(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063500
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】スピンドルのバランス修正方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20240502BHJP
G01M 1/38 20060101ALI20240502BHJP
F16F 15/32 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B23Q11/00 B
G01M1/38
F16F15/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171510
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 勇太
【テーマコード(参考)】
2G021
【Fターム(参考)】
2G021AC03
2G021AD07
2G021AF08
2G021AH02
2G021AM08
(57)【要約】
【課題】ダミーウェイトによりスピンドルの重心を再現し、容易で精度の高いバランス修正を行う。
【解決手段】連結孔2を有し、連結孔に雌ネジ部21及び嵌合部22を備えるスピンドル1、並びに、雌ネジ部に螺合する雄ネジ部51a及び嵌合部へ嵌合する被嵌合部52aを備えるダミーウェイト5を準備する工程S11,S12と、雄ネジ部を雌ネジ部へ螺合させるとともに、被嵌合部を嵌合部へ嵌合させて、固定部材を固定する前のスピンドルの連結孔へダミーウェイトを嵌め込む嵌合工程S13と、ダミーウェイトの位置決め、及び、重量を調整することで、高速回転装置に組付けられた状態のスピンドルの重心位置のアンバランスを再現する重心再現工程S14と、ダミーウェイトを連結孔へ嵌め込んだ状態で、スピンドルのバランスを修正するバランス修正工程S15と、を含み、被嵌合部は、嵌合部との間から空気を逃がすエア抜き溝52bを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼き嵌め又は冷やし嵌めにより固定部材を固定され、高速回転装置に組付けられるスピンドルのバランス修正方法であって、
軸方向の一端部に、軸方向に延び、工具を連結するための連結孔を有し、該連結孔に雌ネジ部及び嵌合部を備えるスピンドル、並びに、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部及び前記嵌合部へ嵌合する被嵌合部を備えるダミーウェイトを準備する工程と、
前記雄ネジ部を前記雌ネジ部へ螺合させるとともに、前記被嵌合部を前記嵌合部へ嵌合させて、固定部材を固定する前の前記スピンドルの前記連結孔へ前記ダミーウェイトを嵌め込む嵌合工程と、
前記ダミーウェイトを前記連結孔における軸方向の所定の位置に位置決めする、及び、前記ダミーウェイトの重量を調整することで、固定部材を固定され高速回転装置に組付けられた状態の前記スピンドルの重心位置のアンバランスを再現する重心再現工程と、
前記ダミーウェイトを前記連結孔へ嵌め込んだ状態で、前記スピンドルのバランスを修正するバランス修正工程と、を含み、
前記被嵌合部は、前記嵌合部との間から空気を逃がすエア抜き溝を有することを特徴とするスピンドルのバランス修正方法。
【請求項2】
前記被嵌合部と前記嵌合部との嵌合は、精密な隙間嵌めであることを特徴とする請求項1に記載のスピンドルのバランス修正方法。
【請求項3】
前記精密な隙間嵌めは、最小隙間直径0.01mm、最大隙間直径0.03mmの隙間嵌めであることを特徴とする請求項2に記載のスピンドルのバランス修正方法。
【請求項4】
前記ダミーウェイトは、軸方向に延びる柱部と、
前記柱部から径方向に突出して鍔状に形成され、径方向端部に前記雄ネジ部を有する第1鍔部と、
