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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024063630
(43)【公開日】2024-05-13
(54)【発明の名称】巻取り用スプール
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/28 20060101AFI20240502BHJP
   B65H 75/14 20060101ALI20240502BHJP
   B65H 65/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B65H75/28
B65H75/14
B65H65/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171727
(22)【出願日】2022-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】宗雲 清春
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA04
3F058AB03
3F058AC00
3F058BB19
3F058CA06
3F058DA05
3F058DB03
3F058DB05
3F058DC04
3F058HA04
3F058HB03
3F058HB08
(57)【要約】
【課題】線状部材の取り回しが容易であり、かつ、クリップの耐久性及び操作性が良好な、巻取り用スプールを提供する。
【解決手段】スプール1は、胴巻き3に一対のフランジ4が設けられたスプール本体2と、複数のクリップ5と、を備える。クリップ5は、固定部51と、保持部52と、接続部53とを備える。接続部53は、保持部52がフランジ4の外側に位置するように当該保持部52に付勢力を与える。保持部52は、接続部53の付勢力に抗してフランジ4に形成された貫通孔45を通して当該フランジ4の内側に露出させることによって、線状部材を保持する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状部材を巻き取るための胴巻きに一対のフランジが設けられたスプール本体と、前記線状部材を前記フランジに対して取外し可能に係止する複数のクリップと、を備えており、
前記複数のクリップはそれぞれ、前記フランジに固定された固定部と、前記線状部材を保持可能な保持部と、前記固定部と前記保持部とを接続する接続部とを備えており、
前記接続部は、前記フランジの外側に配置されているとともに前記保持部が前記フランジの外側に位置するように当該保持部に付勢力を与えるものであり、
前記保持部は、前記接続部の付勢力に抗して前記フランジの外側から当該フランジに形成された貫通孔を通して当該フランジの内側に、当該保持部を露出させることによって、前記線状部材を保持するものである、巻取り用スプール。
【請求項2】
前記クリップは、前記保持部と前記接続部との間に湾曲部を備えている、請求項1に記載された巻取り用スプール。
【請求項3】
前記クリップの前記接続部は、当該接続部の前記保持部側の部分を内側に向かって曲げる屈曲部分を備えている、請求項1に記載された巻取り用スプール。
【請求項4】
前記クリップの前記保持部は、当該保持部の接続部側の部分から当該保持部の先端側部分に向かうにしたがって内側から外側に向かって折り返されている、請求項1に記載された巻取り用スプール。
【請求項5】
前記クリップの前記接続部は、前記固定部から前記屈曲部分に向かうにしたがって前記フランジから離れる方向に延在している固定部側部分を備えている、請求項3に記載された巻取り用スプール。
【請求項6】
前記クリップの付勢力に抗して当該クリップを変形させたときに生じる反力を、前記固定部を介して前記フランジで受けるようにした、請求項1に記載された巻取り用スプール。
【請求項7】
前記クリップの前記固定部は、前記フランジに形成された開口を通して当該フランジの内面に固定されている、請求項6に記載された巻取り用スプール。
【請求項8】
