(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063617
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】異物検出装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20240502BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240502BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240502BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/12
H02J50/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171706
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】中尾 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】三島 大地
(57)【要約】
【課題】送電側の装置の送信コイルと受電側の装置の受信コイルとの間に混入した異物の検出精度を向上できる異物検出装置を提供する。
【解決手段】異物検出装置は、非接触にて電力が伝送される、送電装置2の送信コイル12と受電装置3の受信コイル21との間に、複数の検出コイル(43-1~43-n)と、複数の検出コイルのそれぞれについて、その検出コイルとともに共振回路を構成する複数のコンデンサ(44-1~44-n)と、各検出コイルに所定の周波数を持つ交流電力を供給する電力供給回路41と、各検出コイルから出力される電圧を検出し、検出された電圧に応じて送信コイル12と受信コイル21の間に混入した異物を検出する検出回路45とを有する。そして複数の検出コイル(43-1~43-n)のうちの互いに隣接する二つの検出コイル間の電磁結合が無視できる所定量だけ重なるように各検出コイルが配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触にて電力が伝送される、送電装置の送信コイルと受電装置の受信コイルとの間において互いに異なる位置に配置される複数の検出コイルと、
前記複数の検出コイルのそれぞれについて、当該検出コイルとともに共振回路を構成する複数のコンデンサと、
前記複数の検出コイルのそれぞれと電磁結合可能に配置される給電コイルと、
前記複数の検出コイルのそれぞれに、前記給電コイルを介して所定の周波数を持つ交流電力を供給する電力供給回路と、
前記複数の検出コイルのそれぞれから、供給された前記交流電力に対して出力される電圧を検出し、検出された電圧に応じて前記送信コイルと前記受信コイルの間に混入した異物を検出する検出回路と、
を有し、
前記複数の検出コイルのうちの互いに隣接する二つの検出コイル間の電磁結合が無視できる所定量だけ重なるように前記複数の検出コイルのそれぞれが配置される異物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触にて電力が伝送される電力伝送システム内の異物を検出する異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属の接点などを介さずに、空間を通じて電力を伝送する、いわゆる非接触給電(ワイヤレス給電とも呼ばれる)技術が研究されている。このような非接触給電技術の一つとして、電磁誘導により給電する方式が知られている。電磁誘導により給電する方式では、一次側(送電側あるいは給電側)のコイル(以下、送信コイルと呼ぶ)と二次側(受電側)のコイル(以下、受信コイルと呼ぶ)とが電磁結合することにより、送信コイルから受信コイルへ電力が伝送される。
【0003】
このような非接触給電技術を利用した電力伝送システムにおいて、送信コイルと受信コイルの間に、金属などの異物が入り込んでしまうことがある。このような場合、電力伝送中にその異物が誘導加熱されて発火し、あるいは、異物の発熱に起因して装置が故障することがある。また、このような電力伝送システムでは、電力伝送中に送信コイルと受信コイルとの相対的な位置関係が変動し、その結果として、送信コイルと受信コイル間の結合度が変化することがある。そこで、送信コイルと受信コイルの間に混入した異物を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この技術では、送電装置の送信コイルと受電装置の受信コイルとの間に配置される基板上に、互いに電磁結合可能に配置され、第1のコンデンサとともに第1の共振周波数を有する共振回路を構成する複数の第1の検出コイルと、互いに電磁結合可能に配置され、第2のコンデンサとともに第2の共振周波数を有する共振回路を構成する複数の第2の検出コイルと、各検出コイルにその検出コイルが共振する周波数を持つ交流電力を供給する電力供給回路と、各検出コイルを介して伝達された交流電力の電圧に応じて送信コイルと受信コイルの間に混入した異物を検出する検出回路とが設けられる。さらに、複数の第1の検出コイルと複数の第2の検出コイルとは、基板の法線方向から見て互いに交互に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術により、送信コイルと受信コイルの間に混入した異物が比較的小さなものであっても検出することが可能となる。