(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063526
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】リニアモータ、冷却部材、位置決め装置、処理装置、デバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171558
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 たろう
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641BB16
5H641GG02
5H641GG07
5H641HH03
5H641JA09
5H641JB05
(57)【要約】
【課題】複数のコイルを効果的に冷却できるリニアモータ等を提供する。
【解決手段】リニアモータは、流される電流に応じて動力を発生させる複数のコイル4と、複数のコイル4の一方の端面に設けられ、当該複数のコイル4を冷却する冷却部材10と、を備える。冷却部材10は、複数のコイル4の内側に突出して当該複数のコイル4の内周の少なくとも一部を冷却する複数の内周冷却部18を備える。冷却部材10は、第1面および第2面を有する板状であり、複数のコイル4は、冷却部材10の第1面側および第2面側の両方に設けられ、複数の内周冷却部18は、冷却部材10の第1面および第2面の両方に設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流される電流に応じて動力を発生させる複数のコイルと、
前記複数のコイルの一方の端面に設けられ、当該複数のコイルを冷却する冷却部材と、
を備え、
前記冷却部材は、前記複数のコイルの内側に突出して当該複数のコイルの内周の少なくとも一部を冷却する複数の内周冷却部を備える、
リニアモータ。
【請求項2】
前記各内周冷却部は、前記各コイルの内周に嵌合する、請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記複数の内周冷却部は、前記複数のコイルの配列方向に沿って前記冷却部材上に配置される、請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記冷却部材は、第1面および第2面を有する板状であり、
前記複数のコイルは、前記冷却部材の前記第1面側および前記第2面側の両方に設けられ、
前記複数の内周冷却部は、前記冷却部材の前記第1面および前記第2面の両方に設けられる、
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記各内周冷却部および前記各コイルの内周の間に絶縁部材が設けられる、請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記絶縁部材は、前記複数のコイルの間に延在し、当該複数のコイルの前記一方の端面および前記冷却部材の間を絶縁する、請求項5に記載のリニアモータ。
【請求項7】
流される電流に応じて動力を発生させる複数のコイルの一方の端面に設けられ、当該複数のコイルを冷却する冷却部材であって、
前記複数のコイルの内側に突出して当該複数のコイルの内周の少なくとも一部を冷却する複数の内周冷却部を備える、
冷却部材。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載のリニアモータを動力源とする位置決め装置。
【請求項9】
請求項8に記載の位置決め装置によって被処理物を位置決めする処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の処理装置による前記被処理物の処理を通じてデバイスを製造するデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータ等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流される電流に応じて動力を発生させる複数のコイルを備えるリニアモータが開示されている。複数のコイルの両端面には、当該複数のコイルを両側から挟み込んで冷却する一対の平板状の冷却部材(以下では冷却プレートとも表される)が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、一つのコイル列に対して二枚の冷却プレートを設ける必要があり、コイルユニットが厚くなってしまう。