前記フランジは、前記クリップの前記固定部が固定される部分を外側に窪ませている、請求項7に記載された巻取り用スプール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状部材を巻き取るための巻取り用スプールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の巻取り用スプールには、切断された線状部材の末端がバラけるのを防止するため、当該線状部材の末端を、フランジの外側に設けられたクリップによって保持するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。当該従来の巻取り用スプールによれば、線状部材は、フランジに形成された切欠部を通して当該フランジの内側から外側に誘導されたのち、当該フランジの外側でクリップ留めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011‐006220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の巻取り用スプールは、例えば、線状部材の末端を前記切欠部に通す必要があるため、フランジの外側に位置するクリップに導くまでの取り回しが煩雑である。加えて、上記従来の巻取り用スプールは、フランジの外側において、当該フランジとクリップとの間で線状部材を挟持するため、当該クリップの付勢力を高める必要がある。ところが、クリップの付勢力を高めた場合、クリップの耐久性及び操作性に改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、線状部材の取り回しが容易であり、かつ、クリップの耐久性及び操作性が良好な、巻取り用スプールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る巻取り用スプールは、線状部材を巻き取るための胴巻きに一対のフランジが設けられたスプール本体と、前記線状部材を前記フランジに対して取外し可能に係止する複数のクリップと、を備えており、前記複数のクリップはそれぞれ、前記フランジに固定された固定部と、前記線状部材を保持可能な保持部と、前記固定部と前記保持部とを接続する接続部とを備えており、前記接続部は、前記フランジの外側に配置されているとともに前記保持部が前記フランジの外側に位置するように当該保持部に付勢力を与えるものであり、前記保持部は、前記接続部の付勢力に抗して前記フランジの外側から当該フランジに形成された貫通孔を通して当該フランジの内側に、当該保持部を露出させることによって、前記線状部材を保持するものである。本発明に係る巻取り用スプールは、線状部材の取り回しが容易であり、かつ、クリップの耐久性及び操作性が良好である。
【0007】
(2)上記(1)の巻取り用スプールにおいて、前記クリップは、前記保持部と前記接続部との間に湾曲部を備えていることが好ましい。この場合、線状部材を容易に保持することができる。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の巻取り用スプールにおいて、前記クリップの前記接続部は、当該接続部の前記保持部側の部分を内側に向かって曲げる屈曲部分を備えていることが好ましい。この場合、クリップの操作性がより向上する。
【0009】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つの巻取り用スプールにおいて、前記クリップの前記保持部は、当該保持部の接続部側の部分から当該保持部の先端側部分に向かうにしたがって内側から外側に向かって折り返されていることが好ましい。この場合、線状部材の保持及び取り外しをスムーズに行うことができる。
【0010】
(5)上記(3)の巻取り用スプールにおいて、前記クリップの前記接続部は、前記固定部から前記屈曲部分に向かうにしたがって前記フランジから離れる方向に延在している固定部側部分を備えていることが好ましい。この場合、フランジの形状を維持しつつクリップの付勢力に抗して当該クリップをより大きく変形させることができる。
【0011】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つの巻取り用スプールは、前記クリップの付勢力に抗して当該クリップを変形させたときに生じる反力を、前記固定部を介して前記フランジで受けるようにしていることが好ましい。この場合、クリップを変形させたときに生じる反力がフランジによって受けられることによって、巻取り用スプールの耐久性が向上する。
【0012】
(7)上記(6)の巻取り用スプールにおいて、前記クリップの前記固定部は、前記フランジに形成された開口を通して当該フランジの内面に固定されていることが好ましい。この場合、簡易な構成により、巻取り用スプールの耐久性が向上する。
【0013】
(7)上記(7)の巻取り用スプールにおいて、前記フランジは、前記クリップの前記固定部が固定される内面部分を外側に窪ませていることが好ましい。この場合、フランジの内面からのクリップの内側への突出を抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、線状部材の取り回しが容易であり、かつ、クリップの耐久性及び操作性が良好な、巻取り用スプールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る巻取り用スプールを概略的に示す斜視図である。
