(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063488
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、射出成形機およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171488
(22)【出願日】2022-10-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】水梨 琢也
(72)【発明者】
【氏名】上遠野 智祐
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM23
4F206AM32
4F206AP20
4F206AR20
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP15
4F206JP22
4F206JP30
(57)【要約】
【課題】射出成形機による製品の製造に関して計算機を用いた推論により得られる推論結果を製品の品質管理や製造工程における条件設定等に活用可能とする。
【解決手段】射出成形機による成形品の製造に関する情報を表示する表示装置において、射出成形におけるショットに関する情報およびショットで得られた情報に基づいて推論エンジンにより推定されたショットにおける成形結果を表す情報の推定データを取得し、取得された情報に基づき、ショットに関する情報とショットにおける推定データとをショットごとに対応付けて表示する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機による成形品の製造に関する情報を表示する情報処理装置において、
射出成形におけるショットに関する情報および当該ショットで得られた情報に基づいて推定された当該ショットにおける成形結果を表す情報の推定データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された情報に基づき、前記ショットに関する情報と当該ショットにおける前記推定データとをショットごとに対応付けて表示する表示部と、
を備えることを特徴とする、情報処理装置。
【請求項2】
前記ショットに関する情報はショットを識別するショットの識別情報を含み、
前記表示部は、前記識別情報と、当該識別情報により識別されるショットにおける前記推定データとを対応付けて表示することを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記ショットにおける前記射出成形の動作により得られた成形結果を表す情報の実績値をさらに取得し、
前記表示部は、前記ショットの識別情報に対応付けて、前記推定データと共に前記実績値を表示することを特徴とする、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記ショットにおける前記射出成形の動作において用いられる当該動作の設定情報をさらに取得し、
前記表示部は、前記ショットの識別情報に対応付けて、前記推定データと共に前記設定情報を表示することを特徴とする、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記推定データに対する統計処理を行って得られた統計情報を取得し、
前記表示部は、前記推定データの統計情報を表示することを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記表示部は、表示対象の前記推定データが前記成形品の状態に関して予め定められた条件を満たす場合、当該条件を満たす推定データを他の表示情報とは異なる表示態様で表示することを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記表示部は、複数のショットについて前記ショットに関する情報と当該ショットに対応付けた前記推定データとを並べて表示し、
前記表示部における表示は、前記ショットの識別情報に対応付けて表示されるデータの項目および各項目の表示順を、ユーザの操作により設定可能であることを特徴とする、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記表示部は、前記ショットに関する情報である当該ショットにおける成形条件の設定値と、当該設定値と同じ項目の前記推定データとを対比させて表示することを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記表示部により表示される前記推定データは、少なくとも、製品の状態を表す値、金型の状態を表す値、機械の状態を表す値、新しい成形条件の設定値および成形条件の変更量のいずれか一つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
射出装置および型締装置から射出成形の動作に関連する情報を取得し、取得した情報に基づいて、射出成形のショットにおける成形結果を表す情報の推定データを推定する処理部をさらに備え、