また、二枚の冷却プレートによって各コイルの両端面は効果的に冷却されるが、各コイルの内側または内周は十分に冷却されず熱が溜まってしまう可能性もある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、複数のコイルを効果的に冷却できるリニアモータ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のリニアモータは、流される電流に応じて動力を発生させる複数のコイルと、複数のコイルの一方の端面に設けられ、当該複数のコイルを冷却する冷却部材と、を備える。冷却部材は、複数のコイルの内側に突出して当該複数のコイルの内周の少なくとも一部を冷却する複数の内周冷却部を備える。
【0007】
この態様によれば、各コイルの(一方の)端面に加えて、当該各コイルの内周の少なくとも一部を、当該各コイルの内側に突出する各内周冷却部によって効果的に冷却できる。
【0008】
本発明の別の態様は、冷却部材である。この冷却部材は、流される電流に応じて動力を発生させる複数のコイルの一方の端面に設けられ、当該複数のコイルを冷却する冷却部材であって、複数のコイルの内側に突出して当該複数のコイルの内周の少なくとも一部を冷却する複数の内周冷却部を備える。
【0009】
本発明の更に別の態様は、位置決め装置である。この装置は、上記のリニアモータを動力源とする。
【0010】
本発明の更に別の態様は、処理装置である。この装置は、上記の位置決め装置によって被処理物を位置決めする。
【0011】
本発明の更に別の態様は、デバイス製造方法である。この方法は、上記の処理装置による被処理物の処理を通じてデバイスを製造する。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リニアモータにおける複数のコイルを効果的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図2に示される平面Aによる冷却部材の断面を示す。
【
図5】
図2に示される平面Aによる電機子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明に係るリニアモータを適用可能な位置決め装置または駆動装置としてのステージ装置100を模式的に示す平面図である。ステージ装置100は、半導体ウエハ等の被処理物を載置する被駆動体としてのテーブルをX軸方向(
図1における左右方向)およびY軸方向(
図1における上下方向)に位置決めするXYステージである。ステージ装置100は、Y軸方向に延びてテーブルをY軸方向に駆動する一対のYステージ120と、X軸方向に延びてテーブルをX軸方向に駆動する、当該テーブルと一体化されたXステージ130と、定盤140を備える。一対のYステージ120は、Xステージ130のX軸方向の両端に、スライダ124を介して連結されている。Yステージ120およびXステージ130は上面視でH型をなす。
【0017】
ステージ装置100の構成のうち、少なくともテーブル、Yステージ120、Xステージ130は、内部が真空状態に保たれた真空チャンバに収容されてもよい。本明細書において「真空」とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態を表す。真空は圧力領域によって、低真空(100 kPa~100 Pa)、中真空(100 Pa~0.1 Pa)、高真空(0.1 Pa~10-5 Pa)、超高真空(10-5 Pa~10-8 Pa)、極高真空(10-8 Pa以下)等のように区分される。本実施形態のステージ装置100は、以上のいずれの区分の真空環境で使用してもよい。また、本実施形態のステージ装置100は、以上のいずれの区分にも該当しない非真空環境で使用してもよい。
【0018】
Xステージ130およびYステージ120には、後述するリニアモータ2Xおよび2Yがそれぞれ設けられる。各リニアモータ2X、2Yが発生させるX軸方向またはY軸方向の直線動力は、被駆動体としてのテーブルをX軸方向またはY軸方向に直線駆動する。X軸方向の直線駆動を担うリニアモータ2Xは、固定子およびX軸方向の軌道を構成する電機子2と、当該電機子2に沿ってX軸方向に移動可能な可動子20を備える。この可動子20には被駆動体としてのテーブルが固定されて、一体的に移動する。Y軸方向の直線駆動を担う一対のリニアモータ2Yは、固定子およびY軸方向の軌道を構成する電機子2と、当該電機子2に沿ってY軸方向に移動可能な可動子20を備える。この可動子20にはスライダ124が固定されて、一体的に移動する。ここで、一対のスライダ124がリニアモータ2Xの電機子2の両端に連結されているため、一対のリニアモータ2Yは、リニアモータ2Xの電機子2を一対のスライダ124ごとY軸方向に直線駆動する。そして、リニアモータ2Xの電機子2(軌道)上にはテーブルがあるため、一対のリニアモータ2Yは、テーブルをY軸方向に直線駆動することになる。
