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特開2024-6359画像復号装置、画像復号方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006359
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】画像復号装置、画像復号方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/105 20140101AFI20240110BHJP
   H04N 19/157 20140101ALI20240110BHJP
   H04N 19/176 20140101ALI20240110BHJP
   H04N 19/503 20140101ALI20240110BHJP
   H04N 19/70 20140101ALI20240110BHJP
【FI】
H04N19/105
H04N19/157
H04N19/176
H04N19/503
H04N19/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107167
(22)【出願日】2022-07-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「3次元空間データの無線伝送に向けた高能率圧縮技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晴久
(72)【発明者】
【氏名】木谷 佳隆
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159LC04
5C159MA05
5C159NN10
5C159NN11
5C159RC12
5C159TA61
5C159TB08
5C159TC26
5C159TC42
5C159UA05
(57)【要約】
【課題】GPMにおいて符号化効率を向上させること。
【解決手段】本発明に係る画像復号装置200は、制御情報及び動きベクトル候補に基づいて、動きベクトルを決定し動き情報とする選別部205を備える。選別部205は、制御情報に基づいて、復号対象ブロックの近傍ブロックの動きベクトルの中から動きベクトル候補を選別する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像復号装置であって、
制御情報及び量子化値を復号する復号部と、
前記量子化値を逆量子化して変換係数とする逆量子化部と、
前記変換係数を逆変換して予測残差とする逆変換部と、
復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、
前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、
前記制御情報及び動きベクトル候補に基づいて、動きベクトルを決定し動き情報とする選別部と、
前記復号済み画素と前記動き情報と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部と、
前記第1予測画像と前記第2予測画素と前記制御情報とに基づいて第3予測画素を生成する合成部と、
前記第1~第3予測画素のいずれかと前記予測残差とを加算して復号済み画素を得る加算器と、を備え、
前記選別部は、前記制御情報に基づいて、復号対象ブロックの近傍ブロックの動きベクトルの中から前記動きベクトル候補を選別することを特徴とする画像復号装置。
【請求項2】
前記選別部は、前記復号対象ブロックの分割形状に応じて、前記動きベクトル候補を限定することを特徴とする請求項1に記載の画像復号装置。
【請求項3】
前記選別部は、前記制御情報に基づいて、選別された前記動きベクトル候補の中から前記動きベクトルを決定することを特徴とする請求項1に記載の画像復号装置。
【請求項4】
前記選別部は、前記復号対象ブロックを分割した小領域毎に異なる前記動きベクトル候補を構成することを特徴とする請求項1に記載の画像復号装置。
【請求項5】
前記小領域毎の動きベクトル候補は重複することを特徴とする請求項4に記載の画像復号装置。
【請求項6】
前記小領域毎の動きベクトル候補は排他的であることを特徴とする請求項4に記載の画像復号装置。
【請求項7】
前記選別部は、前記復号対象ブロックを分割した小領域が上又は左のブロックの片方にのみ接する場合だけ、前記動きベクトル候補の選別を行うことを特徴とする請求項に記載1の画像復号装置。
【請求項8】
前記選別部は、選別された前記動きベクトル候補の数が所定数よりも少ない場合に、新規に動きベクトルを生成して前記動きベクトル候補に加えることを特徴とする請求項に記載1の画像復号装置。
【請求項9】
前記選別部は、前記復号対象ブロック及び前記近傍ブロックの両方が小領域に分割されている場合、前記復号対象ブロックの小領域と接する辺の長さが長い方の前記近傍ブロックの小領域の動きベクトルを、前記動きベクトル候補に加えることを特徴とする請求項に記載1の画像復号装置。
