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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063506
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13357 20060101AFI20240502BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240502BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20240502BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G02F1/13357
G02F1/1335
G02F1/1334
G09F9/00 336B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171522
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 良典
(72)【発明者】
【氏名】大野 圭太
(72)【発明者】
【氏名】多胡 恵二
【テーマコード(参考)】
2H189
2H291
2H391
5G435
【Fターム(参考)】
2H189AA04
2H189LA07
2H189LA10
2H189LA20
2H189LA22
2H291FA71X
2H291FA71Z
2H291FA85
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291FA96X
2H291GA01
2H291GA19
2H291GA23
2H291JA02
2H291LA24
2H391AA25
2H391AB04
2H391AD55
2H391CA10
5G435AA03
5G435BB12
5G435BB15
5G435FF08
5G435GG25
5G435HH05
(57)【要約】
【課題】表示装置の性能を向上させる技術を提供する。
【解決手段】第1前面、および第1前面の反対側にある第1背面を備えている基板10と、第1前面と対向する第2背面、および第2背面の反対側にある第2前面を備えている基板20と、基板10の第1前面と基板20の第2背面との間に配置される液晶層LQLと、基板20の第2前面上に接着層41を介して接着固定された導光板40と、導光板40の第1側面と対向する位置に配置された光源部50と、を有し、導光板40の屈折率は、接着層41の屈折率よりも低い、表示装置を用いる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1前面、および前記第1前面の反対側にある第1背面を備えている第1基板と、
前記第1前面と対向する第2背面、および前記第2背面の反対側にある第2前面を備えている第2基板と、
前記第1基板の前記第1前面と前記第2基板の前記第2背面との間に配置される液晶層と、
前記第2基板の前記第2前面上に第1接着層を介して接着固定された第1導光板と、
前記第1導光板の第1側面と対向する位置に配置された光源部と、
を有し、
前記第1導光板の屈折率は、前記第1接着層の屈折率よりも低い、表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
前記第1基板の前記第1背面上に第2接着層を介して接着固定された第2導光板をさらに有し、
前記第2導光板の屈折率は、前記第1導光板の屈折率以上の大きさを有する、表示装置。
【請求項3】
請求項2記載の表示装置において、
前記第1基板および前記第2基板のそれぞれの屈折率は、前記第1導光板の屈折率以上の大きさを有する、表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の表示装置において、
前記第2接着層の屈折率は、前記第1導光板の屈折率以上の大きさを有する、表示装置。
【請求項5】
請求項4記載の表示装置において、
前記第1基板および前記第2基板のそれぞれの屈折率は、1.51であり、
前記第1接着層および前記第2接着層のそれぞれの屈折率は、1.474であり、
