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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063566
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   G05G 5/00 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
G05G5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171631
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】正円 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 友香理
【テーマコード(参考)】
3J070
【Fターム(参考)】
3J070AA03
3J070BA03
3J070BA41
3J070CB39
3J070CC71
3J070CD01
3J070DA03
3J070EA01
(57)【要約】
【課題】作業者が意図せずに操作具が移動するのを規制することが可能な作業車を提供する。
【解決手段】、所定の操作方向に自重が作用するPTOクラッチレバー18と、トラクタ1に着脱可能に取り付けられ、自重が作用する方向へのPTOクラッチレバー18の移動を規制可能な規制部材40と、を具備し、PTOクラッチレバー18が挿通され、当該PTOクラッチレバー18の操作を案内する案内孔31が形成される案内部材30をさらに具備し、PTOクラッチレバー18は、案内孔31のうち、PTOクラッチレバー18の操作方向に対する幅方向の一側に偏心するように配置され、規制部材40は、案内孔31の幅方向の一側を閉塞すると共に、幅方向の他側を開放するように配置される規制部41を具備する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の操作方向に自重が作用する操作具と、
作業車に着脱可能に取り付けられ、前記自重が作用する方向への前記操作具の移動を規制可能な規制部材と、
を具備する、
作業車。
【請求項2】
前記操作具が挿通され、当該操作具の操作を案内する案内孔が形成される案内部材をさらに具備し、
前記操作具は、
前記案内孔のうち、前記操作具の操作方向に対する幅方向の一側に偏心するように配置され、
前記規制部材は、
前記案内孔の前記幅方向の一側を閉塞すると共に、前記幅方向の他側を開放するように配置される規制部を具備する、
請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記規制部材は、
前記自重が作用する方向とは反対方向への前記操作具の移動を案内可能な案内部をさらに具備する、
請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記規制部材は、
前記案内部材に固定される固定部をさらに具備し、
前記案内部は、
前記操作具の操作方向において、前記固定部に対して変位した位置に配置される、
請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記規制部材は、
前記案内部材の裏側に着脱可能に取り付けられる、
請求項2に記載の作業車。
【請求項6】
前記案内部材の裏側には、
前記規制部材を前記案内部材に取付可能なボス部が形成され、
前記案内部材には、
前記ボス部に対して表側から重複するように、ラベルが貼り付けられる、
請求項2に記載の作業車。
【請求項7】
前記規制部材は、
前記案内部材に固定される固定部をさらに具備し、
前記規制部は、
前記案内孔を介して前記案内部材の表側に露出するように設けられ、
前記固定部は、
前記案内部材の裏側に隠れるように設けられる、
請求項2に記載の作業車。
【請求項8】
前記案内部材の裏側には、
溝部が形成され、
前記規制部材は、
前記溝部に挿入可能な挿入部をさらに具備する、
請求項2に記載の作業車。
【請求項9】
前記規制部材は、
凹部をさらに具備する、
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作具を具備する作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作具を具備する作業車の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のトラクタは、主変速レバーやPTO変速レバー等を具備する。PTO変速レバーは、左右方向及び上下方向に揺動操作可能に構成される。PTO変速レバーは、作業者が把持するための先端部(グリップ)から基端部(揺動中心)に向かうにつれて後下がりに傾斜するように構成される。
