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特開2024-63533情報処理装置、情報処理方法及び情報処理用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063533
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20240502BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/0968
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171571
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】住田 純
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA02
2F129AA03
2F129BB03
2F129EE43
2F129HH02
2F129HH20
2F129HH21
5H181AA01
5H181CC12
(57)【要約】
【課題】移動体が交差点に進入する前に、交差点において移動すべき移動方向等の情報を提供することができる情報処理装置等を提供すること。
【解決手段】移動体が交差点に到達する前に、移動体が交差点において移動すべき移動経路に沿って、仮想移動体の移動音の音像定位を変位させつつ出力させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が交差点において移動すべき移動経路を取得する移動経路取得手段と、
仮想移動体の移動音を出力する出力手段と、
前記移動体が前記交差点に到達する前に、前記移動音の音像定位を前記移動経路に沿って変位させつつ出力させる音像定位制御手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記音像定位制御手段は、前記音像定位の変位速度を変化させることを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記音像定位制御手段は、前記仮想移動体が前記交差点を曲がるときの前記音像定位の変位速度を、前記仮想移動体が直進しているときの前記音像定位の変位速度より遅くすることを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の情報処理装置であって、
前記仮想移動体が前記交差点を通過した先の所定の道路における前記音像定位の変位速度を、前記所定の道路に関する所定の情報に基づいて決定することを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理装置であって、
前記所定の情報として、前記所定の道路の渋滞情報を取得する渋滞情報取得手段を更に備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の情報処理装置であって、
前記所定の情報として、前記所定の道路の勾配情報を取得する勾配情報取得手段を更に備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の情報処理装置であって、
前記音像定位制御手段が、前記移動音の前記音像定位を変位させつつ出力させる前に、前記交差点における前記移動経路を知らせる音声案内を出力させる音声案内制御手段を更に備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
仮想移動体の移動音を出力する出力手段を備える情報処理装置による情報処理方法であって、
移動体が交差点において移動すべき移動経路を取得する移動経路取得工程と、
前記移動体が前記交差点に到達する前に、前記移動音の音像定位を前記移動経路に沿って変位させつつ出力させる音像定位制御工程と、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
仮想移動体の移動音を出力する出力手段を備える情報処理装置に含まれるコンピュータを、
移動体が交差点において移動すべき移動経路を取得する移動経路取得手段、
前記移動体が前記交差点に到達する前に、前記移動音の音像定位を前記移動経路に沿って変位させつつ出力させる音像定位制御手段、
