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特開2024-635ポリエチレン系樹脂多層発泡シート及びその製造方法
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  • 特開-ポリエチレン系樹脂多層発泡シート及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000635
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ポリエチレン系樹脂多層発泡シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/22 20060101AFI20231226BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20231226BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20231226BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20231226BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B32B5/22
B32B27/32 E
B32B7/025
B29C48/21
B29C48/08
B29C44/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099433
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 博俊
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幹大
(72)【発明者】
【氏名】圓通 賢隆
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
4F100AA37
4F100AA37B
4F100AA37D
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
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4F100AK04E
4F100AK06
4F100AK06A
4F100AK06C
4F100AK06E
4F100AK63
4F100AK63A
4F100AK63E
4F100AL01
4F100AL01B
4F100AL01D
4F100AR00A
4F100AR00E
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA08
4F100CA01
4F100CA01C
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4F100DJ01C
4F100EH20
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4F100JA06
4F100JA06A
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4F100JA13
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4F207AA07
4F207AB02
4F207AB18
4F207AG01
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4F214UB26
4F214UC02
4F214UN04
4F214UP88
(57)【要約】
【課題】導電性を備えるとともに、被包装物に対する汚染性を高度に低減したポリエチレン系樹脂多層発泡シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】多層発泡シート1は、ポリエチレン系樹脂発泡層2と、発泡層2の少なくとも片面側に積層された表面層4と、表面層4と発泡層2との間に設けられた導電層3とを有する。導電層3が、極性基を有するモノマーに由来する構造単位を含むエチレン系共重合体と、エチレン系共重合体とは異なるポリエチレン系樹脂と、導電性カーボンとを含んでいる。導電層3中における導電性カーボンの配合量が5~15質量%である。表面層4が、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンからなる群より選択される1種以上の直鎖状ポリエチレン、または直鎖状ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含み、直鎖状ポリエチレンの配合量が8質量%以上である混合樹脂から構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂発泡層と、
前記ポリエチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面側に設けられた表面層と、
前記表面層と前記発泡層との間に設けられた導電層と、を有する多層発泡シートであって、
前記導電層が、エチレンに由来する構造単位及び極性基を有するモノマーに由来する構造単位を備えたエチレン系共重合体と、前記エチレン系共重合体とは異なるポリエチレン系樹脂と、導電性カーボンとを含み、
前記導電層中における前記導電性カーボンの配合量が5質量%以上15質量%以下であり、
前記表面層が、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンからなる群より選択される1種以上の直鎖状ポリエチレン、または前記直鎖状ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含み、前記直鎖状ポリエチレンの配合量が8質量%以上である混合樹脂から構成されており、
前記多層発泡シートの表面のうち、前記表面層が設けられている側の表面における表面抵抗率が1×10Ω未満である、ポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項2】
前記発泡層が低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項3】
前記表面層が、少なくとも前記直鎖状ポリエチレンとしての直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項4】
前記表面層に含まれる前記直鎖状ポリエチレンの温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが12g/10分以上である、請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項5】
前記表面層に含まれる前記直鎖状ポリエチレンの温度95℃における引張強さが3.0MPa以上である、請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項6】
前記表面層に含まれる前記直鎖状ポリエチレンの温度23℃における引張強さが15MPa以上である、請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項7】
前記表面層に含まれる前記直鎖状ポリエチレンの結晶化温度が100℃以上115℃以下である、請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項8】
前記表面層に含まれる前記直鎖状ポリエチレンの融点Tmと前記発泡層に用いられる前記ポリエチレン系樹脂の融点Tmとの差Tm-Tmが0℃以上15℃以下である、請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項9】
前記ポリエチレン系樹脂多層発泡シートの表面層の坪量が1g/m以上10g/m以下である、請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項10】
前記ポリエチレン系樹脂多層発泡シートの見掛け密度が30kg/m以上150kg/m以下である、請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【請求項11】
ポリエチレン系樹脂発泡層を形成するための発泡層形成用溶融物と、導電層を形成するための導電層形成用溶融物と、表面層を形成するための表面層形成用溶融物とを共押出することにより、前記ポリエチレン系樹脂発泡層と、前記ポリエチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面側に設けられた前記表面層と、前記表面層と前記発泡層との間に設けられた前記導電層と、を有するポリエチレン系樹脂多層発泡シートを作製する、ポリエチレン系樹脂多層発泡シートの製造方法であって、
前記発泡層形成用溶融物がポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなり、
前記導電層形成用溶融物が、エチレンに由来する構造単位及び極性基を有するモノマーに由来する構造単位を備えたエチレン系共重合体と、前記エチレン系共重合体とは異なるポリエチレン系樹脂と、導電性カーボンと、を混練してなり、
前記導電層形成用溶融物中における前記導電性カーボンの配合量が5質量%以上15質量%以下であり、
前記表面層形成用溶融物が、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンからなる群より選択される1種以上の直鎖状ポリエチレン、または前記表面層形成用溶融物の質量に対して8質量%以上の前記直鎖状ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを混練してなる、ポリエチレン系樹脂多層発泡シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂多層発泡シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂を基材樹脂とするポリエチレン系樹脂発泡シートは、柔軟性が高く、衝撃吸収性に優れているため緩衝材や包装材等の用途に用いられている。これらの中でも、例えば電子機器や電子部品等を包装するために使用される緩衝材や包装材には、被包装物に対する保護性に加えて導電性が求められることがある。
【0003】
導電性を有する発泡シートの例として、例えば特許文献1には、導電性カーボンを含むマスターバッチとポリエチレン系樹脂とを混合し、押出発泡することにより得られる、導電性のポリエチレン系樹脂発泡シートが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、熱分解型発泡剤を含有する非導電性のポリエチレン系樹脂と導電性カーボンを含有する導電性熱可塑性樹脂層の少なくとも二層より成る発泡性多層熱可塑性樹脂シートを加熱発泡することにより得られる、導電性のポリエチレン系樹脂多層発泡シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-31440号公報
【特許文献2】特開昭62-231728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発泡シートは、導電性を付与するために、発泡シート中に比較的多量の導電性カーボンを配合する必要がある。しかし、発泡シートへの導電性カーボンの配合量が多くなると、発泡性が阻害され、緩衝材や包装材として用いるために必要な緩衝性等の特性が損なわれるおそれがある。
【0007】
特許文献2の発泡シートも同様に、表面抵抗率を1×10Ω以下とするために、導電性熱可塑性樹脂層中に比較的多量の導電性カーボンを配合する必要がある。
【0008】
また、特許文献1及び特許文献2の発泡シートは、導電性カーボンが発泡シートから脱落し、発泡シートの周囲を汚染するおそれがあった。特に、発泡シート中の導電性カーボンの配合量が多くなると、発泡シートから導電性カーボンが脱落しやすくなり、発泡シートの周囲が導電性カーボンにより汚染されやすくなるおそれがある。また、発泡シートを包装材として使用した場合に、発泡シートから脱落した導電性カーボンが被包装物に移行し、被包装物が汚染されるおそれがある。
【0009】
近年では、電子部品等の用途によっては、高度に清浄な状態を求められることがあり、かかる用途に用いられる包装材には、包装材自体が汚染源とならないよう被包装物に対する汚染性の更なる低減を求められることがあった。
【0010】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、導電性を備えるとともに、被包装物に対する汚染性を高度に低減することができるポリエチレン系樹脂多層発泡シート及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、以下の[1]~[10]に係るポリエチレン系樹脂多層発泡シートにある。
