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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063528
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】救命胴衣
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/012 20060101AFI20240502BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20240502BHJP
   B63C 9/08 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A41D13/012 105
A41D13/05 156
A41D13/05 175
B63C9/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171560
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 進也
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB03
3B011AB12
3B011AC10
3B011AC21
3B011AC22
3B211AA01
3B211AB03
3B211AB12
3B211AC10
3B211AC21
3B211AC22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】上着の上から救命胴衣を装着することなく膨張体の膨張を確実に可能ならしめ、また、膨張体が確実に首を下から支えかつ装着者の大気での呼吸手段を確保でき、さらに、装着感を向上させることでレジャーや作業時のみならず日常においても装着可能な救命胴衣を提供することにある。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る救命胴衣1は、左右の前身ごろ2,3と、後身ごろとからなる上着5と、該上着の該後身ごろ上部から左右の前身ごろに位置し、ガス充填により膨張可能な膨張体と、該膨張体を収納可能な収納部8と、を備える救命胴衣であって、前記収納部は、開閉部9を備え、該開閉部により、前記膨張体が膨張した際に該膨張体の少なくとも一部が外部に露出可能にされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の前身ごろと、後身ごろとからなる上着と、該上着の該後身ごろ上部から左右の前身ごろに位置し、ガス充填により膨張可能な膨張体と、該膨張体を収納可能な収納部と、を備える救命胴衣であって、
前記収納部は、開閉部を備え、該開閉部により、前記膨張体が膨張した際に該膨張体の少なくとも一部が外部に露出可能にされることを特徴とする救命胴衣。
【請求項2】
前記膨張体の前記前身ごろに位置する第1の端部と、前記上着の前身ごろとを接続するための第1の縦ベルトと、前記上着の後身ごろの上部の第1の位置と、前記上着の後身ごろの下部とを接続するための第2の縦ベルトと、を備える、請求項1に記載の救命胴衣。
【請求項3】
前記膨張体の前記後身ごろ上部に位置する第2の端部と、前記上着の前記後身ごろの上部の第2の位置とを接続するための第3の縦ベルトを備える、請求項1または2に記載の救命胴衣。
【請求項4】
前記上着の胴回りに形成される横ベルトを備え、前記第1の縦ベルトの一方の端部は該横ベルトとの第1の交差位置で該横ベルトに接続され、前記第2の縦ベルトの一方の端部は該横ベルトとの第2の交差位置で該横ベルトに接続される、請求項2に記載の救命胴衣。
【請求項5】
前記横ベルトは、着用者の胸部の下の位置で前記前身ごろと接続される、請求項4に記載の救命胴衣。
【請求項6】
前記横ベルトは、前記第1の交差位置で前記前身ごろと接続される、請求項4に記載の救命胴衣。
【請求項7】
前記第2の縦ベルトは、前記上着の後身ごろの上部の第1の位置である着用者の首の下方の位置で前記後ろ身ごろと接続される、請求項4に記載の救命胴衣。
【請求項8】
前記第2の縦ベルトは、前記上着の後身ごろの下部の前記第2の交差位置で前記後ろ身ごろと接続される、請求項4に記載の救命胴衣。
【請求項9】
前記横ベルトは、その少なくとも一部が前記上着の内部に配置されている、請求項4に記載の救命胴衣。
【請求項10】
前記第2の縦ベルトは、その少なくとも一部が前記上着の前記後身ごろの内部に配置されている、請求項3に記載の救命胴衣。
【請求項11】
前記横ベルトは、前記第1の交差位置と前記第2の交差位置とにおいて前記上着に固定される、請求項4に記載の救命胴衣。
【請求項12】