として機能させることを特徴とする情報処理用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、人や車両等の移動体が交差点において移動すべき移動経路を容易に把握することができる情報処理装置等の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、通知音の音像定位により運転手に誘導経路を知らせる技術が開示されており、例えば、右折すべき交差点までの距離が第1の所定距離まで近づくとt1の間隔で通知音の音像を定位させ、次いで、第2の所定距離まで近づくとt1より短いt2の間隔で通知音の音像を定位させ、更に、交差点に入ると、通知音の音像定位を退出路方向に変位させる。特許文献1によれば、運転手は、t1の間隔で鳴る通知音により曲がるべき交差点があることを認識し、次いで、t2の間隔で鳴る通知音により当該交差点が直ぐ近くであることを認識し、次いで、通知音の音像定位の変位した方向により交差点における退出路方向を認識することができる。つまり、運転手は、通知音の出力間隔により交差点までの距離を認識し、交差点内においては通知音の音像定位の変位により退出路方向を認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-162379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発明では、車両が交差点に進入しないと、その交差点において移動すべき移動経路を認識することができない、という問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、こうした問題の一例に鑑み、移動体が交差点に進入する前に、交差点において移動すべき移動経路を把握することができる情報処理装置等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、移動体が交差点において移動すべき移動経路を取得する移動経路取得手段と、仮想移動体の移動音を出力する出力手段と、前記移動体が前記交差点に到達する前に、前記移動音の音像定位を前記移動経路に沿って変位させつつ出力させる音像定位制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項8に記載の発明は、仮想移動体の移動音を出力する出力手段を備える情報処理装置による情報処理方法であって、移動体が交差点において移動すべき移動経路を取得する移動経路取得工程と、前記移動体が前記交差点に到達する前に、前記移動音の音像定位を前記移動経路に沿って変位させつつ出力させる音像定位制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項9に記載の発明は、仮想移動体の移動音を出力する出力手段を備える情報処理装置に含まれるコンピュータを、移動体が交差点において移動すべき移動経路を取得する移動経路取得手段、前記移動体が前記交差点に到達する前に、前記移動音の音像定位を前記移動経路に沿って変位させつつ出力させる音像定位制御手段、として機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における情報処理装置100の構成例を示すブロック図である。
図2】第1実施例における車載器200の構成例を示すブロック図である。
図3】第1実施例における車両RCのスピーカー217A-217Hの位置の一例を示す模式図である。
図4】第1実施例における交差点Iの一例を示す図である。
図5】第1実施例における車載器200による音像定位処理の一例を示すフローチャートである。
図6】第2実施例におけるスマートフォン400の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明を実施するための形態について、図1を用いて説明する。
【0011】
図1に示すように、情報処理装置100は、移動経路取得手段101、出力手段102、音像定位制御手段103を備える。
【0012】
移動経路取得手段101は、移動体が交差点において移動すべき移動経路を取得する。
【0013】
出力手段102は、仮想移動体の移動音を出力する。
【0014】
音像定位制御手段103は、移動体が交差点に到達する前に、移動音の音像定位を移動経路に沿って変位させつつ出力させる。
【0015】
情報処理装置100によれば、移動体が交差点に到達する前に、仮想移動体の移動音の音像定位が移動経路に沿って変位しつつ出力されることから、ユーザは交差点に進入する前に交差点の案内図を見なくても、仮想移動体の移動音から移動体が交差点において移動すべき移動経路を把握することができる。
【実施例0016】
[1.第1実施例]
図2図5を用いて、第1実施例について説明する。
【0017】
[1.1.車載器200の構成]
まず、図2を用いて、情報処理装置100の一例である車載器200の概要について説明する。図2は、車載器200の構成例を示すブロック図である。車載器200は車両RCに搭載されている。
【0018】
車載器200は、制御部211と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等からなる記憶部212と、通信部213と、表示ユニット214と、タッチパネル215と、車内マイク216と、スピーカー217A-217Hと、GPS(Global Positioning System)受信部218と、を備えて構成されている。