【請求項10】
前記選別部は、前記復号対象ブロックの分割形状に応じて、前記動きベクトル候補の並べ順を変化させることを特徴とする請求項に記載1の画像復号装置。
【請求項11】
前記選別部は、前記動きベクトル候補の並べ順について、前記復号対象ブロックに直接接する近傍ブロックの動きベクトルを、前記復号対象ブロックに間接的に接する近傍ブロックの動きベクトルよりも優先することを特徴とする請求項に記載10の画像復号装置。
【請求項12】
前記選別部は、前記動きベクトル候補の並べ順について、前記復号対象ブロックを分割した小領域が前記近傍ブロックと接する辺の長さが長いほど優先させることを特徴とする請求項に記載10の画像復号装置。
【請求項13】
画像復号方法であって、
制御情報及び量子化値を復号する工程Aと、
前記量子化値を逆量子化して変換係数とする工程Bと、
前記変換係数を逆変換して予測残差とする工程Cと、
復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成する工程Dと、
前記復号済み画素を蓄積する工程Eと、
前記制御情報及び動きベクトル候補に基づいて、動きベクトルを決定し動き情報とする工程Fと、
前記復号済み画素と前記動き情報と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する工程Gと、
前記第1予測画像と前記第2予測画素と前記制御情報とに基づいて第3予測画素を生成する工程Hと、
前記第1~第3予測画素のいずれかと前記予測残差とを加算して復号済み画素を得る工程Iと、を備え、
前記工程Fにおいて、前記制御情報に基づいて、復号対象ブロックの近傍ブロックの動きベクトルの中から前記動きベクトル候補を選別することを特徴とする画像復号方法。
【請求項14】
コンピュータを、画像復号装置として機能させるプログラムであって、
前記画像復号装置は、
制御情報及び量子化値を復号する復号部と、
前記量子化値を逆量子化して変換係数とする逆量子化部と、
前記変換係数を逆変換して予測残差とする逆変換部と、
復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、
前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、
前記制御情報及び動きベクトル候補に基づいて、動きベクトルを決定し動き情報とする選別部と、
前記復号済み画素と前記動き情報と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部と、
前記第1予測画像と前記第2予測画素と前記制御情報とに基づいて第3予測画素を生成する合成部と、
前記第1~第3予測画素のいずれかと前記予測残差とを加算して復号済み画素を得る加算器と、を備え、
前記選別部は、前記制御情報に基づいて、復号対象ブロックの近傍ブロックの動きベクトルの中から前記動きベクトル候補を選別することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像復号装置、画像復号方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1及び非特許文献2では、幾何学分割モード(GPM:Geometric Partitioning Mode)が開示されている。GPMは、矩形ブロックを斜めに2分割しそれぞれを動き補償する。具体的には、分割された小領域は、それぞれ動きベクトルにより動き補償され重み付き平均により合成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ITU-T H.266/VVC
【非特許文献2】CE4:Summary report on Inter prediction with geometric partitioning、JVET-Q0024
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1及び非特許文献2では、分割された小領域の位置関係や形状を考慮せず、近傍ブロックから動きベクトル候補を選択しているため、符号化性能の向上には改善の余地がある。 そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、GPMにおいて符号化効率を向上させることができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴は、画像復号装置であって、制御情報及び量子化値を復号する復号部と、前記量子化値を逆量子化して変換係数とする逆量子化部と、前記変換係数を逆変換して予測残差とする逆変換部と、復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、前記制御情報及び動きベクトル候補に基づいて、動きベクトルを決定し動き情報とする選別部と、前記復号済み画素と前記動き情報と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部と、前記第1予測画像と前記第2予測画素と前記制御情報とに基づいて第3予測画素を生成する合成部と、前記第1~第3予測画素のいずれかと前記予測残差とを加算して復号済み画素を得る加算器と、を備え、前記選別部は、前記制御情報に基づいて、復号対象ブロックの近傍ブロックの動きベクトルの中から前記動きベクトル候補を選別することを要旨とする。
