(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063489
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】低りん溶鉄製造方法
(51)【国際特許分類】
C21C 5/52 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
C21C5/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171490
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直人
(72)【発明者】
【氏名】浅原 紀史
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 宏之
【テーマコード(参考)】
4K014
【Fターム(参考)】
4K014CB01
4K014CB05
4K014CC07
(57)【要約】
【課題】 電気炉において、SiO2やAl2O3等を含有する特定固体鉄源を原料として用いて溶鉄を製造するに際し、効率の良い低りん溶鉄製造方法を提供する。
【解決手段】鉄源を炉内に装入して溶解を進行させ、炉内スラグを排滓する第一工程と、CaO分を含む副原料を投入し、残部の固体鉄源を炉内に追加装入する第二工程と、CaO分を含む副原料を追加装入し、溶解、精錬、昇温の後、一部または全部の溶鉄を出湯する第三工程を含む低りん溶鉄製造方法において、第一工程において、最初の固体鉄源の装入開始時を始点とし、スラグの排出終了時を終点とする特定区間のうち、特定区間の終点から遡ること少なくとも30%以内の特定30%期間において、鉄浴の平均温度を上昇させる操作を行わない、または第一工程では固体鉄源の溶解が完了する前にスラグの排出を開始する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気炉において、Si酸化物、Al酸化物、金属Si、金属Alの一部又は全部を酸化物換算の合計で1質量%以上含む固体鉄源(以下「特定固体鉄源」という。)を原料の一部または全部として用いて溶鉄を製造するに際し、
前記特定固体鉄源の10質量%以上100質量%以下を含む鉄源を炉内に装入して溶解を進行させ、炉内スラグの一部または全部を排滓する第一工程と、
CaO分を含む副原料を投入し、残部のすべての固体鉄源を炉内に追加装入し又は装入しない第二工程と、
CaO分を含む副原料を追加投入し又は投入せず、溶解、精錬、昇温の後、一部または全部の溶鉄を出湯する第三工程を含み、
前記第一工程で排滓する炉内スラグはCaOとSiO2の質量濃度比(CaO/SiO2)が0.3以上1.5以下の範囲であり、
少なくとも、第三工程において排出する、あるいは第三工程の後に排出するスラグのCaOとSiO2の質量濃度比(CaO/SiO2)が1.2以上4.5以下であり、
かつ、前記第一工程において、最初の固体鉄源の装入開始時を始点とし、前記組成範囲のスラグの排出終了時を終点とする区間(以下「特定区間」という。)のうち、前記特定区間の終点から遡ること少なくとも30%以内の期間において、鉄浴の平均温度を上昇させる操作を行わないことを特徴とする、低りん溶鉄製造方法。
【請求項2】
電気炉において、Si酸化物、Al酸化物、金属Si、金属Alの一部又は全部を酸化物換算の合計で1質量%以上含む固体鉄源(以下「特定固体鉄源」という。)を原料の一部または全部として用いて溶鉄を製造するに際し、
前記特定固体鉄源の10質量%以上100質量%以下を含む鉄源を炉内に装入して溶解を進行させ、炉内スラグの一部または全部を排滓する第一工程と、
CaO分を含む副原料を投入し、残部のすべての固体鉄源を炉内に追加装入し又は装入しない第二工程と、
CaO分を含む副原料を追加装入し又は装入せず、溶解、精錬、昇温の後、一部または全部の溶鉄を出湯する第三工程を含み、
前記第一工程で排滓する炉内スラグはCaOとSiO2の質量濃度比(CaO/SiO2)が0.3以上1.5以下の範囲であり、
少なくとも、第三工程において排出する、あるいは第三工程の後に排出するスラグのCaOとSiO2の質量濃度比(CaO/SiO2)が1.2以上4.5以下であり、
かつ、前記第一工程では固体鉄源の溶解が完了する前にスラグの排出を開始することを特徴とする、低りん溶鉄製造方法。
【請求項3】
前記特定区間のうち、前記特定区間の終点から遡ること少なくとも30%以内の期間において、鉄浴の最低温度と最高温度の差を30℃以内とすることを特徴とする、請求項1に記載の低りん溶鉄製造方法。
【請求項4】
前記第一工程において、最初の固体鉄源の装入開始時を始点とし、前記組成範囲のスラグの排出終了時を終点とする区間(以下「特定区間」という。)のうち、前記特定区間の終点から遡ること少なくとも30%以内の期間において、鉄浴の最低温度と最高温度の差を30℃以内とすることを特徴とする、請求項2に記載の低りん溶鉄製造方法。
【請求項5】
第一工程における炉内および排滓されるスラグ中のCaO分の総和のうち、
前回の第三工程のあとに炉内に残ったスラグ中のCaO分と固体鉄源中に含まれるCaO分の合計が40%以上であることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の低りん溶鉄製造方法。
【請求項6】
固体鉄源の少なくとも10%以上を連続的に装入することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の低りん溶鉄製造方法。
【請求項7】
前記特定固体鉄源の少なくとも50%以上を第一工程で装入することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の低りん溶鉄製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炉を用いた低りん溶鉄製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気炉は原料鉄源としてスクラップを主に用いている。一方で、市中で調達できるスクラップには銅など精錬除去が困難な成分(トランプエレメント)が含まれている。従って、目的とする鋼種によってはトランプエレメントの含有量が規制され、そのため鉄源としてスクラップの使用量が制限されるので、鉄源の一部として還元鉄や型銑など鉄鉱石由来の鉄源が用いられることが多い。しかし鉄鉱石由来の鉄源のうち還元鉄はSiO2やAl2O3などの脈石成分を多く含み、型銑はSi成分を含むことから、これらを鉄源として電気炉で使用すると、酸化物成分はそのままスラグに移行し、Siは酸化してスラグに移行するため、スクラップのみを用いる場合よりもスラグの発生が増大する。また、鉄鉱石由来の鉄源はスクラップに比べてりんの濃度が高い場合が多い。電気炉精錬でりんはスラグ/メタル精錬によってメタルからスラグに反応、移動させて除去する必要があり、スラグ中の成分として、CaO/SiO2の質量濃度比を高くしてスラグに脱りん能力を保有させることが望ましい。