前記表示部は、前記取得部により取得された情報と前記処理部により推定された前記ショットにおける前記推定データとをショットごとに対応付けて表示することを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記処理部は、機械学習により学習させた推定モデルを用いて前記推定データを推定し、
前記推定モデルにおける入力データは、ショットごとの成形結果を表す情報の実績値の、当該ショットにおける代表値であることを特徴とする、請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記処理部は、機械学習により学習させた推定モデルを用いて前記推定データを推定し、
前記推定モデルにおける入力データは、ショットごとの成形結果を表す情報の実績値の、当該ショットにおける時系列データであることを特徴とする、請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記処理部は、前記推定データを、ショットごとの成形結果を表す情報の実績値および成形条件の設定値に対応付けて、データファイルとして記憶装置に記憶させることを特徴とする、請求項10乃至請求項12の何れかに記載の情報処理装置。
【請求項14】
射出装置と、
型締装置と、
前記射出装置および前記型締装置による射出成形の動作に関連する情報に基づいて、射出成形におけるショットごとに当該ショットにおける成形結果を表す情報の推定データを推定するデータ処理装置と、
前記ショットに関する情報と当該ショットにおける前記推定データとをショットごとに対応付けて表示する表示装置と、
を備えることを特徴とする、射出成形機。
【請求項15】
コンピュータを、
射出装置および型締装置から射出成形の動作に関連する情報を取得する取得部と、
射出成形におけるショットごとに前記取得部により取得した情報に基づいて、当該ショットにおける成形結果を表す情報の推定データを推定する処理部と、
前記取得部により取得された前記ショットに関する情報と当該ショットにおける前記推定データとをショットごとに対応付けて表示装置に表示させる表示制御部として、
機能させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、射出成形機およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形機またはダイカストマシンに設けられたセンサから取得される時系列データと、検査装置による検査結果のデータとに基づき、ニューラルネットワークの推定モデルを生成し、生成した推定モデルによって製品の状態を推定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形機による製品の製造に関してショット毎の実績値に基づき計算機による推論を行い、得られた推論結果を、製品の品質管理や製造工程における条件設定等に活用することが求められる。
【0005】
本発明は、射出成形機による製品の製造に関して計算機を用いた推論により得られる推論結果を製品の品質管理や製造工程における条件設定等に活用可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、射出成形機による成形品の製造に関する情報を表示する情報処理装置において、射出成形におけるショットに関する情報およびショットで得られた情報に基づいて推定されたショットにおける成形結果を表す情報の推定データを取得する取得部と、取得部により取得された情報に基づき、ショットに関する情報とショットにおける推定データとをショットごとに対応付けて表示する表示部と、を備えることを特徴とする、情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、射出成形機による製品の製造に関して計算機を用いた推論結果をショットに関する情報と対応付けて表示することにより、ショットごとの製品の品質管理や製造工程における条件設定等に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態が適用される射出成形機の構成を示す図である。
【
図4】制御装置およびデータ処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図5】推定モデルの一例としてのニューラルネットワークの構成例を示す図である。
【
図6】推定データの提示画面の一例を示す図である。
【
図7】推定データの提示画面の他の一例を示す図である。
【
図8】推定データの提示画面の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<装置構成>
図1は、本実施形態が適用される射出成形機の構成を示す図である。射出成形機10は、射出装置20と、型締装置30と、制御装置100と、データ処理装置200と、表示装置300とを備える。以下の説明では、射出装置20から型締装置30へ向かう方向を前方と呼ぶ場合がある。
【0010】
射出装置20は、成形材料を加熱するシリンダ、このシリンダ内で回転可能であると共に軸方向に進退可能に設けられているスクリュー、このスクリューを回転方向に駆動する回転モータ、このスクリューを軸方向に駆動するモータ等を備えて構成される。成形材料は、例えば、樹脂等である。射出装置20は、スクリューを回転させながら前方へ進出させることにより、シリンダ内で加熱されて液状となった成形材料を射出し、射出装置20の前方に配置された型締装置30の金型内へ充填する。射出装置20は、成形品の製造工程において、例えば、計量工程、充填工程、保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程とも呼ぶ。
