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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063568
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】地中変位計設置方法及びホルダ
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/00 20060101AFI20240502BHJP
   E21D 9/093 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
E21D9/00 Z
E21D9/093 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171633
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】永谷 英基
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】福田 勝仁
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054GA10
(57)【要約】
【課題】地中変位計のねじれを抑制する。
【解決手段】地盤1中の地中孔5内に線状の地中変位計10を設置する地中変位計設置方法は、地中変位計10を保持するホルダ30の挿通孔31に地中変位計10をその長手方向に沿って挿通しホルダ30を地中変位計に取り付けるホルダ取付工程と、ホルダ30と共に地中変位計10を地中孔内に挿入し、ホルダ30によって地中変位計10を地中孔5に対して支持する挿入工程と、を含み、ホルダ30の重心Gは、地中変位計10にホルダ30が取り付けられた状態において、地中変位計10の長手方向に直交する断面上で地中変位計10の断面中心Oからずれている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中の地中孔内に線状の地中変位計を設置する地中変位計設置方法であって、
前記地中変位計を保持するホルダの挿通孔に前記地中変位計をその長手方向に沿って挿通し前記ホルダを前記地中変位計に取り付けるホルダ取付工程と、
前記ホルダと共に前記地中変位計を前記地中孔内に挿入し、前記ホルダによって前記地中変位計を前記地中孔に対して支持する挿入工程と、を含み、
前記ホルダの重心は、前記地中変位計に前記ホルダが取り付けられた状態において、前記地中変位計の前記長手方向に直交する断面上で前記地中変位計の断面中心から変位している、
地中変位計設置方法。
【請求項2】
請求項1に記載の地中変位計設置方法であって、
前記地中変位計に沿わせるようにして線状の支持部に前記地中変位計を支持させる支持工程をさらに含み、
前記ホルダ取付工程では、前記地中変位計及び前記支持部を前記挿通孔に挿通して前記ホルダにより保持させる、
地中変位計設置方法。
【請求項3】
請求項2に記載の地中変位計設置方法であって、
前記挿入工程では、前記地中変位計と前記支持部とが鉛直方向に沿って並んだ姿勢で前記地中孔に挿入される、
地中変位計設置方法。
【請求項4】
地盤中の地中孔内に挿入される線状の地中変位計を保持するホルダであって、
第一ホルダ体と、
前記第一ホルダ体に着脱可能に取り付けられ前記第一ホルダ体と共に前記地中変位計を挟んで前記地中変位計を保持する第二ホルダ体と、を備え、
前記第一ホルダ体は、前記第二ホルダ体よりも重量が大きい、
ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中変位計設置方法及びホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地盤中に設けられた線状の空間に線状の変位計を設置して、地盤の変位を計測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-67008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように線状の変位計によって地盤の変位を計測する際には、変位計に長手方向回りのねじれが生じると、変位計が測定した変位の方向と実際の地盤の変位の方向とにずれが生じる。このため、線状の変位計による地盤変位の計測では、変位計のねじれを抑制することが求められる。
