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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006360
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】極低温冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
F25B9/00 B
F25B9/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107168
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】森江 孝明
(57)【要約】
【課題】予期せぬ外力から極低温冷凍機を保護する。
【解決手段】極低温冷凍機100は、真空容器20に搭載可能なコールドヘッド104と、真空容器20に対するコールドヘッド104の移動を許容するようにコールドヘッド104を真空容器20に連結するように構成されるコールドヘッドマウント106と、真空容器20の外でコールドヘッド104に接続されるフレキシブルライン108と、真空容器20に対して固定的にフレキシブルライン108を保持するように構成されるフレキシブルラインホルダ110と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器に搭載可能なコールドヘッドと、
前記真空容器に対する前記コールドヘッドの移動を許容するように前記コールドヘッドを前記真空容器に連結するように構成されるコールドヘッドマウントと、
前記真空容器の外で前記コールドヘッドに接続されるフレキシブルラインと、
前記真空容器に対して固定的に前記フレキシブルラインを保持するように構成されるフレキシブルラインホルダと、を備えることを特徴とする極低温冷凍機。
【請求項2】
前記フレキシブルラインは、作動ガスの前記コールドヘッドへの供給または前記コールドヘッドからの排出のための作動ガスラインを備え、
前記フレキシブルラインホルダは、前記作動ガスラインを保持する作動ガスラインホルダを備えることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項3】
前記コールドヘッドマウントは、前記真空容器に取付可能な取付フランジと、前記コールドヘッドを前記取付フランジに接続する伸縮可能な気密隔壁と、を備え、
前記作動ガスラインホルダは、前記取付フランジに固定されていることを特徴とする請求項2に記載の極低温冷凍機。
【請求項4】
前記フレキシブルラインは、前記コールドヘッドへの給電のための給電ケーブルを備え、
前記フレキシブルラインホルダは、前記給電ケーブルを保持するケーブルホルダを備えることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項5】
前記コールドヘッドマウントは、前記真空容器に取付可能な取付フランジと、前記コールドヘッドを前記取付フランジに接続する伸縮可能な気密隔壁と、を備え、
前記ケーブルホルダは、前記取付フランジに固定されていることを特徴とする請求項4に記載の極低温冷凍機。
【請求項6】
前記コールドヘッドマウントに搭載され、前記コールドヘッドを前記真空容器に対して移動させるように構成される駆動源と、
前記駆動源に接続される別のフレキシブルラインと、
前記真空容器に対して固定的に前記別のフレキシブルラインを保持するように構成される別のフレキシブルラインホルダと、をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の極低温冷凍機。
【請求項7】
前記コールドヘッドマウントは、前記真空容器に取付可能な取付フランジと、前記コールドヘッドを前記取付フランジに接続する伸縮可能な気密隔壁と、を備え、
前記別のフレキシブルラインホルダは、前記取付フランジに固定されていることを特徴とする請求項6に記載の極低温冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
ギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機に代表される極低温冷凍機は、たとえば超伝導機器の冷却、液体ヘリウムなど極低温液体の凝縮など、さまざまな冷却対象に極低温冷却を提供するために、よく利用されている。従来、こうした極低温冷凍機をベローズを介してクライオスタットに設置し、ベローズの伸縮を伴う極低温冷凍機の上下動を利用して、極低温冷凍機をクライオスタット内の冷却対象と熱的に接続しまたは切り離す熱スイッチを実現することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-211803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の形式の熱スイッチがオンのとき(つまり極低温冷凍機が冷却対象と熱接続されているとき)には極低温冷凍機はクライオスタットに剛に固定されうるのに対して、熱スイッチがオフとされている(つまり極低温冷凍機が冷却対象から一時的に切り離されている)ときには、極低温冷凍機は、例えばベローズの柔軟性に起因して、低い剛性でクライオスタットに支持されることになりがちである。
【0005】
極低温冷凍機を現場で動作させる際には、作動ガスの給排のためのフレキシブルホースや給電のためのケーブルなど、さまざまな配管や配線が極低温冷凍機に接続され、極低温冷凍機の周りに延びている。このような極低温冷凍機の一般的なセットアップにおいて想定されるリスクの一つとして、例えば極低温冷凍機の近くを通る作業者がこれら配管類に足を引っ掛けてつまずいた場合など、極低温冷凍機に配管類から不測の大きな外力が働く可能性が懸念される。こうした不測の外力は、とくに、熱スイッチがオフのとき、問題を引き起こしうる。外力によって極低温冷凍機の位置、姿勢が乱され、周囲の構造と干渉、衝突し、最悪の場合、極低温冷凍機やその支持構造が破損することになるかもしれない。
【0006】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、予期せぬ外力から極低温冷凍機を保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によると、極低温冷凍機は、真空容器に搭載可能なコールドヘッドと、真空容器に対するコールドヘッドの移動を許容するようにコールドヘッドを真空容器に連結するように構成されるコールドヘッドマウントと、真空容器の外でコールドヘッドに接続されるフレキシブルラインと、真空容器に対して固定的にフレキシブルラインを保持するように構成されるフレキシブルラインホルダと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、予期せぬ外力から極低温冷凍機を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る極低温装置を概略的に示す図である。
図2】比較例に係る極低温冷凍機の作動ガスラインを概略的に示す図である。
図3図1に示される極低温冷凍機に適用しうる例示的な電気接続を概略的に示す図である。
図4図1に示される極低温冷凍機に適用しうる例示的な駆動源を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
図1は、実施の形態に係る極低温装置10を概略的に示す図である。この実施の形態では、極低温装置10は、極低温液体貯蔵装置として利用されうる。そこで、極低温装置10は、例えば液体水素またはそのほかの極低温液体12を貯蔵するための真空容器20と、貯蔵される極低温液体12をその液化温度(液体水素の場合、約-253℃(20K))以下の極低温に冷却するための極低温冷凍機100とを備える。
【0012】
真空容器20は、外槽22および内槽24を備える。外槽22と内槽24との間には真空断熱層26が形成される。外槽22は、極低温装置10の周囲環境(例えば、室温大気圧環境)から真空断熱層26を隔てるように構成される。また、内槽24は、その内部容積を真空断熱層26から隔てるように構成される。極低温液体12は、内槽24に収容される。外槽22および内槽24は、内外の圧力差に耐えるように、例えばステンレス鋼などの金属材料またはその他の適する高強度材料で形成される。
【0013】
真空断熱層26には、断熱支持体28aおよび断熱層28bを含む断熱構造28が配置されてもよい。断熱支持体28aは、例えば繊維強化プラスチックなどの断熱性をもつ硬質材料から形成され、内槽24を外槽22に支持するように構成される。断熱層28bは、多層断熱材(multilayer insulation(MLI))を備えてもよい。断熱層28bとともにまたはそれに代えて、断熱構造28は、真空断熱層26に充填された粒状またはその他の形状の断熱材(例えば、粒状のパーライト)を含んでもよい。
【0014】
内槽24は、その槽壁に設けられた再凝縮部30を備える。再凝縮部30は、極低温冷凍機100によって内槽24の外から冷却される。再凝縮部30は、内槽24の外側に露出され、極低温冷凍機100と接触する伝熱面30aを有する。再凝縮部30は、極低温液体12又は気化した極低温液体12と接触する表面積を増やすためにフィン状の突起または凹凸を内槽24の内部に有してもよい。再凝縮部30は、例えば純銅(例えば、無酸素銅、タフピッチ銅など)、または他の高熱伝導金属で形成される。