【0012】
[1]ポリエチレン系樹脂発泡層と、
前記ポリエチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面側に設けられた表面層と、
前記表面層と前記発泡層との間に設けられた導電層と、を有する多層発泡シートであって、
前記導電層が、エチレンに由来する構造単位及び極性基を有するモノマーに由来する構造単位を備えたエチレン系共重合体と、前記エチレン系共重合体とは異なるポリエチレン系樹脂と、導電性カーボンとを含み、
前記導電層中における前記導電性カーボンの配合量が5質量%以上15質量%以下であり、
前記表面層が、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンからなる群より選択される1種以上の直鎖状ポリエチレン、または前記直鎖状ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含み、前記直鎖状ポリエチレンの配合量が8質量%以上である混合樹脂から構成されており、
前記多層発泡シートの表面のうち、前記表面層が設けられている側の表面における表面抵抗率が1×10Ω未満である、ポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【0013】
[2]前記発泡層が低密度ポリエチレンを含む、[1]に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[3]前記表面層が、少なくとも前記直鎖状ポリエチレンとしての直鎖状低密度ポリエチレンを含む、[1]または[2]に記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[4]前記表面層に含まれる前記直鎖状ポリエチレンの温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトが12g/10分以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【0014】
[5]前記表面層に含まれる前記直鎖状ポリエチレンの温度95℃における引張強さが3.0MPa以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[6]前記表面層に含まれる前記直鎖状ポリエチレンの温度23℃における引張強さが15MPa以上である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[7]前記表面層に含まれる前記直鎖状ポリエチレンの結晶化温度が100℃以上115℃以下である、[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【0015】
[8]前記表面層に含まれる前記直鎖状ポリエチレンの融点Tmと前記発泡層に用いられる前記ポリエチレン系樹脂の融点Tmとの差Tm-Tmが0℃以上15℃以下である、[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[9]前記ポリエチレン系樹脂多層発泡シートの表面層の坪量が、1g/m以上10g/m以下である、[1]~[8]のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
[10]前記ポリエチレン系樹脂多層発泡シートの見掛け密度が30kg/m以上150kg/m以下である、[1]~[9]のいずれか1つに記載のポリエチレン系樹脂多層発泡シート。
【0016】
また、本発明の他の態様は、以下の[11]に係るポリエチレン系樹脂多層発泡シートの製造方法にある。
【0017】
[11]ポリエチレン系樹脂発泡層を形成するための発泡層形成用溶融物と、導電層を形成するための導電層形成用溶融物と、表面層を形成するための表面層形成用溶融物とを共押出することにより、前記ポリエチレン系樹脂発泡層と、前記ポリエチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面側に設けられた前記表面層と、前記表面層と前記発泡層との間に設けられた前記導電層と、を有するポリエチレン系樹脂多層発泡シートを作製する、ポリエチレン系樹脂多層発泡シートの製造方法であって、
前記発泡層形成用溶融物がポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなり、
前記導電層形成用溶融物が、エチレンに由来する構造単位及び極性基を有するモノマーに由来する構造単位を備えたエチレン系共重合体と、前記エチレン系共重合体とは異なるポリエチレン系樹脂と、導電性カーボンと、を混練してなり、
前記導電層形成用溶融物中における前記導電性カーボンの配合量が5質量%以上15質量%以下であり、
前記表面層形成用溶融物が、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンからなる群より選択される1種以上の直鎖状ポリエチレン、または前記表面層形成用溶融物の質量に対して8質量%以上の前記直鎖状ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを混練してなる、ポリエチレン系樹脂多層発泡シートの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
前記の態様によれば、導電性を備えるとともに、被包装物に対する汚染性を高度に低減することができるポリエチレン系樹脂多層発泡シート(以下、適宜「多層発泡シート」という。)及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例におけるポリエチレン系樹脂多層発泡シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(ポリエチレン系樹脂多層発泡シート)
前記多層発泡シートは、ポリエチレン系樹脂発泡層(以下、適宜「発泡層」という。)と、発泡層の少なくとも片面側に設けられた表面層と、表面層と発泡層との間に設けられた導電層との3層を含む多層構造を有している。表面層は、多層発泡シートの最表面に設けられている。多層発泡シートに含まれる各層は、隣り合う層に積層接着されている。多層発泡シートにおける表面層と導電層とが共押出により積層されていることが好ましく、多層発泡シートにおける全ての層が、共押出により隣り合う層と積層接着されていることが好ましい。
【0021】
例えば、前記多層発泡シートは、発泡層と、発泡層の片面に積層された導電層と、該導電層に積層された表面層との3層から構成されていてもよい。また、前記多層発泡シートは、発泡層と、発泡層の両面に積層された導電層と、各導電層に積層された表面層との5層から構成されていてもよい。さらに、前記多層発泡シートにおける発泡層と導電層との間には、発泡層、導電層及び表面層とは異なる組成を有する層が設けられていてもよい。
【0022】
前記多層発泡シートにおいては、発泡層の少なくとも片面側に前記特定の樹脂と導電性カーボンとを含む樹脂組成物から構成される導電層が設けられている。また、前記多層発泡シートの表面には前記特定の樹脂から構成される表面層が設けられている。このように、導電層を前記特定の樹脂組成物から構成することにより、導電性カーボンの配合量を過度に多くすることなく導電性を高めることができる。さらに、多層発泡シートの表面に前記特定の樹脂から構成される表面層を設けることにより、前記多層発泡シートは、高い導電性を維持しつつ、被包装物に対する汚染性を高度に低減することができる。
【0023】
電子機器や電子部品等の被包装物が静電気により損傷することをより確実に抑制するとともに、多層発泡シートの汚染性をさらに低減する観点からは、導電層及び表面層がポリエチレン系樹脂発泡層の両面側に設けられていることが好ましい。すなわち、前記多層発泡シートは、発泡層と、発泡層の両面側に設けられ、多層発泡シートの最表面に位置する表面層と、各表面層と発泡層との間に位置する導電層との5層構造を有していることが好ましい。
【0024】
<全体厚み>
前記多層発泡シートの全体厚みは、0.05mm以上3.0mm以下であることが好ましい。多層発泡シートの全体厚みを0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上とすることにより、多層発泡シートの緩衝性をより高めることができる。また、多層発泡シートの全体厚みを3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下、特に好ましくは1.2mm以下とすることにより、多層発泡シートの取り扱い性をより高め、被包装物の梱包をより容易に行うことができる。
【0025】
多層発泡シートの全体厚みの測定方法は以下の通りである。まず、多層発泡シートを押出方向に垂直な面で切断する。この切断面において、切断面の幅方向(つまり、押出方向及び厚み方向の両方に対して直角な方向)の長さを11等分するようにして10か所の測定位置を設定する。顕微鏡を用いてこれらの測定位置を観察するなどの方法により、各測定位置の厚みを測定する。そして、これらの厚みの算術平均値を多層発泡シートの全体厚みとする。
【0026】
<見掛け密度>
前記多層発泡シートの見掛け密度は30kg/m以上150kg/m以下であることが好ましい。多層発泡シートの見掛け密度を30kg/m以上、より好ましくは35kg/m以上、さらに好ましくは40kg/m以上とすることにより、緩衝材や包装材として十分な強度を容易に確保することができる。また、多層発泡シートの見掛け密度を150kg/m以下、より好ましくは120kg/m以下、さらに好ましくは100kg/m以下とすることにより、多層発泡シートの軽量性や柔軟性を十分に確保し、多層発泡シートの緩衝性をより高めることができる。
【0027】
多層発泡シートの見掛け密度の測定方法は以下の通りである。まず、多層発泡シートを幅方向(つまり、押出方向及び厚み方向の両方に対して直交する方向)に切断し、試験片を採取する。試験片の形状は、例えば、縦方向の寸法が多層発泡シートの全幅と同一であり、横方向の寸法が10cmである長方形とすることができる。この試験片の質量(単位:g)を試験片の面積で除した後、単位換算することにより、多層発泡シートの坪量、つまり、多層発泡シート1m当たりの質量(単位:g/m)を算出する。多層発泡シートの坪量を前述した方法により得られる多層発泡シートの全体厚みで除し、次いで単位換算することにより、多層発泡シートの見掛け密度(単位:kg/m)を算出することができる。
【0028】
<表面抵抗率>
前記多層発泡シートの表面のうち、表面層を有する側の表面における表面抵抗率は1×10Ω未満である。かかる範囲の表面抵抗率を備えた多層発泡シートは、被包装物等に帯電した静電気を容易に除電できるため、電子部品や電子機器等の緩衝材や包装材として好適である。同様の観点から、前記多層発泡シートの表面のうち、表面層を有する側の表面における表面抵抗率は5×10Ω以下であることが好ましく、1×10Ω未満であることがより好ましい。また、前記多層発泡シートの表面のうち、表面層を有する側の表面における表面抵抗率は1×10Ω以上であることが好ましい。
【0029】
多層発泡シートの表面抵抗率は、JIS K6271-1:2015に準拠した測定方法により測定される。具体的には、まず、多層発泡シートから一辺100mmの正方形状の試験片を採取する。この試験片の表面のうち、表面層を有する側の表面に電極を取り付けた後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中で電極間に1Vの電圧を印加する。そして、電圧を印加してから1分経過した時点での表面抵抗率(単位:Ω)を、多層発泡シートの表面抵抗率とする。
【0030】
[ポリエチレン系樹脂発泡層]
ポリエチレン系樹脂発泡層は、主にポリエチレン系樹脂から構成されている。
【0031】
<ポリエチレン系樹脂>
本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、エチレンに由来する構造単位を50モル%以上含む樹脂をいう。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(PE-LD)、直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)、高密度ポリエチレン(PE-HD)等のポリエチレンや、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)等のエチレンに由来する構造単位及び極性基を有するモノマーに由来する構造単位を備えたエチレン系共重合体等が挙げられる。
【0032】
