(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006350
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】救助装置
(51)【国際特許分類】
B63C 9/04 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B63C9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107156
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 征幸
(57)【要約】
【課題】溺れている救助対象の救助が可能である救助装置を提供する。
【解決手段】液体が存在する貯液領域において用いられる救助装置であって、通常時において貯液領域の液面下に予め液没させた状態で配置される浮揚部を含み、貯液領域に液没した救助対象を救助する際に浮揚部によって救助対象を下方から支持して浮揚させる救助用具と、救助対象を救助する際に作動し、浮揚部を液面方向に向かって上昇させる駆動装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が存在する貯液領域に対して常設される救助装置であって、
通常時において前記貯液領域の液面下に予め液没させた状態で配置される浮揚部を含み、前記貯液領域に液没した救助対象を救助する際に前記浮揚部によって前記救助対象を下方から支持して浮揚させる救助用具と、
前記救助対象を救助する際に作動し、前記浮揚部を液面方向に向かって上昇させる駆動装置と、
を備える、
救助装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、更に、前記浮揚部を液底方向に向かって沈下させることが可能である、
請求項1に記載の救助装置。
【請求項3】
前記浮揚部は、液体を透過させる複数の貫通孔が形成されている、
請求項1又は2に記載の救助装置。
【請求項4】
前記浮揚部は、前記救助対象を支持する支持面に防滑処理が施されている、
請求項1又は2に記載の救助装置。
【請求項5】
前記救助対象の溺れを検知する検知センサーと、
前記検知センサーの検知結果に基づいて前記駆動装置を制御するコントロールユニットと、を更に備える、
請求項1又は2に記載の救助装置。
【請求項6】
前記救助対象の溺れの発生を報知する報知部を更に備え、
前記検知センサーが前記救助対象の溺れを検知した際に、前記コントロールユニットが前記報知部を作動させる、
請求項5に記載の救助装置。
【請求項7】
前記駆動装置は前記救助装置の一端側と、その反対側である他端側にそれぞれ取り付けられ、
それぞれの駆動装置を作動させることによって前記浮揚部を上昇させる、
請求項1又は2に記載の救助装置。
【請求項8】
前記駆動装置または前記救助用具が、前記貯液領域に対して直接的に、または間接的に固定されている、
請求項1又は2に記載の救助装置。
【請求項9】
前記検知センサーが、前記救助対象が溺れている状態を脱したことを検知した場合に、前記コントロールユニットが前記駆動装置を停止させる、
請求項5に記載の救助装置。
【請求項10】
前記検知センサーと別個の第2検知センサーを備え、
前記救助対象が溺れている状態を脱したことを前記第2検知センサーによって検知した場合に、前記コントロールユニットが前記駆動装置を停止させる、
請求項5に記載の救助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貯水池等で誤って転落する事故や水辺で遊んでいて溺れてしまう事故が存在することはよく知られている。溺れてしまった場合の救助装置の一態様として、護岸に繋止し浮設されることで、自力にて脱出することを援助する装置等がある(例えば特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の技術は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は溺れている救助対象の救助が可能である救助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示では、救助対象を救助する際に前記浮揚部によって前記救助対象を下方から支持して浮揚させる救助用具と、前記救助対象を救助する際に作動し、前記浮揚部を液面方向に向かって上昇させる駆動装置と、を備える。
【0006】
具体的には、液体が存在する貯液領域に対して常設される救助装置であって、通常時において前記貯液領域の液面下に予め液没させた状態で配置される浮揚部を含み、前記貯液領域に液没した救助対象を救助する際に前記浮揚部によって前記救助対象を下方から支持して浮揚させる救助用具と、前記救助対象を救助する際に作動し、前記浮揚部を液面方向に向かって上昇させる駆動装置と、を備える。
【0007】
前記駆動装置は、更に、前記浮揚部を液底方向に向かって沈下させることが可能でもよい。
【0008】
前記浮揚部は、液体を透過させる複数の貫通孔が形成されていてもよい。
【0009】
前記浮揚部は、前記救助対象を支持する支持面に防滑処理が施されていてもよい。
