(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063569
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】洗浄機
(51)【国際特許分類】
A47L 15/42 20060101AFI20240502BHJP
A47L 15/06 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A47L15/42 A
A47L15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171634
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 光司
(72)【発明者】
【氏名】内田 祥太
(72)【発明者】
【氏名】野村 知仁
【テーマコード(参考)】
3B082
【Fターム(参考)】
3B082BA06
(57)【要約】
【課題】製造性に優れると共に、洗浄機本体の天板にラックが載置された場合に、ラックをしっかりと位置決めでき、かつラック及び被洗浄物から落ちる水滴が洗浄機の周囲にこぼれることを抑制することができる、洗浄機を提供する。
【解決手段】食器洗浄機100は、周縁部71を形成する面であって鉛直方向に直交する第一水平面72と、凹部73の一部を形成する面であって鉛直方向に直交する第二水平面74と、凹部73の一部を形成する面であって、第一水平面72と第二水平面74とをつなぐ第一接続面75と、を有する上部パネル70を備える。第一接続面75は、水平方向に直交する垂直面76と、第一水平面72側から第二水平面74側に向かって下方に傾斜する傾斜面77と、含んで形成されており、第一接続面75の水平方向における幅寸法B1は、第一水平面72と第二水平面74との高低差Hよりも長い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から見たときに枠状に形成される周縁部と、前記周縁部の内側において前記周縁部に対し凹む凹部と、を有する天板が、本体部の上部に配置された洗浄機において、
前記天板は、
前記周縁部を形成する面であって、鉛直方向に直交する第一水平面と、
前記凹部の一部を形成する面であって、鉛直方向に直交する第二水平面と、
前記凹部の一部を形成する面であって、前記第一水平面と前記第二水平面とをつなぐ第一接続面と、を備え、
前記第一接続面は、水平方向に直交する垂直面と、前記第一水平面側から前記第二水平面側に向かって下方に傾斜する傾斜面と、含んで形成されており、
前記第一接続面の前記水平方向における幅寸法は、前記第一水平面と前記第二水平面との高低差よりも長い、洗浄機。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記第一水平面と前記垂直面との間及び前記垂直面と前記第二水平面との間の少なくとも一方に形成されている、請求項1記載の洗浄機。
【請求項3】
前記天板を板厚方向に切断した断面形状において、前記傾斜面の一部は、直線状に形成されている、請求項2記載の洗浄機。
【請求項4】
前記天板を板厚方向に切断した断面形状において、前記天板は、
前記第一水平面と、前記第一接続面と、前記第二水平面とが、この順番で連続してつながる第一断面と、
前記第一断面の前記第一接続面に代えて、前記第一水平面と前記第二水平面とをつなぐ第二接続面が形成された第二断面と、を含み、
前記第二接続面は、水平方向に直交する垂直面を形成することなく前記第一水平面から前記第二水平面に向かって下方に傾斜する面である、請求項1~3の何れか一項記載の洗浄機。
【請求項5】
前記第一断面に含まれる前記第一水平面の水平方向における幅寸法は、前記第二断面に含まれる前記第一水平面の水平方向における幅寸法と等しい、請求項4記載の洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器等の被洗浄物の洗浄を行う洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
食器等の被洗浄物が収容されたラックを洗浄室に格納し、ラックに収容された状態の被洗浄物を洗浄する洗浄機が知られている。例えば、下記特許文献1には、洗浄機本体部(本体部)の上部に設けられる天板に、上記のラックを載置するための凹部が形成された洗浄機が開示されている。このような洗浄機では、本体部の上部にラックを載置した場合、ラックが容易にずれ動くことを防止できると共に、ラックから水滴が落下したとしてもその水を凹部内に留めることができ、本体部の上部から側面を伝って周囲に流れ出すことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような凹部が形成された天板は、例えば凹部の縁が垂直に立ち上げるように絞り加工がなされることで製造されることがある。この場合、絞り時に、絞り部分に連続する平面部分(周縁部・凹部の底面)等の狭い範囲に大きな力が加わり残留応力が発生しやすくなる。その結果、絞り部分に連続する平面部分に、割れ、反り、歪み等が発生しやすくなるので製造性に劣る。そこで、凹部の縁を垂直に立ち上げず斜めに立ち上げたりすることによって製造性を向上させることが考えられる。しかしながら、そのような形状にすると、製造性を改善することができる反面、当該凹部に載置したラックを作業者が移動させる際、ラックの水平方向への移動に伴って凹部に溜まった水が掻き出され、洗浄機の周囲に水が散ったり、洗浄機外面を伝って水が流れ落ちたりする。