前記横ベルトはサイズ調整可能にされ、前記上着は、横ベルトを案内するための案内部を備える、請求項4に記載の救命胴衣。
【請求項13】
前記上着の下部には、サイズ調整可能な第2の横ベルトが設けられている、請求項4に記載の救命胴衣。
【請求項14】
前記上着は、その内側又は外側の少なくともいずれかに収納ポケットを有する、請求項1に記載の救命胴衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水難時に着用者の身体を浮かせられるようにするための救命胴衣、特に、海、川、湖での釣りやヨット等のレジャー、海洋工事等の作業時だけでなく、ウォーキング等の外出時に日常においても着用することができる救命胴衣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水難時を想定して海、川、湖でのレジャーや作業時に着用する様々な救命胴衣が知られている。
【0003】
このような救命胴衣として、例えば、特許文献1には、作業用上着の内側の着用者の背中部に接触する部分に膨張式救命胴衣を設置し、充気装置を該作業用上着の内側又は外側に設け、海中(水中)への転落時に手動又は自動的に炭酸ガスにて救命胴衣を膨張させて人命を救助することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-172388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の救命胴衣では、膨張体が膨張する際に、身体(下着)と作業用上着との間で膨張するため、膨張体が膨張しきらなかったり、身体を不必要に圧迫し装着感が悪くなってしまうという問題があった。また、膨張体の支持が腰のベルトと膨張体端部との間のみであるため、首後部から膨張体が外れ易く、首を下から支えかつ装着者の大気での呼吸手段を確保する姿勢を維持することが難しいという問題もあった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上着の上から救命胴衣を装着することなく膨張体の膨張を確実に可能ならしめ、また、膨張体が確実に首を下から支えかつ装着者の大気での呼吸手段を確保でき、さらに、装着感を向上させることでレジャーや作業時のみならず日常においても装着可能な救命胴衣を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣は、左右の前身ごろと、後身ごろとからなる上着と、該上着の該後身ごろ上部から左右の前身ごろに位置し、ガス充填により膨張可能な膨張体と、該膨張体を収納可能な収納部と、を備える救命胴衣であって、前記収納部は、開閉部を備え、該開閉部により、前記膨張体が膨張した際に該膨張体の少なくとも一部が外部に露出可能にされる。
【0008】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣は、前記膨張体の前記前身ごろに位置する第1の端部と、前記上着の前身ごろとを接続するための第1の縦ベルトと、前記膨張体の前記前身ごろに位置する第1の端部と、前記上着の前身ごろとを接続するための第1の縦ベルトと、前記上着の後身ごろの上部の第1の位置と、前記上着の後身ごろの下部とを接続するための第2の縦ベルトと、を備えるように構成される。また、本発明の一実施形態に係る救命胴衣は、前記膨張体の前記後身ごろ上部に位置する第2の端部と、前記上着の前記後身ごろの上部の第2の位置とを接続するための第3の縦ベルトを備えるように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣は、前記上着の胴回りに形成される横ベルトを備え、前記第1の縦ベルトの一方の端部は該横ベルトとの第1の交差位置で該横ベルトに接続され、前記第2の縦ベルトの一方の端部は該横ベルトとの第2の交差位置で該横ベルトに接続される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣において、前記横ベルトは、着用者の胸部の下の位置で前記前身ごろと接続される。また、本発明の一実施形態に係る救命胴衣において、前記横ベルトは、前記第1の交差位置で前記前身ごろと接続される。また、本発明の一実施形態に係る救命胴衣において、前記第2の縦ベルトは、前記上着の後身ごろの上部の第1の位置である着用者の首の下方の位置で前記後ろ身ごろと接続される。また、本発明の一実施形態に係る救命胴衣において、前記第2の縦ベルトは、前記上着の後身ごろの下部の前記第2の交差位置で前記後ろ身ごろと接続される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣において、前記横ベルトは、その少なくとも一部が前記上着の内部に配置されている。また、本発明の一実施形態に係る救命胴衣において、前記第2の縦ベルトは、その少なくとも一部が前記上着の前記後身ごろの内部に配置されている。