【0005】
本発明は、地中変位計のねじれを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地盤中の地中孔内に線状の地中変位計を設置する地中変位計設置方法であって、地中変位計を保持するホルダの挿通孔に地中変位計をその長手方向に沿って挿通しホルダを地中変位計に取り付けるホルダ取付工程と、ホルダと共に地中変位計を地中孔内に挿入し、ホルダによって地中変位計を地中孔に対して支持する挿入工程と、を含み、ホルダの重心は、地中変位計にホルダが取り付けられた状態において、地中変位計の長手方向に直交する断面上で地中変位計の断面中心からずれている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、地中変位計のねじれが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態における地中孔内に設置された地中変位計を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る地中変位計設置方法によって地中に設置される地中変位計を拡大して示す拡大図である。
図3図2におけるIII-III線に沿った断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る地中変位計設置方法の工程を時系列に沿って示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るホルダの作用を示す断面図である。
図6】本発明の実施形態に係るホルダの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る地中変位計設置方法及びホルダ30について説明する。
【0010】
以下では、地中変位計10が、トンネル等の地下空間を地盤内に構築する工事に伴う地盤1の変位を、地下空間の直上において計測する変位計測器として用いられる場合について説明する。
【0011】
例えば、シールド掘進機によって地盤内にトンネル等の地下空間を構築する際、シールド掘進機の直上の地盤の変位を把握することは、地盤の沈下や隆起を防止するために重要である。このため、図1に示すように、地盤1内にトンネルTを構築するシールド掘進機4の予定進路3の直上に、地盤の変位を検出可能な線状の地中変位計10を設置することがある。
【0012】
地中変位計10が挿入される地中孔5は、シールド掘進機4が発進する立坑2から水平方向及び垂直方向において予定進路3と同じ方向に曲がる曲線部を有するように、シールド掘進機4の予定進路3に対して略平行に予め削孔される。
【0013】
地中孔5に挿入される地中変位計10としては、例えば、光ファイバケーブルを用いたものが用いられる。光ファイバケーブルを用いた地中変位計10は、公知の構成であるため、詳細な図示及び説明は省略するが、例えば、シース材の内部に一又は複数の光ファイバケーブルを軸方向(長手方向)に螺旋状に巻回して構成される。複数の光ファイバケーブルを用いる場合には、互いに位相を変えて螺旋状に巻回される。
【0014】
光ファイバケーブルは、地中の歪みや地盤1の緩みに応じて歪みを生じることから、光ファイバケーブルの歪みを計測することにより地中の歪みや地盤1の緩みを計測することが可能である。
【0015】
具体的には、光ファイバケーブルには入射されたパルス光を僅かに後方に散乱させる性質があり、この性質を利用することにより、光ファイバケーブルにおける複数位置での歪みを計測することが可能である。散乱光の周波数は光ファイバケーブルの歪みに依存するため、パルス光を光ファイバケーブルに入射し、散乱光の周波数を計測することにより光ファイバケーブルの歪みを計測することができる。また、光ファイバケーブルにパルス光を入射してから光ファイバケーブル内で発生した散乱光が入射位置に戻るまでの時間を測定することにより、散乱光が発生した位置、すなわち光ファイバケーブルに歪みが生じた位置を計測することができる。