【0004】
特許文献1のようなPTO変速レバーは、自重やトラクタの振動により下方に揺動する力が作用する。このため、作業者が意図せずにPTOレバーが揺動するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6952535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、作業者が意図せずに操作具が移動するのを規制することが可能な作業車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本開示の一態様においては、所定の操作方向に自重が作用する操作具と、作業車に着脱可能に取り付けられ、前記自重が作用する方向への前記操作具の移動を規制可能な規制部材と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、作業者が意図せずに操作具が移動するのを規制することができる。
【0009】
本開示の一態様においては、前記操作具が挿通され、当該操作具の操作を案内する案内孔が形成される案内部材をさらに具備し、前記操作具は、前記案内孔のうち、前記操作具の操作方向に対する幅方向の一側に偏心するように配置され、前記規制部材は、前記案内孔の前記幅方向の一側を閉塞すると共に、前記幅方向の他側を開放するように配置される規制部を具備するものである。
本開示の一態様によれば、作業者が意図せずに操作具が移動するのを規制することができると共に、案内孔の幅方向の他側に操作具を移動させることによって、作業者が意図的に操作具を操作することができる。
【0010】
本開示の一態様においては、前記規制部材は、前記自重が作用する方向とは反対方向への前記操作具の移動を案内可能な案内部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、操作具の操作性を向上できる。
【0011】
本開示の一態様においては、前記規制部材は、前記案内部材に固定される固定部をさらに具備し、前記案内部は、前記操作具の操作方向において、前記固定部に対して変位した位置に配置されるものである。
本開示の一態様によれば、操作具の操作性を効果的に向上できる。
【0012】
本開示の一態様においては、前記規制部材は、前記案内部材の裏側に着脱可能に取り付けられるものである。
本開示の一態様によれば、案内部材によって規制部材を作業者から見え難くすることができる。
【0013】
本開示の一態様においては、前記案内部材の裏側には、前記規制部材を前記案内部材に取付可能なボス部が形成され、前記案内部材には、前記ボス部に対して表側から重複するように、ラベルが貼り付けられるものである。
本開示の一態様によれば、美観の向上を図ることができる。
【0014】
本開示の一態様においては、前記規制部材は、前記案内部材に固定される固定部をさらに具備し、前記規制部は、前記案内孔を介して前記案内部材の表側に露出するように設けられ、前記固定部は、前記案内部材の裏側に隠れるように設けられるものである。
本開示の一態様によれば、固定部を作業者から見え難くすることができる。
【0015】
本開示の一態様においては、前記案内部材の裏側には、溝部が形成され、前記規制部材は、前記溝部に挿入可能な挿入部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、溝部に挿入部が挿入されることによって、案内部材に対して規制部材の位置を容易に合わせることができる。
【0016】
本開示の一態様においては、前記規制部材は、凹部をさらに具備するものである。
本開示の一態様によれば、規制部材の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一態様によれば、作業者が意図せずに操作具が移動するのを規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図。
図2】キャビン内を示した平面図。
図3】PTOクラッチレバー及び案内部材を示した側面図。
図4】同じく、平面図。
図5】A-A一部断面図。
図6】B-B断面図。
図7】(a)PTOクラッチレバー、案内部材及び規制部材を示した平面一部断面図。(b)規制部材を示した平面図。
図8】PTOクラッチレバー、案内部材及び規制部材を示した底面図。
図9】案内部材及び規制部材を示した分解斜視図。
図10】規制部材を示した正面図。
