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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063575
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】炉心の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 7/08 20060101AFI20240502BHJP
   G21D 3/12 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G21C7/08
G21D3/12 D
G21D3/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171643
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横井 公洋
(57)【要約】
【課題】
沸騰水型原子炉に適した、日負荷追従運転における制御棒による軸方向出力分布のピーク増大を抑制し得る炉心の制御方法を提供する。
【解決手段】
日負荷追従運転を実施する原子力プラントにおける炉心の制御方法であって、高出力状態から低出力状態に負荷追従運転した後、高出力状態への復帰中に、予め前記炉心への挿入量が深い第1の制御棒又は予め前記炉心への挿入量が浅い第2の制御棒を操作する第1の工程と、その後の135Xeの減少に伴い、前記第1の工程にて操作される制御棒とは異なる前記第1の制御棒又は前記第2の制御棒を操作する第2の工程と、を備える。
【選択図】 図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
日負荷追従運転を実施する原子力プラントにおける炉心の制御方法であって、
高出力状態から低出力状態に負荷追従運転した後、高出力状態への復帰中に、予め前記炉心への挿入量が深い第1の制御棒又は予め前記炉心への挿入量が浅い第2の制御棒を操作する第1の工程と、
その後の135Xeの減少に伴い、前記第1の工程にて操作される制御棒とは異なる前記第1の制御棒又は前記第2の制御棒を操作する第2の工程と、を備えることを特徴とする炉心の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の炉心の制御方法において、
前記炉心の軸方向出力分布が下部ピークとなる場合に、
前記第1の工程にて、前記第1の制御棒を所定量引き抜き、
前記第2の工程にて、前記第2の制御棒を所定量さらに挿入することを特徴とする炉心の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の炉心の制御方法において、
炉心の軸方向出力分布が上部ピークの場合に、
前記第1の工程にて、前記第2の制御棒を所定量引き抜き、
前記第2の工程にて、第1の制御棒を所定量さらに挿入することを特徴とする炉心の制御方法。
【請求項4】
請求項2記載の炉心の制御方法において、
135Xeの増加時に、前記第1の工程にて、前記第1の制御棒を所定量引き抜き、
135Xeの減少時に、前記第2の工程にて、前記第2の制御棒を所定量さらに挿入することを特徴とする炉心の制御方法。
【請求項5】
請求項3に記載の炉心の制御方法において、
135Xeの増加時に、前記第1の工程にて、前記第2の制御棒を所定量引き抜き、
135Xeの減少時に、前記第2の工程にて、第1の制御棒を所定量さらに挿入することを特徴とする炉心の制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載の炉心の制御方法において、
135Xeの増加時に、前記第1の工程にて、前記第1の制御棒を所定量引き抜くと共に冷却水の炉心流量を所定量増大させ、
135Xeの減少時に、前記第2の工程にて、前記第2の制御棒を所定量さらに挿入すると共に冷却水の炉心流量を所定量減少させることを特徴とする炉心の制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載の炉心の制御方法において、
135Xeの増加時に、前記第1の工程にて、前記第2の制御棒を所定量引き抜くと共に冷却水の炉心流量を所定量増大させ、
135Xeの減少時に、前記第2の工程にて、第1の制御棒を所定量さらに挿入すると共に冷却水の炉心流量を所定量減少させることを特徴とする炉心の制御方法。
【請求項8】
請求項6に記載の炉心の制御方法において、