しかしながら、送信コイルと受信コイルの間に混入した異物による危険性は高いため、そのような異物の検出精度をより向上することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、送電側の装置の送信コイルと受電側の装置の受信コイルの間に混入した異物の検出精度を向上できる異物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの形態として、異物検出装置が提供される。この異物検出装置は、非接触にて電力が伝送される、送電装置の送信コイルと受電装置の受信コイルとの間において互いに異なる位置に配置される複数の検出コイルと、複数の検出コイルのそれぞれについて、その検出コイルとともに共振回路を構成する複数のコンデンサと、複数の検出コイルのそれぞれと電磁結合可能に配置される給電コイルと、複数の検出コイルのそれぞれに、給電コイルを介して所定の周波数を持つ交流電力を供給する電力供給回路と、複数の検出コイルのそれぞれから、供給された交流電力に対して出力される電圧を検出し、検出された電圧に応じて送信コイルと受信コイルの間に混入した異物を検出する検出回路とを有する。そして複数の検出コイルのうちの互いに隣接する二つの検出コイル間の電磁結合が無視できる所定量だけ重なるように複数の検出コイルのそれぞれが配置される。
本発明に係る異物検出装置は、このような構成を有することにより、送電側の装置の送信コイルと受電側の装置の受信コイルとの間に混入した異物の検出精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る異物検出装置を含む電力伝送システムの概略構成図である。
【
図3】異物検出装置が設けられる基板と送信コイルとの位置関係の一例を示す概略側面断面図である。
【
図4】異物検出装置が有する、複数の検出コイルと給電コイルの配置の一例を示す概略平面図である。
【
図5】電力供給回路の一例を示す回路構成図である。
【
図7】水平方向に隣接する二つの検出コイルの重なりの程度を説明する図である。
【
図8】斜め方向に隣接する二つの検出コイルの重なりの程度を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一つの実施形態による異物検出装置を、図を参照しつつ説明する。この異物検出装置は、非接触により電力を伝送する電力伝送システムが有する、送電側の装置(以下、単に送電装置と呼ぶ)の送信コイルと、受電側の装置(以下、単に受電装置と呼ぶ)の受信コイルとの間に配置される基板を有し、その基板上に形成される、異物検出用の電力を供給するための給電コイルと、給電コイル内において互いに異なる位置に配置され、給電コイルと電磁結合可能であり、かつ、給電コイルよりも小さい複数の検出コイルを有する。複数の検出コイルのそれぞれは、送電装置の送信コイルに供給される電力の周波数とは異なり、かつ、送信コイルを含む共振回路(送電側に共振回路が設けられる場合)及び受信コイルを含む共振回路の何れもが共振しない周波数において共振可能となっている。この異物検出装置は、給電コイルに、それら検出コイルが共振する周波数を持つ交流電力を供給し、一方、複数の検出コイルのそれぞれから出力される電圧を検出する。送信コイルと受信コイルの間に金属などの導電性を有する異物が混入すると、複数の検出コイルの何れかの共振特性が変化し、その結果として、検出される電圧が変化する。そこで、この異物検出装置は、検出される電圧を監視して、その電圧が、異物が混入していない場合に相当する所定の基準範囲から外れると、送信コイルと受信コイルの間に異物が混入したと判定する。さらに、複数の検出コイルのうち、互いに隣接する二つの検出コイル同士は、基板の法線方向から見て、互いの電磁結合が無視できる所定量だけ重なるように、複数の検出コイルのそれぞれは配置される。これにより、送信コイルと受信コイルの間に混入した異物は、基板の法線方向から見て何れかの検出コイル内に位置することになり、かつ、異物により共振特性が変化する検出コイルが他の検出コイルに影響されずに済むため、異物の検出精度が向上する。
【0010】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る異物検出装置を含む電力伝送システムの概略構成図である。
図1に示されるように、電力伝送システム1は、送電装置2と、受電装置3と、異物検出装置4とを有する。送電装置2と受電装置3とは、非接触給電装置を構成し、送電装置2から受電装置3へ、空間を介して非接触で電力が伝送される。送電装置2は、電力供給回路11と、送信コイル12とを有する。一方、受電装置3は、受信コイル21と、共振コンデンサ22と、受電回路23とを有する。電力伝送システム1は、例えば、いわゆる一次直列二次直列共振コンデンサ方式(SS方式)、または一次直列二次並列共振コンデンサ方式(SP方式)の非接触給電装置とすることができる。あるいは、電力伝送システム1は、一次側の共振を利用せず、二次側において受信コイルと共振コンデンサとが直列共振する方式(NS方式)、または、一次側の共振を利用せず、二次側において受信コイルと共振コンデンサとが並列共振する方式(NP方式)の非接触給電装置であってもよい。
【0011】
先ず、送電装置2について説明する。
電力供給回路11は、交流電力を送信コイル12へ供給する。そのために、電力供給回路11は、例えば、直流電力を供給する直流電源と、直流電源から供給された直流電力を交流電力に変換して送信コイル12へ供給するインバータ回路と、インバータ回路を制御する制御回路とを有する。インバータ回路は、4個のスイッチング素子(例えば、MOSFET)がフルブリッジ状に接続されるフルブリッジインバータであってもよく、あるいは、2個のスイッチング素子がハーフブリッジ状に接続されるハーフブリッジインバータであってもよい。制御回路は、送信コイル12に供給される交流電力の周波数が所定の周波数(例えば、受電装置3の共振回路が共振する周波数)となるように、インバータ回路が有する各スイッチング素子のオン/オフの切り替えを制御する。
