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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063534
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】伸縮式スクリュースプレッダー
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/48 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
E01C19/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171572
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000233653
【氏名又は名称】ニチレキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501294445
【氏名又は名称】汎高圧工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】弁理士法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 祐二
(72)【発明者】
【氏名】王 斌輝
(72)【発明者】
【氏名】馬場 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】外山 昌幸
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AB01
2D052BA20
2D052BD12
2D052CA26
(57)【要約】
【課題】 施工対象路面の幅員に合わせて舗装用材料の押し広げ幅を連続的に変更することができる伸縮式のスクリュースプレッダーを提供することを課題とする。
【解決手段】 周方向の一か所で左右に切断されている板状で弾性を有する円環体を構成要素とし、一の円環体の切断部の右側部分と、隣接する他の円環体の切断部の左側部分とを連結することによって複数枚の円環体を螺旋状に連結してなる第一スクリューと、第一支軸と、前記第一スクリューを前記第一支軸を回転軸として正回転及び/又は逆回転させる回転駆動機構と、前記第一スクリューの一方端を他方端に対して前記第一支軸に沿って相対的に移動させる伸縮駆動機構とを有している伸縮スクリュー機構を備える伸縮式スクリュースプレッダーを提供することによって上記課題を解決する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮スクリュー機構を1又は複数備えている伸縮式スクリュースプレッダーであって、
前記伸縮スクリュー機構は、
周方向の一か所で円環の外周から内周まで連続する切断線によって左右に切断されている板状で弾性を有する円環体を構成要素とし、
複数枚の前記円環体を互いの円環面同士を対向させて、かつ、前記切断線の位置を一致させて整列させた状態で、一の円環体の前記切断線の右側部分と、隣接する他の円環体の前記切断線の左側部分とを、それぞれ連結することによって複数枚の前記円環体を螺旋状に連結してなる第一スクリューと、
前記第一スクリューの第一支軸と、
前記第一スクリューを前記第一支軸を回転軸として正回転及び/又は逆回転させる回転駆動機構と、
前記第一スクリューの一方端を他方端に対して前記第一支軸に沿って相対的に移動させる伸縮駆動機構とを有している、
伸縮式スクリュースプレッダー。
【請求項2】
前記円環体が、円環の内周から円環中心に向かって突出する突出片を有しており、前記突出片が円環中心をとおる前記第一支軸の挿入孔を包含している請求項1記載の伸縮式スクリュースプレッダー。
【請求項3】
前記回転駆動機構が、前記第一支軸を回転させることによって前記第一スクリューを回転させる機構であり、前記第一支軸の回転時、前記第一支軸の外周面が前記挿入孔の内周面と当接することによって、前記第一支軸の回転を前記円環体に伝える機構である、請求項2記載の伸縮式スクリュースプレッダー。
【請求項4】
前記第一スクリューの一方端が前記第一支軸の一方端と連結されており、前記伸縮駆動機構が、前記第一支軸をその軸方向に沿って移動させることにより、前記第一スクリューの一方端を、前記第一スクリューの他方端に対して相対的に移動させる機構である請求項1~3のいずれかに記載の伸縮式スクリュースプレッダー。
【請求項5】
前記円環体が、円環部分に表裏貫通する複数個の穴を有している請求項1~3のいずれかに記載の伸縮式スクリュースプレッダー。
【請求項6】
第二スクリューと、
前記第二スクリューの第二支軸と、
前記第二スクリューを前記第二支軸を回転軸として正回転及び/又は逆回転させる回転駆動機構とを有する非伸縮スクリュー機構を1又は複数備えており、
それぞれの第一支軸が同一直線上にある少なくとも2つの前記伸縮スクリュー機構の間に、1又は複数の前記非伸縮スクリュー機構が、その第二支軸を両側に位置する前記伸縮スクリュー機構の前記第一支軸と同一直線上に位置させて配置されている第一配列か、
それぞれの第一支軸が同一直線上にある少なくとも2つの前記伸縮スクリュー機構の両側に、1又は複数の前記非伸縮スクリュー機構が、その第二支軸を内側に位置する前記伸縮スクリュー機構の前記第一支軸と同一直線上に位置させて配置されている第二配列か、又は、
前記第一配列を構成する前記伸縮スクリュー及び前記非伸縮スクリューの第一支軸及び第二支軸と、前記第二配列を構成する前記伸縮スクリュー及び前記非伸縮スクリューの第一支軸及び第二支軸とが、互いに平行となる位置関係で、前記第一配列と前記第二配列の双方を有している、
請求項1~3のいずれかに記載の伸縮式スクリュースプレッダー。
【請求項7】
請求項6に記載の伸縮式スクリュースプレッダーを備えるスプレッダーボックス。
【請求項8】
前記伸縮駆動機構と連動して、スプレッダーボックスの側方仕切体を移動させる拡幅駆動機構を有する請求項7記載のスプレッダーボックス。
【請求項9】