図11】同じく、斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0020】
以下では図1及び図2を参照し、本発明の一実施形態に係るトラクタ1について説明する。
【0021】
トラクタ1は、主として機体フレーム2、エンジン3、ボンネット4、トランスミッションケース5、前輪6、後輪7、フェンダ8、昇降装置9、キャビン10、座席11、ステアリングホイール12等を具備する。
【0022】
機体フレーム2は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。機体フレーム2は、平面視略矩形状に形成される。機体フレーム2は、その長手方向を前後方向に向けてトラクタ1の前部に設けられる。エンジン3は、機体フレーム2の後部に配置され、ボンネット4に覆われる。エンジン3の後部には、トランスミッションケース5が固定される。
【0023】
機体フレーム2の前部は、フロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前輪6に支持される。トランスミッションケース5の後部は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪7に支持される。左右一対の後輪7は、概ね上方からフェンダ8によって覆われる。
【0024】
トランスミッションケース5の後部には、昇降装置9が設けられる。昇降装置9には、耕運機等の作業装置を装着することができる。昇降装置9は油圧シリンダ等のアクチュエータによって、装着された作業装置を昇降させることができる。当該昇降装置9には、図示せぬリアPTO軸を介してエンジン3の動力を伝達することができる。
【0025】
またトランスミッションケース5の下部には、モア等の作業装置を装着することができる。当該作業装置には、図示せぬミッドPTO軸を介してエンジン3の動力を伝達することができる。
【0026】
エンジン3の動力は、トランスミッションケース5に収容された変速装置(不図示)で変速された後、前記フロントアクスル機構を経て前輪6に伝達可能とされると共に、前記リアアクスル機構を経て後輪7に伝達可能とされる。エンジン3の動力によって前輪6及び後輪7が回転駆動され、トラクタ1は走行することができる。またエンジン3の動力によって、昇降装置9に装着された作業装置を駆動させることができる。
【0027】
エンジン3の後方にはキャビン10が設けられる。キャビン10の内部には、作業者が搭乗する居住空間が形成される。図2に示すように、キャビン10の略中央には、作業者が着座するための座席11が配置される。座席11の周囲には、作業者が操作するための操作具が設けられる。以下、操作具について説明する。
【0028】
座席11の前方(キャビン10の前部)には、前輪6の切れ角を調節するためのステアリングホイール12、及び変速比を変更するための変速ペダル13等が配置される。座席11の右方(キャビン10の右部)には、フロントローダを操作するためのローダレバー14、及びトラクタ1を一定速度で走行させるためのクルーズレバー15等が配置される。
【0029】
座席11の左方(キャビン10の左部)には、副変速レバー16、PTO選択レバー17及びPTOクラッチレバー18等が配置される。副変速レバー16は、変速装置を変速操作するためのものである。PTO選択レバー17は、ミッドPTO軸及びリアPTO軸のうち、エンジン3からの動力が伝達されるPTO軸を選択するためのものである。PTOクラッチレバー18は、PTO選択レバー17で選択されたPTO軸へのエンジン3の動力の伝達可否を切り替えるためのものである。
【0030】
図3に示すように、PTOクラッチレバー18は、上下に揺動可能となるように、車体に固定された揺動軸A1に支持される。PTOクラッチレバー18は、側面視において、作業者が把持するためのグリップ(前上端部)から揺動軸A1に向かうにつれて後下がりに傾斜する。当該PTOクラッチレバー18には、自重やトラクタ1の振動等により、下方に揺動する方向へ力が作用する。本実施形態では規制部材40によって、この自重やトラクタ1の振動等によるPTOクラッチレバー18の揺動(作業者が意図しない揺動)を規制している。
【0031】
以下では、図3から図11を参照し、規制部材40、及び規制部材40に関連する各種部材について説明する。具体的には、PTOクラッチレバー18、伝達ロッド20、案内部材30及び規制部材40について説明する。
【0032】
