(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063507
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20240502BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20240502BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240502BHJP
B60L 9/18 20060101ALN20240502BHJP
【FI】
B60L15/20 T
B60L7/14
F16H57/04 N
F16H57/04 P
B60L9/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171524
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉松 定春
(72)【発明者】
【氏名】和田 裕紀
【テーマコード(参考)】
3J063
5H125
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB02
3J063AC01
3J063BA11
3J063CA01
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD32
3J063XD72
3J063XE15
3J063XE38
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA05
5H125CA02
5H125CB02
5H125EE05
5H125EE42
5H125EE47
5H125EE53
5H125EE64
5H125FF21
(57)【要約】
【課題】回生制動力を効率的に定めることができる電動車両の制御方法、電動車両の制御装置を提供する。
【解決手段】
モータ本体と、モータ本体を冷却する第1オイルが収容された駆動モータを含み、駆動モータは、車両の前方に駆動輪に駆動力を伝達するための第1駆動モータと、車両の後方に配置された第2駆動輪に駆動力を伝達するための第2駆動モータと、を含み、車両の始動時にドライバが要求する要求駆動力をすべて第1駆動モータに配分する電動車両の制御方法であって、車両の始動時に第1オイルの温度が所定温度よりも低い場合に、第2駆動モータの制動力を、所定の回生制動力に設定し、第1駆動モータの駆動力を、回生制動力を相殺する相殺駆動力と、要求駆動力を合算した合算駆動力に設定し、回生制動力の大きさを、要求駆動力の大きさの半分以下に設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータシャフトを駆動させるモータ本体と、前記モータ本体を収容するモータケースと、前記モータケース内に前記モータ本体を冷却する第1オイルが収容された駆動モータと、
駆動輪を軸支する駆動軸と、前記モータシャフトと、をギア結合により係合するギア機構と、前記ギア機構を収容するギアケースと、を含み、前記ギアケース内に前記ギア機構を冷却する第2オイルが収容されたギアボックスと、を含み、
前記駆動モータは、前記駆動輪のうち車両の前後方向の一方に配置された第1駆動輪に駆動力を伝達するための第1駆動モータと、前記駆動輪のうち前記車両の前後方向の他方に配置された第2駆動輪に駆動力を伝達するための第2駆動モータと、を含み、
前記ギアボックスは、前記第1駆動モータの駆動力を前記第1駆動輪に伝達する第1ギアボックスと、前記第2駆動モータの駆動力を前記第2駆動輪に伝達する第2ギアボックスと、を含み、
前記車両の始動時にドライバが要求する要求駆動力をすべて前記第1駆動モータに配分する電動車両の制御方法であって、
前記車両の始動時に前記第1オイル又は前記第2オイルの温度が所定温度よりも低い場合に、前記第1駆動モータの出力状態を力行状態に設定するとともに前記第2駆動モータの出力状態を回生状態に設定し、
前記第2駆動モータの制動力を、所定の回生制動力に設定し、
前記第1駆動モータの駆動力を、前記回生制動力を相殺する相殺駆動力と、前記要求駆動力を合算した合算駆動力に設定し、
前記回生制動力の大きさを、前記要求駆動力の大きさの半分以下に設定する電動車両の制御方法。
【請求項2】
前記第1オイルの温度又は前記第2オイルの温度を外気温又は前記駆動モータの温度に基づいて推定する請求項1に記載の電動車両の制御方法。
【請求項3】
前記車両の加速度が所定値よりも低くなったときに、前記第1駆動モータの出力状態を前記合算駆動力に係る力行状態から前記回生制動力に係る回生状態となるまで徐々に変化させ、前記第2駆動モータの出力状態を前記回生制動力に係る回生状態から前記合算駆動力に係る力行状態となるまで徐々に変化させる請求項1に記載の電動車両の制御方法。
【請求項4】
前記車両の加速度が所定値よりも低くなったときに、前記第1駆動モータの出力状態を前記合算駆動力に係る力行状態から前記回生制動力に係る回生状態となるまで徐々に変化させ、前記第1駆動モータ及び前記第2駆動モータの合力が前記要求駆動力となる状態を維持するように前記第2駆動モータの出力状態を前記回生制動力に係る回生状態から前記合算駆動力に係る力行状態となるまで徐々に変化させる請求項1に記載の電動車両の制御方法。
【請求項5】
モータシャフトを駆動させるモータ本体と、前記モータ本体を収容するモータケースと、前記モータケース内に前記モータ本体を冷却する第1オイルが収容された駆動モータと、
駆動輪を軸支する駆動軸と、前記モータシャフトと、をギア結合により係合するギア機構と、前記ギア機構を収容するギアケースと、を含み、前記ギアケース内に前記ギア機構を冷却する第2オイルが収容されたギアボックスと、を含み、