この結果、本体部が汚れたり、周囲に配置された機器等との隙間に水滴が流れ込み、錆が発生したり、菌が発生したりして衛生的に好ましくない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、製造性に優れると共に、洗浄機本体の天板にラックが載置された場合に、ラックをしっかりと位置決めでき、かつラック及び被洗浄物から落ちる水滴が洗浄機の周囲にこぼれることを抑制することができる、洗浄機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る洗浄機は、上方から見たときに枠状に形成される周縁部と、周縁部の内側において周縁部に対し凹む凹部と、を有する天板が、本体部の上部に配置された洗浄機において、天板は、周縁部を形成する面であって、鉛直方向に直交する第一水平面と、凹部の一部を形成する面であって、鉛直方向に直交する第二水平面と、凹部の一部を形成する面であって、第一水平面と第二水平面とをつなぐ第一接続面と、を備え、第一接続面は、水平方向に直交する垂直面と、第一水平面側から第二水平面側に向かって下方に傾斜する傾斜面と、含んで形成されており、第一接続面の水平方向における幅寸法は、第一水平面と第二水平面との高低差よりも長い。
【0007】
この構成の洗浄機では、凹部の一部を形成する面に垂直面が形成されているので、ラックが凹部から略水平方向に滑り出すことが抑止され、ラックが容易にずれ動くことを防止できる。また、この構成の洗浄機では、凹部の一部を形成する面に垂直面が形成されているので、ラックを移動させるときに凹部内に滴下した水が掻き出されることが抑止され、洗浄機の周囲に水が散ったり、洗浄機外面を伝って水が流れ落ちたりすることを抑制できる。更に、凹部を形成するにあたり、垂直面だけでなく傾斜面を組み合わせた形状とすることで、例えば凹部を絞り加工する際の絞り性が向上し、天板の製造性を高めることができる。これらの結果、製造性に優れると共に、洗浄機本体の天板にラックが載置された場合に、ラックをしっかりと位置決めでき、かつラック及び被洗浄物から落ちる水滴が洗浄機の周囲にこぼれることを抑制することができる。
【0008】
本発明に係る洗浄機では、傾斜面は、第一水平面と垂直面との間及び垂直面と第二水平面との間の少なくとも一方に形成されてもよい。
【0009】
本発明に係る洗浄機では、天板を板厚方向に切断した断面形状において、傾斜面の一部は、直線状に形成されてもよい。この構成では、傾斜面を容易に形成することができる。
【0010】
本発明に係る洗浄機では、天板を板厚方向に切断した断面形状において、天板は、第一水平面と、第一接続面と、第二水平面とが、この順番で連続してつながる第一断面と、第一断面の第一接続面に代えて、第一水平面と第二水平面とをつなぐ第二接続面が形成された第二断面と、を含み、第二接続面は、水平方向に直交する垂直面を形成することなく第一水平面から第二水平面に向かって下方に傾斜する面でもよい。第二断面は、第一断面に比べて、第一水平面から第二水平面まで滑らかにつながれる。これにより、例えば凹部を絞り加工する際の絞り性が向上し、絞りによる割れ、反り、歪みの発生を低減することができる。そして、例えば、絞り加工する際に、割れ、反り、歪み等の不具合が発生し易い凹部の角部(隅部)を第二断面として形成することによって、上記の不具合の発生を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る洗浄機では、第一断面に含まれる第一水平面の水平方向における幅寸法は、第二断面に含まれる第一水平面の水平方向における幅寸法と等しくてもよい。この構成では、第一断面における第一接続面と第二断面とにおける第二接続面の外周位置、すなわち周縁部から第一接続面及び第二接続面が始まる位置、第一接続面及び第二接続面から第二水平面に変わる位置を揃えたので、凹部がきれいな四角形になり、外観品位に優れた天板とすることができる。また、この構成では、ラックの一部を天板の端部に載せ、第二断面からそのまま凹部に押し込んだり、第二断面を介してラックを凹部から取り出したりすることが容易となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造性に優れると共に、洗浄機本体の天板にラックが載置された場合に、ラックをしっかりと位置決めでき、かつラック及び被洗浄物から落ちる水滴が洗浄機の周囲にこぼれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る食器洗浄機の斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、上部パネルを斜め上方から見た斜視図である。
図3(B)は、上部パネルの角部を拡大して示した拡大斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、
図3(A)のIVA-IVA線から見た断面図である。
図4(B)は、
図3(A)のIVB-IVB線から見た断面図である。
【
図5】
図5(A)は、変形例1に係る上部パネルを斜め上方から見た斜視図である。
図5(B)は、上部パネルの角部を拡大して示した拡大斜視図である。
【
図6】
図6(A)は、
図5(A)のVIA-VIA線から見た断面図である。
図6(B)は、
図5(A)のVIB-VIB線から見た断面図である。
【
図7】
図7は、上部パネルを斜め上方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、変形例2に係る上部パネルの断面図である。
【
図9】
図9(A)は、変形例4に係る上部パネルを斜め上方から見た斜視図である。
図9(B)は、
図9(A)のIXB-IXB線から見た断面図である。
【
図10】
図10は、変形例5に係る上部パネルにおいて、
図9(A)のIXB-IXB線に該当する箇所から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して一実施形態に係る食器洗浄機(洗浄機)100について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。なお、説明の便宜のため、
