(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006363
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】腕金用の固定具
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20240110BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20240110BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G1/02
F16B2/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107174
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000115382
【氏名又は名称】ヨツギ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池側 勝己
(72)【発明者】
【氏名】林 泰三
(72)【発明者】
【氏名】石積 智和
(72)【発明者】
【氏名】橋本 樹
【テーマコード(参考)】
3J022
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
3J022EB14
3J022EC17
3J022EC23
3J022ED22
3J022FA05
3J022GA06
3J022GA16
3J022GB23
3J022HA03
5G352AC01
5G367AC02
5G367AD09
(57)【要約】
【課題】より容易に腕金に固定できる腕金用の固定具を提供する。
【解決手段】腕金2に他の部材を固定するための腕金用の固定具1であって、本体10と、一端11aが本体10の一端10aに回動可能に取り付けられ、他端11bが本体10の他端10bに固定可能に設けられた可動部11とを備え、可動部11の他端11bが本体10の他端10bに固定されることで、少なくとも腕金2の周囲を囲むことができる矩形の枠体を形成するように構成されており、可動部11の他端11bが本体10の他端10bに押付けられることで、可動部11の他端11bが本体10の他端10bに固定されるように構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕金に他の部材を固定するための腕金用の固定具であって、
本体と、
一端が前記本体の一端に回動可能に取り付けられ、他端が前記本体の他端に固定可能に設けられた可動部と
を備え、
前記可動部の前記他端が前記本体の前記他端に固定されることで、少なくとも前記腕金の周囲を囲むことができる矩形の枠体を形成するように構成されており、
前記可動部の前記他端が前記本体の前記他端に押付けられることで、前記可動部の前記他端が前記本体の前記他端に固定されるように構成されている、
固定具。
【請求項2】
前記本体は、上辺部と、前記上辺部の前端から下方に向けて延出された前辺部と、前記上辺部の後端から下方に向けて延出された後辺部とを有しており、
前記前辺部には、前記前辺部の下部から後方に向けて突出された返片が設けられており、
前記前辺部は弾性材により構成されており、前記前辺部の弾性変形により前記返片の前方への変位が許容されるとともに、前記前辺部の復元により前記上辺部と前記返片との間に前記腕金を保持することができるように構成されている、
請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記可動部には、前記可動部の前記他端が前記本体の前記他端に押付けられる際の応力により伸びることができるバネ部が設けられている、
請求項1又は2に記載の固定具。
【請求項4】
前記本体の前記他端には、前記枠体の外方に向けて突出する第1突部が設けられており、
前記可動部の前記他端には、前記枠体の外方に向けて突出する第2突部が設けられており、
前記第1及び第2突部を挟み込むことで、前記可動部の前記他端を前記本体の前記他端に押付けることができるように構成されている、
請求項1又は2に記載の固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕金に他の部材を固定するための腕金用の固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の腕金用の固定具としては、下記の特許文献1,2に示されている構成を挙げることができる。