【0010】
前記救助対象の溺れを検知する検知センサーと、前記検知センサーの検知結果に基づいて前記駆動装置を制御するコントロールユニットと、を更に備えていてもよい。
【0011】
前記救助対象の溺れの発生を報知する報知部を更に備え、前記検知センサーが前記救助対象の溺れを検知した際に、前記コントロールユニットが前記報知部を作動させてもよい。
【0012】
前記駆動装置は前記救助装置の一端側と、その反対側の他端側にそれぞれ取り付けられており、それぞれの駆動装置を作動させて前記浮揚部を上昇させてもよい。
【0013】
前記駆動装置または前記救助用具が、前記貯液領域に対して直接的に、または間接的に
固定されていてもよい。
【0014】
前記検知センサーが、前記救助対象が溺れている状態を脱したことを検知した場合に、前記コントロールユニットが前記駆動装置を停止させてもよい。
【0015】
前記検知センサーと別個の第2検知センサーを備え、前記救助対象が溺れている状態を脱したことを前記第2検知センサーによって検知した場合に、前記コントロールユニットが前記駆動装置を停止させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、液中に溺れている救助対象を迅速に救助可能な救助装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る救助装置の構造を示す側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る救助用具を説明する斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の変形例1に係る救助装置の構造を示す側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の変形例2に係る救助装置の構造を示す側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係る救助装置の構造を示す側面図である。
【
図6】
図6は、実施形態2の変形例1に係る救助装置の構造を示す側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態2の変形例2に係る救助装置の構造を示す側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態2の変形例3に係る救助装置の構造を示す側面図である。
【
図9】
図9は、自動で溺者を救助する際の装置図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る救助装置について説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0019】
本開示の技術である救助装置は、液体が存在する所定の貯液領域に液没した救助対象を救助するための装置である。ここでいう液体は特に限定されないが、典型的には水である。本開示に係る救助装置は、水や他の液体が貯留された浴槽や薬液槽、プール、池、釣り堀等といった種々の貯液領域に適用することができる。勿論、これら救助装置の適用対象は例示的なものであり、これらに限定されない。以下に示す各実施形態では、例示的に、救助装置を浴槽に適用する例を説明する。また、救助装置は貯液領域に対して常設される。救助装置が貯液領域に対して常設されるとは、救助装置が、貯液領域において、救助対象の有無に関わりなく、貯液領域に対して常に設置されているという意味である。
【0020】
詳しくは後述するが、本開示に係る救助装置は、通常時において貯液領域の液面下(液中)に予め液没させた状態で配置される浮揚部を含み、貯液領域に液没した救助対象を救助する際に浮揚部によって救助対象を下方から支持して浮揚させる救助用具と、救助対象を救助する際に作動し、浮揚部を液面方向に向かって上昇させる駆動装置と、を備える。救助対象は、救助装置が適用される貯液領域に貯留されている液体(典型的には、水)に液没することで溺れている者、或いは、溺れる虞がある者を指す。なお、救助装置によって救助する救助対象は、貯液領域に貯留されている液体に全身が液没している必要は無く、身体の一部が液没した状態の救助対象を救助装置によって救助することができるのは勿論である。
【0021】
また、救助装置の浮揚部は、通常時において貯液領域の液面下に予め液没させた状態で配置されるマット状部材や、網等を好適に用いることができるが、救助対象を救助する際に救助対象を下方から支持して浮揚させることが可能な限りにおいて、その形態は特に限定されない。また、救助装置において、浮揚部が救助用具の一部を構成していてもよいし、浮揚部が救助用具の全体を構成していてもよい。前者の態様の場合、救助用具は、浮揚部の他、ロープやワイヤー等の付属部品を有していてもよい。また、救助装置の駆動装置は、浮揚部を動作させるための動力源である。駆動装置は、救助対象を救助する際に、浮揚部を上昇させることができる限りにおいて、その駆動方式は特に限定されない。
【0022】
<実施形態1>
[装置構成]
図1は実施形態1に係る救助装置1Aの概略構造を示す図である。
図1は、救助装置1Aを側方から眺めた状態の概略構造を示している。以下、