【0012】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣において、前記横ベルトは、前記第1の交差位置と前記第2の交差位置とにおいて前記上着に固定される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣において、前記横ベルトはサイズ調整可能にされ、前記上着は、横ベルトを案内するための案内部を備えるように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣において、前記上着の下部には、サイズ調整可能な第2の横ベルトが設けられている。
【0015】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣において、前記上着は、その内側又は外側の少なくともいずれかに収納ポケットを有するように構成される。
【発明の効果】
【0016】
上記実施形態によれば、上着の上から救命胴衣を装着することなく膨張体の膨張を確実に可能ならしめ、また、膨張体が確実に首を下から支えかつ装着者の大気での呼吸手段を確保でき、さらに、装着感を向上させることでレジャーや作業時のみならず日常においても装着できる救命胴衣を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】本発明の一実施形態に係る救命胴衣1の正面図である。
図1b】本発明の一実施形態に係る救命胴衣1において膨張体7を取り出した状態の正面図である。
図1c】本発明の一実施形態に係る救命胴衣1において膨張体7を取り出した状態の背面拡大図である。
図1d】本発明の別の実施形態に係る救命胴衣1の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る救命胴衣1の背面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る救命胴衣1の膨張体7と各ベルトの接続構造を説明する正面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る救命胴衣1の各ベルトを説明する図である(外部から見える部分を実線、外部から見えない部分(上着5の中を通る部分)を破線で示す)。
図5】本発明の一実施形態に係る救命胴衣1の第1の縦ベルトを説明する図である。
図6】本発明の一実施形態に係る救命胴衣1の着用図(正面)である。
図7】本発明の一実施形態に係る救命胴衣1の着用図(背面)である。
図8】本発明の一実施形態に係る救命胴衣1の素材について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る救命胴衣の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0019】
図1及び2は、本発明の一実施形態に係る救命胴衣1を説明する図である。図1は、本発明の一実施形態に係る救命胴衣1の正面図を示し、図2は、本発明の一実施形態に係る救命胴衣1の背面図を示す。
【0020】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣1は、左右の前身ごろ2,3と、後身ごろ4とからなる上着5と、該上着5の該後身ごろ4の上部6から左右の前身ごろ2,3に位置し、ガス充填により膨張可能な膨張体7と、該膨張体7を収納可能な収納部8と、を備える救命胴衣1であって、該収納部8は、開閉部9(図示の例では、ファスナー)を備え、該開閉部9により、該膨張体7が膨張した際に該膨張体7の少なくとも一部が外部に露出可能にされる。ここで、開閉部9として、着用者の胸から肩にかけての領域と肩甲骨部の領域が考えられるが、これらに限られない。また、本発明の一実施形態に係る救命胴衣1は、救命胴衣としての機能を備えたベストの他、日常においても着用可能な上着(ジャケット等)、上着と下着とが一体化された着衣等として構成することも可能であるが、本明細書では、便宜上、救命胴衣として説明する。
【0021】
図1a、1b、2及び3に示すように、この救命胴衣1の収納部8は、図1b、2の紙面の上下(首や肩を支持する部分が上側となる)方向でみて略逆U字状に形成され、上着5の該後身ごろ4の上部6から左右の前身ごろ2,3の位置に配置されている。該収納部8は当該位置で上着5に縫着され取付けられている。また、膨張体7は、同様に、略逆U字状に形成され、未膨張時において該収納部8に収納され、膨張時においては、当該開閉部(図示の例では、ファスナー)が膨張体の膨張圧力を受けて開く(ファスナーのエレメント(務歯)が外れる)ことで、膨張体7の全部若しくは少なくとも一部が収納部8から飛び出るようにして膨張する。なお、図3に係る詳細については後述する。