【0003】
このように、脈石成分や金属Siを含む固体鉄源を用いると、固体鉄源を溶かすだけで多量のスラグが発生する。また、メタルからのりんを除去するためには、炉内のSiO2分に応じたCaO分の装入が必要となる。このことは、さらなるスラグ発生量の増大や、副原料原単位の悪化という問題を生じる。また、スラグ量が多い場合は、スラグ中に含まれる鉄分も多くなり、スラグからの鉄分の分離ができない場合は、排滓時に鉄分がスラグとともに炉外に排出され、歩留まり悪化の原因にもなる。
【0004】
さらに、電気炉においては、熱効率向上や窒素濃度の上昇を防ぐなどの目的で、スラグを炭材や酸素で泡立てること(スラグフォーミング)が望ましい。スラグのフォーミング状態はスラグの粘度の影響を大きく受け、粘度はスラグ組成に加え特にスラグ温度の影響を強く受けるため、それらを適切に制御する必要がある。前述の目的から、排滓中だけではなく溶解中もフォーミング状態、つまりは組成や温度を一定の範囲に制御する必要がある。
【0005】
このような問題に対して、転炉においては特許文献1のように、CaO分を全量投入する前に、中間でSiO2濃度が高い状態のスラグを排出する方法が提案されている。しかし、転炉においては、排滓前の工程の温度推移や排滓直前の温度の絶対値が電気炉とは大きく異なる。転炉の場合、装入する溶銑はC濃度が高いので液相線温度が低く、対応して転炉装入時の溶銑温度は出鋼時の溶鋼温度に比較して低い温度である。転炉吹錬中、溶鉄の温度は溶銑成分の酸化発熱に伴い、単調増加する。従って、転炉では溶銑の装入時にくらべ、排滓開始前や排滓中の鉄浴温度は有意に高い。
【0006】
一方で、電気炉の場合、固体鉄源中のC濃度は転炉装入溶銑に比較して低い濃度であり、固体鉄源溶解時の鉄浴温度も固体鉄源の液相線温度付近の温度である。
【0007】
特許文献2には、製鋼用電気炉を用いた低リン溶鉄の製造方法として、固体鉄源と、任意選択的に溶鉄源とを装入し、電気エネルギーを用いてそれら原料を溶解、昇熱する第一工程と、溶解時に生成したスラグの一部またはすべてを排滓する第二工程と、その後に脱リンフラックスを添加して脱リン処理を行う第三工程と、精製した低リン溶銑を出湯する第四工程を含み、前記第二工程で排滓するスラグ組成質量比CaO/(SiO2+Al2O3)を0.25以上0.70以下の範囲内に調整する方法が開示されている。これにより、溶鉄の低リン化に要する石灰原単位を低減し、効率的に製鋼用電気炉で低リン溶鉄を製造することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-152714号公報
【特許文献2】国際公開WO2022/054555号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本鉄鋼協会編「第5版鉄鋼便覧」日本鉄鋼協会 2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、Si酸化物、Al酸化物、金属Si、金属Alの一部又は全部を酸化物換算の合計で1質量%以上含む固体鉄源を「特定固体鉄源」と呼ぶ。脈石を含む還元鉄、金属Siを多く含む型銑、土壌などが付着したスクラップが「特定固体鉄源」に対応する。
【0011】
電気炉内に脈石等を含む特定固体鉄源を装入し、これをアークで溶解する場合、溶解の進行とともに溶鉄とスラグがそれぞれ増えていく。例えばスラグドアなどから測温プローブを鉄浴に挿入できる程度に溶解が進行した状態のとき、鉄浴の温度を同じ位置で複数回測定すると、大きく変化しないことが分かる。また、スラグ浴の温度も同様の手法で測定すると、これも鉄浴と同様、大きな変化がない。例外的に、前回の溶鉄が一部残った炉内に固体鉄源を装入した直後、固体鉄源や副原料を間欠的に装入した場合などには、鉄浴の平均温度が一旦下がって上昇することがあり得るが、溶解が安定して進行する状態になった以降は大きく温度が変化しない。
【0012】
電気炉は加熱が局所的で、撹拌が転炉に比べて弱い、という特徴をもつ。従って、アークスポットや送酸噴流の衝突位置あるいは炉壁との距離によって、さらには深さ方向の位置によって、そして未溶解の固体鉄源との距離によっても、同じタイミングで温度に差があることが推定される。鉄浴全体の温度分布の平均値を求めることは、数値計算などを用いることで一定の精度で可能であるが、一方で、毎回一定の場所で測温することは容易であり、また、この温度を代表温度として必要投入電力の決定や出湯判断などに用いることが一般的に行われている。従って、鉄浴の平均温度として、1カ所の測温結果を用いることはなんら問題ない。
【0013】
鉄浴の平均温度の制御には固体鉄源の溶解状態が重要である。電気炉の場合、固体鉄源の溶解が進行している状態では、鉄浴の平均温度は固体鉄源の液相線温度の影響を受ける。アーク並びに炭材および鉄浴成分の酸化など熱源の近傍の鉄浴の温度は平均温度よりも高い状態にあることが想定される。一方で鉄浴が固体鉄源と接触している部分の温度は固体鉄源の融解熱に支配され液相線温度近傍の温度となる。固体鉄源の溶解を進行させるには、顕熱のみならず融解熱を補償する熱を供給し続ける必要がある。溶解の進行と入熱がバランスしている状態から、入熱を増やした場合、溶解速度も増えるため、入熱がすべて鉄浴の温度上昇に寄与しない。従って、鉄浴の平均温度を固体鉄源の液相線温度から独立に制御することは困難である。
【0014】
図1は、横軸を電気炉の処理経過時間、縦軸を鉄浴温度として傾向を示した概念図である。(A)はホットヒール(種湯)なしの状態で固体鉄源をバッチ装入した場合、(B)はホットヒールありで固体鉄源をバッチ装入した場合、(C)はホットヒールありで固体鉄源を連続装入した場合である。上記のことは、
図1に示す通り、ホットヒールの有無(A)と(B)の対比、固体鉄源の装入方式がバッチ式(B)か連続(C)であるかに関わらず、固体鉄源の溶解が進行し、鉄浴温度が一定となる期間が存在する。
【0015】
固体鉄源の溶解途中段階で、固体鉄源の溶解速度に対して十分に入熱を増やせば、鉄浴、スラグ浴の温度を一定程度上昇させることは可能であるが、耐火物や冷却水に逃げる熱の比率が高くなり、熱効率や耐火物原単位の悪化という別な問題が生じる。これらのことから、鉄浴温度を上昇させる操作は、実質、固体鉄源の溶解が完了に近い状態あるいは完了した状態で行われることが一般的である。
【0016】
したがって、電気炉の鉄浴の温度推移は転炉と大きく異なる。このことから、電気炉での排滓に際して、鉄浴やスラグ浴を溶解中と同程度とするのか、溶解中に比べて加熱して温度を上げる必要があるのか、特許文献1では明確になっていない。