図1を用いて本実施形態に係る救助装置1Aについて説明する。本実施形態においては、浴槽2に救助装置1Aを常設する例を説明する。
【0023】
図1に示す符号2Aは、浴槽2の内側に形成される貯液領域であり、貯液領域2Aに湯水が貯められている。浴槽2は、底壁21と、当該底壁21から立設する複数の側壁22を有している。
図1に示す22A,22Bは、一対の対向する側壁である。本実施形態に係る救助装置1Aは、救助用具10と巻き上げ装置100を備えている。救助用具10は、浮揚部4、牽引用ロープ5、固定用ロープ6等を含んでいる。
【0024】
図2は、実施形態1に係る救助用具10の斜視図である。救助用具10は浮揚部4、牽引用ロープ5、固定用ロープ6等を含んでいる。浮揚部4の一端側には、牽引用ロープ5の一端が接続されている。また、浮揚部4の他端側には固定用ロープ6の一端が接続されている。更に、浮揚部4は、救助対象3を救助する際に、その上面に形成された支持面41によって救助対象3を支持可能な部材である。浮揚部4は、救助対象3を支持するのに適した大きさ、形状を有し、
図2に示す例では概略矩形のマット形状を有している。本実施形態において、浮揚部4は、多数(複数)の貫通孔42が形成された多孔構造を有している。貫通孔42は、浮揚部4を部材厚さ方向に貫通している。そのため、浮揚部4は、各貫通孔42を通じて貯液領域2Aに貯留されている湯水を透過させることができる。勿論、
図2から明らかなように、浮揚部4の貫通孔42は、支持面41による救助対象3の支持が阻害されない大きさを有している。また、本実施形態において浮揚部4は可撓性を有する材料によって形成されている。例えば、本実施形態において、浮揚部4はシリコーン製のゴムによって形成されている。但し、本実施形態において、浮揚部4の材質は特に限定されず、可撓性を有していなくてもよい。また、本実施形態では、救助対象3を人間とした例を示している。但し、救助対象3は人間に限定されるものではなく、人間以外の動物も含まれ、用途によって適宜変更することができる。例えば、人間以外の動物を救助対象として、本開示に係る救助装置を屋外で使用してもよい。
【0025】
図1においてに示すように、牽引用ロープ5は、側壁22Aに設置された巻き上げ装置100によって牽引されるように構成されている。一方、固定用ロープ6の他端側は、巻き上げ装置100が設置されている側壁22Aと反対側に位置する側壁22Bの固定部7に固定されている。固定部7は、例えば、固定用ロープ6を係留可能な丸環、カラビナ、フック等といった適宜の係留部材であってもよい。牽引用ロープ5及び固定用ロープ6は、例えば、ゴムベルト、布ベルト、金属ワイヤー等といった適宜の部材によって形成することができるが、その材料や形態は特に限定されない。なお、牽引用ロープ5及び固定用ロープ6に金属ワイヤーを用いる場合には、当該金属ワイヤーを保護チューブ(カバー)等で被覆するようにしてもよい。また、本実施形態では固定部7を側壁22Bに固定しているが、これに限定するものではなく、固定部7は側壁22B以外の場所や、または側壁
22Bに固定された別部材を介して固定する態様に適宜固定してもよい。
【0026】
また、
図1に示す例では、固定用ロープ6を介して浮揚部4の他端側を浴槽2における側壁22Bに固定しているが、浮揚部4の他端側を側壁22Bに対して溶着やボルト止め等を行い、直接接合してもよい。なお、救助用具10の点検整備の観点からは、固定部7と固定用ロープ6、固定用ロープ6及び牽引用ロープ5のそれぞれと浮揚部4は、それぞれ着脱自在とすることが望ましい。特に、浮揚部4に対して各ロープ5,6をそれぞれ着脱自在にすることで、浮揚部4を定期的に洗浄することができ、当該浮揚部4を清潔に維持することができる。
【0027】
巻き上げ装置100は、例えば、電動ウィンチや、手動の巻き取り装置等であってもよい。但し、巻き上げ装置100は、作動時に牽引用ロープ5を巻き取ることができればよく、上記態様は一例である。なお、
図1に示す例では、側壁22Aの上縁に巻き上げ装置100が設置されているが、巻き上げ装置100の設置態様は特に限定されない。例えば、巻き上げ装置100が、側壁22Aの内部に設置されていてもよい。この場合、側壁22Aに牽引用ロープ5を挿通させる挿通口を形成してもよい。このように、巻き上げ装置100を埋込式にすることで、救助装置1Aをコンパクト化することができる。また、別の一態様として、巻き上げ装置100を浴室の壁内に埋設してもよい。いずれの場合も、巻き上げ装置100は救助対象の重量を支えることができるように、丈夫なところに固定される。また、固定用ロープ6を固定する固定部も十分強度のある個所に固定される。この状態で使用すれば、作動時の振動で救助装置全体の揺れを低減でき、救助対象をより確実に救助可能となる。
【0028】
なお、本実施形態において、巻き上げ装置100は、牽引用ロープ5を巻き取る巻取り方向と、牽引用ロープ5を送り出す(引き出す)送り出し方向の双方に作動することが可能であってもよい。巻き上げ装置100を巻取り方向に作動させると、浮揚部4を液面方向に向かって上昇させることができる。一方、巻き上げ装置100を送り出し方向に作動させると、浮揚部4を液底方向に向かって下降(沈下)させることができる。
