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特開2024-63522軌道生成装置、軌道生成方法、プログラムおよび移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063522
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】軌道生成装置、軌道生成方法、プログラムおよび移動体
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240502BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240502BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240502BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G05D1/02 H
G01C21/34
B60W30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171549
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 航輝
(72)【発明者】
【氏名】松永 英樹
(72)【発明者】
【氏名】若山 涼至
(72)【発明者】
【氏名】白方 健登
【テーマコード(参考)】
2F129
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
2F129AA02
2F129AA03
2F129BB02
2F129CC03
2F129DD53
2F129EE02
2F129EE91
2F129EE95
2F129GG17
2F129GG18
2F129HH05
3D241BA11
3D241BB31
3D241BC01
3D241BC02
3D241CE04
3D241CE06
3D241DB01Z
3D241DC35Z
5H181AA01
5H181AA21
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF22
5H181LL09
5H181LL14
5H181MB04
5H301AA03
5H301AA10
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301LL01
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】交差点を曲がる際に、交差点中央や路肩といった回避対象と干渉しないよう軌道を決定する。
【解決手段】車両が備えた軌道生成装置は、移動体が走行する走行領域から、移動先の走行領域へ移動する軌道を示す軌道情報を生成する。その際に、移動体が走行する走行領域における軌道と、移動先の走行領域における軌道をそれぞれ第一点列と第二点列で出力し、第一点列内の点を始点にし、第二点列内の点を終点とする曲線として、移動体が走行する走行領域から、移動先の走行領域へ移動する軌道の軌道情報を生成する。またカメラで撮影された画像に基づいて、回避して走行すべき回避領域を推定または検出し、回避領域と軌道との距離が所定距離に満たない場合には、距離が所定距離以上となるように、始点および終点の少なくとも一方を再選択して軌道情報を再生成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が走行する走行領域から、移動先の走行領域へ移動する軌道を示す軌道情報を生成する軌道生成装置であって、
前記移動体が走行する走行領域における軌道と、前記移動先の走行領域における軌道をそれぞれ第一点列と第二点列で出力し、前記第一点列内の点を始点にし、前記第二点列内の点を終点とする曲線として、前記移動体が走行する走行領域から、前記移動先の走行領域へ移動する軌道の軌道情報を生成する軌道生成部と、
カメラで撮影された画像に基づいて、回避して走行すべき回避領域を推定または検出する回避領域検出部と、を有し、
前記軌道生成部は、前記回避領域と前記軌道との距離が所定距離に満たない場合には、前記距離が所定距離以上となるように、前記始点および終点の少なくとも一方を再選択して前記軌道情報を再生成する
ことを特徴とする軌道生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軌道生成装置であって、
前記回避領域は、交差点中央および路肩の少なくとも一方を含む
ことを特徴とする軌道生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の軌道生成装置であって、
前記始点が、前記移動体が走行する走行領域の終了位置の点であるか、または、前記終点が前記移動先の走行領域の開始位置の点である
ことを特徴とする軌道生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の軌道生成装置であって、
前記始点が、前記移動体が走行する走行領域の終了位置の点である場合には、前記終点は、前記第二点列のうち、前記始点と単曲線で接続される点であり、
前記終点が前記移動先の走行領域の開始位置の点である場合には、前記始点は、前記第一点列のうち、前記終点と単曲線で接続される点である
ことを特徴とする軌道生成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の軌道生成装置であって、
前記軌道生成部は、前記移動体が対向車線を越えて移動する場合に、前記回避領域と前記軌道との距離が所定距離に満たない場合には、前記始点と前記終点とがより遠ざかるよう、前記始点または前記終点の少なくとも一方を再選択する
ことを特徴とする軌道生成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の軌道生成装置であって、