前記第1鍔部から間隔をあけて前記柱部から径方向に突出して鍔状に形成され、径方向端部に前記被嵌合部を有する第2鍔部と、を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスピンドルのバランス修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルのバランス修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸を有し、工具を高速回転させて加工を行う高速回転装置において、回転のバランスが加工精度に影響することが知られている。例えば、特許文献1では、IDチップが搭載された工具において、IDチップが搭載されることでその質量によって工具の回転バランスが崩れるのを防ぐために、IDチップを搭載するための凹部に、ダミーチップを備え、ダミーチップにより回転バランスがとられるように構成された工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなIDチップを備えるものに限らず、加工精度を高めるためにスピンドルのバランスを修正することは従来行われている。例えば、回転数10,000rpm以上の高速回転装置においては、回転時の振動振幅を所定の規格内に収めて、加工精度を良好にするために、高速回転装置に組み付ける前に、工具を取り付けるスピンドル単体のバランスを修正しておくことが必要である。
【0005】
一般的にこのような高速回転装置のスピンドルは、その外周にベアリング等のリング状の固定部材を、焼き嵌めや冷やし嵌めによって堅く固定した状態で高速回転装置へ組み付けられる。スピンドルに固定部材を固定する前と固定した後とでは、スピンドルの軸方向における重心位置が変化するため、高速回転装置に組み付ける前に、スピンドル単体でバランスを修正しても、高速回転装置へ組み付けた後にアンバランス量が大きくなってしまう。
【0006】
そのため、従来、高速回転装置への組付け前に、スピンドルに固定部材を取り付けた状態でバランスを修正する方法が行われている。従来のスピンドルのバランス修正方法は、例えば
図8に示すように、まずスピンドルと固定部材とをそれぞれ脱脂した後、スピンドルについては組立て時の固定部材の位置を再現し、固定部材については加熱して内径を拡張する。そして、固定部材を焼き嵌めによってスピンドルの外周へ嵌め、冷却して固定する。その後、高速回転装置に組み付ける際の固定部材の位置を再現するために、ケガキを行う。このように固定部材を焼き嵌めした状態でスピンドルのバランスを修正することで、高速回転装置に組み付けた後のアンバランスを考慮して精度良くバランス修正することができる。しかしながら、固定部材は高速回転装置に組み付ける前に取り外す必要がある。焼き嵌めによって堅く固定された固定部材をスピンドルから取り外すのは困難な作業である。固定部材を取り外す際にスピンドルに傷や打痕を生じさせてしまうことにより、バランスの再現性を低下させるおそれもあった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高速回転装置に組み付けた後のスピンドルの重心を再現することにより、容易で精度の高いバランス修正を行うことが可能なスピンドルのバランス修正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、スピンドルに工具を連結するためのネジ孔にダミーウェイトを螺合させるものとした。
【0009】
具体的には、第1の発明は、焼き嵌め又は冷やし嵌めにより固定部材を固定され、高速回転装置に組付けられるスピンドルのバランス修正方法であって、
軸方向の一端部に、軸方向に延び、工具を連結するための連結孔を有し、該連結孔に雌ネジ部及び嵌合部を備えるスピンドル、並びに、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部及び前記嵌合部へ嵌合する被嵌合部を備えるダミーウェイトを準備する工程と、
前記雄ネジ部を前記雌ネジ部へ螺合させるとともに、前記被嵌合部を前記嵌合部へ嵌合させて、固定部材を固定する前の前記スピンドルの前記連結孔へ前記ダミーウェイトを嵌め込む嵌合工程と、
前記ダミーウェイトを前記連結孔における軸方向の所定の位置に位置決めする、及び、前記ダミーウェイトの重量を調整することで、固定部材を固定され高速回転装置に組付けられた状態の前記スピンドルの重心位置のアンバランスを再現する重心再現工程と、
前記ダミーウェイトを前記連結孔へ嵌め込んだ状態で、前記スピンドルのバランスを修正するバランス修正工程と、を含み、
前記被嵌合部は、前記嵌合部との間から空気を逃がすエア抜き溝を有することを特徴とする。
【0010】