【0029】
[動作]
次に、
図1を参照しながら、救助装置1Aの動作を説明する。
図1に示すように、救助装置1Aを動作させる前の通常時においては、救助用具10の浮揚部4は、貯液領域2Aの液面下(液中)に液没(沈下)した状態で配置されている。このように、通常時において浮揚部4が配置されている位置を初期深さと呼ぶ。
図1においては、初期深さに配置された浮揚部4の姿を鎖線で示している。通常時は、初期深さに浮揚部4を配置した状態で、例えば利用者は浴槽2内の貯液領域2Aに貯留されている湯水に浸かることができる。つまり、救助装置1Aの浮揚部4は、通常時においては、利用者が浴槽2に貯留されている湯水に十分に浸かることができるように上述した初期深さが設定されている。なお、
図1に示す例では、初期深さに配置された浮揚部4(鎖線)は、貯液領域2Aの底部近傍の深さに沈められているが、浮揚部4が底壁21と接するように液底に配置されてもよい。このように、通常時において浴槽2内に配置される浮揚部4の初期深さは、適宜の深さに設定することができる。また、本実施形態における浮揚部4を底壁21に接触させて使用する場合は、浮揚部4に可撓性があると、浴槽2における底壁21の形状がたとえ平坦でなくても、底壁21の形状に沿うように浮揚部4を配置することができる。
【0030】
次に、何らかの要因によって利用者が溺れた際には、巻き上げ装置100を作動させ、溺れた状態の利用者、すなわち救助対象3を救助する。具体的には、巻き上げ装置100を巻取り方向に作動させる。その結果、巻き上げ装置100によって牽引用ロープ5が巻き取られる。ここで、
図1に示すように、浮揚部4の一端に牽引用ロープ5が接続され、浮揚部4の他端に接続された固定用ロープ6は側壁22Bの固定部7に固定されている。
そのため、上記のように巻き上げ装置100が牽引用ロープ5を巻き取ることで、浮揚部4が上述した初期深さから液面方向に向かって上昇する。これにより、浮揚部4によって救助対象3を下方から支持面41によって支持した状態で液面方向へ向かって救助対象3を浮揚させることができる。これにより、貯液領域2Aにおいて溺れた救助対象3を救助することができる。
【0031】
図1において、救助対象3の救助が完了した状態の救助用具10を実線で示している。
図1に示す例では、救助対象3の全体が液面上に露出した状態となっているが、これには限られない。例えば、救助対象3を救助する際、少なくとも救助対象3の顔を液面上に露出させることができる程度まで浮揚部4を上昇させればよい。
【0032】
[作用・効果]
以上のように、本実施形態に係る救助装置1Aによれば、救助対象3を救助する際に浮揚部4を巻き上げ装置100によって上昇させることにより、液没状態の救助対象3を液面方向へ浮揚させることができる。その結果、貯液領域2Aで溺れている救助対象3を迅速に救助することが可能となる。また、本実施形態では、巻き上げ装置100が貯液領域2Aを画定する部材である側壁22Aに常設されており、救助装置を他所から運搬する必要がないため、救助対象3を発見してから救助までの時間を短縮できる。
【0033】
また、本実施形態に係る救助用具10によれば、浮揚部4の一端に牽引用ロープ5が接続され、浮揚部4の他端に固定用ロープ6が接続されているため、浮揚部4の支持面41を上向きに保持しながら救助対象3を救助し易くなる。また、上記のように浮揚部4は、多数(複数)の貫通孔42が形成された多孔構造を有しているため、巻き上げ装置100による牽引用ロープ5の巻上げ時に、支持面41側の湯水を、貫通孔42を通じて浮揚部4の背面43側に通水しながら浮揚部4を上昇させることができる。これによれば、巻き上げ装置100によって浮揚部4を動作させる際に、浮揚部4が湯水の抵抗を受けにくくすることができ、浮揚部4の円滑な動作が可能となる。また、本実施形態において浮揚部4が可撓性を有していると、必ずしも牽引用ロープ5及び固定用ロープ6が設けられている必要は無く、これらを省略する態様を採用することもできる。この場合、浮揚部4の一端側を巻き上げ装置100によって直接巻き取る態様とし、浮揚部4の他端側を浴槽2に直接固定してもよい。この態様では、浮揚部4に牽引用ロープ5及び固定用ロープ6の機能を兼ねさせることができる。
【0034】
また、本実施形態に係る巻き上げ装置100は、送り出し方向にも作動させることができるため、救助対象3の救助が完了後、浴槽2を通常使用する際に再び浮揚部4を液底方向に向かって下降(沈下)させることができ、救助装置1Aを繰り返し使用することができる。
【0035】
本実施形態において、浮揚部4を貯液領域2Aに液没配置する初期深さは特に限定されない。また、上記の通り、救助装置1Aは浴槽2の他、薬液槽、プール、池、釣り堀、温泉等といった種々の貯液領域に適用することができるが、池や釣り堀等に救助装置1Aを適用する場合には浮揚部4における貫通孔42の大きさを、魚等が通り抜けできるように設定するとよい。また、貯液領域2A内で液体の流入や排出などで流れや循環が生じている個所でも使用可能である。また、本実施形態において、浮揚部4の形態は特に限定されず、例えば、網状の形態を呈していてもよい。また、浮揚部4は必ずしも可撓性を有している必要は無く、金属、カーボン、樹脂等といった硬質材料によって形成されていてもよい。また、浮揚部4は、救助対象3を支持する支持面41に防滑処理を施してもよい。防滑処理を行うことで、救助装置1Aの作動時に、浮揚部4から救助対象3の落下を防止する効果を得られる。
