(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063622
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20240502BHJP
B60K 20/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B60K20/02 E
B60K20/00 D
B60K20/00 F
B60K20/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171716
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】長井 大顕
(72)【発明者】
【氏名】柳原 克己
(72)【発明者】
【氏名】中島 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 亮
(72)【発明者】
【氏名】坂井 達也
(72)【発明者】
【氏名】江口 啓太
【テーマコード(参考)】
3D040
【Fターム(参考)】
3D040AA03
3D040AA10
3D040AA14
3D040AA23
3D040AA24
3D040AA34
3D040AB04
3D040AB08
3D040AC07
3D040AC14
3D040AC15
3D040AC24
3D040AC29
3D040AC48
3D040AC57
(57)【要約】
【課題】利便性を向上させることができる作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両1は、変速操作可能な主変速レバー20(変速操作具)と、主変速レバー20を段階的に変速操作可能な有段変速操作状態と、主変速レバー20を無段階に変速操作可能な無段変速操作状態と、に切り替え可能な切替機構100と、切替機構100の状態を切り替える操作が可能な主変速レバー20(切替操作具)と、を具備する。また、切替機構100は、車体に設けられ、主変速レバー20(変速操作具)の変速位置に応じて複数の溝部112(凹部)が形成された支持部110(被係合部)と、主変速レバー20に対して相対移動可能に設けられる係合部130と、を具備し、主変速レバー20(切替操作具)は、係合部130を、溝部112に係合可能な位置と、溝部112に係合不能な位置と、に切り替え可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速操作可能な変速操作具と、
前記変速操作具を段階的に変速操作可能な有段変速操作状態と、前記変速操作具を無段階に変速操作可能な無段変速操作状態と、に切り替え可能な切替機構と、
前記切替機構の状態を切り替える操作が可能な切替操作具と、
を具備する作業車両。
【請求項2】
前記切替機構は、
車体に設けられ、前記変速操作具の変速位置に応じて複数の凹部が形成された被係合部と、
前記変速操作具に対して相対移動可能に設けられる係合部と、
を具備し、
前記切替操作具は、
前記係合部を、前記凹部に係合可能な位置と、前記凹部に係合不能な位置と、に切り替え可能である、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記切替機構は、
前記係合部を前記被係合部に向かって常時付勢する付勢部を具備する、
請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記切替機構は、
前記切替操作具と前記係合部とを連動連結するリンク機構を具備する、
請求項2に記載の作業車両。
【請求項5】
前記切替機構は、
ワイヤーを用いて前記切替操作具と前記係合部とを連動連結するワイヤー機構を具備する、
請求項2に記載の作業車両。
【請求項6】
前記切替機構は、
車体に設けられる第一接触部と、
前記変速操作具に設けられ、前記第一接触部との間の摩擦力によって前記変速操作具の操作を任意の変速位置において規制可能な第二接触部と、
を具備する、
請求項2に記載の作業車両。
【請求項7】
前記被係合部と、前記第一接触部は、共通の部材で構成されている、
請求項6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記切替操作具と、前記変速操作具は、共通の部材で構成されている、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の作業車両。
【請求項9】
前記切替操作具は、
前記変速操作具の把持部により構成され、当該把持部を回動させることで、前記有段変速操作状態と、前記無段変速操作状態と、を切り替える、
請求項8に記載の作業車両。
【請求項10】
前記切替操作具と、前記変速操作具は、異なる部材で構成されている、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速操作可能な変速操作具を具備する作業車両の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変速操作可能な変速操作具を具備する作業車両の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、変速装置を変速操作可能な主変速レバーを備えたトラクタが記載されている。変速レバーや変速ペダル等の変速操作具の変速の方式としては、主変速レバーの停止位置が段階的に決定される有段変速方式と、主変速レバーを任意の位置で停止可能である無段変速方式と、がある。
【0004】
しかしながら、レバーの停止位置が任意である無段変速方式では、停止位置の再現性が低く、狙った速度に調整することが難しいという欠点がある。例えば、トラクタであれば取り付けたインプルメントごとに適切な作業車速が決められており、同一作業は同一車速で行うことが望ましい。一方、レバーの停止位置が決まっている有段変速方式では、停止位置の再現性は高いが、感覚的でスムーズな操作を妨げるほか、速度の微調整が難しいという問題があった。このように、従来の作業車両においては、利便性の点で課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、利便性を向上させることができる作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本開示の一態様においては、変速操作可能な変速操作具と、前記変速操作具を段階的に変速操作可能な有段変速操作状態と、前記変速操作具を無段階に変速操作可能な無段変速操作状態と、に切り替え可能な切替機構と、前記切替機構の状態を切り替える操作が可能な切替操作具と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、利便性を向上させることができる。