図3から図5に示すように、PTOクラッチレバー18は、レバー本体部18a、保護部18b、筒部18c及び取付部18dを具備する。レバー本体部18aは、作業者によって揺動操作される部分である。レバー本体部18aは、略板状に形成される。レバー本体部18aは、側面視において後下がりに傾斜するように形成される。レバー本体部18aは、後下端部が後述する筒部18cに固定されており、前上端部に対して左右方向に力が加えられると、左右に僅かにたわむことができる。レバー本体部18aの前上端部には、グリップが固定される。
【0033】
保護部18bは、レバー本体部18aを保護するためのものである。保護部18bは、レバー本体部18aの上部に外嵌される。保護部18bは、例えばゴム等の弾性体によって構成される。本実施形態では、保護部18bの左右幅(左側面から右側面までの距離)が6~10mmとなるように構成される。具体的には、保護部18bの左右幅が8mmとなるように構成される。なお保護部18bの左右幅は、8mmに限定されるものではなく、後述する案内部材30の案内孔31の左右幅等に応じて適宜変更可能である。
【0034】
筒部18cは、略筒状の部分である。筒部18cは、軸線方向を左右方向に向けて配置される。筒部18cは、揺動軸A1に揺動可能に支持される。
【0035】
取付部18dは、軸部材A2及び伝達ロッド20が取り付けられる部分である。取付部18dは、略板状に形成される。取付部18dは、筒部18cの外周から前下方へ延出するように形成される。取付部18dは、軸部材A2を介して、PTOクラッチレバー18の揺動角度を検知するためのセンサSに連結される。
【0036】
伝達ロッド20は、PTOクラッチレバー18の揺動操作をトランスミッションケース5のシフタ(不図示)に伝達するためのものである。伝達ロッド20の一端部は、取付部18dに回動可能に取り付けられる。伝達ロッド20の他端部は、連結部材L1(図4参照)を介してトランスミッションケース5のシフタに取り付けられる。
【0037】
PTOクラッチレバー18のレバー本体部18aが揺動操作されると、当該揺動に伴って取付部18d及び伝達ロッド20が揺動される。この伝達ロッド20の揺動が連結部材L1を介してシフタに伝達される。これによってシフタが移動され、エンジン3からPTO軸への動力の伝達可否が切り替えられる。またレバー本体部18aが揺動操作されると、軸部材A2を介してセンサSの軸部が揺動される。当該軸部の揺動に基づいて、センサSは、PTOクラッチレバー18の揺動角度を検知する。
【0038】
本実施形態では、PTOクラッチレバー18は、図5に示す第一操作位置P1から第二操作位置P2までの範囲に亘って揺動操作可能に構成される。第一操作位置P1及び第二操作位置P2は、PTO軸を所定の回転速度で回転可能な位置である。
【0039】
作業者は、PTOクラッチレバー18を下方に揺動させることにより、PTOクラッチレバー18を第一操作位置P1に移動させ、PTO軸を回転させることができる。作業者は、PTOクラッチレバー18を上方に揺動させることにより、PTOクラッチレバー18を第二操作位置P2に移動させ、PTO軸を回転させることができる。また作業者は、第一操作位置P1と第二操作位置P2との間のニュートラル位置P0にPTOクラッチレバー18を移動させることにより、PTO軸の回転を停止することができる。なお、図3から図8には、ニュートラル位置P0に揺動されたPTOクラッチレバー18が示される。
【0040】
図3から図5に示す案内部材30は、副変速レバー16、PTO選択レバー17及びPTOクラッチレバー18等を案内するためのものである。案内部材30は、フェンダ8(図1参照)に沿うような側面視略円弧状に形成される。案内部材30は、キャビン10内において、PTOクラッチレバー18等(保護部18bよりも下方)を上方から覆うように設けられる。
【0041】
案内部材30は、後上部から前下部に亘って、前方に膨出するような曲面状(側面視円弧状)の上面を有する。本実施形態では、この上面のうち、上側を向いた面(作業者が視認可能な面)を「表面30a」、下側を向いた面(作業者が視認不能な面)を「裏面30b」と称する。また案内部材30の上面の上側を「表側」、下側を「裏側」と称する。案内部材30は、樹脂成形によって構成される。図3図4及び図6に示すように、案内部材30は、案内孔31、溝部32及びボス部33を具備する。
【0042】
案内孔31は、PTOクラッチレバー18の揺動操作を案内する孔である。案内孔31は、案内部材30を上下に貫通するように設けられる。案内孔31は、PTOクラッチレバー18の操作方向(揺動軸A1を中心とした側面視時計回り方向及び反時計回り方向)に延びるように形成される。案内孔31には、PTOクラッチレバー18が挿通される。図6に示すように、案内孔31及びPTOクラッチレバー18の保護部18bは、互いに同程度の高さ位置に配置される。案内孔31の左右幅は、保護部18bの左右幅(本実施形態では8mm)よりも大きくなるように形成される。