前述した低密度ポリエチレンは、長鎖分岐構造を有しており、その密度は通常910kg/m以上930kg/m未満である。直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体であって、実質的に線状の分子鎖を有しており、その密度は通常910kg/m以上942kg/m以下である。高密度ポリエチレンは、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体であり、その密度は通常942kg/mよりも高い。
【0033】
発泡層には、1種類のポリエチレン系樹脂が含まれていてもよいし、2種以上のポリエチレン系樹脂が含まれていてもよい。前記多層発泡シートの柔軟性、緩衝性及び発泡性をより向上させる観点からは、発泡層を構成するポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレン、または低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの混合樹脂のいずれかであることが好ましく、低密度ポリエチレンであることがより好ましい。
【0034】
発泡層に含まれるポリエチレン系樹脂の融点は、100℃以上135℃以下であることが好ましい。この場合には、押出発泡性に優れると共に、緩衝性に優れる発泡層を安定して形成することができる。かかる観点から、発泡層に含まれるポリエチレン系樹脂の融点は、100℃以上130℃以下であることが好ましく、105℃以上120℃以下であることがより好ましく、108℃以上115℃以下であることがさらに好ましい。
【0035】
ポリエチレン系樹脂の融点は、JIS K7121:2012に規定されたプラスチックの転移温度測定方法により測定することができる。まず、「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」に従い、加熱速度及び冷却速度を10℃/分に設定して試験片の状態調節を行う。その後、加熱速度を10℃/分に設定して熱流束DSC(つまり、示差走査熱量測定)を行い、DSC曲線を取得する。得られたDSC曲線における吸熱ピークの頂点温度を融点とする。なお、DSC曲線に複数の吸熱ピークが現れている場合には、高温側のベースラインを基準として、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とする。
【0036】
発泡層に含まれるポリエチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、押出発泡性に優れることから、0.5g/10分以上15g/10分以下であることが好ましく、1g/10分以上8g/10分以下であることがより好ましく、1.5g/10分以上5g/10分以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書におけるポリエチレン系樹脂のMFRは、JIS K7210-1:2014に基づき、試験温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
【0037】
<その他のポリマー>
発泡層中には、前述した作用効果を損なわない範囲で、ポリエチレン系樹脂以外の他の重合体が含まれていてもよい。ポリエチレン系樹脂以外の他の重合体としては、例えば、ポリスチレン系樹脂等のポリエチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂や、エチレンプロピレンゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のエラストマー等が挙げられる。発泡層中のポリエチレン系樹脂以外の他の重合体の含有量は、ポリエチレン系樹脂100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましく、0質量部、つまり、発泡層を構成する重合体成分がポリエチレン系樹脂のみからなることが特に好ましい。
【0038】
<添加剤>
発泡層中には、気泡調整剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填材、抗菌剤等の添加剤が含まれていてもよい。発泡層中の添加剤の配合量は、例えば、ポリエチレン系樹脂100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0039】
[導電層]
導電層は、ポリエチレン系樹脂発泡層と表面層との間に設けられている。導電層は、主に、エチレンに由来する構造単位及び極性基を有するモノマーに由来する構造単位を備えたエチレン系共重合体と、前記エチレン系共重合体とは異なるポリエチレン系樹脂と、導電性カーボンとを含む樹脂組成物から構成されている。また、導電層中の導電性カーボンの配合量は5質量%以上15質量%以下である。導電層は、多層発泡シートの導電性や取り扱い性、外観を向上させる観点から、非発泡状態であることが好ましい。なお、非発泡状態とは、製造時に発泡せず気泡が含まれない状態と、製造時にわずかに発泡しその後に気泡が消失した状態とを含み、層中にほとんど気泡構造がないことを意味する。ただし、導電層中にごく微小な気泡が少量含まれていてもよい。
【0040】
導電層が前記特定の樹脂組成物から構成されていることにより、比較的少量の導電性カーボンにより多層発泡シートに導電性を付与することができる。この理由は、現時点では必ずしも明らかではないが、例えば以下のような理由が考えられる。
【0041】
一般に、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂中に導電性カーボンを分散させた場合、隣接する導電性カーボン粒子同士が一定の距離以下で近接して存在することによって、導電性カーボン粒子による導電性ネットワークが形成され、導電性が発現する。
【0042】
前記樹脂組成物中のエチレン系共重合体とポリエチレン系樹脂とは互いに非相溶であるため、導電層中には、主にポリエチレン系樹脂からなる相と、主にエチレン系共重合体からなる相とが形成される。導電層中にこのようなモルフォロジーが形成されると、導電性カーボンは、ポリエチレン系樹脂からなる相及びエチレン系共重合体からなる相のうちいずれか一方の相に偏在すると考えられる。そして、導電性カーボンがいずれかの相に偏在することにより、導電性カーボン粒子による導電性ネットワークが形成されやすくなる。その結果、導電性カーボンの配合量が少量であっても導電性が発現しやすいと考えられる。
【0043】
<エチレン系共重合体>
導電層に用いられるエチレン系共重合体は、少なくとも、エチレンに由来する構造単位と、極性基を有するモノマーに由来する構造単位とを有している。エチレン系共重合体は、例えば、エチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体であってもよいし、エチレン、極性基を有するモノマー及びこれらのモノマー以外の他のモノマーの共重合体であってもよい。エチレン系共重合体中に含まれる前記他のモノマーに由来する構造単位の量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%、すなわちエチレン系共重合体がエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体であることが最も好ましい。
【0044】
導電層に用いられるエチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(つまり、EVA)やエチレン-メタクリル酸メチル共重合体(つまり、EMMA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(つまり、EMA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(つまり、EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合体(つまり、EAA)、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体(つまり、EEMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(つまり、EEA)、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体(つまり、EBA)等が挙げられる。多層発泡シートの導電性をより高める観点からは、導電層中には、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体及びエチレン-メタクリル酸共重合体からなる群より選択される1種または2種以上のエチレン系共重合体が含まれていることが好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体が含まれていることがより好ましい。
【0045】
導電層に用いられるエチレン系共重合体における、極性基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量は30質量%以上50質量%以下であることが好ましい。エチレン系共重合体中の極性基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量を30質量%以上とすることにより、多層発泡シートの導電性をより向上させることができる。かかる作用効果をより高める観点からは、エチレン系共重合体中の極性基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量は30質量%よりも多いことがより好ましく、35質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましく、40質量%よりも多いことが最も好ましい。
【0046】
また、エチレン系共重合体中の極性基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量を50質量%以下とすることにより、多層発泡シートの取り扱い性をより高めるとともに、導電層を発泡層に積層する際の製造安定性をより向上させることができる。これらの作用効果をより高める観点からは、エチレン系共重合体中の極性基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量は48質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0047】
導電層に用いられるエチレン系共重合体の温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトは20g/10分以上100g/10分以下であることが好ましく、40g/10分以上80g/10分以下であることがより好ましい。この場合には、導電層と発泡層との接着性をより高めることができる。また、この場合には、多層発泡シートの導電性をより安定して発現させることができる。なお、本明細書におけるエチレン系共重合体のMFRは、JIS K7210-1:2014に基づき、試験温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
【0048】
導電層に用いられるエチレン系共重合体の融点は、30℃以上80℃以下であることが好ましく、32℃以上75℃以下であることがより好ましく、35℃以上70℃以下であることがさらに好ましい。導電層に用いられるエチレン系共重合体の融点を前記特定の範囲とすることにより、多層発泡シートの導電性をより向上させるとともに、導電層を発泡層に積層する際の製造安定性をより向上させることができる。なお、エチレン系共重合体の融点の測定方法は、発泡層に用いられるポリエチレン系樹脂の融点の測定方法と同様である。
【0049】
<ポリエチレン系樹脂>
導電層には、前記エチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂が含まれている。導電層に用いられるポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(PE-LD)、直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)、高密度ポリエチレン(PE-HD)等のポリエチレンが例示される。導電層に用いられるエチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂は、ポリエチレンであることが好ましく、低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群より選択される1種以上のポリエチレンであることがより好ましい。この場合には、導電性カーボンの配合量を比較的少なくした場合にも、多層発泡シートに導電性をより確実に付与することができる。
【0050】
導電層に用いられるエチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂の融点は、100℃以上120℃以下であることが好ましく、102℃以上115℃以下であることがより好ましい。この場合には、多層発泡シートを共押出により製造する場合においても、導電層を発泡層に安定して積層接着させることができる。なお、導電層に用いられるポリエチレン系樹脂の融点の測定方法は、前述した発泡層に用いられるポリエチレン系樹脂の融点の測定方法と同様である。