前記駆動モータは、前記駆動輪のうち車両の前後方向の一方に配置された第1駆動輪に駆動力を伝達するための第1駆動モータと、前記駆動輪のうち前記車両の前後方向の他方に配置された第2駆動輪に駆動力を伝達するための第2駆動モータと、を含み、
前記ギアボックスは、前記第1駆動モータの駆動力を前記第1駆動輪に伝達する第1ギアボックスと、前記第2駆動モータの駆動力を前記第2駆動輪に伝達する第2ギアボックスと、を含み、さらに、
前記車両の始動時にドライバが要求する要求駆動力をすべて前記第1駆動モータに配分する制御部と、を含む電動車両の制御装置であって、
前記制御部は、
前記車両の始動時に前記第1オイル又は前記第2オイルの温度が所定温度よりも低い場合に、前記第1駆動モータの出力状態を力行状態に設定するとともに前記第2駆動モータの出力状態を回生状態に設定し、
前記第2駆動モータの制動力を、所定の回生制動力に設定し、
前記第1駆動モータの駆動力を、前記回生制動力を相殺する相殺駆動力と、前記要求駆動力を合算した合算駆動力に設定し、
前記回生制動力の大きさを、前記要求駆動力の大きさの半分以下に設定する電動車両の制御装置。
【請求項6】
前記駆動モータ及び前記ギアボックスは、前記モータケースの外壁の一部と前記ギアケースの外壁の一部が一体となった隔壁を形成する態様で一体に形成され、
前記駆動モータは、前記第1オイルを貯留する第1オイルパンと、前記第1オイルパンに貯留された前記第1オイルを前記モータ本体に循環させる循環機構と、を含み、
前記ギアボックスは、前記第2オイルを貯留する第2オイルパンを含み、
前記ギア機構は、前記第2オイルパンに貯留された前記第2オイルに接触し、前記ギア機構が回転して前記第2オイルを掻き揚げて前記ギア機構に供給することで前記第2オイルにより冷却され、
前記第1オイルパンは、前記隔壁の前記モータケースに対向する面を前記第1オイルパンの内壁の一部とするように形成され、
前記第2オイルパンは、前記隔壁の前記第1オイルパンを挟んだ反対側の面を前記第2オイルパンの内壁の一部とするように形成され、
前記第1オイルパンに貯留した前記第1オイルと、前記第2オイルパンに貯留した前記第2オイルは、高さ方向で互いに重複している請求項5に記載の電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、2軸以上の車軸と一対の駆動モータを備えた車両において、1以上の車軸が一方の駆動モータと駆動結合し、他の1以上の車軸が他方の駆動モータと駆動結合し、暖機運転する場合には、一対の駆動モータのうちの一方にドライバが要求する要求駆動力を出力させ、他方に回生制動力を出力させる内容を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、要求駆動力が小さく、駆動モータの最大駆動力に余力がある場合に、余裕代内で適切な量の回生制動力を算出しているが、具体的な算出法が開示されておらず、回生制動力を効率的に定めることができない。
【0005】
本発明は、回生制動力を効率的に定めることができる電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電動車両の制御方法は、モータシャフトを駆動させるモータ本体と、モータ本体を収容するモータケースと、モータケース内にモータ本体を冷却する第1オイルが収容された駆動モータと、駆動輪を軸支する駆動軸と、モータシャフトと、をギア結合により係合するギア機構と、ギア機構を収容するギアケースと、を含み、ギアケース内にギア機構を冷却する第2オイルが収容されたギアボックスと、を含み、駆動モータは、駆動輪のうち車両の前後方向の一方に配置された第1駆動輪に駆動力を伝達するための第1駆動モータと、駆動輪のうち車両の前後方向の他方に配置された第2駆動輪に駆動力を伝達するための第2駆動モータと、を含み、ギアボックスは、第1駆動モータの駆動力を第1駆動輪に伝達する第1ギアボックスと、第2駆動モータの駆動力を第2駆動輪に伝達する第2ギアボックスと、を含み、車両の始動時にドライバが要求する要求駆動力をすべて第1駆動モータに配分する電動車両の制御方法である。この制御方法は、車両の始動時に第1オイル又は第2オイルの温度が所定温度よりも低い場合に、第1駆動モータの出力状態を力行状態に設定するとともに第2駆動モータの出力状態を回生状態に設定し、第2駆動モータの制動力を、所定の回生制動力に設定し、第1駆動モータの駆動力を、回生制動力を相殺する相殺駆動力と、要求駆動力を合算した合算駆動力に設定する。そして、回生制動力の大きさを、要求駆動力の大きさの半分以下に設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の駆動を妨げず、第1オイル及び第2オイルの暖機及びバッテリの充電を実行でき、回生制動力を要求駆動力に関連づけて効率的に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の電動車両の制御方法(制御装置)が適用される車両の概略図である。
【
図2】
図2は、第1駆動モータと第2駆動モータの出力状態の変化を表す図である。
【
図3】
図3は、駆動モータとギアボックスの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[車両100の構成]
図1は、本実施形態の電動車両の制御方法(制御装置)が適用される車両100の構成を説明するブロック図である。車両100は電動車両である。電動車両とは駆動源として駆動モータ4(フロント駆動モータ4f、リア駆動モータ4r)を備え、前輪9f及び後輪9rに駆動モータ4が発生するトルクに起因した駆動力を発生させることによって走行する車両をいう。
【0011】
図1に示すように、車両100は、フロント駆動システムfdsと、リア駆動システムrdsと、バッテリ1と、コントローラ2(制御部)とを備える。