【0043】
図6及び図7(a)に示すように、本実施形態では案内孔31の左右中央部に対してPTOクラッチレバー18(保護部18b)の左右中央部が左方にずれるように、PTOクラッチレバー18が配置される。こうしてPTOクラッチレバー18は、案内孔31の左側(PTOクラッチレバー18の操作方向に対して直交する幅方向の一側)に偏心するように配置される。
【0044】
図6図8及び図9に示す溝部32は、案内部材30の裏面30bに形成される。溝部32は、PTOクラッチレバー18の操作方向に延びるように形成される。溝部32は、案内孔31の左右にそれぞれ形成される。溝部32は、第一側壁32a及び第二側壁32bを具備する。
【0045】
第一側壁32aは、案内孔31の内側面から下方に延出するように形成される。第一側壁32aは、案内孔31を囲むように形成される。第二側壁32bは、第一側壁32aに対して左右(案内孔31の左右外側)に間隔をあけて配置される。第二側壁32bは、第一側壁32aの左方及び右方にそれぞれ設けられる。第二側壁32bは、案内部材30の裏面30bから第一側壁32aよりも低い位置まで、下方に向かって延出するように形成される。本実施形態では、上記第一側壁32aと第二側壁32bと案内部材30の裏面30bとにより、開口部を下方に向けた断面視略U字状の溝部32が形成される(図6参照)。
【0046】
図3図8及び図9に示すボス部33は、規制部材40を案内部材30に取り付けるためのものである。ボス部33は、案内部材30の裏面30b(裏側)に形成される。ボス部33は、軸線方向を略下方に向けた筒状に形成される。ボス部33は、溝部32の左側の第二側壁32bの左方に形成される。またボス部33は、ニュートラル位置P0に位置するPTOクラッチレバー18(保護部18b)よりも前側に形成される。
【0047】
図4及び図7に示すように、案内部材30の表面30aのうち、ボス部33の反対側には、当該ボス部33と平面視で重複するようにラベルL2が貼り付けられる。当該ラベルL2には、PTOクラッチレバー18に関する情報(例えば、ニュートラル位置P0等)が印字される。
【0048】
ここで、樹脂成形によって案内部材30を製造する場合、ボス部33の反対側(表面30a側)が変形する場合がある。本実施形態においては、その変形部分(例えば凹み)をラベルL2で隠すことができるため、美観の向上を図ることができる。
【0049】
図3図10及び図11に示す規制部材40は、PTOクラッチレバー18の揺動(自重等による下方への意図しない揺動)を規制するためのものである。規制部材40は、前下がりに延びる長手状に形成される。図10及び図11に示すように、規制部材40は、第一板部40a及び第二板部40bを有する。
【0050】
第一板部40aは、規制部材40の長手方向に延びるように形成されると共に、板面を左右に向けて配置される。第一板部40aの右側面は、後端部が右方へ突出するように形成される。第二板部40bは、板面を略上下に向けて配置される。第二板部40bは、第一板部40aの左側面における下端部から左方へ延出するように形成される。第二板部40bは、後端部に向かうにつれて左右幅が小さくなるように形成される。規制部材40は、当該第一板部40a及び第二板部40bにより、断面形状が略L字状に形成される。規制部材40は、規制部41、案内部42、挿入部43、締結孔44及び凹部45(図9参照)を具備する。
【0051】
図7図9及び図11に示す規制部41は、PTOクラッチレバー18の揺動を規制するための部分である。規制部41は、規制部材40の第一板部40aの後端面により構成される。図7に示すように、規制部41は、案内孔31の左側面から右方に突出するように形成される。本実施形態では、規制部41は、案内孔31の左側面から2~4mm突出するように形成される。より詳細には、規制部41は、案内孔31の左側面から3mm突出するように形成される。こうして規制部41は、平面視において少なくとも一部が案内孔31の内側に位置し、当該案内孔31を介して案内部材30の表側に露出する(作業者が視認可能となる)ように設けられる。なお規制部41の案内孔31に対する突出幅は、3mmに限定されるものではなく、案内孔31の左右幅やPTOクラッチレバー18の左右幅等に応じて適宜変更可能である。
【0052】