すなわち、段階的な変速操作(有段変速)と、無段階の変速操作(無段変速)を任意に切り替えることができるため、作業車両の用途に応じて好ましい操作方法を使用することができる。これによって、作業車両の利便性を向上させることができる。
【0009】
本開示の一態様においては、前記切替機構は、車体に設けられ、前記変速操作具の変速位置に応じて複数の凹部が形成された被係合部と、前記変速操作具に対して相対移動可能に設けられる係合部と、を具備し、前記切替操作具は、前記係合部を、前記凹部に係合可能な位置と、前記凹部に係合不能な位置と、に切り替え可能であるものである。
本開示の一態様によれば、係合部の位置を切り替えることで、有段変速操作状態に切り替えることができる。また、比較的簡素な構成で、有段変速操作状態を実現することができる。
【0010】
本開示の一態様においては、前記切替機構は、前記係合部を前記被係合部に向かって常時付勢する付勢部を具備するものである。
本開示の一態様によれば、係合部を被係合部に向かって常時付勢することで、有段変速操作状態への切り替えを円滑に行うことができる。
【0011】
本開示の一態様においては、前記切替機構は、前記切替操作具と前記係合部とを連動連結するリンク機構を具備するものである。
本開示の一態様によれば、切替機構を比較的簡素な構成とすることができる。
【0012】
本開示の一態様においては、前記切替機構は、ワイヤーを用いて前記切替操作具と前記係合部とを連動連結するワイヤー機構を具備するものである。
本開示の一態様によれば、切替機構を比較的簡素な構成とすることができる。
【0013】
本開示の一態様においては、前記切替機構は、車体に設けられる第一接触部と、前記変速操作具に設けられ、前記第一接触部との間の摩擦力によって前記変速操作具の操作を任意の変速位置において規制可能な第二接触部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、第一接触部と第二接触部との摩擦力を利用して、無段変速操作状態を実現することができる。また係合部を凹部に係合不能な位置に切り替えることで(請求項2参照)、無段変速操作状態に切り替えることができる。
【0014】
本開示の一態様においては、前記被係合部と、前記第一接触部は、共通の部材で構成されているものである。
本開示の一態様によれば、切替機構の構成の簡素化を図ることができる。
【0015】
本開示の一態様においては、前記切替操作具と、前記変速操作具は、共通の部材で構成されているものである。
本開示の一態様によれば、切替機構の構成の簡素化を図ることができる。
【0016】
本開示の一態様においては、前記切替操作具は、前記変速操作具の把持部により構成され、当該把持部を回動させることで、前記有段変速操作状態と、前記無段変速操作状態と、を切り替えるものである。
本開示の一態様によれば、簡易な操作で前記有段変速操作状態と、前記無段変速操作状態と、を切り替えることができる。
【0017】
本開示の一態様においては、前記切替操作具と、前記変速操作具は、異なる部材で構成されているものである。
本開示の一態様によれば、変速操作具とは異なる部材により、前記有段変速操作状態と、前記無段変速操作状態と、を切り替えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一態様によれば、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一態様に係るトラクタの全体的な構成を示した左側面図。
【
図3】有段変速操作状態の主変速レバー及び切替機構等を示した左後方斜視図。
【
図4】係合部及び被支持部等を示した左後方斜視拡大図。
【
図5】(a)係合部及び被支持部を示した正面図。(b)被支持部を示した正面断面図。
【
図7】(a)ボールディテント機構を示した左側面図。(b)同じく、左側面断面図。
【
図8】主変速レバーを後方に動作させた状態を示した左後方斜視図。
【
図9】無段変速操作状態の主変速レバー及び切替機構を示した左後方斜視図。
【
図10】(a)有段変速操作状態における支持部及び係合部を示した左側面一部断面図。(b)無段変速操作状態における支持部及び係合部を示した左側面一部断面図。
【
図11】第二実施形態に係るトラクタにおける、有段変速操作状態の主変速レバー及び切替機構を示した左後方斜視図。
【
図12】無段変速操作状態の主変速レバー及び切替機構を示した左後方斜視図。
【
図13】(a)第三実施形態に係るトラクタにおける主変速レバー及び切替機構を示した右前方斜視図。(b)係合部等を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0021】
以下では、
図1を参照して、本発明の第一実施形態に係るトラクタ1について説明する。
【0022】
トラクタ1は、主として機体フレーム2、エンジン3、トランスミッションケース4、前輪5、後輪6、フェンダ7、キャビン8、座席9等を具備する。
【0023】
機体フレーム2は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。機体フレーム2は、平面視略矩形状に形成される。機体フレーム2は、その長手方向を前後方向に向けてトラクタ1の前部に設けられる。エンジン3は、機体フレーム2の後部に配置される。エンジン3の後部には、トランスミッションケース4が固定される。
【0024】
機体フレーム2の前部は、フロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前輪5に支持される。トランスミッションケース4の後部は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪6に支持される。左右一対の後輪6は、概ね上方からフェンダ7によって覆われる。
【0025】
トランスミッションケース4には、変速装置(不図示)が収容される。前記変速装置としては、例えばHST(Hydro-Static Transmission)やCVT(Continuously Variable Transmission)のように、無段階に変速比を変更可能な無段変速装置が用いられる。エンジン3の動力は、前記変速装置(不図示)で変速された後、前記フロントアクスル機構を経て前輪5に伝達可能とされると共に、前記リアアクスル機構を経て後輪6に伝達可能とされる。エンジン3の動力によって前輪5及び後輪6が回転駆動され、トラクタ1は走行することができる。
【0026】
エンジン3の後方にはキャビン8が設けられる。キャビン8の内部には、作業者が搭乗する居住空間が形成される。キャビン8の略中央には、作業者が着座するための座席9が配置される。
【0027】
キャビン8には、