【0012】
フロント駆動システムfdsはバッテリ1から電力の供給を受け、コントローラ2による制御の下で前輪9fを駆動する。フロント駆動システムfdsは、フロントインバータ3f、フロント駆動モータ4f、フロントギアボックス5f、フロント回転センサ6f、フロント駆動軸8f、前輪9f等を備える。添字のfはフロント側の構成であることを示す。前輪9fは車両100が備える4つの駆動輪9のうち、相対的に車両100の前方向にある一対の駆動輪9である。車両100の前方向とは、運転者の搭乗席の向き等に応じて形式的に定める所定の方向である。フロント駆動システムfdsにより、前輪9fは車両100の駆動力を発生する駆動輪9として機能する。
【0013】
リア駆動システムrdsはバッテリ1から電力の供給を受け、コントローラ2による制御の下で後輪9rを駆動する。リア駆動システムrdsはフロント駆動システムfdsと対称に、リアインバータ3r、リア駆動モータ4r、リアギアボックス5r、リア回転センサ6r、リア駆動軸8r、後輪9rを備える。添字のrはリア側の構成であることを示す。後輪9rは車両100が備える4つの駆動輪9のうち、相対的に車両100の後方向にある一対の駆動輪9である。車両100の後方向とは、車両100の前方向に対して逆向きの方向をいう。リア駆動システムrdsにより、後輪9rは車両100の駆動力を発生する駆動輪9として機能する。
【0014】
バッテリ1はインバータ3を介して駆動モータ4に接続し、放電することによって駆動モータ4に駆動電力を供給する。また、バッテリ1は駆動モータ4から回生電力の供給を受けることによって充電できる。フロント駆動システムfdsにおいて、バッテリ1はフロントインバータ3fを介してフロント駆動モータ4fに接続する。同様に、リア駆動システムrdsにおいて、バッテリ1はリアインバータ3rを介してリア駆動モータ4rに接続する。
【0015】
コントローラ2は車両100の制御装置であり、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等から構成されるコンピュータである。コントローラ2は車両100の車両変数に基づいて、フロント駆動モータ4f及びリア駆動モータ4rを制御するための制御信号を生成する。車両変数とは、車両100の全体又は車両100を構成する各部の動作状態又は制御状態を示す情報であり、検出、計測、又は演算等により得ることができる。車両変数は例えば、アクセル開度APO、前後G及び横G、車速V、勾配値、操舵角、車輪速のほか、フロント駆動モータ4fの回転速度Nmf、リア駆動モータ4rの回転速度Nmr、三相交流電流等を含む。コントローラ2はこれらの車両変数を用いて、フロント駆動モータ4f及びリア駆動モータ4rをそれぞれ制御する。
【0016】
フロントインバータ3fは、コントローラ2が生成する駆動信号に応じてスイッチング素子をオン/オフすることで、バッテリ1から供給される直流電流を交流電流に変換し、フロント駆動モータ4fに供給する電流を調節する。同様に、リアインバータ3rは、コントローラ2が生成する駆動信号に応じてスイッチング素子をオン/オフすることで、バッテリ1から供給される直流電流を交流電流に変換し、リア駆動モータ4rに供給する電流を調節する。また、フロントインバータ3fは回生制動力によってフロント駆動モータ4fで発生する交流電流を直流電流に逆変換し、バッテリ1に供給する電流を調節する。同様に、リアインバータ3rは回生制動力によってリア駆動モータ4rで発生する交流電流を直流電流に逆変換し、バッテリ1に供給する電流を調節する。
【0017】
フロント駆動モータ4f(第1駆動モータ)及びリア駆動モータ4r(第2駆動モータ)は例えば三相交流モータであり、接続するインバータ3から供給される交流電流により駆動力(トルクT)を発生する。フロント駆動モータ4fが発生した駆動力はフロントギアボックス5f及びフロント駆動軸8fを介して前輪9fに伝達する。同様に、リア駆動モータ4rが発生した駆動力はリアギアボックス5r及びリア駆動軸8rを介して後輪9rに伝達する。フロント駆動モータ4f及びリア駆動モータ4rはそれぞれ前輪9f及び後輪9rに連れ回されて回転する場合に回生制動力を発生し、車両100の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。
【0018】
ギアボックス5(フロントギアボックス5f、リアギアボックス5r)は、例えば複数の歯車から構成され、駆動モータ4の回転速度Nmを減じて駆動軸8に伝達する減速機52(
図3)と、車両100の操舵時に左右の駆動輪9の回転数に差を発生させるデファレンシャルギア53(
図3)を含む。
【0019】
なお、後述のように、フロント駆動モータ4fとフロントギアボックス5fは一体で形成され、リア駆動モータ4rとリアギアボックス5rは一体で形成されている(
図3参照)。
【0020】
フロント回転センサ6f及びリア回転センサ6rは、各々が接続する駆動モータ4の回転子位相を検出し、コントローラ2に出力する。コントローラ2では、フロント回転センサ6fの出力に基づきフロント駆動モータ4fの回転速度Nmfが検出され、リア回転センサ6rの出力に基づきリア駆動モータ4rの回転速度Nmrが検出される。フロント電流センサ7f及びリア電流センサ7rは、各々が接続する駆動モータ4に流れる電流を検出し、コントローラ2に出力する。本実施形態では、フロント電流センサ7fは、フロント駆動モータ4fの三相交流電流を検出し、リア電流センサ7rは、リア駆動モータ4rの三相交流電流を検出する。
【0021】