【0011】
型締装置30は、金型と、金型を締め付ける締め付け機構、この締め付け機構を駆動するモータ等を備えて構成される。型締装置30は、金型を閉じて射出装置20から射出された成形材料を金型内部へ受ける。このとき、型締装置30は、成形材料が充填されることによって金型が開かないように締め付け機構により金型を締め付ける(型締め)。金型に充填された成形材料が固化することにより成形品が生成される。この後、型締装置30は、金型を開いて、生成された成形品が取り出し可能になる。型締装置30は、成形品の製造工程において、例えば、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、型開工程などを行う。
【0012】
制御装置100は、射出装置20および型締装置30の動作を制御する装置である。データ処理装置200は、射出装置20および型締装置30が動作するのに伴って得られるデータを処理する装置である。表示装置300は、制御装置100による射出装置20および型締装置30の制御に関する情報、データ処理装置200が取得したデータやデータ処理装置200の処理結果等を表示する。また、表示装置300は、制御装置100やデータ処理装置200に命令やデータを入力する操作を行うための操作画面を表示する。
【0013】
<制御装置100の構成>
図2は、制御装置100の構成を示す図である。制御装置100は、射出装置20および型締装置30の動作を制御する。制御装置100は、例えば、コンピュータにより実現される。制御装置100は、制御情報取得部110と、制御部120と、記憶部130とを備える。制御装置100は、射出装置20および型締装置30を制御して、成形品の製造に係る工程を繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品の製造に係る工程には、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、突き出し工程などが含まれる。以下、これらの製造に係る工程をまとめて「製造工程」と呼ぶことがある。また、成形品を得るための一連の動作、例えば、上記の製造工程における計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」、「成形サイクル」等と呼ぶ。なお、成形品を製造する上記の各工程は例示に過ぎない。例えば、1ショットで実行される工程として、上記に含まれない、他の工程を含んでも良い。
【0014】
制御情報取得部110は、射出装置20および型締装置30を制御するために用いる制御情報を取得する。制御情報は、ユーザが設定する条件であり、例えば、図示しない入力装置を用いてユーザが入力する。制御情報には、例えば、樹脂温度(シリンダ温度)、金型温度、射出保圧時間、計量値、V-P切換位置、保圧圧力、射出速度(充填速度)、スクリュー回転数、スクリュー背圧、型締力等の成形条件が含まれる。これらの成形条件は、成形品や金型に応じて複数の組み合わせが決められる。この成形条件の組み合わせデータを、以下、成形条件データセットとも呼ぶ。制御情報取得部110は、取得した制御情報を、成形条件データセットとして記憶部130に格納する。
【0015】
制御部120は、上記の成形条件データセットを用いて射出装置20および型締装置30を制御し、上記の各工程等を含む成形品の製造(ショット)に係る工程を実施する。制御部120は、成形品の製造開始時などに、製造しようとする成形品に対応する成形条件データセットを記憶部130から読み出す。そして、制御部120は、読み出した制御情報に基づいて射出装置20および型締装置30の動作を制御する。具体的には、制御部120は、製造工程において射出装置20および型締装置30から得られるデータが、成形条件データセットの設定値と一致するように、射出装置20および型締装置30を制御する。また、制御部120は、記憶部130から読み込んだ成形条件データセットを表示装置300に表示させても良い。ユーザは、表示装置300に表示された成形条件のデータを参照し、必要に応じて値の修正等の操作を行っても良い。
【0016】
記憶部130は、制御情報取得部110により取得された制御情報131を保持する。制御情報131に含まれる成形条件データセットは、製造対象の成形品や金型に対応付けられて用意されている。記憶部130は、製造対象の成形品や金型ごとの成形条件データセットを保持する。また、図示しないが、記憶部130は、制御部120が射出装置20および型締装置30を制御するためのプログラムを保持している。詳しくは後述するが、制御装置100においてプロセッサが記憶部130に保持されたプログラムを読み込んで実行することにより、制御部120の機能が実現される。
【0017】
<データ処理装置200の構成>