前記軌道生成部は、前記移動体が対向車線を越えずに移動する場合に、前記回避領域と前記軌道との距離が所定距離に満たない場合には、前記始点と前記終点とがより近づくよう、前記始点または前記終点の少なくとも一方を再選択する
ことを特徴とする軌道生成装置。
【請求項7】
請求項1に記載の軌道生成装置であって、
前記曲線は、前記移動体が走行する走行領域における軌道又はその延長線と、前記移動先の走行領域における軌道またはその延長線とを接続する単曲線を含む
ことを特徴とする軌道生成装置。
【請求項8】
請求項1に記載の軌道生成装置であって、
前記軌道は、前記軌道に沿って走行する車両の中央部が通る軌道であって、
前記所定距離は、少なくとも前記車両の幅の半分の長さである
ことを特徴とする軌道生成装置。
【請求項9】
請求項1に記載の軌道生成装置であって、
前記移動先の走行領域は、前記移動体が走行する走行領域から、交差点の右折又は左折を経て繋がった走行領域である
ことを特徴とする軌道生成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の軌道生成装置と、
前記軌道生成装置により生成した軌道情報により示される軌道に沿って走行を制御する走行制御部と
を有することを特徴とする移動体。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の軌道生成装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項12】
軌道生成部と回避領域検出部とを有する制御装置により実行される、移動体が走行する走行領域から、移動先の走行領域へ移動する軌道を示す軌道情報を生成する軌道生成方法であって、
前記軌道生成部が、前記移動体が走行する走行領域における軌道と、前記移動先の走行領域における軌道をそれぞれ第一点列と第二点列で出力し、前記第一点列内の点を始点にし、前記第二点列内の点を終点とする曲線として、前記移動体が走行する走行領域から、前記移動先の走行領域へ移動する軌道の軌道情報を生成し、
前記回避領域検出部が、カメラで撮影された画像に基づいて、回避して走行すべき回避領域を推定または検出し、
前記軌道生成部は、前記回避領域と前記軌道との距離が所定距離に満たない場合には、前記距離が所定距離以上となるように、前記始点および終点の少なくとも一方を再選択して前記軌道情報を再生成する
ことを特徴とする軌道生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道生成装置、軌道生成方法、プログラムおよび車両等の移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超小型モビリティ(マイクロモビリティともいわれる)と呼ばれる、乗車定員が1~2名程度である電動車両が知られている。このような車両の走行を制御する技術として、カメラ等により道路画像を取得して取得した道路画像に基づいて道路形状を推定して走行を制御する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-43837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、曲がった道路を道なりに走行する制御を行うことはできても、交差点における右折や左折の制御は困難であった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、走行経路にある交差点を安全に曲がるための走行制御を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成を有する。本発明の一側面によれば、移動体が走行する走行領域から、移動先の走行領域へ移動する軌道を示す軌道情報を生成する軌道生成装置であって、
前記移動体が走行する走行領域における軌道と、前記移動先の走行領域における軌道をそれぞれ第一点列と第二点列で出力し、前記第一点列内の点を始点にし、前記第二点列内の点を終点とする曲線として、前記移動体が走行する走行領域から、前記移動先の走行領域へ移動する軌道の軌道情報を生成する軌道生成部と、
カメラで撮影された画像に基づいて、回避して走行すべき回避領域を推定または検出する回避領域検出部と、を有し、
前記軌道生成部は、前記回避領域と前記軌道との距離が所定距離に満たない場合には、前記距離が所定距離以上となるように、前記始点および終点の少なくとも一方を再選択して前記軌道情報を再生成する
ことを特徴とする軌道生成装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行経路にある交差点を安全に曲がるための走行制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る車両の構成例を示すブロック図
図2】本実施形態に係る車両の制御ユニットを中心としたハードウェア構成例を示すブロック図
図3】本実施形態に係る制御機能の構成例を示すブロック図
図4】本実施形態に係る交差点の軌道生成の例を示す図
図5】本実施形態に係る交差点の軌道生成の例を示す図
図6】本実施形態に係る、軌道生成処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
●車両の構成
図1を参照して、本実施形態に係る移動体の一例である車両100の構成について説明する。車両100は、バッテリを搭載しており、例えば、主にモータの動力で移動する超小型モビリティである。超小型モビリティとは、一般的な自動車よりもコンパクトであり、乗車定員が1又は2名程度の超小型車両である。本実施形態では、車両100を超小型モビリティとした例で説明するが、本発明を限定する意図はなく例えば三輪車両や鞍乗型車両であってもよい。また、本発明の車両は、乗り物に限らず、荷物を積載して人の歩行に並走する車両や、人を先導する車両であってもよい。
【0011】