前記第1の制御棒が前記炉心に挿入される領域及び前記第2の制御棒が前記炉心に挿入される領域を最小限とすることを特徴とする炉心の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉心の制御方法に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な炉心の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉の炉心には、複数の燃料集合体が装荷されている。燃料集合体は、核燃料物質(例えば、酸化ウラン)を含む複数の燃料ペレットを封入した複数の燃料棒、燃料棒の上端部を支持する上部タイプレート(上部燃料支持部材)、燃料棒の下端部を支持する下部タイプレート(下部燃料支持部材)、燃料棒間の間隔を保持する複数の燃料スペーサ、水ロッド、及び横断面が正方形状である角筒状のチャンネルボックスを有する。原子力発電は、発電コストに占める核燃料サイクルコストの割合が小さく、とりわけ国内ではベースロード電源として認識されてきた。
【0003】
これまでベースロード電源として認識されてきた国内の原子力プラントにおいても、近年の再生可能エネルギー(特に太陽光)の大量導入に伴い、日負荷追従運転による調整力としての機能が求められつつある。原子力プラントの負荷追従運転の方法として、炉心の熱出力を変化させる熱出力制御がある。
【0004】
熱出力制御の大きな課題の一つとして、135Xeの濃度変化がある。135Xeは中性子の強吸収物質であるため、その濃度変化に合わせて臨界制御を行う必要がある。135Xeは定格出力時には生成と消滅がつり合い平衡状態(一定の数密度)となっているが、熱出力を下げると消滅の寄与が減り濃度が上昇していく。炉心にもよるが、おおよそ6時間程度で135Xeの数密度がピークとなったのち減少に転じる。この135Xeの数密度がピークとなる時間オーダーとは、太陽光発電が盛んに行われる日照時間の時間オーダーに比較的近い。従って、太陽光発電が行われている間に、電力の需給調整のため原子力プラントで低出力運転をすることを考えた場合、定格出力に戻す際には、ちょうど135Xeが蓄積した状態である可能性が高い。定格出力に戻した際にも当然臨界を維持する必要があるが、135Xeが蓄積している分、定格運転状態と比べると正の反応度を投入しなければならない。また、この後定格出力を維持すると、135Xeの消滅の寄与が増えて逆に135Xeの数密度が減り負の反応度を投入する必要が生じる。このように同じ定格出力状態であっても、負荷追従による135Xeの濃度変化に伴い、大きく臨界制御をする必要がある。
【0005】
この臨界制御の方法として、制御棒の挿入量の調整、再循環ポンプによる炉心流量制御等がある。流量制御の特徴は、炉心全体的に反応度を投入することができるため、出力分布の変化は比較的小さい。一方、制御棒操作は、局所的に反応度を投入することになるため、出力分布の変化が大きい。流量制御量にはP-F map(パワーフローマップ)やMCPR(Minimum Critical Power Ratio:最小限界出力比)等の制限があり、出力調整幅が大きい場合等には、臨界維持のため、併せて制御棒操作を実施する必要がある。そのため、制御棒操作の際には出力分布、特に軸方向出力分布を同時に制御し、ピークの増大を抑制する必要がある。軸方向出力分布のピーク増大は、燃料の最大線出力密度等の制約超過につながる。
【0006】
制御棒操作における出力分布の制御に関して、特許文献1に記載された加圧水型原子炉の技術が知られている。特許文献1では、日負荷追従運転による135Xeの濃度変化に対して、種々の中性子吸収タイプの制御棒を活用し、アキシャルオフセットの超過を抑制し、ホウ素濃度の調整の最小化を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5-240984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術は、加圧水型原子炉に好適な技術である。沸騰水型原子炉は、ボイド係数が大きいという特徴があるため、加圧水型原子炉とは異なり、軸方向出力分布のキセノン振動は起こりづらい。一方で、炉停止余裕確保の観点から、グレイ制御棒のような中性子吸収能力が小さい制御棒の多用は、好ましくないという特徴もある。
【0009】
そこで、本発明は、沸騰水型原子炉に適した、日負荷追従運転における制御棒による軸方向出力分布のピーク増大を抑制し得る炉心の制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る炉心の制御方法は、日負荷追従運転を実施する原子力プラントにおける炉心の制御方法であって、高出力状態から低出力状態に負荷追従運転した後、高出力状態への復帰中に、予め前記炉心への挿入量が深い第1の制御棒又は予め前記炉心への挿入量が浅い第2の制御棒を操作する第1の工程と、その後の135Xeの減少に伴い、前記第1の工程にて操作される制御棒とは異なる前記第1の制御棒又は前記第2の制御棒を操作する第2の工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、沸騰水型原子炉に適した、日負荷追従運転における制御棒による軸方向出力分布のピーク増大を抑制し得る炉心の制御方法を提供することが可能となる。