【0003】
特許文献1には、側面コ形状をなしかつその上片と下片とにボルト挿通孔が貫設した固定金具が開示されている。固定金具は、遠隔操作により上片と下片との間に腕金を嵌入することで腕金に掛止され、ボルト挿通孔にボルトを挿通してナットを螺締めすることにより腕金に固定される。固定金具の上部には、電柱腕金用鳥害防止具が取り付け可能とされている。
【0004】
特許文献2には、腕金をその側面側から導入自在に対向配置した一組の把持片、及び、これらの把持片の基端部同士を連結した連結片を有するC形の支持金具が開示されている。把持片の一方にはボルト部材が回動自在に取り付けられており、把持片の他方にはボルト部材を外周方向から導入できる切り欠き部が設けられている。切り欠き部にボルト部材が導入された後に、ボルト部材の先端に螺合されたナット部材を他方の把持片に締結することにより、支持金具が腕金に固定される。把持片の一方には、針山形の腕金用鳥害防止具が取り付け可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-289644号公報
【特許文献2】特開2020-68612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に開示された従来構成では、固定具を腕金に固定するために遠隔からのボルト及び/又はナットの操作が必要であり、作業効率が低くなっている。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、より容易に腕金に固定できる腕金用の固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る腕金用の固定具は、一実施形態において、腕金に他の部材を固定するための腕金用の固定具であって、本体と、一端が本体の一端に回動可能に取り付けられ、他端が本体の他端に固定可能に設けられた可動部とを備え、可動部の他端が本体の他端に固定されることで、少なくとも腕金の周囲を囲むことができる矩形の枠体を形成するように構成されており、可動部の他端が本体の他端に押付けられることで、可動部の他端が本体の他端に固定されるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の腕金用の固定具の一実施形態によれば、可動部の他端が本体の他端に押付けられることで、可動部の他端が本体の他端に固定されるように構成されているので、より容易に腕金に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態による腕金用の固定具の典型的な使用態様を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態による腕金用の固定具を示す右側面図である。
【
図5】
図3の固定具を前方右斜め上方から見た際の斜視図である。
【
図6】
図3の固定具を前方右斜め下方から見た際の斜視図である。
【
図7】
図3の固定具を後方右斜め上方から見た際の斜視図である。
【
図8】
図3の固定具を後方右斜め下方から見た際の斜視図である。
【
図9】
図3の固定具を腕金に取り付ける際の前辺部の弾性変形を示す説明図である。
【
図10】
図3の係合突部及び穴部の第1変形例を示す説明図である。
【
図11】
図3の係合突部及び穴部の第2変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0012】
以下の説明において、前後、上下、及び左右等の方向を示す用語を使用することがある。これらの方向を示す用語は、理解を容易にするために固定具の典型的な使用態様(
図1及び
図2参照)に基づいて使用しているが、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、固定具の使用態様はその典型的な使用態様に限定されず、固定具が他の向きで使用されることも本発明の範囲内であり得る。互いに直交する第1軸、第2軸及び第3軸を定義したとき、前後は第1軸に沿う一方の方向及び他方の方向と同義であり、上下は第2軸に沿う一方の方向及び他方の方向と同義であり、左右は第3軸に沿う一方の方向及び他方の方向と同義であり得る。
【0013】
図1は本発明の実施の形態による腕金用の固定具1の典型的な使用態様を示す斜視図であり、
図2は
図1の固定具1の正面図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の実施の形態による腕金用の固定具1は、腕金2に他の部材3を固定するための部材である。
【0014】