上記の構成によると、ダミーウェイトは、スピンドルの連結孔に螺合するとともに、ガタつきなく嵌合する。これにより、ダミーウェイトは、軸方向の位置を螺合により容易に移動できるとともに、位置決めを精度良く行うことができる。このようなダミーウェイトにより組立て後の重心を容易かつ高精度に再現することが可能となる。これにより、スピンドルのバランスを精度良く修正し、組立て後の回転時の振動振幅を減少させることができる。また、ダミーウェイトの被嵌合部はエア抜き溝を有するため、取り付けや取り外しが容易であり、スピンドルを傷つけることもない。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、前記被嵌合部と前記嵌合部との嵌合は、精密な隙間嵌めであることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によると、ダミーウェイトとスピンドルの嵌合を精密な隙間嵌めとすることで、ダミーウェイトによる重心位置のアンバランスの再現精度を高め、バランス修正の精度をより高めることが可能となる。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、前記精密な隙間嵌めは、最小隙間直径0.01mm、最大隙間直径0.03mmの隙間嵌めであることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によると、ダミーウェイトとスピンドルの嵌合を最小隙間直径0.01mm、最大隙間直径0.03mmのガタつきのない精密な隙間嵌めとすることで、ダミーウェイトの脱着を容易にすることと、ダミーウェイトの円周方向の位置決めを精度よく行うことを両立できるため、重心位置のアンバランスの再現精度を高め、バランス修正の精度をより高めることが可能となる。
【0015】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記ダミーウェイトは、軸方向に延びる柱部と、
前記柱部から径方向に突出して鍔状に形成され、径方向端部に前記雄ネジ部を有する第1鍔部と、
前記第1鍔部から間隔をあけて前記柱部から径方向に突出して鍔状に形成され、径方向端部に前記被嵌合部を有する第2鍔部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によると、ダミーウェイトは、柱部と柱部から突出する2つの鍔部により形成されることで、軽量化が可能となる。また、連結孔に螺合する第1鍔部と連結孔に嵌合する第2鍔部が間隔をあけて形成されることで、連結孔内において2点支持でダミーウェイトの動きを抑制し、ダミーウェイトの位置決めをより高精度で行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本開示の技術により、高速回転工具に組み付けた後のスピンドルの重心を容易に再現し、回転時の振動振幅を低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】スピンドルに固定部材を取り付けた状態を示す部分断面図である。
【
図2】スピンドルの軸方向の重心位置を示す模式的な側面図である。
【
図3】スピンドルにダミーウェイトを取り付けた状態を示す部分断面図である。
【
図7】本開示のバランス修正方法の手順を示すフローチャートである。
【
図8】従来のバランス修正方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、スピンドルに固定部材を取り付けた状態を示す部分断面図である。
図1に示すように、本実施形態のスピンドル1は、高速回転装置に組付けられるスピンドルである。高速回転装置には、駆動モータが内蔵され、例えば、回転数10,000rpm以上の高速回転が可能である。その駆動モータの中央部にはスピンドル1が固定され、スピンドル1は高速で回転駆動される。スピンドル1は、軸方向の一端部に、工具を連結するための連結孔2を有する。連結孔2は、スピンドル1の軸方向に延びる。高速回転装置により、スピンドル1とともに工具が高速回転して加工が可能となる。本実施形態では、スピンドル1の軸方向において、工具が連結される側の端部を前側、駆動モータが連結される側の端部を後側とする。
【0021】