【0015】
極低温冷凍機100は、圧縮機102と、真空容器20に搭載可能なコールドヘッド104と、真空容器20に対するコールドヘッド104の移動を許容するようにコールドヘッド104を真空容器20に連結するように構成されるコールドヘッドマウント106とを備える。
【0016】
圧縮機102は、極低温冷凍機100の作動ガスをコールドヘッド104から回収し、回収した作動ガスを昇圧して、再び作動ガスをコールドヘッド104に供給するよう構成されている。コールドヘッド104は、膨張機または冷凍機とも称される。圧縮機102とコールドヘッド104により極低温冷凍機100の冷凍サイクルが構成され、それにより極低温冷凍機100は極低温冷却を提供する。作動ガスは、冷媒ガスとも称され、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。
【0017】
極低温冷凍機100は、この実施の形態では、単段式のGM冷凍機である。従って、コールドヘッド104は、冷却ステージ104a、シリンダ104b、駆動部104c、およびコールドヘッドフランジ104dを備える。冷却ステージ104aは、例えば純銅(例えば、無酸素銅、タフピッチ銅など)、または他の高熱伝導金属で形成される。極低温冷凍機100の運転中、冷却ステージ104aは、所望の極低温、例えば極低温液体12の液化温度以下の温度範囲に冷却される。極低温液体12が液体水素の場合、冷却ステージ104aは、例えば、10Kから30Kの温度範囲に含まれる冷却温度(例えば、20K±1K、または20K±2K、または20K±5Kなど、20K付近の冷却温度)に冷却される。
【0018】
シリンダ104bは、冷却ステージ104aをコールドヘッドフランジ104dに接続する。シリンダ104b内には、冷却ステージ104aに隣接する作動ガスの膨張空間の容積を制御するためのディスプレーサ(図示せず)が、シリンダ104bの軸方向(図1において上下方向)に移動可能に配置されている。シリンダ104bおよびコールドヘッドフランジ104dは通例、例えばステンレス鋼など適宜の金属材料で形成される。駆動部104cは、シリンダ104bとは反対側でコールドヘッドフランジ104dに取り付けられている。駆動部104cには、シリンダ104b内のディスプレーサを駆動するための例えば電気モータなどのコールドヘッド駆動モータ104e、およびシリンダ104b内の膨張空間の作動ガス圧力を制御するための例えばロータリーバルブなどの圧力制御機構(図示せず)が設けられている。
【0019】
図1に示されるように、真空容器20の外槽22には、コールドヘッド104を真空容器20に装着するための装着口32が設けられている。装着の際、コールドヘッド104は、装着口32から真空容器20内に挿入され、コールドヘッドマウント106を介して装着口32に取り外し可能に取り付けられる。コールドヘッド104は、冷却ステージ104aが真空容器20内の真空断熱層26に配置され、駆動部104cが真空容器20の外に配置されるようにして、真空容器20に装着される。
【0020】
一例として、装着口32は、真空容器20の天板または上部に形成されている。コールドヘッド104は、その中心軸を鉛直方向に一致させるようにして真空容器20に設置される。しかし、装着口32の位置およびコールドヘッド104の取付姿勢はこれに限られない。例えば、装着口32は、真空容器20の底板または下部に形成されてもよい。コールドヘッド104は、所望される姿勢で設置可能であり、中心軸を斜め方向または水平方向に一致させるようにして真空容器20に設置されてもよい。
【0021】
コールドヘッドマウント106は、真空容器20に取付可能な取付フランジ106aと、コールドヘッド104を取付フランジ106aに接続する伸縮可能な気密隔壁106bとを備える。取付フランジ106aは、例えばボルトなどの締結部材を用いて、またはそのほか適宜の固定手段により、真空容器20の装着口32に固定される。なお取付フランジ106aは、図示のように真空容器20に直接固定されることに代えて、連結部材を介して真空容器20に固定されてもよい。伸縮可能な気密隔壁106bは、例えばベローズであり、コールドヘッドフランジ104dを取付フランジ106aに接続する。従って、取付フランジ106a、気密隔壁106b、およびコールドヘッドフランジ104dによって装着口32が塞がれ、真空容器20の気密性が保持される。
【0022】
取付フランジ106aは中心部に開口を有し、伸縮可能な気密隔壁106bは筒状に形成されている。コールドヘッド104のシリンダ104bは、コールドヘッドフランジ104dから伸縮可能な気密隔壁106b内および取付フランジ106aの開口を通じて真空容器20内へと延びている。