図2図1の巻取り用スプールを概略的に示す正面図である。
図3図2の領域Aを拡大して示す拡大正面図である。
図4図3のX-X断面図である。
図5図4のクリップを示す断面図である。
図6図5のクリップを概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る巻取り用スプールについて説明をする。ただし、ここで用いられる用語については、以下のとおりに定義をする。
【0017】
符号Оは、巻取り用スプールの中心軸線である。本実施形態において、胴巻き及びフランジの中心軸線は、巻取り用スプールの中心軸線О(以下、単に「軸線О」ともいう。)と同軸である。また、軸線Оが延在する方向を「軸線方向」ともいう。
【0018】
ただし、以下の説明において、軸線方向のうち、胴巻きに近づく方向に向かう側は、「軸線方向内側」ともいう。そして、軸線方向のうち、胴巻きから離れる方向に向かう側は、「軸線方向外側」ともいう。さらに、フランジを基準としたときには、当該フランジよりも軸線方向内側は、単に「フランジの内側」ともいう。そして、フランジを基準としたときには、当該フランジよりも軸線方向外側は、単に「フランジの外側」ともいう。
【0019】
また、以下の説明において、軸線方向に対して直交する方向は、「径方向」ともいう。さらに、径方向のうち、軸線Оに近づく方向に向かう側は、「径方向内側」ともいう。そして、径方向のうち、軸線Оからから離れる方向に向かう側は、「径方向外側」ともいう。
【0020】
図1には、本発明の一実施形態に係る巻取り用スプール1(以下、単に「スプール1」ともいう。)が概略的かつ斜視的に示されている。
【0021】
スプール1は、スプール本体2を備えている。スプール本体2は、線状部材10を巻き取るための胴巻き3に一対のフランジ4が設けられている。
【0022】
本実施形態において、胴巻き3は、円柱形状を有している。なお、本実施形態において、胴巻き3は、中空の円筒形の部分である。
【0023】
2つのフランジ4はそれぞれ、円形状を有しており、胴巻き3の軸線方向外側端に接続されている。本実施形態において、フランジ4は、軸線Оが通る中央の領域に、軸線方向内側に窪んだ窪み41を備えている。また、本実施形態において、フランジ4は、窪み41を縁取るように、軸線Оの周りを周方向に環状に延在する環状のフランジ本体42を備えている。本実施形態において、フランジ本体42は、軸線Оを中心に放射状に配置された複数の膨出部43を備えている。フランジ4の径方向外側縁44は、フランジ本体42の径方向外側縁によって構成されているとともに、軸線方向外側に巻き返された巻き返しによって構成されている(図4参照。)。ただし、フランジ4の構成は、構成に限定されるものではない。
【0024】
図1に示すように、胴巻き3には、2つのフランジ4の間に、線状部材10を巻き付けることができる。線状部材10は、スプール1に巻き取った状態で保管することができる。ここで、線状部材10とは、金属、樹脂又はこれらの組み合わせからなる、可撓性を有する線状の部材である。具体例としては、タイヤに用いられるスチールコードが挙げられている。より具体的には、直径φ2~6mmの太径のスチールコードが挙げられる。
【0025】
加えて、スプール1は、複数のクリップ5を備えている。クリップ5は、線状部材10をフランジ4に対して取外し可能に係止する。本実施形態において、スプール1は、2つのクリップ5を備えている。クリップ5は、後述するように、胴巻き3に巻き取られた線状部材10の末端部分をフランジ4の内面に固定させることができる。
【0026】
図2には、スプール1が軸線方向外側から概略的に示されている。本実施形態において、2つのクリップ5は、軸線Оを中心に角度α1だけ離れた位置に配置されている。本実施形態では、α1=30度としている。ただし、角度α1は、適宜変更することができる。
【0027】
図3には、図2の領域Aが拡大して示されている。
【0028】
複数のクリップ5はそれぞれ、図3に示すように、フランジ4に固定された固定部51と、線状部材10を保持可能な保持部52と、固定部51と保持部52とを接続する接続部53とを備えている。クリップ5は、後述するように、フランジ4の外側から貫通孔45を通して、当該フランジ4の内側に露出させることができる。
【0029】
図4は、図3のX-X断面図である。
【0030】
接続部53は、フランジ4の外側に配置されているとともに保持部52がフランジ4の外側に位置するように当該保持部52に付勢力を与える。本実施形態において、接続部53は、以下の構成によって、保持部52に付勢力を与えている。
【0031】