例えば、日負荷追従運転において、制御棒による135Xeの濃度変化に伴う臨界制御を実施しても、軸方向出力分布のピーク増大を抑制できる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】原子炉熱出力の時間変化の説明図である。
図2】Xe反応度価値の時間変化の説明図である。
図3】原子炉の冷却水の炉心流量の時間変化の説明図である。
図4】一般的な制御棒操作の説明図である。
図5】一般的な制御棒操作を使用した場合の原子炉の冷却水の炉心流量の時間変化の説明図である。
図6】制御棒による原子炉の軸方向出力分布の変化の説明図である。
図7】低出力時の原子炉の軸方向出力分布の変化の説明図である。
図8】本発明の制御棒操作の説明図である。
図9】本発明を適用した際の原子炉の軸方向出力分布の変化の説明図である。
図10】本発明を適用した際の低出力時の原子炉の軸方向出力分布の変化の説明図である。
図11】本発明の実施例1に係る原子炉の1/4構成図である。
図12】実施例1における制御棒操作の図である。
図13】実施例1における最大線出力密度の改善効果の図である。
図14】本発明の実施例2に係る制御棒操作の図である。
図15】本発明の実施例3に係る原子炉の1/4構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者等は種々の検討を重ね、日負荷追従運転において、制御棒による135Xeの濃度変化に伴う臨界制御を実施しても、軸方向出力分布のピーク増大を抑制可能な制御方法を見出した。この検討結果及び新たに見出した制御方法の概要について以下に説明する。以降は、一般に最大線出力密度等が最も厳しくなる、軸方向出力分布が下部ピークの運転サイクル前半の、典型的な沸騰水型原子炉(Boiling Water Reactor:BWR)の炉心を一例として説明する。ただし、軸方向出力分布が上部ピークの運転サイクル後半の炉心でも応用可能である。
【0014】
まず、ベースとして流量制御の場合を考える。図1は原子炉熱出力、図2はXe反応度価値、図3は冷却水の炉心流量、の時間変化を示している。なお、以降、負荷追従パターンは図1のパターンを前提とする。図2に示すように、出力復帰直後(時間帯1:高出力時において、135Xe濃度が負荷追従前よりも増大する時間帯)はXeがまだ蓄積しているため、定常状態よりも(負の)Xe反応度価値が大きく、Xeの減少に伴い(時間帯2:高出力時において、135Xe濃度が負荷追従前よりも減少する時間帯)Xe反応度価値が小さくなっている。この反応度変化に対応し炉心を臨界にするため、図3に示すように、Xe蓄積時(時間帯1)には流量増大操作(流量を所定量増大)を、Xe減少時(時間帯2)には流量減少操作(流量を所定量減少)をする。ただし、流量変化幅には、P-F map上の制約があり、図3では、定格出力復帰後の流量上限(110(%)と流量下限(90%)の制約を超過している。この場合、流量制御のみではなく、制御棒操作を併用し制限の超過を抑制する必要がある。
【0015】
次に、一般的な制御棒操作を併用する場合を考える。図4は、一般的な制御棒操作説明図である。全挿入が0で、全引抜きが48である。通常、制御棒は、燃料の燃焼の偏り(軸方向)を抑制するため、炉心深くまで挿入するDeep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)を活用する。定格出力復帰後の流量制御幅を制限以内にするため、図4の矢印で示すようにXe蓄積時に制御棒を所定量引き抜いており、Xe減少時には制御棒を所定量挿入している。図5は、この時の炉心流量を示しており、制限幅内(流量上限(110(%)と流量下限(90%)の制約内)となっている。一方、図6に制御棒による原子炉の軸方向出力分布の変化を示している。Xe増加時の代表点(時刻24.7Hの点)では、点線で示すように軸方向出力分布のピークは定常状態より減少してるが、Xe減少時の代表点(時刻28.7Hの点)では、一点鎖線で示すように増加している。これは、制御棒挿入のため、軸方向上部の出力が抑えられ、相対的に軸方向下部の出力が上昇するためである。なお、運転サイクル後半の出力分布が上部ピークの場合は、Xe増加時に軸方向出力分布のピークが増加することになる。また、低出力時の代表点(時刻15Hの点)の原子炉の軸方向出力分布を図7に示すが、点線で示すように、定常状態より下部ピークとなる。基本的には、低出力時なので、最大線出力密度等の制約を超過することはないが、燃料の燃焼の偏りが大きくなるため、低出力時にも軸方向分布を制御することが好ましい。
【0016】