【0022】
収納部8は、例えば、合成繊維や天然繊維の生地、又は合成樹脂製のシートの表部11と裏部12(いずれか一方が表部、他方が裏部となるが本明細書では図1に示す通りとする)からなり、表部11と裏部12は互いの一方の縁(図示しない)が縫着され、他方の縁には開閉部9としてファスナーが設けられており(図1a、図1bの例では、外側(脇側)がファスナー、内側(体の中心側)が縫着)、ファスナーの着脱により収納部8の縁が開閉可能となっている。好ましくは、収納部8を合成繊維とすることで、膨張体7を保護する位置での耐摩耗性や耐久性が向上する。他方で、本発明の別の実施形態に係る救命胴衣1では、図1(d)に示すように、外側(脇側)が縫着、内側(体の中心側)がファスナーとしてもよい。
【0023】
当該膨張体7は、ガスボンベ(図示しない)が接続されたガス噴出装置(図示しない)から噴出されたガスが充填されることで、膨脹するようになっている。ガスボンベは、通常、炭酸ガス等を充填される。
【0024】
ガス噴出装置は、ガス噴出口(図示しない)と水浸入口(図示しない)を有しており、水難時に水浸入口に水が入ると、内部の水感知機構が反応し、自動的にガスボンベの封板が開いてガス噴出装置の噴出口から膨脹体7にガスが吹き込まれるようになっている。また、ガスボンベの封板は、ガス噴出装置の作動レバーに接続された紐(図示しない)を引張ることにより、水感知機構が正常に反応しなかった場合等、必要時に装着者が手動で開くこともできる。
【0025】
上着5は、左右の前身ごろ2,3と、後身ごろ4とからなり、ナイロン等の合成繊維や天然繊維にウレタン等の合成樹脂をコーティング又はラミネートして形成された表側部と裏側部とで構成されている。上着の表側部14又は裏側部15の少なくともいずれかには、収納ポケット16を構成してもよい(再度後述する)。収納ポケット16はその入口に適宜ファスナー(例えば、線ファスナーや面ファスナー)等を設けることで開閉するようにしてもよい。また、図8に示すように、着用者の首が上着5と接触する第1の領域Nの素材と、着用者の首の下方から着用者の胸部にかけて接触する第2の領域Sの素材とは異なるようにしてもよい。例えば、第1の領域Nは他の部位と比べて柔軟性が高い第1の素材(例えば、クロロプレーン)とすることができる。これにより、首と接触する第1の領域Nでは着用感が向上し、その他の部分では破れにくくなる。また、第2の領域Sは、通気性の良い第2の素材(例えば、ダブルラッセル)とすることができる。このように、首から胸部にかけて第2の素材を配置することで、上着5自体の荷重を首と肩とで支え易くすることができる。
【0026】
上着5には、例えば、左右の前身ごろ2,3のいずれかの内側縁部にホイッスル(図示しない)が備えられるようにしてもよく、左右の前身ごろ2,3に膨脹体7の膨脹が足りない場合に膨脹体7に空気を吹き込むためのパイプ(図示しない)が設けられるようにしてもよい。さらに、左右の前身ごろ2,3に位置する収納部8の外面に内部を視認可能なクリアウィンドウ(透明窓)17を設けるようにしてもよい。また、夜間等に目立たせるための光反射材(図示しない)を設けてもよい。
【0027】
次に、図3図4図6図7を参照して、本発明の一実施形態に係る救命胴衣1における各ベルト部材の接続関係、及びこれらと収納部8の膨張体7との接続関係の詳細について説明する。本発明の一実施形態に係る救命胴衣1は、該膨張体7の前身ごろ2,3に位置する第1の端部18と、該上着5の前身ごろ2,3とを接続するための第1の縦ベルト19(図示の例では、左右一対の第1のベルト19が示されている)と、該上着5の後身ごろ4の上部6の第1の位置と、該上着5の後身ごろの4の下部とを接続するための第2の縦ベルト21と、を備えるように構成される。ここで、当該第1の位置は、例えば、後身ごろ4の首の付け根位置21N(図7の例では後身ごろの内部の位置)である。また、該上着5の後身ごろの4下部とは、例えば、第2の縦ベルト21が後述する横ベルト22と接続ないし交差する位置である。
【0028】
また、本発明の一実施形態に係る救命胴衣1は、膨張体7の後身ごろ4上部に位置する第2の端部20と、上着5の後身ごろ4の上部の第2の位置とを接続するための第3の縦ベルト30を備えるように構成される。ここで、当該第2の位置は、例えば、後身ごろ4の中央部分から首の付け根部分までの範囲のいずれかの位置とすることができる。ここで、図1(b)、図3に示す例では、該膨張体7の第1の端部18は、膨張体7の着用者の概ね胸部より下の位置であり、該第1の端部18と該第1の縦ベルト19とは、縫着により接続されている。また、図4図5に示すように、第1の縦ベルト19は、膨張体7の第1の端部18の直下の位置23Bでさらに縫着される。第1の縦ベルト19が膨張体7の第1の端部18の直下の位置23Bと第1の交差位置23とで前身ごろ3に縫着されることで、膨張体7と上着5とが離れにくくなる。また、図1(b)、図1(c)、図3図7示す例では、該膨張体7の第2の端部20は、膨張体7の着用者の背中心であり、かつ膨張体7の膨張前における概ね首の付け根より下の位置(膨張体7の膨張後大凡首の付け根より上の位置)である。