【0051】
導電層に用いられるエチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂の融点Tmとエチレン系共重合体の融点Tmとの差Tm-Tmは、30℃以上80℃以下であることが好ましい。
【0052】
融点差Tm-Tmを30℃以上とすることにより、多層発泡シートに十分な導電性をより容易に付与することができる。また、融点差Tm-Tmを80℃以下とすることにより、多層発泡シートの製造過程においてサイジング装置等にエチレン系共重合体が付着することを容易に抑制し、良好な多層発泡シートをより容易に得ることができる。また、この場合には、使用中等にエチレン系共重合体が軟化したり、多層発泡シートを重ね合わせた状態で保管する際に多層発泡シートが互いに融着したりするなどして取り扱い性が損なわれたりすることをより容易に回避することができる。これらの作用効果をより確実に得る観点から、融点差Tm-Tmは40℃以上70℃以下であることがより好ましい。
【0053】
導電層に用いられるポリエチレン系樹脂の温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトは5g/10分以上80g/10分以下であることが好ましく、10g/10分以上65g/10分以下であることがより好ましく、12g/10分以上50g/10分以下であることがさらに好ましい。この場合には、導電層と発泡層との接着性をより高めることができる。また、この場合には、多層発泡シートに導電性をより確実に付与することができる。
【0054】
<配合比率>
導電層中におけるエチレン系共重合体とエチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂との配合比率は、質量比においてエチレン系共重合体:ポリエチレン系樹脂=20:80~80:20であることが好ましく、エチレン系共重合体:ポリエチレン系樹脂=50:50~75:25であることがより好ましく、エチレン系共重合体:ポリエチレン系樹脂=55:45~70:30であることがさらに好ましい。この場合には、多層発泡シートの導電性をより高めることができる。
【0055】
<導電性カーボン>
導電層を構成する樹脂組成物中には、導電性カーボン、つまり、主に炭素原子からなり、導電性を有する物質が含まれている。導電性カーボンとしては、具体的には、ファーネスブラックやアセチレンブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等の導電性カーボンブラックが好ましく例示される。導電層中には、2種類以上の導電性カーボンが含まれていてもよい。多層発泡シートの導電性を確保しつつ導電性カーボンの配合量をより低減する観点からは、導電層中には、導電性カーボンとして、ケッチェンブラック等の高導電性カーボンブラックが含まれていることが好ましい。
【0056】
前記導電性カーボンのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、150mL/100g以上700mL/100g以下であることが好ましい。この場合には、多層発泡シートの導電性をより高めることができる。多層発泡シートの導電性をより高める観点からは、導電性カーボンのDBP吸油量は200mL/100g以上600mL/100g以下であることがより好ましく、300mL/100g以上600mL/100g以下であることがさらに好ましい。なお、前述したジブチルフタレート(DBP)吸油量は、ASTM D2414-79に準じて測定される値である。
【0057】
また、前記導電性カーボンのBET比表面積は600m/g以上2000m/g以下であることが好ましい。この場合には、多層発泡シートの導電性をより高めることができる。多層発泡シートの導電性をより高める観点からは、導電性カーボンのBET比表面積は、700m/g以上1600m/g以下であることがより好ましい。本発明の多層発泡シートは、エチレン系共重合体と、エチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂と、導電性カーボンとを含む導電層が、発泡層とは別の層として形成されているため、発泡層の発泡性を阻害せずに比表面積の大きな導電性カーボンを配合することができる。
【0058】
導電層中の導電性カーボンの配合量は、5質量%以上15質量%以下である。導電性カーボンの配合量を5質量%以上とすることにより、多層発泡シートに導電性を付与することができる。多層発泡シートの導電性をより高める観点からは、導電層中の導電性カーボンの配合量は、6質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。導電層中の導電性カーボンの配合量が少なすぎる場合には、導電層内に導電性カーボン粒子による導電性ネットワークが形成されにくくなり、多層発泡シートの導電性の低下を招くおそれがある。なお、導電性カーボンの配合量は、多層発泡シートにおける導電層中の導電性カーボンの含有量と概ね等しい。
【0059】
また、導電性カーボンの配合量を15質量%以下とすることにより、多層発泡シートからの導電性カーボンの脱落を低減することができる。多層発泡シートからの導電性カーボンの脱落をより低減する観点からは、導電性カーボンの配合量は、12質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましい。導電層中の導電性カーボンの配合量が多すぎる場合には、多層発泡シートから導電性カーボンが脱落しやすくなり、多層発泡シートの周囲の汚染を招くおそれがある。
【0060】
<その他のポリマー>
導電層中には、前述した作用効果を損なわない範囲で、エチレン系共重合体及びポリエチレン系樹脂以外の他の重合体が含まれていてもよい。エチレン系共重合体及びポリエチレン系樹脂以外の他の重合体としては、例えば、ポリスチレン系樹脂等のポリエチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂や、エチレンプロピレンゴム及びスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のエラストマー等が挙げられる。導電層中には、発泡層に含まれるポリエチレン系樹脂よりも融点の高い重合体が含まれていないことが好ましい。この場合には、後述する共押出法によって導電層を備える多層発泡シートを製造する際の製造安定性をより高めることができる。導電層中のエチレン系共重合体及びポリエチレン系樹脂以外の他の重合体の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
【0061】
<添加剤>
導電層中には、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填材、抗菌剤等の添加剤が含まれていてもよい。導電層中の添加剤の配合量は、例えば、エチレン系共重合体及びエチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂の合計100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0062】
<平均厚み>
導電層の平均厚みは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。導電層の平均厚みを1μm以上、より好ましくは3μm以上とすることにより、多層発泡シートに導電性をより確実に付与することができる。また、導電層の平均厚みを20μm以下、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下とすることにより、多層発泡シートの汚染性をより確実に低減することができる。
【0063】
導電層の平均厚みの測定方法は以下の通りである。まず、多層発泡シートを押出方向に垂直な面で切断する。この切断面において、切断面の長手方向(つまり、押出方向及び厚み方向の両方に対して直角な方向)の長さを11等分するようにして10か所の測定位置を設定する。顕微鏡を用いてこれらの測定位置における多層発泡シートの断面を観察し、各測定位置における導電層の厚みを測定する。これらの厚みの算術平均値を、導電層の平均厚み(単位:μm)とする。
【0064】
<坪量>
導電層の坪量は、1g/m以上50g/m以下であることが好ましい。導電層の坪量を1g/m以上、より好ましくは2g/m以上、さらに好ましくは3g/m以上、特に好ましくは5g/m以上とすることにより、多層発泡シートに導電性をより確実に付与することができる。また、導電層の坪量を30g/m以下、より好ましくは20g/m以下、さらに好ましくは15g/m以下、特に好ましくは10g/m以下とすることにより、多層発泡シートの汚染性をより確実に低減することができる。なお、導電層がポリエチレン系樹脂発泡層の両面に積層されている場合には、上記導電層の坪量は、片面当たりの坪量を意味する。
【0065】
片面当たりの導電層の坪量の測定方法は以下の通りである。まず、前述した方法により導電層の平均厚みを算出する。この平均厚みの単位を換算した後、導電層の密度(単位:g/m)を乗じることにより導電層の坪量(単位:g/m)を得ることができる。なお、導電層の密度は、導電層中に含まれる導電性カーボンやその他の添加剤等を含む密度である。
【0066】
多層発泡シートを共押出により製造する場合には、片面当たりの導電層の吐出量X1(単位:g/時)、多層発泡シートの幅W(単位:m)、多層発泡シートの引取速度L(単位:m/時)を用いて、下記(1)式により片面当たりの導電層の坪量を求めることもできる。
導電層の坪量=〔X1/(L×W)〕・・・(1)
【0067】
表面層形成用溶融物と、導電層形成用溶融物と、発泡層形成用溶融物とを共押出して多層発泡シートを作製する場合には、熱ラミネーション等によっては形成することができないような、坪量が小さく、厚みの薄い導電層を形成するとともに、導電性を安定的に発現させることができる。
【0068】
[表面層]
表面層は、多層発泡シートの最表面に位置している。表面層は、実質的に、以下の(1)及び(2)に示す樹脂のうちいずれかの樹脂から構成されている。
(1)直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンからなる群より選択される1種以上の直鎖状ポリエチレン。
(2)直鎖状ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含み、直鎖状ポリエチレンの配合量が8質量%以上である混合樹脂。
【0069】
表面層は、多層発泡シートの導電性や取り扱い性、外観の向上及び汚染性の低減の観点から、非発泡状態であることが好ましい。ただし、表面層中にごく微小な気泡が少量含まれていてもよい。
【0070】
前記多層発泡シートは、前記特定の樹脂から構成される表面層を有することにより、高い導電性を有するとともに、導電層からの導電性カーボンの脱落を確実に低減し、被包装物に対する汚染性を高度に低減することができる。これは、表面層を構成する樹脂として前記特定の樹脂を用いることにより、表面層を導電層に積層した際にピンホールの形成を抑制できるためであると考えられる。なお、本明細書において、ピンホールとは、多層発泡シートの表面に形成される小穴等の欠陥をいう。
【0071】
多層発泡シートが表面層を有さない場合には、導電層中の導電性カーボンが多層発泡シートの最表面に露出するため、被包装物に対する汚染性を十分に低減できないおそれがある。また、表面層が前記直鎖状ポリエチレンを含まない場合、たとえば、導電性カーボンを含む導電層に低密度ポリエチレンからなる表面層を積層した場合にも、被包装物に対する汚染性を十分に低減することができないおそれがある。これは、フィラーとしての導電性カーボンを含む導電層を備える多層発泡シートにおいて、表面層に直鎖状ポリエチレンが含まれない場合には、多層発泡シートの表面にピンホールが生じることを十分に抑制できないことが原因であると考えられる。
【0072】
表面層には、少なくとも、直鎖状ポリエチレン、つまり、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンからなる群より選択される1種以上のポリエチレンが含まれている。表面層には、少なくとも、直鎖状ポリエチレンとしての直鎖状低密度ポリエチレンが含まれていることが好ましい。この場合には、表面層をより安定して導電層に積層接着させることができるとともに、多層発泡シートの表面における、局所的な表面抵抗率のばらつきをより低減することができる。
【0073】
<直鎖状ポリエチレン>