図3は、データ処理装置200の構成を示す図である。データ処理装置200は、射出装置20および型締装置30が上記の成形品の製造に係る工程における動作を実行するのに伴って得られるデータを取得し、処理する。データ処理装置200は、例えば、コンピュータにより実現される。データ処理装置200は、取得部210と、処理部220と、記憶部230と、表示制御部240とを備える。
【0018】
取得部210は、射出装置20および型締装置30から処理対象のデータを取得する。射出装置20および型締装置30には、種々のセンサや検出器が取り付けられている。これらのセンサや検出器により取得されるデータ(以下、「取得データ」と呼ぶ)は、射出装置20および型締装置30による成形結果を表す情報であり、成形品の品質管理に用いられる。具体的には、例えば、成形品の重量、成形品の寸法、型内圧、最小クッション位置、充填圧力の波形の特徴量などが含まれる。これらの取得データは、成形品の製造工程において得られる実績値である。なお、詳しくは後述するが、これらの取得データの一部のデータ項目に関して、計測や計量を行わず、または計測や計量によるデータの取得と共に、推論によるデータの生成を行う場合がある。取得部210は、センサや検出器から送信された取得データを受信し、記憶部230に格納する。また、これらの取得データは制御部120による制御に用いられることもある。
【0019】
処理部220は、記憶部230に格納された取得データを処理する。具体的には、処理部220は、各工程における取得データの代表値の抽出、各工程における取得データを時系列化した時系列データの生成の処理を行う。処理部220は、代表値の抽出において、取得データに対し、平均値の算出、値の取る範囲の特定、最大値や最小値の特定等の統計処理を行う。また、処理部220は、推論エンジン221を有する。推論エンジン221は、成形結果を表すデータの一部について推定を行う。この推論エンジン221は、取得データのデータ項目の一部を用いて他の一部のデータの値を推定するものであれば、その種類や推定方法は特に限定しない。一例として、ニューラルネットワーク、決定木、その他の機械学習により生成された推定モデルを用いてデータを推定することが考えられる。機械学習ではない推定モデルとしては、例えば、重回帰モデル等の多変量解析モデルが用いられる。ここでは一例として、推論エンジン221は、機械学習による推定モデル232を用いてデータの推定を行うものとする。
【0020】
推論エンジン221により推定されるデータ(以下、「推定データ」と呼ぶ)は、取得データとして上述したデータ項目の一部である。例えば、成形品の状態を表す値、金型の状態を表す値、射出装置20および型締装置30の状態を表す値、成形条件における設定値の推奨値、成形条件における変更量の推奨値などのデータを推定データとし得る。推論エンジン221により推定される推定データのデータ項目に関しては、センサや検出器による計測や計量を行って実測値を得ても良いし、計測や計量を行わなくても良い。成形品の重量や寸法等のように、実際に生成された成形品を取り出して別途計測して得られるデータ項目に関しては、実測を行わずに推定のみを行うことにより、実測に要する手間を軽減することができる。
【0021】
また、処理部220は、取得データおよび推定データが予め定められた条件を満たすか否かを判断する。具体的には、成形品の品質、金型や装置の状態等が正常である場合に得られる取得データおよび推定データの範囲を定める閾値を設定しておき、取得データおよび推定データが閾値を超えたか否かを判断する。これにより、成形品の品質、金型や装置の状態等に異常が発生していないか監視することができる。
【0022】
記憶部230は、取得部210により取得された取得データや推論エンジン221により推定された推定データのデータファイル231を保持する。データファイル231は、その取得データが得られたショットにおける製造対象の成形品や金型に対応付けられて保持される。また、記憶部230は、処理部220により処理された代表値、時系列データ、統計データ等を保持する。これらのデータは、例えば、元の取得データに関連付けられる。具体的には、これらのデータを対応する元の取得データのデータファイル231に格納しても良い。また、これらのデータを格納したデータファイルを元のデータのデータファイル231に関連付けても良い。これにより、処理部220により生成された各データも、元の取得データが得られたショットにおける製造対象の成形品や金型に対応付けられて保持される。記憶部230に保持されるデータファイル231のデータ形式としては、例えば、CSV(Comma Separated Values)、XML(eXtensible Markup Language)、JSON(JavaScript Object Notation)等を用い得る。
【0023】
また、記憶部230は、処理部220の推論エンジン221が成形結果を表すデータの一部を推定するために用いる推定モデル232を保持する。さらに、図示しないが、記憶部230は、処理部220がデータ処理を実行するためのプログラムを保持している。詳しくは後述するが、データ処理装置200においてプロセッサが記憶部230に保持されたプログラムを読み込んで実行することにより、処理部220の機能が実現される。
【0024】