【0006】
本発明の第2の特徴は、画像復号方法であって、制御情報及び量子化値を復号する工程Aと、前記量子化値を逆量子化して変換係数とする工程Bと、前記変換係数を逆変換して予測残差とする工程Cと、復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成する工程Dと、前記復号済み画素を蓄積する工程Eと、前記制御情報及び動きベクトル候補に基づいて、動きベクトルを決定し動き情報とする工程Fと、前記復号済み画素と前記動き情報と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する工程Gと、前記第1予測画像と前記第2予測画素と前記制御情報とに基づいて第3予測画素を生成する工程Hと、前記第1~第3予測画素のいずれかと前記予測残差とを加算して復号済み画素を得る工程Iと、を備え、前記工程Fにおいて、前記制御情報に基づいて、復号対象ブロックの近傍ブロックの動きベクトルの中から前記動きベクトル候補を選別することを要旨とする。
【0007】
本発明の第3の特徴は、コンピュータを、画像復号装置として機能させるプログラムであって、前記画像復号装置は、制御情報及び量子化値を復号する復号部と、前記量子化値を逆量子化して変換係数とする逆量子化部と、前記変換係数を逆変換して予測残差とする逆変換部と、復号済み画素と前記制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するイントラ予測部と、前記復号済み画素を蓄積する蓄積部と、前記制御情報及び動きベクトル候補に基づいて、動きベクトルを決定し動き情報とする選別部と、前記復号済み画素と前記動き情報と前記制御情報とに基づいて第2予測画素を生成する動き補償部と、前記第1予測画像と前記第2予測画素と前記制御情報とに基づいて第3予測画素を生成する合成部と、前記第1~第3予測画素のいずれかと前記予測残差とを加算して復号済み画素を得る加算器と、を備え、前記選別部は、前記制御情報に基づいて、復号対象ブロックの近傍ブロックの動きベクトルの中から前記動きベクトル候補を選別することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、GPMにおいて符号化効率を向上させることができる画像復号装置、画像復号方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る画像復号装置200の機能ブロックの一例を示す図である。
図2図2は、矩形の単位ブロックが分割境界によって、小領域Aと小領域Bに2分割されるケースの一例を示す図である。
図3図3は、復号対象ブロックの近傍ブロックの一例を示す図である。
図4図4は、復号対象ブロックの上の近傍ブロックが小領域に分割されているケースの一例を示す図である。
図5図5は、一実施形態に係る画像復号装置200の動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、一実施形態に係る画像復号装置200の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は、適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0011】
<第1実施形態>
以下、図1図6を参照して、本実施形態に係る画像復号装置200について説明する。図1は、本実施形態に係る画像復号装置200の機能ブロックの一例について示す図である。
【0012】
図1に示すように、画像復号装置200は、符号入力部210と、復号部201と、逆量子化部202と、逆変換部203と、イントラ予測部204と、選別部205と、加算器206と、蓄積部207と、動き補償部208と、合成部209と、画像出力部220とを有する。
【0013】
符号入力部210は、画像符号化装置によって符号化された符号情報を取得するように構成されている。
【0014】
復号部201は、符号入力部210から入力された符号情報から、制御情報並びに量子化値を復号するように構成されている。例えば、復号部201は、かかる符号情報に対して可変長復号を行うことで制御情報及び量子化値を出力するように構成されている。
【0015】
ここで、量子化値は、逆量子化部202に送られ、制御情報は、イントラ予測部204、選別部205、動き補償部208及び合成部209に送られる。なお、かかる制御情報は、イントラ予測部204、選別部205、動き補償部208及び合成部209等の制御に必要な情報を含み、シーケンスパラメータセットやピクチャパラメータセットやピクチャヘッダやスライスヘッダ等のヘッダ情報を含んでもよい。