上述の如く構成される規制部41は、ニュートラル位置P0においてPTOクラッチレバー18の保護部18bと当接するように配置される。当該規制部41と案内孔31の右側面との間には、PTOクラッチレバー18が操作方向に移動可能な隙間Cが形成される。こうして規制部41は、案内孔31の左側を閉塞すると共に右側を開放するように配置される。本実施形態では、前記隙間Cの幅は7~11mm程度となっている。より詳細には、前記隙間Cの幅は、9mmとなっている。なお前記隙間Cの幅は、9mmに限定されるものではなく、案内孔31の左右幅やPTOクラッチレバー18の左右幅等に応じて適宜変更可能である。
【0053】
図7図10及び図11に示す案内部42は、PTOクラッチレバー18の操作を案内可能な部分である。案内部42は、第一板部40aの右側面の前後中途部(規制部41の前方)に形成される。案内部42は、後方に向かうにつれて案内孔31の左右内側(右方)に延出するような傾斜面により構成される。図7に示すように、案内部42は、平面視において案内孔31の左側面を横切るように形成される。案内部42は、PTOクラッチレバー18の上方への揺動操作を案内することができる。
【0054】
具体的には、PTOクラッチレバー18が図5に示す第一操作位置P1から上方(ニュートラル位置P0)に向けて揺動操作される場合、PTOクラッチレバー18は、図7に示す案内部42に対して前方から接触する。当該PTOクラッチレバー18は、案内部42の形状に沿って右後方に案内されながら上方へ揺動される。こうしてPTOクラッチレバー18は、規制部材40の右方(前記隙間C)を通過して、ニュートラル位置P0へと移動される。このようにして案内部42は、PTOクラッチレバー18の上方への揺動操作を案内することができる。
【0055】
図6及び図11に示す挿入部43は、案内部材30の溝部32に挿入可能な部分である。挿入部43は、規制部材40の第一板部40aの上面から上方に延出するように形成される。挿入部43は、規制部材40の前端部から後端部までに亘って形成される。挿入部43には、右方に突出する突出部43aが形成される。こうして挿入部43は、左右幅が部分的に大きくなるように形成される。
【0056】
図7(b)に示すように、挿入部43は、案内部42よりも左方(案内孔31の左右外側方)に形成される。当該挿入部43は、案内部材30の表面30aと平面視で重複するように形成される。こうして挿入部43は、案内部材30の裏側に隠れるように設けられる(図7(a)参照)。
【0057】
図7(b)、図8及び図9に示す締結孔44は、ネジNが締結される略円状の孔である。締結孔44は、規制部材40の第二板部40bを上下に貫通するように形成される。締結孔44は、案内部42に対して規制部材40の長手方向に位置をずらして形成される。より詳細には締結孔44は、案内部42の左前方(第二板部40bの前端部)に形成される。また締結孔44は、平面視において、案内部42に沿う直線の延長線上に配置される(図7(b)参照)。当該締結孔44は、案内孔31の左右外側に位置し、案内部材30の裏側に隠れるように設けられる。
【0058】
図8及び図9に示す凹部45は、凹状に形成される部分である。凹部45は、規制部41及び案内部42の近傍(第一板部40aの後端部)に形成される。より詳細には凹部45は、規制部41と案内部42との間に形成される。凹部45は、第一板部40aの下面において上方に向かって凹むように形成される。当該凹部45は、第一板部40aの後端部の形状に沿うように形成される。これによって、第一板部40aのうち、左右幅が大きい後端部の肉厚が他の部分よりも厚くなるのを抑制することができる。
【0059】
上述の如く構成される規制部材40は、ボス部33の中心と締結孔44の中心とが重なるように、案内部材30に対して下方から取り付けられる。この際規制部材40の挿入部43は、図6に示すように、溝部32に挿入される。これによって案内部材30に対して規制部材40の左右位置を容易に決めることができる。また本実施形態では、挿入部43は、突出部43aが形成されることで、部分的に溝部32と略同一の左右幅となるように形成される。これにより、挿入部43(突出部43a)を溝部32に挟み込むことができ、規制部材40が案内部材30から脱落するのを抑制できる。
【0060】
挿入部43が溝部32に挿入された後で、図9に示す締結孔44及びボス部33にネジN(図3参照)が締結される。これによって規制部材40(締結孔44)が案内部材30に固定される。こうして規制部材40は案内部材30の裏側に着脱可能に取り付けられる。
【0061】
上述の如く構成される規制部材40によって、PTOクラッチレバー18の揺動を規制できる。以下、具体的に説明する。
【0062】