本実施形態において、接続部53は、当該接続部53の保持部52側の部分53c(以下、「保持部側部分53c」ともいう。)を内側に向かって曲げる屈曲部分53a(以下、「第1の屈曲部分53a」ともいう。)を備えている。本実施形態において、接続部53は、固定部51に連なる固定部側部分53bと、保持部52に連なる保持部側部分53cと、を備えている。第1の屈曲部分53aは、固定部側部分53bと保持部側部分53cとに連なっている。図4に示すように、本実施形態において、第1の屈曲部分53aは、保持部側部分53cを固定部側部分53bに対して内側に向かって曲げるように屈曲させる部分である。つまり、本実施形態において、「保持部側部分53cを内側に向かって曲げる」とは、接続部53において、保持部側部分53cを固定部側部分53bよりもフランジ4に近づくように曲げることをいう。
【0032】
加えて、図4に示すように、本実施形態において、固定部側部分53bは、固定部51から第1の屈曲部分53aに向かうにしたがってフランジ4から離れる方向に延在している。本実施形態において、固定部側部分53bは、図4に示すように、軸線Оを含む平面を断面するときの断面視において、フランジ4に対して、径方向外側に向かうにしたがってフランジ4から離れる方向(軸線方向外側)に角度α2で傾斜している。また、本実施形態において、保持部側部分53cは、フランジ4に対して平行な、平坦な部分である。
【0033】
図5には、図4のクリップ5が断面にて概略的に示されている。図5に示すように、本実施形態において、クリップ5は、さらに、第2の屈曲部分55を備えている。第2の屈曲部分55は、固定部51と接続部53とに連なっている。本実施形態において、第2の屈曲部分55は、接続部53の固定部側部分53bを固定部51に対して外側に曲げるように屈曲させる部分である。本実施形態において、固定部51は、平坦な固定部であり、接続部53の固定部側部分53bもまた、平坦な固定部側部分である。本実施形態において、固定部51の延長線と接続部53の固定部側部分53bとがなす角度は、開き角度α2と等しい。クリップ5は、例えば、板状の部材に、プレス加工を行うことによって、一体的に形成することができる。
【0034】
本実施形態において、接続部53は、第2の屈曲部分55によって、保持部52に付勢力を与えている。さらに、本実施形態において、第1の屈曲部分53aに連なる保持部側部分53cは、使用者が接続部53をフランジ4に向かって押すための操作部として機能する。ただし、第1の屈曲部分53aは、図5に示すような断面視において、曲線によって形作られた形状とすることができる。
【0035】
図4を参照すれば、保持部52は、接続部53の付勢力に抗してフランジ4の外側から当該フランジ4に形成された貫通孔45を通して当該フランジ4の内側に、当該保持部52を露出させることによって、線状部材10を保持するものである。本実施形態において、保持部52は、以下のように構成されている。
【0036】
保持部52は、当該保持部52の接続部53側の部分52b(以下、「接続部側部分52b」ともいう。)から当該保持部52の先端側部分52cに向かうにしたがって内側から外側に向かって折り返されている。本実施形態において、保持部52は、接続部53(保持部側部分53c)に連なる接続部側部分52bと、接続部側部分52bに連なる折り返し部分52aと、折り返し部分52aに連なる先端側部分52cと、を備えている。本実施形態において、折り返し部分52aは、フランジ4よりも外側に中心を有する曲率半径r2の円弧形状の部分である。さらに、本実施形態において、接続部側部分52b及び先端側部分52cは、平坦な部分である。これによって、本実施形態において、接続部側部分52bと先端側部分52cとの間には、外側に開いた開き角度α3が形成されている。さらに、本実施形態において、保持部52の接続部側部分52bと、接続部53の保持部側部分53cとの間には、内側に開いた開き角度α4が形成されている。
【0037】
本実施形態において、曲率半径r2は、r2=3.5mmとしている。この場合、開き角度α3は、α3=65度である。また、本実施形態において、開き角度α4は、α3=115度である。また、接続部53とフランジ4との間の角度α2は、14度である。また、本実施形態において、クリップ5は、固定部51、保持部52及び接続部53が一体に形成された板状のクリップである。本実施形態において、クリップ5の厚さT5は、T5=0.6mmとしている。これらの寸法は、クリップ5を手動操作することによって線状部材10をフランジ4の内面に固定する場合を想定している。ただし、これらの寸法は適宜変更することができる。クリップ5を機械装置等を用いて操作することによって線状部材10をフランジ4の内面に固定する場合もまた、これらの寸法は適宜変更することができる。
【0038】