【0036】
[実施形態1の変形例1]
[装置構成]
図3は、実施形態1の変形例1に係る救助装置1A1の概略構造を示す図である。
図3において、救助装置1A1を側方から眺めた状態の概略構造を示している。以下、
図3を用いて実施形態1の変形例1に係る救助装置1A1について説明する。なお、本変形例の説明では、
図1で説明した救助装置1Aとの相違点を中心に説明する。また、救助装置1A1を構成する部材のうち、救助装置1Aと共通する部材については同一の符号を付すことで、詳細な説明は割愛する。
【0037】
図3に示すように、変形例1に係る救助装置1A1は、二つの巻き上げ装置100を備え、救助対象3を救助する際、二つの巻き上げ装置100を用いて救助用具10の浮揚部4を上昇させることができる構成となっている。二つの巻き上げ装置100の設置態様は特に限定されないが、
図3に示す例では、一対の対向する側壁22A,22Bにそれぞれ巻き上げ装置100が設置されている。また、本変形例においては、一方の巻き上げ装置100から延びる牽引用ロープ5が浮揚部4の一端側に接続され、他方の巻き上げ装置100から延びる牽引用ロープ5が浮揚部4の他端側に接続されている。二つの巻き上げ装置100の動きを、各々独立にコントロールしてもよい。
【0038】
[動作]
上記のように構成される救助装置1A1は、貯液領域2Aで溺れた救助対象3を救助する際、二つの巻き上げ装置100を協働させる。すなわち、二つの巻き上げ装置100を同時に作動させることによって、浮揚部4を上昇させることができる。なお、
図3に示す態様は一例であり、救助装置1A1は3つ以上の巻き上げ装置100を備えていてもよい。
【0039】
[実施形態1の変形例2]
[装置構成]
図4は、実施形態1の変形例2に係る救助装置1A2の概略構造を示す図である。
図4において、救助装置1A2を側方から眺めた状態の概略構造を示している。以下、
図4を用いて実施形態1の変形例2に係る救助装置1A2について説明する。なお、本変形例の説明では、
図1及び3等で説明した救助装置1A,1A1との相違点を中心に説明する。また、救助装置1A2を構成する部材のうち、救助装置1A,1A1と共通する部材については同一の符号を付すことで、詳細な説明は割愛する。
【0040】
変形例2に係る救助装置1A2では、貯液領域2Aを画定する浴槽2から巻き上げ装置100が離れた位置に設置されている。
図4に示す例では、浴室の天井(裏側)に巻き上げ装置100が埋め込まれている。但し、
図4に示す巻き上げ装置100の設置態様は一例であり、これに限定されるものではない。また、本変形例においては、浮揚部4が牽引用ロープ5及び固定用ロープ6の機能を兼ねるマット状になっている。天井に埋め込まれた巻き上げ装置100から浴槽2へ延びる浮揚部4は、貯液領域2Aを画定する浴槽2の底壁21及び側壁22に沿って、貯液領域2Aの液面下(液中)に液没(沈下)した状態で配置されている。また、浮揚部4の一方は巻き上げ装置100に巻かれており、他端側は側壁22Bの貯液領域2Aと接する側面に設置された固定部7に接続されている。
【0041】
[動作]
上記のように構成される救助装置1A2は、貯液領域2Aで溺れた救助対象3を救助する際、巻き上げ装置100を作動させることによって、浮揚部4を巻き上げる。その際、救助対象3の背面を滑りながら、浮揚部4が天井に設置された巻き上げ装置100へ巻き取られていくことで、支持面41上の救助対象3を上昇させることができる。
【0042】
<実施形態2>
[装置構成]
図5は、実施形態2に係る救助装置1Bの概略構造を示す図である。
図5において、救助装置1Bを側方から眺めた状態の概略構造を示している。以下、
図5を用いて実施形態2に係る救助装置1Bついて説明する。なお、実施形態2の説明では、実施形態1に係る救助装置1Aと共通する部材については、同一の符号を付すことで詳細な説明は割愛する。
【0043】
実施形態2に係る救助装置1Bは、浮揚部4(救助用具10)と、当該浮揚部4を動作させるリブ式昇降装置200を備えている。本実施形態では、浮揚部4が救助用具10の全体を形成している。
【0044】
また、リブ式昇降装置200は、複数のリブ201と、当該リブ201を駆動する駆動装置(図示せず)を備えている。
図5に示す例は、リブ式昇降装置200は4枚のリブ201を有している。但し、リブ式昇降装置200で使用される枚数及びリブの態様は一例であり、限定されるものではない。リブ式昇降装置200におけるリブ201の一端201Aは、貯液領域2Aを形成する浴槽2における底壁21に対して回動可能に固定されている。一方、リブ201の他端201Bは、浮揚部4の背面43に対して摺動(スライド)可能に装着されている。
【0045】
本実施形態においては、駆動装置(図示せず)によってリブ201を、
