ノズル上に落下してノズルの孔を塞いでしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法によれば、異物によるノズルの閉塞を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態におけるガラス繊維の製造装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ガラス繊維の製造装置、及びガラス繊維の製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0015】
図1に示すように、ガラス繊維の製造装置11は、溶融ガラスMGを流通させるフィーダー12と、フィーダー12の下方に配置されるブッシング13とを備えている。また、ガラス繊維の製造装置11は、ブッシング13の一部を冷却する冷却機構14を備える。冷却機構14は、例えば、水等の冷媒が内部を流通する冷却管14aを含む。冷却機構14は、溶融ガラスMGがブッシング13から外部に漏れ出ることを抑制する役割をなす。
【0016】
なお、図面には、互いに直交する3軸(X軸、Y軸及びZ軸)を示している。X軸は、ブッシング13の幅方向に沿って延びている。Y軸は、ブッシング13の奥行方向に沿って延びている。Z軸は、ブッシング13の高さ方向に沿って延びている。
【0017】
(フィーダー12)
ガラス繊維の製造装置11のフィーダー12には、図示を省略したガラス溶融炉で得られた溶融ガラスMGが供給される。フィーダー12は、耐火壁から構成されている。耐火壁を構成する耐火物としては、例えば、電鋳煉瓦、デンス焼成煉瓦等が挙げられる。電鋳煉瓦としては、例えば、ジルコニア系電鋳煉瓦、アルミナ系電鋳煉瓦、アルミナ・ジルコニア系電鋳煉瓦、アルミナ・ジルコニア・シリカ系電鋳煉瓦等が挙げられる。デンス焼成煉瓦としては、デンスジルコン煉瓦、デンスクロム煉瓦等が挙げられる。
【0018】
フィーダー12は、溶融ガラスMGを流下させる流路を形成するフローブロック12aを備えている。フローブロック12aについても耐火物から構成される。また、フィーダー12は、フローブロック12aの下側にブッシングブロック12bを有している。ブッシングブロック12bは、フィーダー12とブッシング13との間における溶融ガラスMGの流路を形成している。ブッシングブロック12bにより形成された流路を流下した溶融ガラスMGは、ブッシング13に供給される。ブッシングブロック12bは、例えば、上述した非導電性の耐火物から構成される。
【0019】
溶融ガラスMGのガラスとしては、例えば、Eガラス(アルカリ含有量2%以下のガラス)、Dガラス(低誘電率ガラス)、ARガラス(耐アルカリ性ガラス)、Cガラス(耐酸性のガラス)、Mガラス(高弾性率のガラス)、Sガラス(高強度、高弾性率のガラス)、Tガラス(高強度、高弾性率のガラス)、Hガラス(高誘電率のガラス)、NEガラス(低誘電率のガラス)が挙げられる。ガラスの密度は、例えば、2.0~3.0g/cm3である。
【0020】
(ブッシング13)
ブッシング13は、溶融ガラスMGが供給されるブッシング本体20と、ブッシング本体20の内部に配置されるスクリーン30と、を備える。
【0021】
ブッシング本体20は、ベースプレート21と、周壁22と、フランジ部23とを含む。
ブッシング本体20のベースプレート21は、ブッシング本体20の底部を形成している。ベースプレート21は、例えば、ブッシング13の高さ方向に対して垂直な平板状をなす。ベースプレート21は、複数のノズル24を有している。
【0022】
図2に示すように、本実施形態のベースプレート21は、複数のノズル24からなるノズル列Rを複数有している。各ノズル列Rは、例えば、X軸方向に沿って並ぶ複数のノズル24を有している。各ノズル列Rは、Y軸方向に並ぶように配置されている。
【0023】
図1に示すように、各ノズル24は、ベースプレート21の下面から下方に延びている。ブッシング13の内部に流通する溶融ガラスMGは、各ノズル24の孔24a(
図2参照)を通じてベースプレート21の下方に流出される。すなわち、ブッシング13の各ノズル24によってガラスフィラメントGFを成形される。なお、ブッシング13におけるノズル24の数は、100個以上、10000個以下の範囲内であることが好ましい。また、各ノズル24における孔24aの形状は、例えば、円形状、長径と短径とを有する扁平形状等が挙げられる。