【0017】
電気炉に対して、同様の方法が特許文献2のように提案されている。この文献ではスラグと溶鉄との分離およびフォーミング制御の観点からスラグの粘性の制御が重要とされている。加えて、温度の重要性も記載されており、一方で排滓する第二工程の前の第一工程に、原料の溶解と、昇熱が含まれている。非特許文献1の319~320ページに記載のように、電気炉における溶解とは所定の溶け落ち成分および温度を得る作業を指し、昇熱とは、鉄浴温度を上昇させる操作を指す。原料は溶解した部分は液相になった時点で液相線温度以上の温度になっていると考えられ、昇熱という操作が別に必要と読み取れる。また、前述のように、鉄浴の温度は固体鉄源の溶解中には大きく上昇せず、溶解が完了に近い状態あるいは完了した状態になって以降、実質的に温度が上昇可能な状態となる。従って、特許文献2に従えば、昇熱操作が含まれるため、フォーミングの維持と鉄分分離のためには、溶解中の鉄浴温度よりも、排滓前の鉄浴温度を高くすることが必要と示唆される。
【0018】
本発明者らの検討では、特許文献2に記載のこの手法によると、溶解中にフォーミングが維持できていた状態から、鉄浴温度の上昇操作をすることで、鉄浴温度、ひいてはスラグ浴温度が上昇するため、粘性が急激に低下してフォーミングが鎮静してしまうという問題があることを知見した。フォーミングが鎮静してしまうと排滓ができないため、低塩基度スラグの十分な排出が困難となり、ひいては石灰原単位が悪化する。また、鎮静していない状態と同量程度の排滓をしようとすると、排滓時間が長くなり、またスラグとともに鉄分が流出してしまうために歩留まりも悪化する。さらには、固体鉄源の溶解と、昇熱と、排滓のそれぞれに時間が必要となるため、工程時間が延びるという問題もある。
【0019】
以上述べてきたように、従来技術では電気炉において、溶解中および排滓時の鉄浴温度の制御指針が明確にされていない、という問題がある。本発明はこの問題を解決し、効率の良い低りん溶鉄製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、固体鉄源の溶解が進行している状態の鉄浴温度と、排滓時の鉄浴温度について、実験や解析による検討を進めた。その結果、溶解が進行している状態でスラグフォーミングを維持できている場合、その鉄浴の平均温度を意図的に変えることなく排滓操作を行うことで、十分な量の排滓ができることを見出した。また、その際、転炉の中間排滓スラグに比べて電気炉スラグ中の溶鉄は少ないことから、粘性低下による歩留まり悪化影響は限定的であることがわかった。なお電気炉のスラグ中の溶鉄が少ないのは、アーク通電のピンチ効果によるものと推定される。むしろ鉄浴の平均温度を意図的に上昇させる操作を行った場合には、スラグフォーミングが鎮静してしまい、十分な量の排滓ができなかったり、排滓量を確保するために時間をかけた場合に歩留まりが低下したりと言った問題が生じた。
【0021】
即ち、バッチ式電気炉で、低品位還元鉄等の、Si酸化物、Al酸化物、金属Si、金属Alの一部又は全部を酸化物換算の合計で1質量%以上含む固体鉄源(特定固体鉄源)を原料として用いる場合に、昇熱せずに低塩基度スラグを排出することで、精錬に必要な時間を確保しつつ、石灰原単位や歩留まりの悪化を抑え、全体の電気炉占有時間の延長を抑制できる。
【0022】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
[1]第1発明
電気炉において、Si酸化物、Al酸化物、金属Si、金属Alの一部又は全部を酸化物換算の合計で1質量%以上含む固体鉄源(以下「特定固体鉄源」という。)を原料の一部または全部として用いて溶鉄を製造するに際し、
前記特定固体鉄源の10質量%以上100質量%以下を含む鉄源を炉内に装入して溶解を進行させ、炉内スラグの一部または全部を排滓する第一工程と、
CaO分を含む副原料を投入し、残部のすべての固体鉄源を炉内に追加装入し又は装入しない第二工程と、
CaO分を含む副原料を追加投入し又は投入せず、溶解、精錬、昇温の後、一部または全部の溶鉄を出湯する第三工程を含み、
前記第一工程で排滓する炉内スラグはCaOとSiO2の質量濃度比(CaO/SiO2)が0.3以上1.5以下の範囲であり、
少なくとも、第三工程において排出する、あるいは第三工程の後に排出するスラグのCaOとSiO2の質量濃度比(CaO/SiO2)が1.2以上4.5以下であり、
かつ、前記第一工程において、最初の固体鉄源の装入開始時を始点とし、前記組成範囲のスラグの排出終了時を終点とする区間(以下「特定区間」という。)のうち、前記特定区間の終点から遡ること少なくとも30%以内の期間において、鉄浴の平均温度を上昇させる操作を行わないことを特徴とする、低りん溶鉄製造方法。
【0023】
[2]第2発明
電気炉において、Si酸化物、Al酸化物、金属Si、金属Alの一部又は全部を酸化物換算の合計で1質量%以上含む固体鉄源(以下「特定固体鉄源」という。)を原料の一部または全部として用いて溶鉄を製造するに際し、
前記特定固体鉄源の10質量%以上100質量%以下を含む鉄源を炉内に装入して溶解を進行させ、炉内スラグの一部または全部を排滓する第一工程と、
CaO分を含む副原料を投入し、残部のすべての固体鉄源を炉内に追加装入し又は装入しない第二工程と、
CaO分を含む副原料を追加投入し又は投入せず、溶解、精錬、昇温の後、一部または全部の溶鉄を出湯する第三工程を含み、
前記第一工程で排滓する炉内スラグはCaOとSiO2の質量濃度比(CaO/SiO2)が0.3以上1.5以下の範囲であり、
少なくとも、第三工程において排出する、あるいは第三工程の後に排出するスラグのCaOとSiO2の質量濃度比(CaO/SiO2)が1.2以上4.5以下であり、
かつ、前記第一工程では固体鉄源の溶解が完了する前にスラグの排出を開始することを特徴とする、低りん溶鉄製造方法。
【0024】
[3]第3発明(1)
前記特定区間のうち、前記特定区間の終点から遡ること少なくとも30%以内の期間において、鉄浴の最低温度と最高温度の差を30℃以内とすることを特徴とする、
[1]に記載の低りん溶鉄製造方法。
[4]第3発明(2)
前記第一工程において、最初の固体鉄源の装入開始時を始点とし、前記組成範囲のスラグの排出終了時を終点とする区間(以下「特定区間」という。)のうち、前記特定区間の終点から遡ること少なくとも30%以内の期間において、鉄浴の最低温度と最高温度の差を30℃以内とすることを特徴とする、[2]に記載の低りん溶鉄製造方法。
【0025】
[5]第4発明
第一工程における炉内および排滓されるスラグ中のCaO分の総和のうち、
前回の第三工程のあとに炉内に残ったスラグ中のCaO分と固体鉄源中に含まれるCaO分の合計が40%以上であることを特徴とする、[1]から[4]までのいずれか1つに記載の低りん溶鉄製造方法。