【0012】
電力供給回路11は、さらに、直流電源とインバータ回路との間に、DC-DCコンバータを有してもよい。あるいは、電力供給回路11は、直流電源の代わりに、交流電源と接続され、交流電源からの交流電力を整流する整流回路と、整流回路と接続され、整流回路から出力される脈流電力を直流電力に変換する力率改善回路とを有していてもよい。この場合には、制御回路は、例えば、受電装置3が受電する電力の電圧を一定に保つために、力率改善回路を制御して、インバータ回路へ供給される直流電力の電圧を調整してもよい。
【0013】
送信コイル12は、電力供給回路11から供給された交流電力を、空間を介して受電装置3の受信コイル21へ伝送する。なお、送電装置2は、送信コイル12と電力供給回路11のインバータ回路との間に、送信コイル12と直列に接続されるコンデンサを有してもよい。このコンデンサは、直流電力を遮断するためのものであってもよく、あるいは、送信コイル12に供給される交流電力の周波数において送信コイル12とともに共振する共振回路を構成するためのものであってもよい。
【0014】
なお、送電装置2は、受電装置3による受電状況を表す信号を受信する通信器をさらに有してもよい。この場合には、電力供給回路11の制御回路は、受電状況に応じて、送信コイル12に供給される交流電力の周波数を変更するよう、インバータ回路の各スイッチング素子のオン/オフの切り替えタイミングを変更してもよい。
【0015】
さらに、電力供給回路11の制御回路は、異物検出装置4から、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した異物が検出されたことを表す信号を受信すると、インバータが有する各スイッチング素子をオフにして、電力供給回路11から送信コイル12への電力供給を停止してもよい。
【0016】
さらにまた、電力供給回路11は、インバータ回路の代わりに、DC-ACコンバータを有していてもよい。そのようなDC-ACコンバータは、直流電源と送信コイル12の間に直列に接続されるコイルと、そのコイルと送信コイル12との間に一端が接続され、かつ、送信コイル12と並列に接続されるコンデンサと、コンデンサと並列に接続されるスイッチング素子とを有していてもよい。そしてスイッチング素子は、ガリウムナイトライド(GaN)で形成される電界効果トランジスタとすることができる。このような構成により、電力供給回路11は、ISMバンドに含まれるスイッチング周波数でスイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで、ISMバンドに含まれるスイッチング周波数を持つ交流電力を送信コイル12に供給することが可能となる。
【0017】
次に、受電装置3について説明する。
受信コイル21は、共振コンデンサ22とともに共振回路を構成し、送電装置2の送信コイル12に流れる交流電流と共振することで、送信コイル12から電力を受信する。そのために、共振コンデンサ22は、受信コイル21と直列に接続されてもよく、あるいは、受信コイル21と並列に接続されてもよい。そして受信コイル21と共振コンデンサ22とにより形成される共振回路から出力される交流電力は、受電回路23へ出力される。なお、受信コイル21の巻き数と、送信コイル12の巻き数は同じでもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。
【0018】
受電回路23は、受信コイル21と共振コンデンサ22とにより形成される共振回路からの交流電力を直流電力に変換して、直流電力を受電回路23と接続される負荷回路(図示せず)へ出力する。そのために、受電回路23は、例えば、共振回路からの交流電力を脈流電力に変換する全波整流回路と、全波整流回路から出力される脈流電力を平滑化して負荷回路へ出力するための平滑コンデンサとを有する。さらに、受電回路23は、負荷回路へ出力される電圧を測定するための電圧計、電圧計により測定された電圧など、受電状況を表す信号を送電装置2へ送信するための通信器、負荷回路と受電回路23との接続または切断を切り替えるためのスイッチング素子、及び、そのスイッチング素子のオン/オフの切り替えを制御する制御回路などを有してもよい。
【0019】
次に、本実施形態による、異物検出装置4について説明する。異物検出装置4は、送電装置2と受電装置3とが、電力伝送可能な位置関係、すなわち、送信コイル12と受信コイル21とが電磁結合可能な位置関係となっている場合における、送信コイル12と受信コイル21の間に配置される。そして異物検出装置4は、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した、金属などの導電性を有する異物を検出する。
【0020】
図2は、異物検出装置4の概略構成図である。
図3は、異物検出装置4が設けられる基板と送信コイル12との位置関係の一例を示す概略側面断面図である。さらに、
図4は、異物検出装置4が有する、複数の検出コイルと給電コイルの配置の一例を示す概略平面図である。
【0021】