【0016】
したがって、シールド掘進機4の予定進路3の直上に削孔された地中孔5内に光ファイバケーブルを含む地中変位計10を挿入しておくことにより、シールド掘進機4の掘進による地盤1の変位を、光ファイバケーブルに生じた歪みを計測することによって把握することができる。
【0017】
なお、地中変位計10は、光ファイバケーブルに限定されず、地盤1の変位を測定することができればどのような形式の変位計であってもよく、例えば、加速度センサや圧力センサ、歪みセンサ、傾斜センサが取り付けられた検出ユニットを長手方向において複数連結することにより線状に形成されたものであってもよい。
【0018】
地中変位計10を地中孔5内に円滑に挿入するために、地中孔5内には、図2に示すように、地中変位計10が挿入されるパイプ部材6(管状部材)が設置される。なお、パイプ部材6は、必須の構成ではない。地中変位計10は、地中孔5との間に他の部材を介さず、地中孔5に直接挿入されてもよい。
【0019】
地中変位計10は、地中変位計10に沿うようにして設けられる線状の通線ワイヤー20(支持部)によって支持される。通線ワイヤー20は、例えば、地中変位計10よりも強度及び柔軟性が高い樹脂によって形成される。
【0020】
地中変位計10及び通線ワイヤー20は、その長手方向に間隔を空けて複数設けられるホルダ30によって保持されることで一体化される。図2及び図3に示すように、地中変位計10と通線ワイヤー20とは、鉛直方向に沿って並んだ状態でホルダ30によって一体化される。ホルダ30は、地中変位計10及び通線ワイヤー20と共にパイプ部材6内に挿入される。つまり、地中変位計10及び通線ワイヤー20は、ホルダ30を介してパイプ部材6(ひいては地中孔5)の内周面に支持される。
【0021】
ホルダ30は、図3に示すように、第一ホルダ体40と、第一ホルダ体40に着脱可能に取り付けられる第二ホルダ体50と、を備える分割構造である。ホルダ30には、地中変位計10及び通線ワイヤー20が長手方向に沿って挿通する挿通孔31が厚さ方向(図3中紙面垂直方向)に貫通して設けられる。ホルダ30は、パイプ部材6に挿入できるように、厚さ方向に垂直な方向の最大幅(図3で示す平面上の最大寸法)がパイプ部材6の内径よりわずかに小さく形成される。第一ホルダ体40及び第二ホルダ体50は、例えば、鋼製である。第一ホルダ体40と第二ホルダ体50とは、鉛直方向に並んで設けられる。
【0022】
第一ホルダ体40は、図3に示す地中変位計10の長手方向に垂直な断面視(挿通孔31の軸方向に垂直な断面視)で略半円形状の部材である。第二ホルダ体50が取り付けられる第一ホルダ体40の平坦面41には、半円状の第一凹部42が形成される。第一凹部42の内径は、地中変位計10の外径に対応した大きさに形成される。また、半円形の第一ホルダ体40の円弧に相当する部分(以下、「弧部43」と称する。)は、パイプ部材6の内周面に対応した円弧形状ではなく、周方向に凹凸が繰り返される波形状(歯車状)に形成される。これにより、パイプ部材6に挿入された状態において、第一ホルダ体40とパイプ部材6との接触面積(接地面積)を低減して摩擦を抑制することができるため、後述する地中変位計10の設置の際にホルダ30及び地中変位計10をパイプ部材6へ挿入しやすくなる。
【0023】
第二ホルダ体50は、互いに略同一平面上に設けられる一対の平板部51と、対向する一対の平板部51どうしの一端部を接続する屈曲した曲げ部52と、を有して、図3に示す断面視において略Ω形状に形成される。第二ホルダ体50の一対の平板部51は、第一ホルダ体40の平坦面41に対して、平行に対向し、ボルト60によって取り付けられる。また、曲げ部52の屈曲形状によって、第二凹部53が形成される。第一ホルダ体40と第二ホルダ体50とが互いに連結されることで、第一ホルダ体40と第二ホルダ体50との間には、地中変位計10及び通線ワイヤー20が挿通する挿通孔31が第一ホルダ体40の第一凹部42及び第二ホルダ体50の第二凹部53により形成される。
【0024】