加えて、図5を参照すれば、本実施形態において、クリップ5は、保持部52と接続部53との間に湾曲部56を備えている。湾曲部56は、フランジ4よりも内側に中心を有する曲率半径r3の円弧形状の部分である。本実施形態において、湾曲部56は、保持部52の接続部側部分52bと、接続部53の保持部側部分53cとに連なっている。本実施形態において、湾曲部56は、外向きに凸となるように湾曲している。
【0039】
図6には、クリップ5が正面から概略的に示されている。本実施形態において、クリップ5は、固定部51を最大幅W1とし、保持部52を最小幅W2とする。本実施形態において、接続部53は、先細りの形状である。本実施形態の接続部53において、保持部側部分53cは、固定部側部分53bよりも、より大きな傾斜で先細りしている。これによって、保持部側部分53cを内側に向かって押すときに、保持部52を容易に、貫通孔45を通してフランジ4の内側に押し込むことができる。
【0040】
ところで、クリップ5の固定部51は、フランジ4に固定されている。クリップ5の固定部51の内面は、フランジ4の外面に固定することができる。この場合、クリップ5の固定部51の内面は、例えば、スポット溶接等の手段を用いることによって、フランジ4の外面に固定することができる。
【0041】
ただし、クリップ5の固定部51の内面をフランジ4の外面に固定した場合、以下のような問題が懸念される。図5を参照すれば、図面左側にフランジ4の外面が存在するとして、当該フランジ4の外面にクリップ5の固定部51の内面を固定した場合、クリップ5の保持部側部分53cを図面左側に押したとき、当該保持部側部分53cが力点となる。この場合、固定部51は、クリップ5の第2の屈曲部分55を支点とする作用点となり、当該固定部51には、図面右側に向かう力が発生する。この力は、クリップ5の固定部51の内面をフランジ4の外面から引き離す方向に作用する。
図5を参照すれば、
【0042】
これに対し、本実施形態において、スプール1は、クリップ5の付勢力に抗して当該クリップ5を変形させたときに生じる反力を、固定部51を介してフランジ4で受けるようにしている。つまり、図5を参照すれば、本実施形態において、クリップ5の固定部51の外面は、図面右側にフランジ4の内面が存在するとして、当該フランジ4の内面に固定される。この場合、クリップ5の固定部51に生じる図面右側に向かう力は、図面右側に存在するフランジ4の内面によって受けられる。これによって、クリップ5の固定部51の外面は、フランジ4の内面から離れることがない。本実施形態において、フランジ4は、以下の構成によって、クリップ5の固定部51に生じる反力を受けている。
【0043】
図4を参照すれば、本実施形態において、クリップ5の固定部51は、フランジ4に形成された開口46を通して当該フランジ4の内面に固定されている。
【0044】
開口46は、フランジ4を軸線方向に貫通している。図3を参照すれば、本実施形態において、開口46は、径方向に対して直交する方向に延在するスリット孔である。開口46の幅W46は、クリップ5の最大幅W1と同一又はそれよりも大きく設定されている。さらに、図4を参照すれば、開口46の(軸線方向)高さT46は、クリップ5の厚さT5と同一又はそれよりも大きく設定されている。これらの設定によって、クリップ5は、開口46を通して、固定部51をフランジ4の内側に配置することができる。固定部51の外面は、スポット溶接等の固定手段によってフランジ4の内面に固定されている。これによって、フランジ4の内面は、クリップ5を内側に変形させたときに、当該クリップ5の固定部51に生じる反力を受けることができる。
【0045】
なお、本実施形態において、開口46は、フランジ4の中央側に近い位置に形成されている。具体的には、開口46は、フランジ本体42のうちの、窪み41に近い位置に配置されている。これによって、本実施形態において、固定部51は、フランジ4の中央側に近い位置に固定されている。具体的には、固定部51は、フランジ本体42のうちの、窪み41に近い位置に固定されている。
【0046】
加えて、図4に示すように、本実施形態において、フランジ4は、クリップ5の固定部51が固定される内面部分を外側に窪ませている。図4に示すように、本実施形態において、フランジ4は、開口46よりも径方向内側の部分に、外側に突出したポケット48を備えている。本実施形態において、ポケット48は、フランジ本体42の内面の一部を外側に平坦になるように突出させることによって、クリップ5の固定部51を配置可能な凹部47を形成している。本実施形態において、凹部47の(軸線方向)深さD47は、クリップ5の固定部51を配置したとき、当該固定部51の外面が、フランジ本体42の内面よりも外側の位置になるように設定されている。これによって、クリップ5の固定部51がフランジ本体42の内面から突出することがない。加えて、本実施形態において、凹部47の(軸線方向)深さD47は、クリップ5の固定部51を配置したとき、当該固定部51の内面が、径方向において、フランジ本体42の外面と整列する位置になるように設定されている。これによって、クリップ5の第2の屈曲部分55の内面は、フランジ本体42の外面と一致させることができる。この場合、クリップ5の接続部53は、開口46を通して無理なく、フランジ4の外側に露出させることができる。