図2に示されるように、異物検出装置4は、電力供給回路41と、給電コイル42と、複数の検出コイル43-1~43-n(nは2以上の整数)と、複数のコンデンサ44-1~44-nと、検出回路45とを有する。電力供給回路41、給電コイル42、複数の検出コイル43-1~43-n、複数のコンデンサ44-1~44-n、及び、検出回路45は、送信コイル12と受信コイル21とが電磁結合可能な位置関係となっている場合における、送信コイル12と受信コイル21の間に位置する基板46上に設けられる。本実施形態では、基板46は、送電装置2に取り付けられる。そして検出回路45からの異物の検出結果を表す信号は、送電装置2の電力供給回路11へ出力される。
【0022】
図5は、電力供給回路41の一例を示す回路構成図である。電力供給回路41は、例えば、直流電力を供給する直流電源51と、コンデンサ52と、インバータ回路53と、インバータ回路53を制御する制御回路54とを有する。そして電力供給回路41は、給電コイル42を介して、各検出コイル43-1~43-nへ異物検出用の電力を供給する。
【0023】
給電コイル42は、その一端がコンデンサ52を介してインバータ回路53と接続され、他端が接地される。なお、給電コイル42とコンデンサ52の接続順序は入れ替わってもよい。
【0024】
インバータ回路53は、直流電源51から供給された直流電力を交流電力に変換して給電コイル42へ供給する。この例では、インバータ回路53は、2個のスイッチング素子(例えば、MOSFET)がハーフブリッジ状に接続されるハーフブリッジインバータとして構成されるが、インバータ回路53は、4個のスイッチング素子がフルブリッジ状に接続されるフルブリッジインバータであってもよい。制御回路54は、給電コイル42に供給される交流電力の周波数が所定の周波数となるように、インバータ回路が有する各スイッチング素子のオン/オフの切り替えを制御する。
【0025】
なお、電力供給回路41から給電コイル42を介して各検出コイル43-1~43-nへ供給される交流電力の周波数は、送電装置2の送信コイル12に供給される交流電力の周波数とは異なり、かつ、送信コイル12を含む共振回路(送電装置2に共振回路が設けられる場合)及び受信コイル21を含む共振回路の何れもが共振しない周波数とすることが好ましい。例えば、電力供給回路41が供給する交流電力の周波数は、送信コイル12に供給される交流電力の周波数(例えば、85kHzまたは150kHz)よりも高い周波数とすることができる。これにより、電力供給回路41から供給される交流電力が送電装置2から受電装置3への電力伝送に影響することが防止される。またこのように電力供給回路41が供給する交流電力の周波数が設定されることで、異物検出装置4が有する複数の検出コイル43-1~43-nのそれぞれのインダクタンスを相対的に小さくできるので、各検出コイルのサイズを送信コイル12のサイズよりも小さくすることが容易となる。
【0026】
再度
図2~
図4を参照すると、給電コイル42及び複数の検出コイル43-1~43-nのそれぞれは、基板46上に設けられる、金属などの導体による配線パターンとして構成される。そして各検出コイル43-iと対応するコンデンサ44-i(i=1,2,...,n)とは互いに接続され、それぞれ、一つの共振回路を構成する。なお、
図4では、電力供給回路41、コンデンサ44-i及び検出回路45の図示は省略される。各検出コイルのインダクタンス及び各コンデンサの静電容量は、その検出コイルとコンデンサとにより構成される共振回路の共振周波数が、送信コイル12に供給される交流電力の周波数にて共振しない周波数となるように設定されることが好ましい。これにより、異物検出装置4の各共振回路は、送電装置2から受電装置3へ伝送される交流電力に対して共振しないので、異物検出装置4は、送電装置2から受電装置3へ伝送される交流電力が、異物の検出に影響することを防止できる。さらに、各検出コイルのインダクタンス及び各コンデンサの静電容量は、その検出コイルとコンデンサとにより構成される共振回路の共振周波数が、電力供給回路41から給電コイル42を介して供給される交流電力の周波数にて共振する周波数となるように設定されることが好ましい。これにより、電力供給回路41から給電コイル42を介して供給される交流電力が検出回路45に達するまでの損失が抑制されるので、異物検出装置4は、異物の検出精度が低下することを抑制できる。なお、各共振回路の共振周波数と、電力供給回路41から供給される交流電力の周波数とは、電力供給回路41から供給される交流電力に応じた電圧が各検出コイルから検出回路45に出力される限りにおいて、一致していなくてもよい。
【0027】
また、基板46は、送信コイル12の中心軸方向と基板46の法線方向とが略平行となるように配置される。そして、基板46の法線方向、すなわち、送信コイル12の中心軸方向から見た給電コイル42の外径が、送信コイル12の外形と同程度あるいは送信コイル12よりも大きくなるように、給電コイル42が設けられることが好ましい。さらに、基板46の法線方向から見て、給電コイル42の内側に送信コイル12が位置するように、給電コイル42が設けられることが好ましい。そして複数の検出コイル43-1~43-nのそれぞれは、基板46の一方の面において、給電コイル42よりも小さく、かつ、基板46の法線方向から見て、給電コイル42の内部の互いに異なる位置において、給電コイル42と電磁結合可能に配置される。これにより、給電コイル42は、各検出コイルに対して確実に異物検出用の電力を供給することができる。したがって、電力供給回路41から給電コイル42を介して供給された交流電力に対して、各検出コイルが対応するコンデンサとともに共振することで、その交流電力に応じた電圧が、各検出コイルから検出回路45へ出力される。なお、複数の検出コイルのそれぞれが給電コイル42から電力を受電可能な限りにおいて、複数の検出コイルのうちの一つまたは二つ以上が、基板46の法線方向から見て、給電コイル42の外側、または、給電コイル42と重なるように配置されてもよい。