表示制御部240は、取得データや処理部220による処理結果のデータを表示装置300に表示させる。処理部220による処理結果のデータには、推論エンジン221により推定された推定データが含まれる。表示制御部240は、推定データを、その推定データを推定するために用いた取得データが得られたショットに対応付けて、表示装置300に表示させる。ここで、対応付けて表示させるとは、ユーザが表示装置300に表示された画面を見て対応するデータであることを認知できるように、取得データを表示することである。例えば、表形式で表示される場合、各ショットで得られた取得データを、その取得データが得られたショットと同じ行または列に並べて表示することや、ショットごとにグループ分けし、同じグループに含まれるデータを識別できるように枠を描いて表示することや、対応するデータごとに表示する文字等の色、フォント、サイズ、または、背景等の表示態様を揃えて表示することや、対応するデータを線等で視覚的に繋いで表示する等の表示方法による表示を行うことができる。また、表示対象のデータには、制御装置100が射出装置20および型締装置30の制御に用いる制御情報における設定情報も含まれる。設定情報(設定値)は、制御装置100から取得し得る。表示制御部240は、記憶部230や制御装置100の記憶部130からこれらのデータを取得し、表示装置300に表示させる。
【0025】
<制御装置100およびデータ処理装置200のハードウェア構成>
図4は、制御装置100およびデータ処理装置200を実現するコンピュータ400のハードウェア構成例を示す図である。
図4に示すコンピュータは、演算手段であるプロセッサ401と、記憶手段である主記憶装置(メイン・メモリ)402および補助記憶装置403を備える。プロセッサ401としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の種々の演算回路が用いられる。プロセッサ401は、補助記憶装置403に格納されたプログラムを主記憶装置402に読み込んで実行する。主記憶装置402としては、例えば、RAM(Random Access Memory)が用いられる。補助記憶装置403としては、例えば、磁気ディスク装置やSSD(Solid State Drive)等が用いられる。また、コンピュータは、表示装置(ディスプレイ)300に表示出力を行うための表示機構404と、コンピュータのユーザによる入力操作が行われる入力デバイス405とを備える。入力デバイス405としては、例えば、キーボードやマウス等が用いられる。なお、
図4に示すコンピュータの構成は一例に過ぎず、本実施形態で用いられるコンピュータは
図4の構成例に限定されるものではない。例えば、記憶装置としてフラッシュ・メモリ等の不揮発性メモリやROM(Read Only Memory)を備える構成としても良い。
【0026】
制御装置100が
図4に示すコンピュータにより実現される場合、制御情報取得部110は、例えば、プログラムを読み込んで実行するプロセッサ401および入力デバイス405により実現される。制御部120の機能は、例えば、プロセッサ401がプログラムを読み込んで実行することにより実現される。記憶部130は、例えば、補助記憶装置403により実現される。
【0027】
データ処理装置200が
図4に示すコンピュータにより実現される場合、取得部210および処理部220の機能は、例えば、プロセッサ401がプログラムを読み込んで実行することにより実現される。記憶部230は、例えば、補助記憶装置403により実現される。表示制御部240は、プログラムを読み込んで実行するプロセッサ401および表示機構404により実現される。
【0028】
<推定モデル232の構成例>
図5は、推定モデル232の一例としてのニューラルネットワークの構成例を示す図である。推定モデル232を構成するニューラルネットワーク500は、入力層510と、隠れ層520と、出力層530とを有している。
図5に示す例では、入力層510は、1ショットで得られる取得データおよび処理結果のデータのうち、推論に用いられる要素数分の入力ユニット511を有している。
図5では、入力ユニット511を丸印「〇」で示している。入力層510には、取得データおよび処理部220による処理結果のデータが入力される。隠れ層520は、複数の隠れ層521を含む多層構造を有する。出力層530は、1つの出力ユニット531を有し、推論の対象である成形結果を表すデータ(以下、「推論対象データ」と呼ぶ)の推定値(推定データ)を出力する。
【0029】
推定モデル232は、推論対象データの種類ごとに用意される。各推論対象データに対応する推定モデル232において、入力層510の入力ユニット511は、推論対象データの推定に用いられる複数の入力データに対して個別に対応付けられている。入力データとしては、該当するショットの各工程においてセンサや検出器により得られた取得データの代表値が用いられる場合もあるし、取得データの工程ごとの時系列データが用いられる場合もある。いずれの種類のデータを入力データとして用いるかは、推論対象データの種類に応じて設定し得る。データ処理装置200の処理部220の推論エンジン221は、推論対象データの種類ごとの推定モデル232を記憶部230から読み出し、取得データおよび処理部220による処理結果のデータから、読み出した推定モデル232の入力データに該当するデータを入力し、各推論対象データの値を推定する。
【0030】