請求項7に記載されたスプレッダーボックス内に投入される舗装用材料を、前記伸縮スクリューの前記第一スクリュー及び/又は前記非伸縮スクリューの前記第二スクリューを正逆回転させて混合する工程を含む、舗装用材料のスプレッダーボックス内再混合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクリュースプレッダーに関し、詳細には、伸縮自在のスクリューを備えた伸縮式のスクリュースプレッダーに関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト混合物やスラリー状の舗装用材料を施工面上に敷き広げるには、通常、スクリュースプレッダーが用いられている。スクリュースプレッダーは、アスファルトフィニッシャーやマイクロサーフェシング用の施工機械などの後部に接続され、先行する施工機械から予め混合された舗装用材料が施工面上に投下されると、これを回転するスクリューで施工機械の進行方向左右に押し広げ、幅員方向の全体にわたって均等に敷き広げる機械設備である。
【0003】
ところが、スクリュースプレッダーのスクリューの長さは一定であるところ、施工対象路面の幅員は現場ごとに異なっているので、施工対象路面の幅員と、スクリューを回転させて均等に押し広げられる舗装用材料の幅とが一致しないことがある。両者の差がそれほど大きくない場合には、現場作業者がスコップなどを用いて手作業で対応しているが、両者の差が大きい場合にはそのような対応は困難である。
【0004】
一方、スクリュースプレッダーによって押し広げる舗装用材料の幅員方向の幅を可変とすべく、例えば、特許文献1においては、主たるスクリュースプレッダーに延長用のスクリュースプレッダーを連結して押し広げ幅を変更する技術が、また、特許文献2においては、スクリューを長手方向に沿って二分割し、二分割されたスクリューの相対的な位置を長手方向にずらすことでスクリュー長を可変とする技術が、さらに、特許文献3においては、種々の長さのスクリュースプレッダーを用意しておいて現場の幅員に合わせて取り換え使用する技術が、それぞれ提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1、3に提案されている技術は、予め用意された固定幅のスクリュースプレッダーを継ぎ足したり、交換したりすることによって、押し広げ幅を変更するものであるので、施工対象路面の幅員に合わせて押し広げ幅を連続的に変えることができないという不都合がある。また、特許文献2に提案されている技術は、二分割されたスクリューの相対位置をずらしてスクリュー長を伸ばしたとき、スクリューの羽が180度の範囲にしか存在しないスクリュー部分が生じるので、十分で均一な押し広げ作用が期待できない恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-45221号公報
【特許文献2】特開2001-288709号公報
【特許文献3】特開2003-232008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来のスクリュースプレッダーの問題点を解決するために為されたもので、施工対象路面の幅員に合わせて舗装用材料の押し広げ幅を連続的に変更することができる伸縮式のスクリュースプレッダーを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々検討した結果、弾性を有する円環体を一か所で切断し、その複数枚を重ねて隣接する円環体同士を連結することで、自由に伸縮させることができるスクリューを備えたスクリュースプレッダーを得ることができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、伸縮スクリュー機構を1又は複数備えている伸縮式スクリュースプレッダーであって、
前記伸縮スクリュー機構は、
周方向の一か所で円環の外周から内周まで連続する切断線によって左右に切断されている板状で弾性を有する円環体を構成要素とし、
複数枚の前記円環体を互いの円環面同士を対向させて、かつ、前記切断線の位置を一致させて整列させた状態で、一の円環体の前記切断線の右側部分と、隣接する他の円環体の前記切断線の左側部分とを、それぞれ連結することによって複数枚の前記円環体を螺旋状に連結してなる第一スクリューと、
前記第一スクリューの第一支軸と、
前記第一スクリューを前記第一支軸を回転軸として正回転及び/又は逆回転させる回転駆動機構と、
前記第一スクリューの一方端を他方端に対して前記第一支軸に沿って相対的に移動させる伸縮駆動機構とを有している、
伸縮式スクリュースプレッダーを提供することによって、上記課題を解決するものである。
【0010】
好適な一態様において、前記円環体は、円環の内周から円環中心に向かって突出する突出片を有しており、当該突出片は、円環の中心をとおる前記第一支軸の挿入孔を包含している。
【0011】
円環体は、前記突出片が挿入される第一支軸のまわりに正逆回転自在であっても良いし、第一支軸の回転に伴って第一支軸とともに正逆回転するものであっても良い。
【0012】
円環体が第一支軸の回転に伴って第一支軸とともに正逆回転するものである場合、第一スクリューを回転させる回転駆動機構は、前記第一支軸を回転させることによって前記第一スクリューを回転させる機構である。回転駆動機構が第一支軸を回転させると、当該第一支軸の外周面が、前記第一支軸が挿入されている前記突出片の前記挿入孔の内周面と当接し、第一支軸の回転が前記円環体に伝達されて前記円環体が回転し、第一スクリューが回転する。
【0013】
好適な一態様において、第一スクリューの一方端は第一支軸の一方端と連結されており、前記第一スクリューの一方端を他方端に対して第一支軸に沿って相対的に移動させる伸縮駆動機構は、前記第一支軸をその軸方向に沿って移動させることにより、前記第一スクリューの一方端を、前記第一スクリューの他方端に対して相対的に移動させる機構である。
【0014】
好適な他の一態様において、前記円環体は、円環部分に表裏貫通する複数個の穴を有している。第一スクリューを構成する円環体が円環部分に表裏貫通する複数個の穴を有している場合には、第一スクリューの回転方向が切り替わった場合にも、円環体の円環部分に設けられている複数個の穴を通って舗装用材料が幅員方向内側又は外側に向かって移動することができるので、円環体で構成されている第一スクリューの回転羽に過度の力が作用することがない。これは、第一スクリューを正逆回転させて舗装用材料を混合するときに特に効果的である。