【0028】
さらに、複数の検出コイル43-1~43-nのうち、互いに隣接する二つの検出コイル同士は、基板46の法線方向から見て、その二つの検出コイルの電磁結合が無視できる所定量だけ重なるように配置される。その際、二つの検出コイル同士が重なる位置において、その二つの検出コイルが電気的に接続されないよう、その二つの検出コイルの間に絶縁層(図示せず)が設けられる。
【0029】
図4に示される例では、各検出コイルは矩形形状を有しており、千鳥足状に配置されている。そして水平方向及び垂直方向の何れにおいても、隣接する二つの検出コイル同士は、基板46の法線方向から見て、互いの電磁結合が無視できる所定量だけ重なるように配置されている。
【0030】
隣接する二つの検出コイル同士が部分的に重なるように各検出コイルが配置されることにより、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した異物は、基板46の法線方向から見て何れかの検出コイルの内側に位置することとなる。そして内部に異物が位置する検出コイルは、その異物による影響で共振特性が変化する。さらに、各検出コイル間の電磁結合は無視可能な程度に過ぎない。すなわち、各検出コイル間の電磁結合による、個々の検出コイルの共振特性への影響は、異物による検出コイルの共振特性の変化よりも十分に小さい。そのため、異物により共振特性が変化する検出コイルが他の検出コイルに影響されずに済む。このことから、異物が内部に位置する検出コイルに対応する検出回路45は、共振特定の変化による電圧の変化を精度良く検出できる。なお、隣接する二つの検出コイル間の重なりの程度の詳細については後述する。
【0031】
また、この例では、給電コイル42と各検出コイル43-1~43-nとは、基板46の同じ面上に配置されるが、給電コイル42が配置される基板46の面と、各検出コイル43-1~43-nが配置される基板46の面とが互いに異なっていてもよい。さらに、各検出コイル43-1~43-nの一部が給電コイル42と同じ面上に配置され、各検出コイル43-1~43-nの他の一部が給電コイル42と異なる面上に配置されてもよい。
【0032】
なお、
図4に示される例では、複数の検出コイル43-1~43-nのそれぞれは、矩形状に形成されているが、各検出コイルの形状は矩形に限られず、例えば、円形または楕円形であってもよい。また、複数の検出コイル43-1~43-nのそれぞれの形状及びサイズは、互いに同一でもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。さらに、送信コイル12の中心軸方向から見た、複数の検出コイル43-1~43-nのそれぞれのサイズは、送信コイル12のサイズよりも小さいことが好ましい。これにより、送信コイル12よりも小さい異物が送信コイル12と受信コイル21の間に混入した場合でも、複数の検出コイル43-1~43-nの何れかが、その異物により影響を受け易くなるので、異物検出装置4は、そのような小さな異物を精度良く検出することができる。
【0033】
検出回路45は、複数の検出コイル43-1~43-nのそれぞれから出力された交流電力の電圧を検出し、検出された電圧に基づいて、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した異物を検出する。
【0034】
本実施形態では、送電装置2から受電装置3へ伝送される交流電力は、給電コイル42と複数の検出コイル43-1~43-nの何れかを介した、電力供給回路41から検出回路45への交流電力の伝達に影響しない。一方、送信コイル12と受信コイル21の間に異物が混入すると、その異物により、複数の検出コイル43-1~43-nのうち、異物が内部に位置する検出コイルの共振特性が変化する。そのため、異物の混入は、異物が内部に位置する検出コイルを介した電力供給回路41から検出回路45への交流電力の伝達に影響する。その結果として、異物が内部に位置する検出コイルから出力され、検出回路45にて検出される電圧が変化する。例えば、供給された交流電力により、電流が流れている何れかの検出コイルに金属が近付くと、その電流により検出コイル近傍に生じる磁束により、その金属において渦電流が発生して損失が生じる。また、発生した渦電流による磁束により、検出コイルのインダクタンスが低下する。特に、その金属が磁性体である場合、インダクタンスの変化は小さいにもかかわらず、損失だけが比較的大きくなることがある。これらの結果として、その検出コイルを含む共振回路の共振特性が変化する。そこで、検出回路45は、複数の検出コイル43-1~43-nのそれぞれについて、その検出コイルから出力された電圧が所定の基準範囲に含まれるか否か判定し、所定の基準範囲から外れる場合に、送信コイル12と受信コイル21の間に異物が混入したと判定する。所定の基準範囲は、各検出コイルについて同一であってもよくあるいは、検出コイルごとに設定されてもよい。
【0035】
図6は、検出回路45の一例を示す回路構成図である。なお、検出回路45は、各検出コイルに対して同じ構成とすることができるので、
図6では、一つの検出コイルについての検出回路45の構成が示される。
【0036】
検出回路45は、受信コイル61及び共振コンデンサ62を有する共振回路63と、ハイパスフィルタ64と、アンプ65と、半波整流回路66と、ローパスフィルタ67と、電圧検出回路68と、判定回路69と、記憶回路70とを有する。なお、検出回路45の回路構成は、
図6に示されたものに限られず、各検出コイルにより伝達された交流電力の電圧を検出し、検出された電圧が所定の基準範囲から外れるか否かを判定可能な様々な回路の何れかとすることができる。