【0024】
ブッシング本体20の周壁22は、ベースプレート21の周縁から上側に延びている。周壁22は、Z軸方向から見て環状をなしている。周壁22の上端部には、フィーダー12から溶融ガラスMGが供給される。また、周壁22の内側には、溶融ガラスMGが流通される。なお、ベースプレート21または周壁22には、抵抗加熱用の図示しないターミナルが設けられている。
【0025】
ブッシング本体20のフランジ部23は、周壁22の上端部から外方に延びている。フランジ部23は、例えば、XY平面に沿って延びる平板状をなす。フランジ部23は、周壁22の全周にわたって設けられている。すなわち、フランジ部23は、Z軸方向から見て連続的な環状をなしている。
【0026】
ブッシング本体20は、ベースプレート21の上面に立設されている補強リブ25を有している。補強リブ25は、例えば、X軸方向に沿って延びている。補強リブ25は、例えば、Y軸方向に対して垂直な平板状をなす。補強リブ25の下端部は、ベースプレート21の上面に接続されている。補強リブ25におけるX軸方向の両端部は、周壁22の内側面に接続されている。補強リブ25は、例えば、Y軸方向に並ぶように複数設けられている。
【0027】
ブッシング本体20のベースプレート21は、例えば、複数の冷却フィン26を有している。各冷却フィン26は、ベースプレート21の下面からZ軸方向に沿って下方に突出している。
図2に示すように、冷却フィン26は、Y軸方向においてノズル列Rの間に設けられている。
【0028】
図1に示すように、ガラス繊維の製造装置11は、ブッシング13を支持する支持部材Sを有している。支持部材Sは、例えばフィーダー12から延びている。支持部材Sは、例えば、ブッシング本体20のフランジ部23がブッシングブロック12bの下面に接するように、ブッシング13を下方から支持している。
【0029】
(冷却管14aの配置について)
冷却機構14の冷却管14aは、例えば、フランジ部23の外周縁の近傍において、フランジ部23の下面に接している。冷却管14aは、フランジ部23の外周縁に沿った略環状をなしている。フランジ部23が冷却管14aによって冷やされることで、フランジ部23とブッシングブロック12bとの間の隙間において溶融ガラスMGが冷やされて凝固する。これにより、フランジ部23とブッシングブロック12bとの間の隙間から、溶融ガラスMGがブッシング13の外部に漏れ出ることが抑制される。
【0030】
(スクリーン30)
スクリーン30は、ブッシング本体20の周壁22の内側に配置されている。スクリーン30は、例えば板材から形成されている。スクリーン30は、ブッシング本体20の内部における溶融ガラスMGの流路を仕切るように設けられている。スクリーン30は、溶融ガラスMG内に含まれる異物を捕捉することで、当該異物がベースプレート21上に堆積するのを抑制する。
【0031】
図1及び
図2に示すように、スクリーン30は、例えば、底部31と、底部31から延びる傾斜部32とを有している。底部31は、ブッシング13の高さ方向に対して略垂直をなす平板状をなす。底部31は、例えば、スクリーン30において最も下方に位置する部位である。底部31は、Z軸方向から見て、スクリーン30の中央部に設けられている。
【0032】
スクリーン30の傾斜部32は、底部31の周縁から、ブッシング本体20の周壁22に向かって上方に傾斜しつつ延びている。傾斜部32は、ブッシング13の高さ方向から見て、底部31の周囲を囲むように設けられている。傾斜部32の外周縁は、ブッシング本体20の周壁22に対して例えば溶接によって連結されている。また、傾斜部32の外周縁は、例えば、周壁22の上端部に連結されている。
【0033】
(スクリーン30の開口部33)
図2に示すように、スクリーン30は、溶融ガラスMGが流通可能な複数の開口部33を有する。各開口部33の形状は、例えば、スリット状、円形状、楕円形状、多角形状等が挙げられる。なお、開口部33は、例えば、スクリーン30における底部31及び傾斜部32の各々に設けられている。各開口部33は、ブッシング13の高さ方向から見て、例えば、複数のノズル列Rの間に位置している。すなわち、各開口部33は、ブッシング13の高さ方向から見て、各ノズル24の孔24aと重ならない位置に設けられている。また、本実施形態の開口部33は、ブッシング13の高さ方向から見て冷却フィン26と重なる位置に設けられている。また、本実施形態の各開口部33は、ノズル列Rにおける各ノズル24が並ぶ方向、すなわちX軸方向に沿って延びるスリット状をなしている。これにより、開口部33が、複数のノズル列Rの間のスペースに沿った好適な形状となる。