本実施形態のPTOクラッチレバー18は、自重やトラクタ1の振動等によって揺動軸A1を中心に下方へ揺動しようとする。本実施形態では、図5に示すニュートラル位置P0において規制部41がPTOクラッチレバー18の保護部18bと当接する。したがってPTOクラッチレバー18がニュートラル位置P0にある場合、PTOクラッチレバー18の自重やトラクタ1の振動でPTOクラッチレバー18が下方へ揺動しようとしても、当該揺動は規制部41により規制される。これによって作業者が意図しないPTOクラッチレバー18の揺動を規制できる。
【0063】
また本実施形態の規制部材40は、案内部材30に対して着脱可能であるため、必要に応じて案内部材30に取り付けることができる。例えば、PTOクラッチレバー18の自重等でニュートラル位置P0から比較的下方に揺動し易い車種にのみ、規制部材40を設けることができる。
【0064】
また本実施形態では、規制部41の右側(図7に示す隙間C)をPTOクラッチレバー18が通過可能である。このため作業者は、PTOクラッチレバー18のレバー本体部18aを右方にたわませてから、下方に揺動させることにより、PTOクラッチレバー18をニュートラル位置P0から第一操作位置P1に向けて揺動できる。
【0065】
また図7(b)に示すように、案内部材30は、平面視において長手方向がPTOクラッチレバー18の操作方向と平行となる(平面視で前後方向を向く)ように配置される。本実施形態では、案内部42と締結孔44(規制部材40の固定部分)とは、当該PTOクラッチレバー18の操作方向に位置をずらして配置される。これによって、PTOクラッチレバー18の上方への揺動(図7における後方への移動)を案内部42で案内する際に、規制部材40がたわみ易くなって、案内部42によるPTOクラッチレバー18の案内をスムーズに行うことができる。
【0066】
また本実施形態では、図8に示すように、規制部41及び案内部42の近傍に凹部45が形成されることによって、肉厚が厚くなるのが抑制される。これによって、強い力でPTOクラッチレバー18が操作された場合に、規制部41及び案内部42の近傍がたわみ易くなるため、規制部材40やPTOクラッチレバー18の破損を防止できる。また凹部45は、規制部材40の上面ではなく、下面に形成される。これによって凹部45にゴミや埃等がたまるのを抑制することができ、メンテナンス性を向上できる。
【0067】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、所定の操作方向(揺動軸A1を中心に下方へ揺動する方向)に自重が作用するPTOクラッチレバー18(操作具)と、トラクタ1に着脱可能に取り付けられ、前記自重が作用する方向への前記PTOクラッチレバー18の移動を規制可能な規制部材40と、を具備するものである。
【0068】
このように構成することにより、作業者が意図せずに(PTOクラッチレバー18の自重やトラクタ1の振動で)PTOクラッチレバー18が移動するのを規制する規制部材40を、必要に応じてトラクタ1に取り付けることができる。
【0069】
また、前記PTOクラッチレバー18が挿通され、当該PTOクラッチレバー18の操作を案内する案内孔31が形成される案内部材30をさらに具備し、前記PTOクラッチレバー18は、前記案内孔31のうち、前記PTOクラッチレバー18の操作方向に対する幅方向の一側(左側)に偏心するように配置され、前記規制部材40は、前記案内孔31の前記幅方向の一側(左側)を閉塞すると共に、前記幅方向の他側(右側)を開放するように配置される規制部41を具備するものである(図7(a)参照)。
【0070】
このように構成することにより、作業者が意図せずにPTOクラッチレバー18が移動するのを規制することができると共に、案内孔31の幅方向の他側(右側)にPTOクラッチレバー18を移動させることによって、作業者が意図的にPTOクラッチレバー18を操作することができる。
【0071】
また、前記規制部材40は、前記自重が作用する方向とは反対方向(揺動軸A1を中心に上方へ揺動する方向)への前記PTOクラッチレバー18の移動を案内可能な案内部42をさらに具備するものである。
【0072】
このように構成することにより、PTOクラッチレバー18の操作性を向上できる。
【0073】
また、前記規制部材40は、前記案内部材30に固定される締結孔44(固定部)をさらに具備し、前記案内部42は、前記PTOクラッチレバー18の操作方向において、前記締結孔44に対して変位した位置に配置されるものである(図7(b)参照)。
【0074】
このように構成することにより、案内部42でPTOクラッチレバー18を案内する際に規制部材40がたわんでPTOクラッチレバー18をより案内し易くなる。これによってPTOクラッチレバー18の操作性を効果的に向上できる。