【0037】
共振回路63は、電力供給回路41から供給され、給電コイル42と、複数の検出コイル43-1~43-nのうちの対応する検出コイル43-i(i=1,2,...,n)を介して伝達された交流電力を検出する。そのために、共振回路63の受信コイル61は、複数の検出コイル43-1~43-nのうちの対応する検出コイルと電磁結合可能に配置される。そして共振回路63は、電力供給回路41から供給された交流電力に対して共振するように、受信コイル61のインダクタンス及び共振コンデンサ62の静電容量は設定される。なお、
図6では、二つの共振コンデンサ62が受信コイル61と並列に接続されることが示されているが、共振回路63が有する共振コンデンサ62の数は二つに限られず、一つまたは三つ以上であってもよい。また、受信コイル61と共振コンデンサ62とは、直列に接続されてもよい。さらに、変形例によれば、共振回路63自体が対応する検出コイル43-i及びコンデンサ44-iで構成されてもよい。すなわち、受信コイル61及び共振コンデンサ62の代わりに、検出コイル43-i及びコンデンサ44-iが設けられればよい。これにより、検出回路45の構成が簡略化される。
【0038】
ハイパスフィルタ64は、共振回路63とアンプ65との間に接続され、共振回路63が受信した交流電力のうち、電力供給回路41から供給される交流電力の周波数未満の周波数を持つノイズ成分を減衰させる。アンプ65は、ハイパスフィルタ64と半波整流回路66との間に接続され、ハイパスフィルタ64から出力された交流電力を増幅する。
【0039】
半波整流回路66は、アンプ65とローパスフィルタ67の間に接続され、アンプ65から出力された、増幅された交流電力を半波整流して脈流電力に変換する。ローパスフィルタ67は、半波整流回路66と電圧検出回路68との間に接続され、半波整流回路66から出力された脈流電力を平滑化して直流電力に変換する。
【0040】
電圧検出回路68は、ローパスフィルタ67と接続され、ローパスフィルタ67から出力された直流電力の電圧を検出する。そして電圧検出回路68は、検出した電圧を判定回路69へ出力する。なお、電圧検出回路68は、直流電圧を検出するための電圧検出回路の何れかとすることができる。
【0041】
判定回路69は、検出された電圧が所定の基準範囲に含まれるか否か判定する。検出された電圧が所定の基準範囲に含まれる場合、判定回路69は、送信コイル12と受信コイル21の間に異物は無いと判定する。一方、検出された電圧が所定の基準範囲から外れると、判定回路69は、送信コイル12と受信コイル21の間に混入された異物が有ると判定する。そして判定回路69は、異物の検出結果を表す信号を、送電装置2の電力供給回路11へ出力する。
【0042】
本実施形態では、判定回路69は、電圧検出回路68から受け取った電圧を信号値に変換する変換回路と、その信号値が所定の基準範囲に含まれるか否かを判定するための演算回路と、異物の検出結果を表す信号を送電装置2の電力供給回路11へ出力するための通信回路とを有する。
【0043】
記憶回路70は、記憶部の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリまたは揮発性の半導体メモリを有し、所定の基準範囲を表す情報を記憶する。
【0044】
なお、
図6では、検出回路45に、検出コイルごとに判定回路69と記憶回路70とが設けられる例を示したが、複数の検出コイル43-1~43-nのそれぞれに対して共通に利用される一つの判定回路69と一つの記憶回路70とが検出回路45に設けられてもよい。
【0045】
以下、隣接する二つの検出コイル間の重なりの程度について説明する。
図7は、水平方向に隣接する二つの検出コイルの重なりの程度を説明する図である。
図7に示される例では、二つの検出コイル43-k、43-(k+1)のサイズ及び形状は同一である。そしてその二つの検出コイル43-k、43-(k+1)のそれぞれは、矩形状に形成されている。二つの検出コイル43-k、43-(k+1)のそれぞれについて、互いに対向する水平方向の二つの辺w1,w2は長さaを有し、互いに対向する垂直方向の二つの辺h1,h2は長さcを有する。また、二つの検出コイル43-k、43-(k+1)は、それぞれ、幅tを持つ導体の巻き線により形成されている。そして検出コイル43-(k+1)は、検出コイル43-kに対して水平方向に沿って右側へ距離(a-b-2t)だけずれている(ただし、b<a)。すなわち、検出コイル43-kの右辺h2と検出コイル43-(k+1)の左辺h1で挟まれた領域の幅がbとなる。垂直方向に関しては、検出コイル43-kの位置と検出コイル43-(k+1)の位置は同一である。
【0046】
検出コイル43-kと検出コイル43-(k+1)とが電磁結合しないためには、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+1)の一方の各辺から発して、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+1)の他方の内部を通る鎖交磁束が互いに打ち消し合い、結果としてその鎖交磁束の強度が0になればよい。ここで、検出コイル43-(k+1)の内部のうち、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+1)とが重なっている領域を領域A、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+1)とが重なっていない領域を領域Bとする。そして、検出コイル43-kの辺h1,h2,w1,w2のそれぞれについて、その辺を流れる電流をi