【0023】
また、コールドヘッドマウント106は、コールドヘッドマウント106に搭載され、コールドヘッド104を真空容器20に対して移動させるように構成される駆動源106cを備える。駆動源106cは、空圧、油圧、電動モーター、電磁石など適宜の動力を用いてコールドヘッド104を移動させるように構成されてもよく、あるいは、手動によりコールドヘッド104を移動させるように動作可能であってもよい。
【0024】
駆動源106cは、取付フランジ106a上に設置され、気密隔壁106bの伸縮方向にコールドヘッドフランジ104dを移動させるようにコールドヘッドフランジ104dと連結されている。従って、駆動源106cを作動させることにより、気密隔壁106bを伸縮させながらコールドヘッドフランジ104dを取付フランジ106aに対して移動させることができる。図1に示される例では、駆動源106cは、取付フランジ106aに対してコールドヘッドフランジ104dを(つまり、真空容器20に対してコールドヘッド104を)上下に昇降させることができる。
【0025】
このようにして、コールドヘッドマウント106は、極低温液体12の貯蔵タンクである真空容器20の内槽24にコールドヘッド104を熱的に接続しまたは切り離す熱スイッチとして動作することができる。図1には、この熱スイッチがオンの状態を実線で示し、熱スイッチがオフの状態を破線で示している。熱スイッチがオンのとき、コールドヘッド104の冷却ステージ104aが内槽24の再凝縮部30の伝熱面30aと接触する。これにより、冷却ステージ104aは、極低温液体12の液化温度に再凝縮部30を冷却することができ、内槽24に極低温液体12を保持するとともに、気化した極低温液体12を再凝縮することができる。一方、駆動源106cの作動によりコールドヘッド104が持ち上げられると、冷却ステージ104aは再凝縮部30の伝熱面30aから離れる。冷却ステージ104aは真空断熱層26に配置されているので、冷却ステージ104aと再凝縮部30の熱接触は解除される。このとき、コールドヘッド104は内槽24を冷却しない。
【0026】
こうした熱スイッチは、極低温装置10の省エネルギー性の向上に有利である。極低温冷凍機100の例示的な運用として、真空容器20が十分に冷却された状態では極低温冷凍機100の冷却運転を停止することが考えられる。このとき、コールドヘッド104が真空容器20の内槽24と接触したままであったとすると、コールドヘッド104が極低温装置10の周囲環境から内槽24への伝熱経路となり、極低温液体12への望まれない熱侵入が生じうる。これに対して、極低温冷凍機100を停止する際に、熱スイッチを利用してコールドヘッド104を内槽24から切り離すことにより、このような侵入熱を遮断することができる。
【0027】
熱スイッチの切り替えのために、極低温装置10には、極低温液体12の物理量を検出するセンサ34が設けられてもよい。駆動源106cは、検出された極低温液体12の物理量を示すセンサ34からの出力信号を受信し、検出された極低温液体12の物理量に基づいてコールドヘッド104を移動させるように構成されてもよい。
【0028】
例えば、センサ34は、真空容器20の内槽24に配置され、内槽24の内圧を測定するように構成されてもよい。内槽24における極低温液体12の蒸気圧がセンサ34によって測定される。駆動源106cは、測定圧力を圧力しきい値と比較し、測定圧力が圧力しきい値を超える場合に熱スイッチをオンにし、測定圧力が圧力しきい値を下回る場合に熱スイッチをオフにするように動作してもよい。このようにして、圧力しきい値に相当する適正圧力に内槽24の内圧を維持することができる。
【0029】
あるいは、センサ34は、極低温液体12の温度を測定するように構成されてもよい。この場合、センサ34は、内槽24の中に配置され、または内槽24の再凝縮部30に設置されてもよい。駆動源106cは、測定温度を温度しきい値と比較し、測定温度が温度しきい値を超える場合に熱スイッチをオンにし、測定温度が温度しきい値を下回る場合に熱スイッチをオフにするように動作してもよい。このようにして、温度しきい値に相当する適正温度に極低温液体12を維持することができる。
【0030】
また、極低温冷凍機100は、真空容器20の外でコールドヘッド104に接続されるフレキシブルライン108と、真空容器20に対して固定的にフレキシブルライン108を保持するように構成されるフレキシブルラインホルダ110とを備える。フレキシブルライン108は、真空容器20の外に配置される外部要素(例えば圧縮機102)にコールドヘッド104の駆動部104cを接続する。フレキシブルラインホルダ110は、コールドヘッドマウント106の取付フランジ106aに固定されており、コールドヘッド104から外部要素への途中でフレキシブルライン108を保持する。言い換えれば、フレキシブルラインホルダ110は、フレキシブルライン108を真空容器20に固定する中継点にあたる。