車両100は、上記したフロント回転センサ6f及びフロント電流センサ7f、リア回転センサ6r及びリア電流センサ7rの他に各種センサ15を備える。各種センサ15は、例えばアクセル開度センサ15a、温度センサ15b、加速度センサ15c、操舵角センサ15dを備える。アクセル開度センサ15aはアクセルペダルの操作量であるアクセル開度APOを検出する。温度センサ15bは例えばサーミスタにより構成され、フロント駆動モータ4f(又はリア駆動モータ4r)内を循環する第1オイル46(
図3)の温度、フロントギアボックス5f(又はリアギアボックス5r)内を循環する第2オイル55(
図3)温度、外気の温度のいずれかを検知する。加速度センサ15cは、車両100の前後方向及び横方向の加速度、つまり前後Gと横Gとを検出する。操舵角センサ15dはステアリングホイールの操舵角を検出する。その他の各種センサ15として、ブレーキセンサ、勾配センサ、車速センサを備える。ブレーキセンサは、ブレーキペダルの操作の有無を検知する。車速センサは車両100の車速Vを検出する。車速Vは車両100の車体全体の移動速度つまり車体速である。勾配センサは車両100の走行路勾配である勾配値を検出する。各種センサ15が検出した検出値はコントローラ2に入力される。
【0022】
コントローラ2は、ドライバが要求する要求駆動力(要求トルクと回転数との積)を車両100の車両変数に基づいてフロント駆動モータ4fとリア駆動モータ4rに配分する。しかし、コントローラ2は、車両100の起動直後に走行する際には、要求駆動力をすべて第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)に配分する。
【0023】
その際、要求駆動力が配分されなかった第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)は、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)に連れまわされる状態となる。又は、コントローラ2が、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)を、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)のフリクショントルクを相殺するための補助駆動力(補助トルク×回転数)を有する駆動状態に設定する。
【0024】
ここでは、第1駆動モータをフロント駆動モータ4fとし、第2駆動モータをリア駆動モータ4rとしているが、第1駆動モータをリア駆動モータ4rとし、第2駆動モータをフロント駆動モータ4fとしてもよい。
【0025】
コントローラ2は、車両100の起動直後において、温度センサ15bが検知する温度が所定温度(例えば-20[℃])よりも低い場合は、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の出力状態を所定の回生制動力(回生トルク×回転数)を有する回生状態に設定し、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の出力状態を、回生制動力を相殺する相殺駆動力と要求駆動力とを合算した合算駆動力を有する力行状態に設定する。
【0026】
ここで、所定温度は、第1オイル46、又は第2オイル55の粘性が、駆動モータ4及びギアボックス5の駆動に影響を及ぼさない程度に低い状態を維持する下限温度となっており、オイル量、オイル性能から実験的に求めることが望ましい。
【0027】
車両100は、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)及び第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の合力、すなわち要求駆動力により駆動する。
【0028】
このとき、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)とインバータ3(フロントインバータ3f)は、合算駆動力に基づいてエネルギー消費を行うことで、その熱により第1駆動モータ側の第1オイル46及び第2オイル55を加熱できる。
【0029】
第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)とインバータ3(リアインバータ3r)は、回生制動力に基づく回生電力によりバッテリ1を充電するとともに、回生電力の熱により第2駆動モータ側の第1オイル46及び第2オイル55を加熱できる。
【0030】
なお、駆動モータ4の駆動時は、ギアボックス5の温度が駆動モータ4の温度よりも高くなるので、ギアボックス5(第2オイル55)から駆動モータ4(第1オイル46)に熱が伝達する。第1オイル46及び第2オイル55が加熱されることで、第1オイル46及び第2オイル55の粘性が低下し、駆動モータ4及びギアボックス5におけるフリクショントルクを低減できる。
【0031】
コントローラ2は、回生制動力の大きさをゼロよりも大きな値であって要求駆動力の大きさの半分以下の大きさに設定する。これにより、車両100の駆動を妨げず、第1オイル46及び第2オイル55の暖機及びバッテリ1の充電を実行でき、回生制動力を要求駆動力に関連づけて効率的に定めることができる。例えば要求駆動力に係る電力消費量が20[kW]の場合、回生制動力に係る電力消費量が10[kW]となる。よって、力行状態にある駆動モータ4(ギアボックス5)は、回生状態にある駆動モータ4(ギアボックス5)よりも早く温度が上昇する。
【0032】
ここで、回生制動力を発生させる際の第2駆動モータ(第1駆動モータ)の回生トルクと回転数は、第2駆動モータ(第1駆動モータ)のトルクと回転数とを座標軸とする座標空間において、第2駆動モータ(第1駆動モータ)の回転数と回生トルクにより表される動作点が、第2駆動モータ(第1駆動モータ)の運転効率が最大(消費電力が最小)となるときの回転数とトルクの関係(軌跡)を表す最適運転ライン上に重なるように設定される。これにより、回生制動力に係る電力消費量が10[kW]の場合、5[kW]程度の電力をバッテリ1に供給できる。