図1(A)は本実施形態に係る車両100の側面を示し、図1(B)は車両100の内部構成を示している。図中矢印Xは車両100の前後方向を示しFが前をRが後を示す。矢印Y、Zは車両100の幅方向(左右方向)、上下方向を示す。
【0012】
車両100は、走行ユニット12を備え、バッテリ13を主電源とした電動自律式車両である。バッテリ13は例えばリチウムイオンバッテリ等の二次電池であり、バッテリ13から供給される電力により走行ユニット12によって車両100は自走する。走行ユニット12は、左右一対の前輪20と、左右一対の後輪21とを備えた四輪車である。走行ユニット12は三輪車の形態等、他の形態であってもよい。車両100は、一人用又は二人用の座席14を備える。
【0013】
走行ユニット12は操舵機構22を備える。操舵機構22はモータ22aを駆動源として一対の前輪20の舵角を変化させる機構である。一対の前輪20の舵角を変化させることで車両100の進行方向を変更することができる。走行ユニット12は、また、駆動機構23を備える。駆動機構23はモータ23aを駆動源として一対の後輪21を回転させる機構である。一対の後輪21を回転させることで車両100を前進又は後進させることができる。
【0014】
車両100は、車両100の周囲の物標を検知する検知ユニット15~17を備える。検知ユニット15~17は、車両100の周辺を監視する外界センサ群であり、本実施形態の場合、いずれも車両100の周囲の画像を撮像する撮像装置であり、例えば、レンズなどの光学系とイメージセンサとを備える。しかし、撮像装置に代えて或いは撮像装置に加えて、レーダやライダ(Light Detection and Ranging)を採用することも可能である。
【0015】
検知ユニット15は車両100の前部にY方向に離間して二つ配置されており、主に、車両100の前方の物標を検知する。検知ユニット16は車両100の左側部及び右側部にそれぞれ配置されており、主に、車両100の側方の物標を検知する。検知ユニット17は車両100の後部に配置されており、主に、車両100の後方の物標を検知する。検知ユニット16は本実施形態ではカメラであり、前方を中心とした画像を撮影し、画像に含まれた物標を検知する。
【0016】
●移動体の制御構成
図2は、移動体である車両100の制御系のブロック図である。ここでは本発明を実施する上で必要な構成を主に説明する。従って、以下で説明する構成に加えてさらに他の構成が含まれてもよい。車両100は、制御ユニット(ECU)30を備える。制御ユニット30は、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶デバイスにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。プロセッサ、記憶デバイス、インタフェースは、車両100の機能別に複数組設けられて互いに通信可能に構成されてもよい。
【0017】
制御ユニット30は、検知ユニット15~17の検知結果、操作パネル31の入力情報、音声入力装置33から入力された音声情報、サーバ110からの制御命令(例えば、撮像画像や現在位置の送信等)などを取得して、対応する処理を実行する。制御ユニット30は、モータ22a、23aの制御(走行ユニット12の走行制御)、操作パネル31の表示制御、音声による車両100の乗員への報知、情報の出力を行う。制御ユニット30は情報処理を実行する情報処理装置あるいはコンピュータにより実現してもよい。
【0018】
音声入力装置33は、車両100の乗員の音声を収音する。制御ユニット30は、入力された音声を認識して、対応する処理を実行可能である。全球測位衛星システム(GNSS)センサ34は、GNSS信号を受信して車両100の現在位置を検知する。記憶装置35は、車両100が走行可能な走路、建造物などのランドマーク、店舗等の情報を含む地図データ等を記憶する大容量記憶デバイスである。記憶装置35にも、プロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納されてよい。記憶装置35は、制御ユニット30によって実行される音声認識や画像認識用の機械学習モデルの各種パラメータ(例えばディープニューラルネットワークの学習済みパラメータやハイパーパラメータなど)を格納してもよい。通信ユニット36は、例えば、Wi‐Fiや第5世代移動体通信などの無線通信を介してネットワーク140に接続可能な通信装置である。
【0019】
方向指示スイッチ37は、ユーザが車両100に対して右折や左折を指示するためのスイッチである。方向指示スイッチ37により右折あるいは左折が指示されると、制御ユニット30は、その指示に応じて右折あるいは左折できる箇所を特定し、走行予定の経路を決定して右折あるいは左折の制御を行う。なお方向指示スイッチ37は、レバー上のスイッチであってもよいし、ジョイスティックであってもよい。また機械式あるいは電子式のスイッチに代えて音声認識により右折および左折の指示を受け付けてもよい。走行予定の経路のことを本実施形態では軌道と呼ぶ。軌道のことを経路やルート、走行ラインなどと呼んでもよい。
【0020】
●制御ユニットの機能的構成
次に、図3を参照して、制御ユニット30の機能構成例について説明する。なお、各機能ユニットは、制御ユニット30により、特にそれが有するCPUあるいはECUによりプログラムを実行することで実現される。
【0021】
オブジェクト認識部311は、検知ユニット15により撮影した画像を対象として画像認識を行い、画像に含まれたオブジェクトを認識して出力する。認識対象は、例えば道路、交差点、車両、歩行者、信号、標識、障害物などを含む。それぞれの認識対象には、さらに詳細な認識対象が含まれる。たとえば道路であれば、道路と道路外との道路境界、車線を区切る中央線や路肩線や停止線などを含む白線、横断歩道などが含まれる。またたとえば交差点であれは、交差点と道路との接続部分となるロードエントランスなどが含まれる。画像認識は例えばオブジェクトが予めわかっている画像との対比で行われるが、対比は画像から抽出したエッジ等の特徴量に基づいて行われてよい。さらに、機械学習により教師画像からのオブジェクトを認識する学習を行い、学習済モデルを用いて認識を行ってもよい。