【0031】
圧縮機102は、例えばコールドヘッド104および真空容器20が設置される部屋または区画とは別の部屋または区画に設置される等、コールドヘッド104および真空容器20から遠隔の位置に配置されてもよく、フレキシブルライン108の長さは、例えば10m以上であってもよい。フレキシブルラインホルダ110は、取付フランジ106aに固定されるため、フレキシブルライン108のコールドヘッド104側の端部(例えば、フレキシブルライン108の全長の10%以内、または5%以内となるフレキシブルライン108の端部)でフレキシブルライン108を保持する。
【0032】
フレキシブルライン108は、この実施の形態では、作動ガスのコールドヘッド104への供給またはコールドヘッド104からの排出のための作動ガスライン、より具体的には、ガス供給ライン112およびガス回収ライン114を備える。ガス供給ライン112は、圧縮機102の作動ガス吐出ポート102aをコールドヘッド104の高圧ポート116aに接続し、ガス回収ライン114は、圧縮機102の作動ガス吸入ポート102bをコールドヘッド104の低圧ポート116bに接続する。
【0033】
よって、極低温冷凍機100の作動ガスは、圧縮機102からガス供給ライン112を通じてコールドヘッド104に供給され、コールドヘッド104からガス回収ライン114を通じて圧縮機102に回収される。よく知られているように、ガス供給ライン112における作動ガスの圧力と、ガス回収ライン114における作動ガスの圧力は、ともに大気圧よりかなり高く、それぞれ第1高圧及び第2高圧と呼ぶことができる。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。典型的には、高圧は例えば2~3MPaである。低圧は例えば0.5~1.5MPaであり、例えば約0.8MPaである。
【0034】
フレキシブルラインホルダ110は、こうした作動ガスラインを保持する作動ガスラインホルダを備えてもよい。フレキシブルラインホルダ110は、ガス供給ライン112を保持する第1ホルダおよびガス回収ライン114を保持する第2ホルダを有してもよく、これら2つのホルダが取付フランジ106aに固定されてもよい。フレキシブルラインホルダ110は、例えばねじ止め、溶接、またはそのほか適宜の固定手段により、取付フランジ106aに剛に固定されうる。
【0035】
2つのホルダは、取付フランジ106a上で横並びに配置されてもよいし、取付フランジ106a上で駆動部104cを挟むように配置されてもよいし、取付フランジ106a上でそのほか任意の場所に配置されてもよい。図1に示される例では、フレキシブルラインホルダ110は取付フランジ106aの上面に取り付けられているが、取付フランジ106aの下面またはそのほかの部位に取り付けられてもよい。
【0036】
ガス供給ライン112は、コールドヘッド104の高圧ポート116aから延びる第1部分112aと、圧縮機102の作動ガス吐出ポート102aから延びる第2部分112bとを備える。フレキシブルラインホルダ110は、極低温冷凍機100の作動ガスが流れることができる内部流路を有する中間継手として構成されてもよい。例えば、第1ホルダが第1内部流路を有する第1中間継手であってもよい。この場合、ガス供給ライン112の第1部分112aは、一端で第1ホルダに接続され、他端で高圧ポート116aに接続される。ガス供給ライン112の第2部分112bは、一端で第1ホルダに接続され、他端で作動ガス吐出ポート102aに接続される。こうして、作動ガス吐出ポート102aから吐出される高圧の作動ガスは、第2部分112b、第1ホルダ、第1部分112aを通じてコールドヘッド104に流入する。
【0037】
同様に、ガス回収ライン114は、コールドヘッド104の低圧ポート116bから延びる第1部分114aと、圧縮機102の作動ガス吸入ポート102bから延びる第2部分114bとを備える。フレキシブルラインホルダ110は、極低温冷凍機100の作動ガスが流れることができる内部流路を有する中間継手として構成されてもよい。例えば、第2ホルダが第2内部流路を有する第2中間継手であってもよい。この場合、ガス回収ライン114の第1部分114aは、一端で第2ホルダに接続され、他端で低圧ポート116bに接続される。ガス回収ライン114の第2部分114bは、一端で第2ホルダに接続され、他端で作動ガス吸入ポート102bに接続される。こうして、コールドヘッド104の低圧ポート116bから流出する低圧の作動ガスは、第1部分114a、第2ホルダ、第2部分114bを通じて圧縮機102に回収される。