【0015】
好適なさらに他の一態様において、本発明の伸縮式スクリュースプレッダーは、
第二スクリューと、
前記第二スクリューの第二支軸と、
前記第二スクリューを前記第二支軸を回転軸として正回転及び/又は逆回転させる回転駆動機構とを有する非伸縮スクリュー機構を1又は複数備えており、
それぞれの第一支軸が同一直線上にある少なくとも2つの前記伸縮スクリュー機構の間に、1又は複数の前記非伸縮スクリュー機構が、その第二支軸を両側に位置する前記伸縮スクリュー機構の前記第一支軸と同一直線上に位置させて配置されている第一配列か、
それぞれの第一支軸が同一直線上にある少なくとも2つの前記伸縮スクリュー機構の両側に、1又は複数の前記非伸縮スクリュー機構が、その第二支軸を内側に位置する前記伸縮スクリュー機構の前記第一支軸と同一直線上に位置させて配置されている第二配列か、又は、
前記第一配列を構成する前記伸縮スクリュー及び前記非伸縮スクリューの第一支軸及び第二支軸と、前記第二配列を構成する前記伸縮スクリュー及び前記非伸縮スクリューの第一支軸及び第二支軸とが、互いに平行となる位置関係で、前記第一配列と前記第二配列の双方を有している。
【0016】
このように、本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーは、伸縮スクリュー機構だけで使用しても良いが、伸縮スクリュー機構と非伸縮スクリュー機構とを同一軸線上に並べて用いることが可能である。二種のスクリュー機構を同一軸線上に並べて用いる場合、内側の伸縮スクリュー機構を複数の非伸縮スクリュー機構で両側から挟むようにしても良いし、逆に、内側の非伸縮スクリュー機構を複数の伸縮スクリューで両側から挟むようにしても良い。また、伸縮スクリュー機構と非伸縮スクリュー機構とを、同一軸線上に単に隣接させて並べても良い。さらには、同一軸線上に伸縮スクリュー機構又は伸縮スクリュー機構と非伸縮スクリュー機構とを配置したスクリュー列を、それぞれの軸線を互いに平行になるようにして、二列若しくはそれ以上の列数で並べて配置しても良い。なお、複数のスクリュー機構が同一軸線上にあるとは、それぞれの支軸が同一軸線上にあることをいい、複数のスクリュー機構の軸線が互いに平行とは、それぞれの支軸が互いに平行であることを意味している。
【0017】
他の観点からみたとき、本発明は、本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーを備えるスプレッダーボックスを提供するものでもある。本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーを備えるスプレッダーボックスは、その好適な一態様において、伸縮スクリュー機構を構成する第一スクリューの一方端を他方端に対して前記第一支軸に沿って相対的に移動させる伸縮駆動機構と連動して、スプレッダーボックスの側方仕切体を移動させる拡幅駆動機構を有している。これにより、スプレッダーボックスの幅員方向の幅を、伸縮式スクリュースプレッダーの幅員方向の幅に合わせて、自動的に変更することができる。
【0018】
さらに他の観点からみたとき、本発明は、本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーを備えるスプレッダーボックスを用い、当該ボックス内に投入される舗装用材料を、伸縮スクリュー機構の第一スクリュー、又は伸縮スクリュー機構の第一スクリューと非伸縮スクリュー機構の第二スクリューを正逆回転させて混合する工程を含む、舗装用材料のスプレッダーボックス内再混合方法を提供するものでもある。
【発明の効果】
【0019】
本発明の伸縮式スクリュースプレッダーによれば、回転するスクリューの支軸方向の長さを連続的に変更することができるので、幅員方向の幅が種々異なる施工現場を対象とするときであっても、施工対象路面の幅員に合わせた的確な施工が可能となる。また、スクリューを継ぎ足したり、交換したりする手間が省けるので、効率の良い施工が可能となるという利点が得られる。
【0020】
本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーを備えるスプレッダーボックスについても同様であり、施工現場の幅員に合わせて、スクリューの支軸方向の長さだけでなく、スプレッダーボックスの幅員方向の幅も連続的に変化させることができるので、マイクロサーフェシング工法などによる施工を、施工現場に合わせて的確に、かつ効率よく行うことができるという利点が得られる。
【0021】
また、本発明に係るスプレッダーボックス内再混合方法によれば、スプレッダーボックス内に投下された舗装用材料をスプレッダーボックス内でスクリューを正逆回転させて、さらに混合することができるので、先行する施工機械での混合が十分でない場合であっても、スプレッダーボックス内で再混合し十分な混合状態とした上で、施工面上に押し広げることができるという利点が得られる。これは特にチキソ性を示す舗装用材料を対象とするときに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーの一例を示す平面図であり伸縮スクリュー機構が伸びた状態にあるときの平面図である。
図2】本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーの一例を示す平面図であり伸縮スクリュー機構が縮んだ状態にあるときの平面図である。
図3】円環体とその部分拡大図である。
図4】複数の円環体を円環面同士を対向させ切断線の位置を揃えて整列させた状態を示す平面図である。
図5】複数の円環体を螺旋状に連結する様子と連結板を示す図である。
図6】挿入孔に第一支軸を挿入した状態の円環体を示す正面図である。
図7】第一支軸の回転が円環体に伝達される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明について説明するが、本発明が図示されたものに限られないことはいうまでもない。
【0024】