【0019】
制御部211は、制御部211全体を制御するCPU211aと、制御部211を制御する制御プログラム等が予め記憶されているROM211bと、各種データを一時的に格納するRAM211cと、により構成されている。制御部211又はCPU211aは、「コンピュータ」に対応する。
【0020】
制御部211は、ユーザの入力操作に応じて車両RCの目的地までの経路探索や、経路中の交差点での案内等に関する処理(後述する音像定位処理を含む)を実行する。
【0021】
記憶部212は、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム等の各種プログラムや、各種プログラムで利用されるデータや情報を記憶する。また、記憶部212は、車内マイク216に入力されたユーザ-の音声を解析し、発話内容を解釈して対応するプログラムを記憶している。なお、各種プログラムは、例えば、サーバ装置等からネットワークを介して取得されるようにしてもよいし、USBメモリ等の記録媒体に記録されたものを読み込むようにしてもよい。
【0022】
記憶部212は、地図データを記憶している。地図データは、制御部211による車両RCの目的地までの経路探索や、経路中の交差点での案内等に関する処理に必要な情報を含む。例えば、交差点の位置、形状、名称等を示す交差点データ、道路リンクデータ(勾配情報を含む)、施設等に関する地物データ等を含む。また、記憶部212は、通信部213を介して取得した渋滞情報、天候情報等を記憶する。
【0023】
通信部213は、無線通信デバイス等を有し、外部の通信機能を備えた情報処理機器と通信してデータを相互に送受信する。
【0024】
表示ユニット214は、グラフィックスコントローラ214aと、VRAM(Video RAM)等のメモリからなるバッファメモリ214bを備えて構成されている。この構成においてグラフィックスコントローラ214aは、制御部211から送られる制御情報に基づいて、表示ユニット214及びタッチパネル215の制御を行う。また、バッファメモリ214bは、それぞれのタッチパネル215に即時表示可能な画像データを一時的に記憶する。そして、グラフィックスコントローラ214aから出力される画像データに基づいて、タッチパネル215に画像が表示される。
【0025】
タッチパネル215は、表示ユニット214から受信した画像データに基づいて画像を表示させる。また、タッチパネル215は、ユーザのタッチ操作を検出し、タッチされた位置等を示すタッチ操作データを制御部211に送信する。制御部211はタッチ操作データに基づいて何れの操作がなされたかを判別し、操作内容に応じて処理を行う。
【0026】
車内マイク216は、車両内に設けられており、車両内のユーザの音声を電気信号に変換して制御部211に出力する。
【0027】
スピーカー217A-217Hは、車両内に設けられており、制御部211の制御のもと、音を出力する。なお、以下、スピーカー217A-217Hを総称してスピーカー217と言う場合がある。
【0028】
図3を用いてスピーカー217A-217Hの配置について説明する。図3は、車載器200を搭載する車両RCのスピーカー217A-217Hの位置の一例を示す模式図である。車両RCは、ユーザが搭乗する実車両であり、運転席231、助手席232及び後部座席233を有する。また、車両RCには、8つのスピーカー217A-217H及び図示しない車載器200(但し、スピーカー217A-217Hを除く。)が搭載されている。車両RCの車室前方には左からスピーカー217H、217A、217Bが設置されている。また、車室左側方にはスピーカー217G、車室右側方にはスピーカー217Cが設置されている。更に、車室後方には左からスピーカー217F、217E、217Dが設置されている。なお、スピーカー217の数や配置は図3の例に限られず、適宜変更することができる。
【0029】
なお、本実施例では、CPU211aがスピーカー217A-217Hによる音像定位を実現するための処理を実行する。つまり、CPU211aが後述する仮想車両VCの移動音の音像定位を実現し、移動音の音像定位の変位を利用して、ユーザに交差点での移動経路を案内する。なお、スピーカー217A-217Hによる音像定位を実現するための処理は、CPU211aとは別にオーディオプロセッサー等を設けて実行させることとしてもよい。
【0030】
GPS受信部218は、GPS衛星からの航法電波を受信し、GPS測位データとして車載器200の現在位置情報である緯度、経度、高度データ、進行方向の絶対方位データ及びGPS速度データ等を取得する。
【0031】
[1.2.仮想車両VCの音像定位の変位による交差点案内]
図4は、車両RCが通過する交差点Iの一例を示す図である。交差点Iは、車両RCが交差点Iへ進入するための進入路R1と、車両RCが交差点Iから退出可能な退出路R2-R5とを含む、いわゆる五叉路である。図4は、車載器200が車両RCの目的地までの経路として、交差点Iを進入路R1から進入して退出路R5から退出する移動経路を探索した場合の例を示している。