【0047】
ここで、スプール1を用いた線状部材10の固定方法の一例について、説明をする。
【0048】
線状部材10は、図1に示すように、2つのフランジ4の間に配置された胴巻き3に巻き取られる。これによって、スプール1によれば、線状部材10を巻き取った状態にまとめることができる。
【0049】
線状部材10の巻取りが完了すると、使用者は、フランジ4の外側に配置された2つのクリップ5の一方をフランジ4に向かって押圧する。図4を参照すれば、クリップ5は、接続部53の保持部側部分53cを押圧することによって、固定部51を基点に、当該接続部53の付勢力に抗してフランジ4に向かって押し倒される。これによって、クリップ5の保持部52は、図4の破線で示すように、フランジ4の貫通孔45を通して、当該フランジ4の内側、すなわち、胴巻き3の側に露出させることができる。クリップ5の保持部52がフランジ4の内側に露出することによって、当該保持部52に、フランジ4の内側に配置された線状部材10を引っ掛けることができる。本実施形態において、接続部53の保持部側部分53cは、平坦に構成されているため、使用者は、当該保持部側部分53cを容易に押すことができる。
【0050】
保持部52に線状部材10を引っ掛けた後、クリップ5に対する押圧を解除すれば、保持部52は、接続部53の付勢力(復元力)によって、フランジ4の外側に向かって、元の位置に復帰しようとする。これによって、保持部52に引っ掛けた線状部材10は、保持部52とフランジ4との間でしっかりと挟持される。また、本実施形態において、フランジ4の径方向外側縁44には、径方向内側に切抜部49が形成されている。これによって、線状部材10は、クリップ5の保持部52とフランジ4との間に挟持された状態で、クリップ5の保持部52とフランジ4の径方向外側縁44とによる干渉を受け難くなる。
【0051】
次いで、本実施形態において、使用者は、フランジ4の外側に配置された2つのクリップ5の他方を、上述のとおり操作することによって、線状部材10の他の部分をフランジ4の内面に固定する。
【0052】
このように、スプール1によれば、線状部材10をフランジ4に固定するに際し、例えば、従来のように、線状部材10の末端部分をフランジ4の内面から当該フランジに形成した切欠部等に通して当該フランジの外面に誘導させる必要がない。このため、スプール1によれば、胴巻き3に巻き取られた線状部材10をクリップ5の保持部52に導くまでの取り回しが容易である。
【0053】
また、従来のように、フランジ4の外側において、当該フランジ4とクリップ5との間で線状部材10を挟持する場合、当該線状部材10がフランジ4とクリップ5との間から離脱しないように、当該クリップ5の付勢力を高める必要がある。ところが、クリップ5の付勢力を高めた場合、クリップ5で線状部材10を保持するときの操作性、或いは、クリップ5から線状部材10を取り外すときの操作性に改善の余地がある。さらに、クリップ5の付勢力を高めた場合、クリップ5の固定部51に加わる負荷が大きくなるため、当該クリップ5の耐久性、つまり、スプール1の耐久性にも改善の余地がある。
【0054】
これに対し、スプール1は、クリップ5をフランジ4の外側から内側に向かって押すことによって、フランジ4の内側において、線状部材10をクリップ5の保持部52に引っ掛けたのち、当該クリップ5の復元力(接続部53の付勢力)によって、フランジ4の内面とクリップ5の保持部52との間で線状部材10を挟持する。この場合、線状部材10がフランジ4の外側に固定されないため、クリップ5の付勢力を抑えつつ、当該クリップ5によって、線状部材10を固定することができる。さらに、クリップ5の付勢力が抑えられる分、クリップ5で線状部材10を保持するときの操作性、或いは、クリップ5から線状部材10を取り外すときの操作性を向上させることができる。さらに、クリップ5の付勢力が抑えられることによって、クリップ5の固定部51に加わる負荷もまた抑えることができる。このため、クリップ5の耐久性、つまり、スプール1の耐久性も向上する。
【0055】