前記第1導光板の屈折率は、1.474よりも小さい、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶層を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶層を用いた表示装置として、液晶層を挟む基板の光透過率を向上させることにより、観察者が、表示画像と背景とを重ね合わせて認識することが可能な透明表示装置がある。特許文献1(特開2020-16724号公報)には、光源部を配置した側の輝度と比較して、反対側の輝度が低下することを防ぐため、側面が発光素子に対向する透明基板よりも屈折率が低い透明層を設けることで光源部からの距離に応じた輝度傾斜を抑制し、光源部からの距離にかかわらず輝度の均一化を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-16724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、観察者が、表示画像と背景とを重ね合わせて認識することが可能な透明表示装置の開発を行っている。透明表示装置の場合、前面および背面のそれぞれが可視光を透過させる特性を備えている必要がある。このため、画像を表示するための光源部は、導光板の側面に配置される。本願発明者らの検討によれば、導光板の側面に対向するように光源部を配置した場合、以下の課題があることが判った。すなわち、透明表示装置では、導光板の屈折率の選び方が適切でないと、液晶層に光源光が届かず輝度が低下する問題がある。または、そのような場合、上記の特許文献1にあるような輝度傾斜を改善するために導光板を厚くするなどの対策の効果が十分に作用しない問題ある。
【0005】
本発明の目的は、表示装置の性能を向上させる技術を提供することにある。
【0006】
その他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0008】
一実施の形態である表示装置は、第1前面、および前記第1前面の反対側にある第1背面を備えている第1基板と、前記第1前面と対向する第2背面、および前記第2背面の反対側にある第2前面を備えている第2基板と、前記第1基板の前記第1前面と前記第2基板の前記第2背面との間に配置される液晶層と、前記第2基板の前記第2前面上に第1接着層を介して接着固定された第1導光板と、前記第1導光板の第1側面と対向する位置に配置された光源部と、を有し、前記第1導光板の屈折率は、前記第1接着層の屈折率よりも低いものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る透明表示装置の一例を示す斜視図である。
図2図1のA-A線における断面図である。
図3】透明表示装置における入光側からの距離と、輝度の強さとの関係を示すグラフである。
図4】比較例1である透明表示装置の光源部から出射された光の経路を模式的に示す説明図である。
図5】比較例2である透明表示装置の光源部から出射された光の経路を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一または関連する符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
以下の実施の形態では、ガラス板と組み合わせて利用される表示パネルの例として、液晶分子による可視光の散乱を利用して画像を表示させる液晶表示装置を取り上げて説明する。
【0012】
また、液晶表示装置は、液晶層に含まれる分子の配向を変化させることにより、表示画像を形成する装置であるが、光源を必要とする。以下で説明する実施の形態では、光源が、表示パネルとは別に設けられる。このため、以下では、表示パネルと、表示パネルに可視光を供給する光源モジュールとを区別して説明する。
【0013】
<改善の余地>
透明表示装置(透明表示パネル装置)の輝度および輝度傾斜などの特性を改善するために、導光板の厚さの選定または低屈折率層パターンの導入などの設計手法を取り入れることが考えられる。しかし、導光板の屈折率の選び方が適切でないと、液晶層に光源光が届かず輝度が低下する場合がある。また、そのような場合、輝度傾斜を改善するために導光板を厚くするなどの対策の効果が十分に作用しない虞がある。そのような事例について、以下に比較例を用いて説明する。なお、下記の説明で用いる図2図4および図5は断面図であるが、光の進路を分かり易くするため、一部のハッチングを省略している。
【0014】
図4に、比較例1の透明表示装置である透明表示パネルの断面を示す。図4に示すように、比較例1の表示パネルPAは、基板10、基板20、導光板30、導光板40、接着層31、接着層41、低屈折率層42、液晶層LQL、光源部50および駆動回路70を有している。ここでは、図4の下側から順に導光板30、接着層31、基板10、液晶層LQL、基板20、接着層41、導光板40が積層されている。また、基板20と導光板40との間であって、光源部50近傍の領域には、低屈折率層42が形成されている。