表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトは、12g/10分以上であることが好ましく、15g/10分以上であることがより好ましい。この場合には、表面層をより安定して導電層に積層接着させるとともに、多層発泡シートの表面における、局所的な表面抵抗率のばらつきをより低減することができる。なお、表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイトの上限は、押出安定性の観点から例えば100g/10分であることが好ましく、50g/10分であることがより好ましく、30g/10分であることがさらに好ましい。
【0074】
表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの温度95℃における引張強さは3.0MPa以上であることが好ましく、3.5MPa以上であることがより好ましく、4.0MPa以上であることがさらに好ましく、4.5MPa以上であることが特に好ましい。この場合には、多層発泡シートからの導電性カーボンの脱落をより低減することができ、被包装物に対する汚染性をより低減することができる。この理由としては、例えば、前記特定の引張強さを有する直鎖状ポリエチレンを用いることにより、多層発泡シートを共押出により製造する際に表面層がより強靭になり、表面層にピンホールが形成されにくくなることなどが考えられる。なお、表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの温度95℃における引張強さの上限は、多層発泡シートの押出安定性や引取りの安定性をより高める観点から、例えば10MPaであればよく、8.0MPaであることがより好ましい。
【0075】
同様の観点から、表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの温度23℃における引張強さは15MPa以上であることが好ましく、16MPa以上であることがより好ましく、17MPa以上であることがさらに好ましく、18MPa以上であることが特に好ましい。なお、表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの温度23℃における引張強さの上限は、多層発泡シートの表面に柔軟性を付与し、被包装物に対する傷付きをより抑制する観点から、30MPaであることが好ましい。
【0076】
前述した各温度における直鎖状ポリエチレンの引張強さは、JIS K7161-1:2014に基づいて測定される。なお、後述するポリエチレン系樹脂多層発泡シートの押出発泡温度を考慮し、共押出により表面層が形成される際の樹脂の温度を想定して測定温度として95℃を採用した。
【0077】
表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの結晶化温度は、100℃以上であることが好ましく、102℃以上であることがより好ましく、105℃以上であることがさらに好ましい。この場合には、被包装物に対する汚染性をより低減することができるとともに、表面層をより安定して導電層に積層接着させることができる。この理由としては、例えば、前記特定の結晶化温度を有する直鎖状ポリエチレンを用いることにより、多層発泡シートを共押出により製造する際に表面層が押出直後からより早期に固化されやすく、表面層にピンホールが形成されにくくなることなどが考えられる。
【0078】
なお、表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの結晶化温度は、JIS K7121:2012に基づき、熱流束示差走査熱量計を用いて測定される。DSC曲線に複数の結晶化ピークが表れる場合は、ピーク高さの最も高い結晶化ピークのピーク温度を結晶化温度とする。
【0079】
表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの融点Tmは、110℃以上135℃以下であることが好ましく、115℃以上130℃以下であることがより好ましい。この場合には、多層発泡シートを共押出により製造する場合においても、表面層を安定して形成することができる。また、多層発泡シートの被包装物に対する汚染性をより低減する観点からは、表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの融点Tmと発泡層に用いられるポリエチレン系樹脂の融点Tmとの差Tm-Tmは-5℃以上であることが好ましく、0℃以上であることがより好ましく、5℃以上であることがさらに好ましい。また、多層発泡シートの表面抵抗率のバラつきをより小さくする観点からは、表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの融点Tmと発泡層に用いられるポリエチレン系樹脂の融点Tmとの差Tm-Tmは15℃以下であることが好ましい。なお、表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンの融点の測定方法は、前述した発泡層に用いられるポリエチレン系樹脂の融点の測定方法と同様である。
【0080】
<低密度ポリエチレン>
表面層中には、低密度ポリエチレンが含まれていてもよい。表面層には、例えば、前述の発泡層に用いられる低密度ポリエチレンと同様の低密度ポリエチレンを用いることができる。表面層中に低密度ポリエチレンを含む場合には、被包装物に対する緩衝性をより高めることができる。また、表面層が直鎖状ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む場合には、直鎖状ポリエチレンによる前述の効果を確実に得る観点から、表面層中における直鎖状ポリエチレンの配合量は8質量%以上とする。同様の観点から、表面層中における直鎖状ポリエチレンの配合量は10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。
【0081】
<その他のポリマー>
表面層中には、前述した作用効果を損なわない範囲で、直鎖状ポリエチレン及び低密度ポリエチレン以外の他の重合体が含まれていてもよい。直鎖状ポリエチレン及び低密度ポリエチレン以外の他の重合体としては、例えば、ポリスチレン系樹脂等のポリエチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂や、エチレンプロピレンゴム及びスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のエラストマー等が挙げられる。表面層を備える多層発泡シートを後述する共押出法により製造する際の製造安定性の観点からは、表面層中に含まれる重合体の融点は、発泡層に含まれるポリエチレン系樹脂の融点以下であることが好ましい。表面層中の直鎖状ポリエチレン及び低密度ポリエチレン以外の他の重合体の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
【0082】
<添加剤>
表面層中には、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填材、抗菌剤等の添加剤が含まれていてもよい。一方、表面層中には、多層発泡シートの周囲を汚染する原因となる導電性カーボンや、低分子型帯電防止剤及び高分子型帯電防止剤等の帯電防止剤が含まれていないことが好ましい。表面層中の添加剤の配合量は、例えば、直鎖状ポリエチレン及び低密度ポリエチレンの合計100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0083】
<平均厚み>
表面層の平均厚みは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。表面層の平均厚みを1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上とすることにより、導電性カーボンの脱落をより低減することができる。また、表面層の平均厚みを20μm以下、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下とすることにより、多層発泡シートに導電性をより安定して発現させることができる。
【0084】
表面層の平均厚みの測定方法は以下の通りである。まず、多層発泡シートを押出方向に垂直な面で切断する。この切断面において、切断面の長手方向(つまり、押出方向及び厚み方向の両方に対して直角な方向)の長さを11等分するようにして10か所の測定位置を設定する。顕微鏡を用いてこれらの測定位置における多層発泡シートの断面を観察し、各測定位置における表面層の厚みを測定する。これらの厚みの算術平均値を、表面層の平均厚み(単位:μm)とする。
【0085】
<坪量>
表面層の坪量は、1g/m以上20g/m以下であることが好ましい。表面層の坪量を1g/m以上、より好ましくは2g/m以上、さらに好ましくは3g/m以上とすることにより、表面層におけるピンホールの形成をより効果的に抑制し、多層発泡シートの汚染性をより低減することができる。また、表面層の坪量を20g/m以下、より好ましくは10g/m以下、さらに好ましくは8g/m以下、特に好ましくは4.5g/m以下とすることにより、多層発泡シートの表面における導電性の局所的なばらつきをより低減し、多層発泡シートに導電性をより確実に付与することができる。なお、表面層が多層発泡シートの両面に設けられている場合には、上記表面層の坪量は、片面当たりの坪量を意味する。
【0086】
また、多層発泡シートに導電性をより確実に付与するとともに、表面抵抗率のばらつきをより確実に抑制する観点からは、表面層の坪量は、導電層の坪量よりも小さいことが好ましく、導電層の坪量の0.85倍未満であることがより好ましい。すなわち、表面層の坪量をR2(単位:g/m)、導電層の坪量をR1(単位:g/m)で表した場合に、R1とR2との関係は、R2<R1であることが好ましく、R2<R1×0.85であることがより好ましい。
【0087】
片面当たりの表面層の坪量の測定方法は以下の通りである。まず、前述した方法により表面層の平均厚みを算出する。この平均厚みの単位を換算した後、表面層の密度(単位:g/m)を乗じることにより表面層の坪量(単位:g/m)を得ることができる。
【0088】
多層発泡シートを共押出により製造する場合には、片面当たりの表面層の吐出量X2(単位:g/時)、多層発泡シートの幅W(単位:m)、多層発泡シートの引取速度L(単位:m/時)を用いて、下記(2)式により片面当たりの表面層の坪量を求めることもできる。
表面層の坪量=〔X2/(L×W)〕・・・(2)
【0089】
<ピンホール面積率>
多層発泡シートは、前記特定の樹脂から構成される表面層を有しているため、表面層を導電層に積層した際のピンホールの形成を抑制することができる。多層発泡シートのピンホール面積率は、5%以下であることが好ましく、3.5%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましい。この場合には、導電層からの導電性カーボンの脱落をより確実に低減し、被包装物に対する汚染性をより低減することができる。なお、多層発泡シートのピンホール面積率の下限は0%である。
【0090】
前述した多層発泡シートのピンホール面積率の測定方法は以下の通りである。多層発泡シートの任意の位置において、走査型電子顕微鏡を用いて表面層の観察を行い、当該測定位置の電子顕微鏡像を取得する。この電子顕微鏡像において、一辺の長さが1000μmである正方形状の測定領域を設定する。当該測定領域において、表面層に形成された面積70μm以上の穴をピンホールとみなし、当該測定領域の面積に対するピンホールの占める面積の割合を算出する。同様の操作を、多層発泡シートの15か所以上の位置について行い、これらの測定領域におけるピンホールの占める面積の割合の算術平均値を多層発泡シートのピンホール面積率とする。
【0091】
(多層発泡シートの製造方法)
前記多層発泡シートは、例えば、共押出発泡法により製造することができる。すなわち、ポリエチレン系樹脂多層発泡シートの製造方法においては、ポリエチレン系樹脂発泡層を形成するための発泡層形成用溶融物と、導電層を形成するための導電層形成用溶融物と、表面層を形成するための表面層形成用溶融物とを共押出することにより、ポリエチレン系樹脂発泡層と、ポリエチレン系樹脂発泡層の少なくとも片面側に設けられた表面層と、表面層と発泡層との間に設けられた導電層とを備えたポリエチレン系樹脂多層発泡シートを作製する。発泡層形成用溶融物はポリエチレン系樹脂及び物理発泡剤を含有している。導電層形成用溶融物は、エチレンに由来する構造単位及び極性基を有するモノマーに由来する構造単位を備えたエチレン系共重合体と、エチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂と、導電性カーボンとを含有している。導電層形成用溶融物中の導電性カーボンの配合量は3質量%以上15質量%以下である。表面層形成用溶融物は、直鎖状ポリエチレンと、必要に応じて添加される低密度ポリエチレンとを含有している。表面層形成用溶融物中における直鎖状ポリエチレンの配合量は8質量%以上である。
【0092】