図5の鎖線で示す倒伏姿勢と、実線で示す起立姿勢とに切り替え可能であり、リブ201の姿勢を切り替えることによって浮揚部4を昇降させることができる。リブ201は、倒伏姿勢(鎖線)のときに底壁21(液底)に対して倒伏しており、この状態のときには浮揚部4が貯液領域2Aの液面下に液没した状態で配置される。一方、リブ201が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられると、リブ201の姿勢変化に伴って浮揚部4を液面方向に向かって上昇させることができる。
【0046】
[動作]
本実施形態に係る救助装置1Bは、通常時において、リブ式昇降装置200のリブ201が倒伏姿勢に維持されることで、浮揚部4が貯液領域2Aの初期深さに液没した状態で配置される。一方、貯液領域2Aで溺れた救助対象3を救助する際には、リブ式昇降装置200を作動させ、リブ201を倒伏姿勢から起立姿勢に切り替える。その結果、浮揚部4が液面方向に向かって上昇し、浮揚部4の支持面41によって下方から支持した救助対象3を浮揚させることができる。その結果、救助対象3を迅速に救助することができる。
【0047】
[実施形態2の変形例1]
[装置構成]
図6は、実施形態2の変形例1に係る救助装置1B1の概略構造を示す図である。
図6において、救助装置1B1を側方から眺めた状態の概略構造を示している。以下、
図6を用いて実施形態2の変形例1に係る救助装置1B1について説明する。救助装置1B1の説明に当たり、
図5で説明した救助装置1Bと共通する部材については同一の符号を付すと共に、救助装置1Bとの相違点を中心に説明する。
【0048】
図6に示す変形例1において、救助装置1B1は、浮揚部4と、浮揚部4を昇降させる駆動装置としてのばね式昇降装置210を備えている。更に、ばね式昇降装置210は、ばね211、係止機構212を有している。
図6に示すように、ばね211は、例えば浮揚部4の背面43と底壁21(液底)との間に介在するように設けられている。
図6に示す例において、ばね211はトーションスプリング形態を有しており、その第1端211Aは浴槽2における底壁21(液底)に固定されている。一方、ばね211の第2端21
1Bは自由端となっており、その弾発力を浮揚部4の背面43に作用させることによって、浮揚部4を上方に向かって付勢することができる。また、貯液領域2Aには、ばね211の第2端211Bを係止するための係止機構212が設けられている。
図6に示す例では、係止機構212は、浴槽2における底壁21(液底)に設置されている。ばね211の第2端211Bが係止機構212によって係止された状態では、ばね211が圧縮状態で保持される。係止機構212は、例えば、ばね211の第2端211Bを係止するロック爪を有し、ソレノイド(図示せず)を作動させることによってロック爪にばね211の係止を解除可能である。但し、ばね式昇降装置210で用いられる態様は一例であり、これに限定されるものではない。
【0049】
[動作]
本実施形態に係る救助装置1B1は、通常時において、ばね式昇降装置210のばね211が係止機構212によって係止されている。この状態では、ばね211による浮揚部4の上方への移動が規制される結果、浮揚部4が貯液領域2Aにおける初期深さに液没した状態で配置される。一方、浴槽2で溺れた救助対象3を救助する際には、ばね式昇降装置210の係止機構212を作動させる。これにより、係止機構212によるばね211のロック状態が解除され、ばね211の弾発力によって浮揚部4が液面方向へ向かって押し上げられる。その結果、浮揚部4によって救助対象3を浮揚させ、救助対象3を救助することができる。なお、ばね式昇降装置210は、係止機構212によるばね211のロック状態を解除した際、ばね211が急激に開放されることを緩和するダンパーを更に有していてもよい。
【0050】
[実施形態2の変形例2]
[装置構成]
図7は、実施形態2の変形例2に係る救助装置の概略構造を示す図である。
図7において救助装置1B2を側方から眺めた状態の概略構造を示している。以下、
図7を用いて実施形態2の変形例2に係る救助装置1B2について説明する。救助装置1B2の説明に当たり、
図5で説明した救助装置1Bと共通する部材については同一の符号を付すと共に、救助装置1Bとの相違点を中心に説明する。
【0051】
図7に示す変形例2において、救助装置1B2は、浮揚部4と、浮揚部4を昇降させる駆動装置としてシリンダー昇降装置220を備えている。更に、シリンダー昇降装置220は、エアシリンダー221、当て板222、電動コンプレッサー(図示せず)を有している。
図7に示す例において、エアシリンダー221は貯液領域2A内に設置されており、シリンダー221Aと伸縮自在なロッド221Bで構成されている。エアシリンダー221に含まれるロッド221Bは、電動コンプレッサーによって圧縮空気がシリンダー221A内に供給されることで伸縮自在に駆動できる。但し、シリンダー昇降装置220の態様は一例であり、これに限定されるものではない。
【0052】
当て板222は、浮揚部4の背面43と底壁21(液底)との間に介在し、その第1端222Aは浴槽2における底壁21(液底)に蝶着されている。一方、当て板222の第2端222Bは、浮揚部4の背面43に対して摺動可能に当接している。本実施形態では当て板222の第2端222Bの断面形状が丸くなっており、浮揚部4の背面43に設けられたガイド用レール(図示せず)に沿って第2端222Bが摺動可能になっている。当て板222における第1端222Aの蝶着部分から第2端222B方向にやや移動した位置に、エアシリンダー221のロッド221Bが接触し持ち上げる構造である。この構造により第1端222Aの蝶着部分を支点に、第2端222Bが持ち上がる構造となっている。更に、