Xe増加時及びXe減少時に、常に軸方向出力分布のピークを定常状態よりも小さくするには、挿入量の深い制御棒(Deep制御棒)と挿入量の浅い制御棒(Shallow制御棒)、すなわち、2種類以上の挿入深さの制御棒を予め挿入しておき、Xeの濃度変化に伴い各制御棒を操作する必要があると考えた。ここで、制御棒は横断面十字状であり、Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)とShallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)の形状は同一である。Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)は予め炉心に挿入される挿入量が深く、Shallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)予め炉心に挿入される挿入量が浅い点が異なるのみである。
図8は、本実施形態に係る制御棒操作の説明図であり、Xe濃度変化時の代表点の制御棒操作を示している。図8に示すように、Xe増加時には、Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)の挿入量を所定量低下させ(所定量引き抜き)、Xe減少時には、Shallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)の挿入量を所定量増大させる(所定量さらに挿入する)。これにより、図9に示すように、点線で示されるXe増加及び一点鎖線で示されるXe減少時共に上部に出力が偏り、ピークの増加を抑制することができる。なお、上部ピークとなる運転サイクル後半では、逆にXe増加時には、Shallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)の挿入量を所定量低下させ(所定量引き抜き)、Xe減少時には、Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)の挿入量を所定量増大させる(所定量さらに挿入する)こととなる。また、低出力時の代表点(時刻15Hの点)の軸方向出力分布を図10に示すが、下部ピークの抑制効果もある。
【0017】
Shallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)について、定常状態の時から炉心に挿入する設計にしておけば、出力変化幅が小さい場合には、操作が簡易な流量制御のみで、低出力時の軸方向出力分布の下部ピーク増大を抑制する効果もある。ただし、炉停止余裕の確保等の観点から、定常状態で多数の制御棒を挿入することが望ましくない場合は、低出力移行時に制御棒を挿入することも考えられる。
以下では、改良型沸騰水型原子炉(Advanced Boiling Water Reactor:ABWR)を一例として、図面を用いて本発明の実施例について説明するが、これに限られるものではない。例えば、再循環ポンプを備え減速材としての冷却水を原子炉圧力容器外へ通流し再び原子炉圧力容器内のダウンカマへ流入させることで冷却水を循環させる通常の沸騰水型原子炉(BWR)に適用できることは言うまでもない。
【実施例0018】
本発明の好適な一実施例である、改良型沸騰水型原子力プラントに適用される本実施例の炉心の制御方法を、図11乃至図13を用いて説明する。なお、運転サイクルは前半の軸方向下部ピークの炉心を前提とする。
【0019】
図11は、本実施例に係る原子炉の1/4構成図である。図11中のセル内の番号は、燃料の当該サイクル終了時の経過サイクル数を示している。図11中の領域3はDeep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)が挿入される領域で、領域4は、Shallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)が挿入される領域である。径方向出力分布の観点から、これらの制御棒は、離間して配置することが望ましい。
【0020】
図12は、本実施例における、Xe濃度変化時の代表点の制御棒の操作を示している。Xe増加時(時刻24.7Hの点)には、Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)の挿入量を10から12に低下させ(所定量引き抜き)、Xe減少時(時刻28.7Hの点)には、Shallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)の挿入量を35から24へ増大(所定量増大)させている。なお、実設計においては、Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)及びShallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)の内、全数操作するのではなく、一部の制御棒のみ操作することが考えられる。また、Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)の挿入量の低下及びShallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)の挿入量の増大は、図示しない制御棒駆動機構により操作される。なお、制御棒駆動機構は、原子炉圧力容器(RPV)底部より下方に設置された制御棒駆動機構ハウジング内に設けられ、Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)及びShallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)は制御棒案内管を介して制御棒駆動機構に連結されている。