【0022】
本実施形態では、たとえば撮影された画像は射影変換等により平面図化され、認識された各オブジェクトは、その平面上に配置される。この平面化された撮影画像は車両100から撮影された局所的な地図であり、ここではローカル地図と称する。ローカル地図は、たとえば車両100の位置を基準位置としてよい。また基準方向は、たとえば磁北としてもよいし、検知ユニット15であるカメラの光軸方向としてもよい。これにより、交差点や道路、さらにそれらに含まれたロードエントランスや白線の位置や方向はローカル地図上で特定される。なおここでは撮影した画像を平面化するものとしたが、撮影した画像をそのままローカル地図として用い、その上で認識したオブジェクトを特定してもよい。
【0023】
なお本実施形態で認識対象となる交差点とは、車両が進行方向を選択して右折あるいは左折が可能であるような道路構造を指し、十字路などの四叉路のほか、三叉路、四叉路より交差する道数が多い交差点も含む。交差点が認識されると、入り口となるロードエントランスと出口となるロードエントランスとを特定でき、認識された道路上の中央線と併せて、自車両が走行すべき軌道を決定できる。たとえば車両が左側を走行する場合、入り口となるロードエントランスのうち、中央線の左側の車線が交差点に進入する車線となり、その中に軌道を設定できる。車線は中央線と路肩線とで挟まれた領域であり、自車両の進行方向に対応する車線を現在車線、自車両の進行方向に対向する車両の走行する車線を対向車線と呼ぶことがある。また交差点の入り口となるロードエントランスと出口となるロードエントランスをそれぞれ、交差点の入り口および交差点の出口と呼ぶ。さらに、交差点を通過後に走行しようとする移動先の車線を目的車線と呼ぶことがある。また車線のことを走行領域と呼ぶことがある。さらに現在車線と目的車線内でそれぞれ決定された軌道を現在軌道および目的軌道と呼ぶことがある。
【0024】
軌道生成部312は、ローカル地図上で車両100が走行する予定の軌道を決定し、決定した軌道の軌道情報を作成して出力する。軌道のことを軌跡や走行ライン、経路などと呼ぶこともある。軌道情報はローカル地図の座標系で位置が特定される点列(或いはベクトル)で表現される。点の間隔は一定の値(すなわち所定値)であってよいが、決定した軌跡に沿って走行を制御することを考慮すれば、予想される速度に応じて点の間隔を変えてもよい。すなわち車両が各点を通過する時間間隔が一定になるように点の間隔を決めてもよい。点の間隔を所定距離にする場合には、低速走行時、たとえば交差点を走行車線側に折れる(例えば左折する)際の速度を基準として点の間隔を決定してよい。具体的には、例えば車体長程度であってよい。
【0025】
軌道は、たとえば分岐がない道路であれば、現在車線の幅方向について中央、または中央より路肩寄りに車両が走行する軌道が設定される。また交差点を通過後の車線についても同様に、目的車線の幅方向について中央、または中央より路肩寄りに車両が走行する軌道が設定される。交差点では、たとえば直線と直線どうしを円滑に接続する曲率一定の単曲線で構成されてよい。また単曲線に代えてクロソイド曲線やベジェ曲線などを利用してもよい。軌道が最終的に決定されると、軌道生成部312は、決定した軌道に沿った点列を軌道情報として生成する。軌道が最終的に決定されるまでには、生成した軌道(候補軌道と呼ぶ。)と、交差点の中央、路肩または障害物などの回避対象領域との干渉の有無が判定され、いずれかとの干渉があれば候補軌道が再生成される。干渉がない候補軌道が最終的な軌道となる。
【0026】
軌道生成部312は、乗員による指示がない限り、オブジェクト認識部311により認識された道路に沿って道なりに走行する軌道を生成する。前方に交差点が認識されていても、その交差点が直進可能であり、特に指示がなければそこを直進する軌道を生成する。その場合には目的車線は交差点を経て直進する車線となる。また方向指示スイッチ37が操作されて右折または左折が指示され、かつ前方に交差点が認識された場合には、その交差点を指示された方向へ曲がる軌道を選択する。その場合には交差点に接続された道路のうち、指示された方向にある、現在車線に繋がる車線が目的車線となる。本実施形態は、乗員による指示と道路構造とが整合しない場合について扱うものではないが、そのような場合には、停止も含めて選択肢のうちから最も安全な軌道を選択すればよい。
【0027】
回避領域検出部313は、上述した車両との干渉が判定される回避対象領域を、オブジェクト認識部311で認識されたオブジェクトのうちから検出する。回避対象領域は予め定めておいてよい。回避対象領域には交差点の中央、路肩線およびそのほかの障害物が含まれる。
【0028】
車両制御部314は、軌道生成部312により生成された軌道情報に沿った車両100の走行を制御する。制御対象は操舵機構22と駆動機構23とを含み、操舵角や発進・停止を含む車両100の速度が制御される。車両100は、たとえばその前端の中央部が軌道上を通るように制御されてよい。車両制御部314は本例では主として走行を制御することから走行制御部とも呼ぶ。
【0029】
●交差点において対向車線側へ曲がる際の軌道の決定
次に図4図5を参照して、本実施形態の車両100による軌道の決定について説明する。なおここでは車両は進行方向に向かって道路左側を走行するものとするが、車両が右側を走行する場合には以下の説明において左右を入れ替えればよい。また本例では片側1車線ずつに中央線で区分された道路を例として説明する。
【0030】