【0033】
コントローラ2は、加速度センサ15cが検知した加速度(前後G)が所定値まで低下すると(車速がほぼ等速になると)、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の出力状態を合算駆動力に係る力行状態から回生制動力に係る回生状態となるまで徐々に変化させる。
【0034】
またこのとき、コントローラ2は、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)及び第2駆動モータ(リア)の合力が要求駆動力となる状態を維持するように第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の出力状態を回生制動力に係る回生状態から合算駆動力に係る力行状態となるまで徐々に変化させる。
【0035】
なお、コントローラ2は、加速度センサ15cが所定値以上の加速度(横G)を検知した場合、又は操舵角センサ15dが所定値以上の操舵角を検知した場合、すなわち車両100が旋回(カーブ走行、右折、左折)を開始した場合、上記の出力状態の変化を実行しない。
【0036】
また、コントローラ2は、上記の出力状態の変化を実行しているときに、車両100が旋回を開始した場合、上記の出力状態の変化を停止するとともに停止時の出力状態を維持する。そして、コントローラ2は、加速度センサ15cが検知する加速度(横G)が所定値よりも低くなる場合、及び操舵角センサ15dが検知する操舵角が所定値よりも低くなる場合、すなわち車両100の旋回が終了して略直進走行になったときに、出力状態の変化を再開させる。
【0037】
上記のように出力状態を変化させることにより、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)とインバータ3(リアインバータ3r)は、合算駆動力に基づいてエネルギー消費を行うことで、その熱により第2駆動モータ側の第1オイル46及び第2オイル55を加熱できる。
【0038】
第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)とインバータ3(フロントインバータ3f)は、回生制動力に基づく回生電力によりバッテリ1を充電するとともに、回生電力の熱により第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)側の第1オイル46及び第2オイル55を加熱できる。
【0039】
なお、車両100が走行する路面が凍結している等、路面の摩擦(μ)が低い状態では、走行性を重視し、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)及び第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)を力行状態に設定し、車両100の車両変数に基づいて第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)及び第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)に対して要求駆動力を適宜配分する。
【0040】
[出力状態の変化]
図2は、第1駆動モータと第2駆動モータの出力状態の変化を表す図である。第1駆動モータと第2駆動モータの出力状態は、
図2(A)(初期状態)乃至
図2(F)の順に変化する。
【0041】
図2(A)に示すように、初期状態において、第1駆動モータは力行状態であり、その駆動力は要求駆動力と所定の相殺駆動力を合算した合算駆動力である。また第2駆動モータは、回生状態であり、その制動力は所定の回生制動力である。回生制動力の大きさは要求駆動力の大きさの半分以下であり、相殺駆動力の大きさは回生制動力の大きさに一致する。
【0042】
図2(B)に示すように、第1駆動モータの相殺駆動力と第2駆動モータの回生制動力が同じ割合で徐々に減少していく。
【0043】
図2(C)に示すように、第1駆動モータの相殺駆動力と第2駆動モータの回生制動力が同時にゼロになる。
【0044】
図2(D)に示すように、第1駆動モータの要求駆動力が徐々に減少し、第2駆動モータは回生状態から力行状態となり、その駆動力は第1駆動モータにおける要求駆動力の減少分まで徐々に増加する。
【0045】
図2(E)に示すように、第1駆動モータの駆動力がゼロになり、第2駆動モータの駆動力が要求駆動力となる。
【0046】
図2(F)に示すように、第1駆動モータは力行状態から回生状態となり、その制動力が徐々に増加して所定の回生制動力に到達する。一方、第2駆動モータの駆動力は、第1駆動モータで増加する制動力と同じ割合で増加し、第1駆動モータで発生している回生駆動力を相殺する相殺駆動力と要求駆動力とが合算した合算駆動力となる。
【0047】
上記
図2(A)乃至
図2(F)の出力状態の変化を行っても、第1駆動モータと第2駆動モータの合力は一定であり、要求駆動力を維持する。
【0048】
その後、図示は省略するが、コントローラ2は、
図2(A)乃至
図2(F)とは逆の順番で第1駆動モータと第2駆動モータの出力状態を変化させ、最終的にもとの状態(初期状態)に戻す。
【0049】
[駆動モータ4とギアボックス5]
図3は、駆動モータ4とギアボックス5の模式断面図である。
図3に示すように、車両100において、インバータ3(フロントインバータ3f)、駆動モータ4(フロント駆動モータ4f)、ギアボックス5(フロントギアボックス5f)は一体で形成されている。同様に、インバータ3(リアインバータ3r)、駆動モータ4(リア駆動モータ4r)、ギアボックス5(リアギアボックス5r)は一体で形成されている。