図7に示す当て板222は強化プラスチック素材でできており、浴槽2内に収まる大きさの概略矩形を有している。但し、当て板222での態様は一例であり、これに限定されるものではない。
【0053】
[動作]
通常時においては、シリンダー昇降装置220のエアシリンダー221におけるロッド221Bが縮められた短縮状態となっている。この状態においては、
図7の鎖線で示されるように、当て板222が底壁21(液底)に対して倒伏した倒伏姿勢を呈し、浮揚部4が当て板222上に積層された状態で、浴槽2における底壁21(液底)近傍の初期深さに液没している。救助対象3が溺れた際には、電動コンプレッサーによってエアシリンダー221に圧縮空気を供給し、エアシリンダー221のロッド221Bを短縮状態から伸長させる。その結果、エアシリンダー221のロッド221Bによって当て板222が押動され、第1端222Aを起点として起立する方向へ回動するようになる。そして、このような当て板222の起立動作に伴い、当て板222の第2端222Bが浮揚部4の背面43に接触しながら当該浮揚部4を押し上げることができる。つまり、シリンダー昇降装置220によって浮揚部4を初期深さから液面方向へ押し上げ、液中から救助対象3を浮揚させることで当該救助対象3を救助することができる。なお、
図7に示したシリンダー昇降装置220の構成例では、当て板222を介して浮揚部4を動作させる構成を採用しているが、これには限定されない。例えば、エアシリンダー221のロッド221Bによって浮揚部4を直接動作させてもよい。
【0054】
[実施形態2の変形例3]
[装置構成]
図8は、実施形態2の変形例3に係る救助装置の構造を示す側面図である。以下、
図8を用いて実施形態2に係る救助装置の変形例3である救助装置1B3について説明する。変形例の説明では、
図5で説明した救助装置1Bとの相違点を中心に説明し、救助装置1Bと同様の点については詳細な説明は割愛する。変形例3では、回転運動を往復動に変換する昇降装置(以下、単に「往復装置」という)230によって駆動装置を構成する一例を説明する。
【0055】
往復装置230は、モーター231、ギア232、一対のアームを含むアーム組立体233,レール234等を含んでいる。本変形例では、モーター231は浴槽2における底壁21(液底)に固定されている。ギア232は、モーター231に付属するギアと噛合し使用される。また、モーター231とギア232は、回転運動を往復動に変換できるギア比で用いる。アーム組立体233は、長尺なアーム233Aとアーム233Bを含み、アーム233Aとアーム233Bが交差するようにこれらの長手方向中央部同士を枢着した組立体である。アーム組立体233は、枢着部233Cを中心として枢動可能である。アーム組立体233は、アーム233Aの第1端233A1がギア232の中心と固着されており、アーム233Bの第1端233B1は浴槽2の底壁21に形成されたスライド用レール21Cに沿って摺動可能となっている。また、アーム233Aの第2端233A2、及びアーム233Bの第2端233B2は、浮揚部4の背面43に設置されるレール234に対して摺動可能に固定されている。但し、往復装置230で使用される態様は一例であり、限定されるものではない。
【0056】
[動作]
本変形例に係る救助装置1B3において、救助対象3を救助する際に往復装置230を作動させる。すなわち、モーター231を稼働させ、ギア232を回転駆動する。その結果、ギア232に固着されたアーム233Aが起立していく。アーム組立体233におけるアーム233Aとアーム233Bは、枢着部233Cで枢着されており、且つ、アーム233Bの第1端233B1がスライド用レール21Cに沿って摺動可能となっている。そのため、アーム233Aの起立動作に連動して、アーム233Aに対してアーム233Bが枢着部233Cを中心として枢動してゆく。上記のようにアーム組立体233を動作させることにより、アーム組立体233によって浮揚部4の背面43を押し上げながら上
昇させることができる。その結果、浮揚部4によって救助対象3を液面方向に向かって浮揚させ、救助することができる。なお、本変形例においては、アーム233Aの第2端233A2及びアーム233Bの第2端233B2が浮揚部4のレール234に対して摺動可能となっているため、往復装置230の作動時に、浮揚部4を液面と概ね平行な姿勢に保持しながら上昇させることができる。
【0057】
なお、上述した各実施形態に係る救助装置においては、駆動装置を作動させる動力源に電気エネルギーを用いる態様を例に説明したが、これには限定されず、例えば人力(手動)によって駆動装置を作動させてもよい。
【0058】