図1において、前後方向、左右方向及び上下方向をそれぞれ設定した。
【0015】
図1に示されるように、一実施形態に係る食器洗浄機100は、洗浄室1Bの前面にドア部15が設けられたアンダーカウンタ式の洗浄機である。
図1~
図3に示されるように、食器洗浄機100は、本体部1と、ドア部15と、洗浄タンク20と、上側ノズル3と、下側ノズル4と、洗浄ポンプ5と、濯ぎタンク6と、濯ぎポンプ7と、洗剤供給ポンプ8と、リンス剤供給ポンプ9と、コントローラ10と、を備えている。本体部1の下部の四隅には、脚部12が取り付けられている。
【0016】
本体部1は、図示しないフレームと、ステンレス鋼製の外装パネル11と、内装パネル2と、を含んで形成されている。外装パネル11は、左右方向における側面を形成する一対の側部パネル11A,11Aと、上部パネル(天板)70と、前部パネル11Dと、後部パネル11Eと、を有している。上部パネル70は、天面部70Aと、前面部70Bと、を有している。上部パネル70の前面部70Bには、食器洗浄機100の各種動作を操作でき、食器洗浄機100の状態を表示する操作表示部13が設けられている。
図1及び
図3(A)に示されるように、前面部70Bは、天面部70Aから折り曲げられた部分であり、開口部70Baが形成されている。開口部70Baには、後段に詳述する操作表示部13が配置される。また、前面部70Bは、前面部70Bから折り曲げられた第一折曲部70Bbと、第二折曲部70Bcと、を有している。なお、上部パネル70の天面部70Aの詳細な構成については、後段にて詳述する。
【0017】
図1に戻り、操作表示部13は、運転モードや各種設定の入力操作を行う部分である。本実施形態の操作表示部13は、液晶画面とこれを覆う強化ガラス(静電スイッチ)とによって構成されている。作業者は、液晶画面を覆う強化ガラスに触れることによって各種操作が可能となっている。なお、操作表示部13は、各種ボタンやタッチパネルによって構成されてもよいし、本体部1とは別体のリモコン、操作端末等によって構成されてもよい。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、本体部1の下部領域には、洗浄タンク20と、洗浄ポンプ5と、濯ぎタンク6と、濯ぎポンプ7と、洗剤供給ポンプ8と、リンス剤供給ポンプ9と、を収容する機械室1Aが形成されている。本体部1の上部領域には、食器(被洗浄物)D等がセットされたラックを収容する洗浄室1Bが形成されている。洗浄室1Bは、洗浄タンク20の上方の空間であって、内装パネル2によって構成されている。内装パネル2は、主に、一対の側部パネル2A,2Aと、上部パネル2Bと、後部パネル(図示せず)と、を有している。一対の側部パネル2A,2Aの内面には、ラックを支持するラックレール23が形成されている。本体部1には、食器D等がセットされたラックを洗浄室1Bに出し入れする開口部1Cが形成されている。
【0019】
ドア部15は、開口部1Cの外側に配置されている。ドア部15は、開口部1Cを開閉可能に設けられており、ドア部15が開けられると、開口部1Cの内側の洗浄室1Bが本体部1の外部に開放される。ドア部15は、ドア部15の下端において左右方向に延在する軸を回転軸として回動可能に設けられている。作業者は、ドア部15の上端に設けられた取っ手15Aを手前に倒すことで、洗浄室1Bを開放することができる。
【0020】
洗浄タンク20は、洗浄室1Bの下方に設けられている。洗浄タンク20は、洗浄室1Bに収容された食器D等の洗浄に用いられる洗浄水を貯留する貯留部22を有する。貯留部22は、側部20cと底部20aとから形成されている。洗浄タンク20には、洗浄水検知部24と、洗浄水ヒータ25Aと、洗浄水温度センサ25Bと、が設けられている。
【0021】
洗浄水検知部24は、貯留部22に貯留された洗浄水の水位を検知する。洗浄水検知部24は、例えば、貯留部22内の水位が定水位H1を超えている場合にONとなり、定水位H1以下の場合にOFFとなるスイッチである。洗浄水検知部24による検知結果は、コントローラ10によって取得される。後段にて詳述する洗浄ポンプ5は、駆動中に空気を吸い込むと、いわゆるエア噛みを起こして上側ノズル3及び下側ノズル4から洗浄水を噴射できなくなる。一実施形態では、洗浄水検知部24が運転中にOFFになったときに洗浄ポンプ5の稼働を停止することで、洗浄ポンプ5による空気の吸い込みを防止する。
【0022】
洗浄水ヒータ25Aは、殺菌能力及び洗浄能力を向上させるために貯留部22に貯留された洗浄水を加熱する。洗浄水温度センサ25Bは、貯留部22に貯留された洗浄水の温度を検知する。洗浄水温度センサ25Bによる検知結果は、コントローラ10によって取得される。洗浄水ヒータ25AにおけるON・OFFは、コントローラ10によって制御される。例えば、洗浄水ヒータ25Aは、洗浄水温度センサ25Bが検知する水温に基づいて洗浄水を所定温度に維持するように、コントローラ10によって制御される。
【0023】
貯留部22の底部20aには、円形状の貫通孔20bが形成されている。貫通孔20bは、ポンプガード26によって覆われている。ポンプガード26は、厚み方向に貫通する複数の長孔が形成された円形の板状部材であって、異物の侵入を防止する。貫通孔20bは、接続部50を介して洗浄ポンプ5に接続されている。接続部50には、貫通孔20bに接続される第一接続孔50aと、本体部1の外部に水を排出する排水管28に接続される排水孔50bと、洗浄ポンプ5に接続される第二接続孔50cと、が形成されている。なお、接続部50は、洗浄ポンプ5を構成するケーシングの一部として洗浄ポンプ5と一体的に構成されてもよいし、洗浄タンク20の貯留部22と洗浄ポンプ5と接続する部材として洗浄ポンプ5とは別に設けられてもよい。