【0032】
仮想車両VCは、車両RCの前方を走行する仮想的な車両であって、移動音を出力しながら走行する。CPU211aは、車両RCが交差点Iまで所定の距離(例えば、200m)の位置に到達したことを検知すると、先行する仮想車両VCの移動音の音像定位を移動経路(進入路R1→退出路R5)に沿って変位させつつスピーカー217から出力させる。つまり、先行車両(例えば緊急車両)が音(例えばサイレン)を鳴らしながら交差点Iを進入路R1から退出路R5に抜けていく際の音の移動を疑似的に表現する。これにより、ユーザは、交差点Iに到達する前に交差点Iの案内図を見なくても、仮想車両VCの移動音から車両RCが交差点Iにおいて移動すべき移動経路を把握することができる。なお、上記所定の距離は、ユーザが交差点Iに到達する前に交差点Iにおいて移動すべき移動経路を把握できる距離を設定することとし、例えば、車両RCの車速や進入路R1の渋滞状況等に応じて適宜変更してもよい。また、仮想車両VCは、車両RCを後方から追い越して車両RCの前方に入り、その後、交差点に進入することとしてもよい。
【0033】
仮想車両VCの移動音は、任意の音を用いることができ、例えば、仮想的なエンジン音、機械音(「ピー」など)、サイレン音等にしてもよい。
【0034】
[1.3.車載器200による音像定位処理]
次に、図5に示すフローチャートを用いて、車載器200による音像定位処理について説明する。なお、図5は、車載器200による音像定位処理の一例を示すフローチャートである。また、図5に示すフローチャートが開始する前までに、車両RCの目的地までの経路探索が行われ、車両RCが目的地に向けて移動を開始していることとする。
【0035】
まず、CPU211aは、車両RCの現在位置から目的地までの経路上に、交差点があるか(残っているか)否かを判定する(ステップS101)。このとき、CPU211aは、交差点がないと判定した場合には(ステップS101:NO)、音像定位処理を終了する。一方、CPU211aは、交差点があると判定した場合には(ステップS101:YES)、次いで、次の交差点で移動すべき移動経路を取得する(ステップS102)。
【0036】
次に、CPU211aは、ステップS102の処理で取得した移動経路に基づいて、次の交差点で曲がるか否かを判定する(ステップS103)。このとき、CPU211aは、次の交差点で曲がらない(直進する)と判定した場合には(ステップS103:NO)、ステップS106の処理に移行する。一方、CPU211aは、次の交差点で曲がると判定した場合には(ステップS103:YES)、ステップS104の処理に移行する。
【0037】
次に、CPU211aは、車両RCの現在位置から、次の交差点までの距離が所定の距離になったか否かを判定する(ステップS104)。このとき、CPU211aは、次の交差点までの距離が所定の距離になっていないと判定した場合には(ステップS104:NO)、再度、ステップS104を実行する。つまり、CPU211aは、次の交差点までの距離が所定の距離になるまでステップS104の処理を繰り返す。そして、CPU211aは、次の交差点までの距離が所定の距離になったと判定した場合には(ステップS104:YES)、仮想車両VCの移動音の音像定位を次の交差点における移動経路に沿って変位させつつスピーカー217から出力させて(ステップS105)、ステップS106の処理に移行する。
【0038】
次に、CPU211aは、車両RCが交差点を通過したか否かを判定する(ステップS106)。このとき、CPU211aは、交差点を通過していないと判定した場合には(ステップS106:NO)、再度、ステップS106を実行する。つまり、CPU211aは、交差点を通過するまでステップS106の処理を繰り返す。そして、CPU211aは、交差点を通過したと判定した場合には(ステップS106:YES)、ステップS101の処理に移行する。
【0039】
以上説明したように、本実施例における車載器200は、CPU211a(「移動経路取得手段」の一例)が、車両RC(「移動体」の一例)が交差点において移動すべき移動経路を取得し、スピーカー217(「出力手段」の一例)が仮想車両VC(「仮想移動体」の一例)の移動音を出力し、CPU211a(「音像定位制御手段」の一例)が、車両RCが交差点に到達する前に、移動音の音像定位を移動経路に沿って変位させつつ出力させる。
【0040】
したがって、情報提供サーバ300によれば、車両RCが交差点に到達する前に、仮想車両VCの移動音の音像定位が移動経路に沿って変位しつつ出力されることから、ユーザは交差点に進入する前に交差点の案内図を見なくても、仮想車両VCの移動音から車両RCが交差点において移動すべき移動経路を把握することができる。
【0041】