【0015】
光源部50は、導光板40の側面40s1に対向しており、光源部50から出射される光源光L4は、側面40s1から導光板40内へ入射する。
【0016】
ここで、接着層31および接着層41のそれぞれの屈折率は、1.476である。導光板30、導光板40、基板10および基板20のそれぞれの屈折率は、1.51である。つまり、表示パネルPAのうち、光源部50から最初に光源光L4が入射する導光板40の屈折率は、接着層31および接着層41のそれぞれの屈折率より大きい。この場合、光源部50から側面40s1を介して導光板40内に入射した光源光L4の多くは、導光板40と接着層41との界面である接着層41の前面41fで全反射し、導光板40内を進む。すなわち、光源光L4の伝搬経路において、導光板40の背面および接着層41の前面41fは、屈折率の大きな媒質と、屈折率の小さな媒質との界面である。このため、光源光L4が前面41fに入射する入射角が臨界角よりも大きい場合、光源光L4は、前面41fにおいて全反射する。具体的には、光源光L4のうち、接着層41の前面41fへの入射角が、asin(接着層41の屈折率÷導光板40の屈折率)以上の成分が導光板40内に閉じ込められる。
【0017】
この結果、液晶層LQLおよび導光板30まで届く光源光L4は少ない。このように、接着層41によって導光板40に閉じ込められる光源光L4の成分が存在することで、表示パネルPA全体の輝度が低下するという、第1の改善の余地が存在する。
【0018】
次に、図5に、比較例2の透明表示装置である透明表示パネルの断面を示す。比較例2の表示パネルPBの構造は、図4に示す、表示パネルPAと同様である。ただし、表示パネルPBを構成する導光板40の屈折率は、導光板30の屈折率より大きい。この場合、比較例1と同様に、光源部50から側面40s1を介して導光板40内に入射した光源光L4の多くは、接着層41の前面41fで全反射するが、他の一部の光源光L4は、接着層41を通過して基板20、液晶層LQL、基板10および接着層31のそれぞれの内部を進む。
【0019】
しかし、接着層31側から導光板30の前面30fへ入射した光源光L4の多くは、接着層31と導光板30との界面である導光板30の前面30fで全反射し、前面30fよりも導光板40側の範囲において表示パネルPB内を進む。この場合、導光板30に光源光L4が殆ど届かないため、導光板30を設けることによる導光の効果を得られない。また、輝度傾斜現象を抑えるために導光板30を厚くするなどの工夫を採用していたとしても、そのような輝度傾斜現象の抑制効果を得られない。このように、導光板30に光源光L4が届かず、導光板30による導光の効果を得られないという第2の改善の余地が存在する。
【0020】
このように、透明表示装置には改善の余地が存在する。そこで、本願の実施の形態では、上述した改善の余地を解決する工夫を施している。以下では、この工夫を施した実施の形態における技術的思想について説明する。
【0021】
(実施の形態)
<透明表示パネルの構造>
まず、所謂、透明表示パネルの特徴について説明する。図1は、本実施の形態の表示装置である透明表示パネル(透明表示装置)の一例を示す斜視図である。図1を含む以下の図面において、表示パネルP1の厚さ方向に沿った方向をZ方向、Z方向に直交するX-Y平面において、表示パネルP1の一辺の延在方向をX方向、X方向に交差する方向をY方向として説明する。図2は、図1のA-A線における断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態の表示パネルP1は、基板(アレイ基板)10、基板(対向基板)20、導光板(第1導光板または第1カバーガラスともいう)30、導光板(第2導光板または第2カバーガラスともいう)40、光源部50、および駆動回路70を有している。
【0023】
表示装置として構成する場合、図1に示す表示パネルP1が備える各部分の他、例えば制御回路、あるいは表示パネルP1に接続されるフレキシブル基板、あるいは筐体などが含まれる場合がある。図1では、表示パネルP1以外の部分は図示を省略している。
【0024】