図2に示す副変速レバー10及び主変速レバー20等の種々の操作具が設けられる。副変速レバー10及び主変速レバー20は、座席9の左方のフェンダ7の近傍に設けられ、前記変速装置を操作可能に構成される。またトラクタ1は、当該主変速レバー20の状態を切り替える切替機構100(
図2等参照)を具備する。
【0028】
以下では、
図2、
図3及び
図7を参照して、主変速レバー20の構成について説明する。
【0029】
主変速レバー20は、前後進の切換え操作や走行速度の変更操作を行うためのものである。主変速レバー20は、前後に動作させることで前記変速装置を操作し、これによりトラクタ1を変速させることができる。
【0030】
また、主変速レバー20は、後述する切替機構100の状態を切り替える操作を行うことができる。主変速レバー20は、切替機構100と接続される。主変速レバー20は、後述する把持部21を回動させることにより、切替機構100の状態を切り替えることができる。
【0031】
主変速レバー20は、主として把持部21、把持部回動軸22、筒状体23、レバー本体部24及びレバー回動軸25を具備する。
【0032】
図2及び
図3に示す把持部21は、操作者が主変速レバー20を操作する際に把持する部分である。把持部21は、操作者が把持し易い適宜の形状に形成される。
【0033】
図2、
図3及び
図7に示す把持部回動軸22は、把持部21を回動させるためのものである。把持部回動軸22は、その上端が把持部21の下端に固定され、把持部21の下端から略下方(後下方)に延びるように形成される。把持部回動軸22には、凹部22aが形成される。
【0034】
図7(b)に示す凹部22aは、把持部回動軸22の外面が凹むように形成される。凹部22aは、後述するボール162と対応する形状に形成される。凹部22aは、把持部21の回動位置に応じて、把持部回動軸22の周方向に間隔をあけて2つ形成される。
【0035】
図2、
図3及び
図7に示す筒状体23は、円筒状に形成される部材である。筒状体23は、当該筒状体23の軸線が把持部回動軸22の軸線と一致するように設けられる。筒状体23は、その内部に把持部回動軸22の一部を挿通するように設けられる。筒状体23は、把持部回動軸22を軸線回りに回動可能に支持する。筒状体23には、凹部23a及び貫通孔23bが形成される。
【0036】
図7に示す凹部23aは、筒状体23の外面の一部(前部)が凹むように形成される。図示はしていないが、凹部23aは、略正面視(後述するボールディテント機構160の筒状体161の軸線方向視)において、筒状体161の外形と略同じ形状に形成される。
【0037】
図7(b)に示す貫通孔23bは、後述するボールディテント機構160のボール162が挿通される部分である。貫通孔23bは、筒状体23の側部のうち凹部23aが形成された部分が径方向に貫通するように形成される。貫通孔23bは、略正面視(後述するボールディテント機構160の筒状体161の軸線方向視)においてボールディテント機構160のボール162の外形と略同じ形状に形成される。
【0038】
図2から
図4に示すレバー本体部24は、主変速レバー20の主たる構造体を構成する部分である。レバー本体部24は、当該レバー本体部24の上端部が筒状体23の右部に固定され、筒状体23の右部から適宜屈曲しながら右下方に延びるように形成される。
【0039】
図2及び
図3に示すレバー回動軸25は、主変速レバー20を回動させるためのものである。レバー回動軸25は、レバー本体部24の下端に固定され、レバー本体部24の下端から右方に延びるように形成される。レバー回動軸25は、トラクタ1の車体に回動可能に支持される。
【0040】
このように形成された主変速レバー20は、レバー回動軸25回りに前後に揺動することができる。主変速レバー20は、前後に揺動させることにより前記変速装置を操作し、トラクタ1を変速させることができる。より詳細には、主変速レバー20の操作量は、主変速レバー20の下部に接続されたリンク機構26を介して変速センサ27によって検知される(
図2参照)。検知された操作量に応じて、図示せぬアクチュエータが作動し、前記変速装置の変速比が変更される。このように、本実施形態では、主変速レバー20の操作に基づいて変速装置の変速比が電気的に制御される構成を例示しているが、本発明はこれに限るものではなく、主変速レバー20と変速装置を機械的に連結して変速比を変更する構成に適用することもできる。
【0041】
次に、
図2から
図7等を参照して、切替機構100の構成について説明する。
【0042】
切替機構100は、主変速レバー20を有段変速操作状態と無段変速操作状態とに切り替え可能なものである。有段変速操作状態及び無段変速操作状態の詳細については、後述する。
【0043】
切替機構100は、主として支持部110、被支持部120、係合部130、ワイヤー機構140、付勢部150及びボールディテント機構160を具備する。
【0044】
図2から
図4及び
図6に示す支持部110は、主変速レバー20等を支持する部分である。支持部110は、トラクタ1の車体に設けられる。支持部110は、板面を左右方向に向けた板状に形成される。支持部110は、主変速レバー20の上下中途部の左方に設けられる。支持部110の上端は、側面視において、レバー回動軸25の軸線を中心とした円弧状に形成される。支持部110には、挿通孔111及び溝部112が形成される。
【0045】
図2から
図4に示す挿通孔111は、後述する被支持部120を挿通する部分である。挿通孔111は、支持部110の中央付近に形成される。挿通孔111は、側面視において、レバー回動軸25の軸線を中心とした円弧状に形成される。これにより、挿通孔111は、側面視において、支持部110の上端と同心円弧状に形成される。
【0046】
図2から
図4及び
図6に示す溝部112は、後述する係合部130(第二スペーサ134)が係合される部分である。溝部112は、支持部110の上端が略下方に凹むように形成される。溝部112は、側面視略円弧状に形成される。溝部112は、支持部110の上端に沿って連続的に並ぶように、主変速レバー20の変速位置に応じて複数形成される。
【0047】
図2から
図5に示す被支持部120は、主変速レバー20に設けられ、支持部110に支持される部分である。被支持部120は、カラー121、バネ122、摩擦板123、ナット124及びボルト125を具備する。
【0048】
図3から
図5に示すカラー121は、円筒状に形成される。カラー121は、軸線を左右方向に向けて、レバー本体部24の上下中途部に設けられた貫通孔に、嵌合及び固定される。カラー121は、レバー本体部24の左側及び右側に突出するように設けられる。
【0049】
図5(b)に示すバネ122は、付勢力を発生させるものであり、例えば圧縮コイルスプリングである。バネ122は、伸縮方向をカラー121の軸線方向に向けて、カラー121の内部に配置される。