1,i
2,i
3,i
4とする。このとき、t<<a,b,cであるとすると、検出コイル43-kの各辺から発して検出コイル43-(k+1)の内部を通る鎖交磁束の強度が0となる条件は次式で表される。
【数1】
ここで、Φ
pqは、電流i
p(p=1,2,3,4)が検出コイル43-kの対応する辺を流れることで生じ、領域q(q=A or B)を通る磁束である。またμ
0は、真空の透磁率である。なお、対称性より、検出コイル43-kの各辺に流れる電流と検出コイル43-(k+1)の各辺に流れる電流が等しく、かつ、(1)式が満たされる場合、検出コイル43-(k+1)の各辺から発して検出コイル43-kの内部を通る鎖交磁束の強度も0となる。
【0047】
例えば、二つの検出コイルの各辺の長さを20mm(すなわち、a=c=20mm)、各検出コイルの巻き線の幅tを0.1mm、検出コイル43-kの巻き線と検出コイル43-(k+1)の巻き線とが重なっている部分における、それら二つの巻き線間の最小間隔を0.1mmとする。そして検出コイル43-kの各辺に流れる電流は等しいとする(すなわち、i1=i2=i3=i4)。この場合、理論計算に基づいて(1)式が満たされるbの値は、2.2mmとなる。すなわち、検出コイル43-kの一辺の長さの略11%だけ、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+1)とが重なると、それら二つの検出コイルは互いに電磁結合しなくなり、結合係数は0となる。また、二つの検出コイルの各辺の長さを10mmとし、それ以外の条件を上記の条件と同一とすると、理論計算に基づいて(1)式が満たされるbの値は、1.18mmとなる。
【0048】
さらに、隣接する二つの検出コイル間の結合係数が完全に0にならなくても、その二つの検出コイル間の電磁結合による共振特性の変化が異物の存在による共振特性の変化よりも十分に小さければ、異物検出において互いの電磁結合は無視できる。そこで、隣接する二つの検出コイル間の結合係数が0.02~0.03未満となる程度だけその二つの検出コイルが重なるように、各検出コイルが配置されればよい。例えば、検出コイルの各辺の長さが20mmである上記の例では、bの値が1.9~2.5mmの範囲に含まれるように隣接する二つの検出コイル間の重なり度合いの所定量が設定されればよい。
【0049】
図8は、斜め方向に隣接する二つの検出コイルの重なりの程度を説明する図である。
図8に示される例でも、
図7に示される例と同様に、三つの検出コイル43-k、43-(k+1)、43-(k+2)のサイズ及び形状は同一である。そして各検出コイルは矩形状に形成されている。各検出コイルについて、互いに対向する水平方向の二つの辺w1,w2は長さaを有し、互いに対向する垂直方向の二つの辺h1,h2は長さcを有する。さらに、各検出コイルは、それぞれ、幅tを持つ導体の巻き線により形成されている。そして検出コイル43-(k+1)は、検出コイル43-kに対して水平方向に沿って右側へ距離(a-b-2t)だけずれている(ただし、b<a)。このbは、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+1)とが電磁結合しない距離である。垂直方向に関しては、検出コイル43-kの位置と検出コイル43-(k+1)の位置は同一である。また、検出コイル43-(k+2)は、水平方向に関して、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+1)の中点に位置するように配置される。すなわち、検出コイル43-(k+2)は、検出コイル43-k及び検出コイル43-(k+1)のそれぞれに対して水平方向に沿って距離(a-b-2t)/2だけずれている。また、垂直方向に関して、検出コイル43-(k+2)は、検出コイル43-k及び検出コイル43-(k+1)のそれぞれに対して下方向へ距離(c-d-2t)だけずれている(ただし、d<c)。すなわち、検出コイル43-kの下辺w2と検出コイル43-(k+2)の上辺w1で挟まれた領域の幅がdとなる。
【0050】
検出コイル43-kと検出コイル43-(k+2)とが電磁結合しないためには、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+2)の一方の各辺から発して、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+2)の他方の内部を通る鎖交磁束が互いに打ち消し合い、結果としてその鎖交磁束の強度が0になればよい。ここで、検出コイル43-(k+2)の内部のうち、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+2)とが重なっている領域を領域A、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+2)とが重なっていない領域を領域Bとする。そして、検出コイル43-kの辺h1,h2,w1,w2のそれぞれについて、その辺を流れる電流をi
1,i
2,i
3,i
4とする。このとき、t<<a,b,c,dであるとすると、検出コイル43-kの各辺から発して検出コイル43-(k+1)の内部を通る鎖交磁束が0となる条件は次式で表される。
【数2】
ここで、Φ
pqは、電流i
p(p=1,2,3,4)が検出コイル43-kの対応する辺を流れることで生じ、領域q(q=A or B)を通る磁束である。またμ