【0016】
逆量子化部202は、復号部201から送られた量子化値を逆量子化して復号された変換係数とするように構成されている。かかる変換係数は、逆変換部203に送られる。
【0017】
逆変換部203は、逆量子化部202から送られた変換係数を逆変換して復号された予測残差とするように構成されている。かかる予測残差は、加算器206に送られる。
【0018】
イントラ予測部204は、復号済み画素と復号部201から送られた制御情報とに基づいて第1予測画素を生成するように構成されている。ここで、復号済み画素は、加算器206を介して得られて蓄積部207に蓄積されるものである。また、第1予測画素は、合成部207で設定される小領域における入力画素の近似値としての予測画素である。なお、第1予測画素は、加算器206或いは合成部209に送られる。
【0019】
蓄積部207は、加算器206から送られた復号済み画素を累積的に蓄積するように構成されている。かかる復号済み画素は、蓄積部207を介して動き補償部208からの参照を受ける。
【0020】
動き補償部208は、蓄積部207に蓄積された復号済み画素と選別部205から送られた動き情報とに基づいて第2予測画素を生成するように構成されている。ここで、第2予測画素は、合成部207で設定される小領域における入力画素の近似値としての予測画素である。なお、第2予測画素は、加算器206或いは合成部209に送られる。
【0021】
加算器206は、復号済み画素等から生成された第1~第3予測画素のいずれかと、逆変換部203から送られる予測残差とを加算して復号済み画素を得るように構成されている。かかる復号済み画素は、画像出力部220、蓄積部207及びイントラ予測部204へ送られる。
【0022】
合成部209は、イントラ予測部から送られた第1予測画素、動き補償部208から送られた第2予測画素及び選別部205から送られた制御情報(例えば、復号対象ブロックの分割形状を示す形状情報等)に基づいて、復号対象ブロックを複数の形状に分割しそれぞれに対応する複数の予測画素を合成して加算器206で予測残差と加算するための第3予測画素を生成するように構成されている。生成された第3予測画素は、加算器206へ送られる。
【0023】
合成部209で復号対象ブロックを複数の形状(小領域)に分割・合成する方法としては、任意のものを利用できるが、以下では、一例として幾何学分割モード(GPM)を用いた場合について説明する。
【0024】
以下、本実施形態に係る画像復号装置200の特徴的構成である選別部205による複数の動きベクトル候補に対する選別方法の一例について説明する。
【0025】
選別部205は、制御情報及び動きベクトル候補に基づいて、動きベクトルを決定し動き情報とするように構成されている。
【0026】
具体的には、選別部205は、制御情報に基づいて、復号対象ブロックの近傍ブロックの動きベクトルの中から動きベクトル候補を選別するように構成されている。その結果、少ないデータ量のcu_mv_idxで動きベクトルを決定することができる。
【0027】
図2の例では、単位ブロックを斜めの形状で分布させたケースの例を表す。図2の例では、矩形の単位ブロック(復号対象ブロック)を分割境界によって小領域A及び小領域Bに2分割している。
【0028】
それぞれの小領域A/Bにおいて、動き補償で第2予測画素が生成される。このとき、動き補償に用いる動きベクトル自体の符号量を削減するため、復号対象ブロックの近傍ブロックの動きベクトルを流用する方法が従来法として利用できる。
【0029】
かかる方法によれば、動きベクトルそのものを表現する符号量より、利用する動きベクトルを流用する近傍ブロックを表現する符号量の方が小さいため、符号化効率を改善できる。
【0030】
具体的には、図3に示すように、近傍ブロックは、上や左や左上等、複数存在するため、利用可能な近傍ブロックの動きベクトルをリストアップし、類似した動きベクトルを排除することで、動きベクトル候補リストを構築する。
【0031】
そして、動き補償部208で利用される近傍ブロックの動きベクトルに対応するインデックスのみが制御情報(cu_mv_idx)として復号され、かかる制御情報に基づいて動きベクトルが決定されることになる。
【0032】
しかしながら、複数存在する近傍ブロックの動きベクトルは、等確率では選択されないため、符号化効率を改善できていないという課題がある。
【0033】
例えば、図2に示す小領域Aは、同等の画素分布特性が左側に広がっていることが多いため、小領域Bが流用する動きベクトルの近傍ブロックは、左側より上側である確率が高い。
【0034】
かかる課題を解決するため、選別部205は、復号対象ブロックの分割形状に応じて、上述の動きベクトル候補を限定するように構成されていてもよい。
【0035】
図3は、復号対象ブロックの近傍ブロック5つ(左上、左、左下、上、右上)を表す。
【0036】
図3の例において、小領域Bは、上の近傍ブロックと直接的に接するため、選別部205は、上の近傍ブロックの動きベクトルを、動きベクトル候補に加えるように構成されていてもよい。