表示パネルP1は、外部から供給される入力信号に応じて画像が形成される表示領域DAを有する。なお、図1に示す表示パネルP1の表示領域DAは四角形であるが、表示領域が多角形や円形など、四角形以外の形状であってもよい。表示領域DAは、表示面を視た平面視において、表示パネルP1が画像を表示する有効領域である。基板10、基板20、導光板30および導光板40のそれぞれは、平面視において表示領域DAと重なる位置にある。図1に示す例では、駆動回路70は基板10上に搭載されており、光源部50は導光板40の側面40s1に接して設けられている。ただし、導光板40の側面40s1から導光板40内に光源部50から光を射出できるようにすれば、光源部50の搭載箇所はこれに限られない。例えば、光源部50は基板10上に搭載されていてもよい。光源部50は、例えば複数の発光ダイオード素子を備えている。
【0025】
まず、図2に示す表示パネルP1において、光源部50から出射された光の光路について説明する。図2に示すように、表示パネルP1は、液晶層LQLを介して対向するように貼り合せられた基板10および基板20を有している。基板10と基板20とは、表示パネルP1の厚さ方向であるZ方向に配列される。言い換えれば、基板10と基板20とは、表示パネルP1の厚さ方向(Z方向)において互いに対向する。基板10は、液晶層LQL(および基板20)と対向する前面(主面、面)を有する。また基板20は、基板10の前面(および液晶層LQL)と対向する背面(主面、面)を有する。
【0026】
基板10は、スイッチング素子(能動素子)としての複数のトランジスタ(トランジスタ素子)がアレイ状に配置されたアレイ基板である。このトランジスタは、例えばTFT(Thin Film Transistor、薄膜トランジスタ)である。また、基板20は、アレイ基板である基板10に対して表示面側に設けられた基板である。基板20は、アレイ基板に対向配置された基板という意味で、対向基板と言い換えることができる。
【0027】
液晶LQを含む液晶層LQLは、基板10の前面と基板20の背面との間にある。液晶層LQLは、光学変調素子である。表示パネルP1は、上記したスイッチング素子を介して液晶層LQLの周辺に形成される電界の状態を制御することにより、そこを通過する光を変調する機能を備えている。基板10および基板20にある表示領域DAは、平面視において液晶層LQLと重畳する。
【0028】
また、基板10と基板20とは、シール部(シール材)SLMを介して接着される。図2に示すように、シール部SLMは、平面視において表示領域DAの周囲を囲むように配置される。つまり、シール部SLMの内側には液晶層LQLがある。シール部SLMは、基板10と基板20との間に液晶を封入するシールとしての役割を果たす。また、シール部SLMは、基板10と基板20とを接着する、接着材としての役割を果たす。
【0029】
基板10の背面上には、接着層31を介して導光板30が接着固定されている。また、基板20の前面上には、接着層41を介して導光板40に接着固定されている。導光板30は、基板10の背面と対向する前面30fおよび前面30fの反対側の背面を備えている。導光板30は、接着層31を介して基板10に接着固定されている。少なくとも表示領域DAでは、導光板30と基板10との間の隙間は、接着層31により埋められている。図2に示す例では、導光板30の前面30fの全体に接着層31が接着している。
【0030】
同様に、導光板40は、基板20の前面と対向する背面および背面の反対側の前面を備えている。また、導光板40は、光源部50と対向する側面40s1、および側面40s1の反対側に位置する側面40s2を備えている。側面40s1および側面40s2のそれぞれは、導光板40の背面と前面との間において、導光板40の背面と前面とを繋ぐ面である。側面40s1および側面40s2のそれぞれは、導光板40の背面および前面のそれぞれに対し垂直な方向(Z方向)に沿う面である。導光板40は、接着層41を介して基板20に接着固定されている。少なくとも表示領域DAでは、導光板40と基板20との間の隙間は、接着層41により埋められている。
【0031】
導光板40の背面と接着層41の前面41fとの間の一部の領域には、低屈折率層42が介在している。低屈折率層42は、基板20の前面と対向する背面および背面の反対側の前面を備えている。低屈折率層42は、表示領域DAにおいて接着層41の前面41fの全体を覆ってはおらず、表示領域DAにおいて、光源部50側から所定の範囲において接着層41の前面41fを覆っている。図2に示す例では、表示領域DA内の当該所定の範囲において、導光板40の背面に低屈折率層42が接し、表示領域DA内の当該所定の範囲と異なる範囲において、導光板40の背面に接着層41が接着している。低屈折率層42は、基板10、基板20、導光板30、導光板40、接着層31および接着層41のいずれよりも屈折率が低い。
【0032】