図1は、本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーの一例を示す平面図であり、伸縮スクリュー機構が伸びた状態を示している。図1において、1は本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーであり、本例において、伸縮式スプレッダー1は、符号30で示すスプレッダーボックス内に配置されている。
【0025】
2、4、6、8は伸縮スクリュー機構である。2p、4p、6p、8pは、それぞれ、伸縮スクリュー機構2、4、6、8のスクリューであり、それぞれの第一スクリューに相当する。2s、4s、6s、8sは、それぞれ、伸縮スクリュー機構2、4、6、8の支軸であり、それぞれの第一支軸に相当する。
【0026】
一方、3、5、7、9は非伸縮スクリュー機構である。3p、5p、7p、9pは、それぞれ、非伸縮スクリュー機構3、5、7、9のスクリューであり、それぞれの第二スクリューに相当する。3s、5s、7s、9sは、それぞれ、非伸縮スクリュー機構3、5、7、9の支軸であり、それぞれの第二支軸に相当する。第二スクリュー3p、5p、7p、9pは、それぞれ、第二支軸3s、5s、7s、9sと軸方向に沿った適宜の箇所で連結されており、第二支軸3s、5s、7s、9sの回転に伴い、回転する。非伸縮スクリュー機構3、5、7、9はその構造において、従来から存在するスクリュースプレッダーにおけるスクリュー機構と何ら変わるところがない。
【0027】
図1に示す通り、本例の伸縮式スクリュースプレッダー1においては、伸縮スクリュー機構2の第一支軸2s、非伸縮スクリュー機構3の第二支軸3s、同じく非伸縮スクリュー機構5の第二支軸5s、及び伸縮スクリュー機構4の第一支軸4sは、全て同一直線上に位置しており、これら4つのスクリュー機構は、中央に位置する2つの非伸縮スクリュー機構3、5とその両側に位置する2つの伸縮スクリュー機構2、4とで、それぞれの支軸を同軸に配置した第一配列を構成している。
【0028】
伸縮スクリュー機構2の第一支軸2sは、第二支軸3sよりも小径で、その図中右側の端部を第二支軸3s内に挿入することによって、第二支軸3sに対して軸方向にスライド可能な状態で、第二支軸3sと連結されている。第一支軸2sの第二支軸3sとは反対側の端部は回転軸受10aに支承されており、第二支軸3sの第一支軸2sとは反対側の端部は回転軸受10bに支承されている。第一支軸2sは、その外周に第二支軸3sの内周と係合する係合部を備えており、第一支軸2sと第二支軸3sとは、一体的に回転する。
【0029】
伸縮スクリュー機構2における第一スクリュー2pの回転軸受10a側の端部は、回転軸受10aに回転自在に支承されている回転連結部jaと連結されている。第一スクリュー2sの反対側の端部は、非伸縮スクリュー3における第二スクリュー3pの回転軸受10bとは反対側の端部と回転連結部jbにおいて連結されており、回転連結部jbは、第二支軸3sの端部に固定されている。
【0030】
非伸縮スクリュー機構5と伸縮スクリュー機構4についても同様であり、伸縮スクリュー機構4の第一支軸4sは、非伸縮スクリュー機構5の第二支軸5sに対して軸方向にスライド可能な状態で連結されており、非伸縮スクリュー機構5と共に、回転軸受10cと10dに支承されている。第一支軸2sと同様に、第一支軸4sは、その外周に第二支軸5sの内周と係合する係合部を備えており、第一支軸4sと第二支軸5sとは一体的に回転する。
【0031】
また、伸縮スクリュー機構4における第一スクリュー4pの回転軸受10d側の端部は、回転軸受10dに回転自在に支承されている回転連結部jdと連結されている。第一スクリュー4pの回転軸受10dとは反対側の端部は、非伸縮スクリュー5における第二スクリュー5pの回転軸受10cとは反対側の端部と回転連結部jcにおいて連結されており、回転連結部jcは、第二支軸5sの端部に固定されている。
【0032】
同様に、非伸縮スクリュー機構7の第二支軸7s、伸縮スクリュー機構6の第一支軸6s、同じく伸縮スクリュー機構8の第一支軸8s、及び非伸縮スクリュー機構9の第二支軸9sは、全て同一直線上に位置しており、中央に位置する2つの伸縮スクリュー機構6、8とその両側に位置する2つの非伸縮スクリュー機構7、9とで、それぞれの支軸を同軸に配置した第二配列を構成している。
【0033】
10e、10fは回転軸受であり、それぞれ、非伸縮スクリュー機構7の第二支軸7sの一方端、及び伸縮スクリュー機構6の第一支軸6sの一方端を支承している。同様に、10g、10hは回転軸受であり、それぞれ、伸縮スクリュー機構8の第一支軸8sの一方端、及び非伸縮スクリュー機構9の第二支軸9sの一方端を支承している。第一支軸6s、8sが、それぞれ第二支軸7s、9sに対して、軸方向にスライド可能な状態で連結されており、両者が一体的に回転することは、第一配列における第一支軸2s、4sと第二支軸3s、5sにおけると同様である。
【0034】
また、伸縮スクリュー機構6における第一スクリュー6pの回転軸受10fとは反対側の端部は、非伸縮スクリュー7における第二スクリュー7pの回転軸受10eとは反対側の端部と、回転連結部jeにおいて連結されており、回転連結部jeは第二支軸7sの端部に固定されている。第一スクリュー6pの反対側の端部は、回転軸受10fに回転自在に支承されている回転連結部jfと連結されている。
【0035】
同様に、伸縮スクリュー機構8における第一スクリュー8pの回転軸受10gとは反対側の端部は、非伸縮スクリュー9における第二スクリュー9pの回転軸受10hとは反対側の端部と、回転連結部jhにおいて連結されており、回転連結部jhは第二支軸9sの端部に固定されている。第一スクリュー8pの反対側の端部は、回転軸受10gに回転自在に支承されている回転連結部jgと連結されている。
【0036】
Maは、非伸縮スクリュー機構3、5の第二支軸3sと5sを回転軸受10b及び10cの中心軸の回りに回転させる回転駆動機構であり、Mb,Mcは、それぞれ、非伸縮スクリュー機構7、9の第二支軸7s及び9sを回転軸受10e10hの中心軸の回りに回転させる回転駆動機構である。
【0037】