【0037】
また、小領域Bは、右上の近傍ブロックと直接的には接しないが、選別部205は、小領域Bと同等の特性が継続していると仮定して、右上の近傍ブロックの動きベクトルを、動きベクトル候補に加えるように構成されていてもよい。
【0038】
なお、選別部205は、それら以外の左上、左、左下の近傍ブロックの動きベクトルについては、画素分布の特性が異なると仮定して、動きベクトル候補に加えないように構成されていてもよい。
【0039】
小領域Bに対する動きベクトル候補は、上の近傍ブロックの動きベクトル及び右上の近傍ブロックの動きベクトルの2つに選別されるため、選別部205は、制御情報によって、選別された動きベクトル候補の中から動き補償部208で用いられる動きベクトルを決定するように構成されている。
【0040】
動きベクトル候補について限定しない場合は、全ての近傍ブロックの動きベクトルが動きベクトル候補となるため、利用する動きベクトルを決定するための制御情報の符号量が多くなるが、選択される確率の高い少数に限定することで、制御情報の符号量を削減できる効果が得られる。
【0041】
一方、小領域Aは、小領域Bとは接する領域(近傍ブロック又は小領域)が異なるため、選別部205は、小領域Bとは異なる動きベクトル候補を構成することができる、すなわち、小領域毎に異なる動きベクトル候補を構成することができる。
【0042】
小領域Aは、上の近傍ブロック及び左の近傍ブロックに直接的に接するため、選別部205は、両近傍ブロックの動きベクトルを、動きベクトル候補に加えるように構成されていてもよい。
【0043】
また、小領域Aは、左上、左下の近傍ブロックとは直接的には接しないが、選別部205は、かかる近傍ブロックでは小領域Aと同等の特性が継続していると仮定して、かかる近傍ブロックの動きベクトルを、動きベクトル候補に加えるように構成されていてもよい。
【0044】
上述の例のように、小領域毎の動きベクトル候補内に重複する近傍ブロックの動きベクトルが存在してもよいし(小領域A:左、上、左上、左下/小領域B:上、右上)、小領域毎の動きベクトル候補間で重複する近傍ブロックの動きベクトルを、候補数の少ない方の動きベクトル候補に加える等で、小領域毎の動きベクトル候補を排他的に構成してもよい(小領域A:左、左上、左下/小領域B:上、右上)。
【0045】
或いは、処理の簡略化のため、選別部205は、小領域が上の近傍ブロック或いは左の近傍ブロックの片方にのみ接する場合だけ、動きベクトル候補の選別を行うように構成されていてもよい。
【0046】
選別部205が、上及び左の近傍ブロックの両方に接する小領域に対しては、動きベクトル候補を限定しない(小領域A:左、上、左上、左下、右上/小領域B:上、右上)ことで、追加の処理を省略することができる。
【0047】
逆に、精度向上のため、選別部205は、選別された動きベクトル候補の数が所定数よりも少ない場合に、新規に動きベクトルを生成して動きベクトル候補に加えるように構成されていてもよい。
【0048】
例えば、図3に示す小領域Bは、上及び右上の近傍ブロックの動きベクトルの2つに動きベクトル候補を限定したので、少なくなった動きベクトル候補を補うため、上及び右上の近傍ブロックの動きベクトルから新たな動きベクトルを導出することで、動きベクトル候補を拡充することができる。
【0049】
新たな動きベクトルを導出する方法としては、複数の動きベクトル候補の重み平均で導出することができる。
【0050】
かかる重みは、近傍領域のテンプレートマッチングで得られたコストの逆数等を利用することができる。また、重みを固定的に与えてもよい(例えば、小領域B:上、右上、(上+右上)/2、(上+3*右上)/4、(3×上+右上)/4等)。
【0051】
なお、左の近傍ブロックにも上の近傍ブロックにも接しない小領域の場合は、選別部205は、動きベクトル候補を限定しないこともできるし、分割形状に応じて特定の動きベクトル候補を限定するように構成されていてもよい。
【0052】
例えば、選別部205は、動きベクトル候補に含まれる近傍ブロックの座標と分割線との最短距離が近い順に、上位N個の動きベクトル候補に限定してもよい。
【0053】
また、GPMでは、小領域において双方向予測を利用できないが、選別部205は、小領域において双方向予測を利用できる場合でも同様に、制御情報によって、選別された動きベクトル候補の中から2つの動きベクトルを決定するように構成されていてもよい。
【0054】
さらに、選別部205は、復号対象ブロック及び近傍ブロックの両方が小領域に分割されている場合、復号対象ブロックの小領域と接する長さが長い方の近傍ブロックの小領域の動きベクトルを、動きベクトル候補に加えるように構成されていてもよい。
【0055】
図4は、復号対象ブロックの上の近傍ブロックが小領域に分割されているケースの一例を表す。
【0056】