かかる方法を実施するに当たっては、押出発泡の分野において用いられている公知の共押出装置を用いることができる。より具体的には、例えば、発泡層形成用溶融物を押出可能に構成された発泡層形成用押出機と、導電層形成用溶融物を押出可能に構成された導電層形成用押出機と、表面層形成用溶融物を押出可能に構成された表面層形成用押出機と、これらの押出機の吐出口が接続された共押出ダイとを備えた共押出装置を用いて前記多層発泡シートを作製することができる。
【0093】
[発泡層形成用溶融物]
発泡層形成用溶融物には、少なくともポリエチレン系樹脂及び物理発泡剤が含まれている。発泡層形成用溶融物は、例えば以下の方法により作製することができる。まず、発泡層形成用押出機に前記ポリエチレン系樹脂及び必要に応じて添加される添加剤を供給し、溶融混練する。次いで、押出機内で溶融したポリエチレン系樹脂を含む溶融物に物理発泡剤を加圧しつつ供給してさらに混練することにより、発泡層形成用溶融物を得ることができる。
【0094】
物理発泡剤としては、有機物理発泡剤や無機物理発泡剤を使用することができる。有機物理発泡剤としては、例えば、プロパンやノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタンやシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、塩化メチルや塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン等のフッ化炭化水素等が挙げられる。無機物理発泡剤としては、例えば、窒素や二酸化炭素、空気、水等が挙げられる。発泡層形成用溶融物中には、1種類の物理発泡剤が含まれていてもよいし、2種類以上の物理発泡剤が含まれていてもよい。
【0095】
ポリエチレン系樹脂との相溶性や発泡性の観点からは、発泡層形成用溶融物中には、物理発泡剤として、有機物理発泡剤が含まれていることが好ましく、ノルマルブタン、イソブタンまたはこれらの混合物を主成分とする有機物理発泡剤が含まれていることがより好ましい。
【0096】
物理発泡剤の配合量は、発泡剤の種類や所望する見掛け密度等に応じて適宜設定することができる。例えば、イソブタン30質量%とノルマルブタン70質量%とからなる混合ブタンを物理発泡剤として使用する場合には、100質量部のポリエチレン系樹脂に対して3質量部以上30質量部以下、好ましくは4質量部以上20質量部以下、より好ましくは10質量部以上20質量部以下の混合ブタンを添加すればよい。
【0097】
発泡層形成用溶融物中には気泡調整剤を添加することが好ましい。気泡調整剤としては、無機系気泡調整剤や有機系気泡調整剤を使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩や塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。有機系気泡調整剤としては、リン酸-2,2-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)ナトリウムや安息香酸ナトリウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。さらに、クエン酸と重炭酸ナトリウムとの混合物や、クエン酸アルカリ塩と重炭酸ナトリウム等との混合物等を気泡調整剤として用いることもできる。発泡層形成用溶融物中には、1種類の気泡調整剤が含まれていてもよいし、2種類以上の気泡調整剤が含まれていてもよい。発泡層形成用溶融物中の気泡調整剤の配合量は、物理発泡剤の種類や所望する見掛け密度、気泡径等に応じて適宜設定すればよい。
【0098】
[導電層形成用溶融物]
導電層形成用溶融物には、少なくともエチレン系共重合体、エチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂及び導電性カーボンが含まれている。導電層形成用溶融物を作製するに当たっては、例えば、導電層形成用押出機にエチレン系共重合体、エチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂、導電性カーボン及び必要に応じて添加される添加剤を供給する。そして、押出機内でこれらを溶融混練することにより、導電層形成用溶融物を得ることができる。
【0099】
導電層形成用溶融物中には、添加剤として、揮発性可塑剤が含まれていてもよい。揮発性可塑剤は、導電層形成用溶融物の溶融粘度を低下させる作用を有するとともに、共押出後に導電層から揮発するように構成されている。揮発性可塑剤は、共押出の際に、導電層形成用溶融物の押出温度を発泡層形成用溶融物の押出発泡温度に近づけることができる。また、揮発性可塑剤は、軟化状態の導電層の溶融伸びを向上させることができる。これらの結果、導電層形成用溶融物中に揮発性可塑剤を添加することにより、発泡層形成用溶融物の発泡中に導電層の熱によってポリエチレン系樹脂発泡層の気泡が破壊されにくくなり、さらに、導電層が発泡中のポリエチレン系樹脂発泡層の膨張に追従して伸びやすくなる。
【0100】
揮発性可塑剤としては、例えば、炭素数3以上7以下の脂肪族炭化水素や炭素数3以上7以下の脂環式炭化水素、炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール、炭素数2以上8以下の脂肪族エーテル等が挙げられる。導電層形成用溶融物中には、1種類の揮発性可塑剤が含まれていてもよいし、2種類以上の揮発性可塑剤が含まれていてもよい。
【0101】
揮発性可塑剤の沸点は、120℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。このような範囲の沸点を有する揮発性可塑剤は、共押出後の導電層から自然に揮散し、導電層から除去される。なお、揮発性可塑剤の沸点の下限は、概ね-50℃である。
【0102】
揮発性可塑剤の配合量は、導電層及びポリエチレン系樹脂発泡層の組成等に応じて適宜設定することができる。例えば、揮発性可塑剤の配合量は、導電層に含まれるエチレン系共重合体及びエチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂の合計100質量部に対して5質量部以上50質量部以下とすることができる。導電層形成用溶融物の追従性をより高め、導電層の厚みのばらつきを低減する観点からは、揮発性可塑剤の配合量は、エチレン系共重合体及びエチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂の合計100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、7質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましい。
【0103】
一方、導電層を安定して発泡層に積層する観点からは、揮発性可塑剤の配合量をエチレン系共重合体及びエチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂の合計100質量部に対して50質量部以下とすることが好ましく、45質量部以下とすることがより好ましく、40質量部以下とすることがさらに好ましい。
【0104】
[表面層形成用溶融物]
表面層形成用溶融物には、少なくとも直鎖状ポリエチレンが含まれている。表面層形成用溶融物を作製するに当たっては、例えば、表面層形成用押出機に直鎖状ポリエチレンと、必要に応じて添加される低密度ポリエチレン及び添加剤とを供給する。そして、押出機内でこれらを溶融混練することにより、表面層形成用溶融物を得ることができる。また、表面層形成用溶融物には、必要に応じて揮発性可塑剤を配合することができる。表面層形成用溶融物に用いられる揮発性可塑剤は、導電層形成用溶融物に用いられる揮発性可塑剤と同様である。
【0105】
[共押出]
共押出を行うに当たっては、前述したように各押出機内で形成された発泡層形成用溶融物、導電層形成用溶融物及び表面層形成用溶融物を共押出ダイに導き、共押出ダイの押出口から層状に押し出す。共押出ダイは、例えば、直線状の押出口を備えたフラットダイであってもよい。この場合には、フラットダイの押出口から、発泡層形成用溶融物と導電層形成用溶融物と表面層形成用溶融物との積層体がシート状に押し出される。押出口から積層体が大気中に押し出されると、発泡層形成用溶融物が発泡しながら膨張する。これに伴い、導電層形成用溶融物及び表面層形成用溶融物が引き伸ばされる。そして、押出口から押し出されたシート状の積層発泡体を拡幅装置に沿わせて引き取りながら冷却することにより、発泡層形成用溶融物、導電層形成用溶融物及び表面層形成用溶融物を固化させる。これにより、発泡によって形成された気泡構造が固定され、寸法が安定する。以上により、多層発泡シートを得ることができる。
【0106】
また、共押出ダイは、例えば、環状の押出口を備えた環状ダイであってもよい。この場合には、環状ダイの押出口から、発泡層形成用溶融物と導電層形成用溶融物と表面層形成用溶融物との積層体が筒状に押し出される。押出口から積層体が大気中に押し出されると、発泡層形成用溶融物が発泡しながら膨張する。これに伴い、導電層形成用溶融物及び表面層形成用溶融物が引き伸ばされる。そして、押出口から押し出された筒状の積層発泡体を内側から圧縮空気等で拡幅しつつ、その内側をマンドレル等の拡幅装置に沿わせて引き取りながら冷却することにより、発泡層形成用溶融物、導電層形成用溶融物及び表面層形成用溶融物を固化させる。これにより、発泡によって形成された気泡構造が固定され、寸法が安定する。最後に、拡幅装置上で筒状の積層発泡体を切り開くことにより、多層発泡シートを得ることができる。共押出ダイとして環状ダイを使用した場合には、例えば1000mm以上の幅を有するような、幅の広い多層発泡シートを製造しやすい。また、例えば3mm以下の全体厚みを有するような、厚みの薄い多層発泡シートを製造しやすい。
【0107】
従来、共押出により作製されたポリエチレン系樹脂多層発泡シートにおいて、導電性カーボンを含有する導電層を設けることにより、例えば1×10Ω未満の表面抵抗率を実現しようとすると、導電層中に比較的多量の導電性カーボンを配合する必要があった。その理由は、以下のように考えられる。
【0108】
前述したように、共押出によって多層発泡シートを作製しようとする場合、共押出ダイから押し出された発泡層形成用溶融物が発泡によって急速に膨張するため、導電層形成用溶融物が、発泡層形成用溶融物の膨張に追従して強く引き伸ばされる。この延伸の際に導電層中の導電性カーボン粒子同士が引き離されるため、導電性カーボンの配合量が不十分であると、導電性ネットワークを維持することが難しくなりやすい。
【0109】
また、共押出ダイから押し出された積層発泡体は急速に冷却されるため、延伸によって導電性カーボン粒子同士が引き離された状態で導電層の基材樹脂が固化しやすい。さらに、発泡層形成用溶融物の押出発泡温度は、ポリエチレン系樹脂発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の融点付近である100~130℃の範囲と比較的低い温度に設定される。これに対応して比較的低い温度に設定された導電層形成用溶融物の押出温度条件においては、導電層の基材樹脂がより固化しやすい。これらの理由により、共押出によって作製された従来の多層発泡シートでは、導電層中に導電性ネットワークを安定して形成することが困難であったと考えられる。
【0110】
これに対し、前記多層発泡シートにおいては、前述したように、導電層中に、エチレンに由来する構造単位及び極性基を有するモノマーに由来する構造単位を備えたエチレン系共重合体とエチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂との、互いに非相溶である2種の樹脂が含まれている。そのため、前記多層発泡シートにおいて、導電性カーボンはいずれかの相に偏在して存在していると考えられる。その結果、導電性カーボン粒子による導電性ネットワークが形成されやすいとともに、導電性ネットワークが維持されやすいと考えられる。また、導電層に用いられるエチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂の融点Tmとエチレン系共重合体の融点Tmとの差Tm-Tmが、前記範囲内である場合には、共押出後の冷却過程において、導電層が固化するまでの間に延伸が緩和され導電性ネットワークがより再構築されやすいと考えられる。
【0111】
さらに、前記多層発泡シートにおいては、前述したように、表面層中に、少なくとも直鎖状ポリエチレンが含まれている。このように、エチレン系共重合体、エチレン系共重合体以外のポリエチレン系樹脂及び導電性カーボンを含む導電層に対して直鎖状ポリエチレンを含む表面層を積層することにより、表面層におけるピンホールの形成を抑制することができると考えられる。その結果、被包装物に対する汚染性をより低減することができると考えられる。
【0112】