図4(A)に交差点を右折する場合のローカル地図上に描いた軌道の例を示す。なお車両100は地図上に存在しなくともよいが、ここでは説明の便宜のために描いている。認識されているオブジェクトは交差点403と交差点403に接続する道路である。道路内では、道路境界404、路肩線405、中央線406、停止線407といったオブジェクトがさらに認識されている。また交差点403と道路との接続領域としてロードエントランス408が認識されている。路肩線405についてはその外側が路肩として認識されていてもよい。なお上述した各オブジェクトは図中で一つずつしか符号を付与していないが、複数あるものについては、交差点403に接続するそれぞれの道路について認識されている。
【0031】
交差点中央409は交差点403の中央部に位置する領域である。交差点の中央部に右折の案内用の図形、例えばアステロイドが描かれている場合には、それを交差点中央409と認識してよい。また交差点中央を示すオブジェクトがない場合には、交差点オブジェクトの重心を求めて交差点中央としてもよい。この場合には交差点中央409は領域ではなく点であってよい。なお四叉路の場合には交差点オブジェクトは矩形であるので、対角線の交点を中央としてよい。三叉路については交差点中央を決定しなくともよい。五叉路以上の場合には、交差点の形状に応じて重心を求めればよい。
【0032】
このように認識された道路及び交差点を含むローカル地図上で、車両100の現在位置から交差点に進入する位置までの、現在車線(即ち自車が走行する走行領域)内の軌道の軌道情報が、点401A~点401Cまでの第一点列401として生成される。軌道は車線の中央あるいはそれよりも路肩寄りまたは中央線よりに決めてよい。右折の指示があり、交差点403の右折後の道路が認識されると、目的車線、即ち移動先の車線内の軌道の軌道情報が、点402A~点402Cまでの第二点列402として生成される。右折後の軌道情報の第二点列402は、検知ユニット15や検知ユニット16のカメラにより撮影できた範囲で生成される。したがって交差点に接近するほどその範囲は広がり、より先まで軌道情報を生成できる。
【0033】
ここで、現在走行している車線内の軌道である第一点列401と、右折後の車線内の軌道である第二点列402とが生成される(或いは生成されていると)と、それらを互いに接続する曲線が最初の候補軌道として決定される。この現在車線と目的車線とを接続する軌道は本例では単曲線であってよい。すなわち、第一点列401で示される軌道と第二点列402で示される軌道とは、それぞれの軌道との接続点において同じ傾きを持つ円弧により接続される。円弧により接続される点のうち、現在軌道の側の点を始点、目的軌道側の点を終点と呼ぶ。始点及び終点として最初に選択される点は、本例では、少なくとも一方はロードエントランス上にある点である。また他方は、当該ロードエントランス上の点と単曲線で接続できるロードエントランス上の点またはそのロードエントランスに接続された車線内の軌道上の点とする。最初に接続される点の選択については図5を参照してあらためて説明する。なお現在車線の軌道が交差点のロードエントランスに達する位置を現在車線の終了位置、目的車線の軌道が交差点のロードエントランスから発する位置を目的車線の開始位置と呼ぶ。
【0034】
図4(A)の例では、最初に始点および終点として選択される点は第一点列第二点列共にロードエントランス上にある点であり、それぞれ点401A、点402Aである。このとき始点と終点とを接続する単曲線411Aの中心は交差点403の右下角点となる。
【0035】
始点と終点とを接続する単曲線の軌道が決定されたなら、その軌道を走行する車両100と回避対象領域(回避領域とも呼ぶ。)との干渉を判定する。この判定は、回避対象領域と軌道との最小距離が所定距離以上か否かを判定することで行ってよい。回避対象領域と軌道との最小距離が所定距離に満たない場合には、軌道に沿って走行する車両100は回避対象領域と干渉すると判定できる。そこで所定距離は少なくとも車両100の車幅の半分であり、それにマージンを付加した値であってよい。回避対象領域には、交差点中央409を含む。また回避対象領域には路肩線405を含み、さらに中央線406を含めてもよい。なお回避対象領域と軌道との最小距離が所定距離に満たない状態を、ここでは回避対象領域と軌道とが干渉するという。
【0036】
干渉がないと判定されればその軌道に基づいて、軌道上の点列からなる軌道情報を生成する。これによって現在走行している走行車線の軌道と、右折後の車線の軌道とがすべて点列で示された軌道情報となる。車両100はこの軌道情報に基づいて、軌道に沿って走行するよう制御される。
【0037】
一方干渉があると判定されれば、新たな候補軌道が決定される。そのためにまず第一点列のうち、現在の始点よりも交差点から遠ざかる位置にある、現在の始点の隣接点が新たな始点として選択される。また、第二点列のうち、現在の終点よりも交差点から遠ざかる位置にある、現在の終点の隣接点が新たな終点として選択される。そしてそれら始点と終点とを接続する単曲線が次の候補軌道として決定される。この後は前述した通り、回避対象領域との干渉が判定されて、干渉がなければ上述した要領で軌道情報が生成され、また干渉があれば新たな始点と終点とが選択されて、次の候補軌道が決定される。
【0038】
図4(A)の例では、始点401A、終点402Aをつなぐ単曲線411Aの軌道が交差点中央409と干渉する場合には、始点401Bと終点402Bとが再選択され、単曲線411Bがそれらを接続する軌道として決定される。それでもなお干渉する場合には始点401Cと終点402Cとが再選択され、単曲線411Cがそれらを接続する軌道として決定される。図4(A)の例では、この軌道を走行する車両100'は交差点中央409と干渉しないため、単曲線411Cが最終的に軌道として決定され、その軌道情報が生成される。
【0039】
なお本実施形態では、決定した軌道と回避対象領域とが干渉する場合には、単曲線の始点と終点の両方を再選択するものとしたがそのうちの一方としてもよい。また上述したような軌道情報の生成は車両100が走行中に行われる。そのため、第一点列401のうちから選択できる点は車両100と交差点403の現在の走行車線のロードエントランスとの間にある点に限られ、その数は走行につれて減少する。そのため、始点として再選択できる点がない場合には、終点のみを再選択してもよい。