[6]第5発明
固体鉄源の少なくとも10%以上を連続的に装入することを特徴とする[1]から[5]までのいずれか1つに記載の効率の良い低りん溶鉄製造方法。
[7]第6発明
前記特定固体鉄源の少なくとも50%以上を第一工程で装入することを特徴とする[1]から[6]までのいずれか1つに記載の効率の良い低りん溶鉄製造方法。
【発明の効果】
【0026】
電気炉において、SiO2やAl2O3等を含有する特定固体鉄源を原料の一部または全部として用いて溶鉄を製造するに際し、鉄源を炉内に装入して溶解を進行させ、炉内スラグの一部または全部を排滓する第一工程と、CaO分を含む副原料を投入し、残部のすべての固体鉄源を炉内に追加装入し又は装入しない第二工程と、CaO分を含む副原料を追加投入し又は投入せず、溶解、精錬、昇温の後、一部または全部の溶鉄を出湯する第三工程を含む低りん溶鉄製造方法において、前記第一工程において、最初の固体鉄源の装入開始時を始点とし、スラグの排出終了時を終点とする特定区間のうち、前記特定区間の終点から遡ること少なくとも30%以内の特定30%期間において、鉄浴の平均温度を上昇させる操作を行わないことにより、または第一工程では固体鉄源の溶解が完了する前にスラグの排出を開始することにより、効率の良い低りん溶鉄製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】電気炉での溶鉄温度の推移を示す図であり、(A)は鉄源をバッチ装入しホットヒールなしの場合、(B)は鉄源をバッチ装入しホットヒール有りの場合、(C)は鉄源を連続装入してホットヒール有りの場合である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
《第1発明~第2発明に共通する事項》
本第1発明~第2発明に共通する事項を説明する。
【0029】
本発明の低りん溶鉄製造方法は、電気炉において、Si酸化物、Al酸化物、金属Si、金属Alの一部又は全部を酸化物換算の合計で1質量%以上含む固体鉄源(特定固体鉄源)を原料の一部または全部として用いて溶鉄を製造するに際し、前記特定固体鉄源の10質量%以上100質量%以下を含む鉄源を炉内に装入して溶解を進行させ、炉内スラグの一部または全部を排滓する第一工程と、CaO分を含む副原料を投入し、残部のすべての固体鉄源を炉内に追加装入し又は装入しない第二工程と、CaO分を含む副原料を追加投入し又は投入せず、溶解、精錬、昇温の後、一部または全部の溶鉄を出湯する第三工程を含む。第一工程で排滓する炉内スラグはCaOとSiO2の質量濃度比(CaO/SiO2)が0.3以上1.5以下の範囲であり、少なくとも、第三工程において排出する、あるいは第三工程の後に排出するスラグのCaOとSiO2の質量濃度比(CaO/SiO2)が1.2以上4.5以下である。
【0030】
スラグは、特に脈石を多く含む鉄源を溶解する際に生成する。低塩基度スラグの生成で問題となるのは、特にSiとAl分である。そこで本発明の対象を、Si酸化物、Al酸化物、金属Si、金属Alの一部又は全部を酸化物換算の合計で1質量%以上含む固体鉄源(特定固体鉄源)を用いる場合とした。なお、本発明では濃度を質量濃度で示す。特定固体鉄源としてたとえば鉄鉱石由来の直接還元鉄が想定される。加えて事業所内で発生するスラグを含むような地金、あるいは、土壌が混ざりSiO2やAl2O3分が含まれるスクラップ、あるいは鉄中の成分として固溶しているSiやAl分も酸化されてスラグ成分になるため、それらが酸化後に当該鉄源に対する質量比が合計で1%以上になる場合は、該当するスクラップや還元鉄なども含む。これらの固体鉄源が予熱されていても、いなくても良い。以降、本明細書ではSi酸化物、Al酸化物、金属Si、金属Alの一部又は全部を酸化物換算の合計で1%以上含む固体鉄源(特定固体鉄源)を指して高脈石固体鉄源と称し、それ以外の固体鉄源を低脈石固体鉄源と称する。なお、低脈石固体鉄源の使用は特に制約がないが、鉄浴温度の推移には影響を考慮する必要がある。特定固体鉄源中に含まれるSi酸化物、Al酸化物、および、金属Si並びに金属Alの一部又は全部を酸化物換算した合計が2%以上となると、さらに効果が高まり、特にSi酸化物と、金属Siの酸化物換算量の合計だけで2%以上となるときわめて効果が高い。この濃度が高まるほど本発明の効果が顕著に表れるため、たとえば高炉に広く用いられているようなペレットから製造された、Si酸化物を5%以上含む還元鉄を用いてもなんら問題がない。還元鉄中の炭素濃度の影響も受けないため、水素を用いて製造された還元鉄にも適用できる。
【0031】
第一工程は、低塩基度スラグを極力多く排出することを目的とする工程である。従って、スラグを生成する原因となる高脈石固体鉄源(特定固体鉄源)のうち10%以上を装入する区間とした。これより少ない装入量の時点で排滓した上で第二工程に移ってスラグ塩基度を高めてしまうと、低塩基度スラグの排出効果を十分に得ることができない。また、この目的から高脈石固体鉄源のうち第一工程で装入する割合は多いほどよく、上限を100%とした。
【0032】
スラグの組成範囲としては、脱りんに大きく影響するCaOとSiO2の質量濃度比で最適範囲を特定した。第二工程以降で脱りんが効率よく進行するためには、脱りん阻害因子であるSiO2の排出が重要であり、またCaOの利用効率を高めるためには、極力CaO濃度が低い状態で排出することが必要となり、従って、CaOとSiO2の比が制御指針として最適である。なお、高脈石固体鉄源の組成としてSiO2以外にAl2O3を挙げたのは、CaO濃度を希釈する悪影響が考えられるためである。
【0033】
第一工程で排滓する炉内スラグのCaOとSiO2の質量濃度比が0.3より低い場合は、粘度が高まりすぎてしまい、フォーミングが不安定になることや迅速な排滓が困難になり、さらには酸化鉄の還元や粒鉄の含有の観点で鉄分歩留まりの悪化を引き起こすという問題がある。また、CaOとSiO2の質量濃度比が1.5より高い場合は、CaO原単位やスラグ発生量の悪化を招く。なお第一工程でも脱りん反応は起こり得るため、精錬については特に制約がない。第一工程で排滓する炉内スラグのCaOとSiO2の質量濃度比を上記範囲に調整するため、第一工程においてCaO分を含む副原料を投入してもよい。
【0034】
第二工程は、CaO分を含む副原料を投入することでスラグの塩基度(CaO/SiO2)を上昇させつつ、第一工程で未装入の残部の固体鉄源がある場合にはその装入を完了する工程である。この工程では、溶解や精錬は進行することが想定されるが、特に制約はない。昇熱や排滓は不要であるが、特に制約はない。残部の固体鉄源の装入がない場合は、切れ目なく第三工程に移行する。
【0035】