【0029】
また、図1(c)に示すように、第2の端部20と該第3の縦ベルト30とは、縫着により接続されている。第2の縦ベルト21と第3の縦ベルト30とはそれぞれ背骨に沿うように配置されている。このようにして、膨張体7と、上着5の左右の前身ごろ2,3及び後身ごろ4とを各縦ベルトで接続することで、膨張体7と着用者との相対位置がずれない。また、本発明の一実施形態に係る救命胴衣1では、U字状に形成された膨張体7の両端18を、第1の縦ベルト19により膨張体7の下、かつ着用者の胸部より下の位置に対して接続しており、また第2の縦ベルトで着用者の背骨を支え、さらに第3の縦ベルト30で膨張体7を着用者の首の下に対して接続することで、救命胴衣1全体がねじれず、膨張体7と着用者の体の支持すべき位置(支点位置)とがずれないように構成できる。これにより、着水時に着用者の体の胸(空気室)の正面を浮かせることができ、安定した浮遊姿勢と気道確保が可能となる。
【0030】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣1によれば、上着の上から救命胴衣を装着することなく膨張体の膨張を確実に可能ならしめ、また、膨張体が確実に首を下から支えかつ装着者の大気での呼吸手段を確保でき、さらに、装着感を向上させることでレジャーや作業時のみならず日常においても装着できる救命胴衣を提供することが可能となる。
【0031】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣1は、該上着5の胴回り(図4に示す上着5の胴部に沿って設けられている横ベルトの方向)に形成される横ベルト22を備え、該第1の縦ベルト19の一方の端部は該横ベルト22との第1の交差位置23で該横ベルト22に接続され、該第2の縦ベルト21の一方の端部は該横ベルト22との第2の交差位置24で該横ベルト22に接続される。第2の縦ベルト21の他方の端部は、図4に示すように上着5の着用者の首の付け根近傍に接続される。また、当該第1の交差位置23において、第1の縦ベルト19は上着5の左右の前身ごろ2,3に縫着され、当該第2の交差位置24において、第2の縦ベルト21は、上着5の後身ごろ4に縫着されている。このようにして、上着の横ベルト22により上着5が装着者から不要に外れることを防止し、かつ横ベルト22を介して膨張体8と連結されることで、着用者から膨張体8が外れることを確実に防止しながら、着用時の装着感を大幅に向上させることができる。
【0032】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣1において、図4に示すように、該横ベルト22は、その少なくとも一部が該上着5の内部に配置されている。例えば、横ベルト22は、上着5の胴回りの脇の下(横腹)の部分や腰の部分は上着5の内部に配置され、上着5の胴回りの体の前中心(着用者の腹部領域)は上着5の外側に露出するようにされる。このように、横ベルト22が一部隠れることにより、美観を損なわないようにすることができる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣1において、該第2の縦ベルト21は、その少なくとも一部が該上着5の後身ごろ4の内部に配置されている。このようにして、美観が向上し、着用時の不都合(引っ掛かり等)が生じにくい。
【0034】
また、図1図3図4及び図6に示すように、本発明の一実施形態に係る救命胴衣1において、該横ベルト22は、該第1の交差位置23と該第2の交差位置24とにおいて該上着5に案内(図示の場合、横ベルト22はこれらの交差位置で第1の縦ベルト19、第2の縦ベルト21に案内される)又は固定される。横ベルト22と第1の縦ベルト19、横ベルト22と第2の縦ベルト21は、互いに接続されて一つの固定ベルト群を形成する。この固定ベルトは着用者の背中、胸部近傍、首の下方の位置で上着5と縫着されるため、膨張体7は着用者の体の中心線に対称に膨らむよう構成することができる。より具体的には、第1の縦ベルト19は、第1の交差位置23で前身ごろと縫着され、第1の縦ベルト19は第1の交差位置23でループ状に形成されており、ループ内を横ベルト22は挿通される(案内される)。
【0035】