【0040】
●最初の始点及び終点の選択
ここで図5を参照して、最初の始点と終点を選択する方法の一例を説明する。図5図4(A)をより一般化した四叉路を示している。図5では交差する道路は直交しておらず、また道路幅が相異なる。図5において現在自車が走行する現在車線の終了位置は点501Aであり、右折後に走行する、移動先となる目的車線の開始位置は点502Aである。道路幅の相違により、これらの点を始点及び終点として単曲線接続することはできない。単曲線で接続できるのは、現在の車線の軌道の延長線と、右折後の車線の軌道の延長線との交点(交会点)から等距離にある点同士となる。そこで、現在の車線の軌道の延長線と、右折後の車線の軌道の延長線との交点510を決定し、交点510と始点501Aとの距離deと交点510と終点502Aとの距離dtとを求め、それらを比較する。同じ値であれば、すなわち差が所定値以内であれば、始点501Aと終点502Aとは円弧で接続できるので、それぞれを始点および終点として選択し、図4(A)で説明した要領で軌道を決定する。
【0041】
一方、距離deと距離dtとの差が所定値を超えていれば、いずれか一方に合わせて始点または終点を選択し直す。図5ではde<dtであるので、deに合わせて交点510からの距離がdeとなる終点502Bを選択し直すか、dtに合わせて交点510からの距離がdtとなる始点501Bを選択し直す。ただし前者の方法では、終点が交差点内に位置することとなり、曲線の曲率が大きくなって交差点中央と干渉しやすくなる。そこでそのような終点を選択し直してもよいが、本例では交点510から距離が大きい方の点に合わせて他方の点を選択し直す。図5の例では、長い方の距離dtに合わせて交点510からの距離がdtとなる始点501Bを選択し直す。こうすることで、交差点中央と軌道との干渉を避けやすくなる。なお上述のようにして決定した点の位置が、第一点列や第二点列に含まれた点の位置と一致していない場合には、決定した位置に最も近い点を、第一点列および(または)第二点列から選んでよい。
【0042】
このようにして選択した始点と終点とをつなぐ円弧の中心は、それぞれの点を通り、それぞれの軌道に直交する直線の交点となる。図5では、始点501B、終点502Aであれば中心点は点511Bであり、始点501A、終点502Bであれば中心点は点511Aであり、始点501C、終点502Cであれば中心点は点511Cである。なお始点501C、終点502Cは、始点501B、終点502Aとして決定した軌道が交差点中央と干渉する場合に再選択される点である。
【0043】
●交差点において路肩側へ曲がる際の軌道の決定
ここまで車両が交差点を右折すなわち対向車線側に曲がる軌道について説明した。左折する場合すなわち路肩側に曲がる軌道についても回避対象領域との干渉を避けるような軌道を選択する。図4(B)にその一例を示す。
【0044】
左折の場合にも右折と同じ要領で走行車線の軌道の点列と左折後の軌道の点列とを円弧により接続して軌道情報を生成する。ただし左折の場合には、交差点中央との干渉よりも、走行車線の左側(曲がる側)の路肩線(すなわち路肩)との干渉が起きやすい。そこで、路肩との干渉がある場合には、それを回避するために交差点を曲がる曲線の曲率を大きくするように、すなわち単曲線の半径を小さくするように始点と終点とを再選択する。すなわち、走行車線の終点と左折後の車線の始点それぞれの延長線上の点を再選択して、それらの点を接続する曲線を新たな軌道として決定する。
【0045】
図4(B)の例では交差点中央409のほか、路肩413との干渉も判定される。干渉すると判定されれば、最初の始点411Aと最初の始点412Aとを交差点内に延長した点411Bと点412Bとが始点及び終点としてそれぞれ再選択される。そして始点と終点とを結ぶ曲線を新たな軌道として決定する。なお図4(B)では、路肩413として、干渉しやすいと考えられる交差点内の路肩の中央部分を用いているが、路肩線の外側の領域全体を回避対象領域としてもよい。この回避対象領域と、選択されている始点と終点とを接続する曲線との最小距離が所定値(車両幅の半分+マージン)と比較されて干渉が判定される。これは交差点中央と同様である。
【0046】
なお上述のようにしてより半径の小さな単曲線の軌道を選択すると、走行制御上の制限から走行が困難な軌道ともなり得る。そこでそのような場合には、現在車線および目的車線の軌道を中央線側にずらして再設定し、交差点を曲がる際の単曲線の軌道の半径を大きくしてもよい。もちろんこの場合にも中央線と車両との干渉がないように軌道がずらされる。
【0047】
図4(A)では路肩等、交差点中央以外の回避対象領域と軌道との干渉については説明していないが、それらについても干渉の判定をおこなってよい。複数の回避対象領域を考慮する場合、ひとつの回避対象領域との干渉を避けるための軌道の再生成が、他の回避対象領域との干渉をもたらすこともあり得る。そのような場合には、回避対象領域に予め優先度を設けておき、優先度のより高い回避対象領域との干渉を優先的に避けるような軌道を決定してよい。
【0048】
●軌道情報生成処理
以上説明した軌道決定および軌道情報生成処理の手順をまとめたフローチャートの一例を図6に示す。図6は制御ユニット30(制御部とも呼ぶ)により、特にそのCPUによりプログラムを実行することで実現される。この処理は図3の機能モジュールのうち軌道生成部312および回避領域検出部313による処理に相当する。オブジェクト認識部311による画像認識処理は、図6の処理とは非同期に実行されており、図6の手順ではその認識結果を参照して処理を実行する。またオブジェクト認識部311による画像認識処理も、図6の処理も、いずれも車両100の走行中は継続的に実行されている。
【0049】