<推定データの表示例>
次に、推論エンジン221により推定された推定データの表示例について説明する。データ処理装置200の表示制御部240は、ショットごとに得られる推定データを記載した提示画面を生成し、表示装置300に表示させる。提示画面は、同じショットに関する推定データと他の情報とを対応付けて表示する。ユーザは、この提示画面に示された推定データを参照することで、射出装置20および型締装置30による成形品の生成に関わる動作において、推定データを活用することができる。
【0031】
図6は、推定データの提示画面の一例を示す図である。
図6に示す提示画面301は、ショットごとの推定データを識別できるように構成されている。より詳細には、
図6に示す提示画面301では、複数のショットで得られる情報が一覧表示され、ショットに関する情報のうち各ショットを識別するのに用い得る情報と、ショットごとに得られた推定データとが対応付けて表示される。
図6に示す提示画面301には、ショットごとに、「ショット数」、「時刻」、「状態」が示されると共に、これらの情報に対応付けて実績値の情報と推定データとが表示されている。
【0032】
「ショット数」は、1ショットごとにカウントアップするショットの番号であり、本実施形態における各ショットの識別情報の一例である。
図6に示す提示画面301では、ショットの識別に用い得る「ショット数」と、推定データおよびその他のショットに関する情報とが対応付けられている。「時刻」は、各ショットに係る製造工程が開始された時刻である。時刻も表記形式によっては識別情報として活用することも可能であり、本実施形態ではYYYYMMDDSS形式で表示される識別情報の一例である。ショット数、または、時刻でもって識別しても良いし、それらを組み合わせることで識別しても良い。また、ショット数や時刻とは別に、識別子など識別可能な情報を付与し、表示しても良い。「状態」は、製造された成形品の良不良を示す情報である。例えば、成形品が不良である場合に、不良であることを示す情報が表示される。不良であることを示す情報としては、例えば、エラーを意味する「E」の文字を表示しても良い。また、良品である場合に丸印「〇」、不良品である場合にバツ印「×」を表示する等としても良い。
【0033】
また、
図6に示す提示画面301には、各ショットに係る製造工程の実施により得られた実績値として、「サイクル時間」、「充填時間」、「計量時間」、「型閉時間」、「型開時間」が示されている。「サイクル時間」は、1ショットの製造工程の実施に要する時間である。「充填時間」は、1ショットの製造工程のうち、型締装置30の金型に成形材料を充填する充填工程に要する時間である。「計量時間」は、1ショットの製造工程のうち、図示しない計量モータを駆動して成形材料を送り出す計量工程に要する時間である。「型閉時間」は、1ショットの製造工程のうち、成形材料の充填に先立って金型を閉じる型閉工程に要する時間である。「型開時間」は、1ショットの製造工程のうち、金型に充填された成形材料が固化した後、金型を開く型開工程に要する時間である。
【0034】
また、
図6に示す提示画面301には、推定データ(図では、「推定値」と記載)として、「重量」、「適正V-P切換位置」が示されている。「重量」は、製造された成形品の重量である。ここでは、製造された成形品を抜き出して実際に重量を計測して得られる実測値に代えて、推論エンジン221により推定された推定値が表示される。「適正V-P切換位置」は、射出成形において射出速度制御と射出圧力制御との切り換え位置に関して、適正値と推定された値である。
【0035】
上記の実績値および推定データを含む各データは1ショットごとに得られ、
図6に示す提示画面301において、各データは、それらのデータが得られたショットに対応付けて表示される。具体的には、例えば、提示画面301のショット数の表示に並べて、そのショット数で識別されるショットで得られた各データが表示される。したがって、あるショットで得られた実績値は、そのショットを特定するショット数に並べて表示され、その実績値に基づいて推定された推定データは、そのショットを特定するショット数およびそのショットで得られた実績値に並べて表示される。
【0036】
図6に示した例では、推定データとして、製品の状態を表す値の一つである「重量」、成形条件の設定値の一つである「適正V-P切換位置」が推定され、提示画面301に表示されているが、この他、金型の状態を表す値、射出装置20および型締装置30の状態を表す値等を推定し、推定データとして提示画面301に表示しても良い。
【0037】
また、データ処理装置200の処理部220が、取得データおよび推定データが予め定められた条件を満たすか否かを監視することについて上述した。この処理部220による判断結果を提示画面301に反映させても良い。例えば、取得データである実績値やその実績値に基づいて推定された推定データのうち、正常である範囲を示す閾値を超えているデータがある場合、該当するデータを他のデータとは異なる表示態様で表示しても良い。
【0038】
射出成形機では、製造工程において得られる実績値をショットごとに保存するロギングと呼ばれる処理が行われる。ロギングにより保存されたデータは、表示装置に一覧表示し、ユーザが品質管理等に活用することができる。