第一ホルダ体40及び第二ホルダ体50は、互いに同じ材質(本実施形態では鋼製)であり、第一ホルダ体40の方が体積が大きい。よって、第一ホルダ体40は、第二ホルダ体50よりも重量が大きい。また、別の観点でいうと、ホルダ30の重心Gは、図3に示す断面において、地中変位計10の断面中心Oに対して鉛直方向の下方に変位して(ずれて)位置している。
【0025】
次に、本実施形態の地中変位計設置方法について説明する。
【0026】
以下では、地中に形成される地中孔5が、有底穴である場合について説明する。なお、本実施形態に係る地中変位計設置方法は、有底穴に限らず、両端が地上に開口する貫通孔に対して適用されてもよい。
【0027】
まず、地中変位計10を設置する地中孔5の削孔と地中孔5内に挿入されるパイプ部材6の設置について説明する。
【0028】
地中孔5は、図1に示すように、立坑2内に設置された図示しない削孔機から延びる削孔ロッドによって、立坑2から地盤1に向けて削孔することで形成される。なお、削孔機としては、曲線施工を行うことが可能な削孔機が用いられる。
【0029】
地中孔5が削孔されると、削孔ロッド内にパイプ部材6が挿入される。パイプ部材6は、時間の経過とともに土中の微生物によって水と二酸化炭素に分解される生分解性プラスチックで形成された中空の管状部材であり、削孔ロッド内に挿入される先端側は、閉塞端となっている。なお、パイプ部材6は、ポリ塩化ビニル等の樹脂で形成されていてもよい。
【0030】
そして、地中孔5内から削孔ロッドを抜き出すことにより、削孔ロッド内に挿入されたパイプ部材6が地中孔5内に残り、地中孔5内に配置される。
【0031】
地中孔5内に残されたパイプ部材6の外周面と地中孔5の内壁面との間の隙間は、例えば図示しないセメントベントナイト等のグラウト(充填材)が注入されることで、埋められる。このようにして、地中孔5内に設置されたパイプ部材6材の中に地中変位計10が挿入される。
【0032】
次に、地中変位計10の設置について、説明する。
【0033】
地中変位計10の設置では、まず、ホルダ30を地中変位計10に取り付けるホルダ取付工程が行われる。具体的には、図4(a)に示すように、通線ワイヤー20が相対的に鉛直上方となるようにして通線ワイヤー20を地中変位計10に沿わせた状態として、通線ワイヤー20によって地中変位計10を支持させる(支持工程)。そして、分離した状態のホルダ30の第一ホルダ体40及び第二ホルダ体50によって、地中変位計10及び通線ワイヤー20を上下から挟持する。この際、第一ホルダ体40が相対的に鉛直方向の下方側となる。そして、第一ホルダ体40と第二ホルダ体50とをボルト60によって互いに連結する。これにより、地中変位計10は、第一ホルダ体40及び第二ホルダ体50によって形成される挿通孔31をその長手方向に沿って挿通した状態で、ホルダ30によって挟持されて通線ワイヤー20と一体化される。なお、図4では、説明の便宜上、ボルト60の図示を省略している。
【0034】
次に、ホルダ30によって一体化された通線ワイヤー20と共に地中変位計10を地中孔5内のパイプ部材6内に挿入する挿入工程が行われる。挿入工程では、図4(b)に示すように、地中変位計10をねじれが生じていない正常姿勢とし、地中変位計10に沿って設けられホルダ30を支持する通線ワイヤー20を把持して、パイプ部材6の開口から地中変位計10をパイプ部材6内に挿入する。そして、通線ワイヤー20を地中孔5の奥に向けて押し進める。これにより、地中変位計10に負荷をかけることなく、地中変位計10を地中孔5のパイプ部材6内に挿入することができる。正常姿勢とは、通線ワイヤー20と地中変位計10とが鉛直方向上下に並んだ姿勢であり、地中変位計10の断面中心Oとホルダ30の重心Gとが、鉛直方向に沿って並んだ状態(鉛直軸上に並んだ状態)となるものである(図3参照)。なお、挿入工程では、地中変位計10を把持して地中孔5のパイプ部材6内に挿入することが除外されるものではない。
【0035】
また、図3に示すように、地中変位計10がホルダ30と共にパイプ部材6内に挿入されることで、パイプ部材6内に挿入された地中変位計10及び通線ワイヤー20は、ホルダ30を介してパイプ部材6の内周面に支持される。ホルダ30は、第一ホルダ体40の波形状の弧部43においてパイプ部材6の内周面に接触する。このように、ホルダ30は、波形状の弧部43によってパイプ部材6の内周面に接触することで、パイプ部材6の内周面に対応する円弧面で接触する場合と比較して、パイプ部材6の内周面との間の接触面積、ひいては、摩擦力を低減することができる。これにより、地中変位計10をホルダ30と共に地中孔5の奥に押し進めるにあたり、パイプ部材6の内周面からの抵抗が小さくなり、地中変位計10を挿入しやすくなる。