【0019】
以上のように真空環境下および非真空環境下を問わず高精度な位置決めまたは駆動を実現できる本実施形態のステージ装置100(リニアモータを動力源とする位置決め装置)は、例えば、露光装置、イオン注入装置、熱処理装置、アッシング装置、スパッタリング装置、ダイシング装置、検査装置、洗浄装置等の半導体製造装置やFPD(Flat Panel Display)製造装置等のデバイス製造装置において、非処理物としての半導体ウエハ等を載置するテーブルを被駆動体として位置決めまたは駆動する用途に好適である。なお、本実施形態のステージ装置100を適用可能な処理装置は、当該ステージ装置100または位置決め装置によって任意の被処理物を処理のために位置決めする任意の装置でよく、例えば、任意の製造装置、任意の加工装置(例えば、工作機械)、任意の検査装置でよい。
【0020】
図2は、Xステージ130およびYステージ120にそれぞれ設けられるリニアモータ2X、2Yの電機子を示す斜視図である。リニアモータは、永久磁石または電磁石によって構成される不図示の界磁と、複数のコイル4または電磁石によって構成される電機子2を備える。電機子2は長尺の略矩形板状であり、その第1面側および第2面側の両方に複数のコイル4からなるコイル列が形成されている。各コイル列は、電機子2の長手方向(
図2における略左右方向)に沿って略隙間なく略等間隔に配列された複数のコイル4を備える。
図2の例では各コイル列が12個のコイル4を備えるため、当該各コイル列に三相交流が印加される場合は12個のコイル4が4組の三相コイルに区分される。
【0021】
図2の例では、隣接する三つのコイル4によって構成される各組の三相コイルが、電機子2の剛性を高めるための柱状のリブ41によって区分されている。また、コイル4の配列方向(電機子2の長手方向)の各端部には、電機子2の剛性を高めるための柱状のエンドリブ42が設けられている。なお、本発明はリブ41および/またはエンドリブ42が設けられないリニアモータにも適用できる。
【0022】
各コイル列に対向する永久磁石または電磁石を備える不図示の界磁および/または各コイル列自体には、三相交流等の駆動電流が流された当該各コイル列が発生させる磁界による直線動力が及ぼされる。この直線動力の方向は各コイル列の配列方向(すなわち電機子2の長手方向または
図2における略左右方向)と略同じであり、当該方向に界磁および電機子2が相対的に直線移動する。界磁および電機子2は、いずれを可動子または固定子としてもよい。すなわち、界磁を可動子として電機子2を固定子としてもよいし、界磁を固定子として電機子2を可動子としてもよいし、界磁および電機子2を共に可動子としてもよい。
【0023】
また、電機子2の第1面側および第2面側のコイル列にそれぞれ対向する界磁を、互いに連結する、または、一体的に形成することによって、電機子2の両側のコイル列によって両側の界磁が一体的に駆動されるようにしてもよい。この場合、電機子2の第1面側の各コイル4と、その裏に位置する第2面側の各コイル4には略同じ駆動電流が印加される。あるいは、電機子2の第1面側および第2面側のコイル列に異なる駆動電流を印加することで、第1面側の界磁と第2面側の界磁を互いに独立に駆動してもよい。
【0024】
電機子2の複数のコイル4を冷却する冷却部材10は、当該電機子2の第1面側のコイル列および第2面側のコイル列の間に介在する。冷却部材10は長尺の略矩形板状であり、その第1面および第2面の両方に上記の各コイル列の一方の端面または内側の端面が接触するように配置されている。冷却部材10は、各面(第1面および第2面)においてそれぞれのコイル列を支持する略矩形板状の端面冷却部12と、端面冷却部12におけるコイル4の配列方向の一端部に設けられる流入部16と、端面冷却部12におけるコイル4の配列方向の他端部に設けられる流出部14と、平板状の端面冷却部12から、その法線方向に複数のコイル4の内側に突出し、当該複数のコイル4の内周の少なくとも一部を冷却する複数の内周冷却部18を備える。なお、流入部16と流出部14は逆でもよい(すなわち、後述する冷媒を流す向きを逆にして、流入部16を流出部として機能させ、流出部14を流入部として機能させてもよい)。