まず認識された道路オブジェクトのうちから現在車線及び目的車線を特定し、それらを通る軌道の軌道情報を、取得した画像の範囲で生成する(S610)。なお交差点がなければ目的車線はないので、現在車線のみを対象としてよい。ここではたとえば図4(A)に示した第一点列401が生成される。また画像中に交差点を経て接続される道路が認識されている場合には、目的車線が特定できるので、第二点列402も生成してよい。ただしこの段階では交差点をどの方向に進むのか不明であるので、直進方向を目的車線として第二点列402を作成してよい。あるいは、走行の可能性のあるすべての道路の目的車線を決定してそれぞれの目的車線について第二点列402を作成しておいてもよい。
【0050】
次に方向指示スイッチ37による右折又は左折の指示を受信した判定をする(S601)。右折又は左折の指示がない場合にはステップS600を繰り返し実行する。一方右折又は左折が指示された場合には、車両100の進路に交差点があるか判定する(S602)。すなわち、オブジェクト認識部311により認識されたオブジェクトに交差点オブジェクトが含まれているが判定する。交差点が含まれていなければ交差点以外の右折または左折の指示か、或いは車線変更の指示、または停止指示などであるので、それらの指示に応じた経路を決定する(S608)。
【0051】
ステップS602で交差点があると判定した場合には、オブジェクト認識部311により認識されているオブジェクトのうちから回避対象領域を検出し、特定する(S603)。既に述べたように、回避対象領域には、交差点中央領域(交差点中央)、路肩、その他の障害物を含む。交差点中央にそれを示すオブジェクト(例えばアステロイド図形)があればそれを交差点中央として回避対象領域とするが、そのようなオブジェクトがない場合には交差点の重心を求め、重心を交差点中央として特定する。四叉路であれば、交差点は、交差点中央を対称点とする点対称の構造を持つことが多いので、通常はこれで十分である。非対称の交差点については、道路の中央線などを参照して、求めた重心位置を中央線のずれに応じて移動するなどして交差点中央の位置を調整してもよい。
【0052】
次に現在車線の軌道を示す点列と、目的車線の軌道を示す点列とを決定し、その軌道が交差点に接する点を始点と終点としてそれぞれ特定する(S604)。現在車線の軌道と目的車線の軌道とは、本例では単曲線で接続されるので、それぞれの軌道から交会点を決定し、交会点から等距離となるよう始点と終点とを決定する。この決定の仕方については図5で説明したとおりである。
【0053】
始点と終点とが決定されたなら、それらを接続する曲線、ここでは単曲線を構成する円弧が決定される(S605)。円弧を決定するのは中心と半径であるが、中心は、始点を通って現在車線の軌道に直交する線と、終点を通って目的車線の軌道に直交する線との交点である。半径は、中心から始点又は終点までの距離である。
【0054】
次に決定した軌道と回避対象領域との干渉があるか判定する(S606)。これも前述した通り、軌道と回避対象領域との最小距離が、少なくとも車両100の車幅の半分であるような所定値を超えていなければ干渉があると判定される。本例では、回避対象領域として交差点中央および路肩を含むが、他の障害物等も回避対象領域として含まれてよい。
【0055】
ステップS606で干渉があると判定された場合には、干渉する回避対象領域の位置に応じて始点と終点の位置をずらす(S609)。車両が右折し、回避対象領域が交差点中央の場合には、交差点中央のより遠くから、より大きな半径で曲がるように始点と終点とが変更される。これは図4(A)で説明したとおりである。車両が左折し、回避対象領域が路肩の場合には、交差点中央のより近くから、より小さな半径で曲がるように始点と終点とが変更される。これは図4(B)で説明したとおりである。その後ステップS605に戻り、再選択した始点と終点とを接続する曲線を特定して、それ以降の処理を繰り返す。すなわち始点と終点とを再選択して、回避対象領域と干渉しないように軌道情報を再生成する。
【0056】
ステップS606で干渉がないと判定された場合には、それまでの決定した軌道は回避対象領域と干渉しないため、その軌道から軌道情報を生成する(S607)。すなわち、決定した軌道上の点列を生成する。点列の各点は、ローカル地図上の位置により示されてよい。その後ステップS600に戻る。
【0057】
以上の手順で生成した軌道情報を参照して、車両制御部314により車両100は操舵制御され、決定された軌道を跨ぐように走行する。軌道は回避対象領域との干渉がないと判定されているので、軌道に沿って走行することで、回避対象領域との干渉、たとえば交差点中央や路肩を踏むことを回避できる。
【0058】
このようにして、交差点を曲がる際に、回避対象領域と干渉しない軌道を決定できる。より具体的には、交差点を対向車線側へと曲がる際には、特に交差点中央と干渉しないよう軌道を決定できる。また、交差点を路肩側へと曲がる際には、特に路肩と干渉しないよう軌道を決定できる。これにより交通法規を遵守し、かつ安全に走行することができる。
【0059】
●実施形態のまとめ
1.移動体が走行する走行領域から、移動先の走行領域へ移動する軌道を示す軌道情報を生成する軌道生成装置であって、
前記移動体が走行する走行領域における軌道と、前記移動先の走行領域における軌道をそれぞれ第一点列と第二点列で出力し、前記第一点列内の点を始点にし、前記第二点列内の点を終点とする曲線として、前記移動体が走行する走行領域から、前記移動先の走行領域へ移動する軌道の軌道情報を生成する軌道生成部と、
カメラで撮影された画像に基づいて、回避して走行すべき回避領域を推定または検出する回避領域検出部と、を有し、
前記軌道生成部は、前記回避領域と前記軌道との距離が所定距離に満たない場合には、前記距離が所定距離以上となるように、前記始点および終点の少なくとも一方を再選択して前記軌道情報を再生成する
ことを特徴とする軌道生成装置が提供される。