これらの回転駆動機構Ma、Mb、Mcは、スイッチの切り替えでそれぞれの回転駆動力が伝達される第二支軸3s、5s、及び7s、9sを正回転させたり、逆回転させたりすることができる。また、回転速度の調節も可能である。なお、本明細書において、正回転とは回転するスクリューと接する舗装用材料を幅員方向外向きに押し広げる方向の回転をいい、逆回転とは回転するスクリューと接する舗装用材料を幅員方向内向きに寄せ集める方向の回転をいうものとする。
【0038】
本例の伸縮式スクリュースプレッダー1においては、伸縮スクリュー機構2、4、6、8の第一支軸2s、4s、6s、8sは、それぞれ、非伸縮スクリュー機構3、5、7、9の第二支軸3s、5s、7s、9sと連結されているので、第二支軸3s、5s、7s、9sを回転させる回転駆動機構Ma、Mb、Mcは、それぞれが伸縮スクリュー機構2、4の第一支軸2s、4s、及び伸縮スクリュー機構6、8の第一支軸6s、8sを回転させる回転駆動機構でもある。
【0039】
非伸縮スクリュー機構3、5、7、9の第二支軸3s、5s、7s、9sを回転させる回転駆動機構Ma、Mb、Mcとは別に、伸縮スクリュー機構2、4、6、8の第一支軸2s、4s、6s、8sを正回転させたり、逆回転させたりする回転駆動機構を設けても良いことは勿論である。
【0040】
回転駆動機構Ma、Mb、Mcは、回転方向や回転速度を含めて、それぞれが独立して動作しても良いが、同じ配列に属する第二支軸7sと9sを回転させる回転駆動機構MbとMcとは、互いに同期して動作し、第二支軸7sと9sとを同方向に同じ速度で回転させるのが望ましい。一方、回転駆動機構Maは、回転駆動機構Mb及びMcとは異なる配列に属する第二支軸3s、5sを回転させる機構であるので、回転駆動機構Mb、Mcとは独立して、回転方向や回転数を別途設定することができるように構成されているのが望ましい。
【0041】
スプレッダーボックス30は、図1に示すとおり、図中矢印で示す進行方向前方側に位置する前方大径腕11a、11bと、進行方向後方側に位置する後方大径腕11c、11dと、前方大径腕11a、11bに対して、それぞれ進行方向横方向にスライド可能に連結された前方小径腕12a、12bと、後方大径腕11c、11dに対して、それぞれ進行方向横方向にスライド可能に連結された後方小径腕12c、12dと、前方小径腕12aと後方小径腕12cとを連結する側方仕切体13aと、前方小径腕12bと後方小径腕12dとを連結する側方仕切体13bとでボックスを構成している。なお、側方仕切体13a、13bの下面には、その先端が施工面と接するブラシが取り付けられており、ボックス側方からの舗装用材料の流出を防止している。
【0042】
側方仕切体13a、13bには、前述した回転軸受10a、10d、10e、10hや、回転駆動機構Mb、Mcなどが取り付けられている。後方大径腕11c、11dよりも後方には、下面に敷き均し用のブラシを有する敷き均し体14a、14b、14cが設けられている。15は、中央フレームであり、中央フレーム15には、前述した回転軸受10b、10c、10f、10gや回転駆動機構Maなどが取り付けられている。なお、敷き均し体14a、14b、14cの下面には、ブラシに代えてウレタンゴム製のヘラを取り付けても良い。同様に、上述した側方仕切体13a、13bの下面にも、ブラシに代えてウレタンゴム製のヘラを取り付けても良い。
【0043】
スプレッダーボックス30は、通常、図中矢印方向前方に位置するマイクロフェーシング工法などの施工機械の後方に連結して使用される。31は舗装用材料の投入口であり、先行する施工機械で予め混合されたスラリー状の混合物などが投入口31からスプレッダーボックス30内に投入され、装備されているスクリュースプレッダーによって幅員方向に均等に押し広げられ、敷き均し体14a、14b、14cの下面に設けられている敷き均し用のブラシによって均一な厚さに均されて、施工面に適用される。
【0044】
均一に敷き均すことができる舗装用材料の幅は、通常、スクリュースプレッダーが備えるスクリューの長さの制約を受け、図1に示すようなスクリュースプレッダーを用いる場合には、その施工幅はHとなる。
【0045】
上記施工幅Hを変化させるのが拡幅駆動機構Mwである。拡幅駆動機構Mwは、内臓する機械機構によって、前方大径腕11a、11b、及び後方大径腕11c、11dからの前方小径腕12a、12b、及び後方小径腕12c、12dの突出長さを変化させることができ、それによって、側方仕切体13a、13bを進行方向と直行する幅員方向に移動させることができる。
【0046】
側方仕切体13a、13bには、回転軸受10a、10d、10e、10hを介して、伸縮スクリュー機構2、4の第一支軸2s、4sの一端、及び非伸縮スクリュー機構7、9の第二支軸7s、9sの一端が、それぞれ連結されているので、拡幅駆動機構Mwを作動させて側方仕切体13a、13bを幅員方向に移動させると、その移動に伴い、第一支軸2s、4s、6s、8sは、第二支軸3s、5s、7s、9sに対して、その支軸方向に沿って、相対的に移動する。伸縮スクリュー機構2、4、6、8の第一スクリュー2p、4p、6p、8pの一方端は、回転連結部ja、jd、jf、jgにおいて、回転軸受10a、10d、10f、10gを介して、側方仕切体13a、13b又は中央フレーム15に連結されており、他方端は、回転連結部jb、jc、je、jhにおいて、第二支軸3s、5s、7s、9sの端部と連結されているので、結果として、第一スクリュー2p、4p、6p、8pの一方端は、他方端に対して、第一支軸2s、4s、6s、8sに沿って、相対的に移動することになる。したがって、本例の場合、拡幅駆動機構Mwは、第一スクリュー2p、4p、6p、8pの一方端を、他方端に対して、第一支軸2s、4s、6s、8sに沿って、相対的に移動させる伸縮駆動機構でもある。
【0047】
図2は、上述のようにして拡幅駆動機構Mwを動作させ、側方仕切体13a、13bを図1に示す位置から幅員方向内側に向かって移動させた状態を示している。図2に示すとおり、拡幅駆動機構Mwを動作させて側方仕切体13a13bを移動させたことにより、伸縮スクリュー機構2、4、6、8における第一スクリュー2p、4p、6p、8pの一方端は他方端に対して相対的に接近し、伸縮スクリュー機構2、4、6、8における第一スクリュー2p、4p、6p、8pは、ほぼ最大限に縮小した状態となっている。この状態では、均一に敷き均すことができる舗装用材料の幅は、ほぼ非伸縮スクリュー機構3及び5、又は7及び9の幅まで狭まり、図中Hで示す幅にまで縮小されている。同様に、側方仕切体13a、13bに連結されている敷き均し体14a、14dも、非伸縮スクリュー機構3及び5、又は7及び9の幅をカバーする位置にまで移動している。