【0021】
一例として、図13にこの制御棒操作による、最大線出力密度の改善効果を示す。図13に示すように、Shallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)を挿入しない(Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)のみ挿入する)場合と比べ、点線で示すように本実施例に係る制御棒操作(Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)及びShallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)を挿入する)によれば、定格出力復帰後の最大線出力密度を抑制できており、定常状態よりも小さくすることが可能である。
【0022】
以上の通り、本実施例によれば、沸騰水型原子炉に適した、日負荷追従運転における制御棒による軸方向出力分布のピーク増大を抑制し得る炉心の制御方法を提供することが可能となる。
【0023】
例えば、日負荷追従運転において、制御棒による135Xeの濃度変化に伴う臨界制御を実施しても、軸方向出力分布のピーク増大を抑制できる。
【0024】
また、本実施例によれば、運転サイクル前半の軸方向出力分布のピーク抑制が可能となる。
【実施例0025】
図14は、本実施例に係る制御棒操作の図である。改良型沸騰水型原子力プラントに適用される本実施例の炉心の制御方法は、上述の実施例1とは異なり、運転サイクルは後半の軸方向上部ピークの炉心を前提とする。炉心構成は、図11に示す実施例1と同一とする。
【0026】
図14では、Xe濃度変化時の代表点の制御棒の操作の例を示している。上述の実施例1とは、逆に、矢印で示すようにXe増加時には、Shallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)の挿入量を所定量低下させ(所定量引き抜き)、Xe減少時には、Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)の挿入量を所定量増大させる(所定量さらに挿入する)。なお、実際には、運転サイクル前半から後半にかけて、パターンチェンジによって、制御棒挿入パターンは変化しているため、設計においては、制御棒のパターンチェンジも加味して、挿入量及び配置等を決定する必要がある。
【0027】
以上の通り、本実施例2によれば、運転サイクル後半の軸方向出力分布のピーク抑制が可能となる。
【実施例0028】
図15は、本発明の実施例3に係る原子炉の1/4構成図である。改良型沸騰水型原子力プラントに適用される本実施例の炉心の制御構成は、図11に示す実施例1と異なり、制御棒が挿入される領域が少ない点にある。なお、運転サイクルは前半の軸方向下部ピークの炉心を前提とする。また、Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)及びShallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)の、初期位置、挿入量は実施例1と同様とする。
【0029】
図15中のセル内の番号は、燃料の当該サイクル終了時の経過サイクル数を示している。図15中の領域5はDeep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)が挿入される領域で、領域6は、Shallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)が挿入される領域である。実施例1と比較して、制御棒の挿入体数が少ないことが特徴的である。
【0030】
以上の通り本実施例によれば、制御棒の操作を最小限にすることで、運転負荷の低減、定期検査時の制御棒交換頻度を低減することが可能となる。
【0031】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…高出力時において、135Xe濃度が負荷追従前よりも増大する時間帯
2…高出力時において、135Xe濃度が負荷追従前よりも減少する時間帯
3,5…Deep制御棒(Deep CR:第1の制御棒)を挿入する領域
4,6…Shallow制御棒(Shallow CR:第2の制御棒)を挿入する領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15