スピンドル1は、連結孔2に雌ネジ部21及び嵌合部22を備える。連結孔2を形成する内周面には、スピンドル1の軸方向後側に、工具を螺合させるための雌ネジ部21が形成され、雌ネジ部21の軸方向前側には、工具と嵌合するための嵌合部22が形成されている。
【0022】
スピンドル1は、軸方向一端部に前側固定部材3、軸方向の他端部に後側固定部材4が固定された状態で高速回転装置に組付けられる。固定部材3,4は、円柱状のスピンドル1に外嵌して焼き嵌め又は冷やし嵌めにより固定されるリング状の部材である。本開示のスピンドルのバランス修正方法では、高速回転装置に組み付ける前のスピンドルのバランス修正のために固定部材3,4を焼き嵌めする必要がない。固定部材3,4は、バランス修正を終えた後、高速回転装置に組み付ける際にスピンドル1へ固定される。
【0023】
図2は、スピンドルの軸方向の重心位置を示す模式的な側面図である。例えば、
図2に示すように、スピンドル単体では、スピンドルの重心が点Xの位置にあるとともに、直線Aのようなアンバランス量である。一方、高速回転装置に組み付けた後のスピンドルの重心は点Yの位置にずれるとともに直線Bのようにアンバランス量が増大する。これは、固定部材3,4の固定により、スピンドルの軸方向における重心の位置が移動するためである。そのため、高速回転装置に組み付ける前のスピンドル単体でのバランス修正において、高速回転装置に組み付けた後のスピンドルの重心とアンバランス量を考慮して、点Yの位置のスピンドルの重心、かつ、直線Bのアンバランス量を再現する必要がある。
【0024】
図3は、ダミーウェイトを取り付けた状態を示す部分断面図である。
図3は、スピンドルの連結孔2の部分を断面図で示す。また、
図4は、
図3の一部拡大図である。上記したような高速回転装置に組み付けた後のスピンドルの重心とアンバランス量を考慮して、点Yの位置のスピンドルの重心、かつ、直線Bのアンバランス量を再現するために、本開示のスピンドルのバランス修正方法では、
図3及び
図4に示すように、工具を連結するための連結孔2へダミーウェイト5を取り付け、ダミーウェイト5を連結孔2における軸方向の所定の位置に位置決めする、及び、ダミーウェイト5の重量を調整する。
【0025】
図5は、ダミーウェイトの側面図であり、
図6はダミーウェイトの正面図である。
図3から
図6に示すように、ダミーウェイト5は、軸方向に延びる柱部50と、柱部50の外周から径方向に突出して鍔状に形成された2つの鍔部51,52を有する。柱部50は、スピンドルの軸方向と略平行に延びる中心軸を有する円筒形状である。柱部50は、軸方向前側端部に、六角レンチ等の工具を嵌合させるための嵌合孔50aを有する。ダミーウェイト5は、第1鍔部51と、第1鍔部51から軸方向前側へ間隔をあけて形成された第2鍔部52と、を備える。
【0026】
第1鍔部51は、柱部50から径方向に突出して鍔状に形成され、径方向端部に雄ネジ部51aを有する。雄ネジ部51aは、第1鍔部51の外周に亘って形成される。雄ネジ部51aは、スピンドル1の連結孔2内において雌ネジ部21に螺合する。
【0027】
第2鍔部52は、柱部50から径方向に突出して鍔状に形成され、径方向端部に被嵌合部52aを有する。被嵌合部52aは、第2鍔部52の外周に亘って形成される。被嵌合部52aは、スピンドル1の連結孔2内において嵌合部22へ嵌合する。被嵌合部52aは、嵌合部22との間から空気を逃がすエア抜き溝52bを有する。
【0028】
エア抜き溝52bは、被嵌合部52aの周方向に所定の間隔をあけて複数形成される。本実施形態では、
図6に示すように、軸方向から見て、45°毎、計8箇所にエア抜き溝52bが形成されている。エア抜き溝52bは、スピンドル1の軸方向と略平行に延びる。嵌合部22と被嵌合部52aは精密に嵌め合わされるため、被嵌合部52aにエア抜き溝52bを形成することで、ダミーウェイト5の取り付けや取り外しが容易となる。
【0029】
第2鍔部52に形成された被嵌合部52aと、連結孔2内に形成された嵌合部22との嵌合は、精密な隙間嵌めである。被嵌合部52aと嵌合部22との嵌め合いは、バランス修正に影響しない程度の公差が考慮された隙間嵌めであり、具体的には、被嵌合部52aの外周と嵌合部22の内周との間が、最小隙間直径0.01mm、最大隙間直径0.03mmの隙間嵌めであることが好ましい。上記公差の隙間嵌めとすることで、連結孔2内へのダミーウェイト5の脱着を容易にするとともに、連結孔2内でのダミーウェイト5の周方向の位置決めを精度良く行うことが可能となる。