【0024】
洗浄タンク20には、上下方向に延びるオーバーフローパイプ27が設けられている。オーバーフローパイプ27は、貯留部22において所定水位を超えた水をその上端から流入させて洗浄タンク20の外部に排水し、貯留部22に貯留される洗浄水の水位を規定する。オーバーフローパイプ27の下端は貫通孔20bを覆うバーリング加工されたポンプガード26を通って接続部50に形成された排水孔50bに着脱可能に差し込まれている。オーバーフローパイプ27は、その下端が排水孔50bから抜き取られることで、貯留部22に貯留された洗浄水を、貫通孔20b及び排水孔50bを介して排出することができる。
【0025】
上側ノズル3は、洗浄室1Bの上方に設けられている。上側ノズル3は、洗浄室1Bの上方に設けられた上部支持部21Aに回転自在に設けられている。上側ノズル3は、上側ノズル3における回転軸の回転中心である基端部から半径方向に沿って先端部まで延在するノズル本体部30を有している。ノズル本体部30には、洗浄タンク20の貯留部22に貯留された洗浄水を噴射する洗浄噴射孔31と、回転中心から洗浄噴射孔31まで延在すると共に洗浄水が流通する洗浄流路32と、濯ぎタンク6に貯留された濯ぎ水を噴射する濯ぎ噴射孔33と、回転中心から濯ぎ噴射孔33まで延在すると共に濯ぎ水が流通する濯ぎ流路34と、が一体的に形成されている。上側ノズル3は、洗浄流路32に発生する洗浄水の流れ又は濯ぎ流路34に発生する濯ぎ水の流れが回転力に変換されることによって回転する。上側ノズル3には、洗浄流路32に洗浄水を供給する上側洗浄配管52及び濯ぎ流路34に濯ぎ水を供給する上側濯ぎ配管58が接続されている。
【0026】
下側ノズル4は、洗浄室1Bの下方に設けられている。下側ノズル4は、洗浄室1Bの下方に設けられた下部支持部21Bに回転自在に設けられている。下側ノズル4は、下側ノズル4における回転軸の回転中心である基端部から半径方向に沿って先端部まで延在するノズル本体部40を有している。ノズル本体部40には、洗浄タンク20の貯留部22に貯留された洗浄水を噴射する洗浄噴射孔41と、回転中心から洗浄噴射孔41まで延在すると共に洗浄水が流通する洗浄流路42と、濯ぎタンク6に貯留された濯ぎ水を噴射する濯ぎ噴射孔43と、回転中心から濯ぎ噴射孔43まで延在すると共に濯ぎ水が流通する濯ぎ流路44と、が一体的に形成されている。下側ノズル4は、洗浄流路42に発生する洗浄水の流れ又は濯ぎ流路44に発生する濯ぎ水の流れが回転力に変換されることによって回転する。下側ノズル4には、洗浄流路42に洗浄水を供給する下側洗浄配管53及び濯ぎ流路44に濯ぎ水を供給する下側濯ぎ配管59が接続されている。
【0027】
ラックに並べられた食器Dは、洗浄工程において上側ノズル3及び下側ノズル4によって洗浄水が噴射され、濯ぎ工程において上側ノズル3及び下側ノズル4によって濯ぎ水が噴射される。
【0028】
洗浄ポンプ5は、機械室1Aに配置されている。洗浄ポンプ5は、食器D等を収容する洗浄室1Bに洗浄タンク20の貯留部22に貯留された洗浄水を送り出す。洗浄ポンプ5は、接続部50を介して貯留部22の洗浄水を取り込み、上側ノズル3及び下側ノズル4に洗浄水を送り出す。洗浄ポンプ5の第一吐出口5aには、上側洗浄配管52が接続されている。上側洗浄配管52は、上側ノズル3に接続されている。洗浄ポンプ5の第二吐出口5bには、下側洗浄配管53が接続されている。下側洗浄配管53は、下側ノズル4に接続されている。
【0029】
濯ぎタンク6は、機械室1Aに配置されている。濯ぎタンク6は、食器D等の濯ぎに用いられる濯ぎ水を貯留する。濯ぎタンク6には、外部の水源から給水管60を介して水が供給される。給水管60には、ストレーナ60Aが設けられている。給水管60におけるストレーナ60Aの下流側には、給水弁61が設けられている。給水弁61は、給水管60の開閉を行う弁部61Aと弁部61Aを駆動する駆動部61Bとを有し、濯ぎタンク6への水の供給の有無を切り替える。駆動部61Bの例には、ソレノイドが含まれる。駆動部61Bは、コントローラ10によって制御される。
【0030】
濯ぎタンク6には、水位検知部62と、オーバーフロー部63と、濯ぎ水ヒータ64Aと、濯ぎ水温度センサ64Bと、が設けられている。
【0031】
水位検知部62は、濯ぎタンク6に貯留された水が、定水位H2にあることを検知するフロートスイッチである。水位検知部62の検知結果は、コントローラ10によって取得される。給水弁61は、コントローラ10によって制御されている。例えば、コントローラ10は、水位検知部62における定水位H2の検知と連動して弁部61Aを開閉し、濯ぎタンク6に貯留される濯ぎ水の水位を一定の範囲に維持するように、駆動部61Bを制御する。
【0032】
オーバーフロー部63は、濯ぎタンク6において定水位H2よりも高い水位である高水位H3を超えた水を排出する。濯ぎタンク6では、例えば、給水弁61が閉弁異常となったときに、高水位H3を超えて供給された水が排出される。濯ぎタンク6に貯留される水の水位が高水位H3以下の場合には、オーバーフロー部63の開口部は水中から露出しており、外部空間と連通する。したがって、濯ぎタンク6の内部において水がない空間は、大気圧の状態となっていることが通常である。
【0033】
濯ぎ水ヒータ64Aは、殺菌能力及び濯ぎ能力を向上させるために濯ぎタンク6に貯留された濯ぎ水を加熱する。濯ぎ水温度センサ64Bは、濯ぎ水の温度を検知する。濯ぎ水温度センサ64Bの例は、温度の小さな変化に比例して抵抗値が大きく変化する焼結半導体から形成されるサーミスタである。濯ぎ水温度センサ64Bによる検知結果は、コントローラ10によって取得される。濯ぎ水ヒータ64AにおけるON・OFFは、コントローラ10によって制御される。