図6に示すように、ショットごとの実績値と共に推定データを表示することにより、ユーザは、見慣れたロギングデータの表示画面に類似する画面で推定データを参照し、成形品の品質、金型の状態、装置の状態等を判断することができる。
【0039】
図7は、推定データの提示画面の他の一例を示す図である。
図7に示す提示画面302では、製造工程における充填工程の設定に関して、「設定値」と「推奨値」とを対比して表示している。「設定値」は、ショットに関する情報であり、ユーザにより入力された値である。「推奨値」は、推論エンジン221により推定された値(推定データ)である。
図7に示す提示画面302では、射出速度制御と射出圧力制御との切り換え(
図7では、「V-P SW」と記載)に関して、切り換え位置(
図7では、「位置」と記載)、切り換え時の充填速度(
図7では「速度」と記載)、切り換え時の充填圧力(
図7では「圧力」と記載)の各々について、設定値の表示欄と推奨値の表示欄とが対応付けて表示されている。
図7に示す例では、設定値および推奨値の各表示欄において、各項目が同じ位置関係となるように配置されることで対応関係が視認できるように表示されている。なお、
図7では、設定値および推奨値の各表示欄において各項目が表示される枠が繋がっているが、各項目の枠を離隔させて隙間を生じるように配置しても良い。ユーザは、推論エンジン221により推定された値である推奨値を参照して、各項目の設定値を入力したり、入力した設定値を修正したりすることができる。
図7に示す提示画面302は、例えば、制御装置100において制御情報としての成形条件の設定値を入力する画面を用いて構成しても良い。
【0040】
図8は、推定データの提示画面の他の一例を示す図である。
図8に示す例は、
図6に示した提示画面301と同様の画面において、提示されるデータ項目が異なる例である。
図8では、各データの表示欄のみを図示している。
図8に示す例では、複数のショットについて、各ショットに関する情報、実績値、設定値、推定値の各項目が示されている。なお、
図8において、実績値および設定値の項目は一部のみが示され、他は省略されている。
【0041】
図8に示す例において、各ショットに関する情報としては、
図6と同様の「ショット数」、「時刻」、「状態」が示されている。また、実績値における図示されている項目は「サイクル時間」、「充填時間」、「計量時間」であり、
図6に示した実績値の項目と同様である。
【0042】
図8に示す例では、設定値として、「保圧設定」、「射出速度」、「V-P切換位置」が示されている。「保圧設定」は、保圧工程における保圧圧力の設定値である。「射出速度」は、射出工程における成形材料の射出速度の設定値である。「V-P切換位置」は、射出速度制御と射出圧力制御との切り換え位置の設定値である。
図6の提示画面301では、射出速度制御と射出圧力制御との切り換え位置について推定値(「適正V-P切換位置」)が示されていたが、
図8の例では、このパラメータについて設定値が示されている。
【0043】
また、
図8に示す例では、推定データとして、「適正保圧設定」、「射出速度調整量」、「ゲート径」、「重量」が示されている。「適正保圧設定」は、保圧設定値の推定値である。「射出速度調整量」は、射出速度の設定値に対する調整量の推定値である。「ゲート径」は、金型のゲート径の推定値である。「重量」は、製造される成形品の重量の推定値である。これらの推定値において、「適正保圧設定」および「射出速度調整量」は、成形条件である設定値の推定値である。「ゲート径」は、金型に関係するパラメータについての推定値である。「重量」は、成形品の品質を表すパラメータについての推定値である。
【0044】
図6および
図8に示した提示画面301では、表示するデータ項目の各データを、そのデータが得られたショットのショット数に対応付けて表示することとした。具体的には、例えば、
図6の提示画面301では、実績値である「サイクル時間」、「充填時間」、「計量時間」、「型閉時間」および「型開時間」と、推定データである「重量」および「適正V-P切換位置」の各データ項目のデータを、対応する「ショット数」に対して横方向に並ぶように表示する。このように表示することで、この提示画面301を参照するユーザは、ショットごとに、どのような実績値が得られた際に「重量」および「適正V-P切換位置」の推定データとしてどのような値が得られるのかを認識することができる。
【0045】
また、提示画面301では、1ショットの製造工程が実施されるごとに、最後のショットに対応する各項目の実績値および推定値のデータが追加される。この際、以前のショットに対応する各項目のデータは、提示画面301において順次送られる。したがって、各項目のデータは、ショットの順番に縦方向に並ぶ。具体的には、例えば、最後に実施されたショットに基づく各データが直前に行われたショットに基づく各データの直上に表示され、それ以前に行われたショットに基づく各データが下方へ順送りされるように表示が行われる場合、一つのデータ項目に着目すると、下方から上方へ向かって順に新しいデータが表示されることになる。
【0046】