腕金2は、例えば電柱等の構造物に取り付けられた部材であり得る。腕金2は、構造物の長さ方向に交わるように延在されていてよく、より具体的には構造物の長さ方向に直交して延在されていてよい。腕金2は、地面に立つ作業者の手が届かない高さに配置されていることがある。図示のように、腕金2は角管であり得る。
【0015】
固定具1が腕金2に固定する他の部材3は、任意である。
図1及び
図2には、他の部材3として、鳥害防止具30が示されている。一般に、鳥害防止具30は、例えばカラス又は鳩等の鳥類が腕金2に飛来することを防止するための部材である。図示のように、鳥害防止具30は、帯状又は板状の基部31と、基部31から林立された複数の針体32とを有していてよい。帯状又は板状とは所定の幅、長さ及び厚みを有するものを指し、図示の基部31のように複数の開口を有するものを含んでいてよい。基部31の長さ方向は、腕金2の長さ方向と同義であり得る。針体32は、基部31の長さ方向及び幅方向に互いに離間して配置されている。固定具1が腕金2に固定する他の部材3としては、鳥害防止具30の他に、営巣防止具及び冠雪防止具等を挙げることができる。
【0016】
固定具1は、腕金2の上部に他の部材3を固定することができる。図示の態様では、固定具1は腕金2の上部に鳥害防止具30を固定している。使用態様によっては、固定具1は腕金2の側部又は下部に他の部材3を固定してもよい。図示の態様では一対の固定具1が鳥害防止具30の両端部に配置されているが、固定具1の使用数は任意である。
【0017】
以下説明するように、本実施の形態の固定具1は、従来構成で必要であったボルト及び/又はナットの操作よりも簡単な操作で腕金2に固定できるように構成されている。
【0018】
次に、
図3~
図11を参照しながら、本発明の実施の形態による腕金用の固定具1の構成についてより詳細に説明する。
【0019】
図3は本発明の実施の形態による腕金用の固定具1を示す右側面図であり、
図4は
図3の固定具1を示す上面図である。
図5は
図3の固定具1を前方右斜め上方から見た際の斜視図であり、
図6は
図3の固定具1を前方右斜め下方から見た際の斜視図であり、
図7は
図3の固定具1を後方右斜め上方から見た際の斜視図であり、
図8は
図3の固定具1を後方右斜め下方から見た際の斜視図である。
図9は、
図3の固定具1を腕金2に取り付ける際の前辺部14Fの弾性変形を示す説明図である。
図10は
図3の係合突部130及び穴部131の第1変形例を示す説明図であり、
図11は
図3の係合突部130及び穴部131の第2変形例を示す説明図である。なお、固定具1の左側面は右側面と対称に表れる。
【0020】
図3~
図8に示されているように、本実施の形態の固定具1は、本体10と可動部11とを有している。可動部11の一端11aは、本体10の一端10aに回動可能に取り付けられている。可動部11の他端11bは、本体10の他端10bに固定可能に設けられている。固定具1は、可動部11の他端11bが本体10の他端10bに固定されることで、少なくとも腕金2の周囲を囲むことができる矩形の枠体を形成するように構成されている。図示の態様では固定具1は正方形の枠体を形成するように構成されているが、固定具1は前後又は上下に長い矩形の枠体を形成するように構成されていてもよい。
【0021】
可動部11の一端11aを本体10の一端10aに回動可能に取り付ける方法は任意である。図示の態様では、可動部11の一端11aに軸部120(
図7参照)が設けられており、本体10の一端10aにC形状の把持部121が設けられており、把持部121が軸部120を把持することで可動部11が回動可能に設けられている。代替的に、可動部11の一端11a及び本体10の一端10aに互いに重なるように設けられた軸孔が設けられ、その軸孔に軸体が挿通されてもよい。
【0022】
本実施の形態の固定具1は、可動部11の他端11bが本体10の他端10bに押付けられることで、可動部11の他端11bが本体10の他端10bに固定されるように構成されている。すなわち、本実施の形態の固定具1では、従来構成で必要であったボルト及びナットの操作が不要であり、より容易に腕金2に固定できる。
【0023】
このような構成は種々の方法で実現できるが、例えば、可動部11の他端11b及び本体10の他端10bのいずれか一方に係合突部130を設け、他方にその係合突部130が係合される穴部131を設けることにより実現することができる。
【0024】
図3に特に表れているように、係合突部130は、軸部130aと、軸部130aの先端に設けられた係合部130bとを有していてよい。係合部130bは、先細り状の外形を有している。係合部130bは、平面状の外面を有していてもよいが、