接着層31および接着層41のそれぞれは、可視光を透過させることのできる透明な樹脂材料からなる。可視光透過性の接着層31および接着層41の例として、シート状に形成されたOCA(Optical Clear Adhesive)と呼ばれる透明接着シート、または、液体状の透明接着剤を硬化させて用いるOCR(Optical Clear Resin)などを例示できる。
【0033】
図2に示す表示パネルP1の場合、前面および背面の可視光透過性を確保するために、表示領域DAと重ならない位置に光源部50が配置された構造を備える。また、表示パネルP1は、導光板30、導光板40、基板10および基板20と、周囲の空気層との屈折率差を利用して光源光L1を反射させることにより、光源部50と対向する側面40s1の反対側の側面40s2側へ光を届ける機構を備えている。側面40s2を含む表示パネルP1の側面、つまり、基板10、基板20、導光板30、導光板40、接着層31、接着層41、およびシール部SLMを含む積層体の側面には、鏡面が当該側面に対向するようにミラー43が貼り付けられている。
【0034】
上記のように、導光板の側面から光源光を入射させて表示領域全体を照らす表示パネルの場合、表示領域において、光源部から遠い領域の輝度が光源部に近い領域の輝度よりも低いという現象が確認される。ここでは、この現象を輝度傾斜現象と呼ぶ。このような輝度傾斜現象を抑えるため、本実施の形態の表示パネルP1では、光源部50の近傍に低屈折率層42を設けている。低屈折率層42の屈折率は、接着層41の屈折率より小さいため、導光板40内を通る光源光が、低屈折率層42の前面において全反射する臨界角は、接着層41の前面41fにおいて全反射する臨界角よりも小さい。よって、低屈折率層42が形成された光源部50の近傍では、液晶層LQLおよび導光板30に達する光源光L1を低減できるため、輝度傾斜現象を抑えられる。
【0035】
ここで、接着層31および接着層41のそれぞれの屈折率は、1.474である。基板10および基板20のそれぞれの屈折率は、1.51である。導光板30の屈折率は、1.470~1.51である。導光板40の屈折率は、1.470である。本実施の形態の主な特徴の一つは、導光板40の屈折率が、接着層41の屈折率より小さいことにある。つまり、ここでは、光源光L1が側面40s1から入射する導光板40の屈折率が、接着層41、接着層31、基板10および基板20のいずれの屈折率よりも低い。
【0036】
各層がこのような屈折率を有する表示パネルP1では、表示パネルP1を構成する層同士の界面において全反射が起こることを防げる。このため、側面40s1から入射した光源は、表示パネルP1の全体に伝搬していく。なお、導光板40よりも屈折率が低い低屈折率層42の前面において光源光L1が全反射することは、輝度傾斜現象を抑えるために低屈折率層42を設けた意図に沿うため問題ない。
【0037】
すなわち、図2に二点鎖線で模式的に示すように、光源部50から出射された光源光L1は、導光板30の背面および導光板40の前面で反射しながら、側面40s1から遠ざかる方向に伝搬する。その後、ミラー43により反射した光源光L1は、反対側(側面40s1を含む表示パネルP1の側面側)へ、導光板30の背面および導光板40の前面で反射しながら伝搬する。
【0038】
液晶LQは高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)であり、液晶性ポリマーと液晶分子を含んでいる。液晶性ポリマーの配向方向は、電界の有無にかかわらずほとんど変化しない。一方、液晶分子の配向方向は、液晶LQにしきい値以上の高い電圧が印加された状態では、電界に応じて変化する。液晶LQに電圧が印加されていない状態では、液晶性ポリマーおよび液晶分子のそれぞれの光軸は互いに平行であり、液晶層LQLに入射した光源光L1は、液晶層LQL内でほとんど散乱されることなく透過する(透明状態)。液晶LQに電圧が印加された状態では、液晶性ポリマーおよび液晶分子のそれぞれの光軸は互いに交差し、液晶LQに入射した光源光L1は、液晶層LQL内で散乱される(散乱状態)。表示パネルP1は、光源光L1の伝搬経路における液晶LQの配向を制御することにより、透明状態と散乱状態とを制御する。散乱状態において光源光L1は液晶LQにより放出光L2として導光板40の前面側および導光板30の背面側から表示パネルP1の外部に出射される。放出光L2および背景光L3は、例えば導光板40の前面側にいる観察者に視認される。観察者は、放出光L2と、背景光L3とを組み合わせて認識することができる。このように透明表示パネルを用いた観察者は、表示画像と背景とを重ね合わせて認識することが可能である。