【0034】
図1に示すように、ブッシング本体20の各補強リブ25の上端部は、スクリーン30における底部31の下面に接している。これにより、各補強リブ25は、その上端部にてスクリーン30を支持している。スクリーン30の底部31は、ブッシング13の高さ方向における中央部よりも下方、すなわちノズル24側に設けられている。なお、
図1では、ブッシング13の高さ方向における中央線CLを図示している。スクリーン30の底部31は、当該中央線CLよりも下方、すなわちノズル24側に設けられている。つまり、底部31に設けられた開口部33は、ブッシング13の高さ方向における中央線CLよりもノズル24側に設けられている。
【0035】
ベースプレート21を含めたブッシング本体20及びスクリーン30の材料としては、例えば、貴金属又は貴金属合金が挙げられる。貴金属は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、又はオスミウムである。ブッシング本体20及びスクリーン30の材料は、耐久性を高めるという観点から、白金、又は白金合金であることが好ましい。白金合金としては、例えば、白金ロジウム合金が挙げられる。
【0036】
(上記以外の構成)
ガラス繊維の製造装置11は、図示を省略したアプリケーター、及びギャザリングシューを備えている。アプリケーターは、ブッシング13から引き出された多数のガラスフィラメントGFに液体状の集束剤を塗布する。ギャザリングシューは、集束剤が塗布された多数のガラスフィラメントGFを集束させる。多数のガラスフィラメントGFがギャザリングシューにより集束されることで、ガラスストランドが得られる。ガラスストランドは、巻取り装置により巻き取られることで、ガラスストランドが巻回されたケーキが得られる。
【0037】
(ガラス繊維の製造方法)
次に、ガラス繊維の製造方法を説明する。
ガラス繊維の製造方法は、ガラス繊維の製造装置11を用いてガラスフィラメントGFを成形する成形工程を備えている。成形工程では、溶融ガラスMGがフィーダー12からブッシング13に供給される。フィーダー12からブッシング13までの溶融ガラスMGの流路及びブッシング13のブッシング本体20の内部は、溶融ガラスMGにより満たされている。溶融ガラスMG内に含まれる異物は、ブッシング本体20の内部に配置されたスクリーン30にて捕捉される。成形工程では、ブッシング13に供給された溶融ガラスMGがブッシング13の各ノズル24から流出されることにより、複数のガラスフィラメントGFが成形される。
【0038】
また、成形工程において、フィーダー12から流下する溶融ガラスMGの温度が低い場合、ブッシング本体20は、抵抗加熱用の前記ターミナルを通じた電圧印加によって、ベースプレート21を主として加熱される。このようなブッシング本体20の加熱により、ブッシング本体20の内部の溶融ガラスMGを加熱して所定の温度まで昇温させることが可能となっている。これにより、各ノズル24からの溶融ガラスMGの流出を安定させることが可能となる。
【0039】
また、成形工程において、溶融ガラスMG内の異物は、その大部分がスクリーン30によって捕捉される。なお、溶融ガラスMG内の異物は、例えば、フローブロック12aの欠片やブッシングブロック12bの欠片等である。溶融ガラスMG内の異物の中でも、スクリーン30の開口部33をくぐり抜けて、スクリーン30よりも下方、すなわちベースプレート21に到達するものもある。本実施形態では、スクリーン30の開口部33は、ブッシング13の高さ方向から見て、各ノズル24の孔24aと重ならない位置に設けられるため、開口部33をくぐり抜けた異物がノズル24の孔24a上に落下しにくくなっている。
【0040】