【0075】
また、前記規制部材40は、前記案内部材30の裏側(作業者が視認不能な裏面30b側)に着脱可能に取り付けられるものである(図6参照)。
【0076】
このように構成することにより、案内部材30によって規制部材40を作業者から見え難くすることができる。
【0077】
また、前記案内部材30の裏側には、前記規制部材40を前記案内部材30に取付可能なボス部33が形成され、前記案内部材30には、前記ボス部33に対して表側(作業者が視認可能な表面30a側)から重複するように、ラベルL2が貼り付けられるものである(図7(a)参照)。
【0078】
このように構成することにより、美観の向上を図ることができる。
【0079】
また、前記規制部材40は、前記案内部材30に固定される締結孔44(固定部)をさらに具備し、前記規制部41は、前記案内孔31を介して前記案内部材30の表側に露出するように設けられ、前記締結孔44は、前記案内部材30の裏側に隠れるように設けられるものである(図7参照)。
【0080】
このように構成することにより、締結孔44を作業者から見え難くすることができる。
【0081】
また、前記案内部材30の裏側には、溝部32が形成され、前記規制部材40は、前記溝部32に挿入可能な挿入部43をさらに具備するものである(図6参照)。
【0082】
このように構成することにより、溝部32に挿入部43が挿入されることによって、案内部材30に対して規制部材40の位置を容易に合わせることができる。
【0083】
また、前記規制部材40は、凹部45をさらに具備するものである。
【0084】
このように構成することにより、規制部材40の軽量化を図ることができる。
【0085】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、本発明に係る作業車の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るPTOクラッチレバー18は、本発明に係る操作具の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る締結孔44は、本発明に係る固定部の実施の一形態である。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0087】
例えば、本実施形態に係る作業車はトラクタ1であるものとしたが、作業車の種類はこれに限定されるものでない。作業車は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
【0088】
また規制部材40は、PTOクラッチレバー18の揺動(移動)を規制するものとしたが、規制部材40が揺動を規制する操作具は、PTOクラッチレバー18に限定されない。例えば規制部材40は、副変速レバー16やPTO選択レバー17の移動を規制するものでもよい。
【0089】
またPTOクラッチレバー18は、案内孔31に対して左側に偏心するように配置されるものとしたが、PTOクラッチレバー18の案内孔31に対する位置関係は特に限定されない。例えばPTOクラッチレバー18は、案内孔31に対して右側に偏心するように配置されてもよい。この場合、規制部材40は、案内孔31の左側ではなく、右側に配置されることが望ましい。またPTOクラッチレバー18は、必ずしも案内孔31に対して左右に偏心させる必要はない。
【0090】
また規制部材40は、案内部42を具備するものとしたが、これに限定されるものではなく、案内部42を具備しないものでもよい。また規制部材40は、凹部45を具備するものとしたが、これに限定されるものではなく、凹部45を具備しないものでもよい。
【0091】
また規制部材40は、ボス部33及び締結孔44にネジNが締結されることによって案内部材30に固定されるものとしたが、案内部材30に対して固定するための手法は特に限定されない。例えば規制部材40は、挿入部43に塗布される接着剤により、溝部32に対して固定されてもよい。
【0092】
また規制部材40は、案内部材30の裏面30bに固定されるものとしたが、これに限定されるものではなく、案内部材30の表面30aに固定されてもよい。また、規制部材40は、案内部材30とは異なる部材に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 トラクタ
18 PTOクラッチレバー
40 規制部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11