例えば、交差点進入前の進行方向を12時方向として、その交差点で3時方向に曲がる場合と、4時方向や5時方向に曲がる場合とで音像定位の変位が違うことから、音声案内により「4時方向に曲がってください」、「5時方向に曲がってください」と伝えるよりもユーザは、交差点で曲がる方向(交差点の退出方向)を把握しやすい。また、音声案内の言語を理解できない外国人も音像定位の変位から交差点で曲がる方向(交差点の退出方向)を把握することができる。
【0042】
[1.4.変形例]
次に、第1実施例の変形例について説明する。なお、以下に説明する変形例は適宜組み合わせることができる。
【0043】
[1.4.1.変形例1]
CPU211aは、仮想車両VCの移動音について音像定位の変位速度を変化させることとしてもよい。
【0044】
[1.4.1.1.変形例1-1]
例えば、CPU211a(「音像定位制御手段」の一例)は、仮想車両VCが交差点を曲がるときの音像定位の変位速度を、仮想車両VCが直進しているときの音像定位の変位速度より遅くする。一般的に、車両が交差点を曲がる場合、交差点まで第1の速度(例えば時速40km)で直進してきて、交差点の手前で第2の速度(例えば時速20km)まで減速し、更に第3の速度(例えば時速10km)でゆっくり曲がって、交差点を抜けて直進するために再度加速するので、これを音像定位の変位速度を変化させることにより表現する。これにより、ユーザは仮想車両VCの移動音をリアルに体感することができる。
【0045】
[1.4.1.2.変形例1-2]
また、CPU211a(「音像定位制御手段」の一例)は、仮想車両VCが交差点を通過した先の退出路R5(「所定の道路」の一例)における音像定位の変位速度を、退出路R5に関する所定の情報に基づいて決定することとしてもよい。例えば、図4の退出路R5の道路状況に応じて、仮想車両VCの進入路R1における移動速度(音像定位の変位速度に対応)と異なる移動速度を、仮想車両VCの退出路R5における移動速度として決定してもよい。これを音像定位の変位により表現することにより、仮想車両VCが進入路R1を移動する場合と退出路R5を移動する場合とで移動音の音像定位の変位速度が異なるため、ユーザは、退出路R5の道路状況に関する状況を得ることができる。
【0046】
なお、この場合、CPU211aは、仮想車両VCの進入路R1における移動速度を基準に、基準より速い速度又は遅い速度を退出路R5における移動速度として決定してもよい。また、CPU211aは、この基準について、進入路R1に関する所定の情報を得て、これに基づいて仮想車両VCの進入路R1における移動速度を決定してもよい。つまり、仮想車両VCが通常時に進入路R1を移動する際の速度を標準速度とし、所定の情報に基づいて、標準速度より速い速度又は遅い速度を、仮想車両VCの進入路R1における移動速度として決定してもよい。
【0047】
[1.4.1.2.1.変形例1-2-1]
CPU211a(「音像定位制御手段」、「渋滞情報取得手段」の一例)は、上記所定の情報として、退出路R5の渋滞情報を取得し、退出路R5における音像定位の変位速度を、渋滞情報に基づいて決定することとしてもよい。例えば、仮想車両VCの移動音について音像定位の変位速度を、退出路R5が渋滞していなければ予め定めた第1の変位速度に決定し、一方、退出路R5が渋滞していれば予め定めた第2の変位速度(第1の変位速度より遅い)に決定する。また、仮想車両VCの移動音について音像定位の変位速度を、退出路R5が渋滞していれば、基準より遅くし、退出路R5が渋滞していなければ、基準より速くしてもよい。この基準は、仮想車両VCの進入路R1における移動速度([変形例1-2]参照)であってもよい。
【0048】
[1.4.1.2.2.変形例1-2-2]
CPU211a(「音像定位制御手段」、「勾配情報取得手段」の一例)は、上記所定の情報として、退出路R5の勾配情報を取得し、退出路R5における音像定位の変位速度を、勾配情報に基づいて決定することとしてもよい。例えば、仮想車両VCの移動音について音像定位の変位速度を、退出路R5が下り勾配であれば予め定めた第1の変位速度と決定し、一方、退出路R5が上り勾配であれば予め定めた第2の変位速度(第1の変位速度より遅い)と決定する。また、仮想車両VCの移動音について音像定位の変位速度を、退出路R5が上り勾配であれば、基準より遅くし、退出路R5が下り勾配であれば、基準より速くしてもよい。この基準は、仮想車両VCの進入路R1における移動速度([変形例1-2]参照)であってもよい。
【0049】
[1.4.2.変形例2]