【0050】
図3から
図5に示す摩擦板123は、支持部110との間に摩擦力を発生させるものである。摩擦板123は、円環板状に形成される。摩擦板123は、板面を左右方向に向けて、支持部110の左側及び右側にそれぞれ設けられる。以下、支持部110の左側に設けられる摩擦板123を摩擦板123a、支持部110の右側に設けられる摩擦板123を摩擦板123bと称することもある。
【0051】
摩擦板123aは、その右面が支持部110の左面に接触するように設けられる。摩擦板123bは、その左面が支持部110の右面に接触するように設けられる。摩擦板123は、側面視において、当該摩擦板123の中心がカラー121の軸線と略一致するように配置される。
【0052】
図3から
図5に示すナット124は、カラー121の右側に設けられる。ナット124は、その軸線方向がカラー121の軸線と略一致するように配置される。
【0053】
図3から
図5に示すボルト125は、摩擦板123aの左方からカラー121(バネ122)の内側に挿通され、ナット124に締結される。これにより、バネ122は圧縮された状態で、カラー121の内部に配置される。バネ122の付勢力及びボルト125の締結力により、摩擦板123a及び摩擦板123bは、支持部110に押し付けられた状態となる。
【0054】
このように構成された被支持部120は、摩擦板123と支持部110との間の摩擦力によって、主変速レバー20を任意の変速位置において保持することができる。これにより、被支持部120は、主変速レバー20の操作を任意の変速位置において規制することができる。
【0055】
図2から
図6に示す係合部130は、支持部110の溝部112に係合するものである。係合部130は、支持部110の上方に設けられる。係合部130は、後述するバネ取付部151を介して、主変速レバー20と接続される。これにより、係合部130は、主変速レバー20の前後の揺動に伴って、支持部110の上端に沿って(レバー回動軸25の軸線を中心として円弧状に)移動することができる。
【0056】
また、係合部130は、後述するワイヤー機構140の動作によって、主変速レバー20に対して相対移動可能に設けられる。具体的には、係合部130は、溝部112に係合可能な位置(
図10(a)参照)と、溝部112に係合不能な位置(
図10(b)参照)と、に移動可能に設けられる。係合部130は、プレート131、第一スペーサ132、第一リベット133、第二スペーサ134及び第二リベット135を具備する。
【0057】
図3から
図6に示すプレート131は、係合部130の主たる構造体を構成するものである。プレート131は、本体部131a及びバネ取付部131bを具備する。
【0058】
図4から
図6に示す本体部131aは、後述する第一スペーサ132及び第二スペーサ134を支持する部分である。本体部131aは、開放側を略下方に向けた正面視略U字状に形成される。
【0059】
図4及び
図6に示すバネ取付部131bは、後述するバネ152と接続される部分である。なお、
図5(a)においては、バネ152の図示を省略している。バネ取付部131bは、本体部131aの後端に設けられる。バネ取付部131bには、バネ152の上端が係合される取付孔131cが形成される(
図4及び
図5(a)参照)。
【0060】
図6に示す第一スペーサ132は、円筒状に形成される部材である。第一スペーサ132は、軸線を左右方向に向けて、本体部131aの前部内側に配置される。第一スペーサ132は、第一リベット133によって本体部131aに固定される。
【0061】
図3から
図6に示す第二スペーサ134は、円筒状に形成される部材である。第二スペーサ134は、軸線を左右方向に向けて、本体部131aの後部内側に配置される。第二スペーサ134は、第一スペーサ132の後方(後上方)に設けられる。第二スペーサ134は、第二リベット135によって本体部131aに固定される。第二スペーサ134の外径は、支持部110の溝部112に係合可能な大きさに形成される。
【0062】
図2から
図4及び
図6に示すワイヤー機構140は、ワイヤー143を用いて主変速レバー20と係合部130とを連動連結するものである。ワイヤー機構140は、第一回動板141、第二回動板142、ワイヤー143、第一取付部144、第一ピン145、第二取付部146及び第二ピン147を具備する。
【0063】
図2及び
図3に示す第一回動板141は、主変速レバー20の把持部回動軸22の下端に設けられ、把持部回動軸22と一体的に回動する。第一回動板141は、主変速レバー20の筒状体23の下方に形成される。第一回動板141は、板面を把持部回動軸22の軸線方向に向けて、把持部回動軸22の下端から略後方に延びるように形成される。
【0064】
図3に示す第二回動板142は、板面を略前後方向に向けて、主変速レバー20のレバー本体部24に左右に揺動可能に設けられる。第二回動板142は、第一回動板141の右方に設けられる。より詳細には、第二回動板142は、第一回動板141が右方に回動したときに、当該第二回動板142の上端部が第一回動板141によって押圧可能な位置に設けられる(
図7(a)参照)。
【0065】
図2から
図4及び
図6に示すワイヤー143は、第二回動板142と係合部130とを連結するように設けられる。ワイヤー143は、可撓性を有する材料で形成される。ワイヤー143の上端には、第一取付部144が接続される(
図3参照)。第二回動板142及び第一取付部144に第一ピン145が挿通及び固定されることによって、ワイヤー143の上端が第二回動板142の下部と接続される。ワイヤー143の下端には、第二取付部146が接続される(
図3及び
図4参照)。係合部130の本体部131aの上面に固定された第二ピン147に、第二取付部146が挿通されることによって、ワイヤー143の下端が係合部130の後部と接続される。
【0066】
図3から
図5に示す付勢部150は、係合部130を支持部110に向かって常時付勢するものである。付勢部150は、バネ取付部151及びバネ152を具備する。
【0067】
図4、
図5(a)及び
図6に示すバネ取付部151は、後述するバネ152を取り付けるためのものである。バネ取付部151は、正面視略L字状に形成される。
図4に示すように、バネ取付部151の下端は、レバー本体部24の左面に溶接等により固定される。
図5(a)及び
図6に示すように、バネ取付部151の上端は、プレート131に対して、第一リベット133によって第一スペーサ132と共締めされる。このようにして、バネ取付部151は、係合部130を主変速レバー20に接続する。
【0068】
図3及び
図4に示すバネ152は、係合部130を略下方に付勢するものである。バネ152は、例えば引張コイルばねである。