【0036】
地中変位計10を所定の量だけ地中孔5に挿入すると、図4(c)に示すように、新たなホルダ30を地中変位計10及び通線ワイヤー20に取り付け、当該ホルダ30と共に地中変位計10をさらに地中孔5へ挿入する。このように、ホルダ30を地中変位計10及び通線ワイヤー20に取り付けるホルダ取付工程と、ホルダ30及び通線ワイヤー20と共に地中変位計10をパイプ部材6に挿入し、ホルダ30によって地中変位計10をパイプ部材6の内周面に支持させる挿入工程と、を繰り返し行うことで、地中変位計10が地中孔5の最奥部まで挿入される。なお、地中変位計設置方法としては、ホルダ取付工程及び挿入工程が繰り返し実行されるものに限定されず、それぞれ一回だけ行われるものでもよい。また、一度のホルダ取付工程において、複数のホルダ30を地中変位計10に取り付けるものでもよい。
【0037】
ここで、通線ワイヤーと地中変位計とが鉛直方向上下に並んだ正常姿勢のまま地中孔に挿入しようとしても、地中変位計を地中孔に押し進める(押し込む)過程においては、地中変位計の長手方向回りにねじれが生じることがある。地中変位計に長手方向回りのねじれが生じると、測定する変位の方向と実際の地盤の変位の方向とにずれが生じる。正確に地盤の変位を測定するには、このねじれ量を把握する必要があるが、ねじれ量の正確な把握は困難である。よって、地中変位計に生じるねじれは抑制することが求められる。
【0038】
本実施形態では、地中変位計10は、ホルダ30によって通線ワイヤー20と一体化されているため、ねじれが生じる際には、地中変位計10、通線ワイヤー20、及びホルダ30が一体となってねじれる。地中変位計10に取り付けられたホルダ30の重心Gは、地中変位計10の長手方向に直交する断面上において地中変位計10の断面中心Oから鉛直方向の下方側へ変位している。言い換えると、ホルダ30の重心Gは、地中変位計10の断面中心Oとは一致せずにずれている(離れている)。さらに別の観点からいえば、地中変位計10の断面中心Oよりも鉛直下方にあるホルダ30の下部(第一ホルダ体40)が、地中変位計10の断面中心Oよりも鉛直上方にあるホルダ30の上部(第二ホルダ体50)よりも重くなるように構成されている。
【0039】
本実施形態では、図5に示すように、ホルダ30と共に地中変位計10がその長手方向回りにねじれよう(一時的にねじれた)とすると、地中変位計10の断面中心Oとホルダ30の重心Gをと結ぶ仮想線Lが鉛直軸に対して傾く。この状態となると、ねじれを元に戻すようにホルダ30の重力Fgにおける分力F1がモーメントとして地中変位計10に作用する。このため、本実施形態では、地中変位計10は、長手方向回りのねじれが生じにくく、一時的にねじれが生じたとしても、ホルダ30の重力(重量)によってねじれが解消される。
【0040】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0041】
本実施形態では、地中変位計10はホルダ30によって保持されるため、地中変位計10が長手方向回りにねじれると、ねじれに伴ってホルダ30も回転する。ホルダ30の重心Gは、地中変位計10の断面中心Oからずれているため、ホルダ30が地中変位計10と共に回転すると、ホルダ30の重量によって元の姿勢に戻ろうとする力がホルダ30に生じる。よって、地中変位計10を地中孔5に挿入する過程で地中変位計10が一時的にねじれても、ホルダ30が自身の重量によって元の姿勢に戻ろうとすることで、地中変位計10のねじれを解消することができる。したがって、本実施形態では、地中変位計10のねじれを抑制して、変位の測定精度を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、パイプ部材6の内周面に接触する第一ホルダ体40の弧部43は、波形状に形成される。これにより、ホルダ30とパイプ部材6との間の摩擦を低減することができ、地中変位計10をパイプ部材6内に容易に挿入することができる。