【0030】
図7は、本開示のバランス修正方法の手順を示すフローチャートである。まず、ステップS11及びステップS12の準備工程において、軸方向の一端部に、軸方向に延び、工具を連結するための連結孔2を有し、連結孔2に雌ネジ部21及び嵌合部22を備えるスピンドル1、並びに、雌ネジ部21に螺合する雄ネジ部51a及び嵌合部22へ嵌合する被嵌合部52aを備えるダミーウェイト5を準備する。なお、スピンドル1については、バランス修正対象の従来のスピンドルであるため、これに加えて、スピンドルの雌ネジ部21及び嵌合部22に適合するダミーウェイト5を準備すれば足りる。
【0031】
ステップS13は、固定部材3,4を固定する前のスピンドル1の連結孔2へダミーウェイト5を嵌め込む嵌合工程である。具体的には、雄ネジ部51aを雌ネジ部21へ螺合させるとともに、被嵌合部52aを嵌合部22へ嵌合させる。
【0032】
ステップS14は、固定部材を固定され高速回転装置に組付けられた状態のスピンドル1の重心位置のアンバランスを再現する重心再現工程である。具体的には、ダミーウェイト5を連結孔2における軸方向の所定の位置に位置決めする、及び、ダミーウェイト5の重量を調整することで、スピンドル1の高速回転装置組付け時の重心を再現する。
【0033】
ステップS14にて、ダミーウェイト5を連結孔2へ嵌め込み、スピンドル1の高速回転装置組付け時の重心を再現した状態で、ステップS15において、スピンドル1のバランスを修正する。バランス修正に用いる装置は、従来バランス修正のために使用していたものと同様の装置を使用することができる。
【0034】
ステップS15においてスピンドル1のバランス修正が完了すると、ステップS16において、ダミーウェイト5を取り外す。被嵌合部52aと嵌合部22とが、所定の公差を有する隙間嵌めであり、被嵌合部52aにエア抜き溝52bが設けられているため、ダミーウェイト5は、連結孔2から容易に取り外すことが可能であり、従来の焼き嵌めにより固定される固定部材3,4のようにスピンドル1を傷つけるおそれもない。
【0035】
従来の方法により、焼き嵌めにより固定部材3,4を固定した状態でスピンドルのバランス修正を行った場合、高速回転装置にスピンドルを組付けて回転させた際、JIS B0905における釣合い良さは、「G1」等級のアンバランス量であった。これに対し、本開示のバランス修正方法を用いてバランス修正を行ったスピンドルを、同様に高速回転装置に組付けて回転させた際、JIS B0905における釣合い良さは、「G0.4」等級のアンバランス量であった。このように、焼き嵌めにより固定部材を固定した状態で行う従来のバランス修正方法と比較して、本開示のバランス修正方法は、高速回転装置に組付けた際の釣合い良さを大きく改善する結果となった。
【0036】
以上のように構成した本開示のスピンドルのバランス修正方法では、ダミーウェイト5は、スピンドル1の連結孔2に螺合するとともに、ガタつきなく嵌合する。これにより、ダミーウェイト5は、軸方向の位置を螺合により容易に移動できるとともに、ダミーウェイト5の位置決めを精度良く行うことができる。このようなダミーウェイト5により組立て後の重心を容易かつ高精度に再現することが可能となる。これにより、スピンドルのバランスを精度良く修正し、組立て後の回転時の振動振幅を減少させることができる。
【0037】
また、このようなバランス修正方法に用いるダミーウェイト5は、柱部50と柱部から突出する2つの鍔部51,52により形成されることで、軽量化が可能となる。また、連結孔2に螺合する第1鍔部51と連結孔2に嵌合する第2鍔部52が間隔をあけて形成されることで、連結孔2内において2点支持でダミーウェイト5の動きを抑制し、ダミーウェイトの位置決めをより高精度で行うことが可能となる。
【0038】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0039】
1 スピンドル
2 連結孔
3 固定部材
4 固定部材
5 ダミーウェイト
21 雌ネジ部
22 嵌合部
50 柱部
51 第1鍔部
51a 雄ネジ部
52 第2鍔部
52a 被嵌合部
52b エア抜き溝