射出成形機10により成形品を製造する場合、射出成形機10の動作としては、適切な成形条件の設定値を特定するための動作(以下、「条件設定時の動作」と呼ぶ)と、成形条件の設定値が特定され、成形品を量産する際の動作(以下、「量産時の動作」と呼ぶ)とがある。条件設定時の動作では、ユーザは、ショットごとに設定値を変更しながら製造工程を実施し、対応付けて表示された推定値の変化を参照することで、適切な設定値を絞り込むことができる。また、量産時の動作では、ユーザは、成形品の品質に大きく影響する成形品の重量等のパラメータに関してショットごとの推定値を確認し、大きな変化が検知された場合に、異常が発生したとして対応することができる。推定値を用いることにより、製造された成形品を抜き出して実際に重量等を計測する手間を省くことができる。
【0047】
ここで、実績値として取得可能なデータは、射出装置20および型締装置30に設けられたセンサや検出器からデータ処理装置200の取得部210により取得されるデータである。したがって、提示画面301に実績値として表示可能なデータの種類は、射出装置20および型締装置30に設けられたセンサや検出器により特定される。また、設定値は、制御装置100の記憶部130に保持されている制御情報において、成形条件として記録されたデータである。したがって、提示画面301に設定値として表示可能なデータの種類は、射出装置20および型締装置30の制御に必要な成形条件に基づいて特定される。また、推定データは、データ処理装置200の処理部220における推論エンジン221が記憶部230に保持されている推定モデル232を用いて推論を行うことにより得られるデータである。したがって、提示画面301に推論データとして表示可能なデータの種類は、用意されている推定モデル232に応じて特定される。しかしながら、表示装置300に表示される提示画面301においては、各データ項目に関して、表示するか否かおよび表示するデータ項目の表示順をユーザが設定し得る。
【0048】
図6および
図8に示した提示画面301を参照すると、
図6に示した提示画面301では、実績値として「サイクル時間」、「充填時間」、「計量時間」、「型閉時間」、「型開時間」が表示され、推定データとして「重量」および「適正V-P切換位置」が表示されている。これに対し、
図8に示した提示画面301では、実績値として、一部であるが、「サイクル時間」、「充填時間」、「計量時間」が表示され、設定値として、一部であるが、「保圧設定」、「射出速度」、「V-P切換位置」が表示され、推定データとして、「適正保圧設定」、「射出速度調整量」、「ゲート径」、「重量」が表示されている。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。例えば、上記の実施形態では、射出成形機10がデータ処理装置200および表示装置300を備える構成として説明したが、かかる構成には限定されない。例えば、表示装置300としてデータ処理装置200に接続された外部装置のディスプレイを用い、このディスプレイに提示画面301、302を表示する構成としても良い。また、データ処理装置200の表示制御部240の機能と表示装置300の機能をパーソナルコンピュータ等の情報処理装置で実現し、この情報処理装置がデータ処理装置200から取得データ、設定値、推定データ等のデータを取得して提示画面301、302を表示する構成としても良い。さらに、データ処理装置200および表示装置300をパーソナルコンピュータ等の情報処理装置で実現し、制御装置100から設定情報を取得し、射出装置20および型締装置30から実績値を取得して推定データを推定し、情報処理装置のディスプレイに提示画面301、302を表示する構成としても良い。
【0050】
また、データ処理装置200を外部サーバにより実現し、ネットワークを介して射出成形機10および表示装置300に接続した構成としても良い。外部サーバは、ネットワークに接続されたローカルサーバであっても良いし、ネットワーク上のいわゆるクラウド環境において構築されたクラウドサーバであっても良い。さらに、射出成形機10や成形品を管理する管理システムを構成するサーバの機能として、この外部サーバを適用しても良い。この管理システムとしては、複数の射出成型機を管理対象として、ロギングデータによる成形品の品質管理を行うシステム、成形品の製造工程の進捗状況や射出成形機の稼働状態等の情報に基づき生産管理を行うシステム等が挙げられる。本実施形態は、これらの管理システムにおけるサーバが扱う情報や処理結果に基づき、表示装置300に提示画面301、302を表示する構成として実現しても良い。
【0051】
また、上記の実施形態では、提示画面301、302において、推論エンジン221により推定された推定データを表示することとしたが、必要に応じて、推定データに対して統計処理を行い、推定された値の平均値、推定値が含まれる範囲、推定値の最大値や最小値等の統計情報を算出して提示画面301、302に表示しても良い。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10…射出成形機、20…射出装置、30…型締装置、100…制御装置、110…制御情報取得部、120…制御部、130…記憶部、131…制御情報、200…データ処理装置、210…取得部、220…処理部、221…推論エンジン、230…記憶部、231…データファイル、232…推定モデル、240…表示制御部、300…表示装置、301、302…提示画面