第三工程は、第一、第二工程で装入した固体鉄源の溶解を完了させ、スラグ組成を最終目標に制御して鉄浴りん濃度と温度が出湯条件に見合うよう精錬し昇温する。なお、溶解中も精錬は進行するため、溶解と精錬の前後関係は特に定めない。同様に昇温中も精錬反応は進行する場合があり、精錬と昇温の前後関係も特にこれを定めない。出湯の前には所定の温度条件が設定されるため、出湯前には昇温操作が完了している必要がある。
【0036】
第三工程の終点は出湯完了とする。鉄浴の成分が目標に到達したあとは、排滓と出湯を行う。なお、この出湯時の溶鉄組成には制限がなく、たとえば鉄中の炭素濃度においては、溶銑から溶鋼までを対象とできる。出湯は一度に行っても良いし、2回以上にわけても良いし、一部を炉内に残すこともなんら問題ない。
【0037】
出湯が炉底からの場合は、不可避的に流出するスラグを除けば、排滓と出湯が別の操作となる。側壁からの場合で、スラグと溶鉄の排出口が別であれば同様に、排滓と出湯は別の操作となる。一方、側壁開口部が1カ所しかない場合は、排滓と出湯が同じ操作となる。排滓が先であれば、排滓も第三工程に含まれる。出湯が先であれば、排滓は第三工程のあとの操作となる。いずれの場合も可能な限り全ての溶鉄やスラグを排出してもよいし、一部を残して次回の第一工程のホットヒールやホットリサイクルスラグとして活用しても良い。スラグを極力排出したい場合は、第一工程と同様、昇温を行う前に排滓することが望ましい。
【0038】
第三工程では、脱りん精錬を完了させる必要がある。そのため、第三工程でも必要に応じCaO分を追加するが、第二工程で十分なCaO分を装入している場合は、不要となる。第二工程のスラグ組成やその排滓については特に制約はないが、少なくとも、第三工程において排出する、あるいは第三工程の後に排出するスラグのCaOとSiO2の質量濃度比は1.2以上4.5以下であることが、脱りん精錬の観点から有効となる。1.2よりも低い場合には、脱りんが十分に行われないため、下限を1.2とした。上限としては、高いほど精錬能が高いが、CaOの溶解や、スラグ中の固相率の上昇によるフォーミングや排滓性悪化などの弊害を考え、上限を4.5とした。なお、第一工程のスラグ組成範囲として、当該濃度比の上限を1.5としたが、第一工程の実際のスラグ組成や、第二工程以降で溶解する高脈石固体鉄源に含まれるSiO2量によっては、第三工程において排出する、あるいは第三工程の後に排出するスラグのCaOとSiO2の質量濃度比は1.5よりも低下する場合が考えられる。
【0039】
いずれの工程においても、排滓は2回以上に分けて排滓することは問題ない。各工程のスラグの組成は、連続的に変化することが予想される。これらをマスバランスや経験などから条件に収まるように制御する。目的からは、排滓されたスラグの平均組成が条件に収まるようにすることが最も望ましい。意図的に制御する場合も、結果的に組成が範囲に入っている場合も含まれる。排滓されたスラグの平均組成は炉内や排滓中、あるいは排滓後に回収したスラグの分析値と排出量で管理してもよいし、マスバランスから計算された値を用いても良い。
【0040】
いずれの工程でもCaO分を添加する場合は、一括でも良いし、複数回に分けてもよく、あるいは粉体などで連続的に添加してもよいが、CaO分を含む副原料には、生石灰、石灰石、ドロマイト、および自工程や事業所内で発生したスラグなどを用いることができる。
【0041】
《第1発明の特徴》
第1発明は、前記第一工程において、最初の固体鉄源の装入開始時を始点とし、前記組成範囲のスラグの排出終了時を終点とする区間(以下「特定区間」という。)のうち、前記特定区間の終点から遡ること少なくとも30%以内の期間(以下「特定30%期間」という。)において、鉄浴の平均温度を上昇させる操作を行わないことを特徴とする。
【0042】
前述のとおり、溶解が進行している状態でスラグフォーミングを維持できている場合、鉄浴の平均温度を上昇させる操作を行わない、即ちその鉄浴の平均温度を意図的に変えることなく排滓操作を行うことで、十分な量の排滓ができることを見出した。
【0043】
鉄浴平均温度を意図的に変えないためには、下記に例示する操業条件、炉体条件(以下「特定操業・炉体条件」という。)に基づき推定される熱収支を意図的に変更しない、ということで達成できる。なお下記例示以外の条件を加えても良いし、一部を用いてもよく、たとえば投入電力と、装入主原料の比を一定とするなど、単純化しても良い。操業条件としては、(1)鉄浴およびスラグの、温度、量ならびに組成(炭素濃度など液相線温度を変える成分)の推移、(2)入熱の、手段、推移ならびに累積入熱量、(3)主・副原料の、投入時期、位置、量、組成、密度、温度、(4)最後の固体鉄源の投入時点からの経過時間、(5)スラグによる電極の被覆(サブマージ)状態、(6)ガスや電磁力による撹拌、送酸の条件、(7)排ガスの吸引量や、これに影響される炉内に吸引される大気の影響を配慮すると好ましい。また、炉形状、サイズ、耐火物損耗状態、冷却構造、冷却強度などの炉体条件を配慮すると好ましい。
【0044】
なお、上記の操業条件や炉体条件に意図的な変更を加えない場合においても、たとえば、スラグによる電極の被覆状態の変化や、原料の組成や投入速度の不可避的な揺らぎ、そして測温精度などによって、観測される温度には変化が生じる。しかし、意図的な変更を加えない限り、あるいは観測や予測が容易な状態変化を無視しない限り、スラグのフォーミング状態に影響を及ぼすほどの変化幅にはならない。例えばバッチ装入の場合に入熱が一定であるケースで、上記の熱収支上は温度上昇が予測されなかったとして、実際には固体鉄源の溶解の進行にしたがい鉄浴の温度の上昇が起こり得たとする。この場合、熱収支の意図した不整合が導入されていないことから温度上昇が穏やかとなり、スラグのフォーミング状態に大きな変化が現れない。
【0045】
また、スラグによる電極被覆状態が想定よりも安定して継続することで、想定よりも温度が高くなるケースもあり得る。この場合は計算される溶鉄温度は上下することになるが、一定の範囲内での温度変化の繰り返しであり、フォーミング状態も一定の範囲で変動するため、排滓性に大きな影響がない。
【0046】
なお、堆積した原料の崩壊による未溶解鉄源と鉄浴の接触面積の急激な変化、炉壁や炉蓋に付着した固体の落下などによって、鉄浴の平均温度が変化する可能性があるが、これらが常態的に発生している場合は前記の操業条件の範囲に含めて考慮すべきものである。
【0047】
いずれにせよ、熱収支を一定に保つことは、操業管理上も必要な制御であり当業者であれば可能であり、ひいては鉄浴の平均温度を意図的に上昇させないことも可能である。
【0048】