【0038】
ガス供給ライン112およびガス回収ライン114は、例えばフレキシブルホースなど柔軟性をもつ配管であってもよい。また、ガス供給ライン112およびガス回収ライン114は、例えば損耗による交換に便利となるように、圧縮機102、コールドヘッド104、フレキシブルライン108と着脱可能であってもよい。
【0039】
図2は、比較例に係る極低温冷凍機の作動ガスラインを概略的に示す図である。図示されるように、極低温冷凍機200は、圧縮機202およびコールドヘッド204を備える。圧縮機202とコールドヘッド204は、フレキシブルホース206により接続されている。コールドヘッド204は、真空容器20に対して移動(昇降)することができるように真空容器20に搭載されている。コールドヘッド204は、その昇降により、コールドヘッド204を被冷却物208と熱的に接続しまたは切り離す熱スイッチとして動作可能である。図2では、熱スイッチがオフの場合、つまり、コールドヘッド204が被冷却物208から離れた状態が示されている。
【0040】
極低温冷凍機200の近くを通る作業者が、自分の足210をフレキシブルホース206に引っ掛けてつまずくことがあるかもしれない。そうすると、フレキシブルホース206は、引っ掛けられた足210によって瞬時に強く引っ張られ、コールドヘッド204に強い横荷重212が作用することになりうる。熱スイッチがオフのときコールドヘッド204はベローズなど剛性の低い支持構造によって真空容器20に支持されているから、横荷重212は、図2に黒矢印214および破線で示すように、極低温冷凍機200の位置および姿勢を乱し、場合によっては極低温冷凍機200を真空容器20や被冷却物208など周囲の構造物と衝突させるかもしれない。その結果、極低温冷凍機200や周囲の構造物が破損することになるかもしれない。
【0041】
これに対して、実施の形態によれば、フレキシブルライン108がフレキシブルラインホルダ110によって真空容器20に対して固定的に保持されている。コールドヘッド104から遠い側のフレキシブルライン108の第2部分(例えば、112b、114b)については、依然として作業者が足を引っ掛けてしまうリスクが想定されうる。しかし、そのような事態がたとえ起こったとしても、第2部分に働く引張力は、フレキシブルラインホルダ110が固定された取付フランジ106aおよび真空容器20が受けるにすぎない。この引張力は、コールドヘッド104には直接伝わらず、熱スイッチがオフであってもコールドヘッド104の位置、姿勢を保持することができるものと期待される。このようにして、極低温冷凍機100を予期せぬ外力から保護することができる。
【0042】
図3は、図1に示される極低温冷凍機100に適用しうる例示的な電気接続を概略的に示す図である。フレキシブルライン108は、コールドヘッド104への給電のための給電ケーブルであってもよい。給電ケーブルは、真空容器20の外に配置された電源118をコールドヘッド104の駆動部104c(例えば、図1に示されるコールドヘッド駆動モータ104e)に接続する。例示的な構成では、圧縮機102が電源118として用いられてもよい。
【0043】
フレキシブルラインホルダ110は、取付フランジ106aに固定され、給電ケーブルを保持するケーブルホルダであってもよい。図示される例では、フレキシブルラインホルダ110は、取付フランジ106aを貫通するように取付フランジ106aに取り付けられている。これにより、取付フランジ106aの一方の面(例えば上面)からその反対側の面(例えば下面)へと給電ケーブルを導くことができる。取付フランジ106aの上面側のみで給電ケーブルを取り回す場合に比べて、給電ケーブルの配置の自由度を高めることができる。
【0044】
このようにしても、図1および図2を参照して説明した実施の形態と同様にして、極低温冷凍機100を予期せぬ外力から保護することができる。すなわち、フレキシブルラインホルダ110から電源118へと延びるフレキシブルライン108の第2部分に不測の外力が作用したとしても、フレキシブルラインホルダ110が固定された取付フランジ106aおよび真空容器20でこの外力を受けることができる。外力によるコールドヘッド104への悪影響を低減することができる。
【0045】
なお、上述のように取付フランジ106aを貫通するタイプのフレキシブルラインホルダ110が、図1を参照して説明した作動ガスラインのホルダとして用いられてもよい。
【0046】