図4に示すように、バネ152の上端は、係合部130のバネ取付部131bの取付孔131cに係合される。バネ152の下端は、バネ取付部151の取付孔151aに係合される。
【0069】
このように構成された付勢部150が設けられることにより、係合部130の後部は、バネ152によって略下方に付勢される。これにより、係合部130の第二スペーサ134は、支持部110の溝部112に係合される。
【0070】
図2、
図3及び
図7に示すボールディテント機構160は、主変速レバー20の把持部回動軸22を所定の回動位置において保持するものである。ボールディテント機構160は、主変速レバー20の筒状体23の前方に設けられる。ボールディテント機構160は、筒状体161、ボール162、バネ163、ナット164及びボルト165を具備する。
【0071】
図3及び
図7に示す筒状体161は、円筒状に形成される部材である。筒状体161は、当該筒状体161の軸線が把持部回動軸22の軸線と垂直となるように配置される。筒状体161の後端部は、主変速レバー20の筒状体23の凹部23aに嵌合される。
【0072】
図7(b)に示すボール162は、球状に形成される部材である。ボール162は、筒状体161の内部において、主変速レバー20の筒状体23の貫通孔23bに収容される。
【0073】
図7(b)に示すバネ163は、ボール162を把持部回動軸22に向けて付勢するものである。バネ163は、例えば圧縮コイルばねである。バネ163は、伸縮方向を筒状体161の軸線方向(把持部回動軸22の軸線と垂直な方向)に向けて筒状体161の内部に配置される。バネ163は、ボール162の略前方に配置される。
【0074】
図3及び
図7に示すナット164は、当該ナット164の軸線が筒状体161の軸線と一致するように、筒状体161の前端部に固定される。
【0075】
図3及び
図7に示すボルト165は、ナット164の略前方から当該ナット164に締結される。また、ボルト165の一部(前部)は、筒状体161の内部に挿通される。これにより、バネ163は、圧縮された状態で筒状体161内に保持される。
【0076】
このようにボールディテント機構160が構成されることにより、バネ163の付勢力によりボール162が把持部回動軸22に押し付けられる。把持部21(把持部回動軸22)が
図3に示す回動位置に位置するときに、ボール162が把持部回動軸22の一方の凹部22aに嵌まり込む。また、把持部21(把持部回動軸22)が
図9に示す回動位置に位置するときに、ボール162が把持部回動軸22の他方の凹部22aに嵌まり込む。このようにして、ボールディテント機構160は、把持部21(把持部回動軸22)を2つの回動位置(
図3及び
図9)で保持することができる。
【0077】
以下、有段変速操作状態及び無段変速操作状態について説明する。有段変速操作状態とは、主変速レバー20を段階的に変速操作可能な状態を意味する。また、無段変速操作状態は、主変速レバー20を無段階に変速操作可能な状態を意味する。
【0078】
有段変速操作状態において、係合部130の第二スペーサ132aは、複数の溝部112のいずれかに係合している(
図10(a)参照)。一方、無段変速操作状態において、係合部130の第二スペーサ132aは、複数の溝部112のいずれにも係合していない(
図10(b)参照)。これにより、有段変速操作状態においては、主変速レバー20を段階的に変速操作可能とすることができる。また、無段変速操作状態においては、主変速レバー20を無段階に変速操作可能とすることができる。
【0079】
以下、
図3、
図9及び
図10を用いて、主変速レバー20を有段変速操作状態から無段変速操作状態に切り替えるときの主変速レバー20及び切替機構100の動作について説明する。
【0080】
まず、操作者は、把持部21を平面視反時計回り方向に回動させ、
図3に示す状態から
図9に示す状態とする。把持部21は、操作者が把持部21から手を放しても、ボールディテント機構160により
図9に示す位置で保持される。
【0081】
図9に示すように、把持部21を平面視反時計回り方向に回動させると、把持部回動軸22とともに第一回動板141が平面視反時計回り方向に回動し、第二回動板142を右方に押圧する。これにより、第二回動板142は、背面視時計回り方向に回動する。
【0082】
図9に示すように、第二回動板142が背面視時計回り方向に回動すると、第二回動板142の下部が上方に移動する。そうすると、第二回動板142の下部に固定されたワイヤー143が上方に引っ張られる。
【0083】
これにより、係合部130の後部に上方への力が付与される。ここで、第一スペーサ132はレバー本体部24に固定されている。このため、
図10(b)に示すように、係合部130は、バネ152の付勢力に抗して第一スペーサ132の軸線回りに左側面視反時計回り方向に回動し、第二スペーサ134が上方に移動する。
【0084】
これにより、係合部130の第二スペーサ134は溝部112から離間し、溝部112と係合しない状態となる。このとき、係合部130は、ボールディテント機構160によって把持部21が所定の回動位置で保持されることにより、溝部112と係合しない位置で保持される。
【0085】
こうして、主変速レバー20を、
図10(a)に示す有段変速操作状態から、
図10(b)に示す無段変速操作状態に切り替えることができる。
【0086】
無段変速操作状態において変速操作を行う際には、主変速レバー20をレバー回動軸25回りに前後へ揺動させる(
図8参照)。無段変速操作状態では、係合部130の第二スペーサ134は溝部112に係合していないので、主変速レバー20を任意の位置で停止することができる。主変速レバー20は、支持部110との間の摩擦板123の摩擦力により、任意の停止位置で保持される。こうして、主変速レバー20の停止位置が変更され、トラクタ1の変速操作を行うことができる。
【0087】
一方、主変速レバー20を無段変速操作状態から有段変速操作状態に切り替えるときには、操作者は、把持部21を平面視時計回り方向に回動させ、
図9に示す状態から
図3に示す状態とする。把持部21は、操作者が把持部21から手を放しても、ボールディテント機構160により
図3に示す位置で保持される。
【0088】
把持部21を平面視時計回り方向に回動させると、把持部回動軸22とともに第一回動板141が平面視時計回り方向に回動し、第二回動板142の右方への押圧が解除される。そうすると、バネ152による係合部130の後部に対する下方への付勢力により、係合部130は、第一スペーサ132の軸線回りに左側面視時計回り方向に回動し、第二スペーサ134が下方に移動する。
【0089】
これにより、係合部130の第二スペーサ134は溝部112に近接し、溝部112と係合した状態となる。これにより、係合部130は、