図4の例では、小領域Aと上の近傍ブロックの右側の小領域Yとが接する辺の長さは、小領域Aと上の近傍ブロックの左側の小領域Xが接する辺の長さよりも短い。かかる場合、選別部205は、小領域Xの動きベクトルを、動きベクトル候補に加えるように構成されていてもよい。
【0057】
かかる構成によれば、選択される可能性が高い動きベクトルを動きベクトル候補に選別することで、符号化効率を向上させられる効果が期待できる。
【0058】
さらに、選別部205は、分割形状に応じて、動きベクトル候補の並べ順(並べ方)を変化させるように構成されていてもよい。
【0059】
例えば、図3の小領域Aにおいて、上、左上、左、左下の4つの近傍ブロックの動きベクトル候補が存在する場合、上の近傍ブロックの動きベクトルよりも左の近傍ブロックの動きベクトルが選択される確率(選択確率)が高いため、動きベクトル候補として、左の近傍ブロックの動きベクトル→上の近傍ブロックの動きベクトルの順序に並べることが望ましい。
【0060】
すなわち、選択確率の高い順序に動きベクトル候補を並べることで、制御情報の平均符号長を短くできる効果が得られる。
【0061】
具体的には、選別部205は、動きベクトル候補の並べ順について、復号対象ブロックと直接接する近傍ブロックの動きベクトルを、復号対象ブロックに間接的に接する近傍ブロックの動きベクトルより優先するように構成されていてもよい。
【0062】
また、選別部205は、動きベクトル候補の並べ順について、復号対象ブロックを分割した小領域が近傍ブロック(又は、小領域)と接する辺の長さが長いほど優先させるように構成されていてもよい。
【0063】
或いは、選別部205は、動きベクトル候補の並べ順について、近傍領域(近傍ブロック又は小領域)のテンプレートマッチングで得られたコストが小さい順序に並べることもできる。
【0064】
なお、復号部201に入力される符号情報は、シーケンス単位の制御情報をまとめたシーケンスパラメータセット(SPS)を含むことができる。また、かかる符号情報は、ピクチャ単位の制御情報をまとめたピクチャパラメータセット(PPS)或いはピクチャヘッダ(PH)を含むことができる。かかる符号情報は、スライス単位の制御情報をまとめたスライスヘッダ(SH)を含んでもよい。
【0065】
以下、図5及び図6を参照して、シーケンス単位で動きベクトル候補を選別する方法の一例について説明する。
【0066】
図5に示すように、ステップS101において、復号部201は、SPSにおいて、sps_div_enabled_flagが1であるか否かについて判断する。
【0067】
ここで、sps_div_enabled_flagは、分割モードの有無を制御するシンタックスであり、sps_div_enabled_flagが1である場合は、分割モードが有効であることを示し、sps_div_enabled_flagが0である場合は、分割モードが無効であることを示す。
【0068】
Yesの場合(1である場合)、本動作は、ステップS102に進み、Noの場合(0である場合)、本動作は、本実施形態に係る技術を適用せずに終了する。
【0069】
ステップS102において、復号部201は、sps_div_selecting_flagを復号し、sps_div_selecting_flagが1であるか否かについて判断する。
【0070】
ここで、sps_div_selecting_flagは、動きベクトル候補の選別の有無を制御するシンタックスであり、sps_div_selecting_flagが1である場合は、動きベクトル候補の選別が有効であることを示し、sps_div_selecting_flagが0である場合は、動きベクトル候補の選別が無効であることを示す。
【0071】
Yesの場合(1である場合)、本動作は、ステップS103に進み、Noの場合(0である場合)、本動作は、本実施形態に係る技術を適用せずに終了する。
【0072】
ステップS103において、復号部201は、sps_div_selecting_modeを復号する。
【0073】
ここで、sps_div_selecting_modeは、動きベクトル候補の選別方法を制御するシンタックスである。
【0074】
sps_div_selecting_modeを用いることで、シーケンス単位で画像特性に応じた動きベクトル候補の選別方法の設定を変更できるため、符号化効率を最大化する効果が期待できる。
【0075】
例えば、動きが複雑な画像で構成されるシーケンスに対しては小領域毎の動きベクトル候補の重複を許容するように設定でき、動きが単調な画像で構成されるシーケンスに対しては小領域毎の動きベクトル候補を排他的に設定できるため、符号化効率の最大化が図れる。
【0076】
なお、ピクチャ単位で動きベクトル候補の選別方法を設定する場合は、復号部201は、ピクチャパラメータセット或いはピクチャヘッダにおいて、pps_div_enabled_flag、pps_div_selecting_flag及びpps_div_selecting_modeを、図5の動作と同様に復号する。
【0077】