【0050】
インバータ3は、インバータケース31と、インバータ本体32により構成される。
【0051】
駆動モータ4は、モータケース41、モータ本体(ステータ42、ロータコア43、ロータシャフト44)、第1オイルパン45により構成される。
【0052】
ギアボックス5は、ギアケース51、ギア機構(減速機52、デファレンシャルギア53)、第2オイルパン54により構成される。
【0053】
インバータケース31、モータケース41、ギアケース51は一体となっている。モータケース41とギアケース51の間は隔壁47となっている。なお、各ケースは、熱伝導性の良いアルミダイキャストにより形成される。
【0054】
駆動軸8(駆動軸81、駆動軸82)、ロータシャフト44、減速機52、デファレンシャルギア53は各ケースに配置されたベアリングにより軸支されている。
【0055】
モータケース41において、ステータ42、ロータコア43、ロータシャフト44(モータシャフト)、駆動軸8(駆動軸81、駆動軸82)は、同軸配置となっている。
【0056】
ロータシャフト44は、中空構造を有し、その内側に駆動軸8が挿通している。またロータシャフト44は、ギアケース51内に突出し、減速機52にギア結合している。
【0057】
減速機52は、ロータシャフト44の駆動力を所定の減速比で減速してデファレンシャルギア53に伝達する。デファレンシャルギア53は、減速機52から伝達された駆動力を駆動軸8(駆動軸81、駆動軸82)に伝達する。また、車両100の旋回時に外輪となる駆動輪9からの負荷から内輪となる駆動輪9からの負荷を差し引いた差分に基づいて、例えば外輪となる駆動輪9を軸支する駆動軸81の回転数が内輪となる駆動輪9を軸支する駆動軸82の回転数よりも当該差分に対応して高くなるように動作する。
【0058】
第1オイルパン45は、モータケース41の下部に配置されている。第1オイルパン45には、第1オイル46が貯留している。図示は省略するがモータケース内には第1オイル46をモータ本体(ステータ42、ロータコア43、ロータシャフト44)に循環させる循環ポンプ(循環機構)が配置され、循環ポンプは、第1オイルパン45に貯留した第1オイル46を汲み上げてモータ本体に供給する。モータ本体に供給された第1オイル46は、モータ本体を冷却し、その後第1オイルパン45に還流する。
【0059】
第2オイルパン54は、ギアケース51の下部に配置されている。第2オイルパン54には、第2オイル55が貯留している。第2オイル55は、例えば減速機52(ギア)の最下部よりも液面が高くなるように第2オイルパン54に貯留している。これにより、減速機52が回転すると減速機52(ギアの歯面)が第2オイル55を掻き揚げ、掻き揚げられた第2オイル55はギア機構(減速機52、デファレンシャルギア53)に供給されてギア機構を冷却し、その後第2オイルパン54に還流する。なお、
図3では、減速機52が第2オイルパン54に貯留した第2オイル55に接触するように配置されているが、デファレンシャルギア53が第2オイルパン54に貯留した第2オイル55に接触するように配置してもよい。
【0060】
図3に示すように、第1オイルパン45と第2オイルパン54は、隔壁47を挟むように配置されている。
【0061】
第1オイルパン45は、隔壁47のモータケース41に対向する面を第1オイルパン45の内壁の一部とするように形成されている。
【0062】
第2オイルパン54は、隔壁47の第1オイルパン45を挟んだ反対側の面(ギアケース51側の面)を第2オイルパン54の内壁の一部とするように形成されている。
【0063】
そして、第1オイルパン45に貯留した第1オイル46と、第2オイルパン54に貯留した第2オイル55は、高さ方向で互いに重複するようにそれぞれ貯留している。
【0064】
これにより、第1オイル46と第2オイル55は隔壁47を挟んで対向するように配置されるので、第1オイル46と第2オイル55との間の熱交換を効率的に行うことができる。特に、第1オイル46及び第2オイル55を加熱する場合に、ギア機構(減速機52、デファレンシャルギア53)により加熱された第2オイル55の熱を第1オイル46に効率的に伝達でき、第1オイル46を短時間で加熱でき、駆動モータ4及びギアボックス5のフリクショントルクを短時間で低減できる。逆にモータ本体の温度がギア機構よりも高くなる場合は、モータ本体(ステータ42、ロータコア43、ロータシャフト44)により加熱された第1オイル46の熱を第2オイル55に効率的に伝達でき、第2オイル55を短時間で加熱でき、駆動モータ4及びギアボックス5のフリクショントルクを短時間で低減できる。
【0065】
[本実施形態の効果]
本実施形態の電動車両の制御方法によれば、モータシャフト(ロータシャフト44)を駆動させるモータ本体(ステータ42、ロータコア43、ロータシャフト44)と、モータ本体を収容するモータケース41と、モータケース41内にモータ本体を冷却する第1オイル46が収容された駆動モータ4と、駆動輪9を軸支する駆動軸8と、モータシャフト(ロータシャフト44)と、をギア結合により係合するギア機構(減速機52、デファレンシャルギア53)と、ギア機構を収容するギアケース51と、を含み、ギアケース51内にギア機構を冷却する第2オイル55が収容されたギアボックス5と、を含み、駆動モータ4は、駆動輪9のうち車両100の前後方向の一方(例えば前方)に配置された第1駆動輪(例えば前輪9f)に駆動力を伝達するための第1駆動モータ(例えばフロント駆動モータ4f)と、駆動輪9のうち車両100の前後方向の他方(例えば後方)に配置された第2駆動輪(後輪9r)に駆動力を伝達するための第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