【0034】
濯ぎポンプ7は、濯ぎタンク6に貯留された濯ぎ水を取込管57Aを介して取り込み、食器D等を収容する洗浄室1Bに送り出す。より詳細には、濯ぎポンプ7は、上側ノズル3及び下側ノズル4を介して、洗浄室1Bに濯ぎ水を送り出す。濯ぎポンプ7の吐出口には、濯ぎ配管57を介して上側濯ぎ配管58と下側濯ぎ配管59とが接続されている。上側濯ぎ配管58は、上側ノズル3に接続されている。下側濯ぎ配管59は、下側ノズル4に接続されている。
【0035】
洗剤供給ポンプ8は、機械室1Aに配置されている。洗剤供給ポンプ8は、洗剤タンク8A内に貯留された洗剤を配管8Bを介して洗浄室1Bに供給する。洗浄室1B内に吐出された洗剤は、貯留部22内に流れ込み、洗浄水と混じり合う。リンス剤供給ポンプ9は、機械室1Aに配置されている。リンス剤供給ポンプ9は、リンス剤タンク9Aに貯留されたリンス剤を配管9Bを介して濯ぎ配管57に供給する。濯ぎ配管57に供給されたリンス剤は、濯ぎ水と混じり合い、上側ノズル3及び下側ノズル4を介して洗浄室1Bに供給される。
【0036】
コントローラ10は、本体部1における上部パネル70の天面部70Aと洗浄室1Bを構成する上部パネル2Bとの間に配置されている。コントローラ10は、例えば、濯ぎ水ヒータ64Aや給水弁61の駆動部61B等、食器洗浄機100における動作全般を制御する。コントローラ10は、集積回路に実装されたコンピュータシステムあるいはプロセッサである。コントローラ10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び入出力インターフェース等から構成される。ROMには、各種プログラム又はデータが格納されている。
【0037】
次に、上部パネル70について、主に
図1、
図3及び
図4を用いて説明する。上部パネル70は、本体部1の上部に配置されている。なお、上部パネル70の説明に用いられる上下左右等の方向は、上部パネル70が本体部1の上部に取り付けられたときの状態に基づいている。上部パネル70の天面部70Aは、上方から見たときに矩形枠状に形成される周縁部71と、周縁部71の内側において周縁部71に対し凹んだ凹部73と、を有している。周縁部71は、所定の幅を有しており、その幅の例は、20mm~55mmである。また、天面部70Aは、天面部70Aから折り曲げられた折曲部70Aaを有している。
【0038】
周縁部71は、鉛直方向に直交する第一水平面72によって形成されている。凹部73は、鉛直方向に直交する第二水平面74と、第一水平面72と第二水平面74とをつなぐ第一接続面75と、によって形成されている。第一接続面75は、上方から見て第二水平面74を取り囲むように枠状に形成されている。また、第一接続面75を上方から見たときの四つの角部Cは円弧状に形成されている。第二水平面74の左隅には、凹部73に溜まった水を機外に排出する誘導孔80が設けられている。
【0039】
このような構成の上部パネル70は、四辺各辺の中央部S近傍において、
図4(A)に示される第一断面を有している。第一断面は、板厚方向に切断した断面であり、第一水平面72と、第一接続面75と、第二水平面74とが、この順番で連続してつながっている。
【0040】
第一接続面75には、水平方向に直交する垂直面76と、第一水平面72から第二水平面74に向かって下方に傾斜する傾斜面77(曲面77A、平面77B、曲面77C及び曲面77D)と、が形成されている。曲面77Aは、第一水平面72と垂直面76とをつなぐ部分である。平面77Bは、板厚方向に切断した断面において直線状に延びる面である。曲面77Cは、垂直面76と平面77Bとをつなぐ部分である。曲面77Dは、平面77Bと第二水平面74とをつなぐ部分である。上部パネル70を周縁部71の一辺に沿って周縁部71及び凹部73を含むように板厚方向に切断した、
図4(A)の断面形状において、第一接続面75の水平方向における幅寸法B1は、第一水平面72と第二水平面74との高低差Hよりも長くなるように形成されている。
【0041】
幅寸法B1の例は、10mm~20mmであり、高低差Hの例は、4mm~10mmである。後段にて詳述するように、平板部材を絞り加工をする際には、高低差Hが大きくなるほど第一水平面72や第二水平面74に歪みや反り等の不具合が発生する可能性が高くなるところ、幅寸法B1を大きくすることによって不具合発生の可能性が低下することから、幅寸法B1は、高低差Hに合わせて適宜変更される。平面77Bの水平方向対する傾きは、例えば、20度~25度である。曲面77A、曲面77C及び曲面77Dの曲線半径は、垂直面76が無くならない程度(言い替えれば、垂直面76の垂直方向における長さLが所定長さ確保できるように)適宜調整される。なお、ここでいう所定長さLは、例えば、ラックの滑り出しの抑制度合等を考慮して適宜設定される。
【0042】
なお、ここでは、第一接続面75には、曲面77A、曲面77C及び曲面77Dが形成されている例を挙げて説明したが、これらの曲面は形成されなくてもよい。すなわち、第一水平面72と垂直面76とが直接接続され、垂直面76と平面77Bとが直接接続され、平面77Bと第二水平面74とが直接接続されてもよい。
【0043】
また、ここでは、第一接続面75の中に直線状の平面77Bが形成されている例を挙げて説明したが、平面である平面77Bを曲面に変更してもよい。この場合、
図4(A)に示される断面形状において、曲面77C及び曲面77Dによって挟まれる当該曲面の曲線半径を、曲面77C及び曲面77Dの曲線半径よりも大きくすればよい(曲率半径を小さくすればよい)。
【0044】
また、上部パネル70は、上述した断面の第一接続面75に代えて第一水平面72から第二水平面74に向かって下方に傾斜する第二接続面78が形成された第二断面を有している。より詳細には、上部パネル70は、四隅の角部Cにおいて、