pps_div_selecting_modeを用いることで、ピクチャ単位で画像特性に応じた動きベクトル候補の選別方法の設定を変更できるため、符号化効率を最大化する効果が期待できる。
【0078】
例えば、動きが複雑な画像ピクチャに対しては小領域毎の動きベクトル候補の重複を許容するように設定でき、動きが単調なピクチャに対しては小領域毎の動きベクトル候補を排他的に設定できるため、符号化効率の最大化が図れる。
【0079】
また、スライス単位で動きベクトル候補の選別方法を設定する場合は、復号部201は、スライスヘッダにおいて、sh_div_enabled_flag、sh_div_selecting_flag及びsh_div_selecting_modeを、図5の動作と同様に復号する。
【0080】
sh_div_selecting_modeを用いることで、スライス単位で画像特性に応じた動きベクトル候補の選別方法の設定を変更できるため、符号化効率を最大化する効果が期待できる。
【0081】
例えば、動きが複雑な部分画像が含まれるスライス領域に対しては小領域毎の動きベクトル候補の重複を許容するように設定でき、動きが単調な部分画像が含まれるスライス領域に対しては小領域毎の動きベクトル候補を排他的に設定できるため、符号化効率の最大化が図れる。
【0082】
上位層でのみ動きベクトル候補の選別方法を設定することで、符号量の増大を抑制することもできるし、下位層でも動きベクトル候補の選別方法を設定した上で下位層での設定を優先することで適応的な制御ができる。
【0083】
或いは、動きベクトル候補の選別方法が事前に設定されている場合は、動きベクトル候補の選別方法の復号自体を省略することができる。
【0084】
なお、上述の例では、シーケンス単位、ピクチャ単位或いはスライス単位で動きベクトル候補の選別方法を設定する方法について述べたが、これらの動きベクトル候補の選別方法を設定せずに、後述するように、ブロック単位で、直接、動きベクトル候補を選別するパターンを選択してもよい。
【0085】
かかる場合、重み係数のパターン数及びパターン種別の設定の自由度が低下するが、上述のヘッダ情報増加を回避できる。
【0086】
以下、図6を参照して、ブロック単位で動きベクトル候補を選別する方法について述べる。
【0087】
図6に示すように、ステップS201において、復号部201は、sps_div_enabled_flag、pps_div_enabled_flag及びsh_div_enabled_flagのいずれかが1であるか否かについて判断する。
【0088】
いずれも1でない場合は、本動作は、ステップS202に進み、本実施形態に係る技術を適用せずに終了する。
【0089】
いずれかが1である場合、ステップS203において、復号部201は、復号対象ブロックが分割モードであるか否かについて判断する。
【0090】
復号対象ブロックが分割モードでない場合、本動作は、ステップS202に進み、本実施形態に係る技術を適用せずに終了する。
【0091】
復号対象ブロックが分割モードである場合、ステップS204において、復号部201は、分割モードを表す制御信号であるcu_div_modeを復号する。
【0092】
ステップS205において、復号部201は、cu_div_modeに基づいて、復号対象の小領域が動き補償モードであるか否かについて判断する。
【0093】
Noの場合、本動作は、ステップS206に進み、本実施形態に係る技術を適用せずに終了する。
【0094】
Yesの場合、ステップS207において、復号部201は、動きベクトル候補の中から動きベクトルを指定する制御信号であるcu_mv_idxを復号する。
【0095】
図6の例では、1つのcu_mv_idxが復号されるケースについて示しているが、2つの小領域が動き補償モードである場合或いは1つの小領域が双方向の動き補償モードである場合は、復号部201は、cu_mv_idx0及びcu_mv_idx1の2つを復号してもよい。
【0096】
cu_mv_idxは、復号対象ブロックに適用される最下層のdiv_selecting_modeで選別される動きベクトル候補の中の1つを特定するように復号される。
【0097】
本実施形態に係る画像復号装置200によれば、ブロックを適応的に分割して分割形状に応じた動きベクトルを復号することで、符号化効率を向上させることができる。
【0098】
上述の画像復号装置200は、コンピュータに各機能(各工程)を実行させるプログラムであって実現されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
なお、本実施形態によれば、例えば、動画像通信において総合的なサービス品質の向上を実現できることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0100】
200…画像復号装置
201…復号部
202…逆量子化部
203…逆変換部
204…イントラ予測部
205…選別部
206…加算器
207…蓄積部
208…動き補償部
209…合成部
210…符号入力部
220…画像出力部


図1
図2
図3
図4
図5
図6