図6に特に表れているように円弧状の外面130cを有していてもよい。係合部130bの後端は、軸部130aよりも大きくされている。係合突部130及び穴部131は、係合突部130の係合部130bが穴部131内に進入した後に、穴部131の周囲の壁面に係合部130bの後端が係合するように配置され得る。図示の態様では、本体10の他端10bに係合突部130が設けられ、可動部11の他端11bに穴部131が設けられている。しかしながら、これとは逆に本体10の他端10bに穴部131が設けられ、可動部11の他端11bに係合突部130が設けられていてもよい。
【0025】
代替的に、係合突部130及び穴部131は、
図10又は
図11に示すような形態を採る事もできる。
【0026】
図10に示す第1変形例(結束バンド形状)では、係合突部130は、軸部130aと、軸部130aの側面に設けられた複数の第1歯部130dとを有している。第1歯部130dのそれぞれは、軸部130aの幅方向に延在する平面130d1と、その平面130d1の先端と軸部130aの延在方向に隣り合う別の第1歯部130dの平面130d1の基端とを接続する傾斜面130d2とを有している。穴部131は、穴部131の内壁に設けられた複数の第2歯部131aを有している。第2歯部131aのそれぞれは、穴部131の幅方向に延在する平面131a1と、その平面131a1の先端と穴部131の深さ方向に隣り合う別の第2歯部131aの平面131a1の基端とを接続する傾斜面131a2とを有している。可動部11の他端11bが本体10の他端10bに押付けられることで、第1及び第2歯部130d,131aが係合し、可動部11の他端11bが本体10の他端10bに固定される。これら第1及び第2歯部130d,131aは、穴部131内への係合突部130の押し込みを許容する一方で、穴部131からの係合突部130の引き抜きを規制する。
【0027】
図11に示す第2変形例(嵌め殺しボタン形状)では、係合突部130は、軸部130aと、軸部130aの側面から突出された突部130eとを有している。図示の態様では、軸部130aの幅方向に関して両側に向けて突部130eが突出されているが、突部130eは片側のみに突出されていてもよい。突部130eは、軸部130aの幅方向に延在する平面130e1と、その平面130e1の先端と軸部130aの側面とを接続する傾斜面130e2とを有している。穴部131は、穴部131の内壁に設けられた凹部131bを有している。可動部11の他端11bが本体10の他端10bに押付けられることで、突部130eが凹部131bに係合し、可動部11の他端11bが本体10の他端10bに固定される。これら突部130e及び凹部131bは、穴部131内への係合突部130の押し込みを許容する一方で、穴部131からの係合突部130の引き抜きを規制する。
【0028】
このような第1及び第2変形例の他に、可動部11の他端11bが本体10の他端10bに押付けられることで、可動部11の他端11bが本体10の他端10bに固定されるような構成として、例えば磁石による固定形状等の他の構成が採用されてもよい。そのような構成は、必ずしも係合を伴わなくてよい。
【0029】
本体10は、全体として下方に向けて開放されたコ形状とされていてよい。より具体的には、本体10は、上辺部14Uと、上辺部14Uの前端から下方に向けて延出された前辺部14Fと、上辺部14Uの後端から下方に向けて延出された後辺部14Rとを有していてよい。上辺部14Uは、腕金2の上部に配置され得る。前辺部14F及び後辺部14Rは、上辺部14Uの長さ方向(前後方向)に互いに離間されるとともに互いに平行に延在されていてよい。前辺部14F及び後辺部14Rは、互いに対向されていてよい(上辺部14Uの長さ方向に沿って見たときに互いに重なるように配置されていてよい)。前辺部14Fは、可動部11の他端11bを本体10の他端10bに固定する際の操作が行われる側に配置された辺部であり得る。
【0030】
図示の態様における可動部11は、後端が後辺部14Rの下端に回動可能に取り付けられた下辺部14Lを有している。下辺部14Lの前端が前辺部14Fの下端に固定可能に設けられている。すなわち、図示の態様では、後辺部14Rの下端が本体10の一端10aを構成し、前辺部14Fの下端が本体10の他端10bを構成し、下辺部14Lの後端が可動部11の一端11aを構成し、下辺部14Lの前端が可動部11の他端11bを構成している。上辺部14U、前辺部14F、後辺部14R及び下辺部14Lは、所定の長さ、幅及び厚みを有する帯状又は板状の部分であり得る。