ここで、鉄浴の平均温度を意図的に上昇させない期間としては、最初の固体鉄源の装入開始時を始点とし、前記組成範囲のスラグの排出終了時を終点とする区間(特定区間)のうち、終点から遡ること30%以内の期間(特定30%期間)が重要である。固体鉄源の装入直後は、固体鉄源と溶鉄の量的関係によっては、鉄浴の温度が一旦低下したあと、溶解が安定して進行する状態になるに向けて上昇する。この期間は、前述の操業条件や炉体条件をもとにした熱バランスを考慮した場合でも上昇を意図した操作をしていることになる場合がある。またこの期間はスラグのフォーミングも不安定であり、排滓時のスラグ性状とは直接の関係性が薄い。一方で、最低でもスラグの排出終了よりも前記特定区間の全体時間の30%以内の期間(特定30%期間)において鉄浴の平均温度を上昇させる操作をしないことで、フォーミング状態を維持したままの排滓が可能となることを見出した。
【0049】
最もフォーミング状態を不安定にし排滓性に悪影響を及ぼすのは、当該特定30%期間において、それ以前の熱収支に対して入熱を多くしたり抜熱を減らしたりするなどして、意図的に温度を上昇させる場合である。当該特定30%期間以前の熱収支が低精度であることや炉内状態が予測と異なることなどが原因で、結果的に温度が上昇する場合でも、当該特定30%期間に熱収支を変更することで意図的な温度上昇操作をした場合には、温度上昇速度の変化などが原因となって、フォーミング状態が不安定となったり、その結果、排滓性が悪化したりする。
【0050】
排滓開始前や排滓中に、アーク通電や送酸を止めるなどして、鉄浴の平均温度の降下につながる操作をすることがあるが、これはフォーミング状態の変化や排滓性の悪化にはつながらないため、特に制限がない。
【0051】
《第2発明の特徴》
第2発明は、前記第一工程では固体鉄源の溶解が完了する前にスラグの排出を開始することを特徴とする。
【0052】
固体鉄源の溶解が完了する前、即ち溶解が進行している状態では、アークによる入熱は溶解熱として消費され、鉄浴の昇温は生じない。鉄浴の平均温度の上昇は、前述のとおり固体鉄源の溶解完了と密接な関係がある。従って、鉄浴の平均温度を上昇させずに排滓するという目的は、溶解が進行している状態で、つまり溶解が完了に近い状態あるいは完了した状態になる前に、排滓することでも達成できる。
【0053】
ある時点までに投入した固体鉄源の溶解が完了するタイミングは、前記の特定操業・炉体条件の一部または全部に基づく熱収支から、あるいはそこに伝熱速度の考慮を加えた解析から推定することができる。あるいは前記した熱収支や伝熱を考慮した経験式を用いて、あるいはデータ解析を用いて導き出すこともできる。鉄浴の平均温度が上昇するタイミングを経験的に決め、ここを固体鉄源の溶解完了タイミングと決めても良い。ここで、溶解中であることを考慮すべき固体鉄源には、スラグの生成ではなく鉄浴温度への影響を考慮する必要があるため、SiO2やAl2O3等を合計で1%以上含む特定固体鉄源と、それ以外の固体鉄源を含む。発明者らは、鉄浴の平均温度の有意な上昇が起きないためには、最低でも溶鉄の5%以上に相当する重量の固体鉄が未溶解で残存している必要があることを知見している。
【0054】
溶解完了前に排滓を開始する場合においても、排滓開始前や排滓中に、アーク通電や送酸を止めるなどして、固体鉄源の溶解速度の低下につながる操作をすることがあるが、これはフォーミング状態の変化や排滓性の悪化にはつながらないため、特に制限がない。
【0055】
また、第一工程においてスラグを何回かに分けて排出する場合は、極力多くの低塩基度スラグを排出することが可能となるよう、最後の低塩基度スラグ排出を固体鉄源の溶解が完了する前に開始することが望ましく、さらには、最後の低塩基度スラグ排出が完了するまで溶解が完了していないことが望ましい。
【0056】
《第3発明の特徴》
第3発明は、前記第1発明、第2発明の第一工程において、最初の固体鉄源の装入開始時を始点とし、前記組成範囲のスラグの排出終了時を終点とする区間(特定区間)のうち、前記特定区間の終点から遡ること少なくとも30%以内の期間(特定30%期間)において、鉄浴の最低温度と最高温度の差を30℃以内とすることを特徴とする。
【0057】
前記第1発明、第2発明の説明で述べたように、鉄浴の平均温度を意図的に上昇させる操作をせずに排滓することで、フォーミング状態を維持したまま十分な排滓量を確保することが可能となるが、前述した通り、熱収支の精度の問題や、スラグ被覆など炉内状態の変動によって、熱収支上の意図した上昇操作をしていない場合でも、鉄浴の平均温度が上昇してしまう場合がある。
【0058】
加えて、前記特定区間において、鉄浴の平均温度を定量的に管理することができれば、さらに安定した排滓が可能となる。発明者らが検討を続け、鉄浴の平均温度の変化幅を検討した結果、最初の固体鉄源の装入開始時を始点とし、低塩基度組成範囲のスラグの排出終了時を終点とする区間(特定区間)のうち、終点から遡ること少なくとも30%以内の期間(特定30%期間)において、鉄浴の平均温度の変化幅を30℃以下とすることで、フォーミング状態がさらに安定したまま排滓でき、さらに変化幅が10℃以下である場合に、きわめて安定して排滓できることを見出した。
【0059】
なお、鉄浴の平均温度の変化幅を制御することは、電気炉操業従事者としての知見・経験をもとに可能であるが、例を挙げれば、前述の特定操業・炉体条件に基づく熱収支や、伝熱、さらには固体鉄源と鉄浴の接触面積の変化やスラグによる被覆の状態などの推定や観測、あるいは蓄積された実績データや経験に基づく予測によって、またあるいは実際の測温に基づく方法などが想定される。
【0060】
スラグによる被覆など炉内の状態の観測や、実際の測温によって、鉄浴の平均温度の降下が予測あるいは観測される場合には、ある一定期間に限り鉄浴の平均温度の上昇を意図的に行うことが起こり得るが、予測あるいは観測される温度降下に対応した上昇幅に限り意図した上昇を行うことが可能である。平均的な温度上昇を継続しないということが重要となる。
【0061】
特に、溶解が進行している状態から昇熱をせずに排滓を開始する場合は、排滓開始前後において鉄浴の平均温度が5℃以上上昇することを避けることも可能となり、この場合に最も安定した排滓が可能となる。
【0062】
《第4発明の特徴》
第4発明は、前記第1発明~第3発明において、第一工程における炉内および排滓されるスラグ中のCaO分の総和のうち、前回の第三工程のあとに炉内に残ったスラグ中のCaO分と固体鉄源中に含まれるCaO分の合計が40%以上であることを特徴とする。
【0063】
第一工程のCaO分としては、電気炉の前回のヒートにおける第三工程のスラグを一部残して再利用することができる。今回ヒートで新規にCaO分を含む固体を装入し、これを溶解するエネルギーや時間を低減することが可能となる。この時は、今回ヒートの第一工程の終点のスラグの塩基度よりも、前回ヒートの第三工程の終点のスラグの塩基度が高いことが有効である。
【0064】
また、高脈石固体鉄源にはバインダーなどでCaO分が含まれることがあり、これもスラグの塩基度を管理する上で考慮に入れるべきものである。このCaO分は、当該固体鉄源が溶解する際にスラグに溶けた状態になると想定され、このことも前述同様、別途に溶解するエネルギーや時間の低減につながる。