図4(B)に示される第二断面を有している。第二断面は、板厚方向に切断した断面であり、第一水平面72と、第二接続面78と、第二水平面74とが、この順番で連続してつながっている。
図4(B)の断面形状において、第二接続面78の水平方向における幅寸法B2は、第一接続面75の水平方向における幅寸法B1よりも長く、かつ、第一水平面72と第二水平面74との高低差Hよりも長くなるように形成されている。
【0045】
第二接続面78には、第一接続面75と異なり、水平方向に直交する垂直面が形成されていない。第二接続面78には、板厚方向に切断した断面において直線状に延びる二つの平面78B及び平面78Eと、曲面78Dと、曲面78Cと、曲面78Aと、が形成されている。曲面78Dは、第二水平面74と平面78Bとをつなぐ曲面である。曲面78Cは、平面78Bと平面78Eとをつなぐ曲面である。曲面78Aは、平面78Eと第一水平面72とをつなぐ曲面である。
【0046】
図4(B)に示される平面78Eは、
図4(A)に示される垂直面76に比べて水平方向に広がりがある。このため、第一断面の第一接続面75を第二接続面78に置き換えた第二断面を有する角部Cでは、
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、第一水平面72と第二接続面78との境界が、第一断面を有する四辺各辺の中央部Sの第一水平面72と第一接続面75との境界に比べて天面部70Aの外側に膨らんでいる。垂直面76と平面78Eとは周方向に沿って連続しており、垂直面76と平面78Eとの接続部分は、凹部73における周方向に沿って中央部Sから角部Cに向かって、水平方向に直交する状態から徐々に傾斜状態に傾いていく。これにより、第一断面の垂直面76と第二断面の平面78Eとは周方向に沿って滑らかに接続される。
【0047】
上述した上部パネル70の製造方法の一例について説明する。まず、ステンレス鋼等の材料からなる板状部材が準備される。上部パネル70は、このような板状部材が絞り加工と曲げ加工とがなされることによって製造される。具体的には、天面部70Aよりもサイズの大きな板状部材が準備され、絞り加工によって上述した凹部73が形成される。より詳細には、板状部材が、
図4(A)及び
図4(B)に示される断面形状に一致するパンチによって加圧されることで、周縁部71から凹部73が絞り出される。次に、上部パネル70を折り曲げ加工前の展開図の状態の形状に合わせて切断加工し、曲げ加工によって前面部70Bが天面部70Aから折り曲げられる。なお、前面部70Bの開口部70Baは、当該曲げ加工前に切断加工されている。次に、曲げ加工によって天面部70Aから折曲部70Aaが折り曲げられ、前面部70Bから第一折曲部70Bbと、第二折曲部70Bcと、が折り曲げられる。以上に示した手順によって本実施形態の上部パネル70が形成される。
【0048】
上記実施形態の食器洗浄機100における作用効果について説明する。上記実施形態の食器洗浄機100では、凹部73の一部を形成する第一接続面75に垂直面76が形成されているので、ラックが凹部73から略水平方向に滑り出すことが抑止され、ラックが容易にずれ動くことを防止できる。また、上記実施形態の食器洗浄機100では、凹部73の一部を形成する第一接続面75に垂直面76が形成されているので、ラックを移動させるときに凹部73内に滴下した水が掻き出されることが抑止され、食器洗浄機100の周囲に水が散ったり、本体部1の食器洗浄機100の外面を伝って水が流れ落ちたりすることを抑制できる。これらの結果、本体部1の上部パネル70にラックが載置された場合に、ラックをしっかりと位置決めでき、かつラック及び食器Dから落ちる水滴が食器洗浄機100の周囲にこぼれることを抑制することができる。
【0049】
更に、凹部73を形成するにあたり、垂直面76だけでなく傾斜面77(曲面77A、平面77B、曲面77C及び曲面77D)を組み合わせた形状かつ第一接続面75の水平方向における幅寸法B1を、第一水平面72と第二水平面74との高低差Hよりも長くすることで、凹部73を絞り加工する際の絞り性が向上し、上部パネル70の製造性を高めることができる。
【0050】
上部パネル70の製造性についてより詳細に説明する。上部パネル70に凹部73を形成する際、第一接続面75に傾斜面77が形成されていないと垂直面76を長く形成するしかないが、第一接続面75に傾斜面77が形成されていると傾斜面77の高さ方向の長さだけ、垂直面76を短くすることができる。絞り加工時には、垂直面76が長くなるほど垂直面76に局所的に加えられる応力が大きくなり、残留応力が発生し易くなる。上記実施形態では、上述したとおり、第一接続面75に傾斜面77が形成されるので、絞り加工時において垂直面76に局所的に加えられる応力が小さくなり、残留応力の発生の低減につながる。
【0051】
上記実施形態の食器洗浄機100では、上部パネル70を板厚方向に切断した断面形状において、傾斜面77の一部である平面77Bが直線状に形成されている。この構成では、傾斜面77の一部を容易に形成することができる。
【0052】
上記実施形態の食器洗浄機100では、上部パネル70は、上部パネル70を板厚方向に切断した断面形状において、第一水平面72と、第一接続面75と、第二水平面74とが、この順番で連続してつながる第一断面(
図4(A)参照)と、第一断面の第一接続面75に代えて第一水平面72から第二水平面74に向かって下方に傾斜する第二接続面78が形成された第二断面(
図4(B)参照)と、を有している。そして、本実施形態では、第一断面は、凹部73における四辺各辺の中央部S近傍に形成され、第二断面は、凹部73の四隅の角部C近傍に形成されている。
【0053】