また、本実施形態のスクリーン30では、底部31に設けられた開口部33は、ブッシング13の高さ方向における中央線CLよりもノズル24側に設けられている。これにより、ブッシング13の高さ方向において、スクリーン30の開口部33をノズル24に近づけることが可能となる。その結果、開口部33をくぐり抜けた異物が鉛直方向下方に直線的に落下しない状況においても、当該異物がノズル24の孔24a上に落下することを抑制可能となっている。
【0041】
上記の成形工程で得られたガラスフィラメントGFが集束されることで、ガラスストランドが得られる。ガラスストランドは、例えば、所定の長さに切断されたチョップドストランドとして利用することができる。また、ガラスストランドは、ミルドファイバ、ロービング、ヤーン、マット、クロス、テープ、又は組布等として利用することができる。ガラスストランドの用途としては、例えば、車両用途、電子材料用途、建材用途、土木用途、航空機関連用途、造船用途、物流用途、産業機械用途、及び日用品用途が挙げられる。
【0042】
本実施形態の効果について説明する。
(1)スクリーン30の開口部33は、ブッシング13の高さ方向から見て、各ノズル24の孔24aと重ならない位置に設けられている。この構成によれば、スクリーン30の開口部33をくぐり抜けた溶融ガラスMG内の異物が、ノズル24上に落下してノズル24の孔24aを塞いでしまうことを抑制できる。
【0043】
(2)ブッシング本体20は、複数のノズル24からなるノズル列Rを複数有する。そして、開口部33は、ブッシング13の高さ方向から見て、複数のノズル列Rの間に位置している。この構成によれば、複数のノズル列Rの間のスペースを利用することで、スクリーン30の開口部33をノズル24の孔24aと重ならない位置に配置しつつも、開口部33の開口面積を確保できる。
【0044】
(3)開口部33は、ブッシング13の高さ方向における中央部よりもノズル24側に設けられている。この構成によれば、スクリーン30の開口部33をノズル24の近くに配置することが可能となる。このため、スクリーン30の開口部33をくぐり抜けた異物がノズル24を塞ぐことをより一層抑制できる。
【0045】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0046】
・スクリーン30がブッシング13の高さ方向と垂直な平板状であってもよい。すなわち、上記実施形態のスクリーン30から傾斜部32を省略した構成であってもよい。また、スクリーン30がブッシング13の高さ方向と垂直な平板状をなす構成の場合に、ブッシング13の高さ方向において、スクリーン30がフランジ部23と同じ位置に設けられていてもよい。言い換えると、平板状をなすスクリーン30とフランジ部23とが、同一のXY平面上に位置していてもよい。
【0047】
・ブッシング本体20の補強リブ25がスクリーン30に接していない構成、すなわち、スクリーン30が補強リブ25にて支持されていない構成としてもよい。また、上記実施形態のブッシング本体20から補強リブ25を省略することもできる。
【0048】
・スクリーン30の全体が、ブッシング13の高さ方向における中央線CLよりも上方に設けられていてもよい。すなわち、スクリーン30の全ての開口部33が中央線CLよりも上方に位置していてもよい。
【0049】
・スクリーン30の底部31のみに開口部33が設けられており、傾斜部32には開口部33が設けられていない構成としてもよい。
・上記実施形態のブッシング本体20において、冷却フィン26を、例えば、内部に冷却媒体を流通する流路を有する冷却パイプ等に変更可能である。
【0050】
・上記実施形態のブッシング本体20から冷却フィン26を省略してもよい。
・フィーダー12の構成は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、ガラス繊維の製造装置11は、複数のブッシングブロック12bを積み重ねて配置された構造を有していてもよい。また、例えば、ガラス繊維の製造装置11からブッシングブロック12bを省略することもできる。この場合、ブッシング本体20のフランジ部23が、フローブロック12aの下面に接する構成であってもよい。
【0051】
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
11…ガラス繊維の製造装置
12…フィーダー
13…ブッシング
20…ブッシング本体
24…ノズル
24a…孔
30…スクリーン
33…開口部
GF…ガラスフィラメント
MG…溶融ガラス
R…ノズル列