【0065】
これらエネルギーや時間の低減に新規CaO分のコスト影響も考慮した結果、第一工程における炉内および排滓されるスラグ中のCaO分の総和のうち、前回の第三工程のあとの排滓の後に炉内に残ったスラグ中のCaO分と、第一工程で装入される固体鉄源中に含まれるCaO分が、40%以上となる場合に十分な効果があることが分かった。
【0066】
第二工程以降の新規CaO分と、それ以外のCaO分との比率は特に制約はない。
【0067】
《第5発明の特徴》
第5発明は、前記第1発明~第4発明において、固体鉄源の少なくとも10%以上を連続的に装入することを特徴とする。
【0068】
固体鉄源を連続的に装入することで、鉄浴の平均温度の安定制御の確実性が上がる。ホットヒールがある状態や、溶鉄量が十分に確保できた状態で固体鉄源を連続的に装入すると、溶鉄と固体鉄源の量的関係の急激な変化を抑制したり、接触面積を一定範囲に保ったりすることが容易となるためである。この効果を得るためには、高脈石固体鉄源と低脈石固体鉄源を合計した全体の固体鉄源のうち、少なくとも10%以上を、連続的に装入することが望ましい。比率が高まれば高まるほど温度が安定するため、上限は設けない。また、これは温度管理の観点からの要件であり、脈石含有量での区別は不要である。予熱がされていればさらに安定する。
【0069】
固体鉄源の連続装入は、例えば水平コンベアや、シャフト部、投入シュート(投入管)を用いて行われる。固体鉄源そのものが流体ではなく、たとえば水平コンベアの振動周期や、投入シュートへの搬送速度によっては、炉内に装入されていない瞬間もあり、また意図的に装入を停止する時期も許容されるが、スクラップバケットなど一定容積の容器内に収容した固体鉄源を電気炉に装入するバッチ装入に対しては、十分に連続性があることから、これらを連続装入と呼ぶ。
【0070】
連続装入の場合、前回ヒートの第三工程で湯を炉内に残し(ホットヒール)、当該回ヒートの第一工程の種湯とすることも鉄浴温度の安定のために有効である。
【0071】
《第6発明の特徴》
第6発明は、前記第1発明~第5発明において、前記特定固体鉄源の少なくとも50%以上を第一工程で装入することを特徴とする。
【0072】
第一工程は、低塩基度のスラグを排出する工程であるため、脱りんの阻害となるSiO2やAl2O3等を含む特定固体鉄源(高脈石固体鉄源)は、第一工程で多く装入することが望ましい。スラグ発生量やCaO原単位の低減のためには、少なくとも高脈石固体鉄源のうち、50%以上の重量を第一工程で装入することが望ましく、多ければ多いほど良いため、上限は設けない。
【0073】
固体鉄源全体の投入量の工程ごとの分割比率になんらかの制約がある場合、第一工程では高脈石固体鉄源を多く配合し、第二工程で低脈石固体鉄源を多く配合することが望ましい。すなわち第一工程の全固体鉄源装入量に対する高脈石固体鉄源の割合を、第二工程のそれよりも高くすることが望ましい。
【0074】
脈石成分を含む固体鉄源はりんも比較的多く含む場合が多く、その観点からも、極力早期に高脈石固体鉄源の溶解が完了するように、第一工程で高脈石固体鉄源のうち極力多くを装入することが望ましい。
【実施例0075】
175t規模の電気炉を用い、本発明を実施した。前回ヒートの出湯時に炉内に鉄浴60トンをホットヒールとして残して今回ヒートの鉄源の一部とし、固体鉄源を約130t装入して、溶解、精錬を行った。精錬完了後、溶湯を110~120t出湯し、炉内に鉄浴60トンを残して次回ヒートのホットヒールとした。
【0076】
装入する固体鉄源のうち70%として、実施例4-2を除く全ての比較例および実施例においては、特定固体鉄源(高脈石固体鉄源)である直接還元鉄(SiO2=4%、Al2O3=1%、CaO=1%)を用いた。実施例4-2のみ、特定固体鉄源(高脈石固体鉄源)である直接還元鉄に含まれるCaOを2%とした(SiO2=4%、Al2O3=1%は他の場合と同様)。いずれの場合も、高脈石固体鉄源90~100tに加え、低脈石固体鉄源30~40t(固体鉄源のうち30%)としてスクラップを用いた。
【0077】
ホットヒールが存在する炉内に固体鉄源を装入して溶解を進行させ、炉内スラグの一部または全部を排滓する第一工程と、CaO分を含む副原料を投入し、残部のすべての固体鉄源を炉内に追加装入し又は装入しない第二工程と、CaO分を含む副原料を追加投入し又は投入せず、溶解、精錬、昇温の後、一部または全部の溶鉄を出湯する第三工程をこの順で実施した。
【0078】
第一工程において、最初の固体鉄源の装入開始時を始点とし、前記組成範囲のスラグの排出終了時を終点とする区間を「特定区間」とし、特定区間のうち、特定区間の終点から遡ること少なくとも30%以内の期間を「特定30%期間」と名付ける。
【0079】
実施例の製造条件及び製造結果を表1に示す。本発明から外れる数値・項目に下線を付している。
表1において、第一工程、第三工程の「C/S」は、それぞれの工程で排滓する炉内スラグのCaOとSiO2の質量濃度比(CaO/SiO2)であって、それぞれの工程の間に排滓されたスラグの組成をマスバランス、排滓量は受滓台車の秤量機で測定して求めた。第一工程の「持込CaO」(%)とは、第一工程における炉内および排滓されるスラグ中のCaO分の総重量のうち、前回ヒートのあとに炉内に残ったスラグ中のCaO分と、今回ヒートの第一工程で装入される固体鉄源中に含まれるCaO分との重量の合計が占める比率を意味する数値であり、すなわちこの比率の残部はこれらのCaOとは別に今回ヒートの第一工程で添加したCaOである。前回ヒートのあとに残ったスラグ量は、完全出湯・完全排滓(あるヒートの最後に極力全てのスラグや溶鉄を排出した状態)のあとの、各ヒートの装入副原料や生成物および排出したスラグの履歴を考慮して算出した。さらにこのスラグ量に分析したCaO濃度を掛けてCaO量を算出した。第一工程で装入されるCaO量は、各装入物の重量とそれぞれのCaO濃度から計算して求めた。
【0080】
全工程で装入する特定固体鉄源のうち、第一工程で装入する特定固体鉄源の比率を表1に示す。実施例6のみが特定固体鉄源全体を第一工程で装入しており、それ以外(比較例1を除く)は特定固体鉄源全体の47%を第一工程で装入し、残りは第二工程で装入している。
【0081】
前記特定区間のうちの前記特定30%期間において、鉄浴の平均温度を上昇させる操作を実施したか否か、及び特定30%期間における鉄浴の最高温度と最低温度の差を表1に記載している。鉄浴の平均温度を上昇させる操作を実施したか否かについては、前記「特定操業・炉体条件」に基づき推定される熱収支を意図的に変更したか否かによって判定した。
【0082】