【0025】
流入部16は、コイル4の配列方向から逸れた位置、具体的にはコイル列の一端(
図2における右端)にあるコイル4の上部に設けられる。なお、本明細書において「上部」や「下部」等の語は、コイル列またはコイル4と流入部16等の相対的な位置関係を図面に沿って便宜的に表すものであって、鉛直方向または重力方向に沿った上部や下部を意味するものではない。以下では特に断らない限り、「上」「下」「左」「右」等の方向を表す語は、各図に示されるコイル列またはコイル4を基準とする相対的な方向を意味する。流入部16の上部には、複数のコイル4を冷却するための冷却水等の冷媒が流入する流入口16aが設けられる。冷却部材10(特に、平板状の端面冷却部12)の内部には、流入口16aから流入した冷媒をコイル列の一端側から他端側に流通させる流路が形成されている。流出部14は、流入部16と同様に、コイル4の配列方向から逸れた位置、具体的にはコイル列の他端(
図2における左端)にあるコイル4の上部に設けられる。流出部14の上部には、流入口16aから流入して冷却部材10内の流路を通ってきた冷媒が流出する流出口14aが設けられる。
【0026】
以上のように冷却部材10内の流路を流通する冷媒は、平板状の端面冷却部12の両面と接触するように配置された二つのコイル列を同時に冷却する。なお、コイル列は平板状の端面冷却部12の一方の面のみに設けられてもよい。この場合、冷却部材10内の流路を流通する冷媒は、平板状の端面冷却部12の片面と接触するように配置された一つのコイル列を冷却する。
【0027】
図3は、
図2に示される平面Aによる冷却部材10の断面を示す。なお、本図では、コイル4が点線で示されており、流入部16が省略されている。平板状の端面冷却部12の両面(第1面および第2面)には、それぞれの法線方向に突出する凸状の複数の内周冷却部18が形成されている。複数の内周冷却部18は、複数のコイル4の配列方向に沿って端面冷却部12上に配置される。複数の内周冷却部18は、溶接等によって平板状の端面冷却部12と一体的に形成されてもよいし、接着剤等によって端面冷却部12上の所定箇所(複数のコイル4の取付箇所)に取り付けられてもよいし、接着剤等によって複数のコイル4の内周に取り付けられた状態で、当該複数のコイル4と一体的に端面冷却部12上の所定箇所に取り付けられてもよい。
【0028】
いずれの場合でも、各内周冷却部18は、各コイル4の内周に嵌合するのが好ましい。各内周冷却部18および各コイル4の内周が互いに嵌合する形状となっていることで両者の組立性が向上する。例えば、平板状の端面冷却部12と一体的に形成された各内周冷却部18に各コイル4を嵌め込むことで、複数のコイル4を冷却部材10に容易に取り付けられる。これらの場合の各内周冷却部18は、各コイル4の内周の略全体に密着する(厳密には、後述する絶縁シートが介在する)ため、当該各コイル4の内周を効果的に冷却できる。但し、各内周冷却部18が各コイル4の内周に嵌合しない場合でも、少なくとも各コイル4の内側に突出していれば、各内周冷却部18と各コイル4の内周の距離が縮まるため、平板状の冷却プレート(例えば、内周冷却部18を備えない端面冷却部12のみの冷却部材10)に比べて、各コイル4の内周を効果的に冷却できる。なお、各内周冷却部18と各コイル4の内周は全く接触しなくてもよい。
【0029】
以上に加えて、本実施形態では、平板状の端面冷却部12が各コイル4の内側の端面も効果的に冷却できる。従って、本実施形態によれば、各コイル4の内側に突出する各内周冷却部18を備える冷却部材10によって、端面冷却部12による各コイル4の端面の冷却だけでなく、各コイル4の内周の少なくとも一部の冷却を効果的に行える。
【0030】