)と、を含み、ギアボックス5は、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の駆動力を第1駆動輪(前輪9f)に伝達する第1ギアボックス(フロントギアボックス5f)と、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の駆動力を第2駆動輪(後輪9r)に伝達する第2ギアボックス(リアギアボックス5r)と、を含み、車両100の始動時にドライバが要求する要求駆動力をすべて第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)に配分する電動車両の制御方法であって、車両100の始動時に第1オイル46又は第2オイル55の温度が所定温度よりも低い場合に、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の出力状態を力行状態に設定するとともに第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の出力状態を回生状態に設定し、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の制動力を、所定の回生制動力に設定し、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の駆動力を、回生制動力を相殺する相殺駆動力と、要求駆動力を合算した合算駆動力に設定し、回生制動力の大きさを、要求駆動力の大きさの半分以下に設定する。
【0066】
上記方法により、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)が合算駆動力を出力するときの熱により第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)を冷却する第1オイル46及び第2オイル55を暖機でき、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)が回生制動力を出力するときの熱により第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)を冷却する第1オイル46及び第2オイル55を暖機できる。さらに、車両100の駆動を妨げず、第1オイル46及び第2オイル55の暖機及びバッテリ1の充電を実行でき、回生制動力を要求駆動力に関連づけて効率的に定めることができる。
【0067】
本実施形態において、第1オイル46の温度又は第2オイル55の温度を外気温又は駆動モータ4(フロント駆動モータ4f、リア駆動モータ4r)の温度に基づいて推定する。
【0068】
これにより、簡易な方法で第1オイル46の温度又は第2オイル55の温度を推定できる。
【0069】
本実施形態において、車両100の加速度が所定値よりも低くなったときに、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の出力状態を合算駆動力に係る力行状態から回生制動力に係る回生状態となるまで徐々に変化させ、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の出力状態を回生制動力に係る回生状態から合算駆動力に係る力行状態となるまで徐々に変化させる。
【0070】
車両100が加速している状態では、車両100は不安定であるが、一定速度による巡航運転では安定する。したがって、実験的に求めた加速度の所定値よりも低くなった状態で、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の出力状態(合算駆動力に係る駆動状態)と第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の出力状態(所定の回生駆動力に係る回生状態)を相互に切り替える。これにより、力行状態の出力が回生状態の出力よりも大きいため、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)を冷却する第1オイル46(第2オイル55)を効率的に加熱することができる。
【0071】
本実施形態において、車両100の加速度が所定値よりも低くなったときに、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の出力状態を合算駆動力に係る力行状態から回生制動力に係る回生状態となるまで徐々に変化させ、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)及び第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の合力が要求駆動力となる状態を維持するように第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の出力状態を回生制動力に係る回生状態から合算駆動力に係る力行状態となるまで徐々に変化させる。
【0072】
上記方法により、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の出力状態と第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の出力状態を相互に切り替える際の車両100の走行安定性の低下を抑制できる。
【0073】