図10(a)に示す溝部112と係合する位置で保持される。
【0090】
こうして、主変速レバー20を、
図10(b)に示す無段変速操作状態から、
図10(a)に示す有段変速操作状態に切り替えることができる。
【0091】
有段変速操作状態において変速操作を行う際には、主変速レバー20をレバー回動軸25回りに前後へ揺動させる(
図8参照)。有段変速操作状態では、係合部130の第二スペーサ134は溝部112に係合しているが、主変速レバー20が操作されると、第二スペーサ134はバネ152の略下方への付勢力に逆らって溝部112を乗り越える。主変速レバー20が操作されていない状態となると、第二スペーサ134はバネ152の略下方への付勢力によっていずれかの溝部112に係合する。このため、主変速レバー20の停止位置が、溝部112に応じて段階的に決定されることとなる。こうして、主変速レバー20の停止位置が変更され、トラクタ1の変速操作を行うことができる。
【0092】
以上のように、本実施形態に係るトラクタ1においては、有段変速操作状態と無段変速操作状態とを任意に切り替えることができるため、用途に応じて好ましい操作方法を使用することができる。これによって、トラクタ1の利便性を向上させることができる。
【0093】
例えばトラクタ1においては、取り付けたインプルメントごとに適切な作業車速が決められている。このため、同一作業は同一車速で行うことが望ましい。そこで、切替機構100を有段変速操作状態に切り替えることにより、決められた車速にし易くすることができる。
【0094】
一方、細やかな車速の調整が必要な場合には、切替機構100を無段変速操作状態に切り替えることができる。これにより、感覚的でスムーズな操作を可能とし、速度の微調整を可能とすることができる。
【0095】
また、係合部130は付勢部150によって溝部112に向かって常時付勢されているため、有段変速操作状態への切り替えを円滑に行うことができる。
【0096】
また、溝部112が形成された部材と、摩擦板123が接触する部材とが、共通の部材(支持部110)で構成されているため、切替機構100の構成の簡素化を図ることができる。
【0097】
また、切替機構100の状態を切り替える操作を行うための部材と、変速操作するための部材とが、共通の部材(主変速レバー20)で構成されているため、切替機構100の構成の簡素化を図ることができる。
【0098】
また、把持部21を回動させることで、有段変速操作状態と無段変速操作状態とを切り替えることができるため、簡易な操作で切替作業を行うことができる。
【0099】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1は、
変速操作可能な主変速レバー20(変速操作具)と、
前記主変速レバー20を段階的に変速操作可能な有段変速操作状態と、前記主変速レバー20を無段階に変速操作可能な無段変速操作状態と、に切り替え可能な切替機構100と、
前記切替機構100の状態を切り替える操作が可能な主変速レバー20(切替操作具)と、
を具備するものである。
【0100】
このように構成することにより、利便性を向上させることができる。
すなわち、段階的な変速操作(有段変速)と、無段階の変速操作(無段変速)を任意に切り替えることができるため、作業車両の用途に応じて好ましい操作方法を使用することができる。これによって、作業車両の利便性を向上させることができる。
【0101】
また、前記切替機構100は、
車体に設けられ、前記主変速レバー20(変速操作具)の変速位置に応じて複数の溝部112(凹部)が形成された支持部110(被係合部)と、
前記主変速レバー20に対して相対移動可能に設けられる係合部130と、
を具備し、
前記主変速レバー20(切替操作具)は、
前記係合部130を、前記溝部112に係合可能な位置と、前記溝部112に係合不能な位置と、に切り替え可能である。
【0102】
このように構成することにより、係合部130の位置を切り替えることで、有段変速操作状態に切り替えることができる。また、比較的簡素な構成で、有段変速操作状態を実現することができる。
【0103】
また、前記切替機構100は、
前記係合部130を前記支持部110(被係合部)に向かって常時付勢する付勢部150を具備するものである。
【0104】
このように構成することにより、係合部130を支持部110に向かって常時付勢することで、有段変速操作状態への切り替えを円滑に行うことができる。
【0105】
また、前記切替機構100は、
ワイヤー143を用いて前記主変速レバー20(切替操作具)と前記係合部130とを連動連結するワイヤー機構140を具備するものである。
【0106】
このように構成することにより、切替機構100を比較的簡素な構成とすることができる。
【0107】
また、前記切替機構100は、
車体に設けられる支持部110(第一接触部)と、
前記主変速レバー20(変速操作具)に設けられ、前記支持部110との間の摩擦力によって前記主変速レバー20の操作を任意の変速位置において規制可能な被支持部120(第二接触部)と、
を具備するものである。
【0108】
このように構成することにより、支持部110(第一接触部)と被支持部120(第二接触部)との摩擦力を利用して、無段変速操作状態を実現することができる。また係合部130を溝部112に係合不能な位置に切り替えることで、無段変速操作状態に切り替えることができる。
【0109】
また、前記被係合部と、前記第一接触部は、共通の部材(支持部110)で構成されているものである。
【0110】
このように構成することにより、切替機構100の構成の簡素化を図ることができる。
【0111】
また、前記切替操作具と、前記変速操作具は、共通の部材(主変速レバー20)で構成されているものである。
【0112】
このように構成することにより、切替機構100の構成の簡素化を図ることができる。
【0113】
また、前記主変速レバー20(切替操作具)は、
前記主変速レバー20(変速操作具)の把持部21により構成され、当該把持部21を回動させることで、前記有段変速操作状態と、前記無段変速操作状態と、を切り替えるものである。
【0114】
このように構成することにより、簡易な操作で前記有段変速操作状態と、前記無段変速操作状態と、を切り替えることができる。
【0115】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、本発明に係る作業車両の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る主変速レバー20は、本発明に係る変速操作具及び切替操作具の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る支持部110は、本発明に係る第一接触部及び被係合部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る被支持部120は、本発明に係る第二接触部の実施の一形態である。