0は、真空の透磁率である。したがって、検出コイル43-(k+1)と検出コイル43-(k+2)とが電磁結合しないようにするために、(2)式が満たされるように距離dが設定されればよい。また、水平方向に関して、検出コイル43-(k+2)は、検出コイル43-kと検出コイル43-(k+1)の中心に位置し、垂直方向に関して、検出コイル43-(k+2)及び検出コイル43-kの位置関係と検出コイル43-(k+2)及び検出コイル43-(k+1)の位置関係は同一である。したがって、(2)式が満たされるように距離dを設定することで、検出コイル43-(k+1)と検出コイル43-(k+2)も電磁結合しない。さらに、(2)式が満たされる距離dを中心とする、各検出コイルの1辺の長さの数%程度の範囲に相当する所定量だけ、検出コイル43-(k+2)と検出コイル43-kとが垂直方向において重なるように各検出コイルが配置されることで、それら検出コイル間の電磁結合は異物の検出において無視できる。
【0051】
また、各検出コイルが円形状かつ同一サイズに形成される場合について、各検出コイルの巻き線の幅が各検出コイルの外周の長さに対して十分に小さいと仮定して電磁界シミュレーションを実行した。その結果、互いに隣接する二つの検出コイルについて、直径の略25%だけその二つの検出コイルが重なる場合に、その二つの検出コイル間の結合係数は0になる。そして、互いに隣接する二つの検出コイルの重なり度合いが直径の略25%を中心とする直径の数%程度の範囲に含まれていれば、それら二つの検出コイル間の電磁結合による、異物存在時の共振特性の変化への影響を無視できる。したがって、複数の検出コイルのそれぞれについて、隣接する二つの検出コイル間の重なりの所定量がそれら検出コイルの直径の略20%~略30%となるように、各検出コイルが配置されればよい。
【0052】
さらにまた、各検出コイルの形状が上記の例に示したもの以外の形状を有している場合には、電磁界シミュレーションにより、隣接する二つの検出コイル間の電磁結合が無視できる重なり度合いの所定量が決定されればよい。
【0053】
以上に説明してきたように、この異物検出装置は、送電装置と受電装置とが送電装置から受電装置へ電力伝送可能な位置関係となる場合に、送信コイルと受信コイルの間に配置される基板上に設けられる、複数の検出コイルを有する。この異物検出装置は、複数の検出コイルのそれぞれに、複数の検出コイルと電磁結合可能に配置される給電コイルを介して交流電力を供給し、検出コイルごとに、供給された交流電力に応じて出力された電圧を検出回路で検出する。そしてこの異物検出装置は、何れかの検出コイルから出力された電圧が所定の基準範囲から外れている場合に、送信コイルと受信コイルの間に異物が混入したと判定する。さらに、複数の検出コイルのうち、互いに隣接する二つの検出コイル同士は、基板の法線方向から見て、互いの電磁結合が無視できる所定量だけ重なるように、複数の検出コイルのそれぞれは配置される。これにより、送信コイルと受信コイルの間に混入した異物は、基板の法線方向から見て何れかの検出コイル内に位置することになり、かつ、異物により共振特性が変化する検出コイルが他の検出コイルに影響されずに済む。これにより、送信コイル及び受信コイルの何れよりも小さい異物が送信コイルと受信コイル間のどの位置に混入しても、この異物検出装置は、その異物を検出することができる。したがって、この異物検出装置は、送信コイルと受信コイル間に混入した異物の検出精度を向上することができる。
【0054】
なお、変形例によれば、異物検出装置4は、受電装置3に取り付けられてもよい。この場合には、受電装置3は、受信コイル21と並列に、受信コイル21の両端を短絡するか否かを切り替えるスイッチング素子(図示せず)と、そのスイッチング素子をオンにするかオフにするかを切り替えるための制御回路(図示せず)をさらに有していてもよい。そして検出回路45からの異物の検出結果を表す信号は、受電装置3の制御回路へ出力され、制御回路は、その信号が、送信コイル12と受信コイル21の間に混入した異物が検出されたことを表している場合、スイッチング素子をオンにして、受信コイル21の両端を短絡する。これにより、送電装置2から受電装置3への電力伝送が中断され、混入した異物による故障の発生が防止される。
【0055】
また、上記のように、送電装置2と受電装置3とが、互いに通信するための通信器(図示せず)をそれぞれ有していてもよい。この場合、受電装置3の制御回路は、異物検出装置4の検出回路45から受信した信号が、送信コイル12と受信コイル21との間に混入した異物が検出されたことを表している場合、通信器を介して、送電装置2へ電力伝送の停止を指示する信号を送信してもよい。そして送電装置2の電力供給回路11の制御回路は、通信器を介して、電力伝送の停止を指示する信号を受信すると、電力供給回路11から送信コイル12への電力供給を停止してもよい。
【0056】
さらに、送電装置2と受電装置3のそれぞれに、異物検出装置4が取り付けられてもよい。すなわち、送信コイル12と受信コイル21との間に、二つの異物検出装置4が配置されてもよい。
【0057】
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 電力伝送システム
2 送電装置
11 電力供給回路
12 送信コイル
3 受電装置
21 受信コイル
22 共振コンデンサ
23 受電回路
4 異物検出装置
41 電力供給回路
42 給電コイル
43-1~43-n 検出コイル
44-1~44-n コンデンサ
45 検出回路
46 基板
51 直流電源
52 コンデンサ
53 インバータ回路
54 制御回路
61 受信コイル
62 共振コンデンサ
63 共振回路
64 ハイパスフィルタ
65 アンプ
66 半波整流回路
67 ローパスフィルタ
68 電圧検出回路
69 判定回路
70 記憶回路