第二断面は、第一断面に比べて、第一水平面72から第二水平面74までの接続面が滑らかな形状を有している。第一断面に代えて第二断面を採用することで、第一水平面72と第二水平面74との間に形成される垂直面がなくなり、局所的に加えられる応力が小さくなる。すなわち、第一断面に対する第二断面の割合を増やせば増やすほど、上部パネル70全体に発生する残留応力を減らせることでき、割れ、反り、歪み等の不具合が発生し難くすることができる。ここで、第一断面に対する第二断面の割合をできるだけ増やして残留応力の発生を低減しつつ、ラックを位置決めできる最小限の第一断面を形成することを考慮すると、凹部73における四辺各辺の中央部S近傍を第一断面とし、凹部73の四隅の角部C近傍を第二断面とすることが好ましい。
【0054】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
<変形例1>
上記実施形態では、上部パネル70の角部Cにおいて、
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、第一水平面72と第一接続面75との境界が、四辺各辺の中央部Sに比べて外側に膨らんでいる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、
図5(A)及び
図5(B)に示されるように、角部Cにおける第一水平面72と第一接続面75との境界が、四辺各辺の中央部Sに比べて外側に膨らまず、周縁部71の外縁からの位置が一定となるように形成してもよい。言い替えれば、第一断面に含まれる第一水平面72の水平方向における幅寸法Bs(
図7参照)は、第二断面に含まれる第一水平面72の水平方向における幅寸法Bc(
図7参照)と等しい。また、本変形例では、
図6(A)及び
図6(B)に示されるように、第一接続面75の水平方向における幅寸法B1と第二接続面78の水平方向における幅寸法B2とがほぼ等しくなるように形成されている(多少のずれがあってもよい)。
【0056】
この構成では、第一水平面72と第一接続面75との境界位置がきれいな四角形になり、外観品位に優れた上部パネル70とすることができる。また、この構成では、ラックの一部を
図6(B)に示される上部パネル70の端部に載せ、そのまま凹部73に押し込んだり、凹部73から取り出したりすることが容易となる。この点について、
図7を参照しながら説明する。
【0057】
変形例1に係る構成の上部パネル70を有する食器洗浄機100では、ラックの一部を上部パネル70上に置いてそのまま一方向(
図7に示すD1方向)に押し込むときに、ラックを多少ラフに置いたとしても、角部Cにおける曲面78A及び平面78Eと、中央部Sにおける曲面77Aとによって、ラックが
図7に示すD2の矢印のように上部パネル70の内側に誘導される。そして、ラックの先頭が垂直面76が形成された中央部S近傍まで誘導されると、ラックの先頭部分が凹部73内に落ち、更に一方向D1にそのままラックを押し込むと最後にラック全体が凹部73内に落ちる。これにより、ラックの四辺が、上部パネル70の中央部S近傍に形成された四つの垂直面76によって位置決めされるようになる。
【0058】
また、ラックを別の場所に運ぶ際には、ラック全体をそのままの位置から直上方向へ引き上げてもよいが、ラックの一辺を少しだけ上に持ち上げて中央部Sの垂直面76の上に載せ、そのまま移動させたい方向にスライドさせた後にラック全体を持ち上げるようにすると楽である。この変形例1に係る構成では、角部Cの近傍において
図6(B)に示されるような垂直面76の無い断面形状となっているので、凹部73を構成する側面全周でラックがロックされることない。このため、上述したような一方向にスライドする方法でラックを持ち上げる場合であっても、初動が制限を受け難く(ラックの角などが引っかかり難い)なる。また、ラックを上方に持ち上げる場合であっても、スライドさせる場合であっても、最終的にはラックを上方へ持ち上げる動作となるので、凹部73内に溜まった水がラックで掻き出されることはない。
【0059】
<変形例2>
上記実施形態及び変形例では、直線状の平面77Bが垂直面76と第二水平面74との間に形成されている例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、
図8に示されるように、変形例2に係る上部パネル70の凹部73は、第二水平面74と、第一水平面72と第二水平面74とをつなぐ第一接続面75と、によって形成されており、第一接続面75に含まれる直線状の平面77Fは、垂直面76と第一水平面72との間に形成されてもよい。この場合、第一接続面75には、水平方向に直交する垂直面76と、第一水平面72から第二水平面74に向かって下方に傾斜する傾斜面77(曲面77G、平面77F、曲面77H及び曲面77I)と、が形成されている。
【0060】
曲面77Gは、第一水平面72と平面77Fとをつなぐ部分である。平面77Fは、板厚方向に切断した断面において直線状に延びる部分である。曲面77Hは、垂直面76と平面77Fとをつなぐ部分である。曲面77Iは、垂直面76と第二水平面74とをつなぐ部分である。そして、変形例2においても、上部パネル70を周縁部71の一辺に沿って周縁部71及び凹部73を含むように板厚方向に切断した、
図8の断面形状において、第一接続面75の水平方向における幅寸法B5は、第一水平面72と第二水平面74との高低差Hよりも長くなるように形成されている。変形例2の場合であっても、製造性に優れると共に、上部パネル70にラックが載置された場合に、ラックをしっかりと位置決めでき、かつラック及び食器Dから落ちる水滴が食器洗浄機100の周囲にこぼれることを抑制することができる。
【0061】
<変形例3>
上記実施形態及び変形例では、上部パネル70の中央部S近傍において
図4(A)に示される第一断面が形成され、上部パネル70の角部C近傍において