CPU211a(「音声案内制御手段」の一例)は、仮想車両VCの移動音について音像定位を変位させつつ出力させる前に、交差点における移動経路を知らせる音声を出力させることとしてもよい。例えば、図4の例では、車両RCが交差点Iまで所定の距離(例えば、200m)の位置に到達すると、仮想車両VCの移動音について音像定位を変位させつつ出力させたが、変形例2では、さらにその前、例えば、車両RCが交差点Iまで300mの位置に到達した際に、「300m先の五叉路を左斜め方向へ曲がります」といった音声案内を出力することとする。これにより、ユーザは音声案内により五叉路で左斜め方向へ曲がることを把握し、次いで、仮想車両VCの移動音の音像定位により、五叉路での曲がり方を具体的にイメージすることができる。
【0050】
[1.4.3.変形例3]
第1実施例では、図5のステップS103の判定を入れることにより、次の交差点を直進する場合には音像定位の変位による案内をしないこととしたが、直進の場合でも音像定位の変位(移動音が真っ直ぐ前方に遠ざかるように変位)による案内をしてもよい。
【0051】
[1.4.4.変形例4]
第1実施例では、CPU211aが、図5のステップS105における、仮想車両VCの移動音の音像定位を次の交差点における移動経路に沿って変位させつつスピーカー217から出力させる出力処理を1回行う例について説明したが、この出力処理は、車両RCが交差点へ進入する前まで繰り返し行うこととしてもよい。この場合、CPU211aは、車両RCが交差点へ進入したことを位置情報等に基づいて判定して、車両RCが交差点へ進入したと判定した場合に、出力処理を終了させる。また、CPU211aは、この出力処理を、車両RCが交差点へ進入して退出するまで繰り返し行うこととしてもよい。この場合、CPU211aは、その時点における現在位置に基づいて、仮想車両VCの移動音の音像定位をその交差点における移動経路に沿って変位させつつスピーカー217から出力させる出力処理を行うこととし、車両RCが交差点を退出したと判定した場合に当該出力処理を終了させる。このように、出力処理を繰り返すことにより、ユーザは交差点Iにおいて移動すべき移動経路をより確実に把握することができる。
【0052】
なお、CPU211aは、交差点がラウンドアバウト(円形交差点)である場合には、ユーザの混乱をさけるために交差点進入前までに出力処理を終了させることとしてもよい。この場合、CPU211aは、交差点進入後は音声により退出すべき交差点出口の案内(例えば、「次の交差点出口から退出してください」といった案内)を行うこととしてもよい。
【0053】
[2.第2実施例]
次に、図6を用いて、第2実施例について説明する。第1実施例では、移動体が車両RCであり、情報処理装置が車載器200である場合について説明したが、第2実施例では、移動体が人であり、情報処理装置がスマートフォン及びイヤホンである場合について、第1実施例との相違点を中心に説明する。
[2.1.スマートフォン400の構成]
図6は、ユーザ(「移動体」の一例)のスマートフォン400の構成例を示すブロック図である。
【0054】
スマートフォン400は、制御部411と、SSD等からなる記憶部412と、通信部413と、表示ユニット414と、タッチパネル415、マイク416、スピーカー417、GPS受信部418、カメラ419を備えて構成されている。
【0055】
制御部411は、第1実施例の制御部211に相当し、制御部411全体を制御するCPU411aと、制御部411を制御する制御プログラム等が予め記憶されているROM411bと、各種データを一時的に格納するRAM411cと、により構成されている。制御部411又はCPU411aは、「コンピュータ」に対応する。
【0056】
記憶部412は、第1実施例の記憶部212に相当し、OS、アプリケーションプログラム等の各種プログラムや、各種プログラムで利用されるデータや情報を記憶する。また、記憶部412には、ブラウザとサービスAの専用アプリケーションがインストールされている。なお、各種プログラムは、例えば、サーバ装置等からネットワークを介して取得されるようにしてもよいし、USBメモリ等の記録媒体に記録されたものを読み込むようにしてもよい。
【0057】
通信部413は、第1実施例の通信部213に相当し、無線通信デバイス等を有し、通信機能を備えた他の情報処理機器と通信してデータを相互に送受信する。また、通信部413はイヤホン420と無線で通信する。
【0058】
イヤホン420は、第1実施例のスピーカー217に相当し、ユーザの耳に装着され、第1実施例のスピーカー217の代わりに、音像定位を実現する。CPU411aは、イヤホン420による音像定位を実現するための処理を実行する。つまり、CPU411aが仮想車両VCの移動音の音像定位を実現し、移動音の音像定位の変位を利用して、ユーザに交差点での移動経路を案内する。なお、イヤホン420による音像定位を実現するための処理は、CPU411aとは別にオーディオプロセッサー等を設けて実行させることとしてもよい。
【0059】