【0039】
<本実施の形態の効果>
図4および図5に示す比較例1および比較例2を用いて説明したように、透明表示装置では、導光板の屈折率の選び方が適切でないと、液晶層に光源光が届かず輝度が低下するという第1の改善の余地がある。また、そのような場合、輝度傾斜を改善するために導光板を厚くするなどの対策の効果が十分に作用しないという、第2の改善の余地がある。
【0040】
これに対し、本実施の形態の表示装置では、図2に示す導光板40の屈折率を、接着層41の屈折率より小さくなるよう設定している。その結果、光源光L1が側面40s1から入射する導光板40の屈折率は、接着層41、接着層31、基板10および基板20のいずれの屈折率よりも低くなっている。
【0041】
各層がこのような屈折率を有する表示パネルP1では、表示パネルP1を構成する層同士の界面において全反射が起こることを防げる。このため、側面40s1から入射した光源は、表示パネルP1の全体に伝搬する。その結果、全反射による表示パネルP1の輝度の低下を防げるため、上記第1の改善の余地を解消でき、表示装置の性能を向上できる。
【0042】
図3に、本願発明者らが行った実験の結果として、入光側からの距離(横軸)と、輝度の強さ(縦軸)との関係をグラフで示す。横軸である入光側からの距離は、図2のY方向における導光板40の側面40s1からの距離を指す。図3では、比較例1の表示パネルPAにおいて測定した輝度のグラフを破線で示している。つまり、破線のグラフは、接着層41の屈折率を1.476とし、導光板40の屈折率を1.51とした場合の輝度を示すグラフである。また、図3では、接着層41の屈折率を1.476とし、かつ、比較例1と異なり、導光板40の屈折率を1.472とした場合の輝度を実線のグラフで示している。
【0043】
図3に示すように、導光板40の屈折率が接着層41の屈折率よりも小さい場合、導光板40の屈折率が接着層41の屈折率よりも大きい場合に比べて、輝度が20%程度向上することが分かった。本実施の形態では、導光板40の屈折率を、接着層41の屈折率より小さく設定することで、図3に示すように表示パネルP1の輝度を向上する効果が得られる。
【0044】
上記効果は、導光板30の屈折率が導光板40の屈折率と同じであっても得られる。この場合、接着層31側から導光板30の前面30fへ入射した光源光L1が、接着層31と導光板30との界面である導光板30の前面30fで全反射することを防げる。光源光L1が導光板30へ伝搬することで、導光板30を設けることによる導光の効果が得られる。つまり、例えば、導光板30を厚くすることで輝度傾斜現象を抑えるといった効果を得られる。したがって、上記第2の改善の余地を解消でき、表示装置の性能を向上できる。
【0045】
ここで、導光板30の屈折率を、導光板40の屈折率より大きく設定してもよい。この場合、接着層31側から導光板30の前面30fへ入射した光源光L1が導光板30の前面30fで全反射することを、より効果的に防げる。
【0046】
また、ここでは基板10および基板20のそれぞれの屈折率が導光板40の屈折率より大きい場合について説明したが、基板10および基板20のそれぞれの屈折率は導光板40の屈折率と同じであってもよい。表示パネルP1を構成する層同士の屈折率を揃えることで、屈折率が高い層から屈折率が低い層へ光源光が入射する箇所を低減できるため、表示パネルP1内における全反射の発生を抑えられる。この場合、液晶層LQLに光源光L1を入射させて表示パネルP1の輝度の低下を防ぐ観点から、基板10および基板20のそれぞれの屈折率は、導光板30の屈折率以上の大きさであることが望ましい。
【0047】
以上、実施の形態および代表的な変形例について説明したが、上記した技術は、例示した変形例以外の種々の変形例に適用可能である。例えば、上記した変形例同士を組み合わせてもよい。
【0048】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、表示装置や表示装置が組み込まれた電子機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10、20 基板
30、40 導光板
30f、41f 前面
31、41 接着層
40s1、40s2 側面
42 低屈折率層
43 ミラー
50 光源部
70 駆動回路
DA 表示領域
L1、L4 光源光
L2 放出光
L3 背景光
LQ 液晶
LQL 液晶層
P1、PA、PB 表示パネル
SLM シール部
図1
図2
図3
図4
図5