【0116】
以下、
図11及び
図12を用いて、第二実施形態に係るトラクタ1Aについて説明する。
【0117】
第二実施形態に係るトラクタ1Aが第一実施形態に係るトラクタ1と異なる点は、切替機構100に代えて切替機構200を具備する点である。また、切替機構200が切替機構100と異なる点は、係合部130に替えて係合部230を具備し、ワイヤー機構140に替えてリンク機構240を具備する点である。よって以下では、第一実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0118】
係合部230は、支持部110の溝部112に係合するものである。係合部230が第一実施形態の係合部130と異なる点は、さらにリンク係合部231bを具備する点である。よって以下では、第一実施形態の係合部130と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0119】
リンク係合部231bは、後述するリンク機構240と接続される部分である。リンク係合部231bは、本体部131aの上部後側に固定される。リンク係合部231bは、側面視略L字状に形成される。リンク係合部231bは、本体部131aの上部から略上方に延びるとともに、屈曲して略後方に延びるように形成される。
【0120】
リンク機構240は、主変速レバー20と係合部230とを連動連結するものである。リンク機構240は、第一回動板141、ロッド242及びアーム243を具備する。第一回動板141については、第一実施形態のとおりであるので、説明を省略する。
【0121】
ロッド242は、第一回動板141と後述するアーム243とを連結するように設けられる。ロッド242は、可撓性を有しない長手の棒状に形成される。ロッド242の上端は、第一回動板141の先端(径方向外側)に挿通される。ロッド242は、第一回動板141の先端から、適宜屈曲しながら略右下方に延びるように形成される。ロッド242は、その下端がリンク係合部231bよりも右方かつ上方まで延びるように形成される。
【0122】
アーム243は、板面を略前後方向に向けて、主変速レバー20のレバー本体部24に左右に揺動可能に設けられる。アーム243は、略L字の板状に形成される。アーム243の上端には、ロッド242の下端が挿通される。アーム243は、ロッド242の下端から略下方に延びるとともに、屈曲して略左方に延びるように形成される。アーム243は、その左端がリンク係合部231bの下方まで延びるように形成される。
【0123】
以下、
図11及び
図12を用いて、主変速レバー20を有段変速操作状態から無段変速操作状態に切り替えるときの主変速レバー20及び切替機構200の動作について説明する。
【0124】
まず、操作者は、把持部21を平面視反時計回り方向に回動させ、
図11に示す状態から
図12に示す状態とする。把持部21は、操作者が把持部21から手を放しても、ボールディテント機構160により
図12に示す位置で保持される。
【0125】
図12に示すように、把持部21を平面視反時計回り方向に回動させると、把持部回動軸22とともに第一回動板141が平面視反時計回り方向に回動する。すると、第一回動板141の先端とアーム243の回動中心との間の距離が短くなるため、アーム243は背面視時計回りに回動し、アーム243の左端が上方に持ち上がる。リンク係合部231bは、アーム243の左端により上方に持ち上げられる。
【0126】
これにより、係合部130の後部に上方への力が付与される。ここで、第一スペーサ132はバネ取付部151を介してレバー本体部24に固定されている。このため、係合部130は、バネ152の付勢力に抗して第一スペーサ132の軸線回りに左側面視反時計回り方向に回動し、第二スペーサ134が上方に移動する(
図10(b)参照)。
【0127】
これにより、係合部130の第二スペーサ134は溝部112から離間し、溝部112と係合しない状態となる。このとき、係合部130は、ボールディテント機構160によって把持部21が所定の回動位置で保持されることにより、溝部112と係合しない位置で保持される。
【0128】
こうして、主変速レバー20を、有段変速操作状態から無段変速操作状態に切り替えることができる。
【0129】
以上の如く、前記切替機構200は、
前記主変速レバー20と前記係合部230とを連動連結するリンク機構240を具備するものである。
【0130】
このように構成することにより、切替機構200を比較的簡素な構成とすることができる。
【0131】
以下、
図13を用いて、第三実施形態に係るトラクタ1Bについて説明する。
【0132】
第三実施形態に係るトラクタ1Bが第一実施形態に係るトラクタ1と異なる点は、切替機構100に代えて切替機構300を具備する点である。よって以下では、第一実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0133】
切替機構300は、支持部310、被支持部120、係合部330及び切替操作具340を具備する。被支持部120については、第一実施形態のとおりであるので、説明を省略する
【0134】
支持部310は、主変速レバー20等を支持する部分である。支持部310は、トラクタ1の車体に設けられる。支持部310は、板面を左右方向に向けた板状に形成される。支持部310は、主変速レバー20の上下中途部の右方に設けられる。支持部310には、挿通孔311及び凹部312が形成される。
【0135】
挿通孔311は、被支持部120を挿通する部分である。挿通孔311は、支持部310の中央付近に形成される。挿通孔311は、側面視において、レバー回動軸25(
図2及び
図3参照)の軸線を中心とした円弧状に形成される。
【0136】
凹部312は、後述する係合部330(ボール333)が係合される部分である。凹部312は、支持部310の右面が凹むように形成される。凹部312は、後述するボール333と対応する形状に形成される。凹部312は、側面視においてレバー回動軸25の軸線を中心とした円弧(挿通孔311と同心の円弧)に沿って、主変速レバー20の変速位置に応じて複数形成される。
【0137】
係合部330は、支持部310の凹部312に係合するものである。係合部330は、支持部310の右方に設けられる。係合部330は、筒状体331、固定部332、ボール333、バネ334、移動体335、支持板336及びローラー337を具備する。
【0138】
筒状体331は、円筒状に形成される部材である。筒状体331は、当該筒状体331の軸線を左右方向に向けて配置される。
【0139】