図4に示されるように、冷却部材10およびコイル4(本図では隠れて見えないが、コイル4に三相交流等を印加する導線43が示されている)は、最終的にエポキシ樹脂等の絶縁性を有する樹脂材料5によってモールドされる。仮に、平板状の端面冷却部12から各コイル4の内側に突出する各内周冷却部18が設けられない場合、代わりに樹脂材料5が各コイル4の内側に充填される。一般的に樹脂材料5は熱伝導率が低いため、各コイル4の内側に熱が溜まってしまう可能性もある。これに対して、各内周冷却部18を樹脂材料5より熱伝導率が高い材料によって形成することで、各コイル4の内周における冷却効率を高められる。このような各内周冷却部18の材料は、樹脂材料5より熱伝導率が高い任意の材料でよいが、例えば、実質的に無磁性のSUS(ステンレス鋼)等の金属材料とするのが好ましい。また、各内周冷却部18は、冷却部材10を共に構成する端面冷却部12と同じ材料(SUS等)で形成するのが好ましいが、端面冷却部12と異なる材料で形成されてもよい。
【0031】
複数のコイル4の内側に突出する複数の内周冷却部18を冷却部材10に設けることによって、樹脂材料5によるモールド作業を容易にできるという副次的な効果がある。すなわち、複数の内周冷却部18が設けられない場合は、絶縁性の確保等のために複数のコイル4の内側に樹脂材料5を確実に充填する必要がある。これに対して、各内周冷却部18があれば、各コイル4の内側の全部または一部が当該各内周冷却部18によって既に充填されているため、その部分には樹脂材料5を充填する必要がなくなる。但し、後述するように、各コイル4の内周と各内周冷却部18の間を絶縁する絶縁シート等の絶縁部材を設ける必要はある。
【0032】
各内周冷却部18における冷却効率を更に高めるために、端面冷却部12内の冷媒の流路と連通する流路が当該各内周冷却部18内に設けられてもよい。但し、各内周冷却部18内に冷媒の流路が設けられなくても、当該各内周冷却部18は冷媒によって冷えた端面冷却部12に接触することで比較的低温になっている。このため、各内周冷却部18は流路がなくても各コイル4の内周を効果的に冷却できる。このように、流路を持たない各内周冷却部18は、端面冷却部12と別体的に形成されて、各コイル4の内周に嵌め込まれる金属等のブロックまたはピース(金属片)として構成されてもよい。
【0033】
図5は、
図2に示される平面Aによる電機子2の断面図である。なお、本図では、
図2に示されていない樹脂材料5(モールド)も示されている。各コイル4と冷却部材10の間または境界には、両者を絶縁する絶縁部材としての絶縁シート44が設けられる。各コイル4を構成する導線自体も絶縁されてはいるが、突発的な大電流が流れた場合等に、典型的には金属材料によって構成される端面冷却部12および内周冷却部18への漏電が発生するのを防止するためである。冷却部材10の各側(
図5における左右側)にそれぞれ設けられる絶縁シート44は、コイル4の配列方向(
図5における紙面に垂直な方向)に延在し、複数のコイル4(
図5には一つのコイル4のみが示されている)と冷却部材10間を絶縁する。絶縁シート44は、複数のコイル4の内側の端面および平板状の端面冷却部12の間を絶縁する(なお、複数のコイル4の外側の端面は樹脂材料5によって絶縁されている)。また、絶縁シート44は、複数のコイル4の内周および突起状の複数の内周冷却部18の間を絶縁する(なお、複数のコイル4の外周は樹脂材料5によって絶縁されている)。
【0034】
複数のコイル4と冷却部材10の間に絶縁シート44を効率的に配置するために、絶縁シート44には、複数のコイル4の内周または複数の内周冷却部18の外周に対応する位置に複数の孔を予め形成するのが好ましい。
図5の例のように、端面冷却部12および複数の内周冷却部18が一体的に形成されている場合、絶縁シート44の各孔に各内周冷却部18が入るように、絶縁シート44が冷却部材10に取り付けられる。この時、絶縁シート44の各孔の内縁部が、突起状の内周冷却部18によって外側(
図5における左右側)に折り曲げられることで、各コイル4の内周が接触する位置まで絶縁シート44が配置される。絶縁シート44の各孔の内縁部を予め
図5のように折り曲げてもよいし、
図5のように折り曲げられやすいように折り目を付ける等の予備加工を絶縁シート44の各孔の内縁部に予め施してもよい。このように絶縁シート44が冷却部材10に取り付けられた後に、両側からコイル4が取り付けられる。最後に、樹脂材料5によって全体がモールドされる。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0036】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0037】
2 電機子、4 コイル、5 樹脂材料、10 冷却部材、12 端面冷却部、18 内周冷却部、44 絶縁シート、100 ステージ装置、120 Yステージ、130 Xステージ。