さらに、スプール1は、2つのクリップ5を備えている。このため、上述のとおり、2つのクリップ5のうちの一方のクリップ5は、線状部材10の末端部分よりも巻取り側に近い位置で、当該線状部材10をフランジ4に対して固定し、さらに、2つのクリップ5のうちの他方のクリップ5は、線状部材10の末端部分の位置で、当該線状部材10をフランジ4に対して固定することができる。これによって、線状部材10の末端部分がフランジ4の外周から飛び出すことをより確実に防ぐことができる。
【0056】
したがって、スプール1は、線状部材10の取り回しが容易であり、かつ、クリップ6の耐久性及び操作性が良好となる。さらに、クリップ5の付勢力は、線状部材10の品質にも影響を与えることが考えられる。これに対し、スプール1によれば、クリップ5の付勢力が抑えられることによって、線状部材10の品質にも影響を与え難い。
【0057】
また、スプール1において、クリップ5は、保持部52と接続部53との間に湾曲部56を備えている。この場合、クリップ5は、線状部材10を接続部53から保持部52に向けてスムーズに案内することができる。したがって、スプール1によれば、線状部材10を容易に保持することができる。
【0058】
また、スプール1において、クリップ5の接続部53は、当該接続部53の保持部側部分53cを内側に向かって曲げる第1の屈曲部分53aを備えている。この場合、使用者がクリップ5をフランジ4の内側に向かって変位させるように操作するとき、第1の屈曲部分53aを目印に、当該保持部側部分53cを容易に押すことができる。したがって、この場合、クリップ5の操作性がより向上する。
【0059】
また、スプール1において、クリップ5の保持部52は、接続部側部分52bから先端側部分52cに向かうにしたがって内側から外側に向かって折り返されている。この場合、線状部材10の保持及び取り外しをスムーズに行うことができる。
【0060】
また、スプール1において、クリップ5の接続部53は、固定部51から第1の屈曲部分53aに向かうにしたがってフランジ4から離れる方向に延在している固定部側部分53bを備えている。この場合、クリップ5をフランジ4に近づけるように変形させたときにも、固定部側部分53bは、フランジ4と接触し難くなる。したがって、この場合、フランジ4の形状を維持しつつクリップ5の付勢力に抗して当該クリップ5をより大きく変形させることができる。
【0061】
また、スプール1は、クリップ5の付勢力に抗して当該クリップ5を変形させたときに生じる反力を、固定部51を介してフランジ4で受けるようにしている。この場合、クリップ5を変形させたときに生じる反力がフランジ4によって受けられることによって、クリップ5の固定部51をフランジ4から分離させ難くすることができる。したがって、この場合、スプール1の耐久性が向上する。
【0062】
特に、スプール1において、クリップ5の固定部51の外面は、フランジ4に形成された開口46を通して当該フランジ4の内面に固定されている。この場合、簡易な構成により、スプール1の耐久性が向上する。
【0063】
さらに、スプール1において、フランジ4は、凹部47によって、クリップ5の固定部51の外面が固定される内面部分を外側に窪ませている。この場合、フランジ4の内面からのクリップ5の内側への突出を抑えることができる。クリップ5がフランジ4の内面から突出しないことによって、線状部材10の巻取りが容易になる。さらに、線状部材10がクリップ5の固定部51に引っ掛かることないため、当該線状部材10を保護するという点で有利である。
【0064】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。スプール1は、上述のような太径の線状部材を固定する場合に特に有効であるが、前記太径の線状部材よりも小径の線状部材を固定する場合にも適用することができる。スプール1は、複数の膨出部43が設けられた波形フランジを備えたスプールとしたが、フランジの形状も適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0065】
1:スプール(巻取り用スプール), 2:スプール本体, 3:胴巻き, 4:フランジ, 41:フランジの窪み, 42:フランジ本体, 43:膨出部, 44:フランジの径方向外側縁, 45:貫通孔, 46:開口, T46:開口の(軸線方向)高さ, W46:開口の幅, 47:凹部, D47:凹部の(軸線方向)深さ, 48:ポケット, 49:, 5:クリップ, W1:クリップの最大幅, W2:クリップの最小幅, T5:クリップの厚さ, 51:固定部, 52:保持部, 52a:保持部の折り返し部分, 52b:保持部の接続部側部分, 52c:保持部の先端側部分, 53:接続部, 53a:第1の屈曲部分(接続部の屈曲部分), 53b:接続部の固定部側部分, 53c:接続部の保持部側部分, 55:第2の屈曲部分,
図1
図2
図3
図4
図5
図6