図4は、図1に示される極低温冷凍機100に適用しうる例示的な駆動源を概略的に示す図である。駆動源106cは、コールドヘッド104の上方に配置されたプレート状の支持体120に取り付けられている。駆動源106cは、支持体120を貫通して下方に突出する可動ピストン122を備える。複数本(例えば4本)のガイドロッド124がコールドヘッド104を囲むようにして取付フランジ106aに立設されており、ガイドロッド124の先端に支持体120が固定されている。ガイドロッド124は、コールドヘッドフランジ104dを上下方向に貫通しており、コールドヘッドフランジ104dは、ガイドロッド124に沿って上下方向に移動可能である。
【0047】
また、支持柱126aおよび可動プレート126bを含む可動フレーム126がコールドヘッドフランジ104dに設置されている。支持柱126aは、コールドヘッドフランジ104dに立設されており、支持柱126aの先端どうしを架橋するように可動プレート126bが支持柱126aに固定されている。可動プレート126bには、可動ピストン122の下端が固定されている。
【0048】
従って、駆動源106cの作動により可動ピストン122が上下に進退するとき、可動フレーム126を介してコールドヘッドフランジ104dも上下に移動することができる。このとき、コールドヘッドフランジ104dは、気密隔壁106bの伸縮を伴いながら、ガイドロッド124に沿って上下に移動することになる。このようにして、駆動源106cは、コールドヘッド104の真空容器20に対する移動を提供できる。
【0049】
極低温冷凍機100は、駆動源106cに接続される別のフレキシブルライン128と、真空容器20に対して固定的に別のフレキシブルライン128を保持するように構成される別のフレキシブルラインホルダ130と、を備えてもよい。駆動源106cは、例えばエアシリンダであってもよく、その場合、フレキシブルライン128は、駆動源106cに圧縮空気を給排するための圧縮空気ラインであってもよい。フレキシブルラインホルダ130は、取付フランジ106aに固定され、圧縮空気ラインを保持するホルダであってもよい。
【0050】
このようにしても、極低温冷凍機100を予期せぬ外力から保護することができる。すなわち、フレキシブルラインホルダ130から圧縮空気源132へと延びるフレキシブルライン128の第2部分に不測の外力が作用したとしても、フレキシブルラインホルダ130が固定された取付フランジ106aおよび真空容器20でこの外力を受けることができる。外力によるコールドヘッド104への悪影響を低減することができる。
【0051】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0052】
上述の実施の形態は、作動ガスラインホルダが中間継手である場合を例として説明しているが、他の構成も可能である。例えば、作動ガスラインホルダは作動ガスラインを保持するホースクランプなど適宜の固定具であってもよく、こうした固定具が取付フランジ106aに固定されていてもよい。この場合、作動ガスラインは、ホルダで分割される必要はない(作動ガスラインは、第1部分と第2部分に分割されなくてもよく、1本のフレキシブルホースであってもよい)。
【0053】
上述の実施の形態は、フレキシブルラインホルダ110がコールドヘッドマウント106の取付フランジ106aに固定される場合を例として説明しているが、他の構成も可能である。例えば、フレキシブルラインホルダ110は、真空容器20に直接固定されてもよい。例えば、フレキシブルラインホルダ110は、取付フランジ106aが取り付けられる(すなわち、装着口32が設けられている)真空容器20の壁面、または真空容器20のそのほかの部位に固定されてもよい。
【0054】
上述の実施の形態は、極低温冷凍機100が単段式のGM冷凍機である場合を例として説明しているが、他の構成も可能である。例えば、極低温冷凍機100は、二段式のGM冷凍機であってもよい。この場合、極低温冷凍機100は、約4K以下の極低温冷却を提供してもよく、極低温液体12は、液体ヘリウムであってもよい。あるいは、極低温冷凍機100は、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。
【0055】
上述の実施の形態は、極低温装置10が極低温液体12の貯蔵装置である場合を例として説明しているが、他の構成も可能である。例えば、極低温装置10は、超伝導機器であってもよく、極低温冷凍機100は、真空容器20内に配置された超伝導コイルを冷却するために用いられてもよい。
【0056】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0057】
20 真空容器、 100 極低温冷凍機、 104 コールドヘッド、 106 コールドヘッドマウント、 106a 取付フランジ、 106b 気密隔壁、 106c 駆動源、 108 フレキシブルライン、 110 フレキシブルラインホルダ。
図1
図2
図3
図4