上述した各実施形態に限らず、本開示の救助装置はその一部あるいは全体が貯液領域に対して直接的に、あるいは間接的に固定されており、貯液領域において、救助対象の有無に関わりなく、貯液領域に対して常設されている。この際の直接的に固定される態様とは、救助装置1A、1A1、1B、1B1に例示される、貯液領域を画定する部材に接触し、駆動装置あるいは救助用具の固定部が固定されている状態を示している。また、間接的に固定される態様とは、救助装置1A2に例示される、貯液領域を画定する部材とは直接接触せずに駆動装置あるいは救助用具の固定部が固定されている状態を示している。但し、これら各実施形態における固定態様は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0059】
上述した各実施形態や、各実施形態を変形した形態において、駆動装置や救助用具を、貯液領域の液面に浮く筏状の物体等に固定し使用することで、貯液領域の一部に限定し救助装置を使用できる態様としてもよい。
【0060】
<自動化装置>
次に、上述までの各救助装置について、救助対象3の溺れを検知して自動で駆動装置を作動させるための自動化装置について説明する。ここでは、実施形態1で説明した救助装置1Aに自動化装置を適用する例を説明するが、実施形態2に係る救助装置1Bに適用してもよい。
【0061】
[装置構成]
図9は、自動化装置90を説明する概略構成図である。
図9に示す自動化装置90は、検知センサー91、コントロールユニット92、警告灯93、音声通知サイレン94、モニター(ディスプレイ装置)95を含んで構成される。検知センサー91は、救助対象3の溺れを検知するためのセンサーである。コントロールユニット92は、検知センサー91からの信号を受信し、検知センサー91の検知結果に基づいて、救助対象3が貯液領域2Aで溺れているか否かを判断する制御コンピュータである。コントロールユニット92は、巻き上げ装置100(駆動装置)、警告灯93、音声通知サイレン94等と有線又は無線を介して接続されている。警告灯93や音声通知サイレン94、モニター95は、貯液領域2Aでの溺れ等、救助対象3に異常が発生した際に周囲へ異常を知らせるための報知装置(報知部)である。
【0062】
[動作]
コントロールユニット92は、検知センサー91の検知結果に基づいて、救助対象3が貯液領域2Aで溺れているか否かを判断する。コントロールユニット92は、救助対象3が貯液領域2Aで溺れていると判断すると、救助装置1Aの巻き上げ装置100(駆動装置)を作動させ、浮揚部4を液面方向に上昇させることによって救助対象3を救助する。その際、コントロールユニット92は、警告灯93や音声通知サイレン94等を作動させ、救助対象3の溺れを周囲に報知する。また、コントロールユニット92は、救助対象3が溺れた旨の表示をモニター95の画面に併せて表示させる。その際、モニター95のスピーカーから、救助対象3が溺れた旨を音声出力させてもよい。なお、報知部としての警
告灯93、音声通知サイレン94、モニター95等の設置場所は特に限定されず、浴室とは別の場所(例えば、他の部屋)に設置されていてもよい。また、コントロールユニット92は、例えばインターネットに接続されていてもよく、救助対象3に溺れが発生した際には、その情報を特定のユーザー端末に発信してもよい。なお、コントロールユニット92は、検知センサー91から取得する検知信号に対し適宜のアルゴリズムでデータ処理を行うことで、貯液領域2Aにおいて救助対象3が溺れているか否かを判定することができる。
【0063】
更に、コントロールユニット92は、巻き上げ装置100(駆動装置)の作動開始後、検知センサー91の検知結果に基づいて、救助対象3が溺れている状態を脱したことを判断するようにしてもよい。救助対象3の頭部が貯液領域2Aの液面から浮上する等救助対象3が溺れている状態から脱した場合、コントロールユニット92は救助装置1Aの巻き上げ装置100(駆動装置)を停止させてもよい。また、巻き上げ装置100(駆動装置)は手動で作動と停止を行えてもよい。また、救助対象3を貯液領域2Aから十分に浮揚したことを判断するための第2検知センサーを、検知センサー91とは別個に設けてもよい。この態様の場合、巻き上げ装置100(駆動装置)の作動開始後、救助対象3が溺れている状態を脱したことを第2検知センサーによって検知した場合に、コントロールユニット92が巻き上げ装置100(駆動装置)を停止させることとなる。なお、コントロールユニット92は、検知センサー91や第2検知センサーから取得する検知信号に対し適宜のアルゴリズムでデータ処理を行うことで、救助対象3が溺れている状態から脱したか否か(すなわち、救助対象3の救助が完了したか否か)を判定することができる。更に、
図3に示す救助装置1A1に例示される巻き上げ装置100を2つ使用する形態の場合、複数の検知センサー91を用いて救助対象3の向き(頭部の位置)を判断したうえで、救助対象3の頭部の位置する側の巻き上げ装置100を優先的に作動させてもよい。
【0064】
なお、自動化装置90は、警告灯93、音声通知サイレン94、モニター95等の報知部を備えていなくてもよく、また、これらの一部のみを備えていてもよい。
【0065】
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0066】
1A :救助装置
2 :浴槽
2A :貯液領域
3 :救助対象
4 :浮揚部
10 :救助用具
100 :巻き上げ装置