【0048】
逆に、図2に示す状態から拡幅駆動機構Mwを逆方向に作動させて、側方仕切体13a、13bを幅員方向外側に向かって移動させると、伸縮式スクリュースプレッダー1によって押し広げることができる舗装用材料の幅、つまりは施工幅を拡大することができることは勿論である。
【0049】
このような施工幅の変更は、伸縮自在な伸縮スクリュー機構2、4、6、8の存在によって可能となるものであり、本発明の伸縮式スクリュースプレッダー1は、上述した伸縮スクリュー機構を備えることによって、均一に押し広げることができる舗装用材料の幅を、図2に示すHから図1に示すHまで、連続して、自在に変化させることができる。なお、以上の例では、拡幅駆動機構Mwは、伸縮駆動機構でもあり、双方の駆動機構を兼ねているが、拡幅駆動機構Mwとは別に、伸縮スクリュー機構2、4、6、8の第一スクリュー2p、4p、6p、8pの一方端を他方端に対して第一支軸2s、4s、6s、8sに沿って相対的に移動させる適宜の伸縮駆動機構を設けても良いことは勿論である。
【0050】
次に、上述したような伸縮式スクリュースプレッダーを可能とする伸縮スクリュー機構について説明する。
【0051】
前述した伸縮スクリュー機構2、4,6、8の第一スクリュー2p、4p、6p、8pは、それぞれが複数枚の円環体を螺旋状に連結することによって構成されているが、その中の一枚の円環体だけを取り出して図3に示す。図3(a)は円環体を示す正面図、図3はその部分拡大図、図3(c)は側面図である。
【0052】
図3(a)において、符号20は伸縮スクリュー機構の構成要素である円環体である。円環体20は弾性のある板状の材料で構成されており、その側面図は図3(c)に示すとおりである。
【0053】
円環体20は、周方向の一か所で円環の外周21から内周22まで連続する一本の切断線23によって左右に切断されている。この切断線23によって、円環体20の切断線23の右側部分αと左側部分βとは切り離されているので、円環体20の円環部分の弾性を利用して、切断線23の右側部分αと左側部分βとを、図3(a)の紙面に対して垂直方向に押すか引っ張るかして曲げて、両者の位置関係を相対的にずらすことが可能である。
【0054】
なお、図示の例では切断線23は、円環体20の外周21から内周22まで、円環体20の半径方向に沿った連続する直線であり、この線の長さが円環体20の円環の幅に相当するが、切断線23は外周21から内周22まで連続しておればよく、半径方向からずれていても良い。また、切断線23は、直線に限られず、曲線であっても、複数の直線を組み合わせた線であっても、直線と曲線を組み合わせた線であっても良い。符号γは円環体20の中心を表している。
【0055】
図3(b)の部分拡大図に示すとおり、円環体20の右側部分α及び左側部分βには、それぞれ、連結用のボルト孔a、b、cと、同じく連結用のボルト孔e、f、gが設けられている。これら連結用のボルト孔の作用については後述する。
【0056】
図3(a)に戻って、24は、円環体20の内周22から円環体20の中心γに向かって突出する突出片である。突出片24には、挿入孔25が設けられている。挿入孔25は、伸縮スクリュー機構の第一支軸の挿入孔であり、円環体20の中心γを包含している。第一支軸は、その回転中心が円環体20の中心γをとおるように挿入孔25内に挿入されるので、突出片24は、円環体20の中心γをとおる第一支軸の挿入孔25を包含している。なお、本例において、挿入孔25は正方形であるが、挿入孔25の形状は挿入される第一支軸の断面形状に応じて変わり、必ずしも正方形に限られない。
【0057】
また、突出片24は円環体20の内周22に沿ったどの位置から突出していても良いが、複数の円環体20を螺旋状に連結してなる第一スクリューの伸縮時にも、突出片24の垂直面からのずれを小さく抑えて、挿入孔25内に挿入された状態での第一支軸の突出片24に対するスムースな相対的な移動を維持するという観点からは、突出片24は、円環体20の中心γを挟んで切断線23の反対側、すなわち、内周22の切断線23からは円周方向に180度離れた位置から突出しているのが好ましい。
【0058】
円環体20の円環部分には複数個の穴26が設けられている。穴26は、複数の円環体20を螺旋状に連結してなる伸縮スクリューが回転方向を変更したときに、伸縮スクリューによる搬送途上にあり、慣性のために急に進行方向を変更することができない舗装用材料の一部を通過させるための穴である。円環体20の円環部分にこのような穴26が設けられていることによって、伸縮スクリューが急に回転方向を逆転させたときにも、スクリュー羽を構成する円環体20が舗装用材料から受ける力を緩和することができる。円環体20は、伸縮スクリュー機構の構成要素とするために、通常のスクリューコンベア等に用いられる剛性の大きな材料ではなく、弾性のある板状材料で構成されているので、回転方向の変更時、円環体20が舗装用材料から受ける力を緩和することができるのは大きなメリットとである。
【0059】
なお、円環体20における円環部分の幅には特段の制限はないが、円環の幅が余りに小さいとスクリュー羽としての搬送能力に劣ることになるので好ましくなく、逆に、余りに大きいと、切断線23の右側部分αを左側部分βに対して相対的にずらすことができる量が限られ、複数枚の円環体20を螺旋状に連結してなるスクリューに高い伸縮性を期待することができなくなるので好ましくない。したがって、円環の幅、すなわち円環部分の半径方向の幅は、円環体20の外周21の半径の1/5以上、2/3以下であるのが好ましく、半径の1/4以上、1/2以下であるのがより好ましい。
【0060】
伸縮スクリュー機構は、上述した円環体20を構成要素として以下のようにして組み立てられる。すなわち、図4は、複数枚の円環体20を、円環体20の円環面同士を対向させて、かつ、切断線23の位置を一致させて整列させた状態を示す平面図である。それぞれの円環体20の切断線23が上を向いて直線状に揃った位置にある。なお、図4では円環体20の枚数は6枚であるが、伸縮スクリュー機構を構成する円環体20の数が6枚に限られないことはいうまでもない。