この構成により、走行中の領域から移動先の領域へと、回避領域と干渉しない軌道を生成することができる。
【0060】
2.項目1に記載の軌道生成装置であって、
前記回避領域は、交差点中央および路肩の少なくとも一方を含む
ことを特徴とする軌道生成装置が提供される。
この構成により、走行中の領域から移動先の領域へと、交差点中央および路肩の少なくとも一歩と干渉しない軌道を生成することができる。
【0061】
3.項目1または2に記載の軌道生成装置であって、
前記始点が、前記移動体が走行する走行領域の終了位置の点であるか、または、前記終点が前記移動先の走行領域の開始位置の点である
ことを特徴とする軌道生成装置が提供される。
この構成により、走行中の領域の終了位置の点から移動先の領域の開始位置の点へと、回避領域と干渉しない軌道を生成することができる。
【0062】
4.項目3に記載の軌道生成装置であって、
前記始点が、前記移動体が走行する走行領域の終了位置の点である場合には、前記終点は、前記第二点列のうち、前記始点と単曲線で接続される点であり、
前記終点が前記移動先の走行領域の開始位置の点である場合には、前記始点は、前記第一点列のうち、前記終点と単曲線で接続される点である
ことを特徴とする軌道生成装置が提供される。
この構成により、走行中の領域から移動先の領域へと、単曲線で接続された、回避領域と干渉しない軌道を生成することができる。
【0063】
5.項目1乃至4のいずれか一項に記載の軌道生成装置であって、
前記軌道生成部は、前記移動体が対向車線を越えて移動する場合に、前記回避領域と前記軌道との距離が所定距離に満たない場合には、前記始点と前記終点とがより遠ざかるよう、前記始点または前記終点の少なくとも一方を再選択する
ことを特徴とする軌道生成装置が提供される。
この構成により、移動体が対向車線を越えて移動する場合に、回避領域との干渉の有無を確認しつつ、走行中の領域から移動先の領域へと、回避領域と干渉しない軌道を生成することができる。
【0064】
6.項目乃至5のいずれか一項に記載の軌道生成装置であって、
前記軌道生成部は、前記移動体が対向車線を越えずに移動する場合に、前記回避領域と前記軌道との距離が所定距離に満たない場合には、前記始点と前記終点とがより近づくよう、前記始点または前記終点の少なくとも一方を再選択する
ことを特徴とする軌道生成装置が提供される。
この構成により、移動体が対向車線を越えずに移動する場合に、回避領域との干渉の有無を確認しつつ、走行中の領域から移動先の領域へと、回避領域と干渉しない軌道を生成することができる。
【0065】
7.項目1乃至6のいずれか一項に記載の軌道生成装置であって、
前記曲線は、前記移動体が走行する走行領域における軌道又はその延長線と、前記移動先の走行領域における軌道またはその延長線とを接続する単曲線を含む
ことを特徴とする軌道生成装置が提供される。
この構成により、走行中の領域から移動先の領域へと、回避領域と干渉しない、直線と単曲線とで構成された軌道を生成することができる。
【0066】
8.項目1乃至7のいずれか一項に記載の軌道生成装置であって、
前記軌道は、前記軌道に沿って走行する車両の中央部が通る軌道であって、
前記所定距離は、少なくとも前記車両の幅の半分の長さである
ことを特徴とする軌道生成装置が提供される。
この構成により、走行中の領域から移動先の領域へと、回避領域と干渉しない、車両が走行するための軌道を生成することができる。
【0067】
9.項目1乃至8のいずれか一項に記載の軌道生成装置であって、
前記移動先の走行領域は、前記移動体が走行する走行領域から、交差点の右折又は左折を経て繋がった走行領域である
ことを特徴とする軌道生成装置が提供される。
この構成により、走行中の領域から交差点を右折又は左折して繋がる移動先の領域へと、回避領域と干渉しない軌道を生成することができる。
【0068】
10.項目1乃至9のいずれか一項に記載の軌道生成装置と、
前記軌道生成装置により生成した軌道情報により示される軌道に沿って走行を制御する走行制御部と
を有することを特徴とする移動体が提供される。
この構成により、移動体が、走行中の領域から移動先の領域へと、回避領域と干渉しない軌道を走行することができる。
【0069】
11.項目1乃至9のいずれか一項に記載の軌道生成装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。
この構成により、プログラムにより、走行中の領域から移動先の領域へと、回避領域と干渉しない軌道を走行することができる。
【0070】
12.軌道生成部と回避領域検出部とを有する制御装置により実行される、移動体が走行する走行領域から、移動先の走行領域へ移動する軌道を示す軌道情報を生成する軌道生成方法であって、
前記軌道生成部が、前記移動体が走行する走行領域における軌道と、前記移動先の走行領域における軌道をそれぞれ第一点列と第二点列で出力し、前記第一点列内の点を始点にし、前記第二点列内の点を終点とする曲線として、前記移動体が走行する走行領域から、前記移動先の走行領域へ移動する軌道の軌道情報を生成し、
前記回避領域検出部が、カメラで撮影された画像に基づいて、回避して走行すべき回避領域を推定または検出し、
前記軌道生成部は、前記回避領域と前記軌道との距離が所定距離に満たない場合には、前記距離が所定距離以上となるように、前記始点および終点の少なくとも一方を再選択して前記軌道情報を再生成する
ことを特徴とする軌道生成方法が提供される。
この構成により、走行中の領域から移動先の領域へと、回避領域と干渉しない軌道を生成することができる。
【0071】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
100...車両、30...制御ユニット、311...オブジェクト認識部、312...軌道生成部、313...回避領域検出部、314...車両制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6