図1の例では第1の縦ベルト19は左右一対であるため、第1の縦ベルト19は左の前身ごろ2と右の前身ごろ3とにそれぞれ縫着される。また、横ベルト22と第2の縦ベルト21とは、第2の交差位置24で後身ごろ4と縫着される。第2の縦ベルト21は、収納部8内に隠れており、収納部8内で後身ごろ4の第2の交差位置24と、後身ごろ4の首の付け根の位置とで縫着される。また、横ベルト22は、前身ごろ2及び前身ごろ3の第1の交差位置23で第1の縦ベルト19と接続される。両胸の下で横ベルト22と上着とを固定していることで、横ベルト22と、第1の縦ベルト19と、第2の縦ベルト21とは上着5に対し動くことなく、またずれないように配置することができる。
【0036】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣1において、該横ベルト22はサイズ調整可能にされ、該上着5は、該横ベルト22を通し、案内するための案内部(図示しない)を備えるように構成される。このようにして、横ベルト22の位置が上着に対してずれることを防止することが可能となる。
【0037】
本発明の一実施形態に係る救命胴衣1において、該上着5の下部には、サイズ調整可能な第2の横ベルト26が設けられている。このようにして、上着の横ベルト22に加えてさらに第2の横ベルト26が設けられることで、上着5が装着者から不用意に外れることをさらに防止し、引いては上着を装着した装着者から膨張体が外れることをより確実に防止しながら、装着時の装着感を大幅に向上させることができる。
【0038】
横ベルト22は、連結具27により分離可能にされ、適宜従来公知の長さ調節具(図示しない)を介して連結されて構成されている。連結具27は上着5の左右の前身ごろ2,3の間に設けられている。また、連結具27は、例えば、係止受け具と係止突具とからなり、係止突具の弾性係止部を係止受け具内に押し込むと、弾性係止部が弾性復帰して連結状態になるようにしている(いずれも図示しない)。また、連結状態は、使用者が弾性係止部(図示しない)を外側から指で押すことにより解除することができる。また、第2の横ベルト26も、連結具29により分離可能にされ、適宜長さ調節具(図示しない)を介して連結されて構成されている。連結具29は、連結具27よりも下方かつ上着5の左右の前身ごろ2,3の間に設けられている。連結具29の構成は、連結具27と同様であるため省略する。
【0039】
第1の縦ベルト19、第2の縦ベルト21には、同様に、適宜従来公知の長さ調整具(図示しない)を設けるようにしてもよく、また、必要に応じて従来公知の連結具(図示しない)を設けるようにしてもよい。
【0040】
救命胴衣1は、連結具27(及び連結具29)の連結状態を解除した状態で、救命胴衣1に腕を通し、左右の前身ごろ2,3が身体の前側に、後身ごろ4及び第2の縦ベルト26とが背後に位置するようにし、そして連結具27を連結状態にして装着する。また、必要に応じて長さ調節具により横ベルト22、第2の横ベルト26の長さを調節するようにしてもよい。
【0041】
また、救命胴衣1の膨張体7及び収納部8は、略逆U字状に限定されず、より大きな面積で装着者の身体を覆うように構成してもよい。また、図1、及び図2に示すように、上着5には表側又は裏側の少なくともいずれかに1又は複数の収納ポケット16を設けることができる。
【0042】
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る救命胴衣1に設けることができる放出孔(水放出孔)について説明する。図示のように、本発明の一実施形態に係る救命胴衣1において、収納部8に1又は複数の放出孔(水放出孔)28を設けるようにしてもよい。1又は複数の放出孔28は、例えば、収納部8の背面側であって、着用時に着用者の肩甲骨の部分に設けることができるが、これに限られない。また、1又は複数の放出孔28は、円形、楕円形、又は四角形であり、0.5~2.0mmの径長さ(考えられる穴の寸法)で200~300個形成されるが、これらに限定されるものではない。このようにして、収納部8に溜まり易い水の排水を確実に行うことが可能となる。特に、このような放出孔28を収納部の肩甲骨の位置に設けることで、(肩甲骨の位置にある)収納部8に水が溜まりにくくすることに繋がる。
【0043】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 救命胴衣
2 左前身ごろ
3 右前身ごろ
4 後身ごろ
5 上着
6 上部
7 膨張体
8 収納部
9 開閉部
11 表部
12 裏部
14 表側部
15 裏側部
16 収納ポケット
17 クリアウィンドウ(透明窓)
18 第1の端部
19 第1の縦ベルト
20 第2の端部
21 第2の縦ベルト
22 横ベルト
23 第1の交差位置
24 第2の交差位置
26 第2の横ベルト
27 連結具
28 放出孔(水放出孔)
29 連結具
30 第3の縦ベルト
N 第1の領域
S 第2の領域
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8