本実施形態の電動車両の制御装置によれば、モータシャフト(ロータシャフト44)を駆動させるモータ本体(ステータ42、ロータコア43、ロータシャフト44)と、モータ本体を収容するモータケース41と、モータケース41内にモータ本体を冷却する第1オイル46が収容された駆動モータ4と、駆動輪9を軸支する駆動軸8と、モータシャフト(ロータシャフト44)と、をギア結合により係合するギア機構(減速機52、デファレンシャルギア53)と、ギア機構を収容するギアケース51と、を含み、ギアケース51内にギア機構を冷却する第2オイル55が収容されたギアボックス5と、を含み、駆動モータ4は、駆動輪9のうち車両100の前後方向の一方(例えば前方)に配置された第1駆動輪(例えば前輪9f)に駆動力を伝達するための第1駆動モータ(例えばフロント駆動モータ4f)と、駆動輪9のうち車両100の前後方向の他方(例えば後方)に配置された第2駆動輪(後輪9r)に駆動力を伝達するための第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)と、を含み、ギアボックス5は、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の駆動力を第1駆動輪(前輪9f)に伝達する第1ギアボックス(フロントギアボックス5f)と、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の駆動力を第2駆動輪(後輪9r)に伝達する第2ギアボックス(リアギアボックス5r)と、を含み、さらに、車両100の始動時にドライバが要求する要求駆動力をすべて第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)に配分する制御部(コントローラ2)と、を含む、電動車両の制御装置であって、制御部(コントローラ2)は、車両100の始動時に第1オイル46又は第2オイル55の温度が所定温度よりも低い場合に、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の出力状態を力行状態に設定するとともに第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の出力状態を回生状態に設定し、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)の制動力を、所定の回生制動力に設定し、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)の駆動力を、回生制動力を相殺する相殺駆動力と、要求駆動力を合算した合算駆動力に設定し、回生制動力の大きさを、要求駆動力の大きさの半分以下に設定する。
【0074】
上記構成により、第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)が合算駆動力を出力するときの熱により第1駆動モータ(フロント駆動モータ4f)を冷却する第1オイル46及び第2オイル55を暖機でき、第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)が回生制動力を出力するときの熱により第2駆動モータ(リア駆動モータ4r)を冷却する第1オイル46及び第2オイル55を暖機できる。さらに、車両100の駆動を妨げず、第1オイル46及び第2オイル55の暖機及びバッテリ1の充電を実行でき、回生制動力を要求駆動力に関連づけて効率的に定めることができる。
【0075】
本実施形態において、駆動モータ4及びギアボックス5は、モータケース41の外壁の一部とギアケース51の外壁の一部が一体となった隔壁47を形成する態様で一体に形成され、駆動モータ4は、第1オイル46を貯留する第1オイルパン45と、第1オイルパン45に貯留された第1オイル46をモータ本体(ステータ42、ロータコア43、ロータシャフト44)に循環させる循環機構(循環ポンプ)と、を含み、ギアボックス5は、第2オイル55を貯留する第2オイルパン54を含み、ギア機構(減速機52、デファレンシャルギア53)は、第2オイルパン54に貯留された第2オイル55に接触し、ギア機構が回転して第2オイル55を掻き揚げてギア機構に供給することで第2オイル55により冷却され、第1オイルパン45は、隔壁47のモータケース41に対向する面を第1オイルパン45の内壁の一部とするように形成され、第2オイルパン54は、隔壁47の第1オイルパン45を挟んだ反対側の面を第2オイルパン54の内壁の一部とするように形成され、第1オイルパン45に貯留した第1オイル46と、第2オイルパン54に貯留した第2オイル55は、高さ方向で互いに重複している。
【0076】
上記構成により、第1オイル46と第2オイル55は隔壁47を挟んで対向するように配置されるので、第1オイル46と第2オイル55との間の熱交換を効率的に行うことができる。特に、第1オイル46及び第2オイル55を加熱する場合に、ギア機構(減速機52、デファレンシャルギア53)により加熱された第2オイル55の熱を第1オイル46に効率的に伝達でき、第1オイル46を短時間で加熱でき、駆動モータ4及びギアボックス5のフリクショントルクを短時間で低減できる。逆にモータ本体の温度がギア機構よりも高くなる場合は、モータ本体(ステータ42、ロータコア43、ロータシャフト44)により加熱された第1オイル46の熱を第2オイル55に効率的に伝達でき、第2オイル55を短時間で加熱でき、駆動モータ4及びギアボックス5のフリクショントルクを短時間で低減できる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0078】
2 コントローラ、4 駆動モータ、4f フロント駆動モータ、4r リア駆動モータ、41 モータケース、42 ステータ、43 ロータコア、44 ロータシャフト、46 第1オイル、5 ギアボックス、5f フロントギアボックス、5r リアギアボックス、51 ギアケース、52 減速機、53 デファレンシャルギア、55 第2オイル、9駆動輪、9f 前輪、9r 後輪、100 車両