表示ユニット414は、第1実施例の表示ユニット214に相当し、グラフィックスコントローラ414aと、VRAM(Video RAM)等のメモリからなるバッファメモリ414bを備えて構成されている。この構成においてグラフィックスコントローラ414aは、制御部411から送られる制御情報に基づいて、表示ユニット414及びタッチパネル415の制御を行う。また、バッファメモリ414bは、それぞれのタッチパネル415に即時表示可能な画像データを一時的に記憶する。そして、グラフィックスコントローラ414aから出力される画像データに基づいて、タッチパネル415に画像が表示される。
【0060】
タッチパネル415は、第1実施例のタッチパネル215に相当し、表示ユニット414から受信した画像データに基づいて画像を表示させる。また、タッチパネル415は、操作者のタッチ操作を検出し、タッチされた位置等を示すタッチ操作データを制御部411に送信する。制御部411はタッチ操作データに基づいて何れの操作がなされたかを判別し、操作内容に応じて処理を行う。
【0061】
マイク416は、第1実施例の車内マイク216に相当し、ユーザの音声を電気信号に変換して制御部411に出力する。
【0062】
スピーカー417は、制御部411の制御のもと、音を出力する。
【0063】
GPS受信部418は、第1実施例のGPS受信部218に相当し、GPS衛星からの航法電波を受信し、GPS測位データとしてスマートフォン400の現在位置情報である緯度、経度、高度データ、進行方向の絶対方位データ及びGPS速度データ等を取得する。
【0064】
カメラ419は、レンズを通して撮影した画像データを制御部411に送信する。
【0065】
[2.2.仮想車両VCの音像定位の変位による交差点案内]
実施例2における仮想車両VCの音像定位の変位による交差点案内は、実施例1とほぼ同様である。但し、案内開始のタイミングは、ユーザの移動速度(徒歩の速度)を考慮して、実施例1よりも交差点に近いタイミングで行うのが好ましい。例えば、CPU411aは、ユーザが交差点Iまで所定の距離(例えば、30m)の位置に到達したことを検知した場合に、先行する仮想車両VCの移動音の音像定位を移動経路(進入路R1→退出路R5)に沿って変位させつつスピーカー217から出力させる。また、実施例1では先行する仮想移動体を仮想車両VCとしたが、これに代えて、仮想移動体を仮想人間として、仮想人間の移動音について音像定位を変位させることとしてもよい。このとき、音像定位の変位速度を人間の移動速度(例えば、徒歩の速度)に合わせても良い。また、移動音は、人間が歩いている音、走っている音等にしてもよい。
【0066】
[2.3.スマートフォン400による音像定位処理]
実施例2におけるスマートフォン400による音像定位処理は、実施例1における車載器200による音像定位処理とほぼ同様である。実施例2では、CPU411aがステップS101~ステップS106の処理を行い、ステップS105の処理では、イヤホン420から、仮想車両VCの移動音の音像定位を変位させつつ出力させる。
【0067】
以上説明したように、第2実施例では、スマートフォン400のCPU411a(「移動経路取得手段」の一例)が、車両RC(「移動体」の一例)が交差点において移動すべき移動経路を取得し、イヤホン420(「出力手段」の一例)が仮想車両VC(「仮想移動体」の一例)の移動音を出力し、CPU211a(「音像定位制御手段」の一例)が、車両RCが交差点に到達する前に、移動音の音像定位を移動経路に沿って変位させつつ出力させる。
【0068】
したがって、スマートフォン400及びイヤホン420によれば、車両RCが交差点に到達する前に、仮想車両VCの移動音の音像定位が移動経路に沿って変位しつつ出力されることから、ユーザは交差点に進入する前に交差点の案内図を見なくても、仮想車両VCの移動音から車両RCが交差点において移動すべき移動経路を把握することができる。
【0069】
[2.4.変形例]
第1実施例の変形例は、第2実施例について適宜適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 :情報処理装置
101 :移動経路手段
102 :出力手段
103 :音像定位制御手段
200 :車載器
211 :制御部
211a :CPU
211b :ROM
211c :RAM
212 :記憶部
213 :通信部
214 :表示ユニット
214a :グラフィックスコントローラ
214b :バッファメモリ
215 :タッチパネル
216 :車内マイク
217 :スピーカー
231 :運転席
232 :助手席
233 :後部座席
400 :スマートフォン
411 :制御部
411a :CPU
411b :ROM
411c :RAM
412 :記憶部
413 :通信部
414 :表示ユニット
414a :グラフィックスコントローラ
414b :バッファメモリ
415 :タッチパネル
416 :マイク
417 :スピーカー
418 :GPS受信部
419 :カメラ
420 :イヤホン
RC :車両
VC :仮想車両
R1 :進入路
R2-R5:退出路
I :交差点
図1
図2
図3
図4
図5
図6