【0031】
図示の態様では、前辺部14Fの下端から下方に向けて係合突部130が突出されており、その係合突部130が係合可能な穴部131が下辺部14Lの前端に設けられている。
【0032】
前辺部14Fには、前辺部14Fの下部から後方に向けて突出された返片15が設けられている。本実施の形態の固定具1は、少なくとも前辺部14Fが弾性材により構成されており、前辺部14Fの弾性変形により返片15の前方への変位が許容されるとともに(
図9の(b)参照)、前辺部14Fの復元により上辺部14Uと返片15との間に腕金2を保持することができるように構成されている(
図9の(c)参照)。これにより、本体10を腕金2に取り付けた後の本体10の意図しない脱落を防止できる。また、可動部11の他端11bを本体10の他端10bに押付けて固定する際に、本体10の移動を規制でき、その押付作業を効率的に実施できる。
【0033】
前辺部14Fを構成する弾性材は、任意の樹脂又は金属を使用することができる。曲げ弾性の観点から、前辺部14Fを樹脂で形成することが好ましい。樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エラストマー等の熱可塑性樹脂を用いることができる。限定はされないが、上辺部14U及び後辺部14Rは、前辺部14Fと同じ材料により前辺部14Fと一体に形成されていてよい。下辺部14L(可動部11)は、前辺部14F(本体10)と同じ材料により形成されていてよい。
【0034】
返片15の先端と後辺部14Rの内面との間の距離D1(
図3参照)は、返片15が設けられていない位置における前辺部14Fの内面と後辺部14Rの内面との間の距離D2よりも狭くされている。また、返片15の先端と後辺部14Rの内面との間の距離D1(
図3参照)は、取付対象となる腕金2の幅よりも狭くされている。
【0035】
ここで、前辺部14F及び後辺部14Rの少なくとも一方には、少なくとも1つの厚肉部160が設けられていてよい。厚肉部160は、前辺部14F及び/又は後辺部14Rの厚みが部分的に厚くされた部分である。厚肉部160が設けられていない部分、すなわち前辺部14F及び/又は後辺部14Rの厚みが部分的に薄くされた部分を薄肉部161と呼ぶことができる。図示の態様では、
図3に特に表れているように、前辺部14Fの上部及び下部並びに後辺部14Rの上部及び下部に厚肉部160が設けられている。換言すると、前辺部14F及び後辺部14Rの長手方向に係る中央部には薄肉部161が設けられている。厚肉部160の内面160aは、薄肉部161の内面161aよりも枠体の内側に突出した位置に設けられた平面とされている。本実施の形態の固定具1は、厚肉部160の内面160aが腕金2の側面に接するように配置され得る。このような厚肉部160が設けられることで、腕金2の外寸に対する固定具1の内寸精度が向上される。また、前辺部14Fに薄肉部161が設けられることで、より円滑に前辺部14Fを弾性変形させることができる。
【0036】
可動部11には、可動部11の他端11bが本体10の他端10bに押付けられる際の応力により伸びることができるバネ部17が設けられていてよい。図示の態様では、可動部11を構成する下辺部14Lにバネ部17が設けられており、バネ部17は下辺部14Lの長手方向に伸びることができる。バネ部17は、限定はされないが、例えば蛇腹構造により構成できる。係合突部130の係合部130bが穴部131に進入する際にバネ部17が伸びることで、穴部131への係合部130bの進入をより円滑に行うことができる。
【0037】
本体10の他端10bには、枠体の外方に向けて突出する第1突部181が設けられていてよい。また、可動部11の他端11bには、枠体の外方に向けて突出する第2突部182が設けられていてよい。本実施の形態の固定具1は、これら第1及び第2突部181,182を挟み込むことで、可動部11の他端11bを本体10の他端10bに押付けることができるように構成されている。これにより、例えば絶縁ヤットコ等の器具を用いて遠隔より行う固定作業をより容易にすることができる。
【0038】
図示の態様では、第1突部181は前辺部14Fの下部から前方に突出されている。第2突部182は、下辺部14Lの前端から前方に突出されている。第1突部181の上面及び第2突部182の下面には、複数の段部181a,182aが設けられている。これらの段部181a,182aにより、第1及び第2突部181,182と器具との係合性を向上させることができる。
【0039】