従って、前記製造方法によれば、高い導電性を有するとともに、被包装物に対する汚染性を高度に低減することができる多層発泡シートを共押出により製造することが可能となる。
【実施例0113】
前記多層発泡シート及びその製造方法の実施例を以下に説明する。
【0114】
本例において用いた樹脂を表1に示す。なお、表1の「樹脂の種類」欄に示した記号の意味は以下の通りである。
【0115】
PE-LD:低密度ポリエチレン
iC6-PE-LLD:4-メチル-1-ペンテンを共重合成分として含む直鎖状低密度ポリエチレン
C6-PE-LLD:1-ヘキセンを共重合成分として含む直鎖状低密度ポリエチレン
C4-PE-LLD:1-ブテンを共重合成分として含む直鎖状低密度ポリエチレン
PE-HD:高密度ポリエチレン
EVA:エチレン-酢酸ビニル共重合体
【0116】
【表1】
【0117】
表1の「MFR」欄には、JIS K7210-1(2014)に規定された方法に基づき、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定された各樹脂のメルトフローレイトを記載した。また、表1における各樹脂の融点及び結晶化温度は、前述した方法、つまり、JIS K7121:2012に規定されたプラスチックの転移温度測定方法により測定された値である。
【0118】
表1の「23℃引張強さ」欄、「95℃引張強さ」欄及び「95℃破断伸び」欄には、JIS K7161-1:2014に基づいて測定した、温度23℃における各樹脂の引張強さ、温度95℃における各樹脂の引張強さ及び温度95℃における各樹脂の破断時の伸びを記載した。
【0119】
各樹脂の温度23℃における引張強さは、JIS K7161-1:2014に準拠した方法により測定した。具体的には、まず、厚み0.85±0.03mmの樹脂フィルムを作成し、該フィルムからJIS K6251の4.1(試験片の形状および寸法)に規定するダンベル状1号型の形状を有する試験片を打ち抜くことで試験片を作成した。株式会社エー・アンド・デイ社製万能材料試験機「テンシロン RTC―1250A」を用い、23℃の雰囲気下において試験速度500mm/minで試験片の引張試験を行い、試験片の引張強さを測定した。
【0120】
以上の測定を各樹脂について5回行い、得られた引張強さの算術平均値を樹脂の引張強さとした。
【0121】
各樹脂の温度95℃における引張強さおよび破断伸びの測定は、万能試験機用恒温槽「TLF―III―40―B」を上述の万能材料試験機に取り付け、上記引張試験を行う空間の雰囲気温度を95℃±2℃に調整し、試験片を該雰囲気下に30秒静置した後に引張試験を行うこと以外は同様の方法により行った。なお、破断伸びはダンベル状1号型における標線間距離(具体的には40mm)を規準に算出される値であり、引張試験において実施可能な最大変位(具体的には300mm)に到達しても試験片が破断しなかった場合、表1の「95℃破断伸び」欄に「>750」と記載した。
【0122】
また、表1の「変性率」欄には、エチレン-酢酸ビニル共重合体中の極性基を有するモノマーに由来する構造単位の質量分率(単位:質量%)を記載した。なお、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンには極性基を有するモノマーに由来する構造単位が含まれていないため、これらの樹脂については、表1の「変性率」欄に記号「-」を記載した。
【0123】
本例において用いた導電性カーボンは、高導電性カーボンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「ケッチェンブラックEC300J」)である。本例の導電性カーボンの空隙率は60%であり、一次粒子径は40nmであり、ジブチルフタレート(つまり、DBP)給油量は365mL/100gであり、BET比表面積は800m/gである。なお、表2~表7の「導電性付与剤」欄においては、前述した高導電性カーボンブラックを「CB」と記載した。
【0124】
前述した導電性カーボンの空隙率は、導電性カーボンの嵩密度を導電性カーボンの真密度で除すことにより求められる値である。導電性カーボンの一次粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察により求められる値である。導電性カーボンのDBP吸油量は、ASTM D 2414-79に準じて測定される値である。BET比表面積はASTM D 2414に準拠して求められる値である。
【0125】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の多層発泡シート1は、発泡層2と、発泡層2の両面に積層された導電層3と、各導電層3に積層された表面層4とからなる5層構造を有している。発泡層2は、表2に示す低密度ポリエチレンから構成されている。導電層3は、エチレン系共重合体と、ポリエチレン系樹脂としての低密度ポリエチレンと、導電性付与剤としての導電性カーボンとを含む樹脂組成物から構成されている。導電層3を構成する樹脂組成物の具体的な組成は表2に示す通りである。表面層4は、直鎖状ポリエチレンとしての直鎖状低密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとの混合樹脂から構成されている。表面層4を構成する混合樹脂の具体的な組成は表2に示す通りである。
【0126】
実施例1の多層発泡シートの製造方法は、具体的には以下の通りである。まず、発泡層形成用押出機と、導電層形成用押出機と、表面層形成用押出機と、これらの押出機の吐出口が接続された共押出ダイとを備えた共押出装置を準備する。本例における共押出ダイは、環状の押出口を有する環状ダイである。
【0127】
発泡層形成用溶融物を作製するに当たっては、発泡層形成用押出機に、表2に示すポリエチレン系樹脂と、100質量部のポリエチレン系樹脂に対して1質量部の気泡調整剤とを供給し、押出機内においてこれらを溶融混練した。なお、気泡調整剤としては、クエン酸と重曹との混合物(大日精化工業株式会社製「ファインセルマスターPO217K」)を使用した。「ファインセルマスター」は、大日精化工業株式会社の登録商標である。
【0128】
押出機内で溶融したポリエチレン系樹脂と気泡調整剤との混合物に物理発泡剤を加圧しながら供給し、押出機内でさらに混練し、発泡層形成用溶融物を得た。なお、物理発泡剤としては、ノルマルブタン65質量%とイソブタン35質量%とからなる混合ブタンを使用した。物理発泡剤の配合量は、100質量部のポリエチレン系樹脂に対して8質量部とした。
【0129】
導電層形成用溶融物を作製するに当たっては、導電層形成用押出機に、表2に示す種類及び量のエチレン系共重合体、低密度ポリエチレン及び導電性カーボンを供給するとともに、エチレン系共重合体と低密度ポリエチレンとの合計100質量部に対して25質量部の揮発性可塑剤を供給した。そして、押出機内においてこれらを混練することにより、導電層形成用溶融物を得た。なお、揮発性可塑剤としては、ノルマルブタン65質量%とイソブタン35質量%とからなる混合ブタンを使用した。
【0130】
表面層形成用溶融物を作製するに当たっては、表面層形成用押出機に、表2に示す種類及び量の低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを供給するとともに、低密度ポリエチレンと直鎖状ポリエチレンとの合計100質量部に対して17質量部の揮発性可塑剤を供給した。そして、押出機内においてこれらを混練することにより、表面層形成用溶融物を得た。なお、揮発性可塑剤としては、ノルマルブタン65質量%とイソブタン35質量%とからなる混合ブタンを使用した。
【0131】
このようにして各押出機内で作製した溶融物を同時に共押出ダイに供給し、共押出ダイ内で、発泡層形成用溶融物の両面に導電層形成用溶融物が積層され、かつ、導電層形成用溶融物上に表面層形成用溶融物が積層されるように合流させた。そして、これらの溶融物を共押出ダイの押出口から共押出して発泡させることにより、ポリエチレン系樹脂発泡層の両面に導電層が積層されるとともに、各導電層に表面層が積層された筒状の積層発泡体を作製した。積層発泡体の内側に直径360mmのマンドレルを挿入し、積層発泡体をマンドレルに沿って引き取りつつ積層発泡体を切り開くことにより、実施例1の多層発泡シートを得た。このようにして得られた多層発泡シートの導電層及び表面層は、いずれも非発泡状態であった。
【0132】
(実施例2~4及び実施例10)
これらの実施例の多層発泡シートは、表面層に用いられる直鎖状低密度ポリエチレンの種類を表2及び表4に示すように変更した点以外は、実施例1の多層発泡シートと同様の構成を有している。実施例2~4及び実施例10の多層発泡シートの製造方法は、表面層形成用溶融物中の直鎖状低密度ポリエチレンの種類を表2及び表4に示すように変更した点以外は、実施例1の多層発泡シートの製造方法と同様である。
【0133】
(実施例5、実施例12及び比較例6)
これらの実施例及び比較例6の多層発泡シートは、表面層における直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの配合比率を表3、表4及び表7に示すように変更した点以外は、実施例1の多層発泡シートと同様の構成を有している。実施例5、実施例12及び比較例6の多層発泡シートの製造方法は、表面層形成用溶融物中の直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの配合比率を表3、表4及び表7に示すように変更した点以外は、実施例1の多層発泡シートの製造方法と同様である。
【0134】
(実施例6及び実施例11)
これらの実施例の多層発泡シートは、表面層が表3及び表4に示す直鎖状低密度ポリエチレンのみから構成されている点以外は、実施例1の多層発泡シートと同様の構成を有している。実施例6の多層発泡シートの製造方法は、表面層形成用溶融物に低密度ポリエチレンを配合せず、表3及び表4に示す直鎖状低密度ポリエチレンを用いた点以外は、実施例1の多層発泡シートの製造方法と同様である。
【0135】
(実施例7)
実施例7の多層発泡シートは、表面層に用いられる直鎖状ポリエチレンとして、直鎖状低密度ポリエチレンに替えて高密度ポリエチレンを用いた点、及び高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの配合比率を表3に示すように変更した点以外は、実施例1の多層発泡シートと同様の構成を有している。実施例7の多層発泡シートの製造方法は、表面層形成用溶融物に、直鎖状低密度ポリエチレンに替えて高密度ポリエチレンを配合した点、及び高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの配合比率を表3に示すように変更した点以外は、実施例1の多層発泡シートの製造方法と同様である。
【0136】
(実施例8~9)
これらの実施例の多層発泡シートは、導電層に含まれる低密度ポリエチレンと、エチレン系共重合体と、導電性カーボンとの配合比率を表3及び表4に示すように変更した点以外は、実施例1の多層発泡シートと同様の構成を有している。実施例8~9の多層発泡シートの製造方法は、導電層形成用溶融物中の低密度ポリエチレンと、エチレン系共重合体と、導電性カーボンとの配合比率を表3及び表4に示すように変更した点以外は、実施例1の多層発泡シートの製造方法と同様である。
【0137】
(実施例13~16)
これらの実施例の多層発泡シートは、導電層及び/又は表面層の坪量を表5に示すように変更した点以外は、実施例1の多層発泡シートと同様の構成を有している。実施例13~16の多層発泡シートの製造方法は、多層発泡シートの導電層及び/又は表面層の坪量が表5に示す値となるように製造時の吐出速度を変更した点以外は、実施例1の多層発泡シートの製造方法と同様である。
【0138】
(比較例1)
比較例1の多層発泡シートは、表6に示すように表面層を有しない点以外は実施例1の多層発泡シートと同様の構成を有している。比較例1の多層発泡シートの製造方法は、導電層に表面層を積層しない点以外は実施例1の多層発泡シートの製造方法と同様である。
【0139】
(比較例2)
比較例2の多層発泡シートは、表6に示すように表面層中に直鎖状ポリエチレンが含まれておらず、低密度ポリエチレンのみから構成されている点以外は実施例1の多層発泡シートと同様の構成を有している。比較例2の多層発泡シートの製造方法は、表面層形成用溶融物中に直鎖状ポリエチレンを配合しない点以外は実施例1の多層発泡シートの製造方法と同様である。
【0140】
(比較例3)
比較例3の多層発泡シートは、導電層中の導電性カーボンの配合量及び表面層に用いられる直鎖状低密度ポリエチレンの種類を表6に示すように変更した点以外は実施例1の多層発泡シートと同様の構成を有している。比較例3の多層発泡シートの製造方法は、導電層形成用溶融物への導電性カーボンの配合量及び表面層形成用溶融物に用いる直鎖状低密度ポリエチレンの種類を表6に示すように変更した以外は実施例1の多層発泡シートの製造方法と同様である。
【0141】
(比較例4~5)