第一工程の排滓前において、装入した固体鉄源の溶解が完了したか否か、溶解完了の判定を行わなかったか、について表1に記載した。第一工程での排滓における排滓率を表1に示した。排滓率(%)は、前回ヒートあとに炉内に残ったスラグと、第一工程で生成したスラグの総重量に対して、第一工程で排滓されたスラグの総重量として評価した。それぞれの重量は前述した方法と同様の方法で算定した。
【0083】
全工程で投入したCaO含有副原料中のCaO分を「新規T.CaO(kg/t)」として表1に示した。また、装入鉄源の連続装入の有無を表1に示した。
「スラグ発生量」は、全工程で排滓したスラグ量を秤量して評価し、合計をkg/tとして記載した。
「出湯[P]」は、第三工程で出湯する溶鉄中の含有[P]濃度(質量%)である。
「歩留ロス」(%)は、当該ヒートの全工程において、発生スラグ中に酸化鉄と金属鉄として含まれる鉄分および排ガス集塵機に捕集されるダスト中の鉄分の合計重量を、装入鉄分の総重量で除した値の百分率として評価した。
「Tap to Tap(min)」は、今回ヒートの第一工程の開始時刻から、次回ヒートの第1工程の開始時間までの経過時間である。
【0084】
総合評価については、スラグ発生量、歩留ロス、Tap to Tapの三項目を評価対象とし、さらにそれぞれの閾値を120kg/t、4.0%、65minとして、いずれも閾値以下となった場合を○、1つでも満足しなかった場合を×とし、加えて、スラグ量と歩留ロスがそれぞれ100kg/t、3.0%以下となった場合を◎として評価した。
【0085】
【0086】
表1の比較例1~比較例2-3が比較例である。
【0087】
比較例1は、中間排滓を行わなかった比較例である。初期から高塩基度スラグを作りこんでいる。中間排滓がない分工程時間が短いが、スラグ発生量、新規T.CaOがいずれも過多となり歩留も低かった。
【0088】
比較例2-1は、第一工程で溶解進行中には温度上昇を意図した操作をしなかった。また、特定30%期間のうち、溶解完了前の範囲では不可避的な温度上昇幅を8℃に抑制した。一方、溶解完了後かつ中間排滓前(特定30%期間中)に鉄浴の平均温度を上昇させる操作を実施しており、結果として25℃昇温した。すなわち、特定30%期間の昇温幅は33℃であった。第一工程の溶解完了待ち、昇温時間のため全体時間が増えた。昇温時に僅かに復りんがあった。第一工程での排滓時にフォーミングが鎮静したことから、排滓率確保のため排滓時間が延長し、鉄分も流出し、歩留まりが低下した。
【0089】
比較例2-2は、比較例2-1と同様の温度制御(特定30%期間中に鉄浴の平均温度を上昇させる操作)を行い、ただし排滓前の昇温幅を10℃に低減した。特定30%期間の昇温幅は18℃であった。比較例2-1に比べ昇温時間分だけ全体時間が短縮した。第一工程排滓時のフォーミングは比較例2-1ほどではないが鎮静し、排滓率確保のため排滓時間が延長したため、Tap to Tapは68minと長めであった、鉄分流出は発生し、歩留まりが低下した。
【0090】
比較例2-3は、特定30%期間中に鉄浴の平均温度を上昇させる操作を行い、中間排滓前に僅かに昇温した。さらに排滓率確保を必須とせず、排滓時間に制限を設けた。溶解待ちと昇温操作でフォーミングが不安定化した。時間制限を設けたため排滓率が低下した。スラグ発生量、新規T.CaOが増加し、歩留まりが低位であった。
【0091】
表1の実施例1-1~実施例6が本発明例である。
【0092】
実施例1―1は、中間排滓前の特定30%期間中の昇温操作なしとした。溶解進行中の温度変化は測定や評価をしなかった。結果として、スラグ発生量や新規T.CaO原単位を低位に維持しつつ、歩留まりも向上し、かつ全体時間の延長も許容できる範囲に収めることができた。
【0093】
実施例1-2は、中間排滓前の特定30%期間中の昇温操作なしとした。特定30%の期間で、想定よりスラグ被覆率が高く着熱効率が良くなり、溶解進行中に鉄浴の温度が35℃上昇したが、比較例に示すような溶解完了後の短時間の加熱に起因する昇温ではなく、フォーミング状態が安定しており、排滓もスムーズに実施できた。その結果、スラグ発生量や新規T.CaO原単位を低位に維持しつつ、歩留まりも向上し、かつ全体時間の延長も許容できる範囲に収めることができた。
【0094】
実施例2-1は、溶解タイミングを熱収支と伝熱解析をもとに判定して、溶解完了よりも確実に早期に排滓を開始した。結果として、中間排滓前の特定30%期間中の昇温操作なしとなった。結果として、スムーズに排滓ができた。その結果、スラグ発生量や新規T.CaO原単位を低位に維持しつつ、歩留まりも向上し、かつ全体時間の延長も許容できる範囲に収めることができた。
【0095】
実施例2-2は、中間排滓前の昇温操作なしであり、特定30%期間で、想定より固体鉄源の溶解進行が遅く、溶解進行中に鉄浴の温度が32℃上昇したが、検尺棒により炉内の未溶解固体鉄源が存在していることを確認したのち、昇温操作をせずに排滓したところスムーズに排滓できた。その結果、スラグ発生量や新規T.CaO原単位を低位に維持しつつ、歩留まりも向上し、かつ全体時間の延長も許容できる範囲に収めることができた。
【0096】
実施例3は、中間排滓前の昇温操作を行わず、特定30%期間の温度上昇を実測しながら制御し、変化幅を15℃に抑制したところ、実施例1,2に比べてもスムーズに排滓できた。その結果、スラグ発生量や新規T.CaO原単位を低位に維持しつつ、歩留まりも向上し、かつ全体時間の延長も許容できる範囲に収めることができた。
【0097】
実施例4-1は、前ヒートのスラグリサイクル量を増やすことで、新規装入T.CaO以外のCaO分を7割弱確保した。その結果、新規装入T.CaO原単位を低減することができ、さらにスラグ発生量も低減でき、歩留まりもさらに良くなった。
【0098】
実施例4-2は、実施例4-1と同程度のスラグ量を前ヒートからリサイクルし、さらに、特定固体鉄源(高脈石固体鉄源)として、CaOを2%含む直接還元鉄を用いた。また、このケースでは、目的とする出湯りんレベルが他の例よりも高く、第一工程および第三工程の塩基度を低く設定した。第一工程において、前ヒートからのスラグや還元鉄に含まれるCaO(第一工程への持ち込みCaO)以外に、あらたに装入する新規CaOをゼロとし、第一工程への持ち込みCaOが100%となった。その結果、装入T.CaO原単位やスラグ発生量が低減でき、スラグ量が少ないことから、歩留まりもさらに良くなった。
【0099】
実施例5は、固体鉄源を連続投入することによって、溶解進行中の不可避的な温度変化をきわめて狭い範囲に制御することができた。この結果フォーミング状態が非常に安定し、中間排滓が安定した。
【0100】
実施例6は、全ての高脈石固体鉄源(特定固体鉄源)を第一工程で装入した。その結果、中間排滓で多くのSiO2分を排出することができ、結果として、スラグ発生量や新規T.CaO原単位を大きく低減でき、なおかつ歩留まりも良くなった。