第2突部182は下辺部14Lの長手方向と平行に延在されていてもよいが、図示の態様では、第2突部182は、下辺部14Lの長手方向に対して傾斜して延在されている。より具体的には、第2突部182は、下辺部14Lの長手方向に対して、可動部11の他端11bを本体10の他端10bから引き離す方向に傾斜して延在されている。可動部11の他端11bを本体10の他端10bに押付ける方向を上方としたとき、引き離す方向を下方と理解してよい。第2突部182が傾斜して延在されていることで、遠隔より下辺部14Lを回動させる作業性を向上でき、固定作業をより容易にすることができる。
【0040】
下辺部14Lの前端からの第2突部182の突出量は、前辺部14Fの下部から第1突部181の突出量よりも長くされている。これにより、遠隔より下辺部14Lを回動させる作業性を向上でき、固定作業をより容易にすることができる。
【0041】
前辺部14Fの上部には、枠体の外方に向けて突出する第3突部183が設けられていてよい。この第3突部183は、本体10を腕金2に取り付ける際に絶縁ヤットコ等の器具により把持され得る。第3突部183は、前辺部14Fの上部から前方に向けて突出されている。第3突部183は、前辺部14Fの上部から斜め下方に向けて延在されている。第3突部183の上面には複数の段部183aが設けられており、第3突部183と器具との係合性が向上されている。
【0042】
次に、
図9を参照しながら、固定具1の使用方法について説明する。ここでは、固定具1を用いて鳥害防止具30を腕金2に固定する例を説明する。まず、
図9の(a)に示すように、鳥害防止具30の基部31を腕金2の上面に載せた状態で、固定具1を腕金2の上方まで運ぶ。このとき、絶縁ヤットコ等の器具により第3突部183を把持して固定具1を運ぶことができる。
図1及び
図2を用いて説明したように、針体32は基部31の長さ方向及び幅方向に互いに離間して配置されている。固定具1は、針体32の間に上辺部14Uを進入させるように配置される。すなわち、上辺部14Uの幅は針体32の離間間隔よりも狭くされ得る。
【0043】
上述のように、前辺部14Fの下部からは返片15が突出されている。
図9の(a)の状態から固定具1を押し下げると、
図9の(b)に示すように返片15と腕金2との相互作用により前辺部14Fが弾性変形される。
図9の(b)の状態から固定具1をさらに押し下げて返片15が腕金2を超えると、
図9の(c)に示すように前辺部14Fが復元される。このとき、上辺部14Uと返片15との間に腕金2を保持することができる。
【0044】
図9の(c)の状態にした後、絶縁ヤットコ等の器具に下辺部14L(可動部11)の第2突部182を係合させて、下辺部14Lを回動させる。このとき、器具により第2突部182を把持せずに、器具に第2突部182を引っ掛けるだけでもよい。そして、下辺部14Lの前端(可動部11の他端11b)が前辺部14Fの下端(本体10の他端10b)に十分に近づいた段階で、絶縁ヤットコ等の器具により第1及び第2突部181,182を挟み込む等により、下辺部14Lの前端(可動部11の他端11b)を前辺部14Fの下端(本体10の他端10b)に押付けて、それらを互いに固定することができる。なお、バネ部17を伸ばすように下辺部14Lの前端(可動部11の他端11b)を前方に引き出すことにより、固定を解除することも可能である。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0046】
例えば、実施の形態では、基部31及び腕金2の外周に固定具1を付けることで腕金2の上部に鳥害防止具30を固定するように説明している。しかしながら、固定具1は、その上部に鳥害防止具30が取り付け可能であるように構成されていてもよい。この場合、腕金2の外周に固定具1が付けられる前又は後に、固定具1の上部に鳥害防止具30を取り付けることができる。
【0047】
また、実施の形態では、本体10が、上辺部14U、前辺部14F及び後辺部14Rを有し、可動部11が下辺部14Lを有すると説明している。しかしながら、本体10が上辺部14U及び前辺部14Fを有し、可動部11が後辺部14R及び下辺部14Lを有していてもよい。この場合、上辺部14Uの後端に後辺部14Rの上端が回動可能に接続されてよい。
【符号の説明】
【0048】
1 :固定具
2 :腕金
3 :他の部材
10 :本体
10a :本体の一端
10b :本体の他端
11 :可動部
11a :可動部の一端
11b :可動部の他端
14F :前辺部
14R :後辺部
14U :上辺部
15 :返片
17 :バネ部
181 :第1突部
182 :第2突部