図4(B)に示される第二断面が形成されている例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、上部パネル70の中央部S近傍において
図4(B)に示される第二断面が形成され、上部パネル70の角部C近傍において
図4(A)に示される第一断面が形成されてもよい。絞り加工によって凹部を形成する場合に、割れ、反り、歪み等の不具合が発生し易いポイントに対応する位置に適宜第二断面を設けるようにしてもよい。言い替えれば、絞り加工によって凹部を形成する場合に、割れ、反り、歪み等の不具合が発生し難いポイントに対応する位置に垂直面76有する第一断面を配置してもよい。
【0062】
また、ラックを上部パネル70に載置したときに、前後左右のうち略水平方向へ滑り出すことを抑制したい方向に第一断面を設けてもよい。例えば、前方向への滑り出しを抑制したい場合には、前方向の中央部S近傍等に第一断面を設ければよい。また、例えば、天面部70A(凹部73)のサイズに対して相対的に小さなハーフサイズ(略250cm×250cmサイズ)のラックを上部パネル70に載せることを想定した場合、垂直面76を有する第一断面を、凹部73の四辺各辺に二箇所以上に形成してもよい。これにより、上部パネル70にハーフサイズのラックを載せた場合であっても、ラックが凹部73から滑り出すことを防止できる。
【0063】
また、上記実施形態及び変形例では、
図4(A)に示される第一断面と、
図4(B)に示される第二断面との二つの断面形状が形成されている例を挙げて説明したが、第二断面は形成されなくてもよい。また、例えば、第一断面及び第二断面に加え、水平方向に対する角度が垂直面76の角度と平面78Eの角度との間となるような傾斜面77が形成された第三断面を有してもよい。これによって、絞り性等を考慮した設計が可能となる。また、上部パネル70は、3つ以上の断面形状を有していてもよい。
【0064】
<変形例4>
上記実施形態及び変形例の上部パネル70の構成に加えて、
図9(A)及び
図9(B)に示されるように、凹部73には、第二水平面74から上方に凸となるラック載置面81が設けられてもよい。ラック載置面81と第二水平面74との高低差H0は、例えば、3mm~5mmである。第二水平面74は、凹部73における最深面を構成する。第二水平面74は、上方から見た平面視において枠状に形成される。第二水平面74は、ラック載置面81を基準として見たとき、ラック載置面81の周囲において下方に凹む、所定幅を有する溝である。言い替えれば、変形例4の上部パネル70では、凹部73の一部であるラック載置面81の縁部にラック載置面81よりも更に深く絞った溝状の第二水平面74が形成されている。
【0065】
変形例4においても、第一接続面75は、水平方向に直交する垂直面76と、第一水平面72側から第二水平面74側に向かって下方に傾斜する傾斜面77(曲面77A、平面77B、曲面77C及び曲面77D)と、含んで形成されており、第一接続面75の水平方向における幅寸法B6は、第一水平面72と第二水平面74との高低差Hよりも長い。第二水平面74は、ラックから滴下した水を溜める水溜部を構成している。また、枠状の第二水平面74は、一部で分岐して誘導孔80に接続される分岐面74Aを有している。ラックからラック載置面81に滴下した水は、溝状の第二水平面74に流入し、分岐面74Aを介して誘導孔80に流れ込む。
【0066】
変形例4に係る食器洗浄機100では、ラックからラック載置面81に滴下した水を、溝状の第二水平面74に流入させ、分岐面74Aを介して誘導孔80に誘導することができるので、凹部73に残った水を拭き取ったりする作業者の手間を軽減することができる。
【0067】
<変形例5>
変形例4に係る上部パネル70の構成において、垂直面76、曲面77A、平面77B、曲面77C及び曲面77Dを含んで形成される第一接続面75に代えて、
図10に示されるような、垂直面を含まず、比較的大きな曲線半径を有する曲面である曲面77J及び曲面77Kを含んで構成される第二接続面78を採用してもよい。この場合も、第二接続面78の水平方向における幅寸法B7は、第一水平面72と第二水平面74との高低差Hよりも長い。これにより、凹部73を絞り加工する際の絞り性が向上し、上部パネル70の製造性を高めることができる。
【0068】
このような変形例に係る上部パネル70では、水溜部を構成する第二水平面74は、ラック載置面81より深く絞ってあり、ラックをスライドしても第二水平面74を摺動することがない。また、変形例に係る上部パネル70では、ラック載置面81と第二水平面74との接続部分である曲面82、第二水平面74の外周からの立ち上がり部分である曲面77J、及び曲面77Jから第一水平面72につながる曲面77Kは、比較的大きな曲線半径を有する滑らかな曲面によって形成されているので、凹部73からラックを略水平方向へスライドさせることができる。また、凹部73からラックを略水平方向へスライドさせる際、水溜部を構成する第二水平面74にラックが接触することはないので、ラックのスライドによって、第二水平面74に溜まった水が掻き出されることはない。これにより、ラックのスライド時に、食器洗浄機100の周りに水がこぼれることを抑制できる。
【0069】
(その他の変形例)
上部パネル70は、上記変形例4として説明した第一接続面75と上記変形例5として説明した第二接続面78との二つの断面を有する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…本体部、70…上部パネル、70A…天面部、70B…前面部、71…周縁部、72…第一水平面、73…凹部、74…第二水平面、75…第一接続面、76…垂直面、77…傾斜面、78…第二接続面、81…ラック載置面、100…食器洗浄機(洗浄機)。