固定部332は、筒状体331を主変速レバー20のレバー本体部24に固定するものである。固定部332は、正面視略L字状に形成され、下端が略左方に屈曲するように設けられる。固定部332の下端は、レバー本体部24に固定される。固定部332の上下中途部には、筒状体331の左部が嵌合される。
【0140】
図13(b)に示すボール333は、球状に形成される部材である。ボール333は、筒状体331の内部に設けられる。
【0141】
図13(b)に示すバネ334は、ボール333を支持部310に向けて付勢するものである。バネ334は、例えば圧縮コイルばねである。バネ334は、伸縮方向を筒状体331の軸線方向に向けて筒状体331の内部に配置される。バネ334は、ボール333の右方に配置される。
【0142】
図13(b)に示す移動体335は、筒状体331の内部を移動可能なものである。移動体335は、略円柱状に形成され、軸線を筒状体331の軸線方向に向けて筒状体331の内部に配置される。移動体335は、バネ334の右方に配置される。
【0143】
支持板336は、後述するローラー337を支持するものである。支持板336は、板面を略前後方向に向けて、筒状体331の前部及び後部にそれぞれ設けられる。支持板336は、筒状体331の右端から右方に突出するように設けられる。
【0144】
ローラー337は、回転可能なものである。ローラー337は、軸線を略前後方向に向けて移動体335の右方に配置される。ローラー337は、移動体335に接触する位置に設けられる。ローラー337には、回動軸337a回りに回動可能に設けられる。
【0145】
回動軸337aは、軸線を略前後方向に向けた状態で、前後の支持板336によって回動可能に支持される。回動軸337aは、ローラー337の軸線から偏心した位置に設けられる。具体的には、回動軸337aは、その軸線がローラー337の軸線よりも右方に位置するように設けられる。
【0146】
切替操作具340は、切替機構300の状態を切り替える操作を行うためのものである。切替操作具340は、略矩形の板状に形成され、板面を左右方向に向けて設けられる。切替操作具340は、ローラー337の回動軸337aの前端に固定される。
【0147】
このように構成された切替機構300において、切替操作具340を操作することにより、ローラー337を回動させることができる。ローラー337の回動軸337aは偏心しているので、ローラー337を回動軸337a回りに回動させることにより、移動体335は左右方向に変位する。移動体335が左右方向に変位することにより、ボール333が凹部312に押し付けられる力も変化する。具体的には、バネ334の付勢力に抗して移動体335を左方に変位させることにより、ボール333が凹部312に押し付けられる力が比較的強い状態となる。一方、バネ334の付勢力によって移動体335を右方に変位させることにより、ボール333が凹部312に押し付けられる力が比較的弱い状態となる。
【0148】
切替操作具340を操作して移動体335を左方に変位させることにより、主変速レバー20を有段変速操作状態に切り替えることができる。具体的には、移動体335を左方に変位させると、ボール333が左方へと押し付けられる力が比較的強くなるため、ボール333が近くの凹部312に嵌り込む。これによって、主変速レバー20は複数の凹部312に対応する位置でのみ停止させることができる、有段変速操作状態となる。
【0149】
一方、切替操作具340を操作して移動体335を右方に変位させることにより、主変速レバー20を無段変速操作状態に切り替えることができる。具体的には、移動体335を右方に変位させると、ボール333が左方へと押し付けられる力が比較的弱くなる。この状態では、ボール333が凹部312に嵌り込もうとする力よりも、主変速レバー20の回動支点に設けられた摩擦板123(
図5参照)による主変速レバー20を停止させる力の方が強くなる。これによって、主変速レバー20は、凹部312の位置にかかわらず任意の位置で停止させることができる、無段変速操作状態となる。
【0150】
このように、切替操作具340を操作することにより、有段変速操作状態と無段変速操作状態とを切り替えることができる。
【0151】
以上の如く、第三実施形態に係るトラクタ1Bにおいては、切替操作具340と、前記主変速レバー20(変速操作具)は、異なる部材で構成されているものである。
【0152】
このように構成することにより、前記主変速レバー20(変速操作具)とは異なる部材により、有段変速操作状態と無段変速操作状態とを切り替えることができる。
【0153】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0154】
例えば、各実施形態に係る作業車はトラクタ1であるものとしたが、本発明に係る作業車両の種類はこれに限定されるものでない。本発明に係る作業車両は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
【0155】
また、第一実施形態及び第二実施形態においては、主変速レバー20によって有段変速操作状態と無段変速操作状態とを切り替える際には、把持部21を回動させる操作を行うものとしたが、他の方法で切り替え操作を行ってもよい。例えば、主変速レバー20に任意の操作具(ボタン、スイッチ、レバー等)を設け、当該操作具と連動するように有段変速操作状態と無段変速操作状態とを切り替えるようにしてもよい。
【0156】
また、第一実施形態及び第二実施形態においては、それぞれワイヤー機構140及びリンク機構240によって、主変速レバー20と係合部130とを連動連結するものとしたが、主変速レバー20と係合部130とを連動連結する機構は任意の構造とすることができる。例えば、主変速レバー20(把持部21)の回動をセンサで検出し、アクチュエータを電気的に制御することで係合部130を連動させるようにしてもよい。
【0157】
また、第三実施形態においては、切替操作具340によって有段変速操作状態と無段変速操作状態とを切り替える操作を行うものとしたが、第一実施形態及び第二実施形態のように主変速レバー20によって有段変速操作状態と無段変速操作状態とを切り替える機構を併せ持っていてもよい。すなわち、主変速レバー20及び切替操作具340の両方によって有段変速操作状態と無段変速操作状態とを切り替え可能な構造としてもよい。
【0158】
また、各部材の形状は一例であり、目的を達成できる限りにおいて任意の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0159】
1,1A,1B トラクタ
20 主変速レバー
100,200,300 切替機構
110 支持部
112 溝部
120 被支持部
123 摩擦板
130,230,330 係合部
140 ワイヤー機構
150 付勢部
240 リンク機構
340 切替操作部