【0043】
以上、本実施形態について説明したが、次のような変形例も本発明の範囲内である。また、変形例に示す構成と上記の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0044】
上記実施形態では、地中変位計10と通線ワイヤー20とは、鉛直方向の上下に並んだ姿勢で地中孔5に挿入される。地中変位計10に対してねじれを生じさせないためには、通線ワイヤー20を地中変位計10に対して鉛直方向の上下のいずれかとすることが望ましいが、これに限定されない。
【0045】
例えば、図6に示すように、地中変位計10と通線ワイヤー20とは、鉛直方向及び地中変位計10の長手方向に垂直な水平方向に並んだ姿勢で地中孔5のパイプ部材6に挿入されてもよい。図6に示す変形例では、ホルダ30は、例えば、樹脂又は金属製であって、外形がパイプ部材6の内周面に対応する略円形に形成されており、地中変位計10及び通線ワイヤー20がそれぞれ挿入される円形の一対の挿通孔31a,31bを有する。ホルダ30は、一対の挿通孔31a,31bをそれぞれ二分割するように鉛直方向の上下で分割された半割構造に形成される。ホルダ30において、鉛直下方側の第一ホルダ体40は、内部に空洞などがない中実構造として構成され、鉛直上方側の第二ホルダ体50は、内部が気体により充填される空洞部50aを有する中空構造として構成される。なお、第一ホルダ体40は、内部に第一ホルダ体40よりも比重が大きい金属などの重量物が充填された構造体として構成されてもよい。また、第二ホルダ体50は、内部に第二ホルダ体50よりも比重が小さい気体以外の物体が充填された構造体として構成されてもよい。これにより、第一ホルダ体40の重量は、第二ホルダ体50の重量よりも大きくなる。したがって、このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0046】
また、ホルダ30とパイプ部材6との間の摩擦によっては、ホルダ30がパイプ部材6に対して移動(回転)できず、ねじれ解消の効果が充分に発揮されないおそれもある。これに対して、地中変位計設置方法として、挿入工程の後に実行される工程であって、地中孔5に挿入した地中変位計10のねじれを解消するねじれ除去工程をさらに備えていてもよい。ねじれ除去工程では、例えば、パイプ部材6に対して振動を付加する、又は、パイプ部材6内に注水する、といった手法により地中変位計10のねじれが除去される。パイプ部材6に対して振動を付加することで、パイプ部材6との間の摩擦が小さくなってホルダ30がパイプ部材6に対して移動しやすくなるため、ホルダ30の重量によるねじれが解消されやすくなる。また、パイプ部材6内に注水することで、パイプ部材6からホルダ30が浮上するため、ホルダ30の重量によって姿勢が正常姿勢に調整される。このようなねじれ除去工程は、最初に行われた挿入工程の後において、任意のタイミングで一又は複数回実行されてよい。
【0047】
また、上記実施形態では、地中変位計10は、通線ワイヤー20によって支持されて地中孔5に挿入される。これに対し、地中変位計10設置方法において、通線ワイヤー20は、必須のものではない。
【0048】
また、上記実施形態では、ホルダ30は、地中変位計10を挟持する分割された第一ホルダ体40及び第二ホルダ体50の二部材を有する。これに対し、ホルダ30は、上記実施形態の構成に限定されず、例えば、一部材によって地中変位計10を保持又は挟持するものであってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、地中変位計10と通線ワイヤー20とは、ホルダ30のみによって一体化される。これに対し、ホルダ30によって一体化することに加えて、接着テープ、結束バンドなどの結束部材によって一体化してもよい。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0051】
1 地盤
5 地中孔
10 地中変位計
20 通線ワイヤー(支持部)
30 ホルダ
31 挿通孔
31a 挿通孔
31b 挿通孔
40 第一ホルダ体
50 第二ホルダ体
図1
図2
図3
図4
図5
図6