これらの比較例の多層発泡シートは、導電層中にエチレン系共重合体が含まれていない点、導電性カーボンの配合量及び表面層に用いられる直鎖状低密度ポリエチレンの種類を表6及び表7に示すように変更した点以外は実施例1の多層発泡シートと同様の構成を有している。比較例4及び比較例5の多層発泡シートの製造方法は、導電層形成用溶融物にエチレン系共重合体を配合せず、導電性カーボンの配合量及び表面層形成用溶融物中に配合する直鎖状低密度ポリエチレンの種類を表6及び表7に示すように変更した点以外は実施例1の多層発泡シートの製造方法と同様である。
【0142】
(参考例)
参考例の多層発泡シートは、導電層中にエチレン系共重合体が含まれていない点、導電性付与剤としての導電性カーボンに替えて高分子型帯電防止剤を配合した点及び表面層が表7に示す低密度ポリエチレンのみから構成されている点以外は実施例1の多層発泡シートと同様の構成を有している。参考例の多層発泡シートの製造方法は、導電層形成用溶融物にエチレン系共重合体を配合せず、導電性カーボンに替えて表7に示す量の高分子型帯電防止剤を配合した点及び表面層形成用溶融物を表7に示す低密度ポリエチレンのみから構成した点以外は実施例1の多層発泡シートの製造方法と同様である。なお、本例において使用した高分子型帯電防止剤は、具体的には、三洋化成工業株式会社製「ぺレクトロン(登録商標)LMP」である。表7においては、高分子型帯電防止剤を「ASP」と記載した。
【0143】
(評価)
表2~表7に示した諸特性の評価方法は以下の通りである。
【0144】
[導電層を構成する樹脂組成物の溶融粘度]
キャピラリーレオメータ(株式会社東洋精機製「キャピログラフ1D」)を用い、実施例、比較例及び参考例における導電層形成用溶融物の溶融粘度を測定した。なお、キャピラリーレオメータのオリフィス径は1mm、オリフィス長は10mmとし、測定温度190℃、せん断速度100sec-1の条件で測定を行った。実施例、比較例及び参考例の導電層形成用溶融物の溶融粘度は表2~表7に示す通りであった。
【0145】
[多層発泡シートの全体厚み]
まず、多層発泡シートを押出方向に垂直な面で切断した。この切断面において、切断面の長手方向(つまり、押出方向及び厚み方向の両方に直角な方向)における間隔が等しくなるようにして10か所の測定位置を設定した。顕微鏡を用いてこれらの測定位置を観察し、各測定位置の厚みを測定した。これらの厚みの算術平均値を多層発泡シートの全体厚みとし、表2~表7に記載した。
【0146】
[多層発泡シートの坪量]
多層発泡シートから一辺25mmの正方形状の試験片を採取し、試験片の質量(単位:g)を測定した。この試験片の質量を単位換算することにより、多層発泡シートの坪量、つまり、多層発泡シート1m当たりの質量(単位:g/m)を算出した。実施例、比較例及び参考例の多層発泡シートの坪量は、表2~表7に示した通りであった。
【0147】
[多層発泡シートの発泡倍率]
前述した方法により得られた多層発泡シートの坪量を多層発泡シートの全体厚みで除した後、単位を換算することにより多層発泡シートの見掛け密度(単位:kg/m)を算出した。そして、多層発泡シートの発泡層を構成するポリエチレン系樹脂の密度を多層発泡シートの見掛け密度で除することにより、発泡倍率を算出した。実施例、比較例及び参考例の多層発泡シートの発泡倍率は、表2~表7に示した通りであった。
【0148】
[導電層及び表面層の坪量]
多層発泡シートの共押出時の片面当たりの導電層の吐出量X1(単位:g/時)、表面層の吐出量X2(単位:g/時)、多層発泡シートの幅W(単位:m)、多層発泡シートの引取速度L(単位:m/時)を用い、下記(1)式及び(2)式に基づいて片面当たりの導電層の坪量及び表面層の坪量(単位:g/m)を算出した。
導電層の坪量=〔X1/(L×W)〕・・・(1)
表面層の坪量=〔X2/(L×W)〕・・・(2)
【0149】
[表面抵抗率]
JIS K6271-1:2015に準拠した測定方法により、多層発泡シートの表面抵抗率を測定した。具体的には、多層発泡シートの幅方向における中央部から一辺100mmの正方形状を呈する試験片を採取した。この試験片における表面層の表面に電極を取り付けた後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中で電極間に1Vの電圧を印加した。そして、電圧を印加してから1分経過した時点での表面抵抗率(単位:Ω)を、多層発泡シートの表面抵抗率とした。なお、表面抵抗率の測定には、日東精工アナリテック株式会社製「ハイレスタUX MCP-HT800」を使用し、電極としては日東精工アナリテック株式会社の二重リング電極「MCP-JB-04」を用いた。実施例、比較例及び参考例の多層発泡シートにおける表面抵抗率は、表2~表7に示した通りであった。
【0150】
[表面抵抗率のばらつき]
JIS K7194:1994に準拠した測定方法により、多層発泡シートの表面層における複数の位置において表面抵抗率を測定した。具体的には、多層発泡シートの幅方向の中央において、多層発泡シートの長手方向(つまり、押出方向)に25mmずつ位置をずらしながら、21か所の測定位置における表面抵抗率を測定した。なお、表面抵抗率の測定には日東精工アナリテック株式会社製「ロレスタGP MCP-T610」を使用し、電極としては日東精工アナリテック株式会社製の4探針法電極「МCP―TPLSP」を用いた。
【0151】
同様の測定を、幅方向における中央から左方に300mm離れた位置及び右方に300mm離れた位置のそれぞれにおいて行い、合計63か所の測定位置における表面抵抗率を測定した。このようにして得られた表面抵抗率の最小値に対する最大値の比が10未満である場合には、表2~表7の「表面抵抗率のばらつき」欄に記号「A」を、10を超え100未満である場合には同欄に記号「B」を、100を超える場合には同欄に記号「C」を記載した。なお、各測定位置における表面抵抗率の測定方法は、前述した方法と同様である。
【0152】
[ピンホール面積率]
多層発泡シートの幅方向の中央において、多層発泡シートの長手方向(つまり、押出方向)に位置をずらしながら走査型電子顕微鏡を用いて表面層の観察を行い、6か所の測定位置の電子顕微鏡像を取得した。なお、観察倍率は100倍とした。同様の操作を、幅方向における中央から左方に300mm離れた位置及び右方に300mm離れた位置のそれぞれにおいて行い、合計18枚の電子顕微鏡像を測定した。
【0153】
次に、画像解析により、このようにして得られた18枚の電子顕微鏡像のそれぞれにおいて、一辺の長さが1000μmである正方形状の測定領域を設定した。そして、各測定領域において、表面層に形成された面積70μm以上の穴をピンホールとみなし、当該測定領域の面積に対するピンホールの占める面積の割合を算出した。
【0154】
以上の操作により得られる、18か所の測定領域におけるピンホールの占める面積の割合の算術平均値を多層発泡シートのピンホール面積率とした。実施例、比較例及び参考例の多層発泡シートのピンホール面積率は表2~表7に示す通りであった。
【0155】
[発塵量]
多層発泡シートから試験片を採取し、クリーンローラーを用いて試験片の表面に付着した異物を大まかに取り除いた。次いで、クリーンローラーにより清掃された表面が内側になるようにして試験片から袋を作製した。この袋に超純水を入れて袋の内表面をすすぎ、内表面に付着した異物を除去した後、袋をグローブボックス内に入れた。
【0156】
グローブボックス内において、袋に200mLの超純水を注ぎ入れた後、周波数100kHzの超音波洗浄を1分間行った。超音波洗浄が完了した後、パーティクルカウンターを用いて袋内の超純水中に含まれる直径2μm以上の異物の数を計測した。このようにして測定された異物の数を袋の内表面の面積で除することにより、単位面積当たりの発塵量(単位:個/cm)を算出した。実施例、比較例及び参考例の多層発泡シートの発塵量は表2~表7に示す通りであった。前述の方法において袋内の超純水中に混入した異物は、具体的には、導電層から脱落した導電性カーボンや、前記ピンホールの辺縁部等から脱離したポリエチレン系樹脂片等であり、発塵量が少ないほど被包装物に対する汚染性が低いことを意味する。
【0157】
[外観]
多層発泡シートの外観を目視観察し、各層の積層状態を評価した。表2~表7の「外観」欄には、多層発泡シートの色調が均一である場合には記号「A」、色調がやや不均一である場合には記号「B」、色調が著しく不均一である場合には記号「C」を記載した。
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
【表5】
【0162】
【表6】
【0163】
【表7】
【0164】
表2~表5に示したように、実施例1~実施例16の多層発泡シートは、発泡層と、前記特定の組成を有する樹脂組成物からなり、発泡層の両面に積層された導電層と、前記特定の樹脂からなり、導電層に積層された表面層とを有している。それ故、実施例1~実施例16の多層発泡シートは、1×10Ω未満の表面抵抗率を有するとともに、多層発泡シートからの発塵量を低減することができる。このような多層発泡シートは、導電性を備えるとともに、被包装物に対する汚染性を高度に低減することができる。また、実施例1~実施例16においては、このような構成を有する発泡層、導電層及び表面層が、共押出により隣り合う層に積層接着されている。それ故、導電層等の機能層を熱ラミネート等により積層する方法と比べて生産性に優れている。
【0165】
これらの実施例の中でも、表3における実施例5と実施例7とは、表面層に含まれる直鎖状ポリエチレンの種類以外は同一の構成を有している。そして、実施例5は、実施例7に比べて表面抵抗率のばらつき及び外観に優れている。従って、実施例5と実施例7との比較から、表面層に含まれる直鎖状ポリエチレンとして直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、表面層を安定して導電層に積層接着し、良好な外観を有する多層発泡シートをより容易に得られるとともに、表面抵抗率のばらつきをより低減可能であることが理解できる。
【0166】
また、表2における実施例1~4と表4における実施例10とは、表面層に含まれる直鎖状ポリエチレンの種類以外は同一の構成を有している。そして、実施例1~3は、実施例4及び実施例10に比べてピンホールの発生が抑制されており、発塵量がより低減されている。従って、実施例1~4及び実施例10の比較から、表面層に含まれる直鎖状ポリエチレンとして所定温度における引張強さがより高く、また、結晶化温度のより高い樹脂を用いることにより、被包装物に対する汚染性をより低減可能であることが理解できる。
【0167】
また、表3における実施例6及び表4における実施例11は、表面層に含まれる直鎖状ポリエチレンの種類以外は同一の構成を有している。そして、実施例6は、実施例11に比べて表面抵抗率のばらつき及び外観に優れている。従って、実施例6と実施例11との比較から、表面層に含まれる直鎖状ポリエチレンのメルトフローレイトがより高い樹脂を用いることにより、表面層を安定して導電層に積層接着し、良好な外観を有する多層発泡シートをより容易に得られるとともに、表面抵抗率のばらつきをより低減可能であることが理解できる。
【0168】
一方、表6に示す比較例1の多層発泡シートは、表面層を有しないため、実施例に比べて発塵量が多かった。
【0169】
比較例2の多層発泡シートは、表面層を有するものの、表面層中に直鎖状ポリエチレンが含まれていないため、実施例に比べて発塵量が多かった。
【0170】
比較例3の多層発泡シートは、導電性カーボンの配合量が少なすぎたため、多層発泡シートに導電性を付与することができなかった。
【0171】
比較例4の多層発泡シートは、導電層中にエチレン系共重合体が配合されていないため、導電性カーボンの配合量を前記特定の範囲内とした場合には多層発泡シートに導電性を付与することができなかった。
【0172】
表7に示すように、比較例5の多層発泡シートにおいては、多層発泡シートに導電性を付与するため比較例4よりも導電性カーボンの配合量を多くした。しかし、導電性カーボンの配合量が多すぎる結果、発塵量が多くなった。
【0173】
比較例6の多層発泡シートは、表面層中の直鎖状ポリエチレンの配合量が少なすぎたため、発塵量が多くなった。
【0174】
参考例は、導電性カーボンを含む導電層に替えて、発泡層と表面層との間に高分子型帯電防止剤を含む帯電防止層を設けた例である。参考例に示したように、発泡層と表面層との間に高分子型帯電防止剤を含む帯電防止層を設ける場合には、表面層に直鎖状ポリエチレンが含まれていなくても発塵量を低減することが可能である。
【0175】
以上、実施例に基づいて本発明にかかる多層発泡シート及びその製造方法の具体的な態様を説明したが、本発明に係る多層発泡シート及びその製造方法の具体的な態様は、実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【符号の説明】
【0176】
1 ポリエチレン系樹脂多層発泡シート
2 ポリエチレン系樹脂発泡層
3 導電層
4 表面層
図1