【0061】
図5(a)は、図4に示す状態から、それぞれの円環体20の切断線23の右側部分αを押し込んで、図5における紙面上方に向かって曲げ、左側部分βを引っ張って、図5における紙面下方に向かって曲げた状態を示している。27は連結板である。連結板27の正面図を図5(b)に、側面図を図5(c)に示す。
【0062】
図5(b)に示すとおり、連結板27には、円環体20の右側部分α及び左側部分βに設けられている複数の連結用のボルト孔a~fに対応して、複数の貫通孔A~Fが設けられている。一枚の円環体20の右側部分αに設けられているボルト孔a~cと、連結板27の片側に並んだ貫通孔A~Cとを一致させ、両者をボルトで連結するとともに、当該連結板27の他の片側に並んだ貫通孔D~Fと、隣接する他の円環体20の左側部分βに設けられているボルト孔d~fとを一致させ、両者を連結することによって、円環体20を隣接する他の円環体20と連結することができる。用いる連結板27と連結する円環体20を変えて上記連結を繰り返すことによって、複数枚の円環体20を螺旋状に連結することができ、伸縮スクリューとすることができる。このようにして作成された伸縮スクリューは、伸縮スクリュー機構の第一スクリューとして使用することができる。
【0063】
なお、上述の例では、円環体20同士を連結するのに連結板27を用いているが、一枚の円環体20の右側部分αと隣接する他の円環体20の左側部分βとの連結は連結板27を用いた連結に限られるものではない。可能であれば、一枚の円環体20の右側部分αと隣接する他の円環体20の左側部分βとを直接連結しても良く、連結方法もボルトナットによる連結に限られず、溶接、接着、係止、嵌合、その他、一枚の円環体20の右側部分αと隣接する他の円環体20の左側部分βとを連結することができるものであれば、どのような方法で連結しても良い。
【0064】
上記のようにして作成された第一スクリューには、構成する個々の円環体20の突出片24が包含している挿入孔25に第一支軸が挿入される。図6は、円環体20の挿入孔25に第一支軸Sが挿入された状態を示している。なお、第一支軸Sに関してはその断面が示されている。また、図に示すとおり、円環体20の右側部分αは、紙面奥行き方向に押された状態にあり、左側部分βは紙面手前方向に引っ張られた状態にある。本例において、挿入孔25は正方形であり、それに対応して、第一支軸Sの断面形状は、挿入孔25よりもやや小さい正方形である。
【0065】
図7は、図6に示す状態から第一支軸Sを回転させたときの様子を示している。第一支軸Sを挿入孔25に挿入した状態で、図7に矢印で示す方向に回転させると、第一支軸Sの外周面は挿入孔25の内周面と当接し、第一支軸Sの回転に伴い、円環体20も回転する。このように、第一支軸Sを挿入孔25に挿入した状態で第一支軸Sを回転させると、第一支軸Sの外周面が挿入孔25の内周面と当接し、第一支軸Sの回転力が円環体20に伝達され、第一支軸Sを駆動源として円環体20を、さらには、複数の円環体20が螺旋状に連結された第一スクリューを回転させることができる。
【0066】
なお、挿入孔25の形状及び第一支軸Sの断面形状は本例における四角形に限られない。第一支軸Sを介して第一スクリューに回転力を伝えるという観点からは、第一支軸Sの回転時、その外周の一部が挿入孔25の内周の一部と当接すれば良く、挿入孔25の形状及び第一支軸Sの断面形状は、両者共に三角形であっても良く、四角形以上の多角形、楕円形、長円形であっても良く、一方が凹部を有し、他方がその凹部に対応する凸部を有する形状であっても良い。また、第一支軸Sを介して第一スクリューに回転力を伝える必要がなければ、両者共に円形であっても良い。
【0067】
上述したとおり、第一スクリューは、その一方端を第一支軸に沿って相対的に移動することができる2つの部材の一方に、その他方端を第一支軸に沿って相対的に移動することができる2つの部材の他方に、それぞれ連結して用いられる。これにより、第一スクリューは、構成する複数の円環体20の弾性が許容する範囲内でスクリュウーの支軸方向の長さを伸ばすことができ、構成する複数の円環体20の積算した厚みが許容する範囲内でスクリューの支軸方向の長さを縮めることができる。
【0068】
本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーは、上述した第一スクリューを有する伸縮スクリュー機構を一つ以上備えているので、第一スクリューを最大限に縮めた状態から最大限に伸ばした状態まで、連続して、スクリュースプレッダーによる舗装用材料の押し広げ幅を変更することができる。このため、本発明の伸縮式スクリュースプレッダーによれば、施工対象路面の施工幅が変化する施工現場であっても、その施工幅に合わせて伸縮スクリュー機構のスクリュー長さを変化させることによって、効率よく対応し、施工することが可能となる。
【0069】
なお、以上においては、スラリー状の舗装用材料を押し広げて敷き均すマイクロサーフェシング工法に用いられる場合を主に、本発明の伸縮式スクリュースプレッダーについて説明したが、本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーは、例えば、アスファルトフィニッシャーなどの後部に連結して、アスファルト混合物を押し広げて敷き均す場合にも使用することができる。
【0070】
続いて、本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーを用いて実施されるスプレッダーボックス内再混合方法について説明する。
【0071】
マイクロサーフェシング工法などにおいて施工面に適用されるスラリー状の舗装用混合物は、通常、マイクロサーフェシング用の施工機械上で必要な材料を混合し、スラリー状とした上で、後部に接続されたスプレッダーボックス内に投下される。しかし、本発明者らが得た知見によれば、先行する施工機械から投下されたスラリー状の舗装用材料をそのままスクリュースプレッダーを用いて押し広げて敷き均し、施工面に適用すると所期の性能を備えた舗装層が得られない場合が散見された。
【0072】
その原因としては、舗装用材料の混合不足が考えられるが、施工機械上での混合は、通常、2軸パグミル式の連続ミキサで行われており、混合の程度には自ずと制限がある。このため、施工機械から投下されるスラリー状の舗装用材料は、時としてチキソ性を示し、施工機械上で混合された後であってもスプレッダーボックス内に投下されると流動性を失い、塊を形成し易い可能性があり、そのため、これをそのまま敷き均して得られる舗装層は所期の性能を発揮しないのではないかと推測された。
【0073】
一方、本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーによれば、スクリューの正逆回転の切り替えが自在である。しかも、伸縮スクリュー機構を構成する第一スクリュー羽に相当する円環体には円環部分に複数の穴が設けられており、スクリューの正逆回転の切り替え時に、スラリー状の舗装用材料がその穴をとおって幅員方向に自在に移動することができるので、スクリュー羽に相当する円環体を越えた混合が可能である。したがって、先行する施工機械上で一旦混合された後、スプレッダーボックス内に投下されたスラリー状の舗装用材料を本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーを用いて再混合することにより、チキソ性を解消し、所期の性能を備えた舗装層を構築することができるスラリー状の舗装用材料とすることができるのではないかとの着想を得た。
【0074】
この着想の当否を確認すべく、以下の実験を行った。すなわち、2軸パグミル式の連続ミキサで舗装用材料を混合し、得られたスラリー状の混合物を2つに分け、一方はそのまま供試体1とし、他方は図1に示す伸縮式スクリュースプレッダーのスプレッダーボックス内に投入して再混合を行い、得られた再混合物を供試体2とした。供試体1及び供試体2を、それぞれウエットトラック摩耗試験に供し、その混合性を評価した。使用した材料とその配合割合、スプレッダーボックス内での混合形態、試験方法、並びに試験結果を以下に示す。なお、以下に示す使用した材料とその配合組成は、マイクロサーフェシング工法において用いられるスラリー状混合物の典型的な配合組成である。
【0075】
<使用材料と配合割合>
骨材:『スーパーSTサンド』(ニチレキ株式会社販売) 100質量%
アスファルト乳剤:『スーパーSTゾール』(ニチレキ株式会社販売)38.0質量%
硬化材:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製) 3.3質量%
遅延材:アミン系遅延材 2.0質量%
添加水 4.0質量%
(骨材以外の材料の配合割合(質量%)は骨材を100質量%とした外掛けの配合割合である。)
【0076】
<混合形態>
スプレッダーボックス内に投下後、2本のスクリュースプレッダーを共に正回転で15秒、逆回転で5秒回転させ、スラリー状混合物を混合した。回転速度は180rpmとした。
【0077】
<ウエットトラック摩耗試験>
ウエットトラック摩耗試験は、社団法人日本アスファルト乳剤協会がJEAAT-1に規定する「ウエットトラック摩耗試験方法」に準じて行った。すなわち、上記供試体1、2のいずれかを直径255mm、厚さ5mmの円筒形状のモールド内に流し込み、養生後、質量を測定し、更に20℃の恒温水槽に入れて養生した後、ウエットトラック摩耗試験機にセットし、20℃で約5分間摩耗試験を行い、その後、水中から取り出して乾燥させ、質量を測定した。摩耗量(g/m)は、試験前の供試体質量から試験後の供試体質量を減算し、その値から算出した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すとおり、2軸パグミル式連続ミキサによる混合のみの供試体1は、ウエットトラック摩耗試験での摩耗量が2.5g/mであったのに対し、2軸パグミル式連続ミキサによる混合に加えて、スプレッダーボックス内で再混合を行った供試体2の摩耗量は0.4g/mと小さく、耐摩耗性が改善されていた。このような結果が得られた理由は、スプレッダーボックス内での再混合によって、硬化材として使用いたセメントの分散が改善され、良好な混合状態となったためと考えられる。
【0080】
以上のとおり、施工機械上で混合した舗装用材料をスプレッダーボックス内で再混合することは舗装用材料の混合性や耐摩耗性を高める上で有効であり、スプレッダーボックス内に投下された舗装用材料の状態をみながら、本発明に係る伸縮式スクリュースプレッダーを用いて伸縮スクリュー機構を正逆回転させながら再混合する方法は、所期の性能の舗装層を構築する上で極めて有効である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したとおり、本発明の伸縮式スクリュースプレッダー及びそれを備えるスプレッダーボックスによれば、施工対象現場の幅員に合わせてスクリュースプレッダーによる敷き均し幅を連続的に変化させることができるので、幅員が変化する施工現場であっても効率よく舗装用材料を押し広げ、敷き均すことができる。また、本発明のスプレッダーボックス内再混合方法によれば、スプレッダーボックス内に投入された舗装用材料の状態をみながら、スプレッダーボックス内で、しかも敷き均し直前に再混合することができるので、常に最適の混合状態にある舗装用材料を施工面上に敷き均すことが可能である。本発明の産業上の利用可能性は多大である。
【符号の説明】
【0082】
1 伸縮式スクリュースプレッダー
2、4、6,8 伸縮スクリュー機構
2p、4p、6p、8p 第一スクリュー
2s、4s、6s、8s 第一支軸
3、5、7、9 非伸縮スクリュー機構
3p、5p、7p、9p 第二スクリュー
3s、5s、7s、9s 第二支軸
10 回転軸受
11a、11b、11c、11d 大径腕
12a、12b、12c、12d 小径腕
13a、13b 側方仕切体
14a、14b、14c、14d 敷き均し体
15 中央フレーム
20 円環体
21 外周
22 内周
23 切断線
24 突出片
25 挿入孔
27 連結板
30 スプレッダーボックス
31 投入口
Ma、Mb、